(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5940996
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月29日
(54)【発明の名称】偏平バーナ
(51)【国際特許分類】
F23D 14/64 20060101AFI20160616BHJP
F23D 14/08 20060101ALI20160616BHJP
【FI】
F23D14/64 B
F23D14/08 F
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-35312(P2013-35312)
(22)【出願日】2013年2月26日
(65)【公開番号】特開2014-163595(P2014-163595A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2015年4月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120802
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】赤木 万之
【審査官】
渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−179809(JP,A)
【文献】
特開2007−292343(JP,A)
【文献】
特開平07−091620(JP,A)
【文献】
特開平06−034110(JP,A)
【文献】
特開平11−108314(JP,A)
【文献】
特開平11−14019(JP,A)
【文献】
特開2004−190940(JP,A)
【文献】
特開2003−269705(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23D14/00−14/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長形状の炎口部を上端部に有する偏平バーナであって、炎口部の長手方向を前後方向として、上下方向に長手の断面形状の流入口とその後方に隣接する流入口よりも断面積が小さなスロート部とを有する混合管部と、流入口に臨ませたガスノズルから噴射される燃料ガスと流入口から流入する一次空気との混合気を混合管部から炎口部に導く分布室部とを備え、混合管部と分布室部との接続部が炎口部の前後方向中心よりも後方に位置するものにおいて、
スロート部は、その断面中心が流入口の断面中心に対し下方にオフセットした位置に存するように形成され、
ガスノズルは、そのノズル孔の孔軸がスロート部の断面中心から流入口の断面中心側にずれた上下方向位置を通るように配置されることを特徴とする偏平バーナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給湯用熱源機等の燃焼装置に用いられる偏平バーナに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、給湯用熱源機においては、燃焼ファンで燃焼用空気を強制的に供給する燃焼筐内に、細長形状の炎口部を上端部に有する偏平バーナが複数個並設されている。
【0003】
従来、この種の偏平バーナは、炎口部の長手方向を前後方向として、上下方向に長手の断面形状の流入口とその後方に隣接する流入口よりも断面積が小さなスロート部とを有する混合管部と、流入口に臨ませたガスノズルから噴射される燃料ガスと流入口から流入する一次空気との混合気を混合管部から炎口部に導く分布室部とを備えている(例えば、特許文献1参照)。尚、従来の偏平バーナおいて、スロート部は、その断面中心が流入口の断面中心と同一の上下方向位置に存するように形成されている。
【0004】
ところで、熱源機の小型化のため、偏平バーナの混合管部の長さを短くすることが要求される場合がある。然し、混合管部の長さを短くすると、燃料ガスと一次空気との混合が不十分になり、燃焼性能に悪影響が及ぶことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−91620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の点に鑑み、混合管部の長さを短くしても、燃料ガスと一次空気との混合を促進できるようにした偏平バーナを提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、細長形状の炎口部を上端部に有する偏平バーナであって、炎口部の長手方向を前後方向として、上下方向に長手の断面形状の流入口とその後方に隣接する流入口よりも断面積が小さなスロート部とを有する混合管部と、流入口に臨ませたガスノズルから噴射される燃料ガスと流入口から流入する一次空気との混合気を混合管部から炎口部に導く分布室部とを備え
、混合管部と分布室部との接続部が炎口部の前後方向中心よりも後方に位置するものにおいて、スロート部は、その断面中心が流入口の断面中心に対し
下方にオフセットした位置に存するように形成され、ガスノズルは、そのノズル孔の孔軸がスロート部の断面中心から流入口の断面中心側にずれた上下方向位置を通るように配置されることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、流入口とスロート部との間の通路部のうち上下他方(スロート部の断面中心に対する流入口の断面中心のオフセット方向)側の半部では、流入口から流入する一次空気がスロート部に向けて上下一方(流入口の断面中心に対するスロート部の断面中心のオフセット方向)に大きく傾斜して流れ、更に、ノズル孔の孔軸が流入口とスロート部との間の通路部の上下他方側の半部を通る。そのため、孔軸に沿って流れる燃料ガスに一次空気が角度を持って衝突し、混合管部の長さが短くても燃料ガスと一次空気との混合が促進される。
【0009】
また、混合管部と分布室部との接続部が炎口部の前後方向中心よりも後方に位置する場合、炎口部の前半部に供給される混合気の燃料濃度が薄くなりがちである。この場合、
上記の如くスロート部の断面中心が流入口の断面中心に対し下方にオフセットしていれば、ノズル孔の孔軸がスロート部の断面中心よりも上側を通ることになり、混合管部の後端の上側部分から分布室部の前側部分に流れる混合気の燃料濃度が比較的濃くなって、炎口部の前半部に供給される混合気の燃料濃度が薄くなることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態の偏平バーナを備える燃焼装置の切断側面図。
【
図4】
図2のIV−IV線で切断した偏平バーナの断面図。
【
図5】
図4のV−V線で切断した偏平バーナの切断側面図。
【
図6】実施形態の偏平バーナと従来の偏平バーナとの炎口部の前後各部における混合気の燃料濃度の測定結果を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1を参照して、1は燃焼筐を示している。燃焼筐1の上面は開放されており、燃焼筐1の上に図示省略した熱交換器等の被加熱物が設置される。燃焼筐1内には、燃焼筐1内の空間を燃焼室2とその下側の給気室3とに仕切る仕切り板4が設けられている。給気室3の底面には図外の燃焼ファンがダクト5を介して接続されており、燃焼ファンから給気室3に空気が供給される。仕切り板4には、多数の分布孔4aが形成されており、給気室3に供給された空気がこれら分布孔4aを介して燃焼室2に二次空気として供給されるようにしている。
【0012】
燃焼室2内には、本発明の実施形態の偏平バーナ6が複数本並設されている。また、仕切り板4の前縁に立上り部41を曲成すると共に、立上り部41の前側に燃焼筐1の下部前面を塞ぐようにしてマニホールド7を装着している。マニホールド7には、各偏平バーナ6の後述する混合管部65、67の流入口65a,67aに臨むガスノズル71,72が設けられている。そして、各ガスノズル71,72から各流入口65a,67aに燃料ガスが供給されると共に、給気室3から立上り部41とマニホールド7との間に画成される空隙を介して各流入口65a,67aに一次空気が供給されるようにしている。
【0013】
偏平バーナ6は、
図2、
図3に示す如く、バーナ本体61と、バーナ本体61の上部に被せたバーナキャップ62とを備えている。バーナ本体61の上部には、上方に開口する細長形状の炎口部63が形成されている。また、バーナキャップ62により、炎口部63の両脇に位置する袖火炎口部64が形成されている。そして、理論空燃比より燃料濃度が希薄な淡混合気を炎口部63から噴出させると共に、理論空燃比より燃料濃度が濃い濃混合気を袖火炎口部64から噴出させ、所謂濃淡燃焼を行うようにしている。
【0014】
以下、炎口部63の長手方向を前後方向、炎口部63の幅方向を横方向として、偏平バーナ6の構成について詳述する。バーナ本体61は、
図4に示す如く、横方向に対峙する一対の側板61a,61aで構成されている。尚、両側板61a,61aは、一枚の板をバーナ本体61の下縁となる折り曲げ線で合掌状態に折り曲げることにより形成されている。そして、各側板61aのプレス加工により、バーナ本体61に、上端部の炎口部63と、下部の混合管部65と、混合管部65からの混合気を炎口部63に導く分布室部66とが形成されている。
【0015】
図5も参照して、混合管部65は、バーナ本体61の下部前縁に位置する、上下方向に長手の断面形状の流入口65aと、流入口65aの後方に隣接する流入口65aよりも断面積が小さなスロート部65bとを有しており、混合管部65の後端部が上方に屈曲して分布室部66に接続されている。また、バーナ本体61の前部には、混合管部65と分布室部66との間に位置させて、袖火用の混合管部67が形成されている。この混合管部67は、バーナ本体61の前縁に位置する流入口67aから後方に少しのびて終端しており、その後端部側面に通気孔67bが開設されている。
【0016】
混合管部65と分布室部66との接続部は炎口部63の前後方向中心よりも後方に位置している。また、分布室部66の上部には、横幅を狭めた絞り部66aが形成されている。絞り部66aの横幅は、混合管部65と分布室部66との接続部の真上に位置する部分から前方に向けて次第に広がっている。これにより、炎口部63に流入する混合気の前後方向流量分布が均等化される。
【0017】
バーナキャップ62は、バーナ本体61の一対の側板61a,61aの外側に被せられる一対の側板62a,62aと、両側板62a,62aをその上縁で連結する前後複数個所のブリッジ部62bとを有している。そして、バーナ本体61の側板61aとバーナキャップ62の側板62aとの間に、上端部の袖火炎口部64と、袖火用混合管部67から通気孔67bを介してバーナ本体61の外側に流出する混合気を袖火炎口部64に導く通路が画成される。また、バーナキャップ62の側板62aの前後複数個所には、バーナ本体61の側板61aの外側面に当接して、袖火炎口部64を前後方向に分断する凹部62cが形成されている。
【0018】
また、炎口部63内には、横方向に並設した複数の整流板68aを有する整流部材68が装着されている。整流部材68には、バーナキャップ62のブリッジ部62bに合致する前後複数個所に、整流板68a同士を当接させて、各整流板68a間に画成される炎口流路を前後方向に分断する当接部68bが形成されている。また、バーナ本体61の炎口部63には、その上下方向中間部に位置させて、整流部材68を横方向両側から挟み込む狭窄部63aが形成されている。これにより、狭窄部63aの上側の側板61aの部分と外側の整流板68aとの間に混合気が噴出しない盲空隙63bが画成される。
【0019】
ところで、混合管部65の長さを短くすると、燃料ガスと一次空気との混合が不十分になり、燃焼性能に悪影響が及ぶことがある。また、混合管部65と分布室部66との接続部が炎口部63の前後方向中心よりも後方に位置している場合、混合管部65のスロート部65bの断面中心が流入口65aの断面中心と同一の上下方向位置に存し、ガスノズル71をそのノズル孔71aの孔軸が流入口65a及びスロート部65bの断面中心を通るように配置した従来の偏平バーナでは、
図6にb線で示すように、炎口部63の前半部に供給される混合気の燃料濃度が薄くなる。
【0020】
そこで、本実施形態では、
図5に明示する如く、スロート部65bを、その断面中心O2が流入口65aの断面中心O1に対し下方にオフセットした位置に存するように形成すると共に、ガスノズル71を、そのノズル孔71aの孔軸がスロート部65bの断面中心O2から流入口65aの断面中心O1側にずれた上下方向位置を通るように配置している。尚、本実施形態では、ノズル孔65bの孔軸が流入口65aの断面中心O1を通るようにしているが、ノズル孔71aの孔軸は、スロート部65bの断面中心O2よりも上側であれば流入口65aの断面中心O1の下側や上側に位置していてもよい。
【0021】
本実施形態によれば、流入口65aとスロート部65bとの間の通路部のうちスロート部65bの断面中心O2に対する流入口65aの断面中心O1のオフセット方向たる上側の半部では、流入口65aから流入する一次空気がスロート部65bに向けて下方に大きく傾斜して流れ、更に、ノズル孔71aの孔軸が流入口65aとスロート部65bとの間の通路部の上側の半部を通る。そのため、孔軸に沿って流れる燃料ガスに一次空気が角度を持って衝突し、混合管部65の長さが短くても燃料ガスと一次空気との混合が促進される。
【0022】
また、ノズル孔71aの孔軸がスロート部65bの断面中心O2よりも上側を通ることになる。その結果、混合管部65の後端の上側部分から分布室部66の前側部分に
図5の矢印aの如く流れる混合気の燃料濃度が比較的濃くなって、
図6にa線で示す如く、炎口部63の前半部に供給される混合気の燃料濃度が薄くなることを抑制できる。
【0023】
また、本実施形態では、袖火用混合管部67での燃料ガスと一次空気との混合を促進するため、この混合管部67の後半部を斜め下方に屈曲させている。尚、袖火用混合管部67をこのように屈曲させても、スロート部65bの断面中心を流入口65aの断面中心に対し下方にオフセットさせることで、混合管部65,67間に所要のシール代(側板61a,61a同士の重ね合わせ代)を確保することができる。
【0024】
ところで、仕切り板4の立上り部41の前面には、一般的に図示省略したダンパが装着され、ダンパで流入口65aの一部を閉塞して、流入口65aへの一次空気の供給量を制限するようにしている。この場合、ダンパで流入口65aの上部を閉塞すると、スロート部65bの断面中心を流入口65aの断面中心に対し下方にオフセットさせることの意義が失われるため、ダンパは流入口65aの下部を閉塞するように構成すべきである。
【0025】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、混合管部65と分布室部66との接続部が炎口部63の前後方向中心よりも前方に位置し、炎口部63の前半部で混合気の燃料濃度が薄くなるといった不具合を生じない場合は、スロート部65bをその断面中心が流入口65aの断面中心に対し上方にオフセットした位置に存するように形成し、ガスノズル71をそのノズル孔71aの孔軸がスロート部65bの断面中心から下方にずれた上下方向位置を通るように配置してもよい。
【0026】
また、上記実施形態の偏平バーナ6は、バーナキャップ62を備える濃淡燃焼式バーナであるが、バーナキャップを省略した濃淡燃焼式でない偏平バーナにも同様に本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0027】
6…偏平バーナ、63…炎口部、65…混合管部、65a…流入口、65b…スロート部、66…分布室部、71…ガスノズル、71a…ノズル孔。