(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
厚さ方向を測定方向に向けて直立状態に設置した直方体状の剛体の転倒をシミュレーションして鉄道車両の動揺を測定する加速度センサを備えた動揺測定器による動揺測定方法であって、
前記剛体を模擬する予め定められた高さ及び幅が同一で厚さが異なる複数の仮想剛体について共通設定された一の低域通過帯に基づいて、前記加速度センサの検出信号をローパスフィルタ処理するステップと、
前記ローパスフィルタ処理された信号に基づいて、前記各仮想剛体それぞれの静的転倒条件を満たしたか否かを判定する判定ステップと、
を含み、
前記ローパスフィルタ処理は、カットオフ周波数が、前記仮想剛体の厚さに関わらず、当該仮想剛体の転倒に要する最小限の加速度である限界加速度を当該厚さ方向に加えた場合の転倒に至るまでの時間を一定と見なした当該時間に基づいて定められた、
動揺測定方法。
厚さ方向を測定方向に向けて直立状態に設置した直方体状の剛体の転倒をシミュレーションして鉄道車両の動揺を測定する加速度センサを備えた動揺測定器による動揺測定方法であって、
前記剛体を模擬する予め定められた高さ及び幅が同一で厚さが異なる複数の仮想剛体について共通設定されたカットオフ周波数が2.0〜3.0Hzのうちの一の周波数である一の低域通過帯に基づいて、前記加速度センサの検出信号をローパスフィルタ処理するステップと、
前記ローパスフィルタ処理された信号に基づいて、前記各仮想剛体それぞれの静的転倒条件を満たしたか否かを判定する判定ステップと、
を含む動揺測定方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔第1実施形態〕
コンピュータを利用して本発明を適用した動揺測定器を実現する実施形態について説明する。
図1は、本実施形態における動揺測定器100の構成例を示す図であって(1)正面図、(2)側面図である。動揺測定器100は、軌道3に沿って走行する鉄道車両4に搭載され、走行中の動揺を測定する装置であって一種のコンピュータである。動揺測定器100は、タッチパネル102と、操作入力キー104と、内蔵バッテリー106と、制御基板110とを備える。
【0017】
タッチパネル102は、表示デバイスとタッチ操作デバイスとを兼ねる入力デバイスである。また、操作入力情報や動揺の測定結果等を表示することができる。
操作入力キー104は、ボタンスイッチやダイヤル、レバーなどにより実現され、各種操作入力をすることができる。
【0018】
制御基板110は、CPU(Central Processing Unit)112やGPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)などの各種マイクロプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、VRAMやRAM,ROM等の各種ICメモリ114、加速度センサ116、外部装置との間でデータ通信を実現する通信モジュール118等を備える。その他、タッチパネル102の表示ドライバ回路、操作入力キー104やタッチパネル102等の入力デバイスからの信号を受信する回路、と言った所謂I/F回路(インターフェース回路)が搭載されている。これら制御基板110に搭載されている各要素は、それぞれバス回路などを介して電気的に接続され、データの読み書きや信号の送受信が可能に接続されている。
【0019】
加速度センサ116は、X軸・Y軸・Z軸の直交3軸の加速度を同時に計測できる公知のセンサである。本実施形態では、計測方向X軸が測定器の前後方向に沿い、X軸正方向が車両進行方向となるように配置される。尚、加速度センサ116は、必ずしも動揺測定器100内に設けなくとも良い。例えば、別途ケーブルを介して測定器本体に接続する構成でも良い。
【0020】
[原理の説明]
図2〜
図4は、本実施形態における動揺測定の原理を説明するための図である。尚、ここでは測定対象として車両の前後方向の測定をすることとしX軸方向の加速度を例に挙げて説明するが、車両左右方向の動揺の測定をする場合にはY軸方向の加速度について、上下方向の動揺の測定をする場合にはZ軸方向の加速度について、同様に適用することで望む方向の動揺測定が実現できる。
【0021】
さて、従来の動揺計測装置は、車両走行中の加速度を計測・記録し、例えば計測データの時系列変化を示すグラフ表示や、各計測軸方向の最大加速度や平均加速度と言った統計値を算出して表示するのが一般的である。しかし、本実施形態の動揺測定器100は、動揺の程度を一目瞭然に識別可能とすることができる。
【0022】
具体的には、
図2に示すように、乗客6が急激な加速度を受けて揺動する現象を仮想剛体7の静的転倒モデルと見なす。動揺測定器100は、加速度センサ116で検出される加速度をローパスフィルタに通す。そして、フィルタを通過した加速度の値と、当該仮想剛体が静的に転倒する限界加速度Axとを比較することで動揺測定をする。
【0023】
先ず、前提条件を述べる。仮想剛体7は、重量M(g)の中実直方体状であって、転倒力Fに沿った厚さB(mm)、高さH(mm)、幅L(非図示)の諸元を有するものとする。これに静的な転倒力Fが作用して、転倒力Fの作用方向の下端Oを中心に時計回り(
図2の例では右方向)に傾き転倒すると仮定する。
【0024】
仮想剛体7を転倒させようとする転倒モーメントは式(1)となる。
F×H/2 ・・・・・・式(1)
対して、転倒に逆らうモーメントは式(2)となる。
W×B/2 ・・・・・・式(2)
【0025】
仮想剛体7が転倒する転倒条件は、(F×H/2)>(W×B/2)と記述できる。
転倒力FをX軸方向の加速度Axを用いて記述すれば(F=M・Ax)となる。また、仮想剛体7の重心Gに作用する荷重Wを重力加速度Agを用いて記述すれば、(W=M・Ag)となる。よって、転倒条件は式(3)と整理することができる。
(H/2)×Ax>(B/2)×Ag ・・・・・・式(3)
ここで、X軸方向の加速度Axに着目すると式(4)が導かれる。本明細書では、これを仮想剛体7が静的転倒する「限界加速度」と呼び。B/Hを「転倒係数K」と呼ぶ。
Ax=Ag・B/H ・・・・・・式(4)
【0026】
次に、加速度センサ116で計測された計測値に適用されるローパスフィルタのカットオフ周波数の算出について説明する。
図3は、仮想剛体7が静止状態(時刻t0)から転倒開始状態(時刻t1)へ遷移する時間Δtを算出する過程を説明する図である。仮想剛体7の重心Gに作用して回転中心Oを軸に転倒方向へ回転させようとする回転力F’、転倒に逆らう回転力W’は、転倒条件F’>W’を満たすことで回転が継続する。よって、転倒させようとする差し引きの回転力は(F’−W’)と記述できる。よって、仮想剛体7の転倒を「重心Gが回転中心Oの鉛直線(線分OC)まで直線運動する現象」とみなせば、転倒開始状態(時刻t1)における重心Gの速度Vは式(5)のように記述できる。
V=1/2・(F’−W)/M・Δt ・・・・・・式(5)
【0027】
ここで、回転力F’の加速度の変化に着目すると、回転力F’の加速度(F’/M)は、静止状態(時刻t0)にて(F’/M=Ax・cosφ)であるが、転倒開始状態(時刻t1)では(F’ /M=Ax)になる。よって、回転力F’の加速度(F’/M)は、「平均加速度F’/M=1/2・Ax・(cosφ+1)」と置き換えることができる。
同様にして、転倒に逆らう回転力W’の加速度(W’/M)は、静止状態(時刻t0)にてW’/M=Ag・sinφであるが、転倒開始状態(時刻t1)ではW’/M=0になる。よって、回転力W’の加速度(W’/M)は、「平均加速度W’/M=1/2・Ag・sinφ」と置き換えることができる。
【0028】
よって、先に求めた速度Vの式(5)は、式(6)と書き換え可能であり、更に整理すると式(7)が得られる。
V=1/2・{1/2・Ax・(cosφ+1)−1/2・Ag・sinφ}・Δt
・・・式(6)
V=1/4・{Ax・(cosφ+1)−Ag・sinφ}・Δt ・・・式(7)
【0029】
更に、幾何的関係から「速度V=tanφ・r/Δt」と記述できるので、数式(7)は式(8)に書き換え可能であり、更に整理すると式(9)を得ることができる。
Δt
2=4r・tanφ/{Ax・(cosφ+1)−Ag・sinφ} ・・式(8)
Δt=2・√〔r・tanφ/{Ax・(cosφ+1)−Ag・sinφ}〕
・・・式(9)
【0030】
そして
図4に示すように、式(9)及び式(4)から時間Δtに着目すると、「仮想剛体7を転倒させようとする力Fの継続時間がΔt未満であれば、当該力Fを生むX軸方向の加速度の継続時間がたとえ限界加速度Axを超えているとしても、仮想剛体7はロッキングはするが転倒には至らない」と言える。そして、この転倒に必要な時間Δtは、仮想剛体7の諸元(厚さB、高さH)と定数Ag(重力加速度)により決まることがわかる。
【0031】
ここで、仮想剛体7を転倒させようとする力F、つまりは回転力F’の加速度をある周波数の成分と見なせないかを考える。すると、静止状態(時刻t0)にて(F’/M=Ax・cosφ)であるが、転倒開始状態(時刻t1)では(F’/M=Ax)になる変化からすれば、転倒する時の速度を正弦波に例えると、時間Δtが当該正弦波の4分の1周期に相当すると見なせるので、式(10)のような周波数fを得ることができる。
f=1/T=1/(4・Δt) ・・・・・・式(10)
【0032】
よって、「仮想剛体7を転倒させようとする力Fの継続時間がΔt未満であれば、当該力Fを生むX軸方向の加速度の継続時間がたとえ限界加速度Axを超えているとしても、仮想剛体7はロッキングはするが転倒には至らない」と前述したが、これは「周波数f以上の帯域の加速度が作用しても、仮想剛体7はロッキングするが転倒に至らない」と換言できる。
【0033】
従って、本実施形態の動揺測定器100は、加速度センサ116で計測されたX軸加速度Dxを、式(10)で得られる周波数fをカットオフ周波数とするローパスフィルタ(LPF)132を通過させて得られる値Dxpが、仮想剛体7の限界加速度Ax以上であれば「仮想剛体は転倒する」と判定し、限界加速度Ax未満であれば「仮想剛体は転倒しない」と判定する。尚、ローパスフィルタ132は、フィルタ回路によりハードウェアとして実現しても、CPU112の演算処理によりソフトウェアとして実現しても良い。本実施形態では、後者を採用するものとして説明する。
【0034】
図5は、タッチパネル102での動揺測定結果の表示例を示す図である。本実施形態の動揺測定器100は、
図5(1)に示すように、測定開始時に初期状態として直立した仮想剛体7を表わす表示モデル8(8a,8b,・・・)をタッチパネル102で画像表示する。この例では、表示モデル8は、直方体状とされ丁度真上から見ている状態で表現されている。そして、測定中に「仮想剛体が転倒」と判定された場合、動揺測定器100は当該判定された仮想剛体7の表示モデル8(8a,8b,・・・)が倒れるように表示制御する。
【0035】
倒れる方向は、画面における車両進行方向の設定に従う。本実施形態では、タッチパネル102の上方を車両進行方向「前」とする。従って、ローパスフィルタを通過したX軸方向加速度Dxpの値が「マイナス」のケース、つまり減速に伴って「仮想剛体が転倒」と判定された場合には、
図5(2)のように、動揺測定器100は画面上方向に向けて仮想剛体7の表示モデル8(この例では8a,8b)が転倒したかのように表示制御する。また、直立状態と転倒状態との識別を容易にするために、転倒表示された表示モデル8の表示色を直立状態から別の設定(例えば、白から赤へ)変更する。逆に、ローパスフィルタを通過したX軸方向加速度の値Dxpが「プラス」のケース、つまり進行方向への加速に伴って「仮想剛体が転倒」と判定された場合には、動揺測定器100は、
図5(3)の表示モデル8(この例では8a)のように、画面下方向に向けて仮想剛体7が転倒したかのように表示制御する。
【0036】
尚、本実施形態では、表示モデル8の表示は3次元コンピュータグラフィックスにより実現されるが、直立状態の2次元画像を転倒状態の2次元画像に差し替える方式でも良い。更には、そうしたグラフィック表示の演算処理負荷をも低減したい場合には、単に直立/転倒を示すテキスト表示やランプ表示の切り替えで実現しても良い。
【0037】
従来の動揺計測器の計測結果は、計測データのグラフ表示や、最大加速度や平均加速度と言った数値の表示で行われてきた。故に、計測作業に慣れた者でなければ、その計測結果が感覚的にどの程度であるかは分かり難かった。
しかし、本実施形態の動揺測定器100によれば、仮想剛体7に相当する表示モデル8の転倒というスタイルで結果を一目瞭然に出力できる。換言すれば、動揺測定器100は、鉄道車両に設置され、厚さ方向を測定方向に向けて直立状態に設置した直方体状の剛体の転倒をシミュレーションした「動揺測定」の結果を表示できる。本実施形態によれば誰でも直ぐに計測すなわち動揺測定の結果を理解することができるようになるので、例えば、
図1に示したように、鉄道車両4に搭載し、運転手らが運転技量の確認のために使うといったことも可能になる。
【0038】
加えて、動揺測定器100によれば、仮想剛体7の諸元を任意に設定することにより、知りたい動揺のレベルに達したか否かを設定できるメリットがある。
【0039】
また、本実施形態の動揺測定器100を用いれば、
図6に示すような、公知の「吉田式車両動揺測定器 :型式HA,HA−S」の代用品を実現できる。
吉田式車両動揺測定器30は、木製の本体31の駒設置溝32内に複数種類の直方体状の金属製の測定駒34(34a,34b,・・・)を立て、図中白矢印が車両前方を向くように水平に鉄道車両に設置される。測定駒34(34a,34b,・・・)は、それぞれ幅方向(転倒方向に直交する方向)及び高さ方向の長さと素材が同じであるが、厚さ方向(転倒方向)の長さが異なる剛体であり、それぞれ動揺に対する倒れ易さが異なる。車両走行中の測定駒34(34a,34b,・・・)の様子を観察し、どの測定駒34(34a,34b,・・・)が転倒したかにより動揺の程度を知ることができる。ちなみに、
図6の例では、左端の測定駒34aから測定駒34eまでが転倒している状態にある。当該測定器は、鉄道の運転士資格(国家資格)である「動力車操縦者運転免許」の技能試験において現在も使用されているが、製造販売が中止されており将来的な維持管理に懸念がもたれ、代替品が切望されている。
【0040】
本実施形態の動揺測定器100では、吉田式車両動揺測定器30の測定駒34(34a,34b,・・・)の諸元を有する仮想剛体7を用意することで代用が可能である。吉田式車両動揺測定器30の測定駒34(34a,34b,・・・)は、特殊鋼の防錆加工した直方体形状を有しており、駒の厚さ違いで複数種類が存在する。具体的には、高さ50mm及び幅20mmは共通で、厚さが1mmピッチで6mm〜13mmの8種類と、厚さが15mm、17mm、19mm、21mmの4種類との、合計12種類が存在する。よって、これらの諸元を再現する仮想剛体7を同じように12種類用意することで、吉田式車両動揺測定器30を代用することが可能である。
【0041】
図7は、吉田式車両動揺測定器30の測定駒34(34a,34b,・・・)を模した各種仮想剛体における諸元と限界加速度Axの関係を示す表である。限界加速度Axは、前出の数式(4)により求められる。或いは、傾斜台に測定駒34(34a,34b,・・・)を立たせて徐々に傾斜角を増加させ、転倒を開始した傾斜角度から逆算して求めることもできる。
【0042】
図8は、各仮想剛体について、異なる加速度を加えた場合の、当該仮想剛体の重心Gが回転中心Oを通る鉛直線(線分OC)を通過するまでの時間Δtを示す表である。時間Δtは前出の数式(9)により求められる。
図7に示した各仮想剛体の限界加速度Axに最も近い加速度に対応する時間Δtを、太字の四角で囲って示している。
また、
図9は、各仮想剛体について、異なる加速度を加えた場合の当該加速度と時間Δtとの関係を示すグラフであり、併せて、
図7に示した限界加速度Axを破線で示し、交点に白丸を付している。
これらの図に於いて注目すべきは、各仮想剛体について、それぞれの限界加速度Axが作用した場合の時間Δtの値である。仮想剛体「測定駒B6」〜「測定駒B13」は厚さBが異なるにもかかわらず、ほぼΔt=0.1[sec]で一定となっている。よって、ローパスフィルタのカットオフ周波数fは2.5[Hz]に統一できると考えられる。
【0043】
図10は、カットオフ周波数を2.5[Hz]前後に設定したFIR型のデジタルフィルタによる周波数利得の一例を示すグラフである。同図に示すように、フィルタの特性上、通過エッジ周波数(2.5[Hz])〜遮断エッジ周波数(4.8[Hz])間の遷移域が存在するため、ある周波数を境に明確に通過/除去される周波数成分が分けられるものではない。よって、仮想剛体「測定駒B6」〜「測定駒B13」それぞれの時間Δtが厳密には異なるが、フィルタの特性を考慮すると、カットオフ周波数fを2.5[Hz]に統一して問題無いと考えられる。よって、本実施形態の動揺測定器100で「吉田式車両動揺測定器」を再現しようとした場合、ローパスフィルタのカットオフ周波数fを2.5[Hz]に設定するのが一つの例となる。但し、遷移域の幅を考慮して、カットオフ周波数を2.0〜3.0[Hz]のうちの一の周波数に設定するとしてもよい。以降では、動揺測定器100で「吉田式車両動揺測定器」を再現することを前提として説明をつづけることとする。
【0044】
尚、動揺測定器100にて従来のような計測データのグラフ表示や最大加速度や平均加速度と言った数値の表示を排除するものではなく、表示モデル8による表示とともに従来のような表示を行っても良いが、以降では従来のような表示に関して説明は省略する。
【0045】
[機能ブロックの説明]
図11は、動揺測定器100の機能構成例を示す機能ブロック図である。動揺測定器100は、操作入力部128と、加速度計測部130と、演算部140と、記憶部150と、通信I/F(Interface)180と、画像表示部182と、を有し、これらはバス190によりデータ送受可能に接続されている。動揺測定器100は、一種のコンピュータシステムとも言える。
【0046】
操作入力部128は、スイッチ、レバー、ダイヤル、キーボード、タッチパネル、マウス、トラックパッドなどの入力デバイスにより実現され、ユーザによる各種操作入力を受け付けて入力信号を出力する。例えば、測定開始前に使用する仮想剛体7の選択操作、測定開始及び終了操作などの入力に使用される。
図1のタッチパネル102や、操作入力キー104がこれに該当する。
【0047】
加速度計測部130は、測定したい動揺方向の加速度を計測して、計測値のデジタル信号を出力する。例えば、公知の加速度センサ、A/D変換器、インターフェースICなどにより実現できる。
図1の加速度センサ116がこれに含まれる。
【0048】
演算部140は、CPUやDSPなどの各種マイクロプロセッサ、ASICなどにより実現され、測定プログラム152を読み出して実行することで動揺測定のための各種演算処理を行う。
図1の制御基板110、CPU112がこれに該当する。そして、本実施形態の演算部140は、データログ管理部141と、仮想剛体選択部143と、ローパスフィルタ部145と、判定部147と、測定結果出力制御部149とを有する。
【0049】
データログ管理部141は、加速度計測部130から出力された加速度値(本実施形態では、X軸・Y軸・Z軸それぞれの加速度値Dx、Dy、Dz)に関する時系列の生データ(フィルタ処理されていない値)を記憶管理する制御を行う。データは、記憶部150にデータログ170として格納される。
【0050】
仮想剛体選択部143は、測定開始前に使用する仮想剛体をユーザに選択させるための制御を行う。本実施形態では、複数の仮想剛体7の中から用途に応じて予め選抜・組み合わせした仮想剛体の組み合わせ(セット)を仮想剛体セットデータ154として定義している。仮想剛体選択部143は、例えば、計測開始前に仮想剛体セットデータ154を一覧表示して、当該一覧から使用するセットをユーザに選択させる制御をする。選択された情報は使用セット名156となる。
【0051】
ローパスフィルタ部145は、指定されたカットオフ周波数を基準とする低域通過帯の加速度の検出信号を濾波するローパスフィルタ効果を演算処理により実現する。例えば、公知のデジタルフィルタソフトウェアにより実現できる。尚、ローパスフィルタ部145は、
図11中に一点鎖線で囲まれている部位のように、加速度計測部130の次段に設けるハードウェアとして実現されるローパスフィルタ(LPF)132の回路に置換することができる。
【0052】
判定部147は、厚さ方向を測定方向に向けて直立状態に設置した直方体状の仮想剛体の転倒をシミュレーションし、転倒する/しないを判定する。すなわち、各仮想剛体が転倒するか否かにより、動揺の程度を測定(検定)する。
【0053】
測定結果出力制御部149は、動揺測定の結果すなわち各仮想剛体に係る動揺検定の結果の出力制御を行う。本実施形態では、表示モデル8(
図5参照)を用いた3次元コンピュータグラフィックスで表現するので、3次元コンピュータグラフィックスの生成に関する処理や、画像表示部182の駆動制御を行うことができる。尚、3次元コンピュータグラフィックスの表示制御については、公知技術を適宜利用できるのでここでの説明は省略する。また、測定結果出力制御部149が、適宜仮想剛体別の転倒/未転倒の結果データの生成や、当該結果データを通信I/F180を介して外部装置に送信する制御を行うとしても良い。
【0054】
記憶部150は、動揺測定に必要な諸機能を実現するためのプログラムや各種データ等を記憶する。また、演算部140の作業領域として用いられ、演算部140が各種プログラムに従って実行した演算結果等を一時的に記憶する。また、加速度計測部130で計測された加速度データを時系列に記憶することができる。こうした機能は、例えばRAMやROMなどのICメモリ、ハードディスク等の磁気ディスク、CD−ROMやDVDなどの光学ディスク、着脱自在なメモリカードのリーダーライタなどによって実現される。
【0055】
本実施形態の記憶部150は、測定プログラム152と、複数の仮想剛体セットデータ154と、使用セット名156と、表示モデル制御データ158と、データログ170とを記憶する。その他、測定に必要な各種データを適宜記憶することができる。
【0056】
測定プログラム152は、演算部140が読み出して実行することにより、データログ管理部141、仮想剛体選択部143、ローパスフィルタ部145、判定部147、測定結果出力制御部149としての機能を実現させるためのプログラムである。なお、これらの一部をハードウェア回路として実現する構成の場合には、当該プログラム部分は適宜省略される。
【0057】
仮想剛体セットデータ154は、測定に使用可能な仮想剛体7の設定データを格納する。本実施形態では、
図12及び
図13に示すように、複数の仮想剛体7を組み合わせて予め用途別のセットを用意しておく。一つのセットは、セット名154aと測定方向154bにより識別され、セットに含まれる仮想剛体種類154cと対応づけて、諸元154d、適用されるカットオフ周波数154e、限界加速度154f、表示モデルデータ154gを格納する。
【0058】
セット名154aは、動揺測定の用途を端的に示す。
図12及び
図13の例では、「吉田式車両動揺測定器」を再現することを前提としているので、「一般車両用」「鉱山軌道用」の2種類が用意されている。勿論、高い乗り心地が要求される「高速鉄道用」などその他のセットデータを適宜設けることができる。
【0059】
測定方向154bは、測定される加速度の方向が定義されている。車両進行方向の加速減速に伴う動揺を測定する場合は、これまで説明したように「X軸方向」とされる。これとは別に、左右方向の動揺の測定を目的とするセットでは「Y軸方向」が設定される。上下方向の動揺の測定を目的とするセットでは「Z軸方向」が設定される。動揺測定は、この測定方向154bで設定されている方向の加速度成分に基づいて行われる。
【0060】
諸元154dは、対応する仮想剛体7の諸元、本実施形態では転倒させる力すなわち加速度が作用する方向の厚さBと、高さHを定義する。
【0061】
カットオフ周波数154eは、測定方向154bで設定された加速度成分に適用されるローパスフィルタによるゲイン低下を開始する周波数を定義する。
図12及び
図13の例では、「一般車両用」「鉱山軌道用」の二つセットでは、何れの仮想剛体にも共通して2.5[Hz]が設定されているが個別の値を設定する構成も可能である。同様に、諸元(例えば高さH)が異なる仮想剛体を組み合わせたセットであったとしても、フィルタの特性等を踏まえて、仮想剛体7が静止状態から転倒開始までの時間Δtの差意が、諸元違いでも実用上問題とならないと見なせるならば、共通して同一のカットオフ周波数を設定しても良い。
図12及び
図13の例では、高さ及び幅が同一の仮想剛体のセットであるため、共通して同一のカットオフ周波数が設定されている。
【0062】
限界加速度154fは、対応する仮想剛体7の限界加速度Axの値である。
図2の数式(4)により予め求めるとしても良いし、仮想剛体7が何らかの実物を模擬するのであれば当該実物を用いた実測値を設定するとしても良い。実測値の測定は、例えば模擬する実物を傾斜台に立て、傾斜台の傾斜角度を徐々に増加させて、転倒開始角度から逆算するとしても良い。
【0063】
表示モデルデータ154gは、対応する仮想剛体7の動揺測定結果の表示出力に使用するデータである。本実施形態では、3次元コンピュータグラフィックスにより表現するので表示用のモデルデータ(オブジェクトデータ、テクスチャデータなど)が格納されている。ここでは「吉田式車両動揺測定器」を再現することを前提としているので、表示用モデルのデザインは、「吉田式車両動揺測定器」の測定駒を模した直方体を成しているがこれに限らない。
【0064】
図11に戻って、記憶部150は使用セット名156を記憶する。
測定開始前には、複数の仮想剛体セットデータ154の内、何れを使用するかがユーザにより選択される。選択されたセット名が使用セット名156として記憶される。
【0065】
表示モデル制御データ158は、選択された仮想剛体セットに含まれる仮想剛体別に用意され、表示制御に必要なデータを格納する。例えば、仮想剛体種類158aと対応付けて、表示モデルの姿勢制御データ158bや、表示色設定データ158cを格納することができる。
【0066】
通信I/F180は、動揺測定器100外の装置とのデータ通信を実現する。いわゆるインターフェースIC、通信端子、無線装置、等を適宜流用可能である。例えば、データログ170や、動揺測定の結果のデータ等を、動揺測定器100外へ出力することができる。
図1の通信モジュール118がこれに該当する。
【0067】
画像表示部182は、例えば、フラットパネルディスプレイ、ヘッドマウントディスプレイ、などの画像表示デバイス及びそのドライバ回路により実現できる。
図1のタッチパネル102がこれに該当する。
【0068】
図14は、本実施形態における動揺測定に係る処理の流れを説明するためのフローチャートであって、演算部140が測定プログラム152を読み出して実行することにより実現できる。尚、前提として、動揺測定器100は加速度センサ116の計測X軸方向が、車両の前後方向に合わせて設置される。より望ましくは、動揺測定器100は水平に、すなわち計測Z軸方向が鉛直方向を向くように設置されているものとする。
【0069】
演算部140は先ず、使用する仮想剛体の選択入力処理を行う(ステップS4)。具体的には、例えばタッチパネル102に仮想剛体セットデータ154のセット名154aを選択可能に一覧表示制御し、ユーザによる選択操作(例えば、セット名のタッチ操作)を受け付ける。
【0070】
次に、演算部140は、ローパスフィルタの設定を行う(ステップS6)。選択された仮想剛体セットデータ154のカットオフ周波数154eを設定する。以降、加速度計測部130から出力される加速度データの内、測定方向154bに定義されている方向の加速度成分は、設定されたカットオフ周波数に基づいてローパスフィルタ処理される。
【0071】
次に、演算部140は、測定結果を画像表示するための表示モデル8(
図5参照)のグラフィック表示を開始する(ステップS8)。
【0072】
そして、測定開始の操作入力が行われたならば、動揺測定が開始される。
すなわち、演算部140がデータログ170の蓄積的な記憶制御を開始し(ステップS12)、今回の測定に使用される仮想剛体別にループAの処理を実行する(ステップS20〜S26)。
【0073】
ループAでは、ローパスフィルタを通過した加速度値Dxp(
図4参照)が、処理対象としている仮想剛体の限界加速度154f(
図12〜
図13参照)以上であれば(ステップS22のYES)、当該処理対象の仮想剛体は「転倒する」と判定され、対応する表示モデルを転倒させるように表示制御する(ステップS24)。
図5の例で言うと、ローパスフィルタから出力される加速度値が「マイナス」すなわち減速である場合には、画面上方向(画面における車両前方)へ表示モデル8を転倒させ、転倒前と異なる表示色に変更する。もし、ローパスフィルタから出力された加速度値が「プラス」すなわち増速である場合には、画面下方向(画面における車両後方)へ表示モデル8を転倒させ、転倒前と異なる表示色に変更する。そして、ループAを終了する(ステップS26)。
もし、ローパスフィルタから出力される加速度値が、処理対象としている仮想剛体の限界加速度154f未満であれば(ステップS22のNO)、当該処理対象の仮想剛体は「転倒しない」と判定され、対応する表示モデルの転倒表示は行わずにループAを終了する(ステップS26)。
【0074】
ループAは、所定の測定終了操作が検出されるまで所定のサンプリング周期で繰り返され(ステップS30のNO)、測定終了操作が検出されると(ステップS30のYES)、一連の処理を終了する。
【0075】
以上、本実施形態によれば、動揺測定の結果を、一目瞭然に識別可能とすることができる。そして、仮想剛体を適当に設定することで「動力車操縦者運転免許」の実技試験等で使用されている「吉田式車両動揺測定器」をデジタル機器として再現し、置き換えることができる。
【0076】
尚、本実施形態では、主に車両前後方向の加速度(X軸方向加速度Dx)に基づいて測定する例を示したが、前述のように仮想剛体セットデータ154の測定方向154bの設定によっては、車両左右方向の加速度(Y軸方向加速度Dy)に基づいて測定したり、上下方向の加速度(Z軸方向加速度Dz)に基づいて測定することもできる。その場合、表示モデル8による測定結果の表示は、タッチパネル102における車両の前後・左右・上下の設定に応じて、適宜転倒表示する方向を測定方向154bの設定に合わせるものとする。