(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記保護シートは、ポリエステル、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル又は二軸延伸ポリプロピレンにより形成されていることを特徴とする請求項2記載の熱変色固形描画材セット。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、これを解消しようとするものである。具体的には、本発明は、滑らかな書き味を有し、特にコート紙、プラスチック、金属、ガラス、ホワイトボード等の平滑な非吸収面に対しても摩擦体を用いた擦過の熱により化学的に変色する描線を格段に濃く描画可能で、かつ、上記の非吸収面に熱変色する描線を描画した場合、布、ティッシュペーパー等紙類、ホワイトボード消去具、同梱の摩擦体等で容易に物理的に消去でき、優れた曲げ強度等の機械的強度を有し、折れにくい熱変色固形描画材と、摩擦体と、を組み合わせてなる熱変色固形描画材セット、あるいは、摩擦体を備えることで、熱変色固形描画材に優れた曲げ強度等の機械的強度を付与し、折れにくくした熱変色固形描画材セットを提供することを課題とする。
【0013】
また、上記の非吸収面に描画した場合、布、ティッシュペーパー等紙類、ホワイトボード消去具、同梱の摩擦体等で容易に物理的に消去できる、優れた曲げ強度等の機械的強度を有し、折れにくい熱変色固形描画材、及び、このような熱変色固形描画材の外周を保護シートで被覆しつつ、この保護シートに剥離や離断等のためのミシン目や切れ目等の特別の構造を設けることなく、熱変色固形描画材の摩耗に伴って描画可能な先端部分を新たに露出させることが可能な熱変色固形描画材セットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、上記従来の課題等を解決するために、鋭意研究を行った結果、少なくとも樹脂、ワックス類、熱変色色材及び白色の体質材からなる固形描画材において、樹脂としてロジン及び/又はロジンのグリセリンエステル等ロジン変成物を0.5重量%から20重量%、ワックス類として融点45℃以上のグリセリン脂肪酸エステル及び/又はペンタエリスリトール脂肪酸エステルを8重量%から50重量%の範囲で含む固形描画材を保護シートで被覆とすることにより上記目的に適う熱変色固形描画材が得られることを見出し、下記の通り、本発明を完成するに至ったのである。また、JIS K 6253におけるデュロメータタイプAの硬度が50以上である摩擦体とのセットとすることにより、また、前記保護シートをJIS K 6253におけるデュロメータタイプAの硬度が50以上である摩擦体からなる、又は、JIS K 6253におけるデュロメータタイプAの硬度が50以上である摩擦体を備える保護シートで熱変色固形描画材を被覆し固形描画具とすることにより、より利便性の高い上記目的の熱変色固形描画材セットが得られることを見出し、下記の通り、本発明を完成するに至ったのである。
【0015】
(1)第1の発明
上記の課題に鑑み、本願の第1の発明に係る熱変色固形描画材セット10は、少なくとも樹脂成分、ワックス成分、熱変色色材及び白色の体質材を含有する熱変色固形描画材20であって、
前記樹脂成分として、ロジン及びロジン変成物のうち少なくとも一方を0.5重量%以上20重量%以下の範囲で含有し、
前記ワックス成分として、融点45℃以上のグリセリン脂肪酸エステル及びペンタエリスリトール脂肪酸エステルのうちの少なくとも一方を8重量%以上50重量%以下の範囲で含む熱変色固形描画材20と、
JIS K 6253におけるデュロメータタイプAの硬度が50以上である摩擦体40と、
を組み合わせてなることを特徴とする。
【0016】
本発明において、「樹脂成分」として用いられるロジン及びロジン変成物は、一般的にロジン及びロジン変成物として分類されているものであれば、特に限定されず、いずれも使用できる。また、ロジンの主成分であるアビチエン酸を使用することも可能である。なお、ここで「ロジン変成物」とは、ロジンのグリセリンエステル等をいう。
これらは、化成品、天然物を区別することなく、単独、又は2種以上混合して用いることも可能であり、目的とする熱変色固形描画材20の着色性、硬さによって適宜選択される。
この樹脂成分の含有率は0.5重量%以上20重量%以下の範囲にあることとなっている。この含有率が0.5重量%を下回ると、平滑面での定着性が劣り着色が不十分であり、また強度的に弱く、実用的でない。一方、20重量%を上回ると硬く、やはり平滑面での定着性が劣り着色が不十分となる。
【0017】
本発明において、「ワックス成分」として用いられるグリセリン脂肪酸エステルとしては、融点45℃以上で一般的にグリセリン脂肪酸エステルとして分類されているものであれば、特に限定されず、いずれも使用できる。たとえば、融点45℃以上のパルミチン酸グリセリド、ステアリン酸グリセリド等、また、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリドのいずれも用いることができる。さらに、これら以外のものとしては、グリセリン脂肪酸エステルを主成分とするハゼロウ、ウルシロウ等のモクロウ類、ヤマハゼロウ、ヤマウルシロウ等のスマックワックス類等の天然物のいずれをも用いることができる。
【0018】
本発明において、「ワックス成分」として用いられるペンタエリスリトール脂肪酸エステルとしては、融点45℃以上で一般的にペンタエリスリトール脂肪酸エステルとして分類されているものであれば、特に限定されず、いずれも使用できる。たとえば、融点45℃以上のパルミチン酸ペンタエリスリット、ステアリン酸ペンタエリスリット等、また、モノペンタエリスリット、ジペンタエリスリット、トリペンタエリスリット、テトラペンタエリスリットのいずれも用いることができる。なお、融点が45℃を下回ると、実用上の強度が弱すぎ、熱変色性固形描画材を細く成形すると折れやすくなる。
【0019】
これら本発明に用いるグリセリン脂肪酸エステル及びペンタエリスリトール脂肪酸エステルは、化成品、天然物を区別することなく、単独、又は2種以上混合して用いることも可能であり、目的とする熱変色性固形描画材の着色性、硬さによって適宜選択される。
上記ワックス成分の含有率は8重量%以上50重量%以下の範囲にあることとなっている。この含有率が8重量%を下回ると硬く、平滑面での定着性が劣り着色が不十分となる。一方、50重量%を上回ると強度的に弱くなり、実用的でない。
【0020】
本発明に用いる「熱変色色材」とは、たとえば、少なくともロイコ染料、顕色剤、変色温度調整剤から構成される熱変色性組成物であって、これらの材料を封入してマイクロカプセル顔料としたものも含まれる。マイクロカプセル顔料は、その壁材を強固にする点から、マイクロカプセル粒子の壁材21が、架橋を可能とするモノマー、ポリマーあるいは架橋材を含む重合物などから形成される高分子樹脂の壁材から形成され、この熱変色組成物を内包させることが望ましい。
【0021】
本発明に用いるロイコ染料としては、電子供与性染料で、発色剤として機能するものであれば、特に限定されるものではない。具体的には、優れた発色特性を得る点から、たとえば、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、1,3−ジメチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−クロロ−3−メチル−6−ジメチルアミノフルオラン、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−キシリジノフルオラン、2−(2−クロロアニリノ)−6−ジブチルアミノフルオラン、3,6−ジメトキシフルオラン、3,6−ジ−n−ブトキシフルオラン、1,2−ベンツ−6−ジエチルアミノフルオラン、1,2−ベンツ−6−ジブチルアミノフルオラン、1,2−ベンツ−6−エチルイソアミルアミノフルオラン、2−メチル−6−(N−p−トリル−N−エチルアミノ)フルオラン、2−(N−フェニル−N-−メチルアミノ)−6−(N−p−トリル−N−エチルアミノ)フルオラン、2−(3’−トリフルオロメチルアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、3−クロロ−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、2−メチル−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、3−メトキシ−4−ドデコキシスチリノキノリンなどが挙げられ、これらは、単独(1種)で又は2種以上を混合して(以下、単に「少なくとも1種」という)用いることができる。
さらに、黄色〜赤色の発色を発現させるピリジン系化合物、キナゾリン系化合物、ビスキナゾリン系化合物等も用いることができる。
これらのロイコ染料は、ラクトン骨格、ピリジン骨格、キナゾリン骨格、ビスキナゾリン骨格等を有するものであり、これらの骨格(環)が開環することで発色を発現するものである。
【0022】
本発明に用いる顕色剤は、ロイコ染料を発色させるものである。結晶状態の粒子から構成され、この結晶状態でインキ中に含有されるものである。
具体的に用いることができる顕色剤としては、発色特性に優れるインキを得る点から、たとえば、o−クレゾール、tert−ブチルカテコール、ノニルフェノール、n−オクチルフェノール、n−ドデシルフェノール、n−ステアリルフェノール、p−クロロフェノール、p−ブロモフェノール、o−フェニルフェノール、ヘキサフルオロビスフェノール、p−ヒドロキシ安息香酸n−ブチル、p−ヒドロキシ安息香酸n−オクチル、レゾルシン、没食子酸ドデシル、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4−ジヒドロキシジフェニルスルホン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、1−フェニル−1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)n−ヘキサン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)n−ヘプタン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)n−オクタン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)n−ノナン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)n−デカン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)n−ドデカン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)エチルプロピオネート、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)n−ヘプタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)n−ノナンなどが挙げられ、これらは、少なくとも1種用いることができる。
【0023】
本発明に用いる変色温度調整剤は、加熱溶融した状態でロイコ染料と顕色剤の結合を遮断して消色状態をなし、再度変色温度調整剤を融点以下に冷却することで変色温度調整剤が結晶化し、発色状態になることを繰り返し、その変化は可逆的に変色温度調整剤の融点を境にして呈するものである。また、加熱溶融した状態でロイコ染料と顕色剤の結合を遮断して消色状態をなし、再度変色温度調整剤の融点に冷却しても、その融点では変色温度調整剤が結晶化せず、消色状態を維持するものを用いることができる。後者の変色温度調整剤は、融点より更に数度から数十度温度を下げることで結晶化し、発色状態をなすヒステリシス特性を有する準可逆的な変化を呈するものであり、更に再度加熱、冷却することでこの変化は繰り返し消発色を呈するものである。
【0024】
用いることができる変色温度調整剤は、上記機能を有するものであれば、特に限定されず、たとえば、水酸基、エステル結合、エーテル結合、アミド結合などの極性基を、少なくとも1つ以上有する化合物、具体的には、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸、イコサン酸、ドコサン酸、テトラドコサン酸、ヘキサドコサン酸、オクタドコサン酸などの飽和脂肪酸、カプリルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、イソステアリルアルコール、パルミトレイルアルコール、などの高級アルコール、上記脂肪酸とアミンのアミド類、上記脂肪酸とアルコールのエステル類、上記高級アルコールと、グリセリン、プロピレングリコール、エチレングリコールとのエーテル類などが挙げられ、また、ジフェニルプロパンジオン、ジベンジオキシベンゼン、ジフェノキシベンゼン、ジイソプロピルナフタレン、ベンジルビフェニル、ベンジルナフチルエーテル、ジベンジルスルホキシド、ジメチルテレフタレート、ジフェニルカルボネート、ジフェニルスルホン、フルオランテン、フルオレン、メチルヒドロキシナフタレート、フェニルヒドロキシナフタレート、ステラニリド、などの芳香族化合物などが挙げられ、これらは、少なくとも1種用いることができる。
【0025】
マイクロカプセル顔料は、平均粒子径が0.1〜20μmであって、壁膜はエポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、アクリロニトリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、尿素−ホルムアルデヒド系樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド系樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ブチル化メラミン樹脂、ブチル化尿素樹脂、尿素−メラミン系樹脂等のアミノ樹脂の他、アクリル樹脂、マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレンなどで形成されたものであり、この熱変色組成物を内包させたものである。これらの樹脂の他、ゼラチン、デンプン、アラビアゴム、ポリアクリル酸ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ポリアクリル酸エステル、エチルセルロース、酢酸セルロースなどで形成されてもよいものである。
【0026】
本発明の「熱変色色材」をマイクロカプセル顔料とする場合には、少なくとも上記ロイコ染料、顕色剤、変色温度調整剤からなる熱変色性組成物を平均粒子径が0.1〜20μmとなるように、マイクロカプセル化することにより製造することができる。
マイクロカプセル化法としては、たとえば、界面重合法、界面重縮合法、in situ重合法、液中硬化被覆法、水溶液からの相分離法、有機溶媒からの相分離法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライニング法などを挙げることができ、用途に応じて適宜選択することができる。
たとえば、水溶液からの相分離法では、ロイコ染料、顕色剤、変色温度調整剤を加熱溶融後、乳化剤溶液に投入し、加熱攪拌して油滴状に分散させ、次いで、カプセル膜剤として、たとえば、壁膜がアミノ樹脂で形成できる樹脂原料などを使用、アミノ樹脂溶液、具体的には、メチロールメラミン水溶液、尿素溶液、ベンゾグアナミン溶液などの各液を徐々に投入し、引き続き反応させて調製後、この分散液を濾過することにより目的の熱変色性のマイクロカプセル顔料を製造することができる。
【0027】
これらのロイコ染料、顕色剤、変色温度調整剤の含有量は、用いるロイコ染料、顕色剤、変色温度調整剤の種類、マイクロカプセル化法などにより変動するが、ロイコ染料1に対して、質量比で顕色剤0.1〜100、変色温度調整剤1〜100である。また、カプセル膜剤は、カプセル内容物に対して、質量比で0.1〜1である。
本発明のマイクロカプセル顔料では、上記ロイコ染料、顕色剤及び変色温度調整剤の種類、量などを好適に組み合わせることにより、各顔料の色、任意の発色温度、消色温度とすることができる。
【0028】
本発明の「熱変色色材」をマイクロカプセル顔料とする場合には、壁膜が樹脂で形成されることが好ましく、さらに好ましくは、製造性、保存安定性、筆記性の点から、メラミン樹脂を含むアミノ樹脂等の熱硬化樹脂で形成されることが望ましい。
マイクロカプセル顔料の壁膜の厚さは、必要とする壁膜の強度や描線濃度に応じて適宜決められる。
【0029】
「熱変色色材」が、マイクロカプセル顔料の場合の平均粒子径は、着色性、発色性、易消色性、安定性の点、及び、筆記性への悪影響を抑制する点から、0.1〜20μm、さらに好ましくは、0.2〜5.0μmであるものが望ましい。なお、本発明(実施例等含む)で規定する「平均粒子径」は、レーザー回折・散乱式粒子径粒度分布測定装置(レーザー回折散乱式粒度分布計MT3000(日機装株式会社製))にて、平均粒子径(体積基準分布による算術平均径)を測定した値である。
この平均粒子径が0.1μm未満であると、十分な描線濃度が得られず、一方、20μmを越えると、筆記性の劣化、マイクロカプセル顔料の分散安定性の低下、摩擦による筆記面からの脱離が発生し、好ましくない。
なお、上記範囲(0.1〜20μm)となる平均粒子径のマイクロカプセル顔料は、マイクロカプセル化法により変動するが、水溶液からの相分離法などでは、マイクロカプセル顔料を製造する際の攪拌条件を好適に組み合わせることにより調製することができる。
【0030】
本発明において、「熱変色色材」の含有量は、インキ組成物全量に対して、好ましくは、5〜30質量%(以下、単に「%」という)、更に好ましくは、10〜25%とすることが望ましい。
この熱変色色材(顕色粒子)の含有量が5%未満であると、着色力、発色性が不十分となり、一方、30%を超えると、カスレが生じやすくなり、好ましくない。
【0031】
本発明における「熱変色色材」の他、色材として通常の顔料を含むことができる。その顔料としては、ジスアゾイエローAAA、ピラゾロンオレンジ等のアゾ系有機顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等のシアニン系有機顔料、キナクリドンレッド等の高級有機顔料、ファナルカラー等染付け顔料、蛍光顔料、カーボンブラック、鉄黒、弁柄、紺青等の無機顔料等をすべて用いることができる。
【0032】
本発明における「白色の体質材」としては、二酸化チタン、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、沈降性硫酸バリウム、マイカ、窒化ホウ素、チタン酸カリウムウィスカー、塩基性硫酸マグネシウムウィスカーのウィスカー類等公知の体質材であって、白色を呈するものをすべて用いることができる。
ここで、「二酸化チタン」としてはルチル、アタナーゼを問わず従来公知の二酸化チタンをすべて用いることができる。しかし、透明プラスチック、ガラス等透明な板面に濃く明確に描画することを目的とするには、触媒用二酸化チタンは粒子径が細かく、薄い描画面となり、好ましくないが、下記の通り、下地を透かして見るアンダーラインマーカーとする場合には逆に好都合である。
また、たとえば、二酸化チタンを添加せずに、これらの白色の体質材のみを添加して変色固形描画材を組成すると、半透明の描線が引けて下地が透けて見えるアンダーラインマーカーとして利用できるほか、この描線の上から半透明のシートをさらに被せてコピーをとると、複写物においては描線を引いた箇所が消去されて、即席の穴埋め問題集となる。
【0033】
本発明における「摩擦体40」としては、シリコーン樹脂、スチレンを含む樹脂、フッ素系樹脂、クロロプレン樹脂、ニトリル樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等の軟質樹脂(ゴム、エラストマー)や、ポリアセタール樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネイト樹脂、ポリエステル樹脂等の硬質樹脂を用いることができる。しかしながら、この「摩擦体40」を非吸収面における描線の物理的な除去の道具として使用した場合には、擦過に使用した箇所が汚染され見苦しくなるため、鉛筆削り器等で切削して新たな面を露出させなければならない。そのため、この摩擦体40には、上記の硬質樹脂のうち、JIS K 6253におけるデュロメータタイプAの硬度が50以上の硬質樹脂が好ましい。この硬度が50未満であると軟らか過ぎるため切削を行いにくく危険である。好ましくは60以上100以下、より好ましくは70以上95以下とすれば、問題なく切削をすることができる。
【0034】
上述の熱変色固形描画材20と、摩擦体40とが組み合わされることによって、本発明に係る熱変色固形描画材セット10が形成されることになる。ここで、熱変色固形描画材20と摩擦体40との組み合わせについては、たとえば、摩擦体40が熱変色固形描画材20の側面又は端部に着脱不能に装着されて一体をなしている場合や、また、このような摩擦体40がキャップのように熱変色固形描画材20に対して着脱可能に装着されるような場合、さらには、まったく別個の物品として熱変色固形描画材20とセットで製品とされるような場合のいずれもを含むものである。
【0035】
なお、本第1の発明においては、前記樹脂成分、ワックス成分、熱変色色材及び白色の体質材の他に融点が40℃以下の成分を4.5重量%以下の範囲で含有する。
すなわち、融点が45℃を下回るグリセリン脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステルや、ホホバ油等のワックス、スピンドル油、流動パラフィン、スクワラン、スクワレン、α−オレフィンオリゴマー、シリコーン油等の天然又は合成油であっても、上記の各成分の好適な含有量に影響を及ぼさない範囲であれば使用することができる。特に融点が40℃以下の成分(たとえば、融点が40℃以下のワックスやオイル等の有機成分)でも、熱変色固形描画剤20の全体に占める含有量が4.5重量%以下であれば使用することができる。しかし、熱変色固形描画材20を細く成形したい場合や、先端を尖らせたい場合には、強度の観点から、これらの低融点成分はなるべく含有しないことが望ましい。
【0036】
(2)第2の発明
また、本願の第2の発明に係る熱変色固形描画材セット10は、前記第1の発明の特徴に加え、
前記摩擦体40は、前記熱変色固形描画材20の外周面に2周以上巻き回される保護シート30の少なくとも最外周面の一部に設けられているとともに、
前記熱変色固形描画材20は、前記摩擦体40を含む前記保護シート30ごと鉛筆削り器で切削可能であることを特徴とする。
【0037】
すなわち、前記したものと同様の性質を持つ摩擦体40を、前記保護シート30の最外周面の一部に付着させるものである。たとえば、熱変色固形描画材20の外周面に巻き回した保護シート30の上から、軸方向に沿って突条様に形成した摩擦体40を付着させることが可能である(
図7参照)。また、前記保護シート30の最外周面の全面をこのような摩擦体40で構成することも可能である。
【0038】
第2の発明における、変色固形描画材に2周以上巻き回す保護シート30は、鉛筆削り器で切削可能であれば、合成樹脂、天然樹脂等プラスチック、セラミック、金属、紙、木材等、特に限定されず、いずれも使用できるが、2周以上巻き回すことを考慮し、適宜その材質が選択される。すなわち、保護シート30の材質は、複数回巻き回すことによる柔軟性、厚さ、及び鉛筆削り器で切削する際の削り器の刃の耐久性、切削性を考慮すると、紙又は合成樹脂が望ましい。
なお、保護シート30の材質としての紙については、吸湿により繊維が膨潤することで切削性が悪くなることを考慮し、吸湿ないし水の浸透の起こりにくいアート紙又はコート紙等表面加工した紙や、ポリプロピレン製等の樹脂を配合した合成紙が望ましい。
【0039】
保護シート30の材質としての合成樹脂については、公知のシート材又はフィルム材であれば特に限定されず、使用可能である。しかし、強度や鉛筆削り器による切削性を考慮すると、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル又は二軸延伸ポリプロピレンを使用することが望ましい。
また、前記保護シート30は全て前記摩擦体40により形成されていることとしてもよい。すなわち、熱変色固形描画材20に2周以上巻き回す摩擦体40からなる保護シート30は、上記同様に複数回巻き回すことによる柔軟性、厚さ、及び鉛筆削り器で切削する際の削り器の刃の耐久性、切削性を考慮すると、JIS K 6253におけるデュロメータタイプAの硬度が50以上の合成樹脂が望ましい。たとえば、前記した紙又は合成樹脂による保護シート30同様、熱変色固形描画具の外周面に、この摩擦体40からなる保護シート30の厚み等を調整し巻きつけることで熱変色固形描画材セット10が形成される。
また、強度及び切削時のカスの散乱防止の点で、保護シート30の内面側の一部又は全部に接着剤が塗布されていることが望ましい。この接着剤の材質は、これまでシール、シート、フィルム等に使用されてきたものであれば、特に限定はなく、いずれも使用可能である。
【0040】
なお、熱変色固形描画材20と保護シート30を固定するため、保護シート30の最内層に当たる部位には接着剤が塗布されていることが望ましい。また、保護シート30の最外層は、その直下の層に対し接着剤で固定することが必要である。そして、これらの中間部分には接着剤は塗布されていてもされていなくてもいずれでもよく、あるいは接着力の弱い接着剤を使用するなど、接着強度を変えたり、求める特性に応じて適宜選択したりすることが可能である。
また、本発明では熱変色固形描画材20に保護シート30を2周以上巻き回すが、極端に薄いと皺になりやすい。また、あまりに厚ければ、最内層の辺縁と重なる部分に段差ができやすく、常温では巻きにくく、そして時間が経てば剥れやすい。よって保護シート30の厚さは概ね1μm以上かつ200μm以下が好ましく、5μm以上かつ150μm以下がさらに望ましい。
【0041】
また、保護シート30の巻き回しの回数が2周未満であれば強度的補強効果が少ないが、あまり多くてもずれが生じたりして製造上の問題となる。よって、内部の熱変色固形描画材20の径と保護シート30の厚さとを調整し、概ね3周から20周巻き回すことが望ましい。
【0042】
(3)第3の発明
また、本願の第3の発明は、前記第1又は第2の発明の特徴に加え、前記樹脂成分と前記ワックス成分との比率が2:1〜1:25の範囲にあることを特徴とする。
樹脂成分の含有量がワックス成分に対し1:25より少ないと、得られる熱変色固形描画材20が脆く、また平滑面での定着性が劣り着色が不十分となる。また、樹脂成分の含有量がワックス成分に対し2:1より多いと熱変色固形描画材20が硬くなってしまい、着色性が不十分である。
要するに、樹脂成分と、ワックス成分とが好適な比率(すなわち、2:1〜1:25の範囲内)で混合されれば、平滑面での定着性が良好で、着色が良い変色固形描画材が得られることになる。
なお、樹脂成分とワックス成分との混合は、事前に溶融混合しておくことも可能であるし、また、熱変色固形描画材20の製造工程において、他の配合物とミキサー中等で混合することも可能であり、その製造方法については特に限定されない。
【0043】
(4)第4の発明
また、本願の第4の発明は、前記第1〜第3の発明のいずれかの特徴に加え、前記白色の体質材を5重量%以上含むことを特徴とする。
白色の体質材の含有量が5重量%を下回るか添加しない場合には、透明プラスチック、ガラス等透明な板面に濃く明確に描画することができず、薄い描画面となるが、アンダーラインマーカーとして下地の文字が判別できる変色固形描画材となる。
【0044】
(5)第5の発明
また、本願の第5の発明は、前記第1〜第4の発明のいずれかの特徴に加え、前記樹脂成分以外の追加樹脂成分としてポリエチレン及びエチレン−酢酸ビニル共重合体のうちの少なくとも一方を20重量%以下の範囲で含有するとともに、
前記ワックス成分以外の追加ワックス成分として融点45℃以上のパラフィンワックス、オゾケライト、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックスから成る群から選ばれる1種又は2種以上の混合物を30重量%以下の範囲で含むことを特徴とする。
すなわち、追加樹脂成分として、20重量%以下のポリエチレン及び/又はエチレン−酢酸ビニル共重合体を、強度向上、硬さ、書き味調整等の目的で、前記樹脂成分と併用することができる。この追加樹脂成分が20重量%を超えると、成形性や、コート紙、プラスチック、金属、ガラス、ホワイトボード等の平滑な非吸収面に対する着色力が劣り、薄い描線となるため、好ましくない。
なお、以上の場合、前記樹脂成分と前記追加樹脂成分との合計含有量は、コート紙、プラスチック、金属、ガラス、ホワイトボード等の平滑な非吸収面に描画する場合の描線濃度、定着性を考慮すると30重量%以下とすることが好ましい。
【0045】
また、前記追加樹脂成分としてのポリエチレン及び/又はエチレン−酢酸ビニル共重合体と、前記樹脂成分としての、融点45℃以上のグリセリン脂肪酸エステル及び/又はペンタエリスリトール脂肪酸エステルとは相溶性が低いため、追加ワックス成分として30重量%以下の融点45℃以上のパラフィンワックス、オゾケライト、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックスから成る群から選ばれる1種又は2種以上の混合物を併せて使用されることとなっている。
追加ワックス成分として用いられるオゾケライト、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックスは従来公知のものがすべて使用できるが、パラフィンワックスは強度の点で、融点45℃以上であることが好ましい。その含有量はコート紙、プラスチック、金属、ガラス、ホワイトボード等の平滑な非吸収面に描画する場合の描線濃度、定着性の点で30重量%以下とすることが好ましい。
また、前記ワックス成分と前記追加ワックス成分との合計含有量は、概ね70重量%以下が好ましいが、強度の点で65重量%以下が望ましい。さらに、コート紙、プラスチック、金属、ガラス、ホワイトボード等の平滑な非吸収面に描画する場合の描線濃度、定着性を考慮すると60重量%以下とすることが望ましい。
【0046】
(6)第6の発明
また、本願の第6の発明は、前記第5の発明の特徴に加え、前記ポリエチレンは低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン及び超低密度ポリエチレンから成る群から選ばれる1種又は2種以上の混合物であり、
前記エチレン−酢酸ビニル共重合体は酢酸ビニル含有量が30重量%以下、かつ、メルトフローレートが2g/分以上であることを特徴とする。
【0047】
すなわち、本発明で用いるポリエチレンは、その他配合材との混練性、成形性や、コート紙、プラスチック、金属、ガラス、ホワイトボード等の平滑な非吸収面に描画する場合の描線濃度、定着性の点に鑑みれば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレンのいずれか1種類、又は、これらの混合物から選択することが好ましい。さらには、メルトフローレートが2g/分以上であるものから選択することが望ましい。
また、本発明で用いるエチレン−酢酸ビニル共重合体は、その他配合材との混練性、成形性や、コート紙、プラスチック、金属、ガラス、ホワイトボード等の平滑な非吸収面に描画する場合の描線濃度、定着性の点に鑑みれば、酢酸ビニル含有量が30重量%以下、メルトフローレートが2g/分以上であるものから選択することが好ましい。
【0048】
(7)第7の発明
また、本願の第7の発明は、前記第5又は第6の発明の特徴に加え、前記追加樹脂成分と、前記追加ワックス成分との比率が3:1〜1:20の範囲にあることを特徴とする。
ここで、追加樹脂成分の比率が追加ワックス成分に対して3:1より多い場合は熱変色固形描画材20が硬くなってしまい、着色性が不十分となる。また、追加樹脂成分の比率が追加ワックス成分に対して1:20より少ない場合は、得られる熱変色固形描画材20が脆くなってしまい、強度的に不十分である。
【0049】
(8)その他
また、上記各成分以外にも、従来公知のカルナバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス、モンタンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ケトンワックス、ポリプロピレンワックス、各種脂肪酸アミドのワックス類、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸リチウム等の金属石鹸も適宜選択し、配合することとしてもよい。
この場合、これらの成分と、前記ワックス成分(又は前記ワックス成分及び前記追加ワックス成分)との合計含有量は、概ね70重量%以下が好ましい。なお、強度の点に鑑みれば65重量%以下が望ましく、さらにはコート紙、プラスチック、金属、ガラス、ホワイトボード等の平滑な非吸収面に描画する場合の描線濃度、定着性を考慮すると60重量%以下とすることが望ましい。
その他、本発明において、描線を水で溶解させたり、拭き取ったりする目的で、従来水溶性色鉛筆等で公知の界面活性剤、紫外線吸収剤等各種添加剤をこれまで述べてきた強度、平滑な非吸収面への描画、容易な消去性等の特徴を低下させない範囲で配合してもよい。
【発明の効果】
【0050】
本発明は、上記のように構成されているので、以下に記す効果を奏する。
すなわち、本発明によれば、滑らかな書き味を有し、特にコート紙、プラスチック、金属、ガラス、ホワイトボード等の平滑な非吸収面に対しても摩擦体を用いた擦過の熱により化学的に変色する描線を格段に濃く描画可能で、かつ、上記の非吸収面に熱変色する描線を描画した場合、布、ティッシュペーパー等紙類、ホワイトボード消去具、同梱の摩擦体等で容易に物理的に消去でき、優れた曲げ強度等の機械的強度を有し、折れにくい熱変色固形描画材と、摩擦体と、を組み合わせてなる熱変色固形描画材セット、あるいは、摩擦体を備えることで、熱変色固形描画材に優れた曲げ強度等の機械的強度を付与し、折れにくくした熱変色固形描画材セットが提供されることとなる。
【0051】
また、上記の非吸収面に描画した場合、布、ティッシュペーパー等紙類、ホワイトボード消去具、同梱の摩擦体等で容易に物理的に消去できる、優れた曲げ強度等の機械的強度を有し、折れにくい熱変色固形描画材、及び、このような熱変色固形描画材の外周を保護シートで被覆しつつ、この保護シートに剥離や離断等のためのミシン目や切れ目等の特別の構造を設けることなく、熱変色固形描画材の摩耗に伴って描画可能な先端部分を新たに露出させることが可能な熱変色固形描画材セットが提供されることとなる。
【実施例】
【0053】
以下、実施例及び比較例により、本発明をさらに具体的に説明する。
【0054】
(1)マイクロカプセル顔料:A−1〜A−5の処方
(1−1)顔料A−1
6−(ジメチルアミノ)−3,3−ビス[4−(ジメチルアミノ)フェニル]−1(3H)−イソベンゾフラノン(ロイコ色素):1重量部
ビスフェノールA(顕色剤):2重量部
4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ビスフェノールジラウレート(変色温度調整剤):24重量部
以上を加熱溶融後、95℃、pH4に調整したメチルビニルエーテル・無水マレイン酸共重樹脂(GANTREZAN−179:GAFCHEMICALS社製)水溶液400重量部に投入し、過熱攪拌して油滴状に分散させた。次いでカプセル膜剤として、50%メチロールメラミン水溶液20重量部を徐々に投入し、引き続き1時間反応させて調製した。この分散液を濾過することによりマイクロカプセル顔料を得た。なお、でき上がったマイクロカプセル顔料の平均粒子径は0.3μmであった。
【0055】
(1−2)顔料A−2
顔料A−1の処方に準じて、攪拌条件を変えることにより平均粒子径0.6μmのマイクロカプセル顔料を得た。
【0056】
(1−3)顔料A−3
6−(ジメチルアミノ)−3,3−ビス[4−(ジメチルアミノ)フェニル]−1(3H)−イソベンゾフラノン(ロイコ色素):1重量部
ビスフェノールA(顕色剤):2重量部
4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ビスフェノールジラウレート(変色温度調整剤):24重量部
以上を加熱溶融後、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.1重量部を含む60℃の水276重量部に攪拌しながら投入し油滴状に分散した。さらに尿素10重量部にホルマリン(ホルムアルデヒド37%水溶液)17重量部、水を73重量部加えた溶解液を前述の油滴状に分散した液中に投入して80℃に調整した後、酢酸20%水溶液を5重量部添加し、2時間反応させた。この分散液を濾過することによりマイクロカプセル顔料を得た。なお、でき上がったマイクロカプセル顔料の平均粒子径は0.8μmであった。
【0057】
(1−4)顔料A−4
6−(ジメチルアミノ)−3,3−ビス[4−(ジメチルアミノ)フェニル]−1(3H)−イソベンゾフラノン(ロイコ色素):1重量部
ビスフェノールA(顕色剤):2重量部
4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ビスフェノールジラウレート(変色温度調整剤):24重量部
イソシアネート(MR−200:日本ポリウレタン工業社製):5重量部
以上を加熱溶融後、リン酸三カルシウム2重量部とドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.04重量部を含む60℃の水溶液400重量部に投入し、加熱攪拌して油滴状に分散させた。次いでキシリレンジアミン2重量部を滴下し、60℃で約3時間攪拌して反応を終了させた後、塩酸処理を行った。この分散液を濾過することによりマイクロカプセル顔料を得た。なお、でき上がったマイクロカプセル顔料の平均粒子径は0.8μmであった。
【0058】
(1−5)顔料A−5
6−(ジメチルアミノ)−3,3−ビス[4−(ジメチルアミノ)フェニル]−1(3H)−イソベンゾフラノン(ロイコ色素):1重量部
ビスフェノールA(顕色剤):2重量部
4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ビスフェノールジラウレート(変色温度調整剤):24重量部
エポキシ樹脂(jER828:ジャパンエポキシレジン社製):6重量部
以上を加熱溶融後、95℃、pH4に調整したメチルビニルエーテル・無水マレイン酸共重樹脂(GANTREZAN−179:GAFCHEMICALS社)水溶液400重量部に投入し、過熱攪拌して油滴状に分散させた。次いでアミン系硬化剤(jER U:ジャパンエポキシレジン社製)3重量部を投入し、引き続き4時間反応させた。この分散液を濾過することによりマイクロカプセル顔料を得た。なお、でき上がったマイクロカプセル顔料の平均粒子径は0.6μmであった。
【0059】
(1−6)顕色粒子A−6
以下の方法で、着色剤液を調製した。
クリスタルバイオレットラクトン(ロイコ染料):1重量部
ヘキサフルオロビスフェノールA(顕色剤、融点約130℃、熱容量60J/g):1重量部
ベヘニルアルコール80(変色温度調整剤、融点60℃):8重量部
ドデシル硫酸ナトリウム(乳化剤、和光純薬工業社製):1重量部
イオン交換水:89重量部
以上を80℃で2時間加熱しホモジナイザーにより15000rpmで高速撹拌を行い、平均粒子径0.13μmの着色剤液を調整した。この着色剤液の全量に対し、80重量%のウレタン樹脂エマルジョン(WBR−2019、Tg45℃、固形分32wt%、大成ファインケミカル社製)、20重量%のα−メチルスチレンアクリル樹脂(ジョンクリル61J、固形分30.5wt%、BASF社製)を、それぞれ加え着色液を得、水分を蒸発させ、顕色粒子A−6を得た。
【0060】
(2)実施例及び比較例の組成及び製法
(2−1)実施例1
ハゼロウ(融点52℃):43重量%
ロジン:16重量%
タルク:17重量%
二酸化チタン:14重量%
顔料A−1:10重量%
上記配合組成物をニーダーで加熱混合、分散させた後に2本ロールで混練した後、60℃程度で加熱溶融させ、顔料A−1を加えて混合撹拌し、所定の型に流し込み、冷却、固化して、断面が一辺8.0mm×8.0mmの
図1(A)に示すような顕色時青色の熱変色固形描画材20を得た。
【0061】
(2−2)実施例2
ステアリン酸グリセリド(融点61℃):43重量%
ロジンエステル:16重量%
タルク:18重量%
二酸化チタン:12重量%
顔料A−2:11重量%
上記配合組成物をニーダーで加熱混合、分散させた後に2本ロールで混練し、この混練物を60℃を超えないように顔料A−2とともに更に混練しプランジャー型押出機にて押出成形して、直径8.0mmの
図1(B)に示すような顕色時青色の熱変色固形描画材20を得た。
【0062】
(2−3)実施例3
ウルシロウ(融点52℃):15重量%
ロジンエステル:6重量%
フィッシャー・トロプシュワックス(融点110℃):21重量%
モンタンワックス:12重量%
低密度ポリエチレン(住友化学):15重量%
カオリン:6重量%
顔料A−3:25重量%
上記配合組成物をニーダーで加熱混合、分散させた後に2本ロールで混練し、この混練物を60℃を超えないように顔料A−3とともに更に混練し射出機にて射出成形し、直径8.0mmの
図1(B)に示すような顕色時青色の熱変色固形描画材20を得た。
【0063】
(2−4)実施例4
ウルシロウ(融点52℃):22重量%
ロジン:9重量%
パラフィンワックス135F(日本精蝋):23重量%
マイクロクリスタリンワックス(日本精蝋):5重量%
エチレン−酢酸ビニル共重合体:13重量%
(酢酸ビニル含有量:28重量%、メルトフローレート:15g/分)
タルク:8重量%
二酸化チタン:10重量%
顔料A−4:10重量%
上記配合組成物をニーダーで加熱混合、分散させた後に2本ロールで混練し、この混練物を60℃を超えないように顔料A−4とともに更に混練し射出機にて射出成形し、直径8.0mmの
図1(B)に示すような顕色時青色の熱変色固形描画材20を得た。
【0064】
(2−5)実施例5
ハゼロウ(融点52℃):34重量%
ロジンエステル:12重量%
パラフィンワックス155F(日本精蝋):15重量%
低密度ポリエチレン(住友化学):5重量%
エチレン−酢酸ビニル共重合体:3重量%
(酢酸ビニル含有量:28重量%、メルトフローレート:40g/分)
炭酸カルシウム:6重量%
二酸化チタン:15重量%
顔料A−5:10重量%
上記配合組成物をニーダーで加熱混合、分散させた後に2本ロールで混練し、この混練物を60℃を超えないように顔料A−5とともに更に混練し射出機にて射出成形し、直径8.0mmの
図1(B)に示すような顕色時青色の熱変色固形描画材20を得た。
【0065】
(2−6)実施例6
上記実施例1の顔料A−1を顕色粒子A−6に置き換えた配合組成物をニーダーで加熱混合、分散させた後に2本ロールで混練し、所定の型に流し込み、冷却、固化して、断面が一辺8.0mm×8.0mmの
図1(A)に示すような顕色時青色の熱変色固形描画材20を得た。
【0066】
(2−7)実施例7
ステアリン酸グリセリド(融点61℃):43重量%
ロジンエステル:16重量%
タルク:18重量%
二酸化チタン:12重量%
顔料A−1:11重量%
上記配合組成物をニーダーで加熱混合、分散させた後に2本ロールで混練し、この混練物を60℃を超えないように顔料A−1とともに更に混練しプランジャー型押出機にて押出成形して、
図1(B)に示すような直径7.0mm、長さ120mmのの熱変色固形描画材20を得た。これに、接着剤を含めた厚さ100μm、横138mm、縦120mmのポリプロピレン合成紙製の保護シート30を
図3に示すように5周巻き回し、
図2に示すような直径8.0mm、長さ120mmの熱変色固形描画材20を得た。
【0067】
(2−8)実施例8
上記実施例7の保護シート30を、接着剤を含めた厚さ100μm、横138mm、縦120mmの二軸延伸ポリプロピレン製の保護シート30に置き換えたこと以外は、上記実施例7と同様の製法で直径8.0mm、長さ120mmの熱変色固形描画材20を得た。
【0068】
(2−9)実施例9
上記実施例7の保護シート30を、接着剤を含めた厚さ100μm、横138mm、縦120mmのアート紙製の保護シート30に置き換えたこと以外は、上記実施例7と同様の製法で直径8.0mm、長さ120mmの熱変色固形描画材20を得た。
【0069】
(2−10)実施例10
ハゼロウ(融点52℃):43重量%
ロジン:16重量%
タルク:17重量%
二酸化チタン:14重量%
顔料A−2:10重量%
上記配合組成物をニーダーで加熱混合、分散させた後に2本ロールで混練し、この混練物を60℃を超えないように顔料A−1とともに更に混練しプランジャー型押出機にて押出成形して、
図1(B)に示すような直径7.0mm、長さ120mmの顕色時青色の熱変色固形描画材20を得た。これに、接着剤を含めた厚さ80μm、横141mm、縦120mmのポリ塩化ビニル製の保護シート30を6周巻き回し、
図2に示すような直径7.9mm、長さ120mmの熱変色固形描画材20を得た。
【0070】
(2−11)実施例11
上記実施例10の保護シート30を、接着剤を含めた厚さ80μm、横141mm、縦120mmのスチレン製の保護シート30に置き換えたこと以外は、上記実施例10と同様の製法で直径7.9mm、長さ120mmの熱変色固形描画材20を得た。
【0071】
(2−12)摩擦体40
JIS K 6253におけるデュロメータタイプAの硬度が75であるポリプロピレンを直径8.0mm、長さ120mmの、先端を先細とした棒状に成形して、
図5に示すような摩擦体40とした。この摩擦体40を、前記実施例1〜11の熱変色固形描画材20と組み合わせたものが、
図5に示す熱変色固形描画材セット10となる。なお、同じグレードの透明のポリプロピレンを、内径8.0mmの透明のキャップとして成形し、
図8に示すような摩擦体40とした。この摩擦体40を、前記実施例1〜6の熱変色固形描画材20と組み合わせたものが、
図8に示す熱変色固形描画材セット10となる。また、この摩擦体40を、前記実施例7〜11の熱変色固形描画材20と組み合わせたものが、
図9に示す熱変色固形描画材セット10となり、熱変色固形描画材20と異なる色相の保護シート30が巻かれている場合であっても、このキャップ上の摩擦体40を通して熱変色固形描画材20の色相が確認可能となっている。
【0072】
(2−13)実施例12
上記実施例7の保護シート30の外側面に、軸方向に沿った高さ2mmの突条として形成した、JIS K 6253におけるデュロメータタイプAの硬度が75のポリプロピレン製の摩擦体40を熱溶着したこと以外は、上記実施例7と同様の製法で直径8.0mm、長さ120mmの、
図7に示す熱変色固形描画材セット10を得た。
【0073】
(2−14)実施例13
上記実施例8の保護シート30の外側面に、軸方向に沿った突条高さ2mmの突条として形成した、JIS K 6253におけるデュロメータタイプAの硬度が75のポリプロピレン製の摩擦体40を熱溶着したこと以外は、上記実施例8と同様の製法で直径8.0mm、長さ120mmの、
図7に示す熱変色固形描画材セット10を得た。
【0074】
(2−15)実施例14
上記実施例7の保護シート30を、接着剤を含めた厚さ100μm、横138mm、縦120mmの、JIS K 6253におけるデュロメータタイプAの硬度が75のポリプロピレン製の摩擦体40による保護シート30に置き換えたこと以外は、上記実施例7と同様の製法で直径8.0mm、長さ120mmの、
図6に示す熱変色固形描画材セット10を得た。
【0075】
(2−16)比較例1
ハゼロウ(融点52℃): 40重量%
パラフィンワックス155F(日本精蝋):10重量%
ホワイトミネラルオイル:10重量%
タルク:16重量%
二酸化チタン:14重量%
顔料A−1:10重量%
上記配合組成物をニーダーで加熱混合、分散させた後に2本ロールで混練した後、60℃程度で加熱溶融させ、顔料A−1を加えて混合撹拌し、所定の型に流し込み、冷却、固化して、断面が一辺8.0mm×8.0mmの顕色時青色の固形描画材を得た。
【0076】
(2−17)比較例2
ハゼロウ(融点52℃):15重量%
パラフィンワックス135F(日本精蝋):10重量%
ロジン:16重量%
非晶性ポリα−オレフィン:0.5重量%
ホワイトミネラルオイル:10重量%
タルク:24.5重量%
二酸化チタン:14重量%
顔料A−1:10重量%
上記配合組成物をニーダーで加熱混合、分散させた後に2本ロールで混練した後、60℃程度で加熱溶融させ、顔料A−1を加えて混合撹拌し、所定の型に流し込み、冷却、固化して、断面が一辺8.0mm×8.0mmの顕色時青色の固形描画材を得た。
【0077】
(2−18)比較例3
ウルシロウ(融点52℃):15重量%
フィッシャー・トロプシュワックス(融点110℃):21重量%
モンタンワックス:12重量%
低密度ポリエチレン(住友化学):21重量%
カオリン:6重量%
二酸化チタン:15重量%
顔料A−1:10重量%
上記配合組成物をニーダーで加熱混合、分散させた後に2本ロールで混練し、この混練物を射出機にて射出成形し、直径8.0mmの顕色時青色の固形描画材を得た。
【0078】
(2−19)比較例4
ウルシロウ(融点52℃):22重量%
パラフィンワックス135F(日本精蝋):23重量%
マイクロクリスタリンワックス(日本精蝋):5重量%
エチレン−酢酸ビニル共重合体:22重量%
(酢酸ビニル含有量:28重量%、メルトフローレート:15g/分)
タルク:8重量%
二酸化チタン:10重量%
顔料A−1:10重量%
上記配合組成物をニーダーで加熱混合、分散させた後に2本ロールで混練し、この混練物を射出機にて射出成形し、直径8.0mmの顕色時青色の固形描画材を得た。
【0079】
(2−20)比較例5
ハゼロウ(融点52℃):34重量%
パラフィンワックス155F(日本精蝋):15重量%
低密度ポリエチレン(住友化学):15重量%
エチレン−酢酸ビニル共重合体:5重量%
(酢酸ビニル含有量:28重量%、メルトフローレート:40g/分)
炭酸カルシウム:6重量%
二酸化チタン:15重量%
顔料A−1:10重量%
上記配合組成物をニーダーで加熱混合、分散させた後に2本ロールで混練し、この混練物を射出機にて射出成形し、直径8.0mmの顕色時青色の固形描画材を得た。
【0080】
(2−21)参考例1(なお、「参考例」とは、使用している固形描画材は本発明に係るものであるが、保護シートの材質又は装着方法を実施例7〜14と対比して提示するためのものである。以下同様。)
上記実施例7の保護シート30を、接着剤を含めた厚さ100μm、横138mm、縦120mmの上質紙製の保護シートに置き換えたこと以外は、上記実施例7と同様の製法で直径8.0mm、長さ120mmの固形描画材を得た。
【0081】
(2−22)参考例2
上記実施例7と同様の配合組成物をニーダーで加熱混合、分散させた後に2本ロールで混練し、この混練物をプランジャー型押出機にて押出成形して、直径7.8mm、長さ120mmの顕色時青色の固形描画材を得た。これに、厚さ80μm、横28mm、縦120mmのポリプロピレン合成紙製の保護シートを1周巻き回し、合わせ部を接着剤で貼り合わせ、直径8.0mm、長さ120mmの固形描画材を得た。
【0082】
(2−23)参考例3
上記参考例2の保護シートを、厚さ80μm、横28mm、縦120mmのアート紙製の保護シートに置き換えたこと以外は、上記参考例2と同様の製法で直径8.0mm、長さ120mmの固形描画材を得た。
【0083】
(2−24)参考例4
上記実施例7と同様の固形描画材の外周面に接着剤を塗布し、外径8.0mm、内径7.1の木軸に装填し、直径8.0mm、長さ120mmの固形描画材を得た。
【0084】
(3)評価方法(実施例1〜6、比較例1〜5)
上記実施例1〜6及び比較例1〜5の固形描画材について、強度、紙、PETフィルム、ガラス、ホワイトボードに描画する際の着色性及び消去性について、評価、確認した。
【0085】
(3−1)強度
各固形描画材について、23℃の温度下、支点間40mmで3点曲げ強度測定し、折損した際の荷重(単位:N)を求めた。
【0086】
(3−2)コピー紙着色性
それぞれの固形描画材を氷点下の冷凍庫に24時間おいて確実に顕色させた後、実施例1並びに比較例1及び2に係る固形描画材はカッターナイフで先端を切削して尖らせた。実施例2〜5及び比較例3〜5に係る固形描画材は小型ミニシャープナーで先端を切削して尖らせた。これらのそれぞれを用いて、コピー用紙に描画し、その時の着色性をA”〜Cの5段階で評価した。評価基準は以下の通りとした。
A″:描線が濃すぎ、下地の文様や文字が全く見えなかった。
A′:描線が濃すぎ、下地の文様や文字が見えにくかった。
A:描線が濃く、はっきり見えるが、下地の文様や文字もよく判別できる程度であった。
B:描線が薄すぎてマーキングが見え辛かったが、下地の文様や文字もよく判別できる程度であった。
C:描線が薄すぎてマーキングが見え辛く、マーキングの有無が分からない。
【0087】
(3−3)非吸収面着色性
それぞれの固形描画材を上記(3−2)と同様にして尖らせた。これらのそれぞれを用いて、PETフィルム、ガラス坂、ホワイトボード(WB)に描画し、その時の着色性をA〜Eの5段階で評価した。評価基準は以下の通りとした。
A:描線が濃く、はっきりと見える。
B:描線に乱れが見られるが、普通に見える。
C:描線は掠れており、見辛い。
D:描線はかなり掠れており、注意しないと見えない。
E:描線はほとんど見えない、もしくは描けない。
【0088】
(3−4)擦過による消去性
上記(3−3)でPETフィルム、ガラス坂、ホワイトボードに描いた描線をティッシュペーパーで擦り取り、前記(2−10)で言及した摩擦体40(
図5参照)で物理的に擦り落とし、その時の消去性をA〜Eの5段階で評価した。評価基準は下記の通りとした。
A:良く消えて全く跡が残らない。
B:消えるが少し跡が残る。
C:描線の形が消えずに残る。
D:ほとんど消えない。
E:全く消えない(ただし、上記(3−2)の評価がD又はEであった場合はこの評価とした)。
【0089】
(3−5)加熱による消色性
上記(3−2)でコピー用紙に描いた描線を70℃まで加熱し、その時の消色性をA〜Eの5段階で評価した。評価基準は下記の通りとした。
A:有彩色(青色)が良く消えて全く跡が見えない。
B:有彩色(青色)が消えるが僅かに跡が残る。
C:有彩色(青色)が消えるが跡が残る。
D:有彩色(青色)が僅かに消えるが、ほとんど跡が残っている。
E:有彩色(青色)が全く消えない。(ただし、上記(2−2)の評価がD又はEであった場合はこの評価とした)。
【0090】
(3−6)摩擦体40による消色性
上記(3−2)でコピー用紙に描いた描線をJIS K 6253におけるデュロメータタイプAの硬度が75であり、
図5に示すような棒状のポリプロピレン製摩擦体40で擦過加熱し、その時の消色性をA〜Eの5段階で評価した。評価基準は下記の通りとした。
A:有彩色(青色)が良く消えて全く跡が見えない。
B:有彩色(青色)が消えるが僅かに跡が残る。
C:有彩色(青色)が消えるが跡が残る。
D:有彩色(青色)が僅かに消えるが、ほとんど跡が残っている。
E:有彩色(青色)が全く消えない。(ただし、上記(3−2)の評価がD又はEであった場合はこの評価とした)。
【0091】
(3−7)複写機を介した消去性
上記(3−2)でコピー用紙に描いた描線の上に光透過率50%のPETフィルムを被せ、RICOH社製 imagio MP C6001の白黒コピーの標準状態でコピーを行い、その時の消去性をA〜Eの5段階で評価した。評価基準は下記の通りとした。
A:下地の文字は完全に消え全く判別できなかった。
B:下地の文字は一部見えるが判別できなかった。
C:下地の文字は薄く見え注意深い観察により判別可能である。
D:下地の文字はやや薄く見え普通に判別できる。
E:下地の文字は普通に見え問題なく判別できる。
【0092】
(3−8)評価結果
上記実施例1〜6及び比較例1〜5を用いた上記各評価方法についての評価結果を、下記表1及び表2に示す。
【0093】
【表1】
【0094】
【表2】
【0095】
上記の通り、本発明の実施例1〜6に係る熱変色固形描画材20はいずれも良好な結果を示した。すなわち、強度については、実施例1〜6はいずれも実用に十分な数値を示した。また、いずれの描画対象物についても、着色性及び消去性ともにA評価を得た。ただし、ホワイトボードに描いた場合の消去性は、市販のホワイトボード専用マーカーの消去性よりやや劣るためB判定となった。実施例6については、コピー紙上での摩擦具による消去性が、やや劣るB評価となった。これはワックス類の溶融によって紙繊維の隙間に色材が入り込み、色相が残ったものと考えられる。
【0096】
これに対し、本発明の範囲外である比較例1〜5の試験結果は、コピー紙への着色性の評価以外はいずれも評価が劣るという結果となった。
まず、比較例1はハゼロウのみでロジン等の樹脂成分が配合されていないとともにオイル量が多かったため、描画時に先端が折れやすかった。また、軟らかいわりに平滑面に対して滑ってしまい、濃く描画できない結果となった。
比較例2は、オイル量が多いため、描画時に先端が折れやすかった。また、平滑面に描いた描線を擦って消す際、描線を引き伸ばして消えにくかった。
比較例3〜5は強度も強く、紙に描画する場合はほとんど問題なかったが、平滑面に描画する場合、滑って描画ができない、という結果となった。また、固形描画材の調整に際し、その温度に配慮をしなかったため、熱変色をしなくなり、調整時既に発色が見られなくなっていた。
【0097】
(4)評価方法(実施例7〜13、参考例1〜4)
上記実施例7〜14及び参考例1〜4の固形描画材について、強度及び鉛筆削り器による切削性について評価した。
【0098】
(4−1)強度
各固形描画材について、23℃又は40℃の温度下、支点間60mmで3点曲げ強度測定し、折損した際の荷重(単位:N)を求めた。
【0099】
(4−2)鉛筆削り器による切削性
モニター5名に、三菱鉛筆製ミニ鉛筆削り器(商品名:ポケットシャープナーDPS−101 PLT)を用いて常温・常湿(23℃、50%)の環境下及び高温・高湿(35℃、80%)の環境下にて先端が尖るように(
図4参照)切削させたうえで、その切削性を下記の1〜5点の5段階で官能評価させ、その平均点を求めた。
1:著しく悪い。
2:悪い。
3:良くも悪くもない。
4:良い。
5:著しく良い。
【0100】
(4−3)評価結果
各実施例及び比較例を用いた上記評価方法についての評価結果を、下記表2に示す。
【0101】
【表3】
【0102】
上記の通り、本発明の実施例7〜実施例14に係る熱変色固形描画材はいずれの評価方法も良好な結果を示した。すなわち、
図5に示す摩擦体40と組み合わせて熱変色固形描画材セット10とされる実施例7〜11に係る熱変色固形描画材20についても、また、それ自体で熱変色固形描画材セット10を構成する実施例12〜14についても、それ自体の強度は、23℃及び40℃の両方の温度条件を通じて、少なくとも50N以上の値を示した。また、切削性についても、常温・常湿及び高温・高湿の両方の測定条件を通じて、いずれの実施例でも平均にして4点を上回る高評価であった。また、切削の際、保護シート30が剥れたり破れたりすることもなかった。
【0103】
これに対し、参考例1〜4の試験結果においては、各々少なくとも1個の項目において評価結果が劣ることとなった。
参考例1で保護シートとして使用した上質紙は、堅く吸湿しやすいため、これを巻き回した参考例1では、固形描画材を同じくする実施例1に比べ、明らかに切削性が劣ることとなった。特に高温・高湿の条件下では、保護シートが破れるという結果となった。
参考例2及び3は、保護シートの巻き回しが1周のため弱くて折れやすく、固形描画具としては強度不足であった。また、保護シートの接着材は重ね合わせる部位のみに塗布されていたため、保護シートが固形描画材から剥れやすかった。このことによって、固形描画材を同じくする実施例6に比べ、明らかに切削性が劣ることとなった。
参考例4は、同じ固形描画材を使用した実施例6よりも木軸を備える分だけ堅牢で強度は強かった。しかし、木軸の厚さが0.1mmと薄かったため、固形描画材との接着強度が弱く、特に高湿条件下では軸が割れてしまい、実施例6に比べ切削性の評価が著しく低下することとなった。
【0104】
ところで、上記実験(3−4)において使用した、JIS K 6253におけるデュロメータタイプAの硬度が75の棒状のポリプロピレン製摩擦体40の、描線を削り落として汚染された部分を、上記実験(4−2)と同じ条件で切削し、作業の安全性を評価したところ、安全に切削することができた。硬度65、硬度95の摩擦体40についても同様に評価したが、物理的及び化学的な消去性は良好で、安全に切削することができた。硬度95を超える場合にはポケットシャープナーでは切削が難しく、カッターナイフにより切削が可能であった。また、硬度45の摩擦体40では、物理的及び化学的な消去性は問題ないが、ポケットシャープナーによる切削では刃が入り過ぎる等の原因により上手く切削することができず、カッターナイフ等の切削においても軟らか過ぎて危険であった。