(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記作業者判別部が、直前に判別した作業者の生体情報と、現在の作業者の生体情報と、に基づいて、現在の作業者が直前の作業者と同一であるか否かを判定するように構成されており、
現在の作業者が直前の作業者と同一であると判定されたときに、前記制限部は、直前の作業者に対する制限を維持するように構成される、請求項1から5のいずれか1項に記載のロボットシステム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、個人を識別する方法として生体認証が利用され始めている。生体認証を利用すれば、認証に使用される端末が紛失したり、認証に必要な情報が漏洩したりする虞はない。例えば、特許文献3には、撮像装置によって取得される画像に基づいて、操作者による装置の利用を制限するように構成されたコントローラが開示されている。しかしながら、特許文献3に開示される技術は、個人情報を保護するために、個人情報に対するアクセス権を有する者とそうでない者を識別することを主たる目的としており、ロボットを運用する際の事故防止技術とは無関係である。
【0007】
そこで、ロボットの周囲で作業する作業者を正確に判別し、安全性を確保できるようにしたロボットシステムが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の1番目の態様によれば、手動による操作又は制御プログラムに従って所定の作業を実行するロボットと、前記ロボットを制御する制御装置と、前記制御装置との間で信号及びデータを送受信する携帯可能な操作盤と、を備えたロボットシステムであって、前記操作盤は、該操作盤を使用する作業者の生体情報を取得する生体情報取得部を備えており、複数の作業者の生体情報を記憶する生体情報記憶部と、前記操作盤を起動する際に、又は
イネーブルスイッチを押圧する度に、又はイネーブルスイッチを押圧している最中に有効となる操作を実行する度に、前記生体情報取得部によって取得される生体情報と、前記生体情報記憶部によって記憶される前記生体情報とを照合し、前記操作盤を使用している作業者を判別する作業者判別部と、前記作業者判別部によって判別された作業者ごとに、実行可能な機能を制限する制限部と、をさらに備え
ており、前記作業者判定部により作業者の判別工程が実行された後、所定の時間が経過するまでの間は、前記作業者判別部が作業者の判別工程を実行しないように、又は所定の時間が経過するまでの間は、作業者の生体情報の取得に失敗した場合に、直前に生体情報の取得に成功し、実行された判別工程の結果に基づく機能の制限を維持するように構成される、ロボットシステムが提供される。
本願の2番目の態様によれば、1番目の態様に係るロボットシステムにおいて、前記操作盤は、該操作盤を使用した操作を有効にする有効状態と、無効にする無効状態との間で互いに切替えられるように構成されており、前記操作盤が無効状態であるときに、前記作業者判別部が、作業者の判別工程を実行しないように構成される。
本願の3番目の態様によれば、1番目又は2番目の態様に係るロボットシステムにおいて、前記作業者判別部が、所定の時間ごとに、作業者の判別工程を実行することを要求するように構成される。
本願の
4番目の態様によれば、
1番目から3番目のいずれかの態様に係るロボットシステムにおいて、前記操作盤は、該操作盤を使用した操作を有効にする有効状態と、無効にする無効状態との間で互いに切替えられるように構成されており、前記操作盤が有効状態であるか、又は無効状態であるかに従って、前記所定の時間の長さが異なるように構成される。
本願の
5番目の態様によれば、1番目から
4番目のいずれかの態様に係るロボットシステムにおいて、各々の作業者に関連付けられた事故情報を記憶する事故情報記憶部と、前記作業者判別部によって判別された作業者に関連付けられた前記事故情報を表示する事故情報表示部と、をさらに備える、ロボットシステムが提供される。
本願の
6番目の態様によれば、1番目から
5番目のいずれかの態様に係るロボットシステムにおいて、前記作業者判別部が、直前に判別した作業者の生体情報と、現在の作業者の生体情報と、に基づいて、現在の作業者が直前の作業者と同一であるか否かを判定するように構成されており、現在の作業者が直前の作業者と同一であると判定されたときに、前記制限部は、直前の作業者に対する制限を維持するように構成される。
本願の
7番目の態様によれば、1番目から
6番目のいずれかの態様に係るロボットシステムにおいて、前記複数の作業者の生体情報が、各々の作業者が実行可能な機能に関連付けられて記憶されるように構成される。
本願の
8番目の態様によれば、1番目から
6番目のいずれかの態様に係るロボットシステムにおいて、前記操作盤の各々の機能が、該機能を実行可能な作業者の生体情報に関連付けて記憶されるように構成される
。
【0009】
これら及び他の本発明の目的、特徴及び利点は、添付図面に示される本発明の例示的な実施形態に係る詳細な説明を参照することによって、より明らかになるであろう。
【発明の効果】
【0010】
上記構成を備えたロボットシステムによれば、生体認証を利用して作業者の判別が行われる。そして、作業者に応じて実行可能な作業が制限されるようになる。それにより、作業者の判別に使用される端末の紛失又は識別情報の漏洩などの問題がなくなり、作業の安全性を確保できるようになる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。図示される実施形態の構成要素は、本発明の理解を助けるために縮尺が適宜変更されている。また、同一又は対応する構成要素には、同一の参照符号が複数の図面にわたって使用される。
【0013】
図1は、一実施形態に係るロボットシステム10の全体構成を示す概略図である。ロボットシステム10は、ロボット20と、通信ケーブル12を介してロボット20に接続されていてロボット20を制御するロボット制御装置30と、通信ケーブル14を介してロボット制御装置30に接続されていてロボット制御装置30との間で信号及びデータなどを送受信できる操作盤40と、を備えている。
図1では、ロボット制御装置30と操作盤40とは通信ケーブル14で接続されているが、これらは無線で通信するように構成されてもよい。
【0014】
ロボット20は、例えばワーク(図示せず)の搬送、加工などの種々の用途に使用される多関節ロボットである。ロボット20の各々の関節は、図示されないサーボモータによって駆動される。各々のサーボモータは、操作盤40からの操作又は所定の制御プログラムに従って、ロボット制御装置30によって制御される。
【0015】
ロボット制御装置30は、種々の演算を実行するCPUと、制御プログラムなどを記憶するROMと、CPUの演算結果を一時的に記憶するRAMと、キーボード、マウスなどの公知の入力デバイスと、液晶ディスプレイなどの公知の表示デバイスと、を含むハードウェア構成を有している。ロボット制御装置30は、制御プログラム、入力デバイスを介して外部から入力される設定値、操作盤40から送信されるデータなどに基づいて、ロボット20を制御する制御指令を作成する。また、ロボット制御装置30は、より詳細に後述するように作業者を判別するのに使用される生体情報などを記憶する記憶装置32を備えている。或いは、記憶装置32は、ロボット制御装置30と通信可能な装置、例えば操作盤40に備えられていてもよい。
【0016】
操作盤40は、作業者によって容易に携帯可能であるように形成された、例えばティーチングペンダントなどの軽量かつ薄型のデバイスである。作業者は、操作盤40を使用して、ロボット20に対する制御プログラムの選択、実行、各種パラメータの閲覧、変更、並びにロボット20に対する教示などの種々の作業を実行できる。
【0017】
図示される実施形態に係る操作盤40は、オン/オフスイッチ42と、表示部44と、キー入力部46と、イネーブルスイッチ48と、生体情報取得装置50と、を備えている。
図1において、操作盤40は概略的に示されており、当業者であれば、各々の構成要素の配置を必要に応じて変更することが可能であり、また、それら構成要素の一部が省略可能であることを認識するであろう。
【0018】
オン/オフスイッチ42は、操作盤40の各種機能を有効にする有効状態と、無効にする無効状態と、を作業者が手動で切替えられるように形成されたスイッチである。それにより、作業者は、一時的に作業を中断するときなど、必要に応じてオン/オフスイッチ42を操作し、誤操作を防止できるようになっている。
【0019】
表示部44は、例えば液晶ディスプレイである。表示部44には、機能を選択するメニュー画面、設定内容を閲覧するための設定画面、設定内容を編集するための編集画面などが表示される。キー入力部46は、表示部44に表示された項目を選択したり、編集の際に必要な数値又は記号を入力したりするのに使用される。或いは、操作盤40は、表示部44及びキー入力部46が一体化したタッチパネルを備えていてもよい。
【0020】
イネーブルスイッチ48は、とりわけ誤操作を防止する必要がある所定の操作を実行する際に作業者によって押圧される安全スイッチである。例えば、国際規格ISO10218−1には、ロボットを教示する際に、イネーブルスイッチを押さないとロボットが動作しないよう安全手段を講じることが規定されている。また、操作盤40は、プログラムを編集するときにもイネーブルスイッチ48の押圧を要求するように構成されてもよい。このように、所定の操作を実行する際にイネーブルスイッチ48を押圧することを要求することによって、重大な事故につながりうる誤操作を防止できる。
【0021】
生体情報取得装置50は、操作盤40を使用する作業者の生体情報を取得する機能を有する。生体情報取得装置50は、例えば作業者の顔を認識して撮像する顔認識機能付きカメラ、指紋検出器などである。指紋を生体情報として利用する場合、例えばキー入力部46に指紋検出機能を付与してもよい。
【0022】
ところで、例えば操作盤40を使用してロボット20に対する教示を行う際には、作業者がロボット20の可動領域内で作業を行うことがある。そこで、本実施形態に係るロボットシステム10においては、生体情報取得装置50によって取得される作業者の生体情報と、ロボット制御装置30の記憶装置32に記憶された複数の作業者の生体情報と、を照合することによって、作業者の判別が行われるようになっている。そして、各々の作業者には、熟練度などの所定の基準に従って実行可能な機能が割当てられている。
【0023】
図2は、本実施形態に係るロボットシステム10の機能ブロック図である。図示されるように、操作盤40は、生体情報取得部41と、制限部43と、を備えている。また、ロボット制御装置30は、生体情報記憶部31と、作業者判別部33と、を備えている。なお、制限部43、生体情報記憶部31及び作業者判別部33は、操作盤40に備えられていてもよいし、又はロボット制御装置30に備えられていてもよい。
【0024】
生体情報取得部41は、生体情報取得装置50によって、作業者の生体情報を取得する機能を有する。生体情報取得部41は、例えば操作盤40を起動した際に、或いは操作盤40に対して所定の操作を実行した際、例えばイネーブルスイッチを押圧した際に、生体情報取得装置50を起動するように構成される。生体情報取得装置50によって取得された作業者の生体情報は、生体情報取得部41から作業者判別部33に出力される。
【0025】
生体情報記憶部31は、記憶装置32によって、各々の作業者の生体情報を記憶する機能を有する。作業者の生体情報は、例えば当該作業者によって実行可能な機能に関連付けられた状態で記憶される。記憶装置32に記憶された情報は、作業者判別部33によって生体情報記憶部31から読出されるようになっている。
【0026】
作業者判別部33は、生体情報取得部41から出力される現在の作業者の生体情報と、生体情報記憶部31から読出される複数の作業者の生体情報と、を比較して、操作盤を使用している現在の作業者を判別する機能を有する。判別された作業者の情報は、その作業者に対して割当てられた実行可能な機能に関する情報とともに、作業者判別部33から制限部43に出力される。
【0027】
制限部43は、作業者判別部33から出力される現在の作業者の情報に基づいて、作業者に対して実行可能な機能を制限する機能を有する。
【0028】
図3A及び
図3Bは、生体情報記憶部31に記憶される情報の例を示す表である。
図3Aは、作業者A〜Dに対して、生体情報としての各々の顔情報a〜dと、実行可能な機能と、が互いに関連付けられた状態で記憶される場合の例を示している。図示された例では、作業者Aは最も熟練度が高く、例えばシステム変数の編集、プログラムの編集、サイクルスタート、非常停止などのすべての機能を実行できる。作業者B,Cは、作業者Aよりも熟練度が低く、それぞれ一部の操作しか実行できない。作業者Dは最も熟練度が低く、システムを非常停止させることしかできないよう最も厳格な制限が課されている。また、
図3Bに示される例では、作業者A〜Dの各々の顔情報a〜dが記憶されるとともに、各々の機能を実行可能な作業者のリストが記憶される。
【0029】
図4は、一実施形態に係るロボットシステム10において、作業者が操作盤40を使用して所定の作業を実行する際の流れを示すフローチャートである。本実施形態によれば、作業者が操作盤40に電源を投入して操作盤40を起動する(ステップS401)際に、作業者の判別工程を実施することが要求される。そのため、ステップS402において、操作盤40の生体情報取得部41によって、作業者の生体情報を取得する。このとき、例えば、生体情報を提供するよう作業者に所定の操作を指示する内容の情報が表示部44に表示される。それに対して、作業者が、例えば顔をカメラに向けたり、指を指紋検出器の上に置いたりすることによって、作業者の生体情報が取得される。
【0030】
ステップS403では、作業者の生体情報が適切に取得できたか否かを判定する。生体情報が取得できなかった場合、例えば作業者の顔がカメラに写っていない場合、ステップS402に戻り、作業者の生体情報が取得されるまでステップS402〜S403の工程を繰返す。或いは、生体情報が取得できない場合、操作盤40に対する操作を実行できないようにしてもよい。
【0031】
ステップS403で作業者の生体情報が取得されたと判定された場合、ステップS404に進み、作業者判別部33によって、現在の作業者の判別工程を実行する。次いで、ステップS405において、制限部43によって、判別された作業者に対して実行可能な機能を制限する。ステップS402において取得された作業者の生体情報が、生体情報記憶部31によって記憶されたいずれの作業者の生体情報とも合致しない場合には、操作盤40を操作不能にしてもよい。
【0032】
ステップS406では、操作盤40の操作が有効か否かを判定する。操作盤40の操作が無効である場合、例えば、オン/オフスイッチ42が作業者によってオフに切替えられている場合、操作盤40を使用した各種機能が無効化されている。この場合、例えばイネーブルスイッチ48を押圧してもロボット20は動作しないので、仮にイネーブルスイッチ48が誤って押圧されても重大な事故にはつながらない。そのため、イネーブルスイッチ48を押圧しながら行う機能を制限部43によって制限する必要はない。したがって、ステップS406で操作盤40の操作が有効であると判定されるまで、作業者の判別を実行しないようにする。
【0033】
ステップS406において操作盤40の操作が有効であると判定された場合、ステップS407に進み、作業者の判別工程の実行を要求する操作がなされたか否かを判定する。ここでは、判別工程を実行すべき操作がなされたと判定された場合、ステップS402に戻り、作業者の判別工程が再度実行される。なお、判別工程を要求する操作とは、例えばプログラムの編集のためのキー操作、又はイネーブルスイッチ48を押圧しながら実行しなければならないロボットの教示などである。どのような操作に応じて判別工程を実行すべきかは、安全性、作業効率を考慮して適宜変更可能である。安全性を重視する場合は、より多くの操作が判別工程を要求する操作に指定される。
【0034】
ステップS407において、判別工程を要求する操作が実行されていないと判定された場合、ステップS408に進む。ステップS408では、直前に実行された作業者の判別工程から所定の時間が経過したか否かが判定される。所定の時間が経過したと判定された場合、ステップS402に戻り、作業者の判別工程が再度実行される。このように、作業者の判別工程を少なくとも一定の時間ごとに実行することによって、作業者が制限を解除した後に作業場所からいったん離れたとしても、権限を有しない別の作業者が本来実行できないはずの機能を実行することが防止される。
【0035】
ステップS408において、所定の時間が経過していないと判定された場合は、ステップS409に進み、作業者がログアウトしたか否かを判定する。作業者がログアウトしていないと判定された場合は、ステップS406に戻り、ステップS406〜S409の工程を繰返す。
【0036】
作業者は、操作盤40を使用した作業を中断するとき、或いは作業を完了したときにログアウトする。したがって、ステップS409において作業者がログアウトしたと判定された場合は、ステップS402に戻り、作業者の判別工程が再度実行される。
【0037】
図4を参照して説明した実施形態によれば、次のような効果を奏する。
(1)生体認証を利用して作業者の判別が実行されるので、従来のように情報端末が紛失したり、又は貸与されたり、或いは認証情報が漏洩したりする虞がなくなる。
【0038】
(2)操作盤40の操作が無効化されているときには、作業者の判別工程が実行されない。それにより、無用な判別工程が実行されるのを防止できる。
【0039】
(3)いったん判別工程が実行されてから所定の時間が経過すると、強制的に判別工程が実行される。したがって、操作の途中で作業者が交替した場合であっても、作業者が本来実行できないはずの操作を誤って実行することを防止できる。また、作業者がログアウトするのを忘れて作業場所から離れ、かつ次の作業者が周囲に居ない場合、作業者の生体情報を取得できずに操作盤が無効化されるので、誤操作による事故を防止できる。
【0040】
図5は、別の実施形態に係るロボットシステム10において、作業者が操作盤40を使用して所定の作業を実行する際の流れを示すフローチャートである。本実施形態においては、作業者の判別工程を実行してから所定の時間が経過するまでの間は、たとえ判別工程を要求する操作が実行されたとしても、判別工程を実行しない。ステップS501〜S505までの工程は、
図4のステップS401〜S405と同様なので説明を省略する。
【0041】
ステップS506では、直前に判別工程が実行されてから所定の時間が経過したか否かを判定する。そして、所定の時間が経過するまでの間は、次のステップに進まないようになっている。ステップS506において所定の時間が経過したと判定されると、ステップS507に進み、判別工程を要求する操作がなされたか否かを判定する。判別工程を要求する所定の操作が実行されたときは、ステップS502に戻り、作業者判別部33によって判別工程を実行する。
【0042】
判別工程を要求する操作が実行されていないとステップS507において判定されたときは、ステップ508に進み、作業者がログアウトしたか否かを判定する。ログアウトしていない、すなわち操作盤40の使用が継続されていると判定された場合は、ステップS507に戻る。作業者がログアウトした場合は、ステップS502に戻り、作業者の判別工程が再度実行される。
【0043】
本実施形態によれば、判別工程がいったん実行されてから所定の時間が経過するまでは、判別工程が実行されないことを保証する。それにより、作業者が短時間で何度も繰返し生体情報を提供する必要がなくなる。例えば、作業者は、ロボット20に対する教示中に、イネーブルスイッチを押したり離したりする操作を短時間で繰り返すことがある。そのため、イネーブルスイッチを押す度に判別工程が要求されるようになっていると、その度に作業を中断して顔をカメラに向ける作業を繰り返すことになり、作業効率が低下する。それに対し、本実施形態では、所定の時間が経過するまでの間はイネーブルスイッチを何度押しても判別工程が開始されない。したがって、短時間で頻繁に実行される判別工程に起因して作業効率が低下するのを防止できる。
【0044】
図6は、また別の実施形態に係るロボットシステムにおいて、作業者が操作盤を使用して所定の作業を実行する際の流れを示すフローチャートである。本実施形態によれば、直前の生体情報の取得に成功した判別工程が実行されてから所定の時間が経過するまでの間は、判別工程において生体情報の取得に失敗しても、直前に生体情報の取得に成功した判別工程の結果が維持され、機能制限の内容が変更されないようになっている。本実施形態におけるステップS601〜S605の工程は、
図4のステップS401〜S405と同様なので、説明を省略する。
【0045】
ステップS606では、判別工程を要求する操作が実行されたか否かを判定する。判別工程を要求する操作が実行されていないと判定された場合は、次のステップには進まない。他方、所定の操作が実行されたと判定された場合は、ステップS607に進む。
【0046】
ステップS607では、ステップS602と同様に作業者の生体情報を取得する。ステップS608で作業者の生体情報が取得されたと判定された場合、ステップS604に戻る。ステップS608で作業者の生体情報が取得できなかったと判定された場合、ステップS609に進む。ステップS609では、直前に生体情報の取得に成功した判別工程を実行してから所定の時間が経過したか否かを判定する。所定の時間が経過していないと判定された場合は、ステップS610に進み、直前の判別工程の結果を維持する。他方、ステップS609において所定の時間が経過したと判定された場合はステップS602に戻り、通常どおり判別工程を実行する。
【0047】
本実施形態によれば、判別工程がいったん実行されてから所定の時間が経過するまでの間は、生体情報の取得に失敗しても、直前に生体情報の取得に成功した判別工程の結果が維持される、すなわち、機能の制限は変更されない。それにより、例えば、作業者が顔をカメラに向けるのを怠り、生体情報取得部41が生体情報の取得に失敗した場合であっても、作業者は作業を継続できるようになる。このように、判別工程において生体情報の取得に失敗したとしても、作業者による作業を所定の時間だけ許可することによって、短時間で頻繁に実行される判別工程に起因して作業効率が低下するのを防止できる。当然ながら、生体情報の取得に成功すれば、通常通りに判別された作業者に対して実行可能な機能を制限できるので、作業者が交替した場合の安全性も確保できる。
【0048】
前述したように、
図4〜
図6を参照して説明した実施形態において、安全性ないし作業効率を考慮して所定の時間が経過したか否かを判定する工程が含まれる。一実施形態においては、操作盤40が有効状態であるか、又は無効状態であるか、に応じて、判定対象の基準となる「所定の時間」の長さを変更する。すなわち、操作盤40が無効化されているときは、安全性よりも作業効率を優先すべきであるので、「所定の時間」が長く設定されてもよい。逆に、操作盤40の操作が有効である場合には、安全性をより重視するために、「所定の時間」を短縮することが好ましい場合がある。
【0049】
図7は、変形例に係るロボットシステム10において、作業者判別工程の流れを示すフローチャートである。本変形例によれば、二回目又はそれ以降の判別工程において、判別工程を簡略化する。なお、前述したように起動時に判別工程が実行される場合、作業者が操作盤40を操作している間に実行される判別工程は、二回目又はそれ以降の判別工程である。作業者が交替した場合、判別工程の回数を記録するカウンタはゼロに戻る。
【0050】
本変形例に従って、判別工程が開始されると、ステップS701において、作業者の生体情報を取得する。そして、ステップS702において、生体情報が適切に取得されたか否かを判定する。
【0051】
次いで、ステップS703において、二回目又はそれ以降の判別工程か否かを判定する。最初の判別工程であると判定された場合は、
図4に関連して説明したステップS404〜S405と同様に、通常の方法に従って作業者を判別し、実行可能な機能を制限する(ステップS706〜S707)。
【0052】
二回目又はそれ以降の判別工程であると判定された場合、ステップS704に進み、作業者が直前の工程で判別された作業者と同一であるか否かを判定する。ステップS704における判定は、取得される生体情報と、直前の判別工程で取得された生体情報とを照合することによって実行される。
【0053】
ステップS704において、作業者が同一ではない、すなわち作業者が交替したと判定された場合、ステップS706に進み、通常の方法に従って作業者を判別する。それに対し、作業者が交替していないと判定された場合、ステップS705に進み、直前の機能の制限を維持する。
【0054】
本変形例によれば、同一の作業者が操作盤40を継続して作業している場合に、二回目又はそれ以降の判別工程が生体情報の同一性を確認することのみによって実行される。すなわち、通常の判別方法のように、作業者ごとに機能の制限情報を照会する必要がないので、判別工程を短時間で完了でき、作業効率が向上する。
【0055】
図8は、別の実施形態に係るロボットシステム10の機能ブロック図である。
図2と対比すると分かるように、本実施形態においては、操作盤40が事故情報表示部45をさらに備えており、ロボット制御装置30が事故情報記憶部35をさらに備えている。
【0056】
事故情報記憶部35は、記憶装置32によって、各々の作業者に関連付けられた事故情報を記憶する機能を有する。事故情報には、例えば、その作業者が過去に引起こした事故、又は引起こしそうになった事故が含まれる。また、事故情報には、その作業者と同等の熟練度を有する作業者が引起す傾向にある事故が含まれてもよい。例えば、一部の機能に対して制限が課された作業者に対しては、実行可能な機能のみに関連する事故情報のみが割当てられる。また、ロボット20に対する教示を行う権限が付与されてまだ日が浅い作業者に対しては、教示中に発生する傾向の高い事故情報が割当てられるようにしてもよい。なお、「事故」とは、破損事故、負傷事故の直接的な原因にはならないような単純な誤操作も含む広義の意味に解釈されるべきである。
【0057】
事故情報表示部45は、作業者判別部33によって判別された作業者に対して関連付けられた事故情報を表示部44に表示する。表示される事故情報は、作業者に対する注意喚起の機能を果たす。事故情報を表示部44に表示する代わりに、又はそれに加えて、警告音を発生するように構成されていてもよい。
【0058】
本実施形態によれば、作業者ごとに、或いは作業者の熟練度に応じて、事故情報を作業者に対して選択的に通知できる。それにより、各々の作業者に対して効果的な注意喚起が可能になり、事故の発生を防止できるようになる。
【0059】
以上、本発明の種々の実施形態について説明したが、他の実施形態によっても本発明の意図される作用効果を奏することができることは当業者に自明である。特に、本発明の範囲を逸脱することなく前述した実施形態の構成要素を削除又は置換することが可能であるし、公知の手段をさらに付加することもできる。また、本明細書において明示的又は暗示的に開示される複数の実施形態の特徴を任意に組合せることによっても本発明を実施できることは当業者に自明である。