(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5940965
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月29日
(54)【発明の名称】ノイズ低減構造
(51)【国際特許分類】
H03H 7/01 20060101AFI20160616BHJP
H01G 2/04 20060101ALI20160616BHJP
【FI】
H03H7/01 Z
H01G1/03 C
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-258422(P2012-258422)
(22)【出願日】2012年11月27日
(65)【公開番号】特開2014-107659(P2014-107659A)
(43)【公開日】2014年6月9日
【審査請求日】2015年7月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社日本自動車部品総合研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木田 喜啓
(72)【発明者】
【氏名】深川 康弘
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 薫
(72)【発明者】
【氏名】杉田 昌行
【審査官】
石川 雄太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−088913(JP,A)
【文献】
実開平02−038724(JP,U)
【文献】
実開昭55−149938(JP,U)
【文献】
特開2007−250831(JP,A)
【文献】
特開平11−297544(JP,A)
【文献】
特開2005−033813(JP,A)
【文献】
特開2012−005111(JP,A)
【文献】
特開2011−100886(JP,A)
【文献】
特開2008−041930(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 7/01
H01G 2/04
H01R 4/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器の内部に設けられるノイズ低減構造であって、
延在部および前記延在部から突出するように設けられた第1突起部を含む第1導電部材と、
前記第1突起部の外周に設けられた第1誘電体と、
前記第1誘電体の外周に設けられた第2導電部材と、を備え、
前記第2導電部材は、
前記第1誘電体を介して前記第1突起部を挟持する挟持部と、
前記挟持部を接地電位に接続する接続部と、を含む、
ノイズ低減構造。
【請求項2】
前記挟持部の内周は、前記第1突起部の外周よりも小さい、
請求項1に記載のノイズ低減構造。
【請求項3】
第1貫通穴を有し、前記延在部から見て前記第1突起部の反対側に配置される第3導電部材をさらに備え、
前記第1導電部材は、前記第1突起部の突出方向の先端から前記第1突起部の内部を通って前記延在部の前記反対側にまで貫通する第2貫通穴を有し、
前記第1導電部材および前記第3導電部材は、前記第1貫通穴および前記第2貫通穴に差し込まれた締結具によって互いに固定される、
請求項1または2に記載のノイズ低減構造。
【請求項4】
前記第2貫通穴は、ネジ穴である、
請求項3に記載のノイズ低減構造。
【請求項5】
前記第1誘電体に代えて、前記第1突起部の外周および/または前記第2導電部材の前記挟持部の内周に形成された絶縁被膜を備える、
請求項1から4のいずれかに記載のノイズ低減構造。
【請求項6】
前記第1導電部材の前記第1突起部を外側から囲うように配置され、前記延在部から突出するように設けれた第2突起部と、
前記第2突起部の外周に設けられた第2誘電体と、
前記第2誘電体の外周に設けられた他の導電部材と、をさらに備え、
前記他の導電部材は、前記第2誘電体を介して前記第2突起部を挟持するとともに、接地電位に接続される、
請求項1から5のいずれかに記載のノイズ低減構造。
【請求項7】
前記第2導電部材の前記挟持部の外周に設けられた他の誘電体と、
前記第1導電部材に電気的に接続され、前記他の誘電体の外周に設けられた高電位導体と、をさらに備える、
請求項1から5のいずれかに記載のノイズ低減構造。
【請求項8】
前記第1突起部は、円柱状または楕円柱状の形状を有する、
請求項1から7のいずれかに記載のノイズ低減構造。
【請求項9】
前記接続部は、湾曲または屈曲する曲がり部を有する、
請求項1から8のいずれかに記載のノイズ低減構造。
【請求項10】
前記接続部は、波状の形状を有する波状部を有する、
請求項1から9のいずれかに記載のノイズ低減構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源側から負荷側へ電力を供給するときに発生する伝導ノイズ電流の外部への漏洩を抑制可能なノイズ低減構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2008−136333号公報(特許文献1)は、電力変換装置に関する発明を開示している。この電力変換装置は、対地絶縁された一対の電源ライン用導体の一つに電源ライン側主電極端子が接続された複数の電力用半導体スイッチング素子を有して一対の電源ライン用導体との間で電力を授受する電力変換回路と、複数の電力用半導体スイッチング素子が固定された導電体とを備える。複数の電力用半導体スイッチング素子の電源ライン側主電極端子はそれぞれ、コンデンサを介して導電体に電気的に接続されている。同公報は、この電力変換装置によれば、内蔵した電力用半導体スイッチング素子のスイッチングに起因して発生するコモンモードノイズを良好に低減することができると述べている。
【0003】
実開平06−013013号公報(特許文献2)は、スイッチング回路用バスバーに関する発明を開示している。このスイッチング回路用バスバーは、正の電源に接続された第1導電部材と、負の電源に接続された第2導電部材と、第1および第2の導電部材間に設けられた絶縁部材とにより構成される。同公報は、このスイッチング回路用バスバーによれば、バスバーにコンデンサの機能を備えさせることができると述べている。
【0004】
実開平05−33518号公報(特許文献3)は、ボルト型コンデンサー素子に関する発明を開示している。このボルト型コンデンサー素子は、頭部と該頭部に一体に取り付けられ所定の方向に延在するとともに外周面にねじ部が形成されたボルト本体部とを有する導電性ボルトと、ボルト本体部内に配設されたコンデンサー部とを備える。コンデンサー部は所定方向に延びボルト本体に接触する導電性ケース体と、導電性ケース内に充填された誘電体と、誘電体内に配置され所定方向に延びるとともにボルト本体部から突出する信号ピンとを有する。同公報は、このボルト型コンデンサー素子によれば、取り付け作業を簡易に行なうことができると述べている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−136333号公報
【特許文献2】実開平06−013013号公報
【特許文献3】実開平05−33518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、電源側から負荷側へ電力を供給するときに発生する伝導ノイズ電流の外部への漏洩を抑制するノイズ低減構造を、より簡易な構成で得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に基づくノイズ低減構造は、電子機器の内部に設けられるノイズ低減構造であって、延在部および上記延在部から突出するように設けられた第1突起部を含む第1導電部材と、上記第1突起部の外周に設けられた第1誘電体と、上記第1誘電体の外周に設けられた第2導電部材と、を備え、上記第2導電部材は、上記第1誘電体を介して上記第1突起部を挟持する挟持部と、上記挟持部を接地電位に接続する接続部と、を含む。
【0008】
好ましくは、上記挟持部の内周は、上記第1突起部の外周よりも小さい。好ましくは、第1貫通穴を有し、上記延在部から見て上記第1突起部の反対側に配置される第3導電部材をさらに備え、上記第1導電部材は、上記第1突起部の突出方向の先端から上記第1突起部の内部を通って上記延在部の上記反対側にまで貫通する第2貫通穴を有し、上記第1導電部材および上記第3導電部材は、上記第1貫通穴および上記第2貫通穴に差し込まれた締結具によって互いに固定される。好ましくは、上記第2貫通穴は、ネジ穴である。
【0009】
好ましくは、上記第1誘電体に代えて、上記第1突起部の外周および/または上記第2導電部材の上記挟持部の内周に形成された絶縁被膜を備える。好ましくは、上記第1導電部材の上記第1突出部を外側から囲うように配置され、上記延在部から突出するように設けれた第2突起部と、上記第2突起部の外周に設けられた第2誘電体と、上記第2誘電体の外周に設けられた他の導電部材と、をさらに備え、上記他の導電部材は、上記第2誘電体を介して上記第2突起部を挟持するとともに、接地電位に接続される。
【0010】
好ましくは、上記第2導電部材の上記挟持部の外周に設けられた他の誘電体と、上記第1導電部材に電気的に接続され、上記他の誘電体の外周に設けられた高電位導体と、をさらに備える。好ましくは、上記第1突起部は、円柱状または楕円柱状の形状を有する。
【0011】
好ましくは、上記接続部は、湾曲または屈曲する曲がり部を有する。好ましくは、上記接続部は、波状の形状を有する波状部を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電源側から負荷側へ電力を供給するときに発生する伝導ノイズ電流の外部への漏洩を抑制するノイズ低減構造を、より簡易な構成で得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施の形態1におけるノイズ低減構造を示す側面図である。
【
図2】
図1中のII−II線に沿った矢視断面図である。
【
図3】実施の形態1におけるノイズ低減構造の分解した状態を示す斜視図である。
【
図4】実施の形態1におけるノイズ低減構造に用いられる導電部材(第1導電部材)を示す側面図である。
【
図5】実施の形態1におけるノイズ低減構造の等価回路を示す図である。
【
図6】実施の形態2におけるノイズ低減構造を示す側面図である。
【
図7】
図6中のVII−VII線に沿った矢視断面図である。
【
図8】実施の形態3におけるノイズ低減構造を示す側面図である。
【
図9】実施の形態3におけるノイズ低減構造の分解した状態を示す斜視図である。
【
図10】実施の形態3の変形例におけるノイズ低減構造の分解した状態を示す斜視図である。
【
図11】実施の形態4におけるノイズ低減構造を示す側面図である。
【
図12】実施の形態4におけるノイズ低減構造に用いられる導電部材を示す斜視図である。
【
図13】実施の形態5におけるノイズ低減構造を示す側面図である。
【
図14】実施の形態5におけるノイズ低減構造に用いられる高電位導体を示す斜視図である。
【
図15】実施の形態6におけるノイズ低減構造を示す側面図である。
【
図16】実施の形態6の変形例におけるノイズ低減構造を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に基づいた各実施の形態について、以下、図面を参照しながら説明する。各実施の形態の説明において、個数および量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数およびその量などに限定されない。各実施の形態の説明において、同一の部品および相当部品に対しては、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。
【0015】
[実施の形態1]
図1は、実施の形態1におけるノイズ低減構造100を示す側面図である。
図2は、
図1中のII−II線に沿った矢視断面図である。
図3は、ノイズ低減構造100の分解した状態を示す斜視図である。
図4は、ノイズ低減構造100に用いられる導電部材10を示す側面図である。
【0016】
図1〜
図3を参照して、ノイズ低減構造100は、電力変換装置などの電子機器の内部に設けられる。ノイズ低減構造100は、たとえば、自動車を駆動するための電源およびモータ(負荷)同士の間に設けられ、電力を送電するための電力ケーブルとして機能するバスバーの周りに設けられる。本実施の形態のノイズ低減構造100は、第1導電部材としての導電部材10、第1誘電体としての誘電体71、および第2導電部材としての導電部材20を備える。
【0017】
導電部材10は、延在部15および突起部11(第1突起部)を含む。延在部15は、側面15S,15Tを有し、長板状に形成される。延在部15は、バスバー(ブスバーまたは母線ともいう)として機能する。突起部11は、延在部15の側面15Sから外方に向かって突出するように設けられる。
【0018】
本実施の形態の突起部11は、円柱状の形状を有し、延在部15が延在している方向に対して直交する方向に沿って延びている。本実施の形態の突起部11の外周11Sは、直径11D(
図3参照)を有している。ここで言う円柱状の形状とは、突起部11の突出方向に対して直交する方向の突起部11の断面形状が、円形からなる場合を意味する。ここで言う円柱状の形状とは、突起部11の一部が円柱状の形状を有している場合、および、突起部11の全部が円柱状の形状を有している場合を含む。突起部11の一部が円柱状の形状を有している場合には、たとえば突起部11の突出方向の先端の外周に適宜面取り加工が施されている場合等を含む。
【0019】
突起部11は、円柱状に限られず、たとえば楕円柱状の形状を有していてもよい。ここで言う楕円柱状の形状とは、突起部11の突出方向に対して直交する方向の突起部11の断面形状が、楕円形からなる場合を意味する。ここで言う楕円柱状の形状とは、突起部11の一部が楕円柱状の形状を有している場合、および、突起部11の全部が楕円柱状の形状を有している場合を含む。突起部11の一部が楕円柱状の形状を有している場合には、たとえば突起部11の突出方向の先端の外周に適宜面取り加工が施されている場合等を含む。
【0020】
誘電体71は、シート状の形状を有し、突起部11の外周11S(
図3参照)に巻回される(
図1および
図2参照)。
図3においては、誘電体71が丸められて、誘電体71が円筒状に形成された状態が模式的に示されている。本実施の形態の誘電体71の外周71Sは、直径71D(
図3参照)を有している。
【0021】
導電部材20は、挟持部22および接続部24を含む。挟持部22は、突起部11の外周11Sの形状に対応する形状を有する。挟持部22の内周22Sは、突起部11の外周11Sよりも小さい。ここで言う挟持部22の内周22Sが突起部11の外周11Sよりも小さい場合には、内周22Sの表面積が外周11Sの表面積よりも小さい場合、突起部11の突出方向に対して直交する方向における内周22Sのある断面における周長さが突起部11の突出方向に対して直交する方向における外周11Sのある断面における周長さよりも小さい場合、および、突起部11の突出方向に対して直交する方向における内周22Sのある断面の面積が突起部11の突出方向に対して直交する方向における外周11Sのある断面の面積よりも小さい場合を含む。
【0022】
本実施の形態の挟持部22は、全体として略円筒状に形成され、挟持部22の周方向の一部は、筒軸方向に沿って破断された形状を有している。本実施の形態の挟持部22の内周22Sのうちの破断されていない部分は、直径22D(
図4参照)を有している。挟持部22は、誘電体71の外周71Sに接して設けられる。直径22Dは、突起部11の外周11Sの直径11Dよりも小さい。接続部24は、全体として略L字状の形状を有し、挟持部22から垂れ下がるように設けられる。接続部24は、挟持部22を接地電位60(電子機器の筺体等)に接続する。
【0023】
ノイズ低減構造100が組み立てられるときは、誘電体71が突起部11の外周11Sに巻回される。次に、導電部材20の挟持部22が径方向の外側に向かって弾性的に広げられた状態で、導電部材20の挟持部22が誘電体71の外周に配置される。その後、挟持部22に加えている外力を開放する。挟持部22の復元力を利用して、挟持部22は誘電体71を介して突起部11を挟持する。導電部材20の挟持部22は、誘電体71の外周に密着し、突起部11の外周に容易に固定されることができる。ノイズ低減構造100が組み立てられた状態においては、突起部11、誘電体71および導電部材20の間にコンデンサ(
図5におけるコンデンサ16を参照)が形成される。
【0024】
図5は、ノイズ低減構造100の等価回路を示す図である。ノイズ低減構造100においては、電源側から負荷側へは、負荷電流AR1に加えて、電源側の半導体素子などによって発生する伝導ノイズ電流AR2が伝搬しようとする。負荷電流AR1は、直流もしくは低周波の交流であり、延在部15の寄生インダクタンスL1,L2を流れる。一方で、伝導ノイズ電流AR2は、負荷電流AR1に比べて高周波の交流であり、コンデンサ16を経由して筺体(接地電位60)へ伝搬する。これにより、伝導ノイズ電流AR2が負荷側へ、ひいては電子機器の外部に伝搬することは抑制される。伝導ノイズ電流AR2による延在部15の周辺に配置された電子機器への電磁場による影響は、効果的に抑制することが可能となる。
【0025】
[実施の形態2]
図6は、実施の形態2におけるノイズ低減構造200を示す側面図である。
図7は、
図6中のVII−VII線に沿った矢視断面図である。
【0026】
図6および
図7を参照して、ノイズ低減構造200は、上述の実施の形態1におけるノイズ低減構造100(
図1参照)の構成に加えて、第3導電部材としての導電部材30をさらに備える。導電部材30は、長板状に形成され、第1貫通穴としての貫通穴30H(
図7参照)を有する。導電部材30は、導電部材10の延在部15から見て突起部11の反対側(側面15Tの側)に配置される。
【0027】
ノイズ低減構造200に用いられる第1導電部材としての導電部材10Aは、第2貫通穴としての貫通穴11H(
図6および
図7参照)を有する。貫通穴11Hは、突起部11の突出方向の先端から突起部11の内部を通って延在部15の側面15Tにまで貫通している。
【0028】
導電部材10および導電部材30は、貫通穴30Hおよび貫通穴11Hに差し込まれた締結具35によって互いに固定される。本実施の形態の貫通穴11Hは、ネジ穴である。締結具35としては、たとえばボルト等が用いられる。貫通穴11Hがネジ穴出ない場合には、締結具35としてはボルトおよびナット等が用いられるとよい。
【0029】
ノイズ低減構造200によれば、上述の実施の形態1のノイズ低減構造100と同様の作用および効果が得られるだけでなく、導電部材10および導電部材30同士を容易に固定することも可能となる。
【0030】
[実施の形態3]
図8は、実施の形態3におけるノイズ低減構造300を示す側面図である。
図9は、ノイズ低減構造300の分解した状態を示す斜視図である。ノイズ低減構造300においては、上述の実施の形態1におけるノイズ低減構造100の誘電体71に代えて、絶縁被膜75が用いられる。絶縁被膜75は、突起部11の外周に予め形成されている。当該構成によっても、上述の実施の形態1と同様の作用および効果を得ることができる。
【0031】
図10は、実施の形態3の変形例におけるノイズ低減構造301の分解した状態を示す斜視図である。
図10に示すように、絶縁被膜75は、導電部材20の挟持部22の内周に予め形成されていてもよい。当該構成によっても、上述の実施の形態1と同様の作用および効果を得ることができる。
【0032】
[実施の形態4]
図11は、実施の形態4におけるノイズ低減構造400を示す側面図である。
図12は、ノイズ低減構造400に用いられる導電部材10Bを示す斜視図である。導電部材10Bは、上述の実施の形態1で用いられる導電部材10(
図3参照)の構成に加えて、第2突起部としての突起部12を有している。
【0033】
突起部12は、延在部15が延在している方向に対して直交する方向に沿って延びている。突起部12は、全体として略円筒状に形成され、突起部12の周方向の一部は、筒軸方向に沿って破断された形状を有している。突起部12は、導電部材10の突起部11を外側から囲うように配置される。本実施の形態においては、突起部11および突起部12は同心円状に配置されている。突起部12と突起部11との間には、円環状の形状を有する空隙が設けられる。
【0034】
この空隙の中には(換言すると、突起部11と突起部12との間には)、誘電体71および導電部材20の挟持部22が配置される。誘電体71は、上述の実施の形態1と同様に、突起部11の外周に巻回される。導電部材20の挟持部22は、上述の実施の形態1と同様に、誘電体71の外周に固定される。突起部12の外周には、第2誘電体としての誘電体72が巻回される。
【0035】
誘電体72の外周には、他の導電部材としての導電部材40(接続部44)が固定される。導電部材40は、導電部材20と略同様の形状を有し、挟持部42および接続部44を含む。接続部44は、突起部12の外周の形状に対応する形状を有する。挟持部42の内周は、突起部12の外周よりも小さい。
【0036】
ここで言う挟持部42の内周が突起部12の外周よりも小さい場合には、挟持部42の内周の表面積が突起部12の外周の表面積よりも小さい場合、突起部12の突出方向に対して直交する方向における挟持部42の内周のある断面における周長さが突起部12の突出方向に対して直交する方向における突起部12の外周のある断面における周長さよりも小さい場合、および、突起部12の突出方向に対して直交する方向における挟持部42の内周のある断面の面積が突起部12の突出方向に対して直交する方向における突起部12の外周のある断面の面積よりも小さい場合を含む。
【0037】
本実施の形態の挟持部42は、全体として略円筒状に形成され、挟持部42の周方向の一部は、筒軸方向に沿って破断された形状を有している。挟持部42は、誘電体72の外周に接して設けられる。挟持部42のうちの破断されていない部分の内周の直径は、突起部12のうちの破断されていない部分の外周の直径よりも小さい。接続部44は、全体として略L字状の形状を有し、挟持部42から垂れ下がるように設けられる。接続部44は、挟持部42を接地電位60(電子機器の筺体等)に接続する。
【0038】
ノイズ低減構造400が組み立てられるときは、誘電体72が突起部12の外周に巻回される。次に、導電部材40の挟持部42が径方向の外側に向かって弾性的に広げられた状態で、導電部材40の挟持部42が誘電体72の外周に配置される。その後、挟持部42に加えている外力を開放する。挟持部42の復元力を利用して、挟持部42は誘電体72を介して突起部12を挟持する。導電部材40の挟持部42は、誘電体72の外周に密着し、突起部12の外周に容易に固定されることができる。ノイズ低減構造400が組み立てられた状態においては、突起部12、誘電体72および導電部材40の間にも、コンデンサが形成される。ノイズ低減構造400によれば、上述の実施の形態1におけるノイズ低減構造100に比べてより大きな静電容量を有するコンデンサを形成することが可能となる。
【0039】
[実施の形態5]
図13は、実施の形態5におけるノイズ低減構造500を示す側面図である。
図14は、ノイズ低減構造500に用いられる高電位導体50を示す斜視図である。ノイズ低減構造500は、上述の実施の形態1におけるノイズ低減構造100の構成に加えて、他の誘電体としての誘電体73および高電位導体50をさらに備えている。誘電体73は、導電部材20の挟持部22の外周に設けられる。
【0040】
高電位導体50は、挟持部52および取付部54を有する。本実施の形態の挟持部52は、全体として略円筒状に形成され、挟持部52の周方向の一部は、筒軸方向に沿って破断された形状を有している。本実施の形態の挟持部52の内周のうちの破断されていない部分の直径は、導電部材20の挟持部22の外周のうちの破断されていない部分の直径よりも小さい。挟持部52は、誘電体73の外周に接して設けられる。取付部54は、貫通穴54Hを有し、ネジ56を用いて導電部材10の延在部15に取り付けられる。高電位導体50は、導電部材10に電気的に接続される。
【0041】
ノイズ低減構造500が組み立てられるときは、誘電体73が挟持部22の外周に巻回される。次に、高電位導体50の挟持部52が径方向の外側に向かって弾性的に広げられた状態で、高電位導体50の挟持部52が誘電体73の外周に配置される。その後、挟持部52に加えている外力を開放する。挟持部52の復元力を利用して、挟持部52は誘電体73を介して導電部材20の挟持部22を挟持する。高電位導体50の挟持部52は、誘電体73の外周に密着し、挟持部22の外周に容易に固定されることができる。ノイズ低減構造500によれば、伝導ノイズ電流が負荷側へ、ひいては電子機器の外部に伝搬することをより一層抑制することが可能となる。
【0042】
[実施の形態6]
図15を参照して、ノイズ低減構造600に用いられる導電部材20Aのように、接続部24の長手方向の途中部分には、曲がり部26が設けられていてもよい。
図15に示される曲がり部26は、湾曲する形状を有するが、曲がり部26は、屈曲する形状を有していてもよい。導電部材20Aに振動が加わったとしても、突起部11に作用する応力および導電部材20Aに作用する応力は緩和される。これらの耐用期間を長くすることができるだけでなく、導電部材20Aは、接地電位60と適切に接触を保つこともできる。
【0043】
図16を参照して、ノイズ低減構造601に用いられる導電部材20Bのように、接続部24の長手方向の途中部分には、波状部28が設けられていてもよい。波状部28は、波状の形状を有する。導電部材20Bに振動が加わったとしても、突起部11に作用する応力および導電部材20Bに作用する応力は緩和される。これらの耐用期間を長くすることができるだけでなく、導電部材20Bは、接地電位60と適切に接触を保つこともできる。
【0044】
以上、本発明に基づいた各実施の形態について説明したが、今回開示された各実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0045】
10,10A,10B,20,20A,20B,30,40 導電部材、11,12 突起部、11D,22D,71D 直径、11H,30H,54H 貫通穴、11S,71S 外周、15 延在部、15S,15T 側面、16 コンデンサ、22,42,52 挟持部、22S 内周、24,44 接続部、26 曲がり部、28 波状部、35 締結具、50 高電位導体、54 取付部、56 ネジ、60 接地電位、71,72,73 誘電体、75 絶縁被膜、100,200,300,301,400,500,600,601 ノイズ低減構造、AR1 負荷電流、AR2 伝導ノイズ電流、L1,L2 寄生インダクタンス。