特許第5941310号(P5941310)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5941310海中構造物の転倒及び滑動を防止する方法
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  • 特許5941310-海中構造物の転倒及び滑動を防止する方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5941310
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月29日
(54)【発明の名称】海中構造物の転倒及び滑動を防止する方法
(51)【国際特許分類】
   E02B 3/06 20060101AFI20160616BHJP
【FI】
   E02B3/06 301
【請求項の数】2
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2012-72557(P2012-72557)
(22)【出願日】2012年3月27日
(65)【公開番号】特開2013-204265(P2013-204265A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2015年3月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000195971
【氏名又は名称】西松建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108327
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 良和
(72)【発明者】
【氏名】福本 正
【審査官】 苗村 康造
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭54−102037(JP,A)
【文献】 実開昭64−025638(JP,U)
【文献】 特開昭61−049008(JP,A)
【文献】 特開昭61−211409(JP,A)
【文献】 特開昭59−138607(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 1/00〜 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
海中に設置される堤体構造物の天端に、天端形状に合致した鋼製治具を被せて固定し、堤体構造物の少なくとも外洋側に海底面を掘削して形成した凹所にほぼ全体を埋め込んであるシンカーを設け、鋼製治具に設けた固定具とシンカーを連結具で連結することによって堤体構造物の転倒・滑動を防止する方法。
【請求項2】
請求項1において、シンカーを第2シンカーと連結固定する堤体構造物の転倒・滑動を防止する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
護岸や防波堤などの海中構造物が、波浪や津波によって転倒したり、滑動するのを防止する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、海中に設置されたケ−ソン護岸等の構造物には、潮流や波浪、更には津波による転倒・滑動を抑止して安定性を確保するため、以下の方法が採用されている。(図3参照)
(1)構造物の重量を増大させて基礎マウンドとの間の摩擦力を増大させて滑動力に抵抗する。
(2)護岸構造物と基礎マウンドとの間に摩擦を増大させるマット51を設置する。
(3)構造物底面より基礎マウンド内に脚を突出させて滑動力に抵抗させる。
(4)構造物の背面側に滑動を阻止するブロック等を積み重ねるなどして抵抗を大きくするなどしている。
(5)基礎マウンド上の構造物の前後にブロック52や巨石を敷き並べて転倒や滑動に抵抗させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−84868号公報
【特許文献2】特開2004−116130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、滑り止めのマットが経年劣化した場合、堤体構造物の重量が大きなものであるため、マットを更新することは事実上不可能である。堤体構造物が巨大津波等によって転倒したり、滑動すると、その巨大な重量のため元の位置に戻すといった復旧は困難であり、その後の堤体構造物の波浪制御機能が極端に低下し、堤体で守られた地域を危険状態に曝すこととなる。
本発明は、巨大津波等による堤防等の堤体構造物の転倒・滑動を抑止すると共に、復旧を容易にするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
防波堤などの堤体構造物の外海側、または、外海側と内海側の両側にシンカーを設置し、堤体構造物をシンカーに連結固定することによって転倒・滑動を抑止するものであり、堤体構造物の天端に定着装置を被せて固定するようにしたものである。
定着装置は、堤体構造物天端に鋼製治具を被せて堤体構造物に固定するものであり、治具にはシンカーに連結固定するための固定装置が設けてある。
【発明の効果】
【0006】
ケーソン等の堤体構造物に波浪や津波が作用して堤体構造物が転倒もしくは滑動させられようとした場合でも、堤体構造物の天端に固定された鋼製治具を介して堤体構造物はシンカーに連結固定されており、転倒・滑動が抑止される。
また、大きな力が作用しても、堤体構造物がシンカーに連結固定されているので滑動量が抑えられる。さらに、シンカーとの連結部材が破断しても再連結が容易であり、シンカーに反力を取って堤体構造物の位置修正が可能であるので経済的に復旧させることができる。
鋼製治具を堤体構造物の天端に被せて固定するものであり、新設・既設を問わず設置可能であるため、既設の防波堤にも鋼製治具を追加構造物として付加することが可能であり経済的に堤防を強化することが可能である。
また、設置する地域の海象条件に応じてシンカーの大きさ、位置及び連結方法を変えることによって、効率的に堤体構造物の転倒・活動防止ができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施例の側面図。
図2】本発明の実施例の平面図。
図3】従来の護岸の側面図。
【符号の説明】
【0008】
1 堤体構造物(堤防、護岸)
2、20 シンカー
3 鋼製治具
4 連結体
5 基礎マウンド
6 海底面
61 凹所
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1においてケ−ソンからなる堤体構造物(堤防)1が基礎マウンド5の上に設置されている。この堤防1の天端に、天端形状に合致した鋼製治具3を被せ、堤防1を構成するケーソンにアンカー等の固定具によって強固に固定して両者を一体化してある。鋼製治具3の天端または側面には、シンカー2と連結するためのチェーン等の連結体4を固定する固定具31が設けてある。
堤防1の外海側のみ、または外海側と内海側の両側にコンクリート製の直方体等のシンカー2が海底面6を掘削して形成した凹所61にほぼ全体を埋め込んである。シンカー2の頂部または稜線部には、シンカー2と鋼製治具3を連結するチェーン等の連結体4を固定するための連結具21が設けてある。
【0010】
外海側のシンカー2の重量は、堤体構造物1に作用する波や津波、及び潮力などに基づく外力を想定し、堤体構造物1に連結するシンカー2の数などによって決定するものであるが、数十トン〜数百トンの重量とする。
内海側のシンカー20の重量は、津波等の引き波による外力に基づいて決めるのである。従って、引き波が小さく堤体構造物1の重量で耐えられる場合は、内海側のシンカー20を設ける必要がない。
【0011】
シンカー2に対して更に第2シンカー25を設置することによってシンカー2を第2シンカー25によって定着し、堤体構造物を2段に定着することによって、堤体構造物の転倒・滑動防止効果を増大させることも可能である。
図1
図2
図3