特許第5940954号(P5940954)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5940954ジョイント、ジョイントの製造方法及びバルブタイミング可変装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5940954
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月29日
(54)【発明の名称】ジョイント、ジョイントの製造方法及びバルブタイミング可変装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 1/02 20060101AFI20160616BHJP
   F01L 1/34 20060101ALI20160616BHJP
   F16D 1/06 20060101ALI20160616BHJP
【FI】
   F16D1/02 N
   F01L1/34 Z
   F16D1/06 S
【請求項の数】14
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2012-230809(P2012-230809)
(22)【出願日】2012年10月18日
(65)【公開番号】特開2014-81052(P2014-81052A)
(43)【公開日】2014年5月8日
【審査請求日】2015年4月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000101352
【氏名又は名称】アスモ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】角田 晃
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 博之
(72)【発明者】
【氏名】神田 剛志
【審査官】 北中 忠
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−511801(JP,A)
【文献】 特開2009−036104(JP,A)
【文献】 特開2009−114921(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 1/00− 9/00
F01L 1/34− 1/356、9/00− 9/04、
13/00−13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの出力軸と被回転体とを連結するジョイントであって、
径方向にピン孔を有する前記出力軸を内側に収容し、その軸方向に延びるとともに径方向に貫通する軸支孔が形成される筒状壁を有す筒状の筒体と、
記筒体の筒状壁から径方向外側に突出させた周方向に対向した一対の径方向突出壁と、
前記一対の径方向突出壁の同一側の軸方向先端部間を周方向に繋げる平坦壁と
を備え、
前記出力軸に形成したピン孔に圧入されたピンを前記筒状壁に形成した軸支孔に回転可能に嵌入して前記出力軸と結合するとともに、前記径方向突出壁と前記平坦壁とで構成される断面コ字状のアーム部を、前記被回転体に設けた係合溝に軸線方向から嵌合し前記アーム部と前記係合溝を周方向に係合させて、前記出力軸と前記被回転体を連結することを特徴とするジョイント。
【請求項2】
請求項1に記載のジョイントにおいて、
前記筒状壁を有す筒状の筒体は、有底筒状の筒体であって、その底壁が前記一対の径方向突出壁の同一側の軸方向先端部間を周方向に繋げる前記平坦壁と連なっていることを特徴とするジョイント。
【請求項3】
請求項2に記載のジョイントにおいて、
前記底壁の軸方向視面積は、回転軸中心と径方向突出壁周方向中心を通る直線に対し、周方向で異なること特徴とするジョイント。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載のジョイントにおいて、
前記一対の径方向突出壁の軸方向先端部間を繋げた平坦壁は、前記筒状壁側に傾斜するように形成したことを特徴とするジョイント。
【請求項5】
請求項2〜4いずれか1つに記載のジョイントにおいて、
前記底壁の中央位置に、前記出力軸を貫通する貫通孔を形成したことを特徴とするジョイント。
【請求項6】
請求項5に記載のジョイントにおいて、
前記底壁に形成した貫通孔の内径は、前記筒体の筒状壁の内径以下に形成したことを特徴とするジョイント。
【請求項7】
請求項5に記載のジョイントにおいて、
前記底壁に形成した貫通孔は、楕円の貫通孔であって、その楕円形状の貫通孔の長軸が前記筒状壁に形成した軸支孔の中心軸線が軸線方向から見て一致するように形成したことを特徴とするジョイント。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1つに記載のジョイントにおいて、
前記筒体の筒状壁から径方向外側に突出させた一対の径方向突出壁は、2組設けられ、その2組の一対の径方向突出壁は相対向する位置に形成したことを特徴とするジョイント。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1つに記載のジョイントにおいて、
前記筒体は、円筒体であって、その円筒体が有した円筒状の筒状壁の相対向する2位置で切り欠いて、前記円筒状の筒状壁を第1円筒状壁部と第2円筒状壁部とに区分し、その切り欠いた2位置において、相対向する第1円筒状壁部と第2円筒状壁部の端部から径方向外側に向かって、一対の径方向突出壁をそれぞれ延出形成したことを特徴とするジョイント。
【請求項10】
請求項9に記載のジョイントにおいて、
前記第1円筒状壁部は、第1円筒状壁部の円弧の中間に、接線方向に延びる第1延長壁部を形成し、
前記第2円筒状壁部は、第2円筒状壁部の円弧の中間に、接線方向に延びる第2延長壁部を形成し、
前記第1円筒状壁部の第1延長壁部にて分離された2つの円弧部分であって前記軸支孔が形成された側の円弧部分と、前記第2円筒状壁部の第2延長壁部にて分離された2つの円弧部分であって前記軸支孔が形成された側の円弧部分とが、同一円上に配置されるように、前記第1円筒状壁部と第2円筒状壁部を前記同一円の中心に点対称に配置形成するとともに、前記相対向する第1円筒状壁部と第2円筒状壁部の端部から径方向外側に向かってそれぞれ延出形成した一対の径方向突出壁を同じく前記同一円の中心に点対称に配置して形成したことを特徴とするジョイント。
【請求項11】
請求項10に記載のジョイントにおいて、
点対称に配置された前記第1円筒状壁部と前記第2円筒状壁部を有する前記筒体の底壁は、前記同一円の中心を中心軸とする貫通孔が形成され、その貫通孔の内径は、前記第1円筒状壁部と第2円筒状壁部の前記軸支孔が形成された側の円弧部分の内径と同一となるように形成したことを特徴とするジョイント。
【請求項12】
モータの出力軸と被回転体とを連結するジョイントの製造方法であって、
径方向にピン孔を有する前記出力軸を内側に収容し、その軸方向に延びるとともに径方向に貫通する軸支孔が形成される筒状壁を有す筒状の筒体と、
前記筒体の筒状壁から径方向外側に突出させた周方向に対向した一対の径方向突出壁と、
前記一対の径方向突出壁の同一側の軸方向先端部間を周方向に繋げる平坦壁と
を備え、
前記出力軸に形成したピン孔に圧入されたピンを前記筒状壁に形成した軸支孔に回転可能に嵌入して前記出力軸と結合するとともに、前記径方向突出壁と前記平坦壁とで構成される断面コ字状のアーム部を、前記被回転体に設けた係合溝に軸線方向から嵌合し前記アーム部と前記係合溝を周方向に係合させて、前記出力軸と前記被回転体を連結するジョイントの製造方法において、
1枚の金属板を打ち抜き、折り曲げ及び絞り加工にて製造したことを特徴とするジョイントの製造方法
【請求項13】
モータの出力軸からの制御トルクを位相調整機構に伝達してクランク軸とカム軸の相対位相を調整し、内燃機関の吸気バルブまたは排気バルブの開閉タイミングを決めるバルブタイミング可変装置であって、
前記位相調整機構に設けた筒状のジョイント受け部の内側に前記出力軸を収容し、前記出力軸と前記ジョイント受け部とを、請求項1〜1のいずれか1つに記載のジョイントにて連結したことを特徴とするバルブタイミング可変装置。
【請求項14】
請求項13に記載のバルブタイミング可変装置において、
回転中心と径方向突出壁周方向中心を通る直線で分離される前記ジョイントの底壁の軸方向視面積が、前記相対位相の最進角と最遅角位相の出現頻度が多くなる位相におけるアーム部と係合溝が周方向に当接する側と反対側において大きくなるように形成したことを特徴とするバルブタイミング可変装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジョイント、ジョイントの製造方法及びバルブタイミング可変装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、内燃機関の吸気バルブまたは排気バルブの開閉タイミングを決めるクランク軸とカム軸の相対位相を調整するバルブタイミング可変装置に電動モータを用いたものが提案されている(例えば、特許文献1)。特許文献1では、電動モータの回転トルクを位相調整機構に伝達する手段としてジョイント(継手)が用いられている。
【0003】
この種のジョイントは、一方の連結部を電動モータの回転軸とピンで連結し、他方の連結部を被回転体(位相調整機構に設けた遊星キャリア)に設けたジョイント受け部(入力部)の収容凹部に形成した係合溝に嵌合する。これによって、電動モータの回転トルクは、ジョイントを介して被回転体に伝達される。
【0004】
また、ジョイントには、収容凹部内に回転軸を配置する際、被回転体に設けたジョイント受け部の収容凹部と、ジョイントを連結した回転軸の軸ずれ量を許容するために、ジョイントの中央部に回転軸を貫挿させる貫通孔を形成したジョイントが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−13975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、この種のジョイントは、金属の焼結加工及び鍛造加工により製作される塊構造のものであった。そのため、製作に工数がかかり、大きな加工荷重をかけて加工する必要から設備が大型化する問題があった。しかも、ピンと嵌合する横穴加工についても、構造上、肉厚のある横壁に切削加工又は加工荷重の大きな抜き加工が必要となり、製作に非常に時間と労力を必要としていた。
【0007】
また、ジョイントは、肉厚が大きく塊構造であることから、質量が大きくなり慣性モーメントが大きくなる。この慣性モーメントは、大きくなると電動モータの回転トルク制御を高精度に行う上で障害となったり、前記他方の連結部と係合溝との間で発生する騒音が大きくなるといった問題があった。
【0008】
さらに、軸ずれ量を許容するために中央部に貫通孔を形成したジョイントは、肉厚が大きく塊構造であることから、貫通孔を形成するのに時間と労力を要する。しかも、貫通孔は、その製造方法と材料強度と外周径から規制され、設定の自由度が狭くなっていた。
【0009】
本発明は、上記課題を解消するためになされたものであって、その目的は滑らかな回転トルクの伝達及び確実な組み付け性を確保しつつ、製作が容易で、慣性モーメントが小さいジョイント、ジョイントの製造方法及びバルブタイミング可変装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、モータの出力軸と被回転体とを連結するジョイントであって、径方向にピン孔を有する前記出力軸を内側に収容し、その軸方向に延びるとともに径方向に貫通する軸支孔が形成される筒状壁を有す筒状の筒体と、前記筒体の筒状壁から径方向外側に突出させた周方向に対向した一対の径方向突出壁と、前記一対の径方向突出壁の同一側の軸方向先端部間を周方向に繋げる平坦壁とを備え、前記出力軸に形成したピン孔に圧入されたピンを前記筒状壁に形成した軸支孔に回転可能に嵌入して前記出力軸と結合するとともに、前記径方向突出壁と前記平坦壁で構成される断面コ字状のアーム部を、前記被回転体に設けた係合溝に軸線方向から嵌合し前記アーム部と前記係合溝を周方向に係合させて、前記出力軸と前記被回転体を連結する。
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、被回転体の係合溝に係合するアーム部は一対の径方向突出壁部間を平坦壁で繋げて断面コ字状に形成されることで、軽量化が図れるとともに、その結果として、慣性モーメントを低減することができる。しかも、アーム部を構成する平坦壁が周方向に延びるので、一対の径方向突出壁に加わる周方向の力に対する耐ねじりトルク性を高いものとすることができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のジョイントにおいて、前記筒状壁を有す筒状の筒体は、有底筒状の筒体であって、その底壁が前記一対の径方向突出壁の同一側の軸方向先端部間を周方向に繋げる前記平坦壁と連なっている。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、底壁の存在により、ジョイントの強度を向上させることができる。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のジョイントにおいて、前記底壁の軸方向視面積は、回転軸中心と径方向突出壁周方向中心を通る直線に対し、周方向で異なる。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、底壁の軸方向視面積が大きくなる方向側への耐ねじり性を高めることができる。従って、回転軸が時計回り方向に回転する際に耐ねじれ性が要求されるジョイントの場合は、底壁の軸方向視面積を時計回り側を大きくすれば、ジョイントの強度を向上させることができる。反対に、回転軸が反時計回り方向に回転する際に耐ねじれ性が要求されるジョイントの場合は、底壁の軸方向視面積を時計回り側を大きくすれば、ジョイントの強度を向上させることができる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1つに記載のジョイントにおいて、前記一対の径方向突出壁の軸方向先端部間を繋げた平坦壁は、前記円筒状壁側に傾斜するように形成した。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、一対の径方向突出壁に加わる周方向の力に対する耐ねじりトルク性をより高いものとすることができる。
請求項5に記載の発明は、請求項2〜4のいずれか1つに記載のジョイントにおいて、前記底壁の中央位置に、前記出力軸を貫通する貫通孔を形成した。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、軸支孔とピンとの摺動部分に潤滑オイルを貫通孔から導入することができる。
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のジョイントにおいて、前記底壁に形成した貫通孔の内径は、前記筒体の筒状壁の内径以下に形成した。
【0018】
請求項6に記載の発明によれば、軸支孔とピンとの摺動部分に潤滑オイルを貫通孔から導入することができる。また、貫通孔の内径を筒体の筒状壁の内径より小さくし貫通孔の外周部に底壁による残部を形成することにより、打ち抜きによる貫通孔の形成が容易となる。
【0019】
請求項7に記載の発明は、請求項5に記載のジョイントにおいて、前記底壁に形成した貫通孔は、楕円の貫通孔であって、その楕円形状の貫通孔の長軸が前記筒状壁に形成した軸支孔の中心軸線が軸線方向から見て一致するように形成した。
【0020】
請求項7に記載の発明によれば、ジョイントを回転軸に組み付けるとき、回転軸のピン孔と筒状壁に形成した軸支孔との位置決め調整が容易となる。
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか1つに記載のジョイントにおいて、前記筒体の筒状壁から径方向外側に突出させた一対の径方向突出壁は、2組設けられ、その2組の一対の径方向突出壁は相対向する位置に形成した。
【0021】
請求項8に記載の発明によれば、一対の径方向突出壁と平坦部とで構成される断面コ字状のアーム部が2つ形成され、その2つのアーム部にて被回転体の係合溝と係合するため、周方向の力に対する耐ねじりトルク性をより高いものとすることができる。
【0022】
請求項9に記載の発明は、請求項1〜8のいずれか1つに記載のジョイントにおいて、前記筒体は、円筒体であって、その円筒体が有した円筒状の筒状壁の相対向する2位置で切り欠いて、前記円筒状の筒状壁を第1円筒状壁部と第2円筒状壁部とに区分し、その切り欠いた2位置において、相対向する第1円筒状壁部と第2円筒状壁部の端部から径方向外側に向かって、一対の径方向突出壁をそれぞれ延出形成した。
【0023】
請求項9に記載の発明によれば、一対の径方向突出壁と平坦部とで構成される断面コ字状のアーム部が2つ形成され、その2つのアーム部にて被回転体の係合溝と係合するため、周方向の力に対する耐ねじりトルク性をより高いものとすることができる。
【0024】
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載のジョイントにおいて、前記第1円筒状壁部は、第1円筒状壁部の円弧の中間に、接線方向に延びる第1延長壁部を形成し、前記第2円筒状壁部は、第2円筒状壁部の円弧の中間に、接線方向に延びる第2延長壁部を形成し、前記第1円筒状壁部の第1延長壁部にて分離された2つの円弧部分であって前記軸支孔が形成された側の円弧部分と、前記第2円筒状壁部の第2延長壁部にて分離された2つの円弧部分であって前記軸支孔が形成された側の円弧部分とが、同一円上に配置されるように、前記第1円筒状壁部と第2円筒状壁部を前記同一円の中心に点対称に配置形成するとともに、前記相対向する第1円筒状壁部と第2円筒状壁部の端部から径方向外側に向かってそれぞれ延出形成した一対の径方向突出壁を同じく前記同一円の中心に点対称に配置して形成した。
【0025】
請求項10に記載の発明によれば、一対の径方向突出壁と平坦部とで構成される断面コ字状のアーム部が2つ形成され、その2つのアーム部にて被回転体の係合溝と係合するため、周方向の力に対する耐ねじりトルク性をより高いものとすることができる。また、前記底壁の軸方向視面積は回転軸中心と径方向突出壁周方向中心を通る直線に対し周方向左右で異なることから、使用環境に応じた選択が可能となる。
【0026】
請求項11に記載の発明は、請求項10に記載のジョイントにおいて、点対称に配置された前記第1円筒状壁部と前記第2円筒状壁部を有する前記筒体の底壁は、前記同一円の中心を中心軸とする貫通孔が形成され、その貫通孔の内径は、前記第1円筒状壁部と第2円筒状壁部の前記軸支孔が形成された側の円弧部分の内径と同一となるように形成した。
【0027】
請求項11に記載の発明によれば、軸支孔とピンとの摺動部分に潤滑オイルを貫通孔から導入することができる。また、底壁に残部を残して打ち抜きができ貫通孔の形成が容易となる。
【0028】
請求項12に記載の発明は、モータの出力軸と被回転体とを連結するジョイントの製造方法であって、径方向にピン孔を有する前記出力軸を内側に収容し、その軸方向に延びるとともに径方向に貫通する軸支孔が形成される筒状壁を有す筒状の筒体と、前記筒体の筒状壁から径方向外側に突出させた周方向に対向した一対の径方向突出壁と、前記一対の径方向突出壁の同一側の軸方向先端部間を周方向に繋げる平坦壁とを備え、前記出力軸に形成したピン孔に圧入されたピンを前記筒状壁に形成した軸支孔に回転可能に嵌入して前記出力軸と結合するとともに、前記径方向突出壁と前記平坦壁で構成される断面コ字状のアーム部を、前記被回転体に設けた係合溝に軸線方向から嵌合し前記アーム部と前記係合溝を周方向に係合させて、前記出力軸と前記被回転体を連結するジョイントの製造方法において、1枚の金属板を打ち抜き、折り曲げ及び絞り加工にて製造した。
請求項12に記載の発明によれば、被回転体の係合溝に係合するアーム部は一対の径方向突出壁部間を平坦壁で繋げて断面コ字状に形成されることで、軽量化が図れるとともに、その結果として、慣性モーメントを低減することができる。しかも、アーム部を構成する平坦壁が周方向に延びるので、一対の径方向突出壁に加わる周方向の力に対する耐ねじりトルク性を高いものとすることができる。また、ジョイントを安価で短時間で製造することができる。
【0029】
請求項13に記載の発明は、モータの出力軸からの制御トルクを位相調整機構に伝達してクランク軸とカム軸の相対位相を調整し、内燃機関の吸気バルブまたは排気バルブの開閉タイミングを決めるバルブタイミング可変装置であって、前記位相調整機構に設けた筒状のジョイント受け部の内側に前記出力軸を収容し、前記出力軸と前記ジョイント受け部とを、請求項1〜1のいずれか1つに記載のジョイントにて連結した。
【0030】
請求項13に記載の発明によれば、軽量で慣性モーメントの小さいジョイントを使用することで、モータの回転制御の応答性が上り、クランク軸とカム軸の相対位相をより高精度に制御することができる。
【0031】
請求項14に記載の発明は、請求項13に記載のバルブタイミング可変装置において、回転中心と径方向突出壁周方向中心を通る直線で分離される前記ジョイントの底壁の軸方向視面積が、前記相対位相の最進角と最遅角位相の出現頻度が多くなる位相におけるアーム部と係合溝が周方向に当接する側の反対側において大きくなるように形成した。
【0032】
請求項14に記載の発明によれば、出現頻度の多い回転方向に対してジョイントの強度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、製作が容易で、慣性モーメントが小さいジョイントを実現することできる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】第1実施形態の回転軸、ジョイント、被回転体の連結状態を示す径方向から見た要部断面図。
図2】同じく、回転軸、ジョイント、被回転体の連結状態を示す軸線方向から見た要部断面図。
図3】同じく、ジョイントを軸線方向から見た図。
図4】同じく、ジョイントを径方向から見た図。
図5】同じく、被回転体のジョイント受け部を軸方向から見た図。
図6】同じく、(a)(b)は回転軸に対する被回転体の相対移動を説明する図。
図7】同じく、回転軸とジョイントの組付けを説明するための断面図。
図8】第2実施形態のジョイントを説明する図であって、(a)はジョイントを軸線方向から見た図、(b)はジョイントと回転軸の結合状態を軸線方向から見た断面図、(c)は回転軸とジョイントの組付けを説明するための断面図。
図9】別例を示す図であって、(a)は回転軸、ジョイント、被回転体の連結状態を示す径方向から見た要部断面図、(b)はジョイントを軸線方向から見た図、(c)は回転軸とジョイントの組付けを説明するための断面図。
図10】別例を示す図であって、(a)はジョイントを軸線方向から見た図、(b)はジョイントと回転軸の結合状態を軸線方向から見た断面図、(c)は回転軸とジョイントの組付けを説明するための断面図。
図11】別例を示す図であって、(a)はジョイントを軸線方向から見た図、(b)はジョイントと回転軸の結合状態を軸線方向から見た断面図、(c)は回転軸とジョイントの組付けを説明するための断面図。
図12】別例を示す図であって、(a)はジョイントを軸線方向から見た図、(b)はジョイントと回転軸の結合状態を軸線方向から見た断面図。
図13】第3実施形態を説明するバルブタイミング可変装置に断面図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化したジョイントの第1実施形態を図面に従って説明する。
図1において、回転軸1はジョイント2を介して被回転体3と駆動連結されている。回転軸1は、モータ10の出力軸であって、ジョイント2を介して被回転体3を回転させるようになっている。図2に示すように、回転軸1には、ピン孔11が貫通形成されている。ピン孔11は、回転軸1の中心軸線L1に対して同ピン孔11の中心軸線L2が直交するように形成されている。ピン孔11には、ジョイント2を回動可能に連結するピン12が貫通固着されている。
【0036】
図3及び図4に示すように、ジョイント2は、回転軸1を内側に収容する有底筒状の円筒体20を有している。円筒体20は、底壁21の外周からモータ10側に向かって、回転軸1を内側に収容する円筒状壁22が延出形成されている。
【0037】
円筒状壁22は、180度相対向する2位置において底壁21に向かって切り欠かき形成されている。ここで、説明の便宜上、この切り欠かきよって、周方向において2分された円筒状壁22について、一方を第1円筒状壁部22aといい、他方を第2円筒状壁部22bと呼ぶ。
【0038】
図3に示すように、第1円筒状壁部22aの周方向の両端部は、それぞれ径方向外側に向かって第1及び第2突出壁23a,23bが延出形成されている。同じく、第2円筒状壁部22bの周方向の両端部は、それぞれ径方向外側に向かって第1及び第2突出壁24a,24bが延出形成されている。
【0039】
第1円筒状壁部22aの第1突出壁23aと第2円筒状壁部22bの第1突出壁24aは、互いに平行となるように径方向外側に向かって延出形成され、その一対の第1突出壁23a,24a間の中間位置を通る直線は円筒体20の中心軸線L3と直交するようになっている。また、一対の第1突出壁23a,24aの軸方向反モータ10側の端部間は、底壁21から延びる第1平坦壁25aにて一体的に繋がっている。
【0040】
同様に、第1円筒状壁部22aの第2突出壁23bと第2円筒状壁部22bの第2突出壁24bは、互いに平行となるように径方向外側に向かって延出形成され、その一対の第2突出壁23b,24b間の中間位置を通る直線は円筒体20の中心軸線L3と直交するようになっている。また、一対の第2突出壁23b,24bの軸方向反モータ10側の端部間は、底壁21から延びる第2平坦壁25bにて一体的に繋がっている。
【0041】
図1及び図4に示すように、第1及び第2平坦壁25a,25bは、モータ10側に傾斜するように屈曲形成されている。
図2及び図3に示すように、第1円筒状壁部22aの第1突出壁23a寄りの壁面と、第2円筒状壁部22bの第2突出壁24b寄りの壁面には、それぞれ内径が同じ第1及び第2軸支孔26a,26bが貫通形成されている。第1軸支孔26aの中心軸線L4と第2軸支孔26bの中心軸線L5は、同一軸線上にあるとともに、円筒体20の中心軸線L3と直交する。そして、第1及び第2軸支孔26a,26bは、回転軸1に形成したピン孔11に貫通固着したピン12の両端部がそれぞれ貫挿される。
【0042】
ここで、第1及び第2軸支孔26a,26bの内径は、回転軸1に形成したピン孔11の内径がピン12を圧入して貫挿する内径であるのに対し、ピン12に対して円筒状壁22が回転可能に軸支される内径である。従って、各中心軸線L2,L4,L5が一直線上に並んだピン孔11、第1及び第2軸支孔26a,26bに、ピン12を貫通させることによって、回転軸1と円筒体20(ジョイント2)は駆動連結される。
【0043】
つまり、ジョイント2は、回転軸1と一体回転するとともに、ピン12を回動中心として予め定めた範囲内で回動する。そして、ジョイント2の回転トルクは、被回転体3に伝達される。
【0044】
また、円筒体20の底壁21には、同円筒体20の中心軸線L3を中心とする円形の貫通孔27が形成されている。貫通孔27は、回転軸1とジョイント2をピン12で連結したとき、回転軸1の先端部が突出する。ここで、底壁21であって、貫通孔27と円筒状壁22の間の残った領域を残部21aと呼ぶ。
【0045】
図1に示すように、被回転体3は、ジョイント受け部31と被回転軸部32を有している。被回転体3は、その中心軸線L6を中心に回転可能に図示しない軸受けにて支持されている。また、被回転体3は、回転軸1に対して、通常、図1及び図2に示すようにその両中心軸線L1,L6が一直線上にくるように配置される。
【0046】
図5に示すように、被回転体3のジョイント受け部31は、回転軸1側が開口した有底円筒体であって、ジョイント2の円筒体20を収容する収容凹部33が形成されている。収容凹部33の内面には、180度相対向する2位置に、それぞれ同形状の断面コ字状の第1及び第2係合溝34a,34bが軸方向に沿って形成されている。
【0047】
第1係合溝34aの径方向に延びる相対向する2つ側面は平行であって、その間隔は第1平坦壁25aにて繋がった第1円筒状壁部22aの第1突出壁23aと第2円筒状壁部22bの第1突出壁24aを嵌合する間隔になっている。ここで、第1平坦壁25aで繋がった第1円筒状壁部22aの第1突出壁23aと第2円筒状壁部22bの第1突出壁24aの部分(部位)を第1アーム部28aと呼ぶ。
【0048】
同様に、第2係合溝34bの径方向に延びる相対向する2つ側面は平行であって、その間隔は第2平坦壁25bにて繋がった第1円筒状壁部22aの第2突出壁23bと第2円筒状壁部22bの第2突出壁24bを嵌合する間隔になっている。ここで、第2平坦壁25bで繋がった第1円筒状壁部22aの第2突出壁23bと第2円筒状壁部22bの第2突出壁24bの部分を第2アーム部28bと呼ぶ。
【0049】
また、第1及び第2係合溝34a,34bは、その径方向の深さが回転軸1と被回転体3がその両中心軸線L1,L6が一直線上に並んだ時、第1及び第2アーム部28a,28bの径方向の先端と第1及び第2係合溝34a,34bの底面との間に予め定めた間隔が開く深さに形成されている。従って、回転軸1は、図6(a)に示すように、被回転体3に対して、回転軸1の中心軸線L1が被回転体3の中心軸線L6と深さ分だけ平行にずれていても、被回転体3に配置させることができる。
【0050】
そして、ジョイント2の円筒体20をジョイント受け部31の収容凹部33に軸線方向から挿入すると、図1に示すように、第1アーム部28aが軸線方向に沿って第1係合溝34aに嵌合して行くとともに、第2アーム部28bが軸線方向に沿って第2係合溝34bに嵌合して行く。そして、第1アーム部28aは第1係合溝34aに、また、第2アーム部28bは第2係合溝34bに、それぞれ周方向に係合する。
【0051】
従って、第1及び第2アーム部28a,28bが第1及び第2係合溝34a,34bに係合することによって、モータ10の回転軸1の回転がジョイント2を介して被回転体3に伝達され、被回転体3は中心軸線L6を回転中心として回転する。
【0052】
尚、円筒体20の底壁21に形成した円形の貫通孔27の内径は、回転軸1に対して被回転体3が図6(a)(b)に示すように相対配置され、それに連動してジョイント2が回転軸1に対して相対移動しても貫通孔27の内面に回転軸1が当たらない大きさになっている。従って、回転軸1は、図6(b)に示すように、被回転体3に対して、回転軸1の中心軸線L1が被回転体3の中心軸線L6と所定の角度で交差していても、被回転体3に配置させることができる。
【0053】
次に、上記のように形成したジョイント2の作用について説明する。
今、回転軸1にピン12で連結したジョイント2について、ジョイント2に形成した第1及び第2アーム部28a,28bがそれぞれ第1及び第2係合溝34a,34bに嵌合するように、ジョイント2の円筒体20をジョイント受け部31の収容凹部33に軸線方向から挿入する。
【0054】
これによって、ジョイント2の第1及び第2アーム部28a,28bは、それぞれ第1及び第2係合溝34a,34bに対して周方向に係合される。その結果、モータ10の回転軸1の回転がジョイント2を介して被回転体3に伝達され、被回転体3は中心軸線L6を回転中心として回転する。
【0055】
このとき、第1及び第2係合溝34a,34bと係合するジョイント2に形成した第1及び第2アーム部28a,28bを断面コ字状に形成した。
つまり、第1アーム部28aは、第1突出壁23a,24aと第1平坦壁25aとから構成されている。そして、第1係合溝34aの側面に当接する一対の第1突出壁23a,24aの被回転体3側の先端部間を、第1平坦壁25aで一体的に繋げた。従って、両第1突出壁23a,24aを繋ぐ第1平坦壁25aは、周方向に延びる面が第1係合溝34aの側面に対して直交する。しかも、第1平坦壁25aは、モータ10側に傾斜して形成していることから、軸線方向に傾斜分だけ幅をもって直交する。
【0056】
同様に、第2アーム部28bは、第2突出壁23b,24bと第2平坦壁25bとから構成されている。そして、第2係合溝34bの側面に当接する一対の第2突出壁23b,24bの被回転体3側の先端辺間を、第2平坦壁25bで一体的に繋げた。従って、両第2突出壁23b,24bを繋ぐ第2平坦壁25bは、周方向に延びる面が第2係合溝34bの側面に対して直交する。しかも、第2平坦壁25bは、モータ10側に傾斜して形成していることから、軸線方向に傾斜分だけ幅をもって直交する。
【0057】
このように、ジョイント2の第1及び第2アーム部28a,28bを断面コ字状に形成したことから、ジョイント2全体を軽量化することができる。
また、第1及び第2平坦壁25a,25bは、共に周方向に形成され第1及び第2係合溝34a,34bの側面に対して直交することから、第1及び第2アーム部28a,28bに加わる周方向の力に対して、耐え得る剛性を発現する。しかも、第1及び第2平坦壁25a,25bがモータ10側に傾斜し軸線方向に傾斜分だけ幅をもって直交して、軸線方向に幅をもって、第1及び第2アーム部28a,28bに加わる周方向の力を支えることから、第1及び第2アーム部28a,28bをよりねじれ難くしている。すなわち、ジョイント2の第1及び第2アーム部28a,28bは、耐ねじりトルク特性をより高いものとすることができる。
【0058】
さらに、第1及び第2平坦壁25a,25bをモータ10側に傾斜させたので、ジョイント2が被回転体3に対して所定の角度で交差して配置されても、ジョイント2はジョイント受け部31の収容凹部33の底面との干渉を防止することができる。
【0059】
次に、ジョイント2の製造方法について説明する。
1枚の金属板を用意し、プレス機を使って、折り曲げ絞り加工することでジョイント2の円筒状壁22の第1及び第2円筒状壁部22a,22bと、第1及び第2アーム部28a,28b(第1突出壁23a,24a、第2突出壁23b,24b、第1及び第2平坦壁25a,25b)が形成される。このとき、あわせて、同プレス機を使って、底壁21の貫通孔27を打ち抜き形成する。
【0060】
続いて、穿孔機を使って、形成された第1及び第2円筒状壁部22a,22bに、それぞれ第1及び第2軸支孔26a,26bを穿孔させることによって、ジョイント2の成形は終了する。
【0061】
このように、ジョイント2は、1枚の金属板を使って大きな設備を使うことなく短時間に形成することができる。
次に、ジョイントと回転軸1の組み付けについて説明する。
【0062】
図7に示すように、基台40には、ジョイント2の第1円筒状壁部22aの断面円弧状の外側面を嵌合し支持する円弧状の嵌合支持面41aを有する嵌合凹部41が形成されている。そして、基台40の嵌合凹部41の両側上面を、第1円筒状壁部22aから延出した第1及び第2突出壁23a,23bの外側面を支持する水平状支持面42a,42bとしている。
【0063】
従って、ジョイント2は、その第1円筒状壁部22aを嵌合凹部41に嵌合させることによって、第1円筒状壁部22aが外側面は嵌合凹部41の嵌合支持面41aに当接し、第1及び第2突出壁23a,23bの外側面がそれぞれの水平状支持面42a,42bと当接する。これによって、ジョイント2は、基台40に支持固定される。
【0064】
また、基台40の嵌合凹部41の嵌合支持面41aには、第1及び第2円筒状壁部22a,22bに形成した第1及び第2軸支孔26a,26bの内径と同じ内径のピン導入孔43が形成されている。ピン導入孔43は、ジョイント2が基台40に支持固定されたとき、ピン導入孔43の中心軸線L7が第1及び第2軸支孔26a,26bの中心軸線L4,L5と一直線となるように、基台40に下面まで貫通するように形成されている。
【0065】
従って、ジョイント2が基台40に支持固定されたとき、ピン導入孔43と第1及び第2軸支孔26a,26bは、一直線上に連通状態となる。
このように形成された基台40にジョイント2をセットする。次に、ピン孔11を形成した回転軸1を、第1及び第2円筒状壁部22a,22bの間に挿入する。続いて、ピン孔11の中心軸線L2が第1及び第2軸支孔26a,26bの中心軸線L4,L5と一致するように回転軸1を位置調整する。このとき、回転軸1の先端部は、底壁21に形成した貫通孔27の内周面に当接させた状態で行う。
【0066】
そして、4つのピン孔11、第1及び第2軸支孔26a,26b、ピン導入孔43が一直線上に連通状態となったとき、第2軸支孔26bから、ピン12を回転軸1のピン孔11に向かって差し込む。そして、ピン12の先端が回転軸1のピン孔11に到達したとき、ハンマー44でピン12の後端を打ち付けて、ピン12をピン孔11に圧入させて行く。そして、ピン12の先端が、ピン導入孔43まで達し、やがて、同ピン12の後端が、第2円筒状壁部22bの外側面に到達する。そして、これ以上ピン12が打ち込めることができなくなって、ピン12の軸線方向の中間位置がピン孔11の軸線方向の中間位置に達し打ち込みを終了する。
【0067】
これによって、回転軸1とジョイント2の組付けは終了する。
次に、上記実施形態の効果を以下に記載する。
(1)本実施形態によれば、ジョイント受け部31に形成した第1及び第2係合溝34a,34bに、円筒体20に設けた第1及び第2アーム部28a、28bを係合するようにした。そして、第1及び第2アーム部28a、28bを、第1突出壁23a,24aと第1平坦壁25a及び第2突出壁23b,24bと第2平坦壁25bとからそれぞれ構成し、断面コ字状に形成した。従って、第1及び第2アーム部28a、28bは軽量となり、ジョイント2の軽量化を実現できる。
【0068】
しかも、ジョイント2が軽量化されることにより、慣性モーメントを小さくできことから、モータ10の回転制御性を高めることができるとともに、第1及び第2アーム部28a、28bと第1及び第2係合溝34a,34bとの間で発生する騒音を小さく抑えることができる。
【0069】
(2)本実施形態によれば、第1突出壁23a,24a間を繋ぐ第1平坦壁25a及び第2突出壁23b,24b間を繋ぐ第2平坦壁25bは、周方向に沿って形成され第1及び第2係合溝34a,34bの側面に対して直交するようにそれぞれ配置した。しかも、第1及び第2平坦壁25a,25bをモータ10側に傾斜させた。従って、第1及び第2平坦壁25a,25bは第1及び第2アーム部28a,28bに加わる周方向の力に対してより耐え得る剛性を発現しねじれ難くしたことから、ジョイント2は耐ねじりトルク特性を高いものとすることができる。
【0070】
(3)本実施形態によれば、円筒体20の底壁21に形成した貫通孔27の内径を貫通する回転軸1の直径より大きく形成した。また、円筒体20の外径をジョイント受け部31の収容凹部33の内径より大きくするとともに、第1及び第2係合溝34a,34bの径方向の深さを第1及び第2アーム部28a,28bの径方向の長さより深くした。
【0071】
従って、これら回転軸1とジョイント2との間に径方向にクリアランス設けることができその分だけ回転軸1に対してジョイント2を傾けたり、径方向に移動させたりすることができる。同様に、ジョイント2と被回転体3との間に径方向にクリアランス設けることができその分だけジョイント2に対して被回転体3を傾けたり、径方向に移動させたりすることができる。
【0072】
その結果、ジョイント2は、回転軸1と被回転体3との間の軸ずれや、回転軸1と被回転体3との間の傾きを吸収し滑らかに回転トルクを伝達することができる。
また、第1及び第2平坦壁25a,25bを傾斜させたので、ジョイント2が被回転体3に対して所定の角度で交差して配置されても、ジョイント2はジョイント受け部31の収容凹部33の底面との干渉を防止することができ、同様に、ジョイント2は滑らかに回転トルクを伝達することができる。
【0073】
(4)本実施形態によれば、ジョイント2の円筒体20の底壁21に回転軸1が貫通する貫通孔27を形成した。
従って、被回転体3のジョイント受け部31側から供給されるピン12とジョイント2の第1及び第2軸支孔26a,26bとの間の摺動部への潤滑オイルが、貫通孔27を介して円筒体20の内側へ供給される。従って、ピン12と第1及び第2軸支孔26a,26bとの間の摺動部に十分な潤滑オイルを供給することができる。
【0074】
(5)本実施形態によれば、ジョイント2は、大きな設備を用いることなく、1枚の金属板を打ち抜き、折り曲げ及び絞り加工によって短時間に製造でき、ジョイント2のコストダウンを図ることができる。
【0075】
しかも、第1及び第2円筒状壁部22a,22b、第1及び第2アーム部28a,28bを折り曲げ及び絞り加工にて形成する際に、貫通孔27が形成される底壁21に相当する部分に残部21aを形成するようにした。その結果、その残部21aが金属板の押さえ付け部位となるため、貫通孔27の打ち抜きが容易となる。
【0076】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
本実施形態は、ジョイント2を構成する円筒体20の円筒状壁22について、その第1円筒状壁部22aと第2円筒状壁部22bとが円筒体20の中心軸線L3を中心として点対称となる形状にした。
【0077】
図8(a)に示すように、第1円筒状壁部22aは、第1実施形態で示した第1円筒状壁部22aの円弧の中間位置を、接線方向であって第2突出壁23b側に向かって延出して第1延長壁部29aを形成させている。従って、第1円筒状壁部22aの第1軸支孔26aが形成されていない円弧部分は第2突出壁23b側に偏倚する。
【0078】
図8(a)に示すように、第2円筒状壁部22bは、第1実施形態で示した第2円筒状壁部22bの円弧の中間位置を、接線方向であって第1突出壁24a側に向かって第1延長壁部29aと同じ長さ延出して第2延長壁部29bを形成させている。そして、第2円筒状壁部22bの第2軸支孔26bが形成されていない円弧部分は第1突出壁24a側に偏倚する。
【0079】
このとき、第1軸支孔26aが形成された第1円筒状壁部22aの円弧部分と第2軸支孔26bが形成された第2円筒状壁部22bの円弧部分は、相対向し、中心軸線L3を中心とする同一円周上にある。
【0080】
そして、第1円筒状壁部22aは、第2突出壁23b側に向かって第1延長壁部29aを形成したことにより、第1円筒状壁部22aから延びる第2突出壁23bは、第2円筒状壁部22bから延びる第2突出壁24bより、第1延長壁部29aの長さ分短く形成されている。
【0081】
同様に、第2円筒状壁部22bは、第1突出壁24a側に向かって第2延長壁部29bを形成したことにより、第2円筒状壁部22bから延びる第1突出壁24aは、第1円筒状壁部22aから延びる第1突出壁23aより、第2延長壁部29bの長さ分短く形成されている。
【0082】
従って、本実施形態の第1円筒状壁部22aと第2円筒状壁部22bは、第1実施形態で示した円筒体20の中心軸線L3を中心として点対称となる形状になる。同様に、第1及び第2突出壁23a,23bと第1及び第2突出壁24a,24bも第1実施形態で示した円筒体20の中心軸線L3を中心として点対称となる形状になる。
【0083】
本実施形態の貫通孔27は、円形であって、その内周面が第1円筒状壁部22aの第1軸支孔26aが形成されている円弧部分の内周面と第2円筒状壁部22bの第2軸支孔26bが形成されている円弧部分の内周面と面一となるように貫通形成されている。
【0084】
従って、貫通孔27の中心軸線が本実施形態の円筒体20の中心軸線L3、即ち、第1実施形態の中心軸線L3と一致する。
そして、貫通孔27が形成されることによって、円筒体20の底壁21は、第1円筒状壁部22aの第1軸支孔26aが形成されていない側及び第2円筒状壁部22bの第2軸支孔26bが形成されていない側の部分に残部21aとなって残される。
【0085】
これによって、底壁21を中心軸線L3から見た時の底壁21の軸線方向視面積は、図8(a)(b)において中心軸線L3を上下方向に直交する直線(中心軸線L3と一対の第1及び第2突出壁23a,24a、23b,24b間の中心を通る直線)を境界として、周方向左右で異なる。つまり、図8(a)(b)において、上側の底壁21(残部21a)の軸線方向視面積は、左側(反時計回り方向側)が大きくなる。一方、下側の底壁21(残部21a)の軸線方向視面積は、右側(反時計回り方向側)が大きくなる。
【0086】
尚、本実施形態のジョイント2も、第1実施形態と同様に、打ち抜き、折り曲げ及び絞り加工によって、1枚の金属板にて製造できる。
同様に、ジョイント2と回転軸1の組み付けに際しては、図8(c)に示すように、第1延長壁部29aを有した第1円筒状壁部22aの外側面に合わせた嵌合支持面41aを有した嵌合凹部41を形成した基台40を用いて行う。
【0087】
そして、図8(c)に示すように、回転軸1の外周面を第1軸支孔26aが形成されている側の第1円筒状壁部22aの内周面に当接させる。次に、回転軸1の外周面を第1軸支孔26a側のピン孔11の開口端を基台40のピン導入孔43の開口端と一致させた後、ピン12を打ち込むことになる。
【0088】
以上詳述したように、第2実施形態は、第1実施形態の効果に加えて、図8(a)(b)において、底壁21(上下の残部21a)の軸線方向視面積を、中心軸線L3を中心として反時計回り方向側を大きくなるように形成した。従って、底壁21の軸線方向視面積が大きくなる方向側(図8(a)(b)において中心軸線L3を中心として反時計回り方向側)への耐ねじり性を高めることができる。
【0089】
また、貫通孔27の内径を第1実施形態の円筒体20の内径と同じ大きさにしたので、ピン12と第1及び第2軸支孔26a,26bとの間の摺動部への潤滑オイルの供給がより潤沢にすることができる。
【0090】
上記実施形態は、以下のように変更してもよい。
○上記1実施形態では、円筒体20の底壁21に貫通孔27を形成したが、図9(a)(b)に示すように貫通孔27を形成しないで実施してもよい。
【0091】
そして、回転軸1とジョイント2を組み付ける場合、図9(c)に示すように、回転軸1の外周面を第1円筒状壁部22aの内周面に当接させるとともに、第1軸支孔26a側のピン孔11の開口端を基台40のピン導入孔43の開口端と一致させた後、ピン12を打ち込むことになる。
【0092】
○上記第1実施形態では、円筒体20の底壁21に残部21aを残して貫通孔27を形成したが、図10(a)(b)に示すように、残部21aを残さない大径の貫通孔27を形成して実施してもよい。
【0093】
そして、回転軸1とジョイント2を組み付ける場合、図10(c)に示すように、回転軸1の外周面を第1円筒状壁部22aの内周面に当接させるとともに、第1軸支孔26a側のピン孔11の開口端を基台40のピン導入孔43の開口端と一致させた後、ピン12を打ち込むことになる。
【0094】
○上記第2実施形態では、円筒体20の底壁21に形成した貫通孔27を、第1実施形態の貫通孔27と同じ大きさの内径で実施してもよい。
○上記各実施形態では、円筒体20の底壁21に形成した貫通孔27は円形であった。これを、図11(a)(b)示すように、楕円形の貫通孔27を底壁21に貫通形成してもよい。図11(a)(b)に示ように、楕円形の貫通孔27は、その楕円形の長軸が、円筒体20の中心軸線L3方向から見て第1及び第2軸支孔26a,26bの中心軸線L4,L5と重なるように形成されている。従って、楕円形の貫通孔27の長軸と短軸の交点は、円筒体20の中心軸線L3と交差することになる。
【0095】
そして、回転軸1とジョイント2を組み付ける場合、図11(c)に示すように、回転軸1の外周面を第1円筒状壁部22aの内周面に当接させるとともに、第1軸支孔26a側のピン孔11の開口端を基台40のピン導入孔43の開口端と一致させた後、ピン12を打ち込むことになる。このとき、回転軸1の外周面を第1円筒状壁部22aの内周面に当接させる際、楕円形の貫通孔27が楕円形であってその内周面が第1円筒状壁部22aの第1軸支孔26aが形成されて面に収束しているため、回転軸1とジョイント2の位置決めが容易となる。
【0096】
○上記各実施形態では、ジョイント2の円筒体20に第1アーム部28aと第2アーム部28bの2つを設け、これらをジョイント受け部31に係合するように実施した。これを、第1及び第2アーム部28a,28bのいずれか一方のみで、他方を省略して実施してもよい。また、3つ以上のアーム部を設けて実施してもよい。
【0097】
○上記実施形態では、一対の第1突出壁23a,24a、及び、一対の第2突出壁23b,24bは、それぞれ平行に形成したが、ジョイント受け部31の第1及び第2係合溝34a,34bの径方向の断面形状に合わせて適宜変更してもよい。
【0098】
○上記第2実施形態では、円筒体20の円筒状壁22について、その第1円筒状壁部22aと第2円筒状壁部22bとが円筒体20の中心軸線L3を中心として点対称となる形状にした。そして、図8(a)(b)において、底壁21(上下の残部21a)の軸線方向視面積が、中心軸線L3を中心として反時計回り方向側を大きくなるように形成した。
【0099】
これを、図12(a)(b)に示すように、図8(a)(b)のジョイント2に対して左右対称に構成したジョイント2に応用して実施してもよい。
この場合、底壁21を中心軸線L3から見た時の底壁21の軸線方向視面積は、図12(a)(b)において、上側の底壁21(残部21a)の軸線方向視面積は、右側(時計回り方向側)が大きくなる。一方、下側の底壁21(残部21a)の軸線方向視面積は、左側(時計回り方向側)が大きくなる。
【0100】
その結果、底壁21の軸線方向視面積が大きくなる方向側(図12(a)(b)において中心軸線L3を中心として時計回り方向側)への耐ねじり性を高めることができる。つまり、図12(a)(b)に示すジョイント2は、第2実施形態のジョイント2とは反対方向(時計回り方向)の耐ねじり性を高めることができる。
【0101】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
本実施形態は、上記ジョイント2を、内燃機関の吸気バルブまたは排気バルブについて、そのバルブの開閉タイミングを決めるクランク軸及びカム軸の相対位相を調整するバルブタイミング可変装置に具体化した実施形態である。
【0102】
図13は、車両に搭載されたバルブタイミング可変装置50の断面図を示す。バルブタイミング可変装置50は、内燃機関のクランク軸(図示せず)からカム軸51へ機関トルクを伝達する伝達系に設けられている。
【0103】
バルブタイミング可変装置50は、モータ10と位相調整機構52を有し、クランク軸に対するカム軸51の相対位相を調整する。内燃機関は、クランク軸に対するカム軸51の相対位相が調整されることによって、同内燃機関に適したバルブタイミングが逐次実現されるようになっている。
【0104】
モータ10は、例えばブラシレスモータ等よりなり、制御回路53にて通電制御され回転軸1に制御トルクを発生させる。制御回路53はマイクロコンピュータよりなり、内燃機関の運転状況に応じてモータ10への通電を制御する。
【0105】
回転軸1には、ジョイント2がピン12を介して連結されている。本実施形態では、このジョイント2は、第1実施形態で示したジョイント2と同じ構成とするが、上記他の実施形態で示したジョイント2であってもよい。
【0106】
位相調整機構52は、駆動側回転体56、従動側回転体57、遊星キャリア58、遊星回転体59を有している。
駆動側回転体56は、歯車部材61とスプロケット62を有している。歯車部材61とスプロケット62は共に有底筒状に形成され、互いに同軸上にボルト63にて連結されている。有底筒状の歯車部材61の内周壁面には、駆動側内歯車61aが形成されている。また、歯車部材61の底壁部は、ラジアルベアリング64を介して遊星キャリア58のモータ10寄りの外周面に対して回転可能に支持されている。
【0107】
有底筒状のスプロケット62は、その外周壁面には径方向外側に向かって外歯車62aが形成され、その外歯車62aがクランク軸に取着した歯車とタイミングチェーン(図示せず)を介して駆動連結されている。従って、クランク軸から出力された機関トルクがタイミングチェーンを介してスプロケット62に入力されるとき、駆動側回転体56は、クランク軸と連動して同クランク軸に対する相対位相を保持しつつ回転する。
【0108】
従動側回転体57は、有底筒状をなし、スプロケット62の内側に嵌合配置されている。有底筒状の従動側回転体57の内周壁面には、従動側内歯車71が形成されている。ここで、従動側内歯車71は、駆動側内歯車61aに対して軸線方向カム軸51側へずれて同軸上に配置されている。また、従動側内歯車71の径は駆動側内歯車61aの径より小さいととともに、従動側内歯車71の歯数は駆動側内歯車61aの歯数より少なく設定されている。
【0109】
従動側回転体57のカム軸51側に形成された底壁部72は、カム軸51に同軸上に連結固定されている。この連結によって、従動側回転体57は、カム軸51と連動して同カム軸51に対する相対位相を保持しつつ回転する。
【0110】
遊星キャリア58は、モータ10の回転軸1の制御トルクが入力される円筒状のジョイント受け部80を有している。円筒状のジョイント受け部80は、回転軸1、駆動側内歯車61a及び従動側内歯車71に対して同心配置されている。円筒状のジョイント受け部80の内側面には第1及び第2係合溝81,82が軸線方向に沿って形成されている。ここで、ジョイント受け部80の内側面の構造及び第1及び第2係合溝81,82の構成は、第1実施形態で示したジョイント受け部31と同じ構成としている。
【0111】
従って、円筒状のジョイント受け部80の内側にジョイント2を連結した回転軸1が挿入されジョイント2の第1及び第2アーム部28a,28bが対応する第1及び第2係合溝81,82と嵌合することによって、回転軸1とジョイント受け部80は、ジョイント2を介して駆動連結される。その結果、モータ10の回転軸1のトルクは、ジョイント2を介して遊星キャリア58のジョイント受け部80に、第1実施形態と同様に伝達される。
【0112】
さらに、遊星キャリア58の円筒状のジョイント受け部80のカム軸51寄りの外周面83は、その中心軸線が駆動側内歯車61a及び従動側内歯車71の中心軸線に対して偏心するように形成されている。
【0113】
遊星回転体59は、遊星ベアリング91と遊星歯車92を有している。遊星ベアリング91は、外輪と内輪の間にボール状の転動体を挟持してなるラジアルベアリングである。遊星ベアリング91の外輪は、円筒形状の遊星歯車92の内側面に圧入され、遊星歯車92に対して同心固定されている。
【0114】
一方、遊星ベアリング91の内輪は、遊星キャリア58のジョイント受け部80に偏芯して形成した外周面83に対して同心嵌合させている。
このように構成したことから、遊星ベアリング91は、遊星キャリア58によって内側から支持されているとともに、図示しない弾性部材から受ける弾性復元力を遊星歯車92の内側面に作用させるようになっている。尚、図示しない弾性部材は、ジョイント受け部80の外周面83に凹設した凹部に配設されていて、遊星ベアリング91の内輪をジョイント受け部80に外周面83に嵌合したとき、同内輪を径方向外側に向かって弾圧するようになっている。ちなみに、この弾性部材の構造、配置構造及び作用は公知であって、その詳細は省略する。
【0115】
遊星歯車92は、大径部と小径部を有する段付き筒状に形成され、ジョイント受け部80の外周面83に対して同心配置させている。即ち、遊星歯車92は、駆動側内歯車61a及び従動側内歯車71に対して偏心して配置されている。
【0116】
遊星歯車92は、駆動側内歯車61aに対応して大径部の外周面に駆動側外歯車92aが形成されているとともに、従動側内歯車71に対応して小径部の外周面に従動側外歯車92bが形成されている。駆動側外歯車92a及び従動側外歯車92bの歯数は、それぞれ対応する駆動側内歯車61a及び従動側内歯車71の歯数よりも同数ずつ少なくなるように設定されている。これによって、従動側外歯車92bの歯数は、駆動側外歯車92aの歯数よりも少なくなっている。
【0117】
そして、駆動側外歯車92aは駆動側内歯車61aと噛合するとともに、従動側外歯車92bは駆動側内歯車61aと噛合する。これによって、遊星歯車92は、駆動側外歯車92a及び従動側外歯車92bの偏心中心周りに自転しつつ、遊星キャリア58のジョイント受け部80回転方向へ公転する遊星運動を実現する。
【0118】
このように構成された位相調整機構52は、モータ10の回転軸1から、ジョイント2を介して遊星キャリア58のジョイント受け部80に入力される制御トルクに応じてクランク軸に対するカム軸51の相対位相を調整し、内燃機関に適したバルブタイミングを実現する。
【0119】
以上詳述したように本実施形態のバルブタイミング可変装置50は、ジョイント2が上記第1実施形態と同様な効果を発揮し、モータ10の制御トルクを容易にすることから、精度の高いバルブタイミングを安価な製作で実現することができる。
【0120】
しかも、軽量で慣性モーメントの小さいジョイントを使用することで、モータ10の回転制御の応答性が上り、クランク軸とカム軸の相対位相をより高精度に制御することができる。
【0121】
ここで、バルブタイミング可変装置50において、ジョイント2に強度が要求されるのは、遅角動作、あるいは、進角動作させる場合において、第1及び第2アーム部28a,28bと第1及び第2係合溝81,82が周方向に強く当接する場合であり、最も強く当接する場合は、最遅角位相、あるいは、最進角位相とする場合である。そして、最も強く当接する最遅角と最進角の出現頻度は、一般的に両者は同一ではなく、どちらか一方が多くなることが知られている。
【0122】
例えば、吸気側のバルブタイミング可変装置においては最遅角、排気側のバルブタイミング可変装置においては最進角の出現頻度が多くなることが、一般的である。
そこで、出現頻度の多少に応じて、バルブタイミング可変装置50に用いるジョイント2を図8(a)(b)に示すジョイント2と、図12(a)(b)に示すジョイント2のいずれかを選択して用いて実施してもよい。
【0123】
つまり、最進角の出現頻度が多い、即ち、ジョイント2において時計回り方向に回動させて最進角とした際に、ジョイント2が強く当接し、反時計回り方向にねじられる頻度の多いバルブタイミング可変装置50の場合には、図8(a)(b)に示すジョイント2を用いる。これによって、図8(a)(b)に示すジョイント2は、反時計回り方向側への耐ねじり性が高いことから、最進角の出現頻度が多いバルブタイミング可変装置50の強度を高めることに寄与することができる。
【0124】
反対に、最遅角の出現頻度が多い、即ち、ジョイント2において反時計回り方向に回動させて最遅角とした際に、ジョイント2が強く当接し、時計回り方向にねじられる頻度が多いバルブタイミング可変装置50の場合には、図12(a)(b)に示すジョイント2を用いる。これによって、図12(a)(b)に示すジョイント2は、時計回り方向側への耐ねじり性が高いことから、最遅角の出現頻度が多いバルブタイミング可変装置50の強度を高めることに寄与することができる。
【0125】
尚、本実施形態は、ジョイント2をバルブタイミング可変装置50に具体化したものであったが、バルブタイミング可変装置50以外の装置に応用してもよい。
【符号の説明】
【0126】
1…回転軸(出力軸)、2…ジョイント、3…被回転体、10…モータ、11…ピン孔、12…ピン、20…円筒体、21…底壁、21a…残部、22…円筒状壁、22a,22b…第1及び第2円筒状壁部、23a,23b…第1及び第2突出壁(径方向突出壁)、24a,24b…第1及び第2突出壁(径方向突出壁)、25a,25b…第1及び第2平坦壁、26a,26b…第1及び第2軸支孔、27…貫通孔、28a,28b…第1及び第2アーム部、29a,29b…第1及び第2延長壁部、31…ジョイント受け部、32…被回転軸部、33…収容凹部、34a,34b…第1及び第2係合溝、40…基台、41…嵌合凹部、41a…嵌合支持面、42a,42b水平支持面、43…ピン導入孔、44…ハンマー、50…バルブタイミング可変装置、51…カム軸、52…位相調整機構、53…制御回路、56…駆動側回転体、57…従動側回転体、58…遊星キャリア、59…遊星回転体、61…歯車部材、61a…駆動側内歯車、62…スプロケット、62a…外歯車、63…ボルト、64…ラジアルベアリング、71…従動側内歯車、72…底壁部、80…ジョイント受け部、81,82…第1及び第2係合溝、83…外周面、91…遊星ベアリング、92…遊星歯車、92a…駆動側外歯車、92b…従動側外歯車、L1〜L7…中心軸線。
図1
図2
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