(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5941013
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月29日
(54)【発明の名称】エレベーターの異常診断装置
(51)【国際特許分類】
B66B 5/02 20060101AFI20160616BHJP
【FI】
B66B5/02 S
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-90413(P2013-90413)
(22)【出願日】2013年4月23日
(65)【公開番号】特開2014-213974(P2014-213974A)
(43)【公開日】2014年11月17日
【審査請求日】2015年7月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂田 義喜
【審査官】
井上 信
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−218925(JP,A)
【文献】
特開2009−149390(JP,A)
【文献】
特開2000−16715(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降路内を昇降する乗りかごと、モータを駆動源として回転するシーブと、このシーブとプーリに巻き掛けられたロープと、このロープを介して前記乗りかごに連結された釣り合い錘とを備え、前記乗りかごに設けられたセンサの検知信号に基づいて前記シーブや前記プーリの異常を診断するエレベーターの異常診断装置において、
前記モータの回転情報を検出するロータリーエンコーダと、このロータリーエンコーダの出力信号に基づいて前記乗りかごの速度と位置を計測する速度・位置計測手段と、前記センサの検知信号を基に異常状態であることを検出するセンサ異常判定手段と、前記速度・位置計測手段の測定結果と前記センサ異常判定手段とに基づいて異常が発生している間隔を距離として算出する異常発生サイクル距離算出手段と、前記シーブと前記プーリの外周長さを予め記憶しておく外周長記憶手段と、前記異常発生サイクル距離算出手段によって算出された距離と前記外周長記憶手段に記憶されている外周長さとを比較して、異常の発生している前記シーブまたは前記プーリを特定する異常部位特定手段とを備えたことを特徴とするエレベーターの異常診断装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエレベーターの異常診断装置において、前記センサとして加速度センサを用い、前記シーブや前記プーリに異常が発生したときに、前記加速度センサが前記ロープを介して前記乗りかごに伝わる振動を計測することを特徴とするエレベーターの異常診断装置。
【請求項3】
請求項1に記載のエレベーターの異常診断装置において、前記センサとして荷重センサを用い、前記シーブや前記プーリに異常が発生したときに、前記荷重センサが前記ロープを介して前記乗りかごに伝わる振動を、該乗りかごの床面のたわみ量から計測することを特徴とするエレベーターの異常診断装置。
【請求項4】
請求項1に記載のエレベーターの異常診断装置において、前記センサとして集音センサを用い、前記シーブや前記プーリに異常が発生したときに、前記集音センサが発生する異常音を計測することを特徴とするエレベーターの異常診断装置。
【請求項5】
請求項1に記載のエレベーターの異常診断装置において、前記異常発生サイクル距離算出手段は、異常が発生している距離の算出結果が所定個数以上得られた場合に限って、前記シーブや前記プーリに異常が発生していると判定することを特徴とするエレベーターの異常診断装置。
【請求項6】
請求項1に記載のエレベーターの異常診断装置において、前記異常部位特定手段は、前記異常発生サイクル距離算出手段によって算出された距離と前記外周長記憶手段に記憶されている前記シーブおよび前記プーリの外周長さとを比較し、所定範囲内で一致する前記シーブまたは前記プーリを異常の発生部位であると特定することを特徴とするエレベーターの異常診断装置。
【請求項7】
請求項1に記載のエレベーターの異常診断装置において、前記異常部位特定手段が異常の発生している前記シーブまたは前記プーリを特定した場合に、電話回線またはインターネットを介して、監視センターに異常を通知して保守員の出動を可能とすることを特徴とするエレベーターの異常診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベーターのロープが巻き掛けられるシーブやプーリへ異物固着に起因する異常を検出するエレベーターの異常診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ロープ式エレベーターのロープには、潤滑または防錆用として油が塗布されている。この油の塗布方法としては、給油装置を設けて塗布するものや、ロープ自身の線心に麻心を使用して油を浸み込ませておくもの等が知られている。しかしながら、油がロープを巻き掛けたシーブやプーリの溝に付着すると、周囲を浮遊する塵挨が油に混入したり、油の成分によっては冬場で気温が低下した場合に、油が固くなってシーブやプーリの溝に固着してしまうという現象が発生する。そして、このようにシーブやプーリの溝に油が固着してしまうと、シーブやプーリの回転に伴ってロープが固着物を乗り上げる度に、カタンカタンと定期的な振動や異常音が発生するため、乗りかご内の乗客に不安感や不快感を与える結果となる。その場合、保守員が現地に向かって対策を行うことになるが、いざ保守員が現地で調査に取り掛かっても、近年の機械室レスタイプのロープ式エレベーターなどにおいては、数多くのプーリが使用されているため、異常音や振動の発生源であるシーブやプーリを特定するのに多くの時間を要することになる。
【0003】
このような状況を回避するため、従来より、乗りかごの適宜箇所に音センサや振動センサ等を取り付け、これらセンサから出力される検知情報、運転制御盤からの乗りかご昇降中の位置、向き、速度等の状態情報および予め記憶してあるセンサの情報等に基づいて、昇降路内機器の異常判定や異常が発生した機器の特定を行うようにしたエレベーターの異常診断装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このものは、乗りかごを昇降路内にて昇降運転させたとき、音センサにより捉えられた音のピーク値が連続的に徐々に大きくなり、または小さくなるのを検出した場合、昇降路内機器の何れかに異常があると判定し、昇降路内の異常発生源に近づくと音のピーク値が連続的に大きくなり遠ざかると音のピーク値が連続的に徐々に小さくなる特性に基づいて異常を起こした位置を判定するようにしている。また、振動センサや音センサにより捉えられた振動や音のピーク値はピットに近づくと連続的に大きくなり、または遠ざかると連続的に小さくなるのを検出した場合、昇降路の下部のピット内機器の何れかに異常があると判定し、各ピット内の機器が異常を起こしたときの周波数特性の基準に基づいて、異常を起こしたのが何れのピット内機器であるかを判定するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平09−208149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された前述の従来技術では、機器が異常を起こしたときの周波数特性の基準に基づいて、異常が発生した機器を特定するようになっているため、シーブやプーリ等の回転物の異常を判定することが困難であった。すなわち、同じシーブやプーリを使用したエレベーターであっても、定格速度の異なるエレベーターではシーブやプーリの回転速度が異なり、定格速度が同じであっても、加速中と減速中とではシーブやプーリの回転速度が異なるため、異常を起こした時の周波数特性には変化要因が多く含まれることになる。そのため、シーブやプーリのような回転駆動系の機器に対しては、回転速度に応じて周波数特性の基準値をいくつも用意しておく必要があり、それに伴って演算処理や判定処理が煩雑となり、異常の発生している機器を簡易的かつ正確に判定することが困難となる。
【0006】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、回転駆動系の機器であるシーブやプーリの溝に異物が固着したことを、簡易的かつ正確に判定することができるエレベーターの異常診断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明に係るエレベーターの異常診断装置は、昇降路内を昇降する乗りかごと、モータを駆動源として回転するシーブと、このシーブとプーリに巻き掛けられたロープと、このロープを介して前記乗りかごに連結された釣り合い錘とを備え、前記乗りかごに設けられたセンサの検知信号に基づいて前記シーブや前記プーリの異常を診断するエレベーターの異常診断装置において、前記モータの回転情報を検出するロータリーエンコーダと、このロータリーエンコーダの出力信号に基づいて前記乗りかごの速度と位置を計測する速度・位置計測手段と、前記センサの検知信号を基に異常状態であることを検出するセンサ異常判定手段と、前記速度・位置計測手段の測定結果と前記センサ異常判定手段とに基づいて異常が発生している間隔を距離として算出する異常発生サイクル距離算出手段と、前記シーブと前記プーリの外周長さを予め記憶しておく外周長記憶手段と、前記異常発生サイクル距離算出手段によって算出された距離と前記外周長記憶手段に記憶されている外周長さとを比較して、異常の発生している前記シーブまたは前記プーリを特定する異常部位特定手段とを備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、エレベーターの走行時に、乗りかごに取り付けたセンサによって定期的に異常が発生していることを検出し、さらに、乗りかごの位置信号を基に異常が発生している間隔を距離として算出し、これを予め記憶されているシーブやプーリの外周長さと比較して、異常の発生しているシーブやプーリを特定するようにしたので、回転駆動系の機器であるシーブやプーリの溝に異物が固着したことを、簡易的かつ正確に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係るエレベーターの異常診断装置を示す構成図である。
【
図2】エレベーター走行時の各信号波形を示す説明図である。
【
図3】外周長記憶手段に記憶される外周長さを示す説明図である。
【
図4】
図1に示す異常診断装置の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態に係るエレベーターの異常診断装置を図面に基づいて説明する。
【0011】
図1は本実施形態に係るエレベーターの異常診断装置を示す構成図であり、
図1において、1はエレベーターの乗りかご、2は釣り合い錘、3はロープであり、ロープ3は、乗りかご1と釣り合い錘2の自重を支え、その両端を建屋側に設置してある。4はモータ、5はモータ4の回転情報(回転量と回転方向)を検出するロータリーエンコーダであり、ロータリーエンコーダ5はモータ4の回転に比例したパルス信号を出力する。6は乗りかご1の速度異常を検出してエレベーターを安全に停止させるための安全装置であるガバナ、7はガバナロープ、8は乗りかご1とガバナロープ7を連結する連結具、9は乗りかご1の所定位置に取り付けられたセンサであり、本実施形態では、センサ9として加速度センサ(振動センサ)9aと荷重センサ9bおよび集音センサ9cが用いられている。Plはモータ4に直結されて回転するシーブ、P2はカウンターウェートプーリ、P3aは第1頂部プーリ、P3bは第2頂部プーリ、P4aは第1かご下プーリ、P4bは第2かご下プーリであり、これらシーブPlと各プーリP2,P3a,P3b,P4a,P4bにロープ3が巻き掛けられている。また、P5aは第1ガバナプーリ、P5bは第2ガバナプーリであり、これらプーリP5a,P5bにガバナロープ7が巻き掛けられている。
【0012】
10は本実施形態に係る異常診断装置による一連の処理を実行する制御装置(CPU)であり、制御装置10は、速度・位置検出手段11や異常閾値記憶手段12、センサ異常判定手段13、異常検出かご位置記録手段14、異常発生サイクル距離算出手段15、外周長記憶手段16、異常部位特定手段17等を備えている。速度・位置検出手段11は、ロータリーエンコーダ5から出力されるパルス信号を基に乗りかご1の速度と位置を検出し、異常閾値記憶手段12は、センサ9の計測値が異常かどうかを判定するために予め異常閾値を記憶している。センサ異常判定手段13は、異常閾値記憶手段12に記憶された異常閾値とセンサ9の計測値とを比較して異常状態を検出し、異常検出かご位置記録手段14は、センサ異常判定手段13によって異常が検出された場合に乗りかご1のかご位置を速度・位置検出手段11からのかご位置信号を基に記録する。異常発生サイクル距離算出手段15は、異常検出かご位置記録手段14に記録された複数のかご位置の間隔を距離として算出し、外周長記憶手段16は、シーブPlや各プーリ(P2,P3a等)の外周長さ(円周)を予め記憶している。異常部位特定手段17は、異常発生サイクル距離算出手段15によって算出された距離と外周長記憶手段16に記憶された外周長さとを比較して異常の発生しているシーブやプーリを特定する。また、18は電話回線、19は監視センターである。
【0013】
図2はエレベーター走行時の各信号波形を示す説明図であり、
図2において、Vは速度・位置検出手段11によって計測される速度波形、αは加速度センサ9aによって計測される加速度センサ波形、α1は加速度センサ上限異常閾値、α2は加速度センサ下限異常閾値であり、これら加速度センサ上限異常閾値α1と加速度センサ下限異常閾値α2は異常閾値記憶手段12に予め記憶されている。Wは荷重センサ9bによって計測される荷重センサ波形、Wlは荷重センサ上限異常閾値、W2は荷重センサ下限異常閾値であり、これら荷重センサ上限異常閾値W1と荷重センサ下限異常閾値W2は異常閾値記憶手段12に予め記憶されている。Dは集音センサ9cによって計測される音センサ波形、Dlは音センサ上限異常閾値であり、音センサ上限異常閾値Dlは異常閾値記憶手段12に予め記憶されている。また、Lcは速度・位置検出手段11によって計測されるかご位置波形である。
【0014】
図3は外周長記憶手段16に記憶されるシーブや各プーリの外周長さ(円周)を表に示した説明図であり、
図3において、LPlはシーブPlの外周長さ、LP2はカウンターウェートプーリP2の外周長さ、LP3aは第1頂部プーリP3aの外周長さ、LP3bは第2頂部プーリP3bの外周長さ、LP4aは第1かご下プーリP4aの外周長さ、LP4bは第2かご下プーリP4bの外周長さ、LP5aは第1ガバナプーリP5aの外周長さ、LP5bは第2ガバナプーリP5bの外周長さを示している。
【0015】
次に、本実施形態に係る異常診断装置の処理手順を
図4に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0016】
まず、
図4のステップSlにおいて、速度・位置検出手段11によってエレベーターが走行を開始したことを検出したら、ステップS2において、異常判定手段13によってセンサ9の計測値が異常閾値を超えたか否かを判定する。その際、センサ9として加速度センサ9aを用い、シーブやプーリに異常が発生した場合に、ロープ3やガバナロープ7や連結具8を介して乗りかご1に伝わる振動を加速度センサ9aで計測するようにすれば良い。また、センサ9として加速度センサ9aの計測値と相関が強いことで知られている荷重センサ9bを用い、シーブやプーリに異常が発生した場合に、乗りかご1の床面のたわみ量を荷重センサ9bで計測するようにしても良い。あるいは、センサ9として集音センサ9cを用い、発生する異常音を集音センサ9cで計測するようにしても良い。また、それぞれのセンサ9a,9b,9cを組み合わせて使用することにより、異常検出精度を高めることも可能である。
【0017】
ここで、センサ9として加速度センサ9aを用いた場合は、異常判定には、異常閾値記憶手段12に予め記憶された加速度センサ上限異常閾値α1と加速度センサ下限異常閾値α2を用いる。また、センサ9として荷重センサ9bを用いた場合は、異常判定には、異常閾値記憶手段12に予め記憶された荷重センサ上限異常閾値Wlと荷重センサ下限異常閾値W2を用いる。また、センサ9として集音センサ9cを用いた場合は、異常判定には、異常閾値記憶手段12に予め記憶された音センサ上限異常閾値D1を用いる。なお、センサ9として荷重センサ9bを用いた場合、乗りかご1内の乗客の人数や積載量によって荷重センサ9bの値は異なってくるため、荷重センサ上限異常閾値Wlと荷重センサ下限異常閾値W2は、エレベーター走行直前の荷重センサ9bの計測値を基準に閾値を補正して、異常を正しく検出できるようにするのが好ましい。
【0018】
ステップS2において、センサ異常判定手段13によってセンサ9の計測値が異常閾値を超えたと判定されると、ステップS3へ進み、異常検出かご位置記録手段14が速度・かご位置検出手段11にて計測されたときのかご位置Lcを異常検出時のかご位置Lnとして記録する。ここで、異常検出時のかご位置Lnとは、
図2に示すように、検出順にL0,Ll,L2・・・として記録するものであり、初回はL0が記録される。
【0019】
次にステップS4において、速度・位置検出手段11によってエレベーターが走行中であるか否かを判定し、走行中であればステップS2に戻る。そして、ステップS2において前述と同様に異常を検出すれば、ステップS3において前述と同様に異常検出時のかご位置Lnを記録する。この際、異常検出時のかご位置Lnは、検出順にL0,Ll,L2・・・として記録するものであるから、2回目はLlが記録される。このように、エレベーター走行中は、ステップS2からステップS4までを繰り返し、異常検出時のかご位置Ln(L0,Ll,L2・・・)を記録していく。
【0020】
エレベーターが停止すると、ステップS4からステップS5へと進み、異常発生サイクル距離算出手段15が前述した異常検出時のかご位置Ln(L0,Ll,L2・・・)から異常検出位置間距離Lsn(Ls1,Ls2・・・)を算出する(Lsn=Ln−(Ln−1)。すなわち、
図2にように、Ls1=L1−L0,Ls2=L2−L1,Ls3=L3−L2,・・・として、異常検出位置間距離Lsn(Ls1,Ls2,・・・)を算出する。
【0021】
次に、ステップS6へと進み、異常発生サイクル距離算出手段15において、異常検出位置間距離Lsn(Ls1,Ls2,・・・)の中から、周知の中央値処理を行い、異常検出位置間距離の中央値LsMを選出する。例えば、Ls1=100[mm],Ls2=501[mm],Ls3=495[mm],Ls4=500[mm],Ls5=504[mm]であったとすれば、これらを小さい順(昇順)に並べ替えると、Ls1=100[mm],Ls3=495[mm],Ls4=500[mm],Ls2=501[mm],Ls5=504[mm]となり、中央値はLs4=500[mm]であるから、異常検出位置間距離の中央値LsMはLs4(LsM=Ls4)となる。なお、異常検出位置間距離Lsn(Ls1,Ls2,・・・)の個数が、上記のように奇数個ではなく偶数個の場合は、中央2つの値の平均値をとるのが一般的な中央値の算出ではあるが、処理の簡略化のために中央2つの値のどちらかを選択する方式としても良い。また、前述のように中央値をとるのではなく、平均値をとるようにしても良いが、平均値をとるようにした場合は、ノイズ等による異常値や外れ値の影響を受け易くなるため、好ましくは中央値をとる方が良い。
【0022】
次に、ステップS7へと進み、異常発生サイクル距離算出手段15において、異常検出位置間距離の中央値LsMの値に対して、異常検出位置間距離Lsn(Ls1,Ls2,・・・)の中に所定の範囲内で近似した値が所定個数以上あるか否かを判定する。ここで、異常検出位置間距離の中央値LsMの値に対して、異常検出位置間距離Lsn(Ls1,Ls2,・・・)の中に所定の範囲内で近似した値が所定個数以上あれば、シーブやプーリの回転に伴って定期的な振動や音などの異常が発生しているものと判断し、ステップS8へと進む。なお、ステップS7において前述した条件が成立しない場合は、一連の処理を終了する。
【0023】
ステップS8に進んだ場合は、異常部位特定手段17において、外周長記憶手段16に記憶されたシーブやプーリの外周長さの値(
図3に示すLp1,pL2,Lp3a,Lp3b,Lp4a,Lp4b,Lp5a,Lp5b)と、前述した異常検出位置間距離の中央値LsMとを比較し、所定範囲内で一致しているものがあるか否かを判定する。ここで、異常検出位置間距離の中央値LsMと外周長さ(Lp1,Lp2,Lp3a,Lp3b,Lp4a,Lp4b,Lp5a,Lp5b)の中に所定範囲内で一致するものがあれば、ステップS9に進み、外周長さが一致したシーブまたはプーリを異常発生部位として特定する。例えば、異常検出位置間距離の中央値LsMと外周長さLp2とが所定範囲内で一致すれば、カウンターウェートプーリP2が異常部位として特定される。一方、ステップS8において前述した条件が成立しない場合は、一連の処理は終了する。
【0024】
ステップS9において異常部位特定手段17によって異常発生部位としてシーブまたはプーリが特定されたら、ステップS10へと進み、電話回線18を通じて監視センター19に異常を通知する。これにより、ステップSllに示すように、監視センター19では保守員を現地に出動させ、保守員は直ちに異常のあるシーブまたはプーリを把握して、点検および清掃を行うことが可能となる。なお、ステップS10において、電話回線18の替わりにインターネットを通じて監視センター19に異常を通知するようにしても良い。
【0025】
以上説明したように、本発明のエレベーターの異常診断装置によれば、エレベーター走行時に、乗りかご1に取り付けたセンサ9によって定期的に異常が発生していることを検出し、さらに、乗りかご1の位置信号を基に異常が発生している間隔を距離として算出し、これを予め記憶されているシーブやプーリの外周長さと比較して、異常の発生しているシーブやプーリを特定できるため、回転駆動系の機器であるシーブPlやプーリ(P2,P3a,P3b,P4a,P4b,P5a,P5b)の溝に異物が固着したことを、簡易的かつ正確に判定することができる。
【符号の説明】
【0026】
1 乗りかご
2 釣り合い錘
3 ロープ
4 モータ
5 ロータリーエンコーダ
6 ガバナ
7 ガバナロープ
8 連結具
9 センサ
9a 加速度センサ(振動センサ)
9b 荷重センサ
9c 集音センサ
10 制御装置(CPU)
11 速度・位置検出手段
12 異常閾値記憶手段
13 センサ異常判定手段
14 異常検出かご位置記録手段
15 異常発生サイクル距離算出手段
16 外周長記憶手段
17 異常部位特定手段
18 電話回線
19 監視センター
Pl シーブ
P2 カウンターウェートプーリ
P3a 第1頂部プーリ
P3b 第2頂部プーリ
P4a 第1かご下プーリ
P4b 第2かご下プーリ
P5a 第1ガバナプーリ
P5b 第2ガバナプーリ
V 速度波形
α 加速度センサ波形
α1 加速度センサ上限異常閾値
α2 加速度センサ下限異常閾値
W 荷重センサ波形
Wl 荷重センサ上限異常閾値
W2 荷重センサ下限異常閾値
D 音センサ波形
Dl 音センサ上限異常閾値
Lc かご位置波形