特許第5941308号(P5941308)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5941308-内視鏡の光量調整機構 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5941308
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月29日
(54)【発明の名称】内視鏡の光量調整機構
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/06 20060101AFI20160616BHJP
   G02B 23/26 20060101ALI20160616BHJP
【FI】
   A61B1/06 A
   G02B23/26 B
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-70346(P2012-70346)
(22)【出願日】2012年3月26日
(65)【公開番号】特開2013-198694(P2013-198694A)
(43)【公開日】2013年10月3日
【審査請求日】2015年1月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100147762
【弁理士】
【氏名又は名称】藤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】戸澤 栄司
【審査官】 佐藤 高之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−305007(JP,A)
【文献】 特開平02−285320(JP,A)
【文献】 特開平08−195904(JP,A)
【文献】 特開2000−171725(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00−1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源の出射光がスコープ先端まで導かれる光路上に配置され、光源側に設けられた偏光板である第1の平板と、前記スコープ側に設けられた偏光板である第2の平板と、
前記第1または第2の平板を光軸周りに回転させる回転操作によって、前記光源の前記スコープに対する前記光軸方向の動きを規制するとともに、前記第1および第2の平板を透過する光量を調整可能である光量調整手段とを備えることを特徴とする携帯内視鏡の光量調整装置。
【請求項2】
光源の出射光がスコープ先端まで導かれる光路上に配置される、光源側に設けられた第1の平板と、前記スコープ側に設けられた第2の平板と、
前記第1または第2の平板を光軸周りに回転させる回転操作によって、前記光源の前記スコープに対する前記光軸方向の動きを規制するとともに、前記第1および第2の平板を透過する光量を調整可能である光量調整手段とを備え、前記第1および第2の平板が光を透過する透過部と遮断する遮光部とが交互に縞状に形成されることを特徴とする携帯内視鏡の光量調整装置。
【請求項3】
前記第1の平板が前記光源に設けられ、前記第2の平板が前記スコープに設けられることを特徴とする請求項1または2に記載の携帯内視鏡の光量調整装置。
【請求項4】
前記光源の本体を回転させることにより、前記回転に連動して前記第1の平板が回転することを特徴とする請求項3に記載の携帯内視鏡の光量調整装置。
【請求項5】
前記第2の平板が前記スコープと前記光源との連結部に設けられることを特徴とする請求項3に記載の携帯内視鏡の光量調整装置。
【請求項6】
前記第2の平板が前記スコープの先端部に備えられることを特徴とする請求項3に記載の携帯内視鏡の光量調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡の光源装置に設けられる光量調整機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯内視鏡において、光量調整機構を備える光源装置が知られている(特許文献1)。この光量調整機構における光量の調整は、電気回路の制御によって行われる。この電気回路には、可変抵抗、複数のフィラメント、電流経路切替スイッチ等の部品が設けられ、例えば光量調整ダイヤルを回すことによって、可変抵抗の抵抗値が変更され、光量が調整される。電気回路を用いない調整機構として、機械的構成の絞り機構を備えるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−171725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような電気回路を用いた光量調整機構には、多くの電子部品が必要となり、また、絞り機構は機械的構成が複雑で部品数も少なくない。このため、製造工程が増加するという欠点があった。また、光量を調整するとき光量調整ダイヤルを回すが、処置中に即座に小さな操作ダイヤルを適切な位置に停止させることは難しい。
【0005】
そこで、本発明は、簡単な構成で、かつ、操作性の良い光量調整機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る内視鏡の光量調整装置は、光路上に、偏光板である第1および第2の平板と、第1または第2の平板を光軸周りに回転させて、第1および第2の平板を透過する光量を調整する光量調整手段とを備えることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る内視鏡の光量調整装置は、光路上に、光を透過する透過部と遮断する遮光部とが交互に縞状に形成される第1および第2の平板と、第1または第2の平板を光軸周りに回転させて、第1および第2の平板を透過する光量を調整する光量調整手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
また、第1の平板が内視鏡の光源装置に設けられ、第2の平板が内視鏡のスコープに設けられることが好ましい。
【0009】
さらに好ましくは、光源装置の全体を回転させることにより、回転に連動して第1の平板が回転する。
【0010】
また、第2の平板がスコープと光源装置との連結部に設けられることが好ましい。
【0011】
さらに好ましくは、第2の平板がスコープの先端部に備えられる。
【0012】
また、第1および第2の平板が内視鏡の光源装置に設けられることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、簡単な構成で、かつ、操作性の良い光量調整機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1の実施形態を適用した携帯内視鏡の模式図である。
図2】本発明の第1の実施形態において、(a)は本発明の実施形態を適用した携帯内視鏡の光源装置の部分破断図であり、(b)は支持部の円弧状ガイド溝に沿って切断した断面図であり、(c)は支持部材のガイド溝部分を示す展開図である。
図3】本発明の第1の実施形態において、(a)は偏光板のガイドピンが初期位置にあるときの図であり、(b)は偏光板のガイドピンが最大光量位置にあるときの図である。
図4】本発明の第2の実施形態において、(a)は偏光板のガイドピンが初期位置にあるときの図であり、(b)は偏光板のガイドピンが最大光量位置にあるときの図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の第1の実施形態について図面を参照して説明する。図1を参照すると、携帯内視鏡10は、光源装置12とスコープ13を有する。スコープ13は、スコープ本体15と、連結部固定部36と、連結部16とを有する。光源装置12の本体部分である本体部20は、連結部固定部36において、スコープ本体15に連結され、連結部16が嵌着される。光源装置12から出射された光は、スコープ本体15内のライトガイド(図示せず)を通ってスコープ先端部18から被観察部を照射する。光源装置12は、本体部20内に電池(図示せず)に接続されたLED22(図2参照)を有し、LED22は電源スイッチ24が押下されることによって点灯あるいは消灯する。
【0016】
図2を参照し、光源装置12の機械的な構造を説明する。本体部20内には、電池(図示せず)が収容される。また本体部20の連結部固定部36とは反対側にはLED22が設けられる。連結部固定部36側に固定された中間部材26には、電池とLED22の端子とに接触する端子が格納される。中間部材26には、レンズユニット格納部材28が接着固定される。レンズユニット格納部材28には円筒部材30が嵌着固定され、円筒部材30の内壁面にはレンズユニットが取り付けられる。
【0017】
連結部固定部36は筒状であり、スコープ本体15に固定される。ライトガイド32を有する支持部34は連結部固定部36内に嵌着される。連結部16は、支持部34と連結部固定部36との継ぎ目を保護するために嵌着される。
【0018】
次に、支持部34に対するレンズユニット格納部材28の取付構造について説明する。図2(b)及び(c)に示されるように、支持部34の周方向に沿って、約160度の円弧状ガイド溝SRが形成される。円弧状ガイド溝SRの端部には、直線状ガイド溝SLが連設され、支持部34の本体部20側の端部に開口している。格納部材28に設けられたガイドピン40は、直線状ガイド溝SLに挿入されて、円弧状ガイド溝SRに当接するところまで差し込まれることにより、支持部34とレンズユニット格納部材28とが取付けられる。
【0019】
本体部20は、中間部材26と格納部材28と円筒部材30と一体的に結合される。したがって、本体部20が回転されるとき、レンズユニット格納部材28に設けられたガイドピン40は円弧状ガイド溝SRに沿って回転される。ガイドピン40は、円弧状ガイド溝SRのガイド溝端SEに当接するまで回転可能である。すなわち、ガイドピン40は、初期位置Pを0度とすると、約160度回転移動された移動位置Qにおいてガイド溝端SEに当接する。ガイドピン40の回転角度は、円弧状ガイド溝SRに沿って印された角度表示部41によって確認可能である。
【0020】
次に、図2及び図3を参照して、第1の実施形態における光量調整装置(光量調整手段)について説明する。LED22からの光の光路上に、第1の偏光板42(第1の平板)と第2の偏光板44(第2の平板)が設けられる。第1の偏光板42は、円筒部材30内に設けられたレンズ群のうち最も先端にあるレンズに密着する。第2の偏光板44は、連結部固定部36が設けられる位置において、支持部材34に嵌着される。すなわち、第1の偏光板42は本体部20とともに回転するが、第2の偏光板44は回転しない。
【0021】
第1および第2の偏光板42、44は、図3に示されるようにLED22からの光の光路L上に配置される。本体部20が初期位置にあるとき、ガイドピン40は図2(b)(c)において実線で示すように初期位置Pにある。初期位置Pにおいて、図3(a)のように第1および第2の偏光板42、44は、各々の透過光の波面が互いに垂直になるように設けられる。すなわち、第1の偏光板42は水平偏波である水平光RHのみを通し、第2の偏光板44は垂直偏波である垂直光RVのみを通す。したがって、LED22からの光は、第1の偏光板42を通って水平光RHのみになった後、第2の偏光板44において遮られる。その結果、ライトガイド32に到達する光量は実質的に0である。すなわち、スコープ先端部18から照射される光量は最も少なく、被観察部は最も暗い状態である。
【0022】
本体部20が90度回転されると、ガイドピン40は図2(b)(c)において破線で示される最大光量位置Rに停止される。本体部20の回転に連動して、第1の偏光板42が90度回転する。最大光量位置Rにおいて、図3(b)のように偏光板42と偏光板44とは、各々の透過光の波面が互いに平行になる。このとき、LED22からの光は、第1の偏光板42を通って垂直光RVのみになった後、この垂直光RVの全てが第2の偏光板44を透過する。その結果、ライトガイド32に到達する光量は最大になる。すなわち、スコープ先端部18から照射される光量は最も多く、被観察部は最も明るい状態である。
【0023】
本体部20、すなわち、ガイドピン40が、初期位置Pから最大光量位置Rまで回転される間、ライトガイド32に到達する光量は最小から最大まで徐々に増加する。換言すれば、円弧状ガイド溝SRは周方向に最低90度設けられれば、光量は最小から最大まで調整可能である。本実施形態においては、周方向に約160度の溝が設けられる。これは、何らかの原因により丁度90度で最大光量が得られない場合を想定して遊びを設けたためである。
【0024】
このように、第1の実施形態は、従来の携帯内視鏡に偏光板42、44を追加するだけの簡単な構成である。また、光量調整ダイヤルを別に設けなくとも、本体部20を回転させることで光量調整が可能なため操作性が良い。このような構成によって、簡単な構成で、かつ、操作性の良い光量調整装置を提供することができる。
【0025】
次に、図4を参照して、本発明の第2の実施形態について説明する。第1の実施形態と異なるのは、偏光板42、44がスリット板72、74に置き換えられることである。第1のスリット板72(第1の平板)、第2のスリット板74(第2の平板)は、図4に示されるように光を透過する透過部76と遮断する遮光部78とが交互に縞状に形成される。本実施形態では、透過部76と遮光部78との面積は等しく、スリット板72、74は、各々、入射光の50%の光を透過する。
【0026】
本体部20、すなわち、ガイドピン40が初期位置Pにあるとき、図4(a)のように、第1のスリット板72は、遮光部78が水平になるように設けられ、第2のスリット板74は、遮光部78が垂直になるように設けられる。
【0027】
このとき、LED22と第1のスリット板72との間における初期仮想平面ROにおける光量を100とする。LED22からの光は、第1のスリット板72によって50%遮られ、第1のスリット板72と第2のスリット板74との間の中間仮想平面RIに表されるような光となる。すなわち、中間仮想平面RIにおける光量は50である。次に、この光は第2のスリット板74によって50%遮られ、LED22の反対側における最終仮想平面RLに表されるような光となる。すなわち、最終仮想平面RL上の光量は25である。
【0028】
このように、第1のスリット板72と第2のスリット板74の遮光部78の向きが垂直であるとき、LED22から照射された光が遮光部78によって遮られる面積は、相対的に最も大きい。その結果、ライトガイド32(図2参照)に到達する光量は相対的に最も少ない。すなわち、スコープ先端部18から照射される光量は最も少なく、被観察部は最も暗い状態である。
【0029】
次に、本体部20が90度回転されると、ガイドピン40は最大光量位置Rに停止される。最大光量位置Rにおいて、図4(b)のように第1のスリット板72は、遮光部78が垂直になるように停止される。第2のスリット板74は固定されているため、第2のスリット板74の遮光部78は、垂直のままである。
【0030】
このとき、LED22からの光は、第1のスリット板72によって50%遮られ、第1のスリット板72と第2のスリット板74との間の中間仮想平面RIに表されるような光となる。すなわち、中間仮想平面RIにおける光量は50である。
【0031】
次に、この光は第2のスリット板74を通るが、ここで、第1のスリット板72と第2のスリット板74との遮光部78の向きは同じである。したがって、光は中間仮想平面RI上の光量を保ったまま、LED22の反対側における最終仮想平面RLに表されるような光となる。つまり、最終仮想平面RL上の光量は、中間仮想平面RI上の光量と等しく、50である。
【0032】
このように、第1のスリット板72と第2のスリット板74の遮光部78の向きが同じであるとき、遮光部78によって遮られる面積は相対的に最も小さい。その結果、ライトガイド32(図2参照)に到達する光量は相対的に最も多い。すなわち、スコープ先端部18から照射される光量は最も多く、被観察部は最も明るい状態である。また、第1の実施形態と同様に、本体部20、すなわち、ガイドピン40が初期位置Pから最大光量位置Rまで回転される間、ライトガイド32に到達する光量は最小から最大まで徐々に増加する。
【0033】
以上のように、第2の実施形態における構成もまた、従来の携帯内視鏡にスリット板72、74を追加するだけの簡単な構成である。この構成によって、第1の実施形態と同様に、簡単な構成で、かつ、操作性の良い光量調整機構を提供することができる。また、第2の実施形態では、偏光板という特殊な部材を用いずとも第1の実施形態と同様の効果が得られるという利点がある。
【0034】
なお、第1の実施形態における偏光板の代わりに、偏光フィルム、または、光を透過する透過部と遮断する遮光部とが交互に縞状にプリントされたフィルムが用いられても良い。これにより、第1及び第2の実施形態と同様の効果が得られる。
【0035】
また、第1の実施形態における第2の偏光板44はスコープの先端部18に設けられても良い。なぜならば、LED22からの光が、先端部18から照射されるまでの間に、第1の偏光板42と第2の偏光板44とを通過すれば、同様の効果が得られるからである。例えば、第1および第2の偏光板42、44が共に光源装置12に設けられても良い。同様に、第2の実施形態においても、第2のスリット板74が、スコープの先端部18に設けられても良く、第1及び第2のスリット板72、74が共に光源装置12に設けられても良い。
【符号の説明】
【0036】
10 携帯内視鏡
12 光源装置
13 スコープ
16 連結部
18 スコープ先端部
20 本体部(本体)
22 LED
36 連結部固定部
42 第1の偏光板(第1の平板)
44 第2の偏光板(第2の平板)
72 第1のスリット板(第1の平板)
74 第2のスリット板(第2の平板)
76 透過部
78 遮光部
L 光路(光軸)
図1
図2
図3
図4