【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の中空糸膜モジュール用ポッティング剤は、エポキシ当量が230以下で分子内に芳香環を有し且つ23℃、0.10MPaにて液状であるエポキシ樹脂100重量部、並びに、カシューナッツ殻液とエピクロロヒドリンとの反応物、式(1)で表される構造を有するモノグリシジルエーテル、4−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル及びエポキシ化大豆油からなる群より選ばれた少なくとも一種の反応性希釈剤3〜20重量部を含む主剤と、ポリオキシアルキレントリアミン及びポリオキシアルキレンジアミンからなる群より選ばれた少なくとも一種を含み且つ全アミン価が56〜393、平均官能数が2.6〜3.0であるアミン化合物25〜65重量部を含む硬化剤とを有することを特徴とする
【0013】
【化1】
式(1)において、R
1は、炭素数が8以上のアルキル基である。
【0014】
中空糸膜モジュール用ポッティング剤は、主剤と硬化剤とを含む二液型のポッティング剤であり、主剤と硬化剤とを混合させ硬化させて用いられる。中空糸膜モジュール用ポッティング剤の主剤は、芳香環を有するエポキシ樹脂を含有している。エポキシ樹脂は、芳香環を有しており、15〜40℃という低温にて良好に硬化し、中空糸膜のろ過能力を損ねることなく中空糸膜モジュールを製造することができる。芳香環を有するエポキシ樹脂としては、特に限定されず、例えば、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂、ビスフェノールF型のエポキシ樹脂、ビフェニル型のエポキシ樹脂、ナフタレン型のエポキシ樹脂、フェノールノボラック型のエポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型のエポキシ樹脂、トリスヒドロキシメタン型のエポキシ樹脂、テトラフェノールエタン型のエポキシ樹脂、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン型のエポキシ樹脂、アミノフェノール型のエポキシ樹脂、アニリン型のエポキシ樹脂、ベンジルアミン型のエポキシ樹脂、キシレンジアミン型のエポキシ樹脂などが挙げられ、有機化合物成分の溶出が低いと共に、硬化時の発熱量が低く、中空糸膜のろ過能力を損なうことがないことから、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂が好ましい。なお、エポキシ樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0015】
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、硬化させたポッティング剤からの有機化合物成分の溶出を低く抑えることができるので、230以下であり、160〜195が好ましく、170〜195がより好ましく、184〜194が特に好ましい。エポキシ樹脂のエポキシ当量を160以上とすることによって、中空糸膜モジュール用ポッティング剤の硬化時に単位体積当たりのエポキシ基の反応数が多くなりすぎるのを防止して、中空糸膜モジュール用ポッティング剤の硬化時の発熱量を抑制し、中空糸膜のろ過能力を損なうことなく、中空糸膜モジュールを製造することができる。
【0016】
ここで、「エポキシ当量」とは、エポキシ化合物の分子量を1分子中のエポキシ基の数で除した値である。本発明において、エポキシ樹脂のエポキシ当量は、JIS K7236に準拠して測定された値をいう。
【0017】
エポキシ樹脂は、23℃、0.10MPaの条件下にて液状である。エポキシ樹脂が23℃、0.10MPaの条件下にて液状であることによって、中空糸膜間に隙間を生じることなく、中空糸膜同士を強固に一体化することができると共に、複数本の中空糸膜を引き揃えて束ねてなる中空糸膜束を、中空糸膜モジュールを構成している収納ケースに、中空糸膜束と収納ケースとの間に隙間を生じさせることなく強固に一体化することができ、長期間に亘って安定的に使用し得る中空糸膜モジュールを製造することができる。
【0018】
中空糸膜モジュール用ポッティング剤の主剤は、反応性希釈剤を含有している。反応性希釈剤は、カシューナッツ殻液とエピクロロヒドリンとの反応物、式(1)の構造で表されるモノグリシジルエーテル、4−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル及びエポキシ化大豆油からなる群より選ばれた少なくとも一種を含む。これらの反応性希釈剤は、主剤の粘度を下げ、主剤の粘度と硬化剤の粘度との差が小さくなることによって、主剤と硬化剤との混合が容易になり、中空糸膜モジュール用ポッティング剤の取扱性を向上させる。また、上記反応性希釈剤は、他の反応性希釈剤と比較して有機化合物成分の溶出が低く、更には、中空糸膜モジュール用ポッティング剤の硬化時の発熱量を抑制する。
【0019】
【化2】
式(1)において、R
1は、炭素数が8以上のアルキル基である。
【0020】
上記カシューナッツ殻液は、カシューナッツ殻油又はカシューナッツオイルとも呼ばれている。カシューナッツトリー(Anacardium accidentale L.,ウルシ科)の実の殻に含まれている油状の液体である。
【0021】
カシューナッツトリー(Anacardium accidentale L.,ウルシ科)の実の殻からカシューナッツ殻液を採取する方法として溶剤抽出法と加熱法があり、産地では主として加熱法が用いられる。即ち、カシューナッツ殻液は、カシューナッツの殻を乾留するか、又は、カシューナッツの殻から直接、溶剤抽出することによって得られる。カシューナッツ殻液の成分としては、抽出法の場合はアナカルド酸とカルドールが主成分であり、加熱法の時は、カルダノールとカルドールが主成分である。
【0022】
上記モノグリシジルエーテルは、上述の通り、式(1)の構造を有する。式(1)において、R
1は、適度な疎水性を有し、中空糸膜モジュール用ポッティング剤の有機化合物成分の溶出を低減できることから、炭素数が8以上のアルキル基であり、更に、モノグリシジルエーテルの使用量を低減でき、中空糸膜モジュール用ポッティング剤の有機化合物成分の溶出を低減できることから、炭素数が11〜20であるアルキル基が好ましい。R
1としては、例えば、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、エイコサニル基などの直鎖状又は分岐鎖を有するアルキル基が挙げられる。
【0023】
上記エポキシ化大豆油とは、不飽和結合を有する脂肪酸を主成分とする混合脂肪酸とグリセリンのトリエステル構造を有する大豆油の不飽和結合の全部又は一部を酸化することでエポキシ化した化合物である。
【0024】
中空糸膜モジュール用ポッティング剤中における反応性希釈剤の含有量は、エポキシ樹脂100重量部に対して3〜20重量部であり、3〜18重量部が好ましく、3〜15重量部がより好ましく、4〜12重量部が特に好ましく、5〜10重量部が最も好ましい。中空糸膜モジュール用ポッティング剤中における反応性希釈剤の含有量が3重量部以上であると、中空糸膜モジュール用ポッティング剤の主剤の粘度が下がり、主剤の粘度と、硬化剤の粘度との差が小さくなることによって、主剤と硬化剤との混合が容易になり、中空糸膜モジュール用ポッティング剤の取扱性が向上する。中空糸膜モジュール用ポッティング剤中における反応性希釈剤の含有量が20重量部以下であると、中空糸膜モジュール用ポッティング剤からの有機化合物成分の溶出を低減することができる。
【0025】
中空糸膜モジュール用ポッティング剤の硬化剤は、ポリオキシアルキレントリアミン及びポリオキシアルキレンジアミンからなる群より選ばれた少なくとも一種のアミン化合物を含有している。ポリオキシアルキレントリアミンとしては、式(2)で示される構造を有する化合物が好ましい。
【0026】
【化3】
式(2)において、R
2はメチル基又はエチル基である。R
3はメチル基又はエチル基である。R
4はメチル基又はエチル基である。R
5はH(水素原子)又は炭素数が1〜6のアルキル基である。X、Y及びZは正の数である。(X+Y+Z)は5〜6である。
【0027】
式(2)において、R
2〜R
4は、メチル基又はエチル基である。R
2〜R
4は同一であっても互いに相違していてもよい。R
2〜R
4が全てメチル基であるか、又は、R
2〜R
4が全てエチル基であることが好ましい。これは、アミノ基が結合している炭素がメチレン鎖の炭素のように立体障害が小さいと、ポリオキシアルキレントリアミンのアミノ基と、エポキシ樹脂のエポキシ基との反応性が高すぎて、中空糸膜モジュール用ポッティング剤の硬化時の発熱量が高くなり、中空糸膜のろ過能力又は中空糸膜モジュールの収納ケースを損なう虞れがある。更に、アミノ基が空気中の二酸化炭素と反応することによってアミンブラッシングを生じ、中空糸膜モジュール用ポッティング剤からの有機化合物成分の溶出量が多くなる虞れがある。一方、アミノ基が結合している炭素にイソプロピル基のような嵩高い官能基が結合していると、中空糸膜モジュール用ポッティング剤の硬化時に、ポリオキシアルキレントリアミンのアミノ基と、エポキシ樹脂のエポキシ基との反応が十分に進行せず、未反応物が残り易く、中空糸膜モジュール用ポッティング剤からの有機化合物成分の溶出量が多くなる虞れがある。R
5はH(水素原子)又は炭素数が1〜6のアルキル基である。炭素数が1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、ブロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘプチル基などが挙げられる。
【0028】
式(2)において、X、Y及びZは正の数であり且つ(X+Y+Z)は5〜6である。(X+Y+Z)は、中空糸膜モジュール用ポッティング剤の硬化時における発熱量を抑制して中空糸膜のろ過能力を損なうことなく中空糸膜モジュールを容易に製造することができると共に、中空糸膜モジュール用ポッティング剤を十分に架橋、硬化させることによって中空糸膜モジュール用ポッティング剤からの有機化合物成分の溶出量を低減することができるので、5〜6である。
【0029】
式(2)で表される化合物は、市販品を使用することができる。式(2)で表される化合物は、例えば、Huntsuman社から商品名「Jeffamine T−403」及び「Jeffamine XTJ−566」で市販されている。
【0030】
ポリオキシアルキレンジアミンとしては、式(3)で示される構造を有する化合物が好ましい。
【0031】
【化4】
【0032】
式(3)において、R
6は、メチル基又はエチル基である。R
7は、メチル基又はエチル基である。nは、2〜7である。
【0033】
式(3)において、R
6及びR
7が共にメチル基であるか、又は、R
6及びR
7が共にエチル基であることが好ましい。これは、アミノ基が結合している炭素がメチレン鎖の炭素のように立体障害が小さいと、ポリオキシアルキレンジアミンのアミノ基と、エポキシ樹脂のエポキシ基との反応性が高すぎて、中空糸膜モジュール用ポッティング剤の硬化時の発熱量が高くなり、中空糸膜のろ過能力又は中空糸膜モジュールの収納ケースを損なう虞れがある。更に、アミノ基が空気中の二酸化炭素と反応することによってアミンブラッシングを生じ、中空糸膜モジュール用ポッティング剤からの有機化合物成分の溶出量が多くなる虞れがある。一方、アミノ基が結合している炭素にイソプロピル基のような嵩高い官能基が結合していると、中空糸膜モジュール用ポッティング剤の硬化時に、ポリオキシアルキレンジアミンのアミノ基と、エポキシ樹脂のエポキシ基との反応が十分に進行せず、未反応物が残り易く、中空糸膜モジュール用ポッティング剤からの有機化合物成分の溶出量が多くなる虞れがある。
【0034】
式(3)で表される化合物は、市販品を使用することができる。式(3)で表される化合物は、例えば、Huntsuman社から商品名「Jeffamine D−230」及び「Jeffamine D−400」で市販されている。
【0035】
硬化剤は、ポリオキシアルキレントリアミン及びポリオキシアルキレンジアミンからなる群より選ばれた少なくとも一種のアミン化合物を含有している。このアミン化合物全体の平均官能数は、2.6〜3.0であり、2.7〜3.0が好ましく、2.8〜3.0がより好ましく、2.9〜3.0が特に好ましい。アミン化合物の平均官能数が2.6〜3.0であると、中空糸膜モジュール用ポッティング剤の硬化時における発熱量を抑制して中空糸膜のろ過能力を損なうことなく中空糸膜モジュールを容易に製造することができると共に、中空糸膜モジュール用ポッティング剤を十分に架橋、硬化させることによって中空糸膜モジュール用ポッティング剤からの有機化合物成分の溶出量を低減することができる。
【0036】
なお、本発明において、アミン化合物の平均官能数は下記の要領で算出された値をいう。アミン化合物中に含まれているポリオキシアルキレントリアミンのそれぞれの含有量をWTi、分子量をMTiとし、アミン化合物中に含まれているポリオキシアルキレンジアミンのそれぞれの含有量をWDi、分子量をMDiとしたとき、下記式に基づいて算出される。なお、アミン化合物中に、ポリオキシアルキレントリアミンがk種類、ポリオキシアルキレンジアミンがp種類含有されているとする。
【0037】
【数1】
【0038】
アミン化合物全体の全アミン価は、56〜393であり、168〜393が好ましく、337〜393がより好ましい。アミン化合物全体の全アミン価が56以上であると、中空糸膜モジュール用ポッティング剤を十分な架橋密度に硬化させて、中空糸膜モジュール用ポッティング剤からの有機化合物成分の溶出を低減することができると共に、中空糸膜モジュール用ポッティング剤は適度な粘度を有し、中空糸膜モジュール用ポッティング剤を中空糸膜間に十分に浸透させて中空糸膜同士、及び、中空糸膜束と収納ケースとを強固に一体化することができる。アミン化合物全体の全アミン価が393以下であると、中空糸膜モジュール用ポッティング剤の硬化時の発熱量を抑制し、中空糸膜のろ過能力又は中空糸膜モジュールの収納ケースを損なうことなく中空糸膜モジュールを製造することができる。
【0039】
アミン化合物の「全アミン価」とは、試料1g中に含まれる全塩基性窒素を中和するのに要する過塩素酸と当量の水酸化カリウムのmg数を表し、無名数としたものである。本発明において、アミン化合物の全アミン価は、JIS K7237に準拠して測定された値をいう。
【0040】
中空糸膜モジュール用ポッティング剤中におけるアミン化合物の含有量は、エポキシ樹脂100重量部に対して25〜65重量部であり、27〜50重量部が好ましく、30〜46重量部がより好ましい。中空糸膜モジュール用ポッティング剤中のアミン化合物の含有量を上記範囲とすることによって、中空糸膜モジュール用ポッティング剤の硬化時における発熱量を抑制して中空糸膜のろ過能力を損なうことなく中空糸膜モジュールを容易に製造することができる点と、中空糸膜モジュール用ポッティング剤を十分に架橋、硬化させることによって中空糸膜モジュール用ポッティング剤からの有機化合物成分の溶出量を低減することができる点とをバランス良く両立させることができる。
【0041】
中空糸膜モジュール用ポッティング剤には硬化剤として上記アミン化合物が含有されているが、本発明の作用効果を阻害しない範囲内において、他の硬化剤が含有されていてもよい。このような硬化剤としては、チオール化合物、ジシアンジアミド類、イミダゾール、芳香族ポリアミン、脂肪族ポリアミン、ポリアミド類、ポリスルフィド類、ジヒドラジド類などが挙げられる。
【0042】
中空糸膜モジュール用ポッティング剤には、本発明の作用効果を阻害しない範囲内において、硬化触媒が含有されていてもよい。このような硬化触媒としては、特に限定されず、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、テトラエチルメチレンジアミン、テトラメチルプロパン−1,3−ジアミン、テトラメチアレヘキサン−1,6−ジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ペンタメチルジプロピレントリアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、エチレングリコール(3−ジメチル)アミノプロピルエーテル、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノエトキシエタノール、N,N,N’−トリメチルアミノエチルエタノールアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジメチルアミノメチルフェノール、N,N−ジメチルプロピアレアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン、N−メチルピペリジン、N,N’−ジメチルピペラジン、N,N−ジメチルベンジルアミン、ジメチルアミノメチルフェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−ノネン−5、6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−ウンデセン−7、1,2−ジメチルイミダゾール、ジメチルピペラジン、N−メチル−N’−(2−ジメチルアミノ)−エチルピペラジン、N−メチルモルホリン、N−(N’,N’−ジメチルアミノ)エチル)モルホリン、N−メチル−N’−(2−ヒドロキシエチル)モルホリン、トリエチレンジアミン、ヘキサメチレンテトラミン、トリエタノールアミンなどが挙げられる。なお、硬化触媒は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0043】
硬化触媒としては、反応速度を容易に制御可能であるから、トリエタノールアミンが好ましい。硬化触媒としては、中空糸膜モジュール用ポッティング剤の硬化物の硬化度を向上させることができるので、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールが好ましい。硬化触媒として、トリエタノールアミン及び2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールを用いることによって、反応速度の制御と、中空糸膜モジュール用ポッティング剤の硬化物における硬化度の向上とを図ることができる。
【0044】
ポッティング剤には、本発明の作用効果を阻害しない範囲内において、添加剤が含有されていてもよい。添加剤としては、例えば、熱可塑性樹脂、脱臭剤、シランカップリング剤、チタンカップリング剤などの密着性向上/接着性改良剤、ヒンダードアミン類、ハイドロキノン類、ヒンダードフェノール類などの酸化防止剤、ベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類、サリチル酸エステル類、金属錯塩類などの紫外線吸収剤、金属石けん類、重金属(例えば亜鉛、錫、鉛、カドミウムなど)の無機塩類及び有機塩類、有機錫化合物などの安定剤、フタル酸エステル、リン酸エステル、脂肪酸エステル、ひまし油、流動パラフィンアルキル多環芳香族炭化水素などの可塑剤、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワンクス、重合ワックス、密ロウ、鯨ロウ、低分子量ポリオレフィンなどのワックス類、ベンジルアルコール、タール、ピチューメンなどの非反応性希釈剤、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、マイカ、ベントナイト、クレー、セリサイト、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ガラス粉、ガラスバルーン、シラスバルーン、石炭粉、アクリル樹脂粉、フェノール樹脂粉、金属粉末、セラミック粉末、ゼオライト、スレート粉などの充填剤、カーボンブランク、酸化チタン、赤色酸化鉄、パラレッド、紺青などの顔料又は染料、酢酸エチル、トルエン、アルコール類、エーテル類、ケトン類などの溶剤、発泡剤、モノイソシアネート化合物、カルボジイミド化合物などの脱水剤、帯電防止剤、抗菌剤、防かび剤、粘度調製剤、香料、難燃剤、レベリング剤、分散剤、揺変性付与剤、導電性付与剤などが挙げられる。
【0045】
中空糸膜モジュール用ポッティング剤は主剤と硬化剤の二液からなり、中空糸膜モジュール用ポッティング剤の主剤は、例えば、エポキシ樹脂及び反応性希釈剤を含む組成物を汎用の混合機を用いて混合することにより製造することができる。中空糸膜モジュール用ポッティング剤の硬化剤は、例えば、ポリオキシアルキレントリアミンに、必要に応じて添加される硬化触媒、及び/又は、その他の硬化剤を加えて、必要に応じて汎用の混合機を用いて混合することにより製造することができる。混合機としては、例えば、ミキサー、インペラ型混合攪拌機、ダイナミックミキサー、スタティックミキサー、ニーダーなどが挙げられる。
【0046】
本発明の中空糸膜モジュール用ポッティング剤の使用要領の一例を説明する。先ず、中空糸膜モジュール用ポッティング剤の主剤と硬化剤とを均一に混合する。中空糸膜モジュール用ポッティング剤の主剤と硬化剤との粘度差が小さく、主剤と硬化剤とを均一に混合することができる。次に、糸状に形成された複数本の中空糸膜を引き揃えた状態で束ねる。一対の筒状の収納ケースを用意し、各収納ケースの一端開口部にキャップを装着して閉塞した上で、収納ケース内に中空糸膜束の両端部のそれぞれを収納する。続いて、各収納ケース内に中空糸膜モジュール用ポッティング剤を供給する。なお、中空糸膜は、その表面又は中空糸膜の中心に形成された中空部から液体を浸透させることによって液体を濾過し、濾過された液体を中空糸膜の中空部又は表面から取り出すことができ、中空糸ともいう。
【0047】
中空糸膜束の端部を硬化前の中空糸膜モジュール用ポッティング剤に浸漬させた状態において、中空糸膜モジュール用ポッティング剤を室温で硬化させて中空糸膜束を収納ケース内に収納した状態にて一体化させた後、収納ケースからキャップを取り外し、中空糸膜束の両端を切除することによって中空糸膜モジュールを製造することができる。中空糸膜モジュール用ポッティング剤は低温での硬化が可能であり、中空糸膜のろ過能力及び中空糸膜モジュールの構成部材を損ねることなく硬化させることができる。中空糸膜モジュール用ポッティング剤の硬化温度は、15〜40℃が好ましく、20〜30℃がより好ましく、22〜28℃が特に好ましく、23〜25℃が最も好ましい。
【0048】
中空糸膜モジュール用ポッティング剤は、低温にて硬化し且つ発熱量も低く、中空糸膜及び中空糸膜モジュールの構成部材を損ねることがないと共に、中空糸膜モジュール用ポッティング剤の硬化物からの有機化合物成分の溶出量も少ない。
【0049】
従って、中空糸膜モジュール用ポッティング剤を用いて製造された中空糸膜モジュールを用いてろ過された液体は、中空糸膜モジュール用ポッティング剤の硬化物に接触するものの、中空糸膜モジュール用ポッティング剤の硬化物からの有機炭化成分の溶出量は低く抑えられているので、ろ過された液体は、これに含有される有機化合物成分量が低減されており、飲料用途及び工業用途などの様々な用途に用いることができる。