【実施例1】
【0009】
第1の実施例における給紙装置および画像形成装置の構成を、
図1から
図17に基づきながら説明する。
図1において、画像形成装置としてのプリンタ101は、用紙カセット2と、用紙カセット2に設けられた後端押さえユニット70と、用紙カセット2を挿入する本体フレーム3と、用紙カセット2から印刷媒体を給紙する給紙ユニット20と、第1搬送ローラ対11および第2搬送ローラ対12と、印刷媒体が搬送される給紙ルートを形成する給紙シートガイド4および排出シートガイド14と、印刷媒体が正常に給紙されたことを検出する用紙検出センサ16、17、18と、印刷媒体に画像を形成する画像形成部1と、印刷媒体を画像形成部1の外部に排出する排出ローラ対13と、画像形成部1の外部に排出された印刷媒体を積載する用紙スタッカ15とから構成されている。
【0010】
搬送手段としての第1搬送ローラ対11および第2搬送ローラ対12は、給紙ユニット20および後述する分離パッド31により分離された印刷媒体を搬送するもので、少なくとも1つあればよく、本実施例では2つの搬送ローラ対を配置している。
なお、本実施例における給紙装置は、第2搬送ローラ対12を含む図中に示す印刷媒体の搬送方向における上流側であり、例えば
図1では、用紙カセット2と、後端押さえユニット70と、本体フレーム3と、給紙ユニット20と、第1搬送ローラ対11および第2搬送ローラ対12と、給紙シートガイド4と、用紙検出センサ16、17により構成されている。
【0011】
図2において、用紙カセット2内には、印刷媒体を積層し収納するシートレシーブプレート35と、シートレシーブプレート35を付勢するホッパスプリング46と、用紙左右ガイド36と、ホッパスプリング46による図中矢印T方向の付勢を規制する用紙左右ガイド36のネイル部36aと、分離パッド31と、分離パッド31を付勢する分離スプリング34と、ピニオンギヤ37とが配置されている。
【0012】
移動可能な給紙手段としての給紙ユニット20は、印刷媒体に当接するホッピングローラ21と、各部材に回転力を伝達する駆動ギヤシャフト25と、駆動ギヤシャフト25を軸とする給紙駆動ギヤ24と、アイドルギヤ22、23と、駆動ギヤシャフト25から回転力を伝達される揺動ギヤ28と、保持トルクを超えると揺動ギヤ28とともに空転を始めるトルクリミッタ27と、給紙ユニットフレーム26と、給紙ユニットフレーム26のシャフト部26aとから構成されている。
【0013】
また、給紙ユニット20は、給紙開始時に印刷媒体の搬送方向における下流側から上流側にホッピングローラ21と連動して回動し、積層された印刷媒体を押圧しながら繰り出すものであり、図示せぬ画像形成装置本体の筐体部に固定された給紙ユニットホルダ29によって支持され、トーションスプリング30により付勢されている。
さらに、給紙ユニット20は、後述する印刷媒体S1が第1搬送ローラ対11により搬送されるときに、停止したホッピングローラ21による分離パッド31への押圧を解除する構成とし、第1搬送ローラ対11の駆動に連動して回動する。
【0014】
ホッピングローラ21は、ギヤ部21aを有しており、アイドルギヤ22、23を介して給紙駆動ギヤ24の回転力がギヤ部21aに伝達される。
また、給紙ユニットホルダ29は、給紙ユニットフレーム26の回動を停止させるストッパ部29aを有している。
印刷媒体Sは、用紙カセット2内の用紙支持手段としてのシートレシーブプレート35上に積層して収納されている印刷媒体の集合体であり、印刷媒体Sの最も上に位置する1枚を印刷媒体S1とする。
なお、
図15および
図16には給紙ユニット20の斜視図を示している。
【0015】
図8において、画像形成部1は、ドラムユニット5、6、7、8と、印刷媒体の搬送を行う搬送ベルト9と、定着ユニット10と、印刷媒体が正常に給紙されたことを検出する用紙検出センサ19と、転写ローラ75、76、77、78とから構成されている。
ドラムユニット5、6、7、8は、それぞれ感光ドラムを有しており、カラープリンタのK(黒)、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)各色の現像剤像を各感光ドラム表面に形成する。
定着ユニット10は、図示せぬ加熱ローラおよび加圧ローラを有し、印刷媒体に現像剤像を定着させる。
転写ローラ75、76、77、78は、現像剤像と逆電位の電圧を印加され、ドラムユニット5、6、7、8の感光ドラム表面の現像剤像を印刷媒体に転写する。
【0016】
押圧部材としての後端押さえユニット70は、給紙ユニット20に取り付けられたリンクアーム41と、リンクアーム41と係合するリンクアーム42と、リンクアーム42と係合するリンクアーム43と、テンションアーム44と、押し下げアーム45と、用紙後端ガイド38と、後端押さえレバー39と、後端押さえレバー39を付勢する押さえスプリング40とから構成されている。
後端押さえユニット70は、後述する給紙ユニット20が分離パッド31への押圧を解除するときに、シートレシーブプレート35上に積層された印刷媒体Sを図中矢印で示す搬送方向における後端部を図中矢印Tの逆方向に押圧する。
【0017】
リンクアーム43は、
図6に示すようにテンションアーム44と係合する円筒部43aと、傾斜面部43bとから構成されている。
テンションアーム44は、
図11に示すように弾性部44aを有している。
図14において、分離手段としての分離パッド31は、分離フレーム32と、ストッパ部32aと、凸部32bと、印刷媒体との当接面としての摩擦分離片33とから構成されており、給紙ユニット20の押圧により凸部32bを中心に回動可能とし、給紙ユニット20により繰り出された印刷媒体Sから1枚のみを摩擦分離片33との摩擦力により分離する。
【0018】
図17において、画像形成部1は、上述で説明した構成の他に、印刷制御部47と、印刷データ処理部48と、給紙モータ駆動部49と、搬送モータ駆動部50と、現像制御部51と、転写制御部52と、定着制御部53と、センサ信号受信部54とから構成されており、PC(Personal Computer)等の上位装置100と印刷制御部47とが接続されている。
印刷制御部47は、画像形成部1の各部を制御する。
印刷データ処理部48は、上位装置100から印刷データを受信し、印刷制御部47に情報を送信する。
【0019】
給紙モータ駆動部49は、印刷制御部47の命令に基づいて、図示せぬ給紙モータを駆動および停止させる。
搬送モータ駆動部50は、印刷制御部47の命令に基づいて、第1搬送ローラ対11および第2搬送ローラ対12を駆動させる。
現像制御部51は、印刷制御部47の命令に基づいて、ドラムユニット5、6、7、8の感光ドラム表面に現像剤像を形成する。
【0020】
転写制御部52は、ドラムユニット5、6、7、8に対向して配設された転写ローラ75、76、77、78に現像剤像と逆電位の電圧を印加し、感光ドラム表面の現像剤像を転写する。
定着制御部53は、印刷媒体Sが用紙検出センサ19を通過すると、印刷制御部47の命令に基づいて、印刷媒体Sに現像剤像を定着させる。
センサ信号受信部54は、印刷媒体Sが第1搬送ローラ対11に到達したことを印刷制御部47へ連絡する。
【0021】
上述した構成の作用について説明する。
第1の実施例における印刷画像形成動作について、
図1、
図8および
図17に基づきながら説明する。
図17において、まず、ユーザによって上位装置100が印刷データを送信すると、画像形成部1の印刷制御部47は、印刷データ処理部48の情報に従い、現像制御部51にドラムユニット5、6、7、8の感光ドラム表面に現像剤像の形成を命令する。
同時に、印刷制御部47は、給紙モータ駆動部49に図示せぬ給紙モータの駆動を命令する。
【0022】
次に、
図8において、用紙カセット2内のシートレシーブプレート35上に積層して収納された印刷媒体Sから給紙を開始し、分離パッド31の摩擦分離片33の摩擦により印刷媒体S1のみが図中破線で示す給紙ルートの一部を形成する給紙シートガイド4へと搬送される。
印刷媒体S1は、給紙ルートに配置された用紙検出センサ16、17により正常に給紙されたことが検出され、第1搬出ローラ対11および第2搬出ローラ対12により、図中矢印で示す印刷媒体の搬送方向における用紙先端の位置決めを行った後、さらに搬送方向における下流へと搬送される。
【0023】
次に、印刷制御部47は、搬送方向における印刷媒体S1の先端が用紙検出センサ18により検出されると、搬送ベルト9による印刷媒体S1の搬送を開始させる。
このとき、印刷制御部47は、ドラムユニット5、6、7、8の感光ドラムの表面に形成された現像剤像を印刷媒体S1の所望の位置に転写するため、用紙検出センサ18による検出結果に基づいて、ドラムユニット5、6、7、8を動作させる適正なタイミングを調整する。
転写制御部52は、ドラムユニット5、6、7、8にそれぞれ対向して配設された転写ローラ75、76、77、78に、それぞれ現像剤像と逆電位の電圧を印加し、感光ドラム表面の現像剤像を印刷媒体S1に転写する。
【0024】
定着制御部53は、印刷媒体S1が用紙検出センサ19を通過すると、印刷制御部47から命令を受け、定着ユニット10内の図示せぬ加熱ローラによる熱および加圧ローラによる圧力を印刷媒体S1表面の現像剤像に加え、印刷媒体S1に現像剤像を定着させる。
定着ユニット10を通過した印刷媒体S1は、排出シートガイド14の排出ローラ対13により画像形成部1の外部に排出され、用紙スタッカ15に積載され、印刷画像形成動作が終了する。
【0025】
次に、用紙カセット2内の給紙ユニット20の給紙動作について、
図2から
図5に基づきながら説明する。
図2において、図示せぬ給紙モータの駆動が開始されると、駆動ギヤシャフト25および給紙駆動ギヤ24は、図中矢印A方向に回転する。
すると、揺動ギヤ28に回転力が伝達され、揺動ギヤ28の内部に設けられたトルクリミッタ27の作用により揺動ギヤ28は回転せず、回転力は給紙ユニットフレーム26のシャフト部26aへと伝達される。
【0026】
図示せぬ画像形成装置本体の筐体部に固定された給紙ユニットホルダ29に支持された給紙ユニット20は、トーションスプリング30の付勢に抗して駆動ギヤシャフト25を中心として図中矢印B方向(印刷媒体の搬送方向における下流から上流方向)に回動し始める。
同時に、給紙駆動ギヤ24の駆動は、アイドルギヤ23、22を介してホッピングローラ21のギヤ部21aに伝達され、ホッピングローラ21が図中矢印C方向に回動し始める。
【0027】
図3において、回動し始めたホッピングローラ21は、分離パッド31の分離フレーム32に当接する。
このとき、分離パッド31は、分離スプリング34により付勢され、分離フレーム32のストッパ部32aが用紙カセット2に当接して停止した状態から、ホッピングローラ21の押圧により凸部32bを中心に図中矢印D方向に回動し、
図4に示すようにホッピングローラ21は、印刷媒体Sに当接する。
印刷媒体Sは、
図3に示す用紙左右ガイド36のネイル部36aによりホッパスプリング46による図中矢印T方向への付勢が規制された状態から、
図4に示すホッピングローラ21に押圧された状態へと変化する。
【0028】
図4に示す状態から、給紙ユニット20が図中矢印B方向への回動を続け、ホッピングローラ21が分離パッド31およびシートレシーブプレート35上の印刷媒体Sを強く押圧する
図5に示す状態になると、給紙ユニットフレーム26が給紙ユニットホルダ29のストッパ部29aに衝突し、トルクリミッタ27はその保持トルクを超えることで揺動ギヤ28とともに空転を始め、給紙ユニット20の回動が停止する。
印刷媒体S1は、ホッピングローラ21による押圧力および回転力で、摩擦分離片33とホッピングローラ21とから形成される分離ニップ部33aへと搬送される。
印刷媒体S1の媒体との摩擦係数が印刷媒体同士の摩擦係数より大きな材料で形成された摩擦分離片33の摩擦により、印刷媒体S1のみが
図8に示す給紙ルートの給紙シートガイド4へと搬送され、用紙カセット2からの給紙動作が終了する。
【0029】
次に、用紙カセット2を本体フレーム3に挿入する際の、用紙カセット2に設けられた後端押さえユニット70の動作を、
図6および
図7に基づきながら説明する。
図6において、リンクアーム43は、図示しない規制部材により、
図2に示す給紙ユニット20の回動に伴い上下方向にのみ可動として本体フレーム3などに支持され、その下端部は円筒状の形状43aを成している。
用紙後端ガイド38内部に設けられた後端押さえレバー39に回動可能に係合された押し下げアーム45と嵌合したテンションアーム44は、嵌合していない端部である先端に可撓性のある略C形の断面形状を有する溝(以下、「C形溝」という。)が形成されている。
【0030】
テンションアーム44のC形溝の開口部は、図中矢印Pで示す用紙カセット2挿入方向において、リンクアーム43の円筒部43aに対向しており、用紙カセット2の挿入操作によりリンクアーム43の傾斜面部43bに沿って円筒部43a方向へと誘導される。
さらに用紙カセット2が挿入されていき、本体フレーム3内に装着されると、テンションアーム44のC形溝の開口部は、
図7に示すように、リンクアーム43の円筒部43aに嵌入し、用紙カセット2装着位置においてリンクアーム43とテンションアーム44が連結保持される。
この連結部は、給紙ユニット20の移動に伴うリンクアーム43の上下の動作力では外れず、用紙カセット2を引き抜く力ではC形溝の開口部が外れ、分離できる。
【0031】
次に、給紙動作終了後の給紙ユニット20の回動動作と、それに連動する用紙後端ガイド38の後端押さえレバー39の動作について、
図8から
図11に基づいて
図17を参照しながら詳細に説明する。
図8および
図9は、用紙カセット2内の印刷媒体S1の分離動作完了直後の状態を示している。
図8において、図中矢印で示す印刷媒体の搬送方向における印刷媒体S1の先端は、分離ニップ部33aを通過し、さらにホッピングローラ21により給紙シートガイド4へと搬送される。
【0032】
給紙ユニット20に取り付けられたリンクアーム41、42、43と、テンションアーム44と、押し上げアーム45とをそれぞれ係合し、用紙後端ガイド38内に配された後端押さえレバー39は、押さえスプリング40の付勢により印刷媒体Sの後端部と離間した状態で停止している。
印刷媒体S1が、さらに搬送され、印刷媒体S1の先端が第1搬送ローラ11の搬送方向における上流に設けられた用紙検出センサ16を傾倒させると、センサ信号受信部54は、印刷媒体S1が第1搬送ローラ対11に到達したことを印刷制御部47へ連絡する。
印刷制御部47は、搬送モータ駆動部50に各搬送ローラ対の駆動を命令するのと同時に、給紙モータ駆動部49へ図示せぬ給紙モータの駆動停止を命令すると、給紙ユニット20の給紙駆動ギヤ24の回転が停止し、印刷媒体Sへの押圧が解除され、トーションスプリング30の付勢により給紙ユニット20は
図10に示す図中矢印E方向に回動する。
【0033】
図10および
図11において、ホッピングローラ21による分離パッド31およびシートレシーブプレート35上の印刷媒体Sへの押圧が解除されるのに加えて、給紙ユニット20に取り付けられたリンクアーム41、42と係合したリンクアーム43が、図中矢印T方向に移動し、さらにテンションアーム44が孔部44bを中心に図中時計回りに回動し、弾性部44aが後端押さえレバー39を押し下げてシートレシーブプレート35上に積層した印刷媒体Sの後端部を図中矢印Tと逆方向に押圧する。
なお、本実施例では、給紙ユニット20と係合されたリンク機構により後端押さえ部材としての用紙後端ガイド38および後端押さえレバー39が動作する構成としたが、ソレノイドやモータ等の別の駆動源を用いて後端押さえ部材を動作する構成としても良い。
【0034】
ここで、上述により説明した給紙動作中におけるホッピングローラ21および分離パッド31により形成された分離機構部による給紙および分離の原理を、
図12および
図13に基づいて
図10を参照しながら説明する。
図12において、ホッピングローラ21が回転し、かつ、印刷媒体Sおよび分離パッド31を押圧し、分離パッド31と印刷媒体Sとの当接角度が小さくなる方向に回動すると、印刷媒体S1には、分離スプリング34の押圧P1の付勢によるホッピングローラ21のフィード力F1と、ホッパスプリング46の押圧P2の付勢によるフィード力F2とが発生している。
【0035】
また、印刷媒体S1の次紙S2(印刷媒体S1のひとつ下に位置する印刷媒体)には、摩擦分離片33と次紙S2との摩擦によるブレーキ力Rfと、印刷媒体S1と次紙S2との摩擦によるフィード力Ffおよびフィード力Fpと、ホッパスプリング46の押圧P2の付勢によるブレーキ力Rpとが発生している。
ここで、次紙S2に作用する力の関係は、
フィード力Ff+フィード力Fp<ブレーキ力Rf+ブレーキ力Rp
となっており、印刷媒体S1のみが給紙シートガイド4の方向(
図8に示す印刷媒体の搬送方向)へと搬送される。
【0036】
図13において、ホッピングローラ21の押圧を解除し、分離パッド31と印刷媒体Sとの当接角度が大きくなる方向に回動すると、印刷媒体S1が
図10に示す第1搬送ローラ11によるフィード力F0で搬送され、ホッパスプリング46の押圧P2´の付勢によって印刷媒体S1および次紙S2が用紙左右ガイド36のネイル部36aに突き当てられているとき、次紙S2には摩擦分離片33と次紙S2との摩擦によるブレーキ力Rf´と、印刷媒体S1と次紙S2との摩擦によるフィード力Fp´と、次紙S2と次々紙S3との摩擦によるブレーキ力Rp´と、後端押さえレバー39によるブレーキ力Rtとが発生している。
ここで、印刷媒体Sを印刷媒体の搬送方向に沿って鉛直方向に切った断面上の図中直線91と、摩擦分離片33を印刷媒体の搬送方向に沿って鉛直方向に切った断面上の図中直線92とを引く。
【0037】
すると、摩擦分離片33と次紙S2が当接する部位における摩擦分離片33と次紙S2とが成す角度θ、つまり、分離パッド31の摩擦分離片33の面(断面図である
図13における直線92)と、積層された印刷媒体における1枚の印刷媒体の面(断面図である
図13における直線91)とが成す角度θ(直線92と直線91とがなす角度)が、分離スプリング34により大きくなり、かつ、分離フレーム32が印刷媒体S1をホッピングローラ21に向かう方向へ持ち上げて次紙S2との間に空隙が生じていることで、次紙S2に作用する力は、
フィード力Fp´<ブレーキ力Rf´+ブレーキ力Rp´+ブレーキ力Rt
の関係となっており、印刷媒体S1と次紙S2が同時に搬送(重送)されることはない。
なお、
図18は、第1の実施例における各部材の給紙動作を示すタイミングチャートであり、
図2から
図6、
図8、
図10および
図11の状態を時系列でまとめて示したものである。
【0038】
このように、給紙開始時には給紙ユニット20が分離パッド31を押圧することにより、分離パッド31と印刷媒体Sとの当接角度が小さくなる方向に分離パッド31が回動し、ホッピングローラ21による押圧力に加え、ホッピングローラ21に対向するシートレシーブプレート35および分離パッド31をそれぞれホッパスプリング46および分離スプリング34により付勢する構成とすることで、印刷媒体S1をより強い力で挟持するため、印刷媒体が給紙されない不送りの発生を低減することができ、給紙不具合の発生を低減することができる。
【0039】
また、ホッピングローラ21の回転力と連動して、給紙ユニット20を回動可能とし、印刷媒体S1が第1搬送ローラ対11により搬送されるときに、停止したホッピングローラ21による分離パッド31への押圧を解除する構成としたことにより、分離パッド31と印刷媒体Sとの当接角度が大きくなる方向に分離パッド31が回動するため、次紙の重送を防止することができ、給紙不具合の発生を低減することができる。
【0040】
加えて、ホッピングローラ21による分離パッド31への押圧を解除したとき、積層された印刷媒体Sと印刷媒体S1の摩擦力がほぼ解消され、重送が発生しやすいフィルム媒体およびコート紙、さらには切り離し用にミシン目加工が施された用紙等の摩擦係数の大きい媒体での給紙不具合の発生を低減することができる。
さらに、ホッピングローラ21による分離パッド31への押圧が解除されたとき、分離パッド31は積層された印刷媒体Sとの当接角度が大きくなるように回動可能とし、さらに後端押さえレバー39は印刷媒体Sの後端部を押圧する構成としたことにより、印刷媒体S1の自重による次紙S2との摩擦力および静電気帯電等による力を起因とする次紙S2の重送を防止することができる。
【0041】
そのうえ、ホッピングローラ21の印刷媒体S1への押圧が解除されていることにより、JAM(紙詰まり)が発生したときの印刷媒体除去が容易となる。加えて、第1搬送ローラ11による印刷媒体S1の搬送を阻害しないことより異音の発生を低減することができる。
なお、本実施例では、ホッピングローラ21を回転させる力を利用して、給紙ユニット20を回動させる構成としたことにより、モータやソレノイド等の部品追加や回動動作の制御手段も不要とすることができる。
【0042】
以上説明したように、第1の実施例では、給紙開始時に給紙ユニットのホッピングローラが分離パッドを押圧することにより、分離パッドは分離パッドと印刷媒体との当接角度が小さくなる方向に回動し、ホッピングローラ21による押圧力に加え、分離パッドを介して分離スプリング34による力で印刷媒体S1を挟持するため、印刷媒体が給紙されない不送りの発生を低減することができ、給紙不具合の発生を低減することができるという効果が得られる。
【0043】
また、搬送ローラ対による印刷媒体搬送時には、ホッピングローラの押圧力を解除し、分離パッドが印刷媒体との当接角度を大きくする方向に回動するようにしたことにより、次紙に生じる摩擦力が大きくなるため、重送の発生が低減され、給紙不具合の発生を低減することができるという効果が得られる。
さらに、ホッピングローラの回動と連動させる印刷媒体の後端押さえ部材を備えることにより、積層された印刷媒体を後端押さえ部材が押圧し、次紙に生じる摩擦力が大きくなるため、次紙の重送を防止し、給紙不具合の発生を低減することができるという効果が得られる。
【実施例2】
【0044】
図19は、第2の実施例における給紙装置の斜視図である。
また、
図20から
図23は、第2の実施例における給紙装置の一部の断面図である。
なお、上述した第1の実施例と同様の部分は、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0045】
図19から
図23において、移動可能な給紙手段としての給紙ユニット55は、印刷媒体に当接するホッピングローラ56と、ホッピングローラ56のギヤ部56aと、各部材に回転力を伝達する駆動ギヤシャフト61と、駆動ギヤシャフト61を軸とする給紙駆動ギヤ60と、給紙駆動ギヤ60の回転力をホッピングローラ56のギヤ部56aに伝達するアイドルギヤ57、58、59と、駆動ギヤシャフト61から回転力を伝達される揺動ギヤ64と、保持トルクを超えると揺動ギヤ64とともに空転を始めるトルクリミッタ63と、給紙ユニットフレーム62と、給紙ユニットフレーム62のシャフト部62aとから構成されている。
【0046】
なお、本実施例における給紙装置は、第2搬送ローラ対12を含む図中に示す印刷媒体の搬送方向における上流側であり、例えば
図19では、用紙カセット2と、後端押さえユニット70と、本体フレーム3と、給紙ユニット55と、第1搬送ローラ対11および第2搬送ローラ対12と、給紙シートガイド4と、用紙検出センサ16、17により構成されている。
また、給紙ユニット55は、給紙開始時に印刷媒体の搬送方向における上流側から下流側にホッピングローラ56と連動して回動し、積層された印刷媒体を押圧しながら繰り出すものであり、図示せぬ画像形成装置本体の筐体部に固定された給紙ユニットホルダ65によって支持され、トーションスプリング66により付勢されている。
【0047】
さらに、給紙ユニット55は、印刷媒体S1が第1搬送ローラ対11により搬送されるときに、停止したホッピングローラ56による分離パッド31への押圧を解除する構成とし、第1搬送ローラ対11の駆動に連動して回動する。
給紙ユニットホルダ65は、給紙ユニットフレーム62の回動を停止させるストッパ部65aを有している。
【0048】
上述した構成の作用について説明する。
まず、ユーザによってPC等の上位装置100が印刷データを送信すると、画像形成部1の印刷制御部47は、印刷データ処理部48の情報に従い、現像制御部51にドラムユニット5、6、7、8の感光ドラム表面に現像剤像の形成を命令し、同時に、印刷制御部47は、給紙モータ駆動部49に図示せぬ給紙モータの駆動を命令するところまでは第1の実施例と同様である。
【0049】
図20において、図示せぬ給紙モータの駆動が開始されると駆動ギヤシャフト61および給紙駆動ギヤ60が図中矢印F方向に回転する。
すると、揺動ギヤ64に回転力が伝達され、揺動ギヤ64の内部に設けられたトルクリミッタ63の作用により揺動ギヤ64は回転せず、回転力はシャフト部62aへと伝達される。
【0050】
図示せぬ画像形成装置本体の筐体部に固定された給紙ユニットホルダ65に支持された給紙ユニット55は、トーションスプリング66の付勢に抗して駆動ギヤシャフト61を中心として図中矢印G方向(印刷媒体の搬送方向における上流から下流方向)に回動し始める。
同時に、給紙駆動ギヤ60の駆動は、アイドルギヤ57、58、59を介してギヤ部56aに伝達され、ホッピングローラ56が図中矢印H方向に回動し始める。
【0051】
図21において、ホッピングローラ56は、シートレシーブプレート35上に積層された印刷媒体S1に当接する。
印刷媒体Sは、用紙左右ガイド36のネイル部36aによりホッパスプリング46の図中矢印T方向への付勢が規制された状態から、
図22に示すホッピングローラ56に押圧された状態へと変化する。
【0052】
図22において、ホッピングローラ56は、分離パッド31の分離フレーム32に当接する。
このとき、分離パッド31は、分離スプリング34により付勢され、分離フレーム32のストッパ部32aが用紙カセット2に当接して停止した状態から、ホッピングローラ56の押圧により凸部32bを中心に図中矢印I方向に回動する。
ここで、第2の実施例においては、給紙ユニット55の回動につれてホッピングローラ56の印刷媒体Sへの押圧が強まり、印刷媒体Sの給紙が開始される。
【0053】
図中に示す分離パッド31と印刷媒体Sとの当接角度θ1が大きいため、摩擦分離片33と印刷媒体Sとの摩擦係数が大きく、印刷媒体S1は、摩擦分離片33を超えて給紙されることはない。
さらに、給紙ユニット55が回転を続け、ホッピングローラ56が分離パッド31およびシートレシーブプレート35上の印刷媒体S1を強く押圧し、
図23に示す状態になると、ユニットフレーム62が給紙ユニットホルダ65のストッパ部65aに衝突し、トルクリミッタ63はその保持トルクを超えることで揺動ギヤ64とともに空転を始め、給紙ユニットフレーム62の回動が停止する。
【0054】
図23において、ホッピングローラ56の印刷媒体S1への押圧力により、分離パッド31とホッピングローラ56とから形成される分離ニップ部33aが、
図22に示した分離パッド31と印刷媒体Sとの当接角度θ1より小さく、印刷媒体Sを搬送可能な角度θ2となり、印刷媒体S1のみが給紙ルートの給紙シートガイド4へと搬送され、用紙カセット2からの給紙動作が完了する。
【0055】
以降、第1の実施例と同様に第1搬送ローラ対11および第2搬送ローラ対12により印刷媒体S1が
図8に示す印刷媒体の搬送方向における下流の画像形成部1に搬送され、搬送ベルト9により搬送されながらドラムユニット5、6、7、8により感光ドラム表面の現像剤像が転写され、さらに定着ユニット10により現像剤像が定着された印刷媒体S1は排出シートガイド14の排出ローラ対13により画像形成部1の外部へ排出され、用紙スタッカ15に積載されることで印刷画像形成が終了する。
【0056】
なお、第1の実施例で示したように、給紙ユニット55の回動と連動して稼働するリンクアームの働きにより用紙後端ガイド38の後端押さえレバー39を押し下げ、シートレシーブプレート35上に積層した印刷媒体Sの後端部を押圧する構成としても良い。
このように、給紙ユニットを搬送方向における上流から下流へ回動する構成とし、ホッピングローラが印刷媒体に当接して押圧を開始した後に分離パッドに当接させ、分離パッドと印刷媒体との当接角度が大きい状態で給紙し始めることで、給紙時の分離動作に作用する摩擦分離片のブレーキ力が大きくなり、摩擦係数の大きな印刷媒体でも分離不良による重送を低減することができる。
【0057】
以上説明したように、第2の実施例では、第1の実施例の効果に加え、ホッピングローラを搬送方向における上流から下流へ回動する構成とし、分離パッドと印刷媒体との当接角度が大きい状態で給紙し始めるようにしたことにより、次紙に生じる摩擦力が大きくなるため、搬送中の印刷媒体につられて次紙が重なった状態で画像形成部に搬送されることが低減され、給紙不具合の発生を低減することができるという効果が得られる。
【0058】
なお、第1の実施例および第2の実施例では、画像形成装置としてプリンタを例に説明したが、それに限られることなく、複写機、ファクシミリ装置および複合機等としても良い。
また、画像形成装置に用いて印刷媒体の給紙を行う給紙装置のみならず、スキャナ等の画像読み取り装置、自動裁断機、折り綴じ機およびスリッタ等の帳票処理機等の給紙装置としても良い。