(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
油圧ショベル等の建設機械はその駆動源としてディーゼルエンジンを搭載している。ディーゼルエンジンから排出される粒子状物質(以下PMという)の排出量は、NOx、CO、HC等とともに年々規制が強化されてきている。このような規制に対して、エンジンに排気ガス浄化装置を設け、エンジン排気ガス浄化装置内のディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF:Diesel Particulate Filter )と呼ばれるフィルタでPMを捕集して、外部へ排出されるPMの量を低減することが一般的に行われている。この排気ガス浄化装置では、フィルタのPM補足量が増加してくるとフィルタは目詰まりを起こしてゆき、そのことによりエンジンの排圧が上昇して、燃費の悪化等を誘発するため、フィルタに捕集したPMを適宜燃焼してフィルタの目詰まりを除去し、フィルタを再生することが必要である。
【0007】
フィルタの再生には、通常、酸化触媒を用いる。酸化触媒はフィルタの上流側に配置される場合と、フィルタに直接担持される場合と、その両方の場合とがあるが、いずれの場合も酸化触媒を活性化するためには、排気ガスの温度が酸化触媒の活性温度よりも高くなければならず、そのために排気ガス温度を強制的に酸化触媒の活性温度よりも高い温度に上昇させる必要がある。
【0008】
特許文献1に記載の油圧駆動システムでは、可変容量型のメインポンプはロードセンシング制御を行うため、例えば全ての操作レバーが中立にあるときには、メインポンプの傾転角(容量)は最小となり、吐出流量も最少となる。また、メインポンプの吐出圧はアンロード弁により制御され、全ての操作レバーが中立にあるときはメインポンプの吐出圧はアンロード弁の設定圧とほぼ等しい最小圧力となる。その結果、メインポンプの吸収トルクも最小となる。
【0009】
このようなロードセンシング制御を行う油圧駆動システムのエンジンに排気ガス浄化装置を設けた場合は、全ての操作レバーが中立にあるときは、エンジンの負荷は低くなり、エンジンの排気ガスの温度は低くなってしまう。
【0010】
特許文献2に記載の油圧駆動システムでは、排気ガス浄化装置のフィルタの再生が必要になると、そのことを排気抵抗センサで検出し、メインポンプの吐出流量と吐出圧を同時に上昇させる制御(以下、ポンプ出力上昇制御という)を行うことでエンジンに油圧的な負荷をかけ、エンジンの出力を高くして排気ガス温度を上昇させ、酸化触媒を活性化してフィルタ堆積物を燃焼させている。このため全ての操作レバーが中立にあるときでも、メインポンプの吸収馬力は小さくならず、フィルタの再生を行うことができる。
【0011】
しかし、特許文献2の技術では、ポンプ出力上昇制御中に操作レバーを操作してアクチュエータを動作させた場合に、ポンプ出力上昇制御に不具合を生じてしまう可能性があった。
【0012】
すなわち、特許文献2では、排ガス浄化装置が再生を必要とする条件のときに、制御装置から信号を出力してメインポンプのレギュレータを直接制御することによって目標流量Q2を得る一方、制御装置からの信号でアンロード弁を直接制御することにより、目標圧力P2を得ている。これにより全ての操作レバーが中立にあり、アクチュエータ動作がない場合は、目標圧力P2と目標流量Q2が得られるので、メインポンプの吸収トルクをポンプ出力上昇制御に必要な目標値に合わせこむことが可能である。
【0013】
しかし、例えばポンプ出力上昇制御中に、アクチュエータ動作を行うと、メインポンプから吐出された圧油は、アクチュエータに流入するが、ポンプ出力上昇制御によるレギュレータの制御で得られるメインポンプの目標流量Q2よりもアクチュエータの要求流量が多い場合には、メインポンプの吐出圧が低下して目標圧力P2に達しなくなり、メインポンプの吸収トルクが最適値から減少してしまう。
【0014】
このような理由から、特許文献2では、ポンプ出力上昇制御を操作レバーが中立にあるときに限って行うことを推奨している。
【0015】
本発明の目的は、ロードセンシング制御を行う油圧駆動システムにおいて、ポンプ出力上昇制御により排気ガス浄化装置内のフィルタ堆積物を効率的に燃焼除去することができるとともに、ポンプ出力上昇制御中に操作レバーを操作してアクチュエータを動作させた場合でも、ポンプ出力上昇制御に不具合を生じることがない建設機械の油圧駆動システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
(1)本発明は、上記目的を達成するために、エンジンと、このエンジンにより駆動される可変容量型の油圧ポンプと、この油圧ポンプから吐出された圧油により駆動される複数のアクチュエータと、前記油圧ポンプから複数のアクチュエータへ供給される圧油の流量を制御する複数の流量・方向制御弁と、前記油圧ポンプの吐出圧が高くなるにしたがって前記油圧ポンプの容量を減らし、前記油圧ポンプの吸収トルクが予め設定した最大トルクを超えないように制御する吸収トルク一定制御を行うトルク制御部及び前記油圧ポンプの吐出圧が前記複数のアクチュエータの最高負荷圧より目標差圧だけ高くなるようロードセンシング制御を行うロードセンシング制御部を有するポンプ制御装置と、前記油圧ポンプの吐出油が導かれる油路に接続され、前記油圧ポンプの吐出圧が前記最高負荷圧にアンロード設定圧を加算した圧力よりも高くなると開状態になって前記油圧ポンプの吐出油をタンクに戻し、前記油圧ポンプの吐出圧の上昇を制限するアンロード弁と、前記エンジンにより駆動されるパイロットポンプとを備えた建設機械の油圧駆動システムにおいて、前記エンジンの排気ガスを浄化する排気ガス浄化装置と、前記排気ガス浄化装置の再生の開始を指示する指示装置と、前記指示装置によって前記排気ガス浄化装置の再生の開始が指示されていないときは、前記ロードセンシング制御部のロードセンシング制御を有効とし、前記指示装置によって前記排気ガス浄化装置の再生の開始が指示されたときは、前記ロードセンシング制御部のロードセンシング制御を
有効から無効
に切り換えて前記油圧ポンプの容量
を増加
させるとともに
、前記パイロットポンプの吐出油に基づいて生成された所定の圧力を前記アンロード弁に導き、前記アンロード設定圧を増加させる切換制御装置とを備えるものとする。
【0017】
このように構成した本発明の作用は次のようである。
<作用1>
排気ガス浄化装置が再生を必要とせず、指示装置が排気ガス浄化装置の再生の開始を指示しないときは、切換制御装置は、ロードセンシング制御部のロードセンシング制御を有効とする。これにより通常通り、油圧ポンプの吐出圧が複数のアクチュエータの最高負荷圧より目標差圧だけ高くなるようロードセンシング制御が行われる。また、パイロットポンプの吐出油に基づいて生成された所定の圧力はアンロード弁に導かれず、アンロード弁も通常通り動作し、油圧ポンプの吐出圧が最高負荷圧にアンロード設定圧を加算した圧力よりも高くなると開状態になって油圧ポンプの吐出油をタンクに戻し、油圧ポンプの吐出圧の上昇を制限する。
【0018】
排気ガス浄化装置のフィルタのPM堆積量が増加して排気ガス浄化装置が再生を必要とする状態になり、指示装置が排気ガス浄化装置の再生の開始を指示したときは、切換制御装置は、ロードセンシング制御部のロードセンシング制御を無効として油圧ポンプの吐出流量が増加するよう制御する。また、パイロットポンプの吐出油に基づいて生成された所定の圧力をアンロード弁に導き、アンロード設定圧が増加するよう制御する。このように油圧ポンプの吐出流量が増加しかつアンロード設定圧が増加するよう制御されることで、油圧ポンプの吐出圧は、複数のアクチュエータの最高負荷圧に、アンロード設定圧と、アンロード弁のオーバーライド特性によって決まる圧力を加算した圧力に保たれるよう制御され、かつ油圧ポンプの容量はトルク制御部の吸収トルク一定制御の範囲内で増加する。このため所定の圧力を適切な値に設定しておくことで、油圧ポンプの吐出圧を吸収トルク一定制御の開始圧力付近の圧力(好ましくは吸収トルク一定制御開始圧力以上の圧力)まで高め、油圧ポンプの吸収トルクをトルク制御部の吸収トルク一定制御の最大トルクまで増加させることが可能となる。すなわち、トルク制御部の吸収トルク一定制御を利用したポンプ出力上昇制御(ポンプ吸収トルク上昇制御)を行わせることが可能となる。
【0019】
このように油圧ポンプの吸収トルクが上昇すると、それに応じてエンジンの負荷が高くなって、排気温度が上昇する。これにより排気ガス浄化装置に設けられた酸化触媒が活性化するため、排気ガス中に未燃燃料を供給することにより、未燃燃料が活性化した酸化触媒によって燃焼して排気ガスの温度が上昇し、その高温の排気ガスによりフィルタに堆積したPMが燃焼除去される。
<作用2>
また、ポンプ出力上昇制御中は、上記のように油圧ポンプの吐出圧は吸収トルク一定制御の開始圧力付近の圧力にあり、このときの油圧ポンプの吐出流量は最大流量或いはそれに近い流量にある。一方、大部分のアクチュエータの最大要求流量は油圧ポンプの最大流量より少なく設定されているため、ポンプ出力上昇制御中にアクチュエータを動作させた場合は、油圧ポンプの吐出流量の余剰分が発生し、この余剰分はアンロード弁を経由してタンクに戻される。このため油圧ポンプの吐出圧は、アンロード弁の働きにより、アクチュエータの負荷圧に応じて上昇する。したがって、このときも、油圧ポンプの吸収トルクは、トルク制御部の吸収トルク一定制御により最大トルクを超えないように制御されるため、アクチュエータ動作の影響を受けることなく、アクチュエータを動作させる前と同様のポンプ出力上昇制御を行うことができる。
<作用3>
油圧ショベルなどの建設機械においては、定常走行時の走行モータの要求流量や掘削作業などでフロント系の操作レバーを操作して複数のアクチュエータを同時に駆動したときの要求流量は、ポンプ出力上昇制御中の油圧ポンプの吐出流量よりも多くなることがある。しかし、走行時の負荷圧や、要求流量がポンプ出力上昇制御中の油圧ポンプの吐出流量よりも多くなるようなフロント系の複合操作の負荷圧は高く、油圧ポンプの吐出圧は吸収トルク一定制御の開始圧力よりも高くなる。したがって、この場合も、油圧ポンプの吸収トルクは、トルク制御部の吸収トルク一定制御により最大トルクを超えないように制御されるため、アクチュエータ動作の影響を受けることなく、アクチュエータを動作させる前と同様のポンプ出力上昇制御を行うことができる。
<作用のまとめ−効果>
以上のようにポンプ出力上昇制御により排気ガス浄化装置内のフィルタ堆積物を効率的に燃焼除去することができるとともに、ポンプ出力上昇制御中に操作レバーを操作してアクチュエータを動作させた場合でも、ポンプ出力上昇制御に不具合を生じることを防止することができる。
【0020】
(2)上記(1)において、好ましくは、前記パイロットポンプに接続され、前記パイロットポンプの吐出油に基づいてパイロット一次圧を生成するパイロット油圧源と、前記パイロットポンプと前記パイロット油圧源の間に位置し、前記パイロットポンプの吐出油に基づいて前記エンジンの回転数に依存する油圧信号を生成するエンジン回転数検出弁とを更に備え、前記ポンプ制御装置のロードセンシング制御部は、前記エンジン回転数検出弁の前記油圧信号が導かれ、この油圧信号によって前記ロードセンシング制御の目標差圧を設定するポンプ容量増加方向作動の第1受圧部を有するLS制御弁を有し、前記アンロード弁は、閉方向作動のバネと、このバネと協働して前記アンロード設定圧を設定する閉方向作動の受圧部とを有し、前記切換制御装置は、前記指示装置によって前記排気ガス浄化装置の再生の開始が指示されていないときは、前記エンジン回転数検出弁により生成した前記油圧信号を前記アンロード弁の受圧部に導き、前記指示装置によって前記排気ガス浄化装置の再生の開始が指示されたときは、前記パイロットポンプの吐出圧を前記所定の圧力として前記アンロード弁の受圧部に導く。
【0021】
これにより再生の開始が指示されたときは、アンロード弁の受圧部にパイロットポンプの吐出圧が所定の圧力として導かれ、アンロード設定圧を増加させるため、所定の圧力を生成するための専用の油圧機器を必要とせず、油圧駆動システムの構成が簡素となり、油圧駆動システムを低コストで実現することができる。
【0022】
また、アンロード弁のアンロード圧をバネと受圧部とに分けて設定したため、低温時のエンジン始動性を向上させることができるという効果も得られる。
【0023】
(3)上記(2)において、好ましくは、前記パイロット油圧源の圧力を一次圧として、前記ポンプ制御装置に前記油圧ポンプの吐出圧と前記最高負荷圧との差圧を絶対圧として生成し出力する差圧減圧弁を更に備え、前記LS制御弁は、前記差圧減圧弁から出力される前記絶対圧が導かれるポンプ容量減少方向作動の第2受圧部を更に有し、前記切換制御装置は、前記指示装置によって前記排気ガス浄化装置の再生の開始が指示されたとき、前記エンジン回転数検出弁の前記油圧信号に代えて前記パイロットポンプの吐出圧を前記LS制御弁の第1受圧部に導くことで、前記ロードセンシング制御を無効とし、前記油圧ポンプの容量が増加するよう制御する。
【0024】
これによりLS制御弁のポンプ容量増加方向作動の第1受圧部にパイロットポンプの吐出圧を導くだけの簡単な構成で、ロードセンシング制御を無効とし油圧ポンプの容量を増加させることができるため、油圧駆動システムの構成が簡素となり、油圧駆動システムを低コストで実現することができる。
【0025】
(4)上記(3)において、好ましくは、前記切換制御装置は、前記指示装置によって前記排気ガス浄化装置の再生の開始が指示されていないときは、前記LS制御弁の第1受圧部と前記アンロード弁の受圧部に前記エンジン回転数検出弁の前記油圧信号を導き、前記指示装置によって前記排気ガス浄化装置の再生の開始が指示されたときは、前記LS制御弁の第1受圧部と前記アンロード弁の受圧部に前記パイロットポンプの吐出圧を導くよう切り換える1つの切換弁を有する。
【0026】
これにより1つの切換弁を切り換えるだけの簡単な構成で、通常の制御からポンプ吸収トルク上昇制御に切り換えることができるため、油圧駆動システムの構成が簡素となり、油圧駆動システムを低コストで実現することができる。
【0027】
(5)また、上記(1)〜(4)において、好ましくは、前記排気ガス浄化装置の排気抵抗を検出するための圧力検出装置を更に備え、前記指示装置は、前記圧力検出装置によって検出された前記排気ガス浄化装置の排気抵抗が閾値を超えると前記排気ガス浄化装置の再生の開始を指示する。
【0028】
これにより排気ガス浄化装置内のフィルタ堆積量が増加し、排気ガス浄化装置の排気抵抗が閾値を超えると、自動的にポンプ出力上昇制御が開始されて排気ガス浄化装置の再生が行われるため、油圧駆動システムの利便性を向上させることが可能となる。
【0029】
(6)また、上記(1)〜(5)において、好ましくは、前記ポンプ制御装置のトルク制御部は、前記油圧ポンプの吐出圧と容量との関係を示す特性であって、最大容量一定特性と最大吸収トルク一定特性とで構成される特性が予め設定され、前記油圧ポンプの吐出圧が、前記最大容量一定特性から前記最大吸収トルク一定特性への移行点の圧力である第1の値以下にあるときは、前記油圧ポンプの吐出圧が上昇しても前記油圧ポンプの最大容量を一定とし、前記油圧ポンプの吐出圧が前記第1の値を超えて上昇すると、前記油圧ポンプの最大容量が前記最大吸収トルク一定特性に応じて減少するように前記油圧ポンプの容量を制御するように構成されており、
前記所定の圧力は、この所定の圧力によって増加した前記アンロード弁のアンロード設定圧に、前記アンロード弁のオーバーライド特性の圧力を加算した圧力が、前記最大容量一定特性から前記最大吸収トルク一定特性への移行点付近の圧力以上の値になるように設定されている。
【0030】
これにより再生の開始が指示されたとき、トルク制御部の吸収トルク一定制御を利用したポンプ出力上昇制御を確実に行うことができ、排気ガス浄化装置内のフィルタ堆積物を効率的に燃焼除去することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、ロードセンシング制御を行う油圧駆動システムにおいて、ポンプ出力上昇制御により排気ガス浄化装置内のフィルタ堆積物を効率的に燃焼除去することができるとともに、ポンプ出力上昇制御中に操作レバーを操作してアクチュエータを動作させた場合でも、ポンプ出力上昇制御に不具合を生じることを防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
〜構成〜
図1は本発明の一実施の形態における油圧駆動システムの構成を示す図である。本実施の形態は、本発明をフロントスイング式の油圧ショベルの油圧駆動システムに適用した場合のものである。
【0034】
図1において、本実施の形態に係わる油圧駆動システムは、エンジン1と、このエンジン1により駆動されるメインポンプとしての可変容量型の油圧ポンプ(以下メインポンプという)2及び固定容量型のパイロットポンプ30と、メインポンプ2から吐出された圧油により駆動される複数のアクチュエータ3a,3b,3c…と、メインポンプ2と複数のアクチュエータ3a,3b,3c…との間に位置するコントロールバルブ4と、メインポンプ2の吐出圧が高くなるにしたがってメインポンプ2の容量を減らし、メインポンプ2の吸収トルクが予め設定した最大トルクを超えないように制御する吸収トルク一定制御を行うトルク制御部17−1及びメインポンプ2の吐出圧が複数のアクチュエータ3a,3b,3c…の最高負荷圧より目標差圧(目標LS差圧)だけ高くなるようロードセンシング制御を行うロードセンシング制御部17−2を有するポンプ制御装置17と、パイロットポンプ30にパイロット油路31を介して接続され、パイロットポンプ30の吐出油に基づいてパイロット一次圧を生成するパイロット油圧源38と、パイロット油圧源38とパイロットポンプ30との間に位置し、エンジン1の回転数に比例するパイロットポンプ30の吐出流量に基づいて、エンジン回転数に依存する油圧信号を絶対圧Pgrとして出力するエンジン回転数検出弁13と、パイロット油圧源38の下流側に位置し、ゲートロックレバー24によって操作される安全弁としてのゲートロック弁100とを備えている。
【0035】
アクチュエータ3a,3b,3cは例えば油圧ショベルの旋回モータ、ブームシリンダ及びアームシリンダであり、流量・方向制御弁6a,6b,6cはそれぞれ例えば旋回用、ブーム用、アーム用の流量・方向制御弁である。図示の都合上、バケットシリンダ、ブームスイングシリンダ、走行モータ等のその他のアクチュエータ及びこれらアクチュエータに係わる流量・方向制御弁の図示は省略している。
【0036】
コントロールバルブ4は、メインポンプ2の吐出油が供給される第1圧油供給油路5(配管)に接続された第2圧油供給油路4a(内部通路)と、第2圧油供給油路4aから分岐する油路8a,8b,8c…に接続され、メインポンプ2からアクチュエータ3a,3b,3c…に供給される圧油の流量と方向をそれぞれ制御するクローズドセンタ型の複数の流量・方向制御弁6a,6b,6c…と、流量・方向制御弁6a,6b,6c…の上流側において油路8a,8b,8c…に接続され、流量・方向制御弁6a,6b,6c…のメータイン絞り部の前後差圧を制御する圧力補償弁7a,7b,7c…と、アクチュエータ3a,3b,3c…の負荷圧のうちの最高圧力(最高負荷圧)を選択して出力するシャトル弁9a,9b,9c…と、メインポンプ2の吐出圧と最高負荷圧との差圧を絶対圧として信号油路12a,12bに出力する差圧減圧弁11と、第2圧油供給油路4aに接続され、第2圧油供給油路4aの圧力(メインポンプ2の吐出圧)が設定圧力以上にならないように制限するメインリリーフ弁14と、メインポンプ2の吐出油が導かれる油路である第2圧油供給油路4aに接続され、メインポンプ2の吐出圧が最高負荷圧にアンロード設定圧を加算した圧力よりも高くなると開状態になってメインポンプ2の吐出油をタンクTに戻し、メインポンプ2の吐出圧の上昇を制限するアンロード弁15とを有している。
【0037】
流量・方向制御弁6a,6b,6c…はそれぞれ負荷ポート26a,26b,26c…を有し、これらの負荷ポート26a,26b,26c…は、流量・方向制御弁6a,6b,6c…が中立位置にあるときはタンクTに連通し、負荷圧としてタンク圧を出力し、流量・方向制御弁6a,6b,6c…が中立位置から図示左右の操作位置に切り換えられたときは、それぞれのアクチュエータ3a,3b,3c…に連通し、アクチュエータ3a,3b,3c…の負荷圧を出力する。
【0038】
シャトル弁9a,9b,9c…はトーナメント形式に接続され、負荷ポート26a,26b,26c…とともに最高負荷圧検出回路を構成する。すなわち、シャトル弁9aは、流量・方向制御弁6aの負荷ポート26aの圧力と流量・方向制御弁6bの負荷ポート26bの圧力との高圧側を選択して出力し、シャトル弁9bは、シャトル弁9aの出力圧と流量・方向制御弁6cの負荷ポート26cの圧力との高圧側を選択して出力し、シャトル弁9cは、シャトル弁9bの出力圧と図示しない他の同様なシャトル弁の出力圧との高圧側を選択して出力する。シャトル弁9cは最後段のシャトル弁であり、その出力圧は最高負荷圧として信号油路27,27aを介して差圧減圧弁11及びアンロード弁15に導かれる。
【0039】
差圧減圧弁11は、パイロット油圧源38の圧力が油路33,34を介して導かれ、その圧力を元圧(一次圧)としてメインポンプ2の吐出圧と最高負荷圧との差圧を絶対圧として生成するバルブであり、メインポンプ2の吐出圧が導かれる受圧部11aと、最高負荷圧が導かれる受圧部11bと、自身の出力圧が導かれる受圧部11cとを有している。
【0040】
圧力補償弁7a,7b,7c…は、その目標補償差圧として差圧減圧弁11の出力圧が信号油路12aを介して導かれる開方向作動の受圧部21a,21b,21c…と、流量・方向制御弁6a,6b,6c…のメータイン絞り部の前後差圧を検出する受圧部22a,23a、22b,23b,22c,23c…を有し、流量・方向制御弁6a,6b,6c…のメータイン絞り部の前後差圧が差圧減圧弁11の出力圧(メインポンプ2の吐出圧とアクチュエータ3a,3b,3c…の最高負荷圧との差圧)に等しくなるように制御する。すなわち、圧力補償弁7a,7b,7c…のそれぞれの目標補償差圧はメインポンプ2の吐出圧とアクチュエータ3a,3b,3c…の最高負荷圧との差圧に等しくなるように設定されている。
【0041】
アンロード弁15は、アンロード弁のクラッキング圧Pun0を設定する閉方向作動のバネ15aと、第2圧油供給油路4aの圧力(メインポンプ2の吐出圧)が導かれる開方向作動の受圧部15bと、最高負荷圧が信号油路27aを介して導かれる閉方向作動の受圧部15cと、信号油路35の圧力(後述)が導かれ、バネ15aと協働して目標アンロード圧を設定する閉方向作動の受圧部15dとを有し、圧油供給油路4aの圧力が最高負荷圧にバネ15aの設定圧Pun0と受圧部15dに導かれる信号油路35の圧力を加算した圧力(アンロード設定圧すなわち目標アンロード圧)よりも高くなると、開状態になって圧油供給油路4aの圧油をタンクTに戻し、圧油供給油路4aの圧力の上昇を制限する(図
1参照)。
【0042】
パイロット油路31は、パイロットポンプ30とエンジン回転数検出弁13とを接続する油路部分31aと、エンジン回転数検出弁13とゲートロック弁100とを接続する油路部分31bと、ゲートロック弁100の下流側に位置する油路部分31cとから構成されている。以下、油路部分31a,31b,31cを適宜パイロット油路31a,31b,31cという。
【0043】
パイロット油圧源38はパイロット油路31bに接続され、パイロット油路31bの圧力を一定に保つパイロットリリーフ弁32を有している。ゲートロック弁100は、ゲートロックレバー24を操作することによりパイロット油路31cをパイロット油路31bに接続する位置と、パイロット油路31cをタンクTに接続する位置とに切り換え可能である。
【0044】
パイロット油路31cには、流量・方向制御弁6a,6b,6c…を操作して対応するアクチュエータ3a,3b,3c…を動作させるための指令パイロット圧(指令信号)を生成する操作レバー装置122,123(
図2参照)が接続されている。この操作レバー装置122,123は、ゲートロックレバー24がパイロット油路31cをパイロット油路31bに接続する位置に切り換えられているとき、それぞれの操作レバーの操作量に応じてパイロット油圧源38の油圧を一次圧として指令パイロット圧(指令信号)を生成する。一方、ゲートロック弁100がパイロット油路31cをタンクTに接続する位置に切り換えられると、操作レバー装置122,123は、操作レバーを操作しても指令パイロット圧を生成不能な状態となる。
【0045】
エンジン回転数検出弁13は、入側がパイロット油路31aに接続され、出側がパイロット油路31bに接続され、パイロットポンプ30からの吐出流量に応じてその絞り量が可変である可変絞り弁13aと、その可変絞り弁13aの前後差圧を絶対圧Pgrとして出力する差圧減圧弁13bとから構成されている。パイロットポンプ30の吐出流量はエンジン回転数に依存して変化するため、可変絞り弁13aの前後差圧もエンジン回転数に依存して変化し、その結果、差圧減圧弁13bが出力する絶対圧Pgrもエンジン回転数に依存して変化する。差圧減圧弁13bの出力圧(可変絞り弁13aの前後差圧の絶対圧)は、信号油路40を介してロードセンシング制御の目標差圧(目標LS差圧)としてメインポンプ2の傾転角(容量或いは押しのけ容積)を制御するポンプ制御装置17に導かれる。これによりエンジン回転数に応じたサチュレーション現象の改善が図れ、エンジン回転数を低く設定した場合に良好な微操作性が得られる。この点は特開平10−196604号公報に詳しい。
【0046】
ポンプ制御装置17において、トルク制御部17−1はメインポンプ2の吐出圧が導かれるトルク制御傾転ピストン17aを有している。トルク制御傾転ピストン17aはメインポンプ2の吐出圧が高くなるにしたがってメインポンプ2の傾転角を減らして、メインポンプ2の吸収トルク(入力トルク)が図示しないバネによって予め設定した最大トルクを超えないように制御する。これによりメインポンプ2の吸収トルクがエンジン1の制限トルク(
図3の制限トルクTEL)を越えないように制御され、メインポンプ2の消費馬力を制限し、過負荷によるエンジン1の停止(エンジンストール)が防止される。
【0047】
ロードセンシング制御部17−2はLS制御弁17bとLS制御傾転ピストン17cとを有している。LS制御弁17bは対向するポンプ容量増加方向作動の受圧部17d及びポンプ容量減少方向作動の受圧部17eを有し、受圧部17dには信号油路40を介してエンジン回転数検出弁13の差圧減圧弁13bの出力圧がロードセンシング制御の目標差圧(目標LS差圧)として導かれ、受圧部17eに信号油路12bを介して差圧減圧弁11の出力圧(メインポンプ2の吐出圧と最高負荷圧との差圧の絶対圧)が導かれる。LS制御弁17bは、差圧減圧弁11の出力圧が差圧減圧弁13bの出力圧よりも高くなると、パイロット油圧源38の圧力を油路33を介してLS制御傾転ピストン17cに導いてメインポンプ2の傾転角を減らし、差圧減圧弁11の出力圧が差圧減圧弁13bの出力圧よりも低くなると、LS制御傾転ピストン17cをタンクTに連通してメインポンプ2の傾転角を増やし、これによりメインポンプ2の吐出圧が最高負荷圧よりも差圧減圧弁13bの出力圧(目標差圧)だけ高くなるようにメインポンプ2の傾転角を制御する。このようにLS制御弁17b及びLS制御傾転ピストン17cは、メインポンプ2の吐出圧Pdが複数のアクチュエータ3a,3b,3c…の最高負荷圧PLmaxよりも目標差圧だけ高くなるようロードセンシング制御を行う。
【0048】
本実施の形態の油圧駆動システムは、上述した構成に加えて下記の構成を更に備えている。
【0049】
すなわち、本実施の形態の油圧駆動システムは、エンジン1の排気系を構成する排気管路41に配置された排気ガス浄化装置42と、排気ガス浄化装置42内の排気抵抗を検出する排気抵抗センサ43と、排気ガス浄化装置42を強制的に再生することを指令する強制再生スイッチ44と、エンジン回転数検出弁13の差圧減圧弁13bの出力圧PgrをLS制御弁17bの受圧部17dに導く信号油路40に配置され、差圧減圧弁13bの出力圧Pgrとパイロット油路31aの圧力(パイロットポンプ30の吐出圧)とを切り換えて、その一方の圧力をLS制御弁17bの受圧部17dとの間の信号油路40aに出力する電磁切換弁70と、排気抵抗センサ43の検出信号と強制再生スイッチ44の指令信号を入力して所定の演算処理を行い、電磁切換弁70を切り換えるための電気信号を出力するコントローラ49(制御装置)とを備えている。
【0050】
排気ガス浄化装置42はフィルタを内蔵しており、そのフィルタによって排気ガスに含まれる粒子状物質(PM)を捕集する。また、排気ガス浄化装置42は酸化触媒を備えており、排気ガス温度が所定温度以上になると酸化触媒が活性化し、その活性化した酸化触媒にて排気ガス中に添加された未燃燃料を燃焼させることで排気ガス温度を上昇させ、フィルタに捕集され堆積したPMを効率良く燃焼除去する。
【0051】
排気抵抗センサ43は、例えば、排気ガス浄化装置42のフィルタの上流側と下流側の前後差圧(排気ガス浄化装置42の排気抵抗)を検出する差圧検出装置である。
【0052】
アンロード弁15の受圧部15dに圧力を導く信号油路35は信号油路40aに接続されており、電磁切換弁70が図示の位置にあるときは、信号油路40aに出力された差圧減圧弁13bの出力圧PgrはLS制御弁17bの受圧部17dとアンロード弁15の受圧部15dの両方に導かれ、電磁切換弁70が図示の位置から切り換わると、信号油路40aに出力されたパイロット油路31aの圧力(パイロットポンプ30の吐出圧)がLS制御弁17bの受圧部17dとアンロード弁15の受圧部15dの両方に導かれる。これにより電磁切換弁70が図示の位置にあるときは、ロードセンシング制御の目標差圧として差圧減圧弁13bの出力圧Pgrが設定され、かつアンロード弁15の目標アンロード圧としてバネ15aの設定圧Pun0と差圧減圧弁13bの出力圧Pgrを加算した圧力が設定される。一方、電磁切換弁70が図示の位置から切り換わったときは、パイロットポンプ30の吐出圧がLS制御弁17bの受圧部17dに導かれることで、LS制御弁17bによるロードセンシング制御を無効としメインポンプ2の容量が増加するよう制御し(後述)、かつアンロード弁15の目標アンロード圧としてバネ15aの設定圧Pun0とパイロットポンプ30の吐出圧を加算した圧力が設定される。
【0053】
一例として、パイロット油圧源38の圧力(パイロット油路31bの圧力)は4.9MPaであり、差圧減圧弁13bの出力圧Pgrは2.0MPaであり、パイロットポンプ30の吐出圧(パイロット油路31aの圧力)は4.9MPaと2.0MPaを加算した6.9MPaである。また、アンロード弁15のバネ15aの設定圧Pun0は1MPaである。この場合、電磁切換弁70が図示の位置にあるときは、ロードセンシング制御の目標差圧として2.0MPaが設定され、かつアンロード弁15の目標アンロード圧として2.0MPaと1.0MPaを加算した3.0MPaが設定される。電磁切換弁70が図示の位置から切り換わると、LS制御弁17bの受圧部17dに6.9MPaの圧力が導かれ、かつアンロード弁15の目標アンロード圧として6.9MPaと1.0MPaを加算した7.9MPaが設定される。
【0054】
図2は、本実施の形態における油圧駆動システムが搭載される油圧ショベルの外観を示す図である。
【0055】
油圧ショベルは、下部走行体101と、この下部走行体101上に旋回可能に搭載された上部旋回体102と、この上部旋回体102の先端部分にスイングポスト103を介して上下及び左右方向に回動可能に連結されたフロント作業機104とを備えている。下部走行体101はクローラ式であり、トラックフレーム105の前方側に上下動可能な排土用のブレード106が設けられている。上部旋回体102は基礎下部構造をなす旋回台107と、旋回台107上に設けられたキャノピタイプの運転室108とを備えている。フロント作業機104はブーム111と、アーム112と、バケット113とを備え、ブーム111の基端はスイングポスト103にピン結合され、ブーム111の先端はアーム112の基端にピン結合され、アーム112の先端はバケット113にピン結合されている。
【0056】
上部旋回体10
2は下部走行体101に対して旋回モータ3aにより旋回駆動され、ブーム111、アーム112、バケット113は、それぞれ、ブームシリンダ3b、アームシリンダ3c、バケットシリンダ3dを伸縮することにより回動する。下部走行体101は左右の走行モータ3f,3gにより駆動される。ブレード106はブレードシリンダ3hにより上下に駆動される。
図1ではバケットシリンダ3d、左右の走行モータ3f,3g、ブレードシリンダ3hやそれらの回路要素の図示を省略している。
【0057】
運転室108には、運転席121、操作レバー装置122、123(
図2では右側のみ図示)及びゲートロックレバー24が設けられている。
【0058】
図3及び
図4を用いてトルク制御部17−1のトルク制御の詳細を説明する。
図3はトルク制御傾転ピストン17aによるメインポンプ2の吐出圧と容量(傾転角)との関係(以下、Pq(圧力−ポンプ容量)特性という)を示す図であり、
図4はメインポンプ2の吸収トルク特性を示す図である。
図3及び
図4の横軸はメインポンプ2の吐出圧Pを示している。
図3の縦軸はメインポンプ2の容量(或いは傾転角)qを示し、
図4の縦軸はメインポンプ2の吸収トルクTpを示している。
【0059】
図3において、メインポンプ2のPq特性は、最大容量一定特性Tp0と最大吸収トルク一定特性Tp1,Tp2とで構成されている。
【0060】
メインポンプ2の吐出圧Pが、最大容量一定特性Tp0から最大吸収トルク一定特性Tp1,Tp2に移行する折れ点(移行点)の圧力である第1の値P0(吸収トルク一定制御の開始圧力)以下にあるとき、メインポンプ2の吐出圧Pが上昇してもメインポンプ2の最大容量はq0で一定である。このとき、
図4に示すように、メインポンプ2の吐出圧Pが上昇するにしたがって、ポンプ吐出圧とポンプ容量との積であるメインポンプ2の最大吸収トルクは増加する。メインポンプ2の吐出圧Pが第1の値P0を超えて上昇すると、メインポンプ2の最大容量は最大吸収トルク一定特性TP1,TP2の特性線に沿って減少し、メインポンプ2の吸収トルクはTP1,TP2の特性によって決まる最大トルクTmaxに保たれる。TP1,TP2の特性線は吸収トルク一定曲線(双曲線)を近似するよう図示しない2つのバネによって設定されており、最大トルクTmaxはほぼ一定である。また、その最大トルクTmaxはエンジン1の制限トルクTELよりも小さくなるように設定されている。これによりメインポンプ2の吐出圧Pが第1の値P0を超えて上昇するとメインポンプ2の最大容量を減らして、メインポンプ2の吸収トルク(入力トルク)が予め設定した最大トルクTmaxを超えないように制御し、メインポンプ2の吸収トルクがエンジン1の制限トルクTELを越えないように制御される。この特性TP1,TP2による最大吸収トルクの制御を吸収トルク一定制御(縦軸をポンプ吐出流量で表現した場合は吸収馬力一定制御)という。
【0061】
図5は、排気ガス浄化装置42内のPM堆積量と排気抵抗センサ43によって検出される排気抵抗(フィルタの前後差圧)との関係を示す図である。
【0062】
図5において、排気ガス浄化装置42内のPM堆積量が増加するにしたがって排気ガス浄化装置42の排気抵抗は上昇する。図中、Wbは自動再生制御が必要となるPM堆積量であり、ΔPbはPM堆積量がWbであるときの排気抵抗である。Waは再生制御を終了させてもよいPM堆積量であり、ΔPaはPM堆積量がWaであるときの排気抵抗である。
【0063】
コントローラ49の記憶装置(図示せず)には、ΔPbが自動再生制御を開始するためのしきい値として記憶され、ΔPaが再生制御を終了させるためのしきい値として記憶されている。
【0064】
図6は、コントローラ49の処理機能を示すフローチャートである。コントローラ49による排気ガス浄化装置42の再生処理手順を、
図6にしたがって説明する。
【0065】
まず、コントローラ49は、排気抵抗センサ43からの検出信号と強制再生スイッチ44からの指令信号に基づいて、排気ガス浄化装置42内の排気抵抗ΔPと自動再生制御を開始するためのしきい値ΔPbとを比較し、ΔP>ΔPbかどうかを判定するとともに、強制再生スイッチ44がOFFからONに切り換わったかどうかを判定する(ステップS100)。ΔP>ΔPbとなった場合、或いは強制再生スイッチ44がONの場合には、次の処理に進む。ΔP>ΔPbでなく、強制再生スイッチ44がONでない場合は、何もせず、その判定処理を繰り返す。
【0066】
ΔP>ΔPbとなった場合、或いは強制再生スイッチ44がONの場合、コントローラ49は、電磁切換弁70に出力する電気信号をONにし、電磁切換弁70を図示の位置から切り換えて、ポンプ吸収トルク上昇制御(従来のポンプ出力上昇制御に相当)を開始する(ステップS110)。ポンプ吸収トルク上昇制御の詳細は後述する。また、コントローラ49は、排気ガス中に未燃燃料を供給する処理を行う。この処理は、例えば、エンジン1の電子ガバナ(図示せず)を制御して、エンジン主噴射後の膨張行程におけるポスト噴射(追加噴射)を実施することにより行う。
【0067】
ポンプ吸収トルク上昇制御が開始されるとエンジン1の油圧負荷が高くなり、エンジン1の排気ガスの温度が上昇する。これにより排気ガス浄化装置42に設けられた酸化触媒が活性化する。このような状況下で、排気ガス中に未燃燃料を供給することにより、未燃燃料が活性化した酸化触媒によって燃焼して排気ガスの温度を上昇させ、その高温の排気ガスによりフィルタに堆積したPMを燃焼除去する。
【0068】
なお、未燃燃料の供給は、排気管に再生制御用の燃料噴射装置を設け、この燃料噴射装置を作動させることにより行ってもよい。
【0069】
ポンプ吸収トルク上昇制御の間、コントローラ49は、排気ガス浄化装置42に設けられた排気抵抗センサ43からの検出信号に基づいて、排気ガス浄化装置42内の排気抵抗ΔPと自動再生制御を終了するためのしきい値ΔPaとを比較し、ΔP<ΔPaとなったかどうかを判定し(ステップS120)、ΔP<ΔPaでない場合、ステップS110に戻り、ポンプ吸収トルク上昇制御を継続する。ΔP<ΔPaとなると、コントローラ49は電磁切換弁70に出力する電気信号をOFFにし、電磁切換弁70を図示の位置に切り換えて、ポンプ吸収トルク上昇制御を停止する(ステップS130)。また、これと同時に未燃燃料の供給を停止する。
【0070】
以上において、排気抵抗センサ43、強制再生スイッチ44及びコントローラ49の
図6のステップS100の機能は、排気ガス浄化装置42の再生の開始を指示する指示装置を構成する。
【0071】
また、LS制御弁17bの受圧部17d、アンロード弁15の受圧部15d、信号油路35、電磁切換弁70及びコントローラ49の
図6のステップS110の機能は、指示装置によって排気ガス浄化装置42の再生の開始が指示されていないときは、ロードセンシング制御部17−2のロードセンシング制御を有効とし、指示装置によって排気ガス浄化装置42の再生の開始が指示されたときは、ロードセンシング制御部17−2のロードセンシング制御を
有効から無効
に切り換えて油圧ポンプ2の容量
を増加
させるとともに
、パイロットポンプ30の吐出油に基づいて生成された所定の圧力(パイロットポンプ30の吐出圧)をアンロード弁15に導き、アンロード設定圧を増加させる切換制御装置を構成する。
〜動作〜
次に、ポンプ吸収トルク上昇制御(ポンプ出力上昇制御)の詳細を含め本実施の形態の動作を説明する。
【0072】
1.全操作レバー中立かつ電磁切換弁70がOFFの場合
まず、全ての操作レバー(操作レバー装置122,123等の操作レバー)が中立にあり、
図6のステップS100の判定が否定されたときは、電磁切換弁70は図示の位置にある。電磁切換弁70が図示の位置にあるとき、電磁切換弁70は差圧減圧弁13bの出力圧Pgrを信号油路40aに出力し、出力圧Pgrがロードセンシング制御の目標差圧としてLS制御弁17bの受圧部17dに導かれるとともに、出力圧Pgrが信号油路35を介してアンロード弁15の受圧部15dに導かれる。これによりロードセンシング制御の目標差圧として差圧減圧弁13bの出力圧Pgrが設定され、かつアンロード弁15の目標アンロード圧としてバネ15aの設定圧Pun0と差圧減圧弁13bの出力圧Pgrを加算した圧力が設定される。
【0073】
前述したように、パイロット油圧源38の圧力(パイロット油路31bの圧力)を4.9MPa、差圧減圧弁13bの出力圧Pgrを2.0MPa、アンロード弁15のバネ15aの設定圧Pun0を1MPaとした場合、ロードセンシング制御の目標差圧は2.0MPaであり、アンロード弁15の目標アンロード圧(アンロード設定圧)は3.0MPaである。
【0074】
また、全ての操作レバーが中立にあるときは、流量・方向制御弁6a,6b,6c…は図示の中立位置に保持され、それらの負荷ポート26a,26b,26c…の圧力もタンク圧となる。このため、シャトル弁9a,9b,9c…によって検出される最高負荷圧はタンク圧(0MPaと仮定)となり、メインポンプ2の吐出圧は、アンロード弁15により、アンロード弁15のアンロード設定圧とアンロード弁15のオーバーライド特性により生じる圧力を加算した圧力に制御され、差圧減圧弁11の出力圧は、メインポンプ2の吐出圧と同じ圧力(アンロード弁15のアンロード設定圧とアンロード弁15のオーバーライド特性により生じる圧力を加算した圧力)となり、この出力圧がLS制御弁17bの受圧部17eに導かれる。
【0075】
上述したようにアンロード弁15の目標アンロード圧(アンロード設定圧)が3.0MPaである場合、メインポンプ2の吐出圧は3.0MPaより少し高い圧力となり、LS制御弁17bの受圧部17eに導かれる差圧減圧弁11の出力圧も3.0MPaより少し高い圧力となる。
【0076】
この状態では、LS制御弁17bの受圧部17eに導かれる圧力(3.0MPaより少し高い圧力)はアンロード弁15の受圧部15dに導かれる圧力(2PMa)よりも高く、LS
制御弁17bは図示右側の位置に切り換わる。このときの油圧駆動システムの動作は従来のシステムと同様であり、メインポンプ2の傾転角(容量)は最小となり、吐出流量も最少となる。また、メインポンプ2の吐出圧はアンロード弁15により制御された最小圧力となる。その結果、メインポンプ2の吸収トルクも最小となる。
【0077】
図7は、タンク圧が0MPaであると仮定した場合のアンロード弁15の動作特性を示す図である。図中、全ての操作レバーが中立にありかつ電磁切換弁70がOFFの場合の圧油供給油路5,4aの通過流量(メインポンプ2の吐出流量)と圧力(メインポンプ2の吐出圧)との関係を破線で示し、動作点をA点で示している。Punsetはアンロード弁15のアンロード設定圧である。
【0078】
動作点Aにおいて、メインポンプ2の吐出圧はアンロード弁15のアンロード設定圧Punset(3.0MPa)とアンロード弁15のオーバーライド特性により生じる圧力(オーバーライド圧)を加算した圧力Pra(最小圧力Pmin)であり、メインポンプ2の吐出流量は最少流量Qra(Qmin)である。このときのメインポンプ2の吸収トルクは
図3及び
図4にA点で示す最小トルクTa(Tmin)となる。図
3において、qaはメインポンプ2の最少流量Qra(Qmin)に対応する最小容量qminである。
【0079】
2.全操作レバー中立かつ電磁切換弁70がONの場合
全ての操作レバー(操作レバー装置122,123等の操作レバー)が中立にあるときに、排気ガス浄化装置42の再生が必要となり、
図6のステップS100の判定が肯定された場合、電磁切換弁70はONの電気信号により図示の位置から切り換えられる。
【0080】
電磁切換弁70が図示の位置から切り換わると、電磁切換弁70はパイロットポンプ30の吐出圧を信号油路40aに出力し、パイロットポンプ30の吐出圧がLS制御弁17bの受圧部17dに導かれるとともに、パイロットポンプ30の吐出圧が信号油路35を介してアンロード弁15の受圧部15dに導かれる。これによりアンロード弁15の目標アンロード圧としてバネ15aの設定圧Pun0とパイロットポンプ30の吐出圧を加算した圧力が設定される。
【0081】
前述したように、パイロット油圧源38の圧力(パイロット油路31bの圧力)を4.9MPa、差圧減圧弁13bの出力圧Pgrを2.0MPa、アンロード弁15のバネ15aの設定圧Pun0を1MPaとした場合、パイロットポンプ30の吐出圧は4.9MPaと2.0MPaを加算した6.9MPaであり、LS制御弁17bの受圧部17dに導かれる圧力は6.9MPaとなり、アンロード弁15の目標アンロード圧(アンロード設定圧)は7.9MPaとなる。
【0082】
また、全ての操作レバーが中立にあるときは、上述したように最高負荷圧はタンク圧(0MPaと仮定)となり、メインポンプ2の吐出圧は、アンロード弁15により、アンロード弁15のアンロード設定圧とアンロード弁15のオーバーライド特性により生じる圧力を加算した圧力に制御される。差圧減圧弁11の出力圧は、メインポンプ2の吐出圧と同じ圧力(アンロード弁15のアンロード設定圧とアンロード弁15のオーバーライド特性により生じる圧力を加算した圧力)となるが、差圧減圧弁11は、パイロット油圧源38の圧力を元圧(一次圧)としてメインポンプ2の吐出圧と最高負荷圧との差圧を絶対圧として生成するバルブであるため、差圧減圧弁11の出力圧はパイロット油圧源38の圧力よりも高くなることはできない。一方、LS制御弁17bの受圧部17dに導かれるパイロットポンプ30の吐出圧はパイロット油圧源38の圧力よりも高く、上記の例では、パイロットポンプ30の吐出圧が6.9MPaであり、パイロット油圧源38の圧力(パイロット油路31bの圧力)が4.9MPaである。LS制御弁17bの受圧部17eには差圧減圧弁11の出力圧としてそのパイロット油圧源38の圧力(4.9MPa)が導かれる。これによりLS制御弁17bは、図示左側の位置に切り換わり、ロードセンシング制御が無効となるとともに、LS制御傾転ピストン17cの圧油は、LS制御弁17bを介してタンクTに戻され、メイン
ポンプ2の傾転(容量)はバネ力によって増加し、メインポンプ2の吐出流量が増加する。
【0083】
図7の実線は、全ての操作レバーが中立にありかつ電磁切換弁70がONの場合の圧油供給油路5,4aの通過流量(メインポンプ2の吐出流量)と圧力(メインポンプ2の吐出圧)との関係を示し、動作点をB点で示している。
【0084】
動作点Bにおいて、メインポンプ2の吐出圧はアンロード弁15のアンロード設定圧Punset(7.9MPa)とアンロード弁15のオーバーライド特性により生じる圧力(オーバーライド圧)を加算した圧力Prbである。このときのアンロード弁15のオーバーライド圧は約2.0MPa程度である。この場合は、メインポンプ2の吐出圧Prbは、約10MPaに達する。また、動作点Bにおいて、メインポンプ2の吐出流量はQrbまで増加している。
【0085】
ここで、
図3に示すメインポンプ2のPq(圧力−ポンプ容量)特性において、通常、油圧ショベルなどの建設機械の場合、吸収トルク一定制御の開始圧力P0は、10MPa程度に設定することが多い。結果的に、電磁切換弁70を図示位置から切り換えたときのメインポンプ2の吐出圧(
図3、
図4及び
図7でPrb)は、メインポンプ2のPq特性の折れ点付近の圧力となり、
図3のB点に示すように、メインポンプ2の容量は、トルク制御傾転ピストン17aによる吸収トルク一定制御により決まる値qbとなる。また、このときのメインポンプ2の吸収トルクは、
図4にB点で示すように最大トルクTmaxとなる。
【0086】
このように電磁切換弁70を切り換えることでメインポンプ2の吸収トルクは吸収トルク一定制御の最大トルクTmaxまで上昇し、トルク制御傾転ピストン17aによる吸収トルク一定制御を利用した最大トルクTmaxでのポンプ吸収トルク上昇制御を行うことができる。
【0087】
このようにメインポンプ2の吸収トルクが上昇すると、それに応じてエンジン1の負荷が高くなり、排気温度が上昇する。これにより排気ガス浄化装置42に設けられた酸化触媒が活性化するため、前述したように、排気ガス中に未燃燃料を供給することにより、未燃燃料が活性化した酸化触媒によって燃焼して排気ガスの温度が上昇し、その高温の排気ガスによりフィルタに堆積したPMが燃焼除去される。
【0088】
このポンプ吸収トルク上昇制御は、排気ガス浄化装置42に設けられた排気抵抗センサ43で検出した排気ガス浄化装置42内の排気抵抗ΔPがしきい値ΔPaより小さくなるまで継続される。
【0089】
3.電磁切換弁70ONで操作レバーを操作した場合
次に、上記2の電磁切換弁70がONの状態の再生中に操作レバーを操作した場合について説明する。
【0090】
任意のアクチュエータ、例えばブーム用の操作レバーを操作した場合は、流量・方向制御弁6bが切り換わり、ブームシリンダ3bに圧油が供給され、ブームシリンダ3bが駆動される。このとき、流量・方向制御弁6bの負荷ポート26bはブームシリンダ3bの負荷圧となる。このためシャトル弁9a,9b,9c…によって検出される最高負荷圧はブームシリンダ3bの負荷圧となり、この負荷圧がアンロード弁15の受圧部15cに導かれる。
【0091】
また、ポンプ吸収トルク上昇制御中は、上記のようにメインポンプ2の吐出圧Prbは吸収トルク一定制御の開始圧力P0付近の圧力にあり、このときのメインポンプ2の吐出流量は最大容量q0に対応した最大流量Qrmaxに近い流量にある。一方、大部分のアクチュエータの最大要求流量はメインポンプ2の最大流量より少なく設定されているため、ポンプ吸収トルク上昇制御中に操作レバーを操作してブームシリンダ3bを動作させた場合は、メインポンプ2の吐出流量の余剰分が発生し、この余剰分はアンロード弁15を経由してタンクに戻される。このためメインポンプ2の吐出圧は、アンロード弁15の働きにより、ブームシリンダ3bの負荷圧に応じて上昇する。したがって、このときも、メインポンプ2の吸収トルクは、トルク制御傾転ピストン17a(トルク制御部)の吸収トルク一定制御により最大トルクTmaxを超えないように制御され、図
3のC点に示すように、メインポンプ2の容量は、トルク制御傾転ピストン17aによる吸収トルク一定制御により決まる値qcとなり、メインポンプ2の吐出流量は
図7のC点に示すQrcとなる。このためアクチュエータ動作の影響を受けることなく、アクチュエータを動作させる前と同様のポンプ吸収トルク上昇制御を行うことができる。
【0092】
アーム、バケット、旋回の操作レバーを操作した場合の動作も同様である
。
定常走行時の走行モータ3f,3gの要求流量や掘削作業などでフロント系の操作レバーを操作して複数のアクチュエータ3a〜3dの2つ以上を同時に駆動したときの要求流量は、ポンプ出力上昇制御中のメインポンプ2の吐出流量よりも多くなることがある。しかし、走行時の負荷圧や、要求流量がポンプ出力上昇制御中の油圧ポンプの吐出流量よりも多くなるようなフロント系の複合操作の負荷圧は高く、メインポンプ2の吐出圧は吸収トルク一定制御の開始圧力よりも高くなる。したがって、この場合も、
メインポンプ2の吸収トルクは、トルク制御部17−1の吸収トルク一定制御により最大トルクTmaxを超えないように制御されるため、アクチュエータ動作の影響を受けることなく、アクチュエータを動作させる前と同様のポンプ出力上昇制御を行うことができる。
【0093】
以上のように、排気ガス浄化装置42の再生中に操作レバーを操作してアクチュエータを動作させた場合は、アクチュエータを動作させない場合と同様、吸収トルク一定制御を利用したポンプ吸収トルク上昇制御を行うことができ、エンジン1の負荷を増加させて排気温度を上昇させることができる。
〜効果〜
本実施の形態によれば、次の効果が得られる。
【0094】
1.排気ガス浄化装置42のフィルタのPM堆積量が増加し、排気ガス浄化装置42が再生を必要とする状態になると、電磁切換弁70が切り換わり、パイロットポンプ30の吐出圧(所定圧力)がLS制御弁17bの受圧部17dとアンロード弁15の受圧部15dに導かれるため、全ての操作レバーが中立にあり、アクチュエータを動作させない場合であっても、メインポンプ2の吸収トルクはトルク制御傾転ピストン17aによる吸収トルク一定制御の最大トルクTmaxまで上昇し、吸収トルク一定制御を利用したポンプ吸収トルク上昇制御(ポンプ出力上昇制御)を行うことができる。これによりエンジン1の負荷が高くなり、排気温度が上昇し、排気ガス浄化装置42内のフィルタ堆積物を効率的に燃焼除去することができる。
【0095】
2.ポンプ吸収トルク上昇制御中に操作レバーを操作してアクチュエータを動作させ、メインポンプ2から吐出された圧油がアクチュエータに流入したとしても、ポンプ吸収トルク上昇制御中はメインポンプ2の吐出流量は最大流量近くにあるため、メインポンプ2の吐出流量の余剰分がアンロード弁15を経由してタンクに戻され、メインポンプ2の吐出圧は、アンロード弁15の働きにより、ブームシリンダ3bの負荷圧に応じて上昇する。これによりトルク制御部17−1の吸収トルク一定制御の範囲内でメインポンプ2は動作し、アクチュエータ動作の影響を受けることなく、アクチュエータを動作させる前と同様のポンプ吸収トルク上昇制御を行うことができる。
【0096】
3.再生の開始が指示されたときは、アンロード弁15の受圧部15dにパイロットポンプ30の吐出圧が所定の圧力として導かれ、アンロード設定圧を増加させるため、所定の圧力を生成するための専用の油圧機器を必要とせず、油圧駆動システムの構成が簡素となり、油圧駆動システムを低コストで実現することができる。
【0097】
4.LS制御弁17bのポンプ容量増加方向作動の第1受圧部17dにパイロットポンプ30の吐出圧を導くだけの簡単な構成で、ロードセンシング制御を無効としメインポンプ2の容量を増加させることができるため、油圧駆動システムの構成が簡素となり、油圧駆動システムを低コストで実現することができる。
【0098】
5.1つの電磁切換弁70を切り換えるだけの簡単な構成で、通常の制御からポンプ吸収トルク上昇制御に切り換えることができるため、油圧駆動システムの構成が簡素となり、油圧駆動システムを低コストで実現することができる。
【0099】
6.アンロード弁15のアンロード圧をバネ15aと受圧部15dとに分けて設定したため、低温時のエンジン始動性を向上させることができる。
【0100】
すなわち、エンジン1の始動時は、メインポンプ2がエンジン1により駆動されることで、メインポンプ2の吐出圧がアンロード弁15のアンロード設定圧にアンロード弁15のオーバライド圧を加算した圧力まで上昇する。冬期や寒冷地で作業を行う場合の低温時は作動油の粘性が高くなり、アンロード弁15のオーバライド圧は著しく上昇し、メインポンプ2の吐出圧は更に上昇する。エンジン始動時は、このメインポンプ2の吐出圧がエンジン負荷となる。従来のロードセンシングシステムの油圧駆動システムでは、通常、アンロード弁15のアンロード圧をバネのみで設定する。この設定圧は上述した本実施の形態における設定例と同様、例えば3MPaである。その結果、低温時にエンジン1を始動した場合は、メインポンプ2の吐出圧はバネのアンロード設定圧である3.0Mpaに低温による粘性の増加で上昇したオーバライド圧を加算した圧力となり、エンジン負荷が増大し、エンジン始動性が悪化するという問題があった。
【0101】
これに対し、本実施の形態では、アンロード弁15のアンロード圧をバネ15aと受圧部15dとで分けて設定し(バネ15aの設定分は1MPa)、エンジン始動前の受圧部15dの圧力はタンク圧となるため、低温時にエンジン1を始動した場合のメインポンプ2の吐出圧はバネの設定分である1.0Mpaに低温による粘性増加分の抵抗を加算した圧力で済み、従来に比べエンジン1の負荷が小さくなって低温時のエンジン始動性を向上することができる。
<その他の実施の形態>
以上の実施の形態は本発明の精神の範囲内で種々の変更が可能である。
【0102】
例えば、上記の実施の形態では、エンジン回転数検出弁13を設け、このエンジン回転数検出弁13により生成した油圧信号を目標差圧としてLS制御弁17bの受圧部17dに導いたが、エンジン回転数検出弁13を設けず、LS制御弁17bに受圧部17dの代わりにバネを設け、このバネで目標差圧を設定してもよい。この場合、エンジン回転数検出弁13の代わりに単なる絞り(固定絞り)を設け、この固定絞りとパイロット油圧源のパイロットリリーフ弁32とでパイロットポンプ30の吐出圧を「所定の圧力」まで高め、再生の開始が指示されたとき、この圧力をアンロード弁15の受圧部15dに導けばよい。
【0103】
また、信号油路12bに電磁切換弁を設け、再生の開始が指示されたとき、この切換弁を切り換え、LS制御弁17bの受圧部17eをタンクに連通させることで、ロードセンシング制御を無効としメインポンプ2の容量が増加するよう制御することができる。
【0104】
また、上記実施の形態では、差圧減圧弁11の出力圧(メインポンプ2の吐出圧と最高負荷圧との差圧の絶対圧)を圧力補償弁7a,7b,7c…とLS制御弁17bに導いたが、メインポンプ2の吐出圧と最高負荷圧を別々に圧力補償弁7a,7b,7c…とLS制御弁17bに導いてもよい。
【0105】
更に、上記実施の形態は、建設機械が油圧ショベルである場合について説明したが、油圧ショベル以外の建設機械(例えば油圧クレーン、ホイール式ショベル等)であっても、ディーゼルエンジンと排気ガス浄化装置を備え、かつロードセンシング制御とトルク制御を行う油圧駆動システムを搭載するものであれば、上記実施の形態と同様に本発明を適用し、同様の効果が得られる。