特許第5941306号(P5941306)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5941306
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月29日
(54)【発明の名称】発光装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/50 20100101AFI20160616BHJP
【FI】
   H01L33/00 410
【請求項の数】15
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-62172(P2012-62172)
(22)【出願日】2012年3月19日
(65)【公開番号】特開2013-197279(P2013-197279A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2015年2月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000888
【氏名又は名称】特許業務法人 山王坂特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 功三郎
【審査官】 村井 友和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−044209(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00−33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、該基板上に実装された発光素子と、前記発光素子上に配置された波長変換層と、波長変換層の上に搭載された板状部材とを有し、
前記波長変換層は、無機材料を含有する基材と、前記基材に分散された蛍光体粒子とを含み、
前記板状部材は、厚さ方向に貫通する複数の貫通孔を備え、当該貫通孔の少なくとも一部には、前記無機材料を含有する基材が充填されていることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
請求項1に記載の発光装置において、前記板状部材の前記貫通孔内の前記基材には、蛍光体粒子が分散されていることを特徴とする発光装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の発光装置において、前記板状部材の上面には、無機材料を含有する基材の層が搭載されていることを特徴とする発光装置。
【請求項4】
請求項に記載の発光装置において、前記板状部材の上面に配置された、前記層には、蛍光体が含有されていることを特徴とする発光装置。
【請求項5】
請求項2に記載の発光装置において、前記板状部材の前記貫通孔は、前記板状部材の外縁部の所定の領域には設けられていないことを特徴とする発光装置。
【請求項6】
請求項1に記載の発光装置において、前記板状部材の前記貫通孔の前記発光素子側の径は、前記波長変換層の前記蛍光体粒子の最小粒径よりも小さいことを特徴とする発光装置。
【請求項7】
請求項2に記載の発光装置において、前記板状部材の前記貫通孔の前記発光素子側の開口径は、前記波長変換層の前記蛍光体粒子の最小粒径よりも大きいことを特徴とする発光装置。
【請求項8】
請求項1ないしのいずれか1項に記載の発光装置において、前記波長変換層には、前記蛍光体粒子の最大粒径よりも粒径の大きな粒子状スペーサーが分散され、前記スペーサーは、前記発光素子の上面と前記板状部材の下面との間に挟まれて前記波長変換層の厚さを規定し、
前記貫通孔の前記発光素子側の開口径は、前記スペーサーの粒径よりも小さいことを特徴とする発光装置。
【請求項9】
請求項1ないしのいずれか1項に記載の発光装置において、前記板状部材の前記貫通孔の径は、厚さ方向について変化していることを特徴とする発光装置。
【請求項10】
請求項1ないしのいずれか1項に記載の発光装置において、前記波長変換層の前記基材に含有される前記無機材料は、シリカであることを特徴とする発光装置。
【請求項11】
基板と、該基板上に実装された発光素子と、前記発光素子上に配置された波長変換層と、波長変換層の上に搭載された板状部材とを有し、
前記板状部材は、厚さ方向に貫通する複数の貫通孔を備え、
当該貫通孔の少なくとも一部、および、前記板状部材と前記発光素子との間には、金属酸化物を主成分とする基材が配置されていることを特徴とする発光装置。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれか1項に記載の発光装置において、前記板状部材は、前記発光素子の発する光および前記発光素子の発する光によって励起された蛍光体の発する光に対して透明であることを特徴とする発光装置。
【請求項13】
蛍光体粒子が分散された基材原料を発光素子の上面に配置し、厚さ方向に複数の貫通孔が設けられた板状部材を前記基材原料の上に搭載する第1工程と、
前記基材原料を加熱することにより生じるガスを、前記貫通孔を介して前記板状部材の上方空間に放出しながら、無機材料を含有する基材を生成し、前記無機材料を含有する基材に前記蛍光体粒子が分散された波長変換層を前記発光素子と前記板状部材との間に形成する第2工程とを有することを特徴とする発光装置の製造方法。
【請求項14】
請求項13に記載の発光装置の製造方法において、前記第2の工程の後に、前記板状部材の上面から基材原料を前記貫通孔内に供給し、前記基材原料を加熱し、前記無機材料を含有する基材を生成することにより、前記無機材料を含有する基材により前記貫通孔内を充填する第3工程をさらに有することを特徴とする発光装置の製造方法。
【請求項15】
請求項13または14に記載の発光装置の製造方法において、前記基材原料を加熱することにより、脱アルコール反応を生じさせ、前記無機材料を含有する基材を生成することを特徴とする発光装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子からの光を波長変換層で変換する発光装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発光素子からの光の一部を蛍光体で異なる波長の光に変換し、発光素子からの光と混合して出射する発光装置が知られている。このような発光装置として、特許文献1に記載のように、蛍光体粒子を分散した未硬化樹脂を発光素子と透明な板との間に挟んで発光素子の上面に濡れ広がらせた後、樹脂を硬化させた構造の装置が知られている。この構造では、高濃度の蛍光体を含有する樹脂層を薄くかつ精度よく形成することできる。また、透明な板が発光素子上面より大きい場合、未硬化樹脂の表面張力により傾斜した側面をもつ蛍光体含有樹脂層を形成することができるため、発光素子の側面からの出射光も上方に向けて出射することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−33823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の発光装置は、蛍光体は樹脂に分散されているため、耐熱温度が高いとされているシリコーン樹脂でも耐熱温度は180℃程度である。このため、特許文献1に記載の構造で、大光量を発するパワーパッケージを製造しようとすると、発光素子の発する熱と蛍光体が発する熱により樹脂劣化が加速され、製品寿命が短くなる可能性がある。また、一般的な半導体発光素子(LED)パッケージにおいても、封止樹脂や波長変換層のバインダーは、シリコーン樹脂やエポキシ樹脂であるため、耐熱温度は180℃程度であり、大光量を発するパワーパッケージを製造しようとすると、上記と同様の問題が生じる。
【0005】
本発明の目的は、耐熱性が大きく、薄い波長変換層を備えた発光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明では、基板上に実装された発光素子と、発光素子上に配置された波長変換層と、波長変換層の上に搭載された板状部材とを有する発光装置の構成とする。このとき、波長変換層は、無機材料を含有する基材と、基材に分散された蛍光体粒子とを含む。板状部材は、厚さ方向に貫通する複数の貫通孔を備え、貫通孔の少なくとも一部には、無機材料を含有する基材が充填されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、板状部材に複数の貫通孔を備えることにより、無機材料を含有する基材を用いて波長変換層を形成することができる。これにより、耐熱性が高く、薄い波長変換層を備えた発光装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態1の発光装置の断面図。
図2】(a)図1の発光装置の板状部材14の上面図、(b)その断面図。
図3】実施形態2の発光装置の断面図。
図4】実施形態2で用いる板状部材14の別の例の上面図。
図5】実施形態3の発光装置の断面図。
図6】実施形態3の発光装置の断面図。
図7】実施形態3の発光装置の断面図。
図8】(a)および(b)実施形態4の発光装置の光学部材14の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施の形態の発光装置について説明する。
【0010】
(実施形態1)
図1に、実施形態1の発光装置の断面図を、図2(a),(b)に板状部材14の上面図および断面図を示す。上面に配線が形成されたサブマウント基板10の上には、図1のように、フリップチップタイプの発光素子11が、複数のバンプ12により接合されている。発光素子11の上面には、波長変換層13が搭載され、波長変換層13の上には透明な板状部材14が搭載されている。サブマウント基板10の外縁部には枠21が配置され、板状部材14、波長変換層13および発光素子11と枠21との間の空間は反射部材22により充填されている。発光素子11の底面とサブマウント基板10との間の空間も反射部材22により充填されている。
【0011】
板状部材14には、図1および図2(a)、(b)に示すように厚さ方向に貫通する貫通孔23が複数配置されている。貫通孔23は、後述する波長変換層13の形成工程において化学反応により生じるガスを、板状部材14の上方の空間に逃す経路として用いられる。完成後の発光装置においては、貫通孔23は、無機材料を含有する基材により充填されている。貫通孔23を充填する基材の屈折率は、板状部材14と同等とし、板状部材14の全面から一様に光が出射されるように構成することが可能である。また、貫通孔23を充填する基材の屈折率を、板状部材14と異ならせ、貫通孔23を充填する基材により、所定の光学効果を得ることも可能である。例えば、貫通孔23において光が散乱される効果や、貫通孔23内の基材の屈折率を板状部材14よりも低くし、光を閉じ込めて出射する効果等を得ることが可能である。
【0012】
貫通孔23の形状は、円形、多角形、楕円等所望の形状にすることができる。貫通孔23の穴の主平面方向の配列は、ランダムであってもよいし、格子状や同心円状など任意の配列にすることも可能である。また、貫通孔同士が重なり合うような配列でもよい。
【0013】
波長変換層13は、無機材料を含有する基材には、蛍光体粒子を高濃度に分散した構成である。基材は、すべて無機材料で構成されていてもよいし、無機材料を形成する工程で生じる有機材料等の有機材料を含有していてもよい。波長変換層13には、波長変換層13の厚さを規定するために、スペーサーを分散することも可能である。基材は、発光素子11の発する光、および、発光素子11の発する光により励起された蛍光体粒子が発する蛍光、に対して透明な材料を用いることが好ましい。
【0014】
また、基材は、未硬化の原料の状態で発光素子11と板状部材14との間に濡れ広がらせることが可能な液状であり、かつ、発光素子11にダメージを与えない温度(例えば200℃以下)で硬化可能な材料であることが好ましい。具体的には未硬化の状態で金属アルコキシドを溶媒に溶かした溶液であり、加熱されることにより脱アルコール反応を生じて(ゾルゲル法)、金属酸化物(基材)が生成される基材を好適に用いることができる。例えば、ゾルゲル法で形成可能な、酸化ケイ素(シリカ)、酸化チタン、アルミナ、酸化亜鉛、酸化ジルコニア等を基材として用いることができる。特に、オルトケイ酸テトラエチルを含む溶液を加熱して脱アルコール反応を生じさせて形成できる酸化ケイ素(シリカ)を基材として好適に用いることができる。
【0015】
一例として、基材原料としては、日本山村硝子(株)製のUTC無機コーティング材(UTC101)を用いることが可能である。この基材原料を加熱することにより、ゾルゲル法によりシリカを主成分とする基材を生成することができる。
【0016】
本実施形態では、板状部材14の貫通孔23の直径は、蛍光体粒子の粒径よりも小さく設計されている。これにより、製造時に未硬化の基材原料を発光素子11と板状部材の間に挟んで濡れ広がらせる工程で、蛍光体粒子が貫通孔23の中に入り込まないため、貫通孔23内に蛍光体粒子が充填されていない発光装置を製造できる。通常、蛍光体粒子の粒径は分布があるため、蛍光体粒子の最小粒径よりも貫通孔23の径を小さく設計する。例えば、蛍光体粒径が5μm〜30μmである場合には、貫通孔23の径を5μm未満、具体例としては3μmに設定する。
【0017】
波長変換層13にスペーサーを分散する場合、蛍光体粒子の最大径よりも大きな粒径のものを用いる。発光素子11と透明板状部材14との間にスペーサーが挟まれることにより、発光素子11上面と透明板状部材14との間隔を定め、これにより波長変換層13の層厚を規定(決定)することができる。スペーサーの形状は、多面体であっても球状であってもよい。例えば、30μmより大きく100μm以下の粒径のスペーサーを好適に用いることができる。このような粒径のスペーサーは、発光素子11の発する可視光波長よりも粒径がひと桁以上大きいため、光を散乱させる作用はほとんど生じない。
【0018】
スペーサーは、板状部材14を発光素子11の上面に対して平行に支持するために、発光素子11の上面に最低で3個配置されていることが望ましい。
【0019】
板状部材14は、無機材料(例えばガラス)で構成されている。板状部材14の貫通孔23は、マスクを用いたサンドブラスト法、レーザ加工法およびマスクを用いたウエットエッチング法等により形成することができる。
【0020】
板状部材14の上面や下面に光を拡散・配光等させるための微細な凹凸が形成されていてもよい。
【0021】
また、透明板状部材14の上面は、光取り出し面となるため、光の取り出し効率を向上させるために表面処理を施し加工してもよい。また、透明板状部材14の上面は必ずしも平面である必要はなく、散乱、集光、配光を目的とした形状、例えば凹凸形状やレンズ形状に加工されていてもよい。
【0022】
本実施形態では、板状部材14は、発光素子11の発する光、および、蛍光体粒子13aの発する蛍光に対して透明なものを用いるが、所望の光学特性を有するものであっても構わない。例えば、所定の波長をカットする板状フィルターを板状部材14として用いることも可能である。また、発光素子11からの光を所望の波長光に変換する蛍光体成分を含有する蛍光ガラスプレートや、蛍光体原料を焼結して作製した蛍光セラミックスのプレート(例えばYAGプレート)を用いることも可能である。
【0023】
サブマウント基板10としては、例えば、Auなどの配線パターンが形成されたAlNセラミックス製の基板を用いる。バンプ12としては、例えばAuバンプを用いる。
【0024】
反射部材22としては、例えば、酸化チタンや酸化亜鉛等の反射性のフィラーを分散させた樹脂を用いる。枠21は、例えばセラミックリングを用いる。
【0025】
本実施形態の発光装置の製造方法を用いて説明する。まず、サブマウント基板10の上面の配線パターンに、フリップチップタイプの発光素子11の素子電極をバンプ12を用いてAu−Au超音波併用熱圧着法等で接合し、実装する。
【0026】
次に、基材原料に蛍光体粒子および必要に応じてスペーサーを分散したものを用意し、エアディペンサー等を用いて発光素子11の上面に適量塗布し、その上に、貫通孔23が設けられた板状部材14を搭載する。基材原料としては、上述したように金属アルコキシド(例えばオルトケイ酸テトラエチル)を溶媒に溶かした溶液を用いることができる。
【0027】
これにより、蛍光体粒子が分散した基材原料が発光素子11の上面と側面に濡れ広がり、蛍光体粒子が分散した基材原料の層が形成される。また、板状部材14の貫通孔23の内部にも基材原料が充填される。このとき、蛍光体粒子の最小粒径よりも貫通孔23の直径が小さいため、蛍光体粒子やそれよりも大きいスペーサーは貫通孔23の内部には入らず、基材原料のみが貫通孔23に充填される。また、スペーサーを基材原料に分散させている場合には、スペーサーが発光素子11と板状部材14の間に挟まり、濡れ広がった基材原料の厚さを規定する。
【0028】
また、板状部材14として、発光素子11の上面よりも大きいものを用いることにより、濡れ広がった基材原料の表面張力により発光素子11の側面において傾斜した形状の基材原料の層を形成できる。
【0029】
その後、所定の温度(例えば150℃)で所定時間(例えば5〜60分程度)基材原料を加熱すると、基材原料に化学反応が生じ、発光素子11と板状部材14との間、ならびに、貫通孔23の内部に金属酸化物(例えばシリカ)基材が生成される。この化学反応により生じる反応ガスおよび溶媒蒸気は、板状部材13の貫通孔23を通って上方の空間に抜けるため、生成される基材に反応ガスや溶媒蒸気の気泡が閉じ込められる現象を防ぐことができる。
【0030】
反応ガス等が貫通孔23を通って抜けることにより、発光素子11と板状部材14との間の空間の基材、および貫通孔23内の基材は、体積が減少し、内部に空洞を生じたり、貫通孔23を充填している基材の上面が板状部材13の上面より下がる場合がある。そこで、蛍光体粒子を分散させていない基材原料を、板状部材14の貫通孔23の上部から滴下し、基材内に空洞が生じている場合には、空洞を充填し、貫通孔23の上部まで基材原料で充填する。貫通孔23の上部から滴下する基材原料は、蛍光体粒子等を分散して発光素子11と板状部材14との間に塗布した基材原料と同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0031】
再び、所定の温度(例えば150℃)で所定時間(例えば5〜60分程度)基材原料を加熱し、化学反応を生じさせて発光素子11と板状部材14との間の基材の空洞、ならびに、貫通孔23の内部に基材を生成し充填する。
【0032】
このように、貫通孔23の上部から基材原料を滴下、加熱する工程を、発光素子11および板状部材14の間および貫通孔23内の空洞が基材で充填され、貫通孔23全体が基材で充填されるまで、必要に応じて繰り返す。これにより、発光素子11および板状部材14の間に、蛍光体粒子が分散された無機材料の基材の波長変換層46を形成することができる。また、貫通孔23内を、蛍光体粒子が分散されていない基材で充填できる。なお、基材原料を加熱した後もほとんど体積減少が生じない場合には、貫通孔23の上部から基材原料を滴下する工程を省略できる。
【0033】
最後に、板状部材11および波長変換層46の周囲に、未硬化の反射部材22の充填し、加熱することにより反射部材22を形成する。以上により発光装置を製造することができる。
【0034】
発光装置の各部の作用について説明する。発光素子11から上方に放射された光は、波長変換層13に入射し、一部が蛍光体によって吸収され所定の波長の蛍光に変換される。蛍光は、蛍光体に吸収されなかった光と混合されて板状部材14の上面から出射される。一方、発光素子11の側面から出射される光は、波長変換層13に入射し、一部が蛍光体によって蛍光に変換され、傾斜面130によって上方に反射され、透明板状部材14の上面から出射される。
【0035】
波長変換層13は、蛍光体粒子13の分散濃度が大きいため、変換効率が高い。波長変換層13の層厚は、板状部材14と発光素子11で挟まれることで一様であり、色ムラが少ない発光装置を提供できる。
【0036】
本実施形態の発光装置は、波長変換層13の基材として、無機材料を用いているため、発光素子11および蛍光体粒子から大光量を出射する装置であっても、波長変換層13の熱による劣化が生じにくく耐熱性の高い発光装置を得ることができる。また、無機材料を用いた基材は、樹脂基材と比較して、熱伝導率が高いため、蛍光体粒子が発する熱を効率よく発光素子11およびサブマウント基板10に伝導して放熱することができる。よって、蛍光体の温度消光を緩和できるとともに、発光素子11の温度による発光効率の低下も防止でき、高効率化と高信頼性が期待できる。
【0037】
(実施形態2)
図3に、実施形態2の発光装置の断面図を示す。この発光装置は、貫通孔23の内部にも、蛍光体粒子が分散された基材が充填されている。他の構成は、実施形態1と同様である。
【0038】
貫通孔23の内部にも蛍光体粒子が分散された基材を充填するため、実施形態2では、貫通孔23の径を、蛍光体粒子の最小粒子径よりも大きく設定する。発光素子11と板状部材14の間の基材にスペーサーを分散している場合には、スペーサーが貫通孔23に入らないように、スペーサーの最小粒径よりも貫通孔23の径を小さくする。
【0039】
板状部材14の貫通孔23内にも蛍光体粒子を分散することにより、波長変換層13の膜厚は、貫通孔23の部分で厚くなる。このため、貫通孔23のある部分と貫通孔23のない部分とで波長変換層13の膜厚が異なるが、貫通孔23を所定の間隔で一様に配置し、間隔や貫通孔23のサイズや配置を適切に設計することにより、巨視的には波長変換層13全体の膜厚が均一になり、色むらを生じない。
【0040】
また、貫通孔23が配置されている領域は、実質的に波長変換層13の膜厚が厚くなることを利用して、板状部材14の周縁部で発生する色ムラをより低減することもできる。具体的には、図4に示すように、貫通孔23を板状部材14の中央部の領域にのみ配置し、所定の幅の周縁部領域41には貫通孔23を設けない構成する。図1および図3に示した発光装置において発光素子11の端部から出射された光は、波長変換層13の傾斜面で反射されて上方に進行するため、発光素子11の中央部から出射され直上に進行する光と比較すると、波長変換層13を通過する距離が長くなり、多くの蛍光を発生させる。そのため、図1および図3に示した構造においては、板状部材14の周縁部は、中央部に比べると蛍光体の発光強度が強くなり、例えば、発光素子11が青色光で蛍光が黄色光である場合、板状部材14の周縁部では中央部の白色光と比較して黄色みを帯びた白色光が出射される。図4に示すように、貫通孔23を板状部材14の中央部の領域にのみ配置することにより、板状部材14の中央部領域のみ波長変換層13の膜厚が実質的に厚くなり、中央部領域から発せられる蛍光の割合を増加させることができる。よって、周縁部領域41での蛍光の発光強度と同等程度に、板状部材14の中央部の蛍光の発光強度を増加させることができ、板状部材14の主平面方向についての発光色の色むらをより低減することができる。
【0041】
貫通孔23を配置しない周辺部領域41の幅は、例えば500μm以下とする。
【0042】
実施形態2において、他の構成と作用、ならびに、製造方法は、実施形態1と同様であるので説明を省略する。
【0043】
(実施形態3)
実施形態3として、板状部材14の上面に無機材料を含む基材層を配置した発光装置の3種類の例を図5〜7に示す。図5は、実施形態1の図1の発光装置の板状部材14の上面を、無機材料を含む基材層51で覆った構成である。基材層51には、蛍光体粒子は含有されていない。図6および図7は、実施形態2の図3の発光装置の板状部材14の上面を、無機材料を含む基材層51または52で覆った構成である。図6の基材層51には、蛍光体粒子が含有されておらず、図7の基材層52には、蛍光体粒子が含有されている。
【0044】
図5〜7のように、板状部材14の上面に無機材料を含む基材層51または52を配置することにより、板状部材14の上面と貫通孔23内の基材の上面との微小な高さの差に起因する微細な凹凸を基材層51または52で覆って平坦にすることができる。よって、板状部材14の上面で光が散乱するのを防止することができる。
【0045】
また、図7のように、基材層52に蛍光体粒子を分散した場合には、基材層52においても波長変換を生じさせることができる。この場合、基材層52の膜厚を図7のように中央部で厚くすることにより、図4の板状部材14を用いた場合と同様の効果を得ることができる。
【0046】
さらに、基材層51または52の表面の曲面を設計することにより、レンズ効果を発揮させることができる。基材層51または52に光散乱材等の光学微粒子を分散させることにより、基材層51または52に光散乱等の光学特性を発揮させることも可能である。
【0047】
図5図7の基材層51は、実施形態1で説明した製造工程において、貫通孔23の上部から基材原料を滴下する際に、貫通孔23からあふれて盛り上がるように基材原料を滴下することにより形成することができる。また、図7の基材層52を形成する場合は、貫通孔23から滴下する基材原料に、蛍光体粒子を分散させておいてもよい。
【0048】
(実施形態4)
上述の実施形態1〜3に示す発光装置の板状部材14に代えて、貫通孔23の径が厚さ方向について変化している板状部材を用いることも可能である。貫通孔23の径が厚さ方向に直線的に変化している板状部材14の例を図8(a)、(b)に示す。図8(a)は、貫通孔23の発光素子11側の開口径が、板状部材14の上面側の開口径よりも小さい例である。図8(b)は、貫通孔23の発光素子11側の開口径が、板状部材14の上面側の、開口径よりも大きい例である。図8(a)、(b)は、いずれも貫通孔23の径が直線的に変化しているが、曲線状や階段状に変化していてもよい。
【0049】
板状部材14の貫通孔23の径が厚さ方向について異なる場合、発光素子11側(波長変換層13側)の開口径の大きさを所定の大きさに定めることにより、貫通孔23内に蛍光体粒子を分散するかどうかを決定することができる。例えば、貫通孔23の発光素子11側の開口径を、蛍光体粒子の最小径よりも小さく設計することにより、実施形態1のように貫通孔23内に蛍光体粒子が分散されていない発光装置を得ることができる。また、貫通孔23の発光素子11側の開口径を、蛍光体粒子の最小径よりも大きく設計することにより、実施形態2のように貫通孔23内にも蛍光体粒子を分散した発光装置を得ることができる。また、いずれの場合も、貫通孔23の発光素子11側の開口径が、スペーサーの最小粒径よりも小さいことが望ましい。
【符号の説明】
【0050】
10…サブマウント基板、11…発光素子、12…バンプ、13…波長変換層、14…板状部材、21…枠、22…反射部材、23…貫通孔、41…外縁部の領域、51…無機材料を含む基材の層、52…無機材料を含む基材の層(蛍光体粒子分散)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8