(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係るエレベータの安全柵を実施するための形態を図に基づいて説明する。
【0013】
<実施の形態1>
本発明に係るエレベータの安全柵の一実施形態は、例えば建物に設置されたエレベータに適用される。このエレベータは、図示されないが、昇降路1に配置された乗かごと、この乗かごと主ロープを介して昇降路内に吊り下げられた釣合い錘と、主ロープが巻き掛けられた巻上機とを備えている。そして、巻上機が駆動して回転することにより、この巻上機の回転方向に応じて乗かごが釣合い錘と相対的に昇降路内を昇降するようになっている。
【0014】
エレベータは、昇降路1と乗場2の間に配置された両開き式の一対の乗場ドア3a,3b(便宜的に、
図1に示す左側の乗場ドアを3a、
図1に示す右側の乗場ドアを3bと付す)と、乗かごが乗場2に到着したときに乗場ドア3a,3bとそれぞれ対向するように配置され、乗かごに設けられた両開き式の一対の乗かごドア(図示せず)と、これらの乗場ドア3a,3bと乗かごドアの開閉動作を連動させる連動装置(図示せず)とを備えている。
【0015】
各乗場ドア3a,3bは、例えば
図3に示すように互いに対向する端部に形成され、昇降路1側へ突出した突出片3A1,3B1(便宜的に、
図3に示す左側の乗場ドア3aの突出片を3A1、
図3に示す右側の乗場ドア3bの突出片を3B1と付す)を有している。同様に、各乗場ドア3a,3bは、例えば突出片3A1,3B1と反対側の端部に形成され、昇降路1側へ突出した突出片3A2,3B2(便宜的に、
図3に示す左側の乗場ドア3aの突出片を3A2、
図3に示す右側の乗場ドア3bの突出片を3B2と付す)を有している。
【0016】
また、エレベータは、乗場床6のうち乗場2と昇降路1との間に立設され、乗場2と昇降路1を区画する壁4a,4b(便宜的に、
図1に示す左側の壁を4a、
図1に示す右側の壁を4bと付す)と、これらの壁4a,4bの開口端部を形成する出入口枠5a,5b(便宜的に、
図1に示す左側の出入口枠を5a、
図1に示す右側の出入口枠を5bと付す)とを備えている。
【0017】
乗場2は、乗場床6のうち壁4a,4bと昇降路1との間に各乗場ドア3a,3bの開閉方向(
図1に示す左右方向)に沿って敷設され、各乗場ドア3a,3bを案内するシル7を有している。一方、各乗場ドア3a,3bは、下方に突出するように下端に設けられ、乗場床6のシル7の溝に摺動可能に係合するドアシュー8a,8b(便宜的に、
図1に示す左側のドアシューを8a、
図1に示す右側のドアシューを8bと付す)を有している。
【0018】
また、乗場ドア3a,3bは、例えば
図3に示すように各乗場ドア3a,3bの突出片3A1,3A2,3B1,3B2の先端がドア内側方向に折り曲げられて形成された折返し端部3a1,3a2,3b1,3b2(便宜的に、
図3に示す左側の折返し端部を3a1,3a2、
図3に示す右側の折返し端部を3b1,3b2と付す)を有しており、
図3に示すように乗場ドア3a,3bを鉛直方向から見た断面において、乗場ドア3a,3bの端部は断面コの字形状に構成されている。
【0019】
前述の連動装置として、乗かごドアに係合片が設けられ、乗場ドア3a,3bのいずれか一方には図示しない係合ローラが設けられる。さらに乗場ドア3a,3bには乗場ドア3a,3bのドアの開閉動作を同期させるベルト、前述の係合ローラが駆動されないときには乗場ドア3a,3bが開けられないようにロックする施錠装置が設けられていて、これらの部材により構成されている。また乗場ドア3a,3bは常時乗場ドア3a,3bの閉扉方向に向かって力をかける閉扉方向力付加装置が設けられている。そして乗かごが乗場2に到着すると、乗かごドアの係合片が前述の係合ローラと係合し、係合ローラが駆動されることで施錠装置の施錠が解除されて、係合ローラが設けられた側の乗場ドア3a,3bのいずれかが開方向に開かれる。するとベルトで同期しながら乗場ドア3a,3bが閉扉方向力付加装置に抗して乗かごドアに連動して開動作を行うようになっている。その際、乗場ドア3a,3bのドアシュー8a,8bがシル7の溝を摺動することにより、乗場ドア3a,3bがシル7に案内されてシル7上を走行する。
【0020】
本発明に係るエレベータの安全柵の一実施形態は、一対の乗場ドア3a,3bよりも乗場2側へ配設され、一対の乗場ドア3a,3bに掛け渡された進入阻止部材である枠体10と、後述するようにこの枠体10の横幅L、すなわち乗場ドア3a,3bの開閉方向に沿う枠体10の幅(
図1に示す枠体10の左右方向における幅)よりも一対の乗場ドア3a,3bが開扉しないようにこれらの乗場ドア3a,3bの開扉動作を規制する規制部と、枠体10を一対の乗場ドア3a,3bのうち乗場2側の面にそれぞれ押圧する押圧部とを備えている。
【0021】
具体的には、枠体10は、例えば乗場2に配設された下枠11と、この下枠11の両端部にそれぞれ立設された一対の縦枠12a,12b(便宜的に、
図1に示す左側の縦枠を12a、
図1に示す右側の縦枠を12bと付す)と、これらの縦枠12a,12bの上部を連結する上枠13と、これらの下枠11、一対の縦枠12a,12b、及び上枠13の間に形成された空間を仕切る仕切枠14とを有している。
【0022】
この仕切枠14は、例えば両端部が一対の縦枠12a,12bの中央部にそれぞれ設けられ、下枠11及び上枠13と平行に配置された中さん15と、両端部が縦枠12bの上端部及び縦枠12aの下端部にそれぞれ設けられ、中さん15と交わるように配置された筋交16とから構成されている。
【0023】
また、下枠11は、例えば中央部に下方に突出するように設けられ、乗場床6のシル7の溝に係合して枠体10の下部を固定するシル固定ブラケット11aを含んでいる。さらに、上枠13は、
図2に示すように例えば昇降路1側の側面に後述の貫通孔13aを挟んで貼付けられ、乗場ドア3a,3bの乗場2側の面に摺動する摺動材36a,36b(便宜的に、
図2に示す左側の摺動材を36a、
図2に示す右側の摺動材を36bと付す)を含んでいる。
【0024】
上述した押圧部は、例えば
図2に示すように一対の乗場ドア3a,3bよりも昇降路1側へ配設され、一対の乗場ドア3a,3bに掛け渡されて、一対の乗場ドア3a,3bを昇降路1側から支持する支持体17と、この支持体17と枠体10を連結し、これらの支持体17及び枠体10に一対の乗場ドア3a,3bをそれぞれ挟持させる挟持部18とを有している。
【0025】
ここで、支持体17は、
図2に示す中心線(一点鎖線)を軸に左右対称となっているので、以下の説明において支持体17の要部のうち左側(D部)の構成及び機能について主に述べ、右側の構成及び機能について重複する説明を省略する。
【0026】
支持体17は、例えば
図2、
図4に示すように枠体10の上枠13と平行に配置された固定ロッド21を具備しており、この固定ロッド21は、例えば直方体からなり、長手方向の長さが枠体10の横幅L、すなわち上枠13の長手方向の長さと同一に設定されている。さらに、固定ロッド21は、例えば中央部から離間した位置に長手方向に沿って形成された長孔21Aを含んでいて、その長手方向が一対の乗場ドア3a,3bの開閉方向と平行になるように配設されている。
【0027】
また、支持体17は、例えば
図5に示すように乗場ドア3aの折返し端部3a1と固定ロッド21との間にこの固定ロッド21と対向させて介装され、これらの乗場ドア3aの折返し端部3a1よりも固定ロッド21の長手方向に沿って延設された第1のプレート25と、一対の乗場ドア3a,3b間に配置され、第1のプレート25の枠体10側の面に当接する第2のプレート26と、第1のプレート25の固定ロッド21側の面に貼付けられ、固定ロッド21に対して摺動する摺動材35とを具備している。
【0028】
第1のプレート25は、固定ロッド21の長手方向に沿って離間して穿設された一対の貫通孔25A1,25A2を含んでいる。同様に、第2のプレート26は、固定ロッド21の長手方向に沿って離間して穿設された一対の貫通孔26A1,26A2を含んでいる。また、第2のプレート26の端部のうち乗場ドア3a側の端部は、乗場2側へ向かって折曲げ形成されている。
【0029】
さらに、支持体17は、例えば軸部28a2を乗場2側から第2のプレート26の貫通孔26A1、第1のプレート25の貫通孔25A1、及び固定ロッド21の長孔21Aに挿通させるガイドボルト28と、軸部30a2を乗場2側から第2のプレート26の貫通孔26A2、第1のプレート25の貫通孔25A2、及び固定ロッド21の長孔21Aに挿通させる蝶ボルト30とを具備している。
【0030】
また、支持体17は、例えば固定ロッド21の側面のうち第1のプレート25と反対側の側面に当接し、ガイドボルト28の軸部28a2及び蝶ボルト30の軸部30a2がそれぞれ螺合する一対の雌螺子27a1,27a2が形成された板ナット27と、ガイドボルト28の頭部28a1と第2のプレート26とを離間させた状態での固定を可能にするロックナット29とを具備している。
【0031】
上述した挟持部18は、例えば
図2に示すように枠体10の上枠13及び固定ロッド21の各中央部に穿設された貫通孔13a,21aと、これらの貫通孔13a,21aに昇降路1側から乗場2側へ向かって軸部20bを挿通させ、頭部20aが固定ロッド21よりも昇降路1側へ配置されるボルト20と、このボルト20の軸部20bに螺合する螺合部材とから構成されている。
【0032】
この螺合部材は、例えばボルト20の軸部20bのうち上枠13と固定ロッド21との間に配置され、固定ロッド21の締付け具合を調整するナット22と、ボルト20の軸部20bのうち上枠13よりも乗場2側に配置され、固定ロッド21と上枠13を乗場ドア3a,3bに締付ける蝶ナット23とから構成されている。なお、ボルト20の軸部20bの長さは、例えば固定ロッド21の側面のうちボルト20の頭部20a側の側面と、枠体10の上枠13の側面のうち蝶ナット23側の側面との間隔Hよりも大きく設定されている。
【0033】
上述した規制部は、例えば
図5に示すように支持体17に設けられ、一対の乗場ドア3a,3bを係止する係止部を有している。この係止部は、例えば第1のプレート25のうちボルト20から離れた側の端部が乗場2側へ向かって折曲げ形成された折曲片25a及び前述の第2のプレート26の端部が乗場2側へ向かって折曲げ形成された折曲片26aを具備していて、乗場ドア3a,3bが開こうとする場合には折曲片25aが係合し、乗場ドア3a,3bが閉じようとする場合には第2のプレート26の折曲片26aが係合する。
【0034】
また、係止部は、第2のプレート26の端部のうち乗場ドア3a側の端部、第1のプレート25a、及び乗場ドア3aの突出片3A1の間に介装されたコ字状の弾性体31を具備している。そして、第1のプレート25の折曲片25a及び第2のプレート26の折曲片26aが弾性体31を介して乗場ドア3aの突出片3A1に係合するようになっている。
【0035】
次に、本実施形態に係るエレベータの安全柵の設置作業を
図6〜
図11を参照して詳細に説明する。
【0036】
本発明に係るエレベータの安全柵の一実施形態は、例えばまず作業者は、乗場ドア3a,3bのうち対向する側の端部の間隔が例えば10cm程度になるように乗場ドア3a,3bを開扉する。次に、作業者は板ナット27a1,27a2に締付けられた蝶ボルト30を緩め、開扉した乗場ドア3a,3bの間隔に応じて第1のプレート25、第2のプレート26、ガイドボルト28、ロックナット29、蝶ボルト30、弾性体31、及び摺動材35を固定ロッド21の乗場2側の側面上で長手方向に沿って移動させ、これらの第1のプレート25、第2のプレート26、ガイドボルト28、ロックナット29、蝶ボルト30、弾性体31、及び摺動材35の位置を調整する。
【0037】
次に、作業者は、蝶ボルト30を締めることにより、調整した位置で第1のプレート25、第2のプレート26、ガイドボルト28、ロックナット29、蝶ボルト30、弾性体31、及び摺動材35を固定ロッド21に固定する。同様に、このような作業を右側の第1のプレート25、第2のプレート26、ガイドボルト28、ロックナット29、蝶ボルト30、弾性体31、及び摺動材35に対しても行う。なお、この作業時に、ガイドボルト28の頭とロックナット29の間隔を、蝶ボルト30を締め切って固定したときに、ロックナット29を締め切ったときのガイドボルト28の頭とロックナット29の間隔を最短間隔としたとき、折曲片25aや第2のプレート26の折曲片26aの高さ分を前記最短間隔に加えた間隔よりも大きい範囲となるように調整して固定しておくのがよい。このような作業を行っておくことで、乗場ドア3a,3b端部を係止部と係合させる際、誤って蝶ボルト30を緩めすぎてしまったとしても、係止部の脱落を防止することができる。
【0038】
その後、作業者は、ボルト20に締付けられた蝶ナット23を緩め、固定ロッド21をボルト20の軸線周りで回動させ、
図6に示すように固定ロッド21の長手方向を鉛直方向に合わせて配置する。一方、作業者は、
図8に示すように枠体10の下枠11のシル固定ブラケット11aをシル7の溝に係合させる。
【0039】
そして、作業者は、
図7に示すように枠体10の上部を乗場2側から昇降路1側へ押すことにより、開放された乗場ドア3a,3bの間から固定ロッド21を昇降路1側へ配置し、枠体10の上枠13を乗場ドア3a,3bのうち乗場2側の面に押当てる。次に、作業者は、固定ロッド21をボルト20の軸線周りに再度回動させることにより、
図9、
図10に示すように固定ロッド21の長手方向を水平方向、すなわち枠体10の上枠13と平行に合わせて配置する。なお、このような固定ロッド21の回動作業はナット22を緩めることで行ってもよいが、基本的にナット22はボルト20に対して固定ロッド21を固定しておくために締めておき、蝶ナット23を緩めることでボルト20を上枠13に対して回転させることで回動させると簡単である。
【0040】
その後、作業者は、蝶ナット23を締めることにより、
図11に示すように第1のプレート25の折曲片25aと第2のプレート26の折曲片26aを弾性体31を介して乗場ドア3a,3bの突出片3A1,3B1に係合させ、乗場ドア3a,3bの開き具合を調整して左右の係止部の蝶ナット30を締めて係止部を固定ロッド21上で固定することで本実施形態に係るエレベータの安全柵の設置作業を終了する。なお、蝶ナット23を締めて、乗場ドア3a,3bの突出片3A1,3B1に係止部を係合させた状態でガイドボルト28の頭とロックナット29の間隔を適度な状態にセットし、蝶ナット30を緩めておくと、係止部に備えられた摺動材35及び上枠13に備えられた摺動材36a,36bにより、突出片3A1,3B1と係止部の係合状態を維持したまま、即ち本実施形態の安全柵を乗場ドア3a,3bにセットしたまま、特定の範囲内で乗場ドア3a,3bの開閉動作も可能である。
【0041】
このように構成した本実施形態によれば、乗場ドア3a,3bが開放されても、蝶ナット23を締付けることにより、枠体10が乗場ドア3a,3bのうち乗場2側の面にそれぞれ押圧されるので、枠体10を乗場ドア3a,3bに対して十分に保持することができる。特に、本実施形態は、規制部として機能する第1のプレート25の折曲片25a及び第2のプレート26の折曲片26aと乗場ドア3a,3bの突出片3A1,3B1によって乗場ドア3a,3bの開扉及び閉扉動作を規制するようにしているので、乗場ドア3a,3b間の間隔を枠体10の横幅Lの範囲内に制限することができ、乗場ドア3a,3bに対する枠体10の上枠13の押圧面積を確保することができる。これにより、枠体10が乗場ドア3a,3bに対して傾かず、本実施形態に係る安全柵が取外れることを抑制することができる。
【0042】
このように、本実施形態は、乗場2と昇降路1を区画する壁4a,4bや出入口枠5a,5bを利用したものではなく、開閉具合が調整可能な乗場ドア3a,3bを利用したものであるので、現地の設置環境が異なっても設置状態が大きく変化することはない。従って、本実施形態は、設置環境に拘わらず、安定した設置状態を実現できるので、高い信頼性を確保することができる。
【0043】
また、本実施形態は、固定ロッド21と枠体10がボルト20及び蝶ナット23で一体に連結され、第1のプレート25及び第2のプレート26がガイドボルト28及び蝶ボルト30で取付られているので、乗場ドア3a,3bの突出片3A1,3B1を第1のプレート25で昇降路1側から支持しながら、枠体10の上枠13を乗場ドア3a,3bのうち乗場2側の面に乗場2側から押圧することができる。そのため、上枠13の摺動材36a,36bが乗場ドア3a,3bのうち乗場2側の面に対して垂直に押し当てられるので、上枠13が乗場ドア3a,3bのうち乗場2側の面に対して傾くことをより抑制することができる。これにより、乗場ドア3a,3bへの枠体10の押圧力を高めることができる。
【0044】
特に、本実施形態は、第1のプレート25及び枠体10の上枠13を乗場ドア3a,3bに対して乗場2及び昇降路1の両側から挟持させるのに、蝶ナット23を締めるだけで良いので、枠体10を乗場ドア3a,3bに容易に取付けることができる。これにより、枠体10の取付作業における作業性を向上させることができる。
【0045】
また、乗場ドア3a,3bが開扉しようとしても第1のプレート25の折曲片25aで係止されるので、乗場ドア3a,3bの開扉動作を確実に規制することができる。さらに、乗場ドア3a,3bの突出片3A1,3B1の折返し端部3a1,3b1が第1のプレート25の折曲片25aに接触すると、固定ロッド21の長手方向における位置が固定されるので、乗場ドア3a,3bに対する枠体10の取付状態の安定性を高めることができる。
【0046】
また、本実施形態は、下枠11のシル固定ブラケット11aをシル7の溝に係合させているので、枠体10の下部をボルト20の軸線方向において固定することができる。これにより、下枠11がボルト20の軸線方向において位置ずれすることなく、枠体10の土台として効果的に機能するので、乗場床6に対する枠体10の安定した立設状態を実現することができる。さらに、作業者が枠体10の上枠13を乗場ドア3a,3bのうち乗場2側の面に押当てる際に、シル固定ブラケット11aが支点となるので、枠体10の下部を把持する必要がない。これにより、枠体10の取付作業における作業性をより向上させることができる。
【0047】
また、本実施形態は、第1のプレート25の端部に乗場2側へ向かって突出する折曲片25aを設け、この折曲片25aを乗場ドア3a,3bの突出片3A1,3B1の折返し端部3a1,3b1に係合させるようにしているので、第1のプレート25、固定ロッド21、及び枠体10の上枠13を一体に保持することができる。これにより、枠体10の上枠13を乗場ドア3a,3bに対して強固に取付けることができる。
【0048】
特に、本実施形態の折曲片25aは第1のプレート25を折曲ることにより簡単に形成されるので、本実施形態に係る安全柵の設置作業に付随するコストや作業者の労力を低減することができる。
【0049】
また、本実施形態は、枠体10が乗場ドア3a,3bよりも乗場2側に立設されており、下枠10と一対の縦枠12a,12bが上枠13を支持することにより、枠体10の上部の形態が保たれているので、強度が保証されている乗場ドア3a,3bに上枠13が押圧されても、枠体10が撓むことを防止することができる。さらに、本実施形態は、下枠11、縦枠12a,12b、及び上枠13の間に形成された空間を中さん15及び筋交16で仕切ることにより、上枠13以外にも中さん15及び筋交16が安全柵として働くので、乗場2側の作業者や通行人の安全性を飛躍的に向上させることができる。
【0050】
また、本実施形態は、ボルト20の軸部20bと螺合する蝶ナット23を緩めることにより、固定ロッド21がボルト20の軸線周りに回動可能になるので、固定ロッド21の長手方向を鉛直方向に合わせることで乗場ドア3a,3b間から昇降路1側へ容易に通すことができる。従って、乗場ドア3a,3bをそれほど開扉しなくてもエレベータの保守作業等が行える場合には、乗場ドア3a,3bの間隔を不必要に大きくしなくて済み、高い利便性を確保することができる。
【0051】
また、本実施形態は、固定ボルト20の中央部から離間した位置に長手方向に沿って長孔21Aが形成され、この長孔21Aに挿通されるガイドボルト28と蝶ボルト30、及び板ナット27で第1のプレート25と第2のプレート26を固定ロッド21に取付けるようにしているので、蝶ボルト30を緩めることにより、これらの第1のプレート25と第2のプレート26を、突出片3A1,3B1を第1のプレート25の折曲片25a及び第2のプレート26の折曲片26aの間に固定した状態で、摺動材35で固定ロッド21上を摺動させて固定ロッド21の長手方向に沿って移動させることができる。すなわち、閉扉方向力付加手段によって乗場ドア3a,3bが閉じようとしても、第2のプレート26の折曲片26aに突出片3A1,3B1が係合し、乗場ドア3a,3bを開こうとすれば、第1のプレート25の折曲片25aに突出片3A1,3B1が係合して、それぞれ固定ロッド21の長手方向に沿って移動可能となっている。従って、本実施形態は、固定ロッド21の中央部からの第1のプレート25の折曲片25aの位置を乗場ドア3a,3bの間隔に応じて調整できるので、エレベータの保守作業等の作業内容により乗場ドア3a,3bの開扉具合が異なっても十分に適応することができる。
【0052】
また、本実施形態は、枠体10の上枠13の横幅Lを出入口枠5a,5bまで大きくしなくても、枠体10を乗場ドア3a,3bのうち乗場2側の面に押圧できる寸法を確保できれば良いので、小型化及び軽量化することができる。これにより、運搬作業においても有利である。
【0053】
なお、上述した本実施形態は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。例えば進入阻止部材として本実施形態では枠体10を用いたが、枠体構造をとらず、棒状の部材や昇降路への侵入を阻止できる様々な形状を採ることもできる。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。
【0054】
また、本実施形態は、係止部は、第1のプレート25のうちボルト20から離れた側の端部が乗場2側へ向かって折曲げ形成された折曲片25aを具備した場合について説明したが、この場合に限らず、係止部は、例えば第1のプレート25のうちボルト20から離れた側の端部に溶接等で取付けられ、乗場2側へ向かって突出する突出片を具備しても良い。
【0055】
<実施の形態2>
以下、本発明に係るエレベータの安全柵の第二の実施形態について説明する。なお、実施の形態1と同じあるいは同様の機能を有する部材には同一の符号を付して説明を省略する。
図12は本実施形態に係るエレベータの安全柵の構成を示す正面図、
図13は
図12に示す矢視I方向から見た図である。
【0056】
本実施形態におけるエレベータの安全柵は、一対の乗場ドア3a,3bよりも乗場2側へ配設され、一対の乗場ドア3a,3bに掛け渡された進入阻止部材である上枠13と下枠11と、この上枠13と下枠11両端部に接続されX字状に交差した2本の仕切、兼縦枠の役割をする交差枠37a、37bと、
図13に示すように乗場ドア3a,3bより昇降路1側に配置され上枠13を一対の乗場ドア3a,3bのうち乗場2側の面にそれぞれ押圧する押圧部である支持体17と挟圧部18を備えている。
【0057】
図14は本実施形態に係るエレベータの安全柵の第二の実施形態の折りたたみ状態に移行中の状態を示す図、
図15は本発明の第一の実施形態における安全柵の折りたたみ状態に移行中の状態を示す図である。本実施形態における安全柵は前述のような構成により、
図12に示す2個の組立ボルト38a、38bを取外すことで、
図14に示すように各部材を一体のまま折りたたむことができ、このときの長さは交差枠37a、37bの長さMと同じあるいはそれより若干長い程度にすることができる。
【0058】
これに対し、上述の第一の実施形態で説明した安全柵の場合、各部材を一体のまま折りたたむためには
図15に示すようになり、このときの長さは上枠13又は下枠11の長さLと、縦枠12a又は縦枠12bの長さNを足した長さL+Nになる。長さMは長さL+Nより短いため、同じ幅L、高さNの安全柵を一体で折りたたむと、本実施形態による安全柵の方がコンパクトにすることができる。
【0059】
また本実施形態では、一対の乗場ドア3a,3bが所定開放寸法より閉扉しないようにこれらの乗場ドア3a,3bの閉扉動作を規制する閉規制部39a、39bが上枠13に蝶ねじとボルトによって固定されて設けられている。さらに、この上枠13と下枠11の横幅L、すなわち乗場ドア3a,3bの開閉方向に沿う上枠13の幅(
図12に示す上枠13の左右方向における幅)よりも一対の乗場ドア3a,3bが開扉しないようにこれらの乗場ドア3a,3bの開扉動作を規制する開規制部40a、40bが押圧部である支持体17の両端に備えられている。
【0060】
支持体17は、上枠13とボルト20により連結されている。この支持体17の両端に配置された開規制部40a、40bは、
図13に示すように、支持体17より乗場ドア3a、3b側に突き出した干渉片を有する部材であり、支持体17にねじで固定取付されている。そのため乗場ドア3a、3bを開扉する際に乗場ドア3a、3bの昇降路1側にある折り返し部3a1、3b1が引掛り、乗場ドア3a、3bが上枠13より開扉することを規制する。
【0061】
更に、上枠13に設けられた閉規制部39a、39bは、断面L形の金属板によって形成されており、上枠13との接合面に水平面内に乗場ドア3a、3bの開閉方向と垂直な方向へ伸びる長穴が設けられている。そのため、蝶ナットとボルトの締め付け状態を緩めると閉規制部39a、39bを乗場ドア3a、3bの開閉方向と垂直な方向にスライドすることができ、乗場ドア3a、3bが閉扉しているときは乗場2側に突き出させ、乗場ドア3a、3bが開扉しているときは昇降路1側に突き出させるようにその位置を移動できる。
【0062】
このような構成を持つ本実施形態における安全柵の取付け方について、第一の実施形態と異なる部分について説明する。まず作業者は乗場ドア3a、3bを人が入れない程度のわずかな隙間、例えば10cm程度で開放し、下枠11及び上枠13を乗場ドア3a、3bに対してセットし、わずかに開けられた隙間から支持体17を縦に立てた状態として乗場ドア3a、3bより昇降路1側に入れ、その後、支持体17を上枠13と平行な状態として、支持枠17と上枠13によって乗場ドア3a、3bが軽く挟まれる程度まで挟圧部18である蝶ナット23を回転させてボルト20によって支持枠17と上枠13間の距離を縮小し、この状態で乗場ドア3a、3bをさらに開扉させる。
【0063】
このとき閉規制部39a、39bは蝶ナットを緩めて乗場2側に突き出させて乗場ドア3a、3bとの干渉をさけている。また、上枠13の乗場ドア3a、3bとの接触面には、第一の実施形態と同様に摺動材36a、36bが設けられており、このような乗場ドア3a、3bを支持体17と上枠13とで軽い挟圧状態とした状態下での開扉動作であっても問題なく動作させることができるようになっている。そして乗場ドア3a、3bが支持体17の開規制部40a、40bの干渉片と接触してそれ以上開扉できない状態になったら、閉扉規制部39a、39bを昇降路1側に突き出した状態に移動させて固定する。その後、挟圧部18である蝶ナット23をさらに回転させてボルト20によって支持体17と上枠13で乗場ドア3a、3bを完全な挟圧状態とすることで、乗場ドア3a、3bの開扉方向、閉扉方向を規制した状態で安全柵を設置が完了する。このように、上枠13と支持体17を連結しているボルト20を締め込むと、乗場ドア3a、3bの開閉を規制し、且つ安全柵を乗場ドア3a、3bに固定できる。
【0064】
本実施形態では、前述のような構造を採り、前述のような取り付け方を行うので、作業員が作業を行う際にも体が入ってしまうような隙間を開けることなく、支持体17を乗場ドア3a、3bの昇降路1側の面に配置させることができ、且つ、乗場ドア3a、3bを広く開ける際には、開き過ぎない状態を確保しながら、ドアの開口部分には進入阻止部材が存在する状態を維持でき、非常に高い安全性を確保できる。
【0065】
<実施の形態3>
続いて、本発明に係るエレベータの安全柵の第三の実施形態について説明する。なお、前述の実施の形態1及び実施の形態2と同じあるいは同様の機能を有する部材には同一の符号を付して説明を省略する。本実施形態では、昇降路1と乗場2の間に配置された片開き式の乗場ドア41を備えているエレベータに適用される例を説明する。
図16は本発明に掛るエレベータの安全柵の第三の実施形態の構成を示す正面図、
図17は
図16に示す矢視J方向から見た図である。
【0066】
本実施形態は、
図16、17に示すように、乗場ドア41よりも乗場2側へ配設される進入阻止部材である上枠13と下枠11と、この上枠13と下枠11両端部に接続されX字状に交差した2本の仕切、兼縦枠の役割をする交差枠37a、37bと、乗場ドア41より昇降路1側に配置され上枠13を乗場ドア41の乗場2側の面に押圧する押圧部である支持体17と挟圧部18とを備えているのは第二の実施形態と同様である。
【0067】
本実施形態では上枠13の中央より乗場ドア41側に設けられた閉規制部39については第二の実施形態と同様の構成であり、乗場ドア41が所定開放寸法より閉扉しないように閉扉動作を規制する。これに対して上枠13の反対側端部には、乗場ドア41が閉じようとする力を閉規制部39が受け、その力が伝わって上枠13に閉扉方向の力が作用した際に、その力を出入口枠5bで受けて閉扉動作を規制すると共に、上枠13が昇降路1側へ向かう方向の力を受けた際に、上枠13が昇降路1側へ向かう方向の動きを規制する出入口枠係止部42を備えている。出入口枠係止部42は、閉規制部39と同様に断面L字状の金属板でできていると共に、出入口枠5bと接触して力を受ける面の乗場2側の端部には、出入口枠5bの乗場2側の端面に係止する折り返し部42aが設けられている。これにより乗場ドア41が閉じようとする力は閉規制部39と出入口枠係止部42によって規制され、上枠13が昇降路1側へ向かう方向の力を受けた際には、上枠13が昇降路1側へ向かう方向の動きを規制することができるようになっている。このように本実施形態においては、規制部が閉規制部39と出入口枠係止部42によって構成されている。
【0068】
また、
図17に示すように、本実施形態において支持体17の乗場ドア側端部に備えられた開規制部40については第二の実施形態と同様の構成であり、後述するように上枠13と下枠11の横幅Wよりも乗場ドア41が開扉しないように、乗場ドア41の開扉動作を規制する。これに対して、支持体17の開規制部40とは反対側端部には、上枠13が乗場ドア41の開閉方向に移動する動作を規制する戸当り挟み部43が備えられている。戸当り挟み部43は、出入口枠5bの戸当り面側に当接する戸当り挟み部43bと、戸当り挟み部43bと対向するように配置され、戸当り部の裏面側よりその対向面を当接可能な戸当り挟み部43aとから構成されている。戸当り挟み部43aおよび戸当り挟み部43bはそれぞれ断面L字状の金属製板材から形成されており、出入口枠5bの戸当たり部と当接する部位には、弾性ゴム板等が貼り付けられ、滑り止めと戸当り部の傷つけ防止を図っている。そして戸当り挟み部43aおよび戸当り挟み部43bは支持体17を構成する固定ロッド21に対してボルトと蝶ナットによって固定されており、蝶ナットを回して締め付けを緩めることで、固定ロッド21に対してそれぞれ可動するように構成されている。
【0069】
このような構成を持つ本実施形態における安全柵の取付け方について、第一、第二の実施形態と異なる部分について説明する。まず作業者は乗場ドア41と自分の間に安全柵が存在する状態を保ちながら、安全柵の幅Lの半分程度まで開放し、上枠13の端部に備えられた出入口枠係止部42を出入口枠5bにしっかりと当接させて、下枠11及び上枠13を乗場ドア41と出入口枠5bに対してセットし、開けられた隙間から支持体17を縦に立てた状態として乗場ドア41より昇降路1側に入れ、その後、支持体17を上枠13と平行な状態とする。このとき、昇降路1側に位置する戸当り部の幅は、据付けられた物件ごとに異なるのが一般的である上、戸当り部の幅の大きさを確認することは非常に困難であるから、戸当り挟み部43aおよび戸当り挟み部43bを固定ロッド21に対して可動状態とし、戸当り挟み部43aおよび戸当り挟み部43bの間隔を広く開けた状態としておき、支持体17を上枠13と平行な状態とする過程で戸当り挟み部43bを戸当り部の戸当り面側に、戸当り挟み部43aを戸当り部の裏面側に配置させ、この状態で支持枠17と上枠13によって乗場ドア41が軽く挟まれる程度まで挟圧部18である蝶ナット23を回転させてボルト20によって支持枠17と上枠13間の距離を縮小し、この状態で戸当り挟み部43aおよび戸当り挟み部43bの間隔を縮小させて戸当り部を挟み込み、挟み込み状態のまま戸当り挟み部43aおよび戸当り挟み部43bを固定する蝶ナットを締め付けて固定ロッド21に固定する。そして、この状態で乗場ドア41をさらに開扉させる。
【0070】
このとき閉規制部39は蝶ナットを緩めて乗場2側に突き出させて乗場ドア41との干渉をさけている。また、上枠13の乗場ドア41との接触面には、第一及び第二の実施形態と同様に摺動材36が設けられており、このような乗場ドア41を支持体17と上枠13とで軽い挟圧状態とした状態下での開扉動作であっても問題なく動作させることができるようになっている。そして乗場ドア41が支持体17の開規制部40の干渉片と接触してそれ以上開扉できない状態になったら、閉規制部39を昇降路1側に突き出した状態に移動させて固定する。その後、挟圧部18である蝶ナット23をさらに回転させてボルト20によって支持体17と上枠13で乗場ドア41を完全な挟圧状態とすることで、乗場ドア41の開扉方向、閉扉方向を規制した状態で安全柵を設置が完了する。このように、上枠13と支持体17を連結しているボルト20を締め込むと、乗場ドア41の開閉を規制し、且つ安全柵を乗場ドア41に固定できる。
【0071】
本実施形態では、前述のような構造を採り、前述のような取り付け方を行うので、乗場ドアが片側ドアの形態であっても、作業員の安全を守ることができる。また作業員が作業を行う際にも昇降路1と自分の間に常に安全柵が存在するように取付けることが可能であるので乗場ドア41を広く開ける際には、開き過ぎない状態を確保しながら、ドアの開口部分には進入阻止部材が存在する状態を維持でき、非常に高い安全性を確保できる。
【0072】
特に、戸当り部に支持体17の戸当り挟み部43のセットにおいては、戸当り部の幅を確認することができなくても簡単に取付けることが可能となっている。さらに、戸当り挟み部43が支持体17の一端を固定し動かない状態とすることで、上枠13の一端部に備えられた出入口枠係止部42の乗場2側の端面に係止する折り返し部42aが外れてしまう方向に上枠13が移動することも防止されるため、安全柵取り付けの確実性を向上できる。
【0073】
なお、本実施形態において戸当り挟み部43aおよび戸当り挟み部43bを固定ロッド21に対して可動する形態を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、例えば、戸当り挟み部43aは固定されていて、戸当り挟み部43bのみ固定ロッド21に対して可動となる構成であっても同様の効果を得ることが可能である。また逆に、戸当り挟み部43bは固定されていて、戸当り挟み部43aのみ固定ロッド21に対して可動となる構成であってもやはり同様の効果を得ることが可能である。但し、両者が動く構成であれば、戸当り部と出入口枠5bの乗場側化粧面との位置関係や出入口枠5bの形状によらず様々な形態に合わせて取付けることが可能となる。なお、このように本実施形態では乗場ドア41が開こうとしたときに、支持体17の両端に設けられた戸当り挟み部43と開規制部40とで乗場ドア41の開方向への動きを規制する。即ち本実施形態の規制部は戸当り挟み部43と開規制部40とで構成されている。
【0074】
さらに
図18は
図17に示す形態で、出入口枠の縦枠形状が異なった場合を示す図である。本実施形態の出入口枠係止部42は、上枠13に対してボルトと蝶ナットによって固定されており、蝶ナットを緩めることで
図18の矢印に示す垂直な軸線を回転中心とする回転方向Rに回転させることが可能となっている。また、出入口枠係止部42の出入口枠5b当接面の部分は水平方向Sに伸縮させて動かし、任意の位置で固定ことができるように構成されており、出入口枠5bの乗場2側の端面に係止する折り返し部42aの上枠13との位置関係を様々に変更することが可能となっており、様々な形状の出入口枠5bにも対応できる。