特許第5940956号(P5940956)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5940956
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月29日
(54)【発明の名称】電力量監視装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/14 20060101AFI20160616BHJP
   G06Q 50/06 20120101ALI20160616BHJP
【FI】
   H02J3/14
   G06Q50/06
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-231176(P2012-231176)
(22)【出願日】2012年10月18日
(65)【公開番号】特開2014-82914(P2014-82914A)
(43)【公開日】2014年5月8日
【審査請求日】2015年6月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000243803
【氏名又は名称】未来工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121429
【弁理士】
【氏名又は名称】宇野 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100122127
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 大刀夫
(72)【発明者】
【氏名】小枝 浩文
【審査官】 田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−005206(JP,A)
【文献】 特開2005−318732(JP,A)
【文献】 特開2011−210097(JP,A)
【文献】 特開2001−186658(JP,A)
【文献】 特開平05−111158(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/14
G06Q 50/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用電力量を計測する電力量計測手段と、
該電力量計測手段によって計測された電力量に基づいて単位時間当たりの使用電力量を予測する電力量予測手段と、
単位時間当たりに使用可能な目標電力量を設定する目標電力量設定手段と、
前記電力量予測手段によって予測された使用電力量が前記目標電力量を超えると判断すると超過予測信号を出力する超過予測信号出力手段と、
単位時間の当初における前記超過予測信号の出力を抑える規制を解除するための規制解除条件を設定する条件設定手段と
を備え、前記規制解除条件が満たされるまでは前記超過予測信号の出力を規制するよう構
成された電力量監視装置であって、
所定期間毎の電力使用実績データを記憶する実績データ記憶手段を備え、
前記条件設定手段の規制解除条件は、前記実績データ記憶手段に記憶された実績データのうち、監視を行っている期間に対応する過去の前記所定期間の実績データに基づいて設定されることを特徴とする電力量監視装置。
【請求項2】
負荷率=A/(B×C)
A:所定期間に実際に使用した電力量(kWh)
B:基準電力(kW)
C:所定期間の時間(h)
として、
前記電力量計測手段によって計測されて累積された単位時間の当初からの累積電力量が「目標電力量×負荷率」以上となるかまたは超えることを前記規制解除条件とすることを特徴とする請求項1に記載の電力量監視装置。
【請求項3】
前記基準電力は、電力会社との契約電力であることを特徴とする請求項2に記載の電力量監視装置。
【請求項4】
前記基準電力は、所定期間における最大の単位時間平均使用電力であることを特徴とする請求項2に記載の電力量監視装置。
【請求項5】
前記所定期間は、1〜12月の月単位期間であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の電力量監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用中の電力量を監視する電力量監視装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
工場、ビル、スーパーマーケット、店舗等で企業が使用する電気料金は、基本料金と利用料金とで設定されており、このうち基本料金については、電力会社との間で定められた契約電力によって決定される。具体的には、企業で使用される電気については、毎日0時〜24時の間、常時30分間の使用電力量が計測されており、30分間の使用電力量から求めた平均使用電力を30分デマンド値(以下、単に「デマンド値」と称する)として、過去1年間の最大のデマンド値を契約電力としている。したがって、企業にとっては、年間全体での使用電力量が少なくても、一時的にある30分間に大きな電力を使用すると、超過違約金が発生し、また、この時のデマンド値によって多大な契約電力量の基本料金が設定されてしまう。
【0003】
そこで、企業においては、デマンド値が無用に高くならないように、使用中の電力量を監視するデマンド監視装置などの電力量監視装置を設置することが行われるようになっている。
【0004】
ここで、デマンド監視装置は、上限目標のデマンド値を目標デマンド値として設定することができるものであり、実際に使用中の電力量を常時計測し、計測した電力量の値を所定の計算式により演算処理してデマンド値を予測し、予測したデマンド値が目標デマンド値を超える場合には警報を発して人に節電の注意を喚起させたり、空調機器や照明機器等の電気機器を制御して電力負荷を自動的に減少させたりするものである。なお、このようなデマンド監視装置については、例えば特許文献1に制御装置として開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−010497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
デマンド監視装置に代表されるような電力量監視装置によって使用中の電力量を監視する場合には、30分間といった単位時間毎に単位時間の当初から使用電力量を計測してデマンド値を予測するのであるが、例えば最初の2、3分といったように単位時間の当初において大電力を使用したときに、予測したデマンド値が目標デマンド値を超えると判断されると、使用中の電力負荷を減少させるべく警報が発せられたり電機機器を自動制御したりする等の節電促進対策が講じられる。
【0007】
ところが、この単位時間当初の大電力の使用は突発的なものであり、それ以降は電力の使用が少なく、格別節電促進対策を講じなくても目標デマンド値を超えないこともある。このような場合は、単位時間当初で直ちに節電促進対策を講じるのは時期尚早であり、不的確な対応となることがある。即ち、直ちに空調機器などにおいて強力に節電促進対策を実施すると大幅に使用電力が下がるものの、作業場の空気環境が急激に悪化したりする。そこで、再び直ちに節電促進対策の実施を停止して空調機器等の運転を元に戻せば、今度は再び使用電力量が増大する。このような上下変動の激しい乱降下を繰り返すと、目標電力量以下に円滑に収束せず、制御が乱調状態に陥ってしまう。
【0008】
このため、従前のデマンド監視装置に代表される電力量監視装置では、単位時間当初において、予測したデマンド値が目標デマンド値を超えると判断されても、単位時間内での使用電力量が予め定められた所定の電力量に達していない状態や、単位時間内において予め定められた所定の時間が経過していない状態などにあるときは、直ちには上述の節電促進対策の実施を開始しないように規制する、所謂「マスキング」が行なわれることがある。
【0009】
しかし、従来のマスキングにおいては、節電促進対策の規制を解除する条件は、予め定められた固定的なものであった。一方で、個々の企業夫々における電力の使用態様は、乱調が生じ易い使用態様や乱調が生じ難い使用態様等、多様である。したがって、様々な電力使用態様に対して一律な条件でマスキングを行なうことは、的確な対応とは言えない。
【0010】
そこで、本発明は、所定の条件が満たされるまで節電促進対策を実施しないとする所謂マスキングを各企業の多様な電力使用態様に応じて的確に行なうことのできる電力量監視装置の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の電力量監視装置は、使用中の電力量を計測する電力量計測手段と、該電力量計測手段によって計測された電力量に基づいて単位時間当たりの使用電力量を予測する電力量予測手段と、単位時間当たりに使用可能な目標電力量を設定する目標電力量設定手段と、前記電力量予測手段によって予測された使用電力量が前記目標電力量を超えると判断すると超過予測信号を出力する超過予測信号出力手段と、単位時間の当初における前記超過予測信号の出力を抑える規制を解除するための規制解除条件を設定する条件設定手段とを備え、前記規制解除条件が満たされるまでは前記超過予測信号の出力を規制するよう構成されたものであって、所定期間毎の電力使用実績データを記憶する実績データ記憶手段を備え、前記条件設定手段の規制解除条件は、前記実績データ記憶手段に記憶された実績データのうち、監視を行っている期間に対応する過去の前記所定期間の実績データに基づいて設定されるものである。
【0012】
請求項2の電力量監視装置は、
負荷率=A/(B×C)
A:所定期間に実際に使用した電力量(kWh)
B:基準電力(kW)
C:所定期間の時間(h)として、
前記電力量計測手段によって計測されて累積された単位時間の当初からの累積電力量が「目標電力量×負荷率」以上となるかまたは超えることを前記規制解除条件とするものである。
【0013】
請求項3の電力量監視装置は、前記基準電力が、電力会社との契約電力である。
請求項4の電力量監視装置は、前記基準電力が、所定期間における最大の単位時間平均使用電力である
【0014】
請求項5の電力量監視装置は、前記所定期間が、1〜12月の月単位期間である。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、マスキングを解除する規制解除条件が過去の電力使用実績に基づいて設定されることから、多様な電力使用態様に対して、実績に裏付けられた条件によって的確なマスキングを行うことができ、したがって、使用電力量を的確に監視することができる。
【0016】
特に、請求項2乃至請求項4の発明では、規制解除条件に負荷率を関与させている。ここで、負荷率は、契約電力や月間最大デマンド値の電力を最大限に使用した場合に比した過去の使用実績を示すものであり、電力使用態様の一つの特性を示す企業、事業所特有の数値である。したがって、この負荷率を用いることで、個々の企業、事業所夫々の多様な電力使用態様に応じて、より的確にマスキングを行うことができる。
【0017】
また、請求項5の発明は、「所定期間」を「1〜12月の月単位期間」に特定したものであり、電力使用状況が変動する月毎に、使用電力量の緻密な監視を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る電力量監視装置の機能的構成を示すブロック図である。
図2】過去1年間における月毎の最大電力量を示す表である。
図3】過去1年間における月毎の使用電力量等の実績データを示す表である。
図4】本発明に係る電力量監視装置によって使用電力量を監視する例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る電力量監視装置の実施形態としての一例を以下に説明する。
【0020】
図1に示すように、電力会社から企業への電力供給は、電力会社の送電線から電力量計1を介して行われており、企業に供給される電力は、空調機器、照明機器、製造機器等、種々の電気機器40の電力負荷に使用される。そして、電力量計1には、デマンド監視装置などの電力量監視装置10が接続されている。
【0021】
電力量監視装置10は、コンピュータを用いて構成されており、所定のプログラムを実行することにより機能する機能的構成として、電力量計測手段11、電力量予測手段12、最大電力量記憶手段13を含む実績データ記憶手段50、目標電力量設定手段14、超過予測信号出力手段15、条件設定手段51等を備えている。以下に、これら各手段を具体的に説明する。
【0022】
電力量計測手段11は、電力量計1からの計量パルス信号によって現在使用中の電力量を計測するものである。
【0023】
電力量予測手段12は、電力量計測手段11によって計測された電力量の値に基づいて単位時間当たりの使用電力量を予測するものである。ここで、本実施形態では、電力会社の使用電力量の計測に倣って、単位時間として30分間を採用しており、毎時、0〜30分の間及び30〜60分の間において使用される電力量を予測する。なお、30分間の使用電力量を予測するための手法としては、30分が経過するまでの間に、1分間を最小計測単位時間として、最小計測単位時間毎に実際に使用された電力量を計測すると共に単位時間における当初からの使用電力量を累計し、最小計測単位時間当たりの平均使用電力即ちデマンド値を算出して、この平均使用電力に30分を掛けた値を予測電力量とする手法を採用している。
【0024】
実績データ記憶手段50は、最大電力量記憶手段13を含むものであり、この最大電力量記憶手段13は、単位時間当たり即ち30分間に実際に使用した電力量を単位時間使用電力量として、1ヶ月間等の所定期間中における単位時間使用電力量の最大値を所定期間毎に最大電力量として記憶するものである。ここで、本実施形態では、所定期間として1ヶ月を採用しており、例えば図2に示すように、1年、12ヶ月分の単位時間使用電力量の最大値が月単位期間毎に記憶される。なお、所定期間である1ヶ月が経過すると、その1ヶ月の使用電力量の最大値が新たに記憶され、最大電力量記憶手段13には、時間の経過と共に、過去最新のデータが加えられ蓄積される。
【0025】
なお、図2に示す表においては、電力会社が記録する月毎の最大デマンド値を、参考として30分間の最大電力量の横に( )書きで示してある。ここで、デマンド値は、30分間における平均使用電力であることから、30分間の使用電力量を2倍にして1時間の使用電力量に換算し、この1時間の使用電力量を1時間で除した値であり、30分間の使用電力量を0.5時間(30分)で除した値である。
【0026】
したがって、この例で、2011年8月から2012年7月までの使用実績を基に電力会社と契約更新する場合には、各月の月間最大デマンド値の中から最も値が大きい2011年12月の月間最大デマンド値が過去1年間の最大デマンド値として採用され、契約電力70kWの基本料金が設定される。
【0027】
目標電力量設定手段14は、単位時間当たり即ち30分間に使用する上限目標の電力量が目標電力量として設定されるものである。ここで、本実施形態では、電力量監視装置10が最大電力量記憶手段13を備えており、目標電力量は、最大電力量記憶手段13に記憶された過去のデータに基づいて自動的に更新される。
【0028】
超過予測信号出力手段15は、電力量予測手段11によって予測された単位時間当たり即ち30分間の使用電力量が、目標電力量設定手段14にて設定されている目標電力量を超えると判断すると超過予測信号を出力するものである。ここで、本実施形態では、電力量監視装置10にスピーカー20及び警告灯30が接続されており、超過予測信号出力手段15から出力された超過予測信号を受けて、スピーカー20は、警報音を鳴らし、警告灯40は、上限目標の電力使用量を超えそうであることを示す態様で点灯し、スピーカー20や警告灯30の周囲の人々に節電の注意を喚起する。また、本実施形態では、電力量監視装置10に空調機器や照明機器等の電気機器40が駆動制御装置41を介して接続されており、超過予測信号を受けた駆動制御装置41は、負荷電力が小さくなるように対応する電機機器40を自動制御して、電気機器40の使用電力量を減少させる。
【0029】
ところで、本実施形態の電力量監視装置10が所定期間毎の最大電力量を記憶する最大電力量記憶手段13を備えていることは前述の通りであるが、時間の経過と共に所定期間に対応する次の期間が到来すると、最大電力量記憶手段13に記憶されている過去の所定期間毎の最大電力量の中から、対応する所定期間の最大電力量が新たな目標電力量として目標電力量設定手段14に設定される。具体的には、最大電力量記憶手段13には、過去の毎月の最大電力量が月毎に記憶されており、例えば、1月には、昨年1月の最大電力量が目標電力量として設定されて1月の使用電力状況を監視するが、2月になると、昨年2月の最大電力量が目標電力量として新たに設定されて2月の使用電力状況を監視する。これにより、電力の使用状況を、通年にわたって目標電力量を一定とした粗い監視ではなく、月毎に過去の実績を超えないように緻密に監視することができる。
【0030】
また、超過予測信号出力手段15は、常時、目標電力量設定手段14にて設定されている目標電力量を超えると判断すると、即座に超過予測信号を出力するものではなく、条件設定手段51に設定された規制解除条件が満たされた状態である場合において、超過予測信号を出力するものとして構成されている。これについて以下に説明する。
【0031】
実績データ記憶手段50は、最大電力量記憶手段13にて月毎の単位時間使用電力量の最大値即ち最大電力量のみを記憶するのではなく、所定期間の電力使用実績に基づいて所定期間毎の電力使用実績データを記憶するものである。ここで、本実施形態では、所定期間として1ヶ月を採用しており、実績データ記憶手段50には、例えば図3に示すように、月毎の最大デマンド値や月毎の使用電力量等、過去の電力の使用実績に基づいた種々の実績データが月毎に記憶される。そして、所定期間である1ヶ月が経過すると、その1ヶ月の実績データが新たに記憶され、実績データ記憶手段50には、時間の経過と共に、過去最新のデータが順次蓄積される。なお、図3は直近1年間の実績データを示す。
【0032】
そして、条件設定手段51には、実績データ記憶手段50に記憶された所定期間の実績データに基づいて規制解除条件が設定される。ここで、本実施形態では、負荷率を考慮した規制解除条件が設定されることとしている。具体的には、電力量計測手段11によって計測されて累積された単位時間の当初、即ち30分間の当初からの累積電力量が「目標電力量×負荷率」以上となるかまたは超えることを規制解除条件としている。換言すると、累積電力量が「目標電力量×負荷率」に達するまでは、マスキング処理がなされ、たとえ所定期間の当初においては、予測された使用電力量が目標電力量を超えそうであっても、超過予測信号を出力しないように制御される。これにより、単位時間である30分間の当初において、突発的な大電力の使用があったとしても、制御が乱調状態となるのを防止して、電力量監視装置10の作動に影響を与えないように処理することができる。
【0033】
なお、負荷率は、「負荷率=実際に使用した電力量/想定電力量(基準電力×時間)」であり、各企業、事業所において基準として定めた電力負荷で電力を最大限に使用した場合の想定電力量(基準電力×時間)に対する実際に使用した電力量の割合であり、この負荷率は、多様な態様で電力を使用する個々の企業、事業所夫々における固有の数値である。これにより、規制解除条件に負荷率を用いることで、企業、事業所夫々に応じた的確なマスキンング処理を行うことができ、もって、電力量監視装置10によって使用中の電力量を、企業、事業所夫々に応じて好適に監視することができる。
【0034】
次に、上記のように構成された本実施形態の電力量監視装置10によって単位時間即ち30分間の使用電力量を監視する態様を図4に基づいて説明する。なお、図4のグラフにおいて、黒塗りの棒グラフは、1分間毎の使用電力量を示すものであり、白抜きの棒グラフは、30分間の当初から使用電力量を累積した累積電力量を示すものであり、折れ線グラフは、30分間内において、既に計測した使用電力量から1分間の平均使用電力量を求め、この平均使用電力量から予測した30分間の使用電力量、即ち30分間の予測使用電力量を示す。
【0035】
規制解除条件としては、負荷率を用いるのであるが、本実施形態では、負荷率として、「契約電力負荷率」を用いた態様と、「月間電力負荷率」を用いた態様とを例示する。ここで、契約電力負荷率は、電力会社との契約電力を基準電力としたものであり、月間電力負荷率は、月毎の最大デマンド値を基準電力としたものである。
【0036】
まず、負荷率として、契約電力負荷率を採用した場合を説明する。図4のグラフは、契約電力が直近1年間の月間最大デマンド値である「70kW」に定められた状況下での2012年8月の使用電力量を監視するものであり、監視目標の目標電力量は、昨年(2011年)8月の最大電力量の実績(図2参照)から「30kWh」に設定されている。また、契約電力負荷率は、昨年(2011年)8月の使用電力量の実績(図3参照)から「35%」に設定されている。なお、この契約電力負荷率の具体的な計算式は、
70kW(契約電力)×24時間×31日=52080kWh(契約最大量)
18228kWh(使用電力量)/52080kWh(契約最大量)=負荷率
である。
【0037】
契約電力負荷率が「35%」であることから、
30kWh×35%=10.5kWh
を破線aで示した規制解除条件の条件値とし、累積電力量が「10.5kWh」に達するまでは、規制解除条件が満たされていないとして、たとえ予測電力量が目標電力量を超えたとしても、マスキング処理を行ない、超過予測信号を出力しないように制御する。そして、累積電力量が「10.5kWh」に達した以降(図4では、10分以降)は、規制解除条件が満たされていることから、マスキング処理を中止して超過予測信号を出力可能となるように制御し、折れ線グラフで示す予測電力量が目標電力量である30kWhを超えると判断された場合には、超過予測信号を出力する。ここで、マスキング処理としては、「そもそも予測電力量を予測しない(算出しない)」、「予測電力量と目標電力量とを対比しない」、「超過予測信号出力手段において超過予測信号を出力しないように制御する」等の手法を例示できる。なお、この態様は、特に請求項3の態様に相当する。
【0038】
一方、負荷率として、月間電力負荷率を採用した場合には、図3に示すように、昨年(2011年)8月の使用電力量の実績から「41%」が設定される。なお、この月間電力負荷率の具体的な計算式は、
60kW(最大デマンド値)×24時間×31日=44640kWh(月間最大量)
18228kWh(使用電力量)/44640kWh(月間最大量)=負荷率
である。そして、
30kWh×41%=12.3kWh
を破線bで示す規制解除条件の条件値として、累積電力量が「12.3kWh」に達するまで(図4では、13分まで)は、マスキング処理を行う。なお、この態様は、特に請求項4の態様に相当する。
【0039】
次に、本実施形態の電力量監視装置10の作用を説明する。
負荷率は、時間の経過と共に所定期間に対応する次の期間が到来すると、実績データ記憶手段50に記憶されている過去の所定期間毎の実績データの中から、前年度の対応する所定期間の実績データに基づく規制解除条件が新たな規制解除条件として設定される。具体的には、例えば、1月には、昨年1月の負荷率に基づく規制解除条件が設定されてマスキング処理を行なうのであるが、2月になると、昨年2月の負荷率に基づく規制解除条件が新たに設定されてマスキング処理を行なう。したがって、通年にわたって規制解除条件が一定の粗いマスキング処理ではなく、月毎に変動する緻密なマスキング処理を行なうことができる。
【0040】
そして、マスキングを解除する規制解除条件が過去の電力使用実績に基づいて設定されることから、多様な電力使用態様に対して、実績に裏付けられた条件によって的確なマスキングを行なうことができる。特に、規制解除条件に負荷率を関与させ、この負荷率は、契約電力や月間最大デマンド値の電力を最大限に使用した場合に比した過去の使用実績を示すものであり、電力使用態様の一つの特性を示す企業、事業所特有の数値である。したがって、この負荷率を用いることで、個々の企業、事業所夫々の多様な電力使用態様に応じて、より的確にマスキングを行なうことができる。
【0041】
なお、上述の「実績データ記憶手段50での所定期間」は、規制解除条件を更新する期間を定めるためのものであるのに対して、前述した「最大電力量記憶手段13での所定期間」は、監視目標の目標電力量を更新する期間を定めるためのものである。
【0042】
以上、本発明に係る電力量監視装置10の一例を示したが、本発明はこの実施形態に限られるものではない。
まず、月毎の負荷率は、「直近1年間」の電力会社との契約電力、或いは対応する月毎の最大のデマンド値即ち月毎の最大の単位時間平均使用電力を基準電力として算出しているが、本発明を実施する場合には、これに限られるものではなく、契約電力或いは月間最大デマンド値は、例えば、各月について「過去複数年の平均」のものや、「過去複数年のうちの最小」のものを基準電力として算出してもよい。
【0043】
次に、上述の例では、電力量監視装置10を、使用電力が電力会社との契約電力を超えないように監視するデマンド監視装置としており、使用電力を監視する単位時間として、電力会社が計測する単位時間と合致させた30分間としているが、これに限らず、単位時間を1時間や1日等として、企業、事業所独特の監視手法で使用電力を監視するようにしてもよい。
【0044】
また、「最大電力量記憶手段13における所定期間」及び「実績データ記憶手段50における所定期間」は、1ヶ月とするに限らず、春夏秋冬の季節としてもよく、更には、所定期間自体を、例えば1ヶ月の昼間・夜間といったように細かく区分けしてもよい。
【0045】
また、「最大電力量記憶手段13における所定期間」と「実績データ記憶手段50における所定期間」とを同一の期間として定めるものに限らず、互いに異なる期間としてもよい。例えば、「最大電力量記憶手段13における所定期間」を1ヶ月と定めて、契約電力を特に考慮する必要がない電力使用状況下においても節電の促進に役立つように電力使用量を監視する一方で、「実績データ記憶手段50における所定期間」を例えば1年と定めて年間負荷率に基づく規制解除条件を設定し、1年間に渡って同一の規制解除条件でマスキング処理を行ない、翌年は、前年度の実績が加味された規制解除条件に変更されるようにしてもよい。
【0046】
また、実績データ記憶手段50等の各手段のすべてを電力量監視装置10の本体内に具備させるに限らず、本体にインターネットやイントラネットを介して接続された外部のコンピュータ等の電子機器に実績データ記憶手段50や電力量予測手段12等の適宜の手段の機能を担わせて、本体及び外部の電子機器全体で電力量監視装置10が構築されるようにしてもよい。なお、実績データ記憶手段50は、少なくとも実際に使用された電力量を実績データとして記憶するものであれば足りる。
【0047】
ところで、図4において、予測電力量を示す折れ線グラフに着目すると、水平または右肩上がりであると、今後、予測電力量が変わらないか増加すると理解でき、右肩下がりであると、今後、予測電力量が減少すると理解できる。よって、超過予測信号を出力して節電を促した以降に、予測電力量の折れ線グラフが水平のままか或いは右肩上がりになっていると、節電の効果的な対策がなされていないことになる。一方、右肩下がりになっていれば、節電の効果的な対策がなされていることになる。そこで、超過予測信号を出力した以降において、予測した電力量が前回予測した電力量以上であれば、より節電を促すべく節電推進信号を出力して、これに応じたスピーカー20や警告灯40の作動によって、人々により一層の節電を促すようにしたり、電力負荷がより一層軽減されるように電気機器40を自動制御するようにしてもよい。また、予測した電力量が前回予測した電力量未満であれば、対策良好信号を出力して、これに応じたスピーカー20や警告灯40の作動によって、人々に効果的な対策がなされている旨を知らせるようにしてもよい。
【0048】
更に、上記実施形態の条件設定手段の規制解除条件は、負荷率に基づいて設定されるが、これに限られるものではなく、他の実績データに基づいて設定してもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 電力量計
10 電力量監視装置
11 電力量計測手段
12 電力量予測手段
13 最大電力量記憶手段
14 目標電力量設定手段
15 超過予測信号出力手段
20 スピーカー
30 警告灯
40 電気機器
41 駆動制御装置
50 実績データ記憶手段
51 条件設定手段
図1
図2
図3
図4