特許第5940971号(P5940971)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5940971
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月29日
(54)【発明の名称】ロック装置
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/639 20060101AFI20160616BHJP
   B60L 11/18 20060101ALI20160616BHJP
   E05B 49/00 20060101ALN20160616BHJP
   B60R 25/0215 20130101ALN20160616BHJP
【FI】
   H01R13/639 Z
   B60L11/18 C
   !E05B49/00 K
   !B60R25/0215
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-272499(P2012-272499)
(22)【出願日】2012年12月13日
(65)【公開番号】特開2014-120232(P2014-120232A)
(43)【公開日】2014年6月30日
【審査請求日】2015年5月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】胡桃澤 直乙
(72)【発明者】
【氏名】加原 啓次
(72)【発明者】
【氏名】片桐 寿治
【審査官】 楠永 吉孝
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0232761(US,A1)
【文献】 特開2011−258376(JP,A)
【文献】 特開2012−212647(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/639
B60L 11/18
B60R 25/0215
E05B 49/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロック及びアンロックの切り替えに関わるロック部材を、給電口に関係するロック対象物に対して固定又は非固定とすることにより、前記ロック対象物を取り外し不能にロック又は取り外し可能にアンロックするロック装置において、
前記ロック部材がロック状態にあるとき、当該ロック部材は、ロック状態維持されつつもアンロック側への動き許容され、
記ロック部材の動作を検出する検出部を備え、
前記ロック対象物が前記ロック部材をロック状態からアンロック側へ動かしたときに、前記検出部は検出信号を出力し、
ロック及びアンロックの少なくとも一方の動作を開始する際のトリガとして前記検出部の検出信号を使用し、
前記検出信号に基づき、係止ピンが前記ロック部材の溝部に対して係止することで、当該ロック部材を前記ロック対象物に対して固定とする一方、前記検出信号に基づき、前記係止ピンが前記ロック部材の前記溝部から離脱することで、当該ロック部材を前記ロック対象物に対して非固定とする
ことを特徴とするロック装置。
【請求項2】
前記ロック対象物が前記ロック部材をロック状態からアンロック側へ動かしたとき、当該ロック部材は、ロック状態が維持されつつも、前記係止ピンとの間の隙間からなるストローク分だけアンロック側への動きが許容される
ことを特徴とする請求項1に記載のロック装置。
【請求項3】
前記ロック対象物が前記ロック部材をアンロック状態からロック側へ動かしたことに伴い、前記係止ピンが前記ロック部材の案内斜面に当接したとき、当該案内斜面により前記係止ピンが前記溝部へ案内される
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のロック装置。
【請求項4】
前記検出部の検出信号を前記トリガとして、電子キーとの間の無線通信による認証を実行する認証手段と、
前記認証が成立することを条件にアクチュエータをアンロック動作させて、前記ロック部材のアンロック側への動作を許容することにより、アンロック状態に切り替える制御手段とを備えた
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のロック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロック対象物をロック/アンロックするロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題への意識の高まりから、二酸化炭素の排出量の少ない車両として、例えばプラグインハイブリッド車や電気自動車等の普及が進んでいる。これら車両は、例えば長距離走行してバッテリの残量が減ると、その度にバッテリを充電しなくてはならない。よって、車体には給電口が設けられ、充電設備から延びる充電ケーブルを給電口に接続し、充電設備から供給される電力でバッテリを充電する。バッテリ充電には長時間かかるので、充電ケーブルの付け替えや盗難等の防止を目的として、車体には、接続された充電ケーブルを車体にロックする充電ケーブルロック装置が搭載される傾向にある(特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−081917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種のバッテリ充電式の車両では、充電作業を終了した際、充電ケーブルをインレットから抜き取る必要がある。このとき、充電ケーブルが車体にロックされていると、充電ケーブルロックをアンロックしてから充電ケーブルを抜き取る必要があり、このアンロック作業が面倒に感じる問題があった。よって、充電ケーブルロック装置をアンロックして充電ケーブルを給電口から引き抜くまでの操作を、なるべく簡素化して、ユーザの利便性を向上したいニーズがあった。なお、これは、充電ケーブルロック装置に限らず、例えばリッドを閉状態でロックするリッドロック装置等でも同様に言える。
【0005】
本発明の目的は、動作の切り替え時にユーザに課す操作の利便性を向上することができるロック装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記問題点を解決するために、本発明では、ロック及びアンロックの切り替えに関わるロック部材を、給電口に関係するロック対象物に対して固定又は非固定とすることにより、前記ロック対象物を取り外し不能にロック又は取り外し可能にアンロックするロック装置において、前記ロック部材がロック状態にあるとき、当該ロック部材は、ロック状態維持されつつもアンロック側への動き許容され、前記ロック部材の動作を検出する検出部を備え、前記ロック対象物が前記ロック部材をロック状態からアンロック側へ動かしたときに、前記検出部は検出信号を出力し、ロック及びアンロックの少なくとも一方の動作を開始する際のトリガとして前記検出部の検出信号を使用し、前記検出信号に基づき、係止ピンが前記ロック部材の溝部に対して係止することで、当該ロック部材を前記ロック対象物に対して固定とする一方、前記検出信号に基づき、前記係止ピンが前記ロック部材の前記溝部から離脱することで、当該ロック部材を前記ロック対象物に対して非固定とすることを要旨とする。
【0007】
本発明の構成によれば、例えばロック対象物を給電口に接続したり、給電口からロック対象物を外したりするとき、この動作の過程でロック対象物がロック部材を押し、このロック部材の動きを検出部が検出する。そして、この検出動作をトリガにして、ロック装置のロック/アンロックが切り替えられる。このため、ロック対象物を給電口に接続したり外したりする一連の過程でロック装置を切り替えることが可能となるで、ロック装置のロック/アンロックの切り替えを楽に行うことが可能となる。
本発明では、前記ロック対象物が前記ロック部材をロック状態からアンロック側へ動かしたとき、当該ロック部材は、ロック状態が維持されつつも、前記係止ピンとの間の隙間からなるストローク分だけアンロック側への動きが許容されることを要旨とする。
本発明では、前記ロック対象物が前記ロック部材をアンロック状態からロック側へ動かしたことに伴い、前記係止ピンが前記ロック部材の案内斜面に当接したとき、当該案内斜面により前記係止ピンが前記溝部へ案内されることを要旨とする。
【0008】
発明では、前記検出部の検出信号を前記トリガとして、電子キーとの間の無線通信による認証を実行する認証手段と、前記認証が成立することを条件にアクチュエータをアンロック動作させて、前記ロック部材のアンロック側への動作を許容することにより、アンロック状態に切り替える制御手段とを備えたことを要旨とする。この構成によれば、ロック/アンロックの切り替えの開始条件に電子キーとの無線認証の成立を含ませたので、ロック/アンロックの切り替えを正規ユーザにのみ許可することが可能となる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ロック装置の動作の切り替え時にユーザに課す操作の利便性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態の給電口付近の概要を示す斜視図。
図2】充電ケーブルのインレットへの接続図。
図3】ロック装置の内部構成を示す斜視図。
図4】(a)はロック状態のロック装置の断面図、(b)はアンロック状態のロック装置の断面図。
図5】(a),(b)はロックピンの移動経路上に生じる微少ストロークの説明図。
図6】ロック装置の電気構成図。
図7】充電ケーブルアンロック時の動作図。
図8】充電ケーブルロック時の動作図。
図9】リッドアンロック時の動作図。
図10】リッドロック時の動作図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を具体化したロック装置の一実施形態を図1図10に従って説明する。
[充電システムの概要]
図1に示すように、例えばプラグインハイブリッド車等の車両には、外部電源(住宅、充電スタンド等)により車両のバッテリ(図示略)を充電可能な充電システムが搭載されている。この場合、車体1の側壁には、車体1の給電口2を開閉するリッド3が、上下方向に延びる軸部3a回りに回動可能に取り付けられている。軸部3aには、リッド3を開き側に付勢する例えばトーションばね等の付勢部材4が取り付けられている。給電口2のリッドボックス5の中央位置には、受電側のコネクタとなるインレット6が設けられている。インレット6には、略円筒状のインレット筐体7が設けられ、筒内部に端子部8が設けられている。なお、リッド3がロック対象物に相当する。
【0012】
図2に示すように、インレット6には、外部電源から延びる充電ケーブル9が接続可能である。充電ケーブル9には、ケーブル線10の先端に、給電側のコネクタとなる給電プラグ11が設けられている。給電プラグ11の先端には、インレット6の端子部8と対をなす端子部12が設けられている。給電プラグ11には、インレット6への接続時の抜け止めとなるロックアーム13が回動操作可能に取り付けられている。ロックアーム13は、先端の爪部14と根元のアーム操作部15とが外部に露出されている。ロックアーム13には、アーム操作部15寄りの位置に、ロックアーム13を閉じ側に常時付勢する付勢部材16が設けられている。なお、充電ケーブル9がロック対象物に相当する。
【0013】
給電プラグ11をインレット6に接続する際には、給電プラグ11をインレット6に向けて真っ直ぐ挿し込む。このとき、爪部14がインレット筐体7の上面の係止突17に当接すると、ロックアーム13が係止突17の斜面に案内されて、付勢部材16の付勢力に抗して回動することにより係止突17を上る。そして、給電プラグ11がインレット6に完挿されると、付勢部材16の付勢力によってロックアーム13が閉じ側に回動する。このため、爪部14が係止突17に引っ掛かり、給電プラグ11がインレット6に抜け止めされる。
【0014】
給電プラグ11の内部には、充電ケーブル9をインレット6に接続したことを検出するプラグ接続検出部18が設けられている。充電ケーブル9をインレット6に接続して、爪部14が係止突17に係止されれば、ロックアーム13は閉じ状態をとる。よって、プラグ接続検出部18は、ロックアーム13が閉じた状態にあることを検出すると、給電プラグ11がインレット6に接続されたことを通知するプラグ接続検出信号を、端子部8,12を介して車体1に出力する。
【0015】
[ロック装置の概要]
図1に示すように、給電口2には、リッド3のロックと充電ケーブル9のロックとの両方を1つの装置で実行可能なロック装置19が設けられている。即ち、本例のロック装置19は、1つのアクチュエータでリッドロック及び充電ケーブルロックの両方の動作を兼ねる一体型である。リッド3の裏面には、リッド3をロック装置19によってロックする際の係止箇所となるストライカ20が突設されている。ストライカ20の先端には、所定の溝深さを有する係止溝21が凹設されている。
【0016】
リッドボックス5には、キー認証を無線により行う電子キーシステムに準じた電波を電子キー22に送信可能な送信アンテナ23が設けられている。電子キーシステムは、例えば車両からの通信を契機に電子キー22と狭域無線(通信距離:数m)によりID照合を行うキー操作フリーシステムであり、車外の電子キー22とID照合(車外スマート照合)が成立すれば、ドアロックの施解錠操作を許可/実行し、車内の電子キー22とID照合(車内スマート照合)が成立すれば、車両の電源遷移操作を許可する。送信アンテナ23は、給電口2付近に電子キー22があるか否かを確認するためのもので、スマート照合の開始トリガ(リクエスト信号Srq)を給電口2の付近にLF(Low Frequency)帯の電波により送信可能である。送信アンテナ23の電波をトリガとするスマート照合の成立結果は、例えばリッド3の開操作を許可する1条件として使用される。
【0017】
図3及び図4(a),(b)に示すように、ロック装置19のハウジング24の内部には、リッド3や給電プラグ11に係止可能なロックピン25が、自身の長手方向(図3のZ軸方向)に沿って往復動可能に設けられている。ハウジング24の内壁とロックピン25との間には、ロックピン25をロック方向(図3の矢印Z1方向)に常時付勢する付勢部材26が設けられている。即ち、本例のロック装置19は、ロックピン25が付勢部材26によりロック側に常時付勢されたロック側常時付勢型である。付勢部材26は、例えばコイルばねが使用される。なお、ロックピン25がロック部材に相当する。
【0018】
ロックピン25は、大径の頭部27と、頭部27よりも小径の軸部28とを有する略ピン形状をなす。ロックピン25は、頭部27がハウジング24内の段部29に引っ掛かることにより抜け止めされている。ロックピン25は、通常、付勢部材26の付勢力によって頭部27が段部29に押し付けられた突出位置をとる。
【0019】
ロック装置19には、ロックピン25の固定/非固定を切り替えるリンク部材30が、自身の長手方向(図3のY軸方向)に沿って往復移動可能に設けられ、このリンク部材30が回動ピース31を介してロックモータ32に連結されている。ロックモータ32のモータ軸は、ウォームギヤ33を介して回動ピース31に連結されている。ウォームギヤ33は、モータ軸に配設されたウォーム34と、回動ピース31の中央部に配設されたウォームホイール35とからなる。なお、ロックモータ32がアクチュエータに相当する。
【0020】
回動ピース31の軸部31aの端部には、回動ピース31と同一軸心に一体回動するピニオン36が設けられ、このピニオン36にリンク部材30が連結されている。リンク部材30は、ピニオン36に噛み合うラック37と、ラック37に嵌合された係止ピン38と、ラック37及び係止ピン38の間に介装された付勢部材39とからなる。付勢部材39は、例えばコイルばねが使用される。ラック37及び係止ピン38は、例えば突起40及び長孔41の構造(図4(a),(b)参照)により連結されている。回動ピース31は、ロックモータ32の駆動力により略円柱状の軸部31aの軸心L1回りに回動する。この回動ピース31の回動動作に伴い、リンク部材30がロックピン25の移動方向(図3のZ軸方向)に対して直交する方向(図3のY軸方向)にスライド移動する。
【0021】
ロックピン25の頭部27の側面には、係止ピン38が嵌り込み係止可能な溝部42が凹設されている。係止ピン38が溝部42に係止すると、ロックピン25の上下方向(図3のZ軸方向)の動作が不可となる。また、頭部27の側面には、溝部42への係止ピン38の嵌め込みを案内する案内斜面43が形成されている。即ち、係止ピン38と溝部42との位置が合っておらず、係止ピン38が案内斜面43に当接するとき、付勢部材39の付勢力により係止ピン38が案内斜面43に押し付けることにより、係止ピン38の溝部42への嵌り込みを案内する。
【0022】
図4(a)に示すように、ロックモータ32の一方向の回転により、リンク部材30がアンロック方向(図4(a)の矢印Y2方向)にスライド移動すると、係止ピン38がロックピン25の溝部42から離脱する。これにより、ロックピン25が非固定となり、付勢部材26によるロック方向の付勢力を受けながら、上下方向の往復動が可能となる。よって、ロック装置19は、ロックピン25の可動が許容された状態、つまりアンロック状態をとる。
【0023】
一方、図4(b)に示すように、ロックモータ32の他方向の回転により、リンク部材30がロック方向(図4(b)の矢印Y1方向)にスライド移動すると、係止ピン38がロックピン25の溝部42に係止する。これにより、ロックピン25が固定されるので、上下動できなくなる。よって、ロック装置19は、ロックピン25がロック位置で固定となった状態、つまりロック状態をとる。
【0024】
[ロック装置のスイッチ構造]
図5(a),(b)に示すように、ロックピン25及び係止ピン38の間には、所定の隙間からなる微少ストロークWが設けられている。微少ストロークWは、ロックピン25がロック状態にあるとき、ロックアーム13と係止突17との係止(かかり代)を維持しつつも、ロックアーム13の開き側への僅かな回動操作を許容するための隙間である。微少ストロークWは、既存の隙間をそのまま使用してもよいし、新たに設けるようにしてもよい。
【0025】
ロック装置19のハウジング24の内壁とロックピン25との間には、ロックピン25が微少ストロークW分移動することにより接点状態が切り替わる摺動接点44が設けられている。摺動接点44は、ハウジング24の内壁面に配設された固定コンタクト45と、ロックピン25に配設された可動コンタクト46とを有する。ロックピン25がロック状態をとる際、ロックアーム13に押し上げられずに通常の突出位置をとれば、摺動接点44がオンし(図5(a)の状態)、ロックアーム13によって微少ストロークW分押し上げられれば、摺動接点44がオフする(図5(b)の状態)。なお、摺動接点44が検出部及び有接点部に相当する。
【0026】
[ロック装置の電気構成]
に示すように、ロック装置19には、ロック装置19のロック/アンロックの動作を制御するロックECU(Electronic Control Unit)47が設けられている。ロックECU47には、ロックモータ32及び摺動接点44が接続されるとともに、プラグ接続検出信号が入力されている。ロックECU47には、ロック装置19がロック/アンロックのいずれにあるのかを検出するロック状態検出部48が接続されている。ロック状態検出部48は、例えば係止ピン38のロック位置及びアンロック位置に各々配設されたセンサや、ロックモータ32の回転方向及び回転量を検出するエンコーダ等が使用される。なお、ロックECU47が制御手段に相当する。
【0027】
ロックECU47には、電子キーシステムにおいて認証を実行する照合ECU49が接続されている。照合ECU49のメモリ(図示略)には、車両に登録された電子キー22のIDコードが書き込み保存されている。照合ECU49には、前述の送信アンテナ23と、UHF(Ultra High Frequency)帯の電波を受信可能な車両受信機50とが接続されている。照合ECU49は、定期的又は所定タイミングでスマート照合を実行するとともに、照合結果をロックECU47に出力可能である。なお、照合ECU49が認証手段に相当する。
【0028】
次に、本例のロック装置19の動作を、図7図10を用いて説明する。
[充電ケーブルアンロック動作]
図7に示すように、充電ケーブロックがロック状態のとき、係止ピン38がロックピン25の溝部42に嵌り込み、ロックアーム13の爪部14の上面の当て面51に当接するロックピン25が固定される。よって、ロックピン25がロックアーム13を上から押して固定するので、ロックアーム13を開き操作しようとしても操作できず、充電ケーブルロックのロック状態が維持される。
【0029】
充電ケーブル9をインレット6から引き抜こうとして給電プラグ11を握ると、アーム操作部15が押し操作される。このとき、ロックアーム13が開き側に回動し、ロックアーム13によりロックピン25が突出位置から微少ストロークW分、上方(図7の矢印Z2方向)に押し上げられる。これにより、摺動接点44がオンからオフに切り替わり、ロックECU47は、摺動接点44からオン信号に代えてオフ信号を入力する。ロックECU47は、摺動接点44からオフ信号を入力すると、スマート照合開始要求を照合ECU49に出力する。
【0030】
照合ECU49は、ロックECU47からスマート照合開始要求を入力すると、送信アンテナ23からリクエスト信号Srqの送信を開始する。このとき、電子キー22が給電口2付近にあれば、電子キー22及び送信アンテナ23の間の通信が確立する。電子キー22は、リクエスト信号Srqを受信すると、電子キー22に登録されたIDコードを含むID信号Sidを車体1に返信する。照合ECU49は、電子キー22から送信されたID信号Sidを車両受信機50で受信すると、ID信号Sid内のIDコードの正当性を確認する。照合ECU49は、IDコードが正しいことを確認するとスマート照合が成立すると認識し、スマート照合成立通知をロックECU47に出力する。
【0031】
ロックECU47は、ロック状態検出部48の検出信号を基にロックと判断している状況下で、照合ECU49からスマート照合成立通知を入力すると、ロックモータ32をアンロック方向に回動させる。これにより、係止ピン38がアンロック方向(図7の矢印Y2方向)にスライド移動して、溝部42から退避するので、ロックピン25がフリーとなり、充電ケーブルロックがアンロック状態となる。よって、ロックアーム13を更に開き側に回動操作することが可能となるので、充電ケーブル9をインレット6から引き抜くことが可能となる。
【0032】
インレット6から充電ケーブル9が引き抜かれると、ロックピン25が付勢部材26の付勢力により下方(図7の矢印Z1方向)にスライド移動する。このとき、ロックピン25は、頭部27が段部29に当接するまで下がり、元の突出位置に戻る。そして、ロックピン25が通常の突出位置に戻ると、摺動接点44もオン状態に復帰する。
【0033】
[充電ケーブルロック動作]
図8に示すように、充電ケーブル9をインレット6に挿し込んだとき、ロックアーム13によってロックピン25が上方(図8の矢印Z2方向)に持ち上がる。このとき、摺動接点44がオンからオフに切り替わり、ロックECU47は摺動接点44からオフ信号を入力する。ロックECU47は、摺動接点44からオン信号に代えてオフ信号を入力すると、スマート照合開始要求を照合ECU49に出力する。
【0034】
照合ECU49は、ロックECU47からスマート照合開始要求を入力すると、充電ケーブルアンロックのときと同様に、スマート照合を開始する。即ち、送信アンテナ23からリクエスト信号Srqを送信し、電子キー22にID信号Sidを返信させ、このID信号Sidで電子キー22の正当性を確認する。照合ECU49は、スマート照合が成立することを確認すると、スマート照合成立通知をロックECU47に出力する。
【0035】
ロックECU47は、ロック状態検出部48の検出信号を基にアンロックと判断している状況下で、照合ECU49からスマート照合成立通知を入力すると、ロックモータ32をロック方向に回動させる。これにより、係止ピン38がロック方向(図8の矢印Y1方向)にスライド移動し、ロックピン25の溝部42に入り込もうとする。このとき、ロックピン25が上方に大きく持ち上げられていれば、案内斜面43に係止ピン38が当接し、溝部42への係止に待機する。そして、爪部14が係止突17に係止する動きに伴い、ロックピン25が付勢部材26の付勢力により下方向(図8の矢印Z1方向)にスライド移動し、係止ピン38が案内斜面43を上りながら最終的に溝部42に嵌り込む。よって、当て面51と当接するロックピン25が係止ピン38により固定されるので、ロックアーム13を開き側に回動操作することができなくなる。このため、充電ケーブルロックがロック状態に切り替わり、インレット6に接続した充電ケーブル9を第三者等によって不正に引き抜かれることがない。
【0036】
ロックピン25は固定状態となると、元の突出位置に戻る。ロックピン25が通常の突出位置に戻ると、摺動接点44もオン状態に復帰する。
[リッドアンロック動作]
図9に示すように、充電ケーブルアンロックの構造は、リッドアンロックにも応用可能である。この場合、リッド3を閉位置から更に奥に1段階、プッシュ操作可能とする。また、係止溝21の内面に押込斜面52を設定しておき、この押込斜面52によって、ロック位置にあるロックピン25を、微少ストロークW分、上方(図9の矢印Z2方向)に持ち上げ可能としておく。
【0037】
リッド3を開操作するとき、リッド3がプッシュ操作されると、ストライカ20の押込斜面52がロックピン25を上方(図9の矢印Z2方向)に押し上げ、摺動接点44がオンからオフに切り換わる。ロックECU47は、摺動接点44からオン信号に代えてオフ信号を入力すると、スマート照合開始要求を照合ECU49に出力し、照合ECU49にスマート照合を実行させる。ロックECU47は、ロック状態検出部48の検出信号を基にロックと判断している状況下で、照合ECU49からスマート照合成立通知を入力すると、ロックモータ32をアンロック方向に回動させ、リッドロックをアンロック状態にする。これにより、リッド3がアンロックされ、リッド3の開操作が許可される。
【0038】
[リッドロック動作]
図10に示すように、充電ケーブルロックの構造は、リッドロックにも応用可能である。リッドを閉操作するとき、ストライカ20の先端の押込斜面53がロックピン25を上方(図10の矢印Z2方向)に押し上げ、摺動接点44がオンからオフに切り換わる。よって、充電ケーブルロックのときと同様に、スマート照合が実行され、スマート照合が成立すれば、ロックモータ32がロック方向に回動され、リッドロックがロック状態に切り替えられる。よって、リッド3が閉状態でロックされ、不正な開操作が防止される。
【0039】
本実施形態の構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)充電ケーブル9をインレット6から引き抜く際、爪嵌合を外すためロックアーム13が回動操作されると、ロックピン25がロックアーム13によって微少ストロークW分持ち上げられ、摺動接点44がオフされる。摺動接点44がオン→オフになると、これをトリガにスマート照合が開始され、スマート照合が成立すれば、充電ケーブルロックがアンロックに切り替えられ、充電ケーブル9がインレット6から引き抜かれる。よって、充電ケーブル9を取り外す際、給電プラグ11を握ってロックアーム13を開き側に回動操作し、充電ケーブル9をインレット6から引き抜くという一連の操作の過程で、充電ケーブルをアンロックに切り替えることが可能となるので、充電ケーブル9の引き抜きの利便性をよくすることができる。
【0040】
(2)微少ストロークWを利用したロック/アンロックの切り替えを、充電ケーブルロックやリッドロック/アンロックにも応用したので、リッド3の開閉や充電ケーブルロックの利便性も確保することができる。
【0041】
(3)微少ストロークWを摺動接点44で検出するようにしたので、このような有接点部を使用すれば、部品コストが安価で済む。
(4)ロック/アンロックの切り替えの開始条件にスマート照合を含ませたので、ロック/アンロックの切り替えを正規ユーザにのみ許可することができる。
【0042】
(5)ロックモータ32によってロック位置/アンロック位置に切り替えられる1つのロックピン25は、充電ケーブルロック及びリッドロックの共用部品である。よって、ロックピン25及びロックモータ32の組を充電ケーブルロック及びリッドロックの各々に設ける必要がないので、ロック装置19の構造を簡素化することができる。
【0043】
なお、実施形態はこれまでに述べた構成に限らず、以下の態様に変更してもよい。
・ロック/アンロックの開始条件は、摺動接点44でのオフ検出をトリガにスマート照合が成立することに限らず、例えば車両ドアのドアロック状態を1条件とするなど、種々のパターンが採用可能である。
【0044】
・スマート照合の車載側の送信アンテナは、給電口2に配設された送信アンテナ23に限らず、車両ドア等に既設されたアンテナを使用してもよい。
・電子キーシステムは、例えばワイヤレスキーシステムや近距離無線通信システムなどでもよい。ワイヤレスキーシステムは、電子キー22からの通信を契機に狭域無線によりキー認証を行うシステムである。また、近距離無線通信システムは、近距離無線(通信距離:数cm〜十数cm)で双方向により認証を行うシステムであり、例えばイモビライザーシステムやNFC(Near Field Communication)システムなどがある。
【0045】
・プラグ接続検出部18の検出信号を使用して、インレット6に充電ケーブル9が接続されているか否かを識別するようにしてもよい。
・リッド3の開閉は、リッドアンロック後、閉位置にあるリッドを指等で手動により開ける構成でもよい。
【0046】
・リッド3は、トーションばねではなく、プッシュリフタによって開閉される構造でもよい。
・ロック装置19のアクチュエータは、モータに代えて、例えばソレノイド等に変更してもよい。
【0047】
・プラグ接続検出部18は、インレット6側に配設されたスイッチやセンサでもよい。また、プラグ接続検出部18は、有接点又は無接点のいずれでもよい。
・リッドロック時のロックピン25の係止先は、ストライカ20以外の箇所としてもよい。
【0048】
・ロック装置19の取り付け位置は、リッドボックス5の上部に限定されず、例えば側部など、他の位置に変更可能である。
・ロック装置19は、インレット6と共締めされることでリッドボックス5に取り付けられてもよいし、インレット6とは関係なく、個別にリッドボックス5に取り付けられてもよい。
【0049】
・ロック装置19は、例えばロック/アンロックの一方を手動とし、他方を電動としてもよい。
・ロック装置19は、充電ケーブルロック専用でもよいし、又はリッドロック専用でもよい。また、ロック装置19は、広義として給電口2に配設されるものであればよい。
【0050】
・ロック対象物は、リッド3や充電ケーブル9に限らず、バッテリ搭載車両の給電口2に関係する部品であればよい。
・ロック装置19は、ロックピン25をロック/アンロックの各方向に動かすことができれば、他の構造に適宜変更可能である。例えば、ロック部材は、スライド移動するピンに限定されず、例えば回動する円柱状の部材に切り欠きを形成したものでもよい。この場合、切り欠きのない箇所でロックアーム13を固定し、切り欠きの部分でロックアーム13の操作を許容する。また、ロック部材は、ロック/アンロックの各位置に回動する扇状の板材としてもよい。
【0051】
・ロック装置19は、例えばロックピン25を給電プラグ11の筐体自体(本体部分)に直に係止することによりロック状態をとる構造でもよい。
・検出部は、種々の有接点スイッチや無接点センサが使用可能である。
【0052】
・検出部の取り付け位置は、ロックピン25の持ち上がりを検出できる位置であれば、種々の位置が採用可能である。
・ロック装置19は、車載用に限らず、他の機器や装置に適用可能である。
【0053】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
(イ)ロック装置において、前記認証は、車両からの通信を契機に、双方向の無線により認証を行うスマート照合である。この構成によれば、車両に既存のスマート照合システムを使用して、キーの正当性を確認することが可能となる。
【0054】
(ロ)ロック装置において、1つの前記ロック部材により、充電ケーブルのロックとリッドのロックとを選択的に実行することが可能な一体型(共用型)である。この構成によれば、部品の共用化が可能となるので、装置構成の簡素化に寄与する。
【符号の説明】
【0055】
2…給電口、3…ロック対象物を構成するリッド、9…ロック対象物を構成する充電ケーブル、19…ロック装置、22…電子キー、25…ロック部材としてのロックピン、32…アクチュエータとしてのロックモータ、44…検出部及び有接点部を構成する摺動接点、47…制御手段としてのロックECU、49…認証手段としての照合ECU、W…微少ストローク。
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