(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記タイロッドエンドと前記ナックルアームとの先端部の一方にコ字溝が形成され、他方の平板状先端部が該コ字溝に挿通されていると共に、該他方の先端部に前記外筒が嵌合され、
前記内筒に挿通された連結部材が前記一方の先端部に締結されている
ことを特徴とする請求項3記載の車両のステアリング装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に基づいて本発明の一実施形態を説明する。
【0013】
[第1実施形態]
図1〜
図3に本発明の第1実施形態を示す。
図1の符号1はエンジンで、図示しないエンジンルームに横置きされており、このエンジン1の右側に変速機2が連結されている。更に、この変速機2から延出されている出力軸が差動装置(図示せず)を介して、車幅方向の左右へ延出するアクスル軸3に各々連設され、このアクスル軸3の軸端に固設されているハブ(図示せず)に操舵輪としての前輪4が固設されている。
【0014】
又、アクスル軸3の前方に、油圧式パワーステアリングのギヤボックス(以下、「パワーステアリングギヤボックス」と称する)6がアクスル軸3と略平行に配設されており、このパワーステアリングギヤボックス6の車幅方向の左右両端からタイロッド7が各々延出され、この各タイロッド7の先端部にタイロッドエンド8が各々連結されている。
【0015】
更に、このタイロッドエンド8が、アクスル軸3を介して前輪4を回動自在に支持するナックルハウジング9から斜め車体前方へ延出するナックルアーム10に、ボールジョイント部材11を介して連設されている。尚、車幅方向左右に配設されているタイロッド7、タイロッドエンド8、ナックルアーム10は、同一の構成で略対称形状を有しているため、以下においては、車幅方向左側の構成についてのみ説明し、車幅方向右側の構成については説明を省略する。
【0016】
図2に示すように、タイロッドエンド8とナックルアーム10とを連設するボールジョイント部材11は、タイロッドエンド8に一体形成されたボールソケット12とボールスタッド13とボールシート14とフランジ付ナット15とを備えている。更に、ボールスタッド13は、テーパ軸部13aと、その下端に一体形成されたボール部13bとテーパ軸部13aの上端に形成されたねじ部13cをとを有している。
【0017】
一方、ボールシート14はボールソケット12に装着されると共に、ボールスタッド13のボール部13bを揺動自在に支持するシート面14aが形成されている。このシート面14aにボール部13bが支持されるボールスタッド13のテーパ軸部13aが、ナックルアーム10の先端部10aに穿設されたテーパ孔18に嵌合され、このナックルアーム10の先端部10aから上方に突出されたねじ部13cがフランジ付ナット15にて締結されている。
【0018】
又、ボールスタッド13のボールソケット12の上縁部12aとナックルアーム10の先端部10aの底面とに露呈されている部位がダストブーツ16で覆われており、その上下部が、ボールソケット12の上端縁部とナックルアーム10の先端部10a底面とに固設されている。
【0019】
又、このダストブーツ16にはコイルワイヤ17がインサート成形されている。このコイルワイヤ17はある程度のねじりばね性を有している。従って、ダストブーツ16に対してねじり方向に荷重が印加された場合、ばね変形してねじり方向のトルク伝達を緩和する。尚、このコイルワイヤ17をインサート成形するダストブーツ16が、本発明の、軸周方向にばね変形自在な剛性部に相当する。
【0020】
次に、このような構成による本実施形態の作用について説明する。運転者がステアリングホイールを操作すると、その操舵トルクがパワーステアリングギヤボックス6からアシストされた状態で、タイロッド7を移動させ、ボールスタッド13を介してナックルアーム10の先端部10aを右方向、或いは左方向に回動させて前輪4を転舵させる。
【0021】
前輪4が転舵するに際し、タイロッドエンド8とナックルアーム10の先端部10aとの間にはねじれが生じるため、タイロッドエンド8のボールソケット12とナックルアーム10の先端部10aとに上下面が固着されているダストブーツ16に、ねじれ方向の荷重が発生する。
【0022】
このダストブーツ16には、ある程度のねじりばね性を有するコイルワイヤ17がインサートされているため、ダストブーツ16にねじり荷重が発生すると、コイルワイヤ17がねじり方向にばね変形して、タイロッドエンド8からの操舵トルクを、このダストブーツ16からナックルアーム10の先端部10a側に伝達する。
【0023】
従来のダストブーツは、単にボールスタッド13のボール部13bやテーパ軸部13aに異物が込み込まれることを防止するためのものであるため、ねじり剛性は考慮されていない。従って、例えば、タイロッドエンド8とナックルアーム10の先端部10aとの間のねじり荷重に対して、ボールスタッド13のボール部13bとボールソケット12に保持されているボールシート14のシート面14aとの間の摩擦力が飽和点P(
図3参照)に達した瞬間、ボールスタッド13のボール部13bに、一瞬、ねじり方向の滑りが生じ、
図3に細線で示すように、操舵トルクが変化しても前輪4が転舵されない不感帯域が生じる。
【0024】
これに対し、本実施形態によるダストブーツ16は、その下面と上面とが、ボールソケット12とナックルアーム10の先端部10aとに固設されており、しかも、このダストブーツ16に、ねじりばね性を有するコイルワイヤ17がインサート成形されているため、ボールスタッド13に滑りが生じた瞬間、コイルワイヤ17がねじり方向にばね変形し、ボールスタッド13の滑りを抑制する。
【0025】
その結果、
図3に示すように、ボールスタッド13のボール部13bとボールシート14のシート面14aとの間の摩擦力が飽和点Pに達して、ボールスタッド13に滑りが生じようとしても、コイルワイヤ17のねじり方向へのばね変形により、その滑りが抑制されるため、切り返し時における運転者の操舵トルクと車両挙動との非線形性が緩和される。そのため、切り返しに際し、良好な操舵感のつながりを得ることができる。
【0026】
又、従来のダストブーツに代えて、本実施形態によるダストブーツ16を装着するだけであるため、高い汎用性を得ることができる。更に、構造が簡単であり、操舵系に大がかりな部品を追加する必要がなく、低コストで製造することができる。
【0027】
[第2実施形態]
図4に本発明の第2実施形態を示す。尚、第1実施形態と同一の構成部分には同一の符号を付して説明を簡略化し、或いは省略する。
【0028】
上述した第1実施形態では、従来のダストブーツに代えて、コイルワイヤ17がインサート成形されているダストブーツ16を採用したが、本実施形態では、従来のダストブーツに代えて、ダスト機能を有するダストブッシュ21を装着したものである。
【0029】
このダストブッシュ21は、例えば高硬度の強化ゴム製で、トーションバーと同等のねじり剛性を有しており、その下面21aと上面21bとが、ボールソケット12の上縁部12aとナックルアーム10の先端部10aの下面とに圧着されている。尚、このダストブッシュ21が、本発明の、軸周方向にばね変形自在な剛性部に対応している。
【0030】
すなわち、ボールスタッド13のナックルアーム10の先端部10aから突出されているねじ部13cをフランジ付ナット15で締付けると、ダストブッシュ21の下面21aと上面21bとがボールソケット12とナックルアーム10の先端部10aにプリロードを付与し、弾性変形された状態で固定される。
【0031】
このような構成では、ダストブッシュ21の下面21aと上面21bとが、ボールソケット12の上縁部12aとナックルアーム10の先端部10aの下面とに、プリロードを付加した状態で圧着されているため、内部に異物が入り込むことが無く、従来のダストブーツと同等に機能させることができる。
【0032】
又、ダストブッシュ21がトーションバーと同等のねじり剛性を有しているので、運転者がステアリングホイールを切り返した際に、ボールスタッド13のボール部13bとボールシート14のシート面14aとの間の摩擦力が飽和点P(
図3参照)に達して、ボールスタッド13に滑りが生じようとしても、ダストブッシュ21のねじり方向へのばね変形により、その滑りが抑制される。そのため、切り返し時における運転者の操舵トルクと車両挙動との非線形性が緩和され、前述した第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0033】
[第3実施形態]
図5、
図6に本発明の第3実施形態を示す。尚、第1実施形態と同一の構成部分には同一の符号を付して説明を簡略化し、或いは省略する。
【0034】
上述した第1、第2実施形態では、従来のダストブーツに代えて、新たなダストブーツ16、或いはダストブッシュ21を装着した態様について説明したが、本実施形態のジョイント部材11’では、連結部材としてのスタッド13’をタイロッドエンド8の先端部8aに固設し、テーパ軸部13aを、ナックルアーム10の先端部10aに嵌着したジョイントブッシュ26にて保持するようにしたものである。スタッド13’はテーパ軸部13aを有し、このテーパ軸部13aの先端にねじ部13cが螺設されている。
【0035】
一方、ナックルアーム10の先端部10aに穿設したブッシュホルダ孔10cにジョイントブッシュ26が嵌着されている。
図6に示すように、このジョイントブッシュ26は、金属製の内筒27及び外筒28と、ブッシュ本体29とを有している。又、ブッシュ本体29が内筒27と外筒28との間に加硫成形されており、これにより内外筒27,28とブッシュ本体29とが一体化されている。
【0036】
外筒28はブッシュホルダ孔10cに嵌合されて固着されている。又、内筒27の内周に、スタッド13’のテーパ軸部13aに嵌合するテーパ孔27aが形成されている。更に、ブッシュ本体29はトーションバーと同等のねじり剛性を有すると共に径方向へ変形自在にされている。尚、このブッシュ本体29が本発明の軸周方向にばね変形自在な剛性部に対応している
ナックルアーム10の先端部10aに穿設されているブッシュホルダ孔10cに嵌合されているジョイントブッシュ26のテーパ孔27aに、スタッド13’のテーパ軸部13aが装着されており、ねじ部13cがナックルアーム10の先端部10aの上面に突出し、このねじ部13cにスペーサ30を介してフランジ付ナット15が螺入されている。又、フランジ付ナット15のフランジ15aの外径は、ブッシュホルダ孔10cの径よりも大きく形成されている。
【0037】
このスペーサ30の内径と外径は、内筒27の上端面の内径と外径とほぼ同じか、内径はやや大きく、外径はやや小さく形成されている。尚、このスペーサ30は内筒27と一体に形成されていても良い。
【0038】
このような構成では、タイロッドエンド8の先端部8aに伝達された操舵トルクは、スタッド13’を介してナックルアーム10に伝達され、このナックルアーム10の先端部10aを右方向、或いは左方向に回動させて前輪4(
図1参照)を転舵させる。
【0039】
スラローム走行等において、運転者がステアリングホイールの切り返しを行うと、ナックルアーム10の先端部10aが左右に揺動するため、スタッド13’とナックルアーム10の先端部10aとの間にはねじれが生じ、更に、ナックルアーム10の先端部10aが、スタッド13’に対して傾斜する。この先端部10aの傾斜はジョイントブッシュ26のブッシュ本体29がばね変形することにより吸収される。
【0040】
その際、ナックルアーム10の先端部10aとフランジ付ナット15との間にスペーサ30が介装されているので、スタッド13’が傾斜しても、フランジ付ナット15がナックルアーム10の先端部10a表面に押し付けられる、いわゆるこじりを防止することができる。尚、この場合、ナックルアーム10の先端がスタッド13’に対して大きく傾斜した場合は、フランジ付ナット15のフランジ15aがナックルアーム10の先端部10a上面に接触されるため、ブッシュ本体29の大きな変形を防止することができる。
【0041】
又、このブッシュ本体29がトーションバーと同等のねじり剛性を有しているため、スタッド13’とナックルアーム10の先端部10aとの間にねじれが生じた場合、このブッシュ本体29の軸周方向へのばね変形により吸収され、その後、ねじり荷重が低下するに従いゆっくりと戻される。尚、本実施形態で採用するスタッド13’はタイロッドエンド8の先端部8aに固設されているため、この先端部8aとスタッド13’との間に、従来のような摩擦力が発生することはなく、従って、この摩擦力が飽和することにより生じる滑りが発生することもない。
【0042】
そのため、タイロッドエンド8の先端部8aとナックルアーム10の先端部10aとの位置ずれは、スタッド13’に設けられているブッシュ本体29で吸収することになる。この場合、ブッシュ本体29がトーションバーと同等のねじり剛性を有しているため、タイロッドエンド8からナックルアーム10側へ伝達する操舵トルクが大幅に減衰されたり、大幅な応答遅れが生じたりすることはない。その結果、切り返し時における運転者の操舵トルクと車両挙動との非線形性を緩和することができる。
【0043】
又、フランジ付ナット15のフランジ15aの外径が、ブッシュホルダ孔10cの径よりも大きく形成されているため、ブッシュ本体29に過大なねじり荷重が印加されて破断し、ジョイントブッシュ26の内筒27が脱落した場合であっても、フランジ15aがブッシュホルダ孔10cから抜け落ちることはなく、操舵性を確保することができる。
【0044】
[第4実施形態]
図7に本発明の第4実施形態を示す。尚、第1実施形態と同一の構成部分には同一の符号を付して説明を簡略化し、或いは省略する。
【0045】
上述した第3実施形態では、スタッド13’をタイロッドエンド8の先端部8aに固設した構造としたが、本実施形態のジョイント部材11''では、タイロッドエンド8の先端部8aとナックルアーム10の先端部10aとを連結部材としてのテーパボルト35を用いて連結したものである。
【0046】
タイロッドエンド8の先端部8aには水平方向に貫通するコ字溝8bが形成され、このコ字溝8bに、ナックルアーム10の平板状に形成された先端部10aが挿通されている。この先端部10aは平ほぞ状に形成され、上下に貫通するブッシュホルダ孔10cが穿設されている。このブッシュホルダ孔10cにジョイントブッシュ31が嵌着されている。
【0047】
このジョイントブッシュ31は金属製の内筒32及び外筒33、及び、トーションバーと同等のねじり剛性を有するブッシュ本体34を備え、ブッシュ本体34が内筒32と外筒33との間に加硫成形されて一体化されている。このブッシュ本体34は糸巻きドラム状に形成されており、その両端に形成されたフランジ部34aが外筒33の上下端面に掛止されている。更に、この内筒32の内周にテーパ孔32aが形成されている。尚、このブッシュ本体34が、本発明の、軸周方向にばね変形自在な剛性部に対応している。
【0048】
ナックルアーム10の先端部10aを、タイロッドエンド8のコ字溝8bに装着すると、ジョイントブッシュ31の両端に形成したフランジ部34aの端面が、コ字溝8bの内面に圧接される。タイロッドエンド8の先端部8aの、ジョイントブッシュ31の軸心と同軸上にボルト挿通孔8cが穿設されている。このボルト挿通孔8cにテーパボルト35が挿通され、このテーパボルト35のテーパ軸部35aがジョイントブッシュ31の内筒32に形成されたテーパ孔32aに嵌合され、ねじ部35bが反対側に穿設されているボルト挿通孔8cから突出されてナット15’により締結されている。
【0049】
このような構成では、タイロッドエンド8の先端部8aに伝達された操舵トルクは、テーパボルト35からジョイントブッシュ31を介してナックルアーム10の先端部10aに伝達され、このナックルアーム10を右方向、或いは左方向に回動させて前輪4(
図1参照)を転舵させる。
【0050】
スラローム走行等において、運転者がステアリングホイールの切り返しを行うと、ナックルアーム10の先端部10aが左右に揺動するため、タイロッドエンド8の先端部8aとナックルアーム10の先端部10aとの間にねじれが生じ、更に、ナックルアーム10の先端部10aが、タイロッドエンド8の先端部8aに対して傾斜する。この先端部10aの傾斜は、テーパボルト35のテーパ軸部35aに内筒32のテーパ孔32aが嵌合されているジョイントブッシュ31のブッシュ本体34がばね変形することにより吸収される。
【0051】
又、ブッシュ本体34の両端に形成されたフランジ部34aが、タイロッドエンド8の先端部8aに形成されているコ字溝8bの内壁に圧接されているため、タイロッドエンド8の先端部8aとナックルアーム10の先端部10aとの間にねじれが生じた場合、そのねじれはブッシュ本体29が軸周方向へのばね変形で吸収され、その後、ねじり荷重が低下するに従いゆっくりと戻される。
【0052】
この場合、ブッシュ本体34がトーションバーと同等のねじり剛性を有しているため、タイロッドエンド8からナックルアーム10側へ伝達する操舵トルクが大幅に減衰されたり、大幅な応答遅れが生じたりすることはない。その結果、切り返し時における運転者の操舵トルクと車両挙動との非線形性を緩和することができる。
【0053】
又、ナックルアーム10の先端部10aが、タイロッドエンド8に形成されているコ字溝8bに挿通され、テーパボルト35によりタイロッドエンド8の先端部8aに連結されているため、ブッシュ本体34が過大なねじり荷重を受けて破断しても、タイロッドエンド8とナックルアーム10とが外れることは無く、操舵性を確保することができる。
【0054】
更に、テーパボルト35がタイロッドエンド8と一体に動くため、テーパボルト35のボルト頭が、この先端部8aをこじることはない。
【0055】
[第5実施形態]
図8に本発明の第5実施形態を示す。尚、第4実施形態と同一の構成部分には同一の符号を付して説明を簡略化し、或いは省略する。
【0056】
上述した第4実施形態では、タイロッドエンド8の先端部8aにコ字溝8bを形成し、ナックルアーム10の先端部10aをコ字溝8bに装着したが、本実施形態では、ナックルアーム10の先端部10aにコ字溝10bを形成し、このコ字溝10bに、タイロッドエンド8の、平板状に形成した先端部8aを挿通し、ジョイントブッシュ31、及びテーパボルト35を介して連結させるようにしたものである。
【0057】
すなわち、本実施形態は、上述した第4実施形態と連結構造を逆にしたものである。従って、タイロッドエンド8の先端部8aに、第4実施形態と同一のジョイントブッシュ31を嵌着させるブッシュホルダ孔8dが穿設され、一方、ナックルアーム10の先端部10aには、テーパボルト35を挿通するホルト挿通孔10dが穿設されている。
【0058】
このような構成では、上述した第4実施形態と同様、スラローム走行等において、タイロッドエンド8の先端部8aとナックルアーム10の先端部10aとの間のねじれ、及び、ナックルアーム10の先端部10aのタイロッドエンド8の先端部8aに対する傾斜は、ジョイントブッシュ31のブッシュ本体34がばね変形することにより吸収される。
【0059】
又、ブッシュ本体34の両端に形成されたフランジ部34aが、ナックルアーム10の先端部10aに形成されたコ字溝10bの内壁に圧接されているため、タイロッドエンド8の先端部8aとナックルアーム10の先端部10aとの間に生じるねじれはブッシュ本体29の軸周方向へばね変形で吸収される。この場合、ブッシュ本体34がトーションバーと同等のねじり剛性を有しているため、第4実施形態で説明したように、切り返し時における運転者の操舵トルクと車両挙動との非線形性を緩和させることができる。更に、ブッシュ本体34が過大なねじり荷重を受けて破断しても、タイロッドエンド8とナックルアーム10とはテーパボルト35を介して連結されているため外れることは無く、操舵性を確保することができる。
【0060】
又、テーパボルト35がナックルアーム10の先端部10aと一体に動くため、テーパボルト35のボルト頭が、この先端部10aをこじることはない。
【0061】
[第6実施形態]
図9に本発明の第6実施形態を示す。尚、第1実施形態と同一の構成部分については同一の符号を付して説明を簡略化し、或いは省略する。
【0062】
本実施形態では、タイロッドエンド8のボールソケット12に取付けたボールシート14のシート面14aと、このボールシート14に摺接するボールスタッド13のボール部13bの表面との少なくとも一方に高摩擦層36を形成し、更に、ボール部13bとテーパ軸部13aとの間に、くびれ部13eを形成したものである。
【0063】
その結果、ボールスタッド13にねじれ方向の負荷が印加されると、ボール部13bは高摩擦層36により回動が規制されるため、くびれ部13eのねじれ方向へのばね変形により、タイロッドエンド8の先端部8aとナックルアーム10の先端部10aとのねじれが吸収され、その後、ねじり荷重が低下するに従いゆっくりと戻される。尚、このくびれ部13eが、本発明の、軸周方向にばね変形自在な剛性部に対応している。又、高摩擦層36は、ボールスタッド13がねじり方向の弾性限界に達する前に滑りが生じるような摩擦係数に設定されている。
【0064】
このような構成では、ボールスタッド13がトーションバーとしての機能を有しているため、ボールスタッド13の高摩擦層36の摩擦力が飽和するまでは、ボールスタッド13のばね変形により、運転者の操舵トルクと車両挙動との非線形性を緩和することができる。
【0065】
[第7実施形態]
図10、
図11に本発明の第6実施形態を示す。尚、第6実施形態と同一の構成部分については同一の符号を付して説明を簡略化し、或いは省略する。
【0066】
第6実施形態に示すボールスタッド13はボール部13bとテーパ軸部13aとが一体形成されているが、本実施形態のボールスタッド13''は、ボール部13bとテーパ軸部13aとを分離し、両者を中空軸37で連結したものである。
【0067】
すなわち、
図11に示すように、ボールスタッド13''は、ボール部13bの上部に細径軸部13fが形成され、一方、テーパ軸部13aは、その中途から下端に細径軸部13gが形成され、この細径軸部13gの中途にくびれ部13eが形成されている。更に、細径軸部13gの下部に、ダボ穴13hが、軸廻り方向に複数箇所(本実施形態では2箇所)、等間隔に穿設されている。
【0068】
ボール部13bに形成されている細径軸部13fとテーパ軸部13aに形成されている細径軸部13gとは同径であり、この両細径軸部13f,13gに中空軸37が装着されている。更に、中空軸37の下部が細径軸部13fに固着され、一方、この中空軸37の上部がテーパ軸部13aの細径軸部13gに挿通されている。又、この中空軸37の上部が、テーパ孔18の下部に形成された軸孔部18aに装着されて、軸径方向の移動が規制されている。
【0069】
又、テーパ軸部13aの細径軸部13gに穿設されているダボ穴13hに対応する位置にピン挿通孔37aが穿設されている。テーパ軸部13aの細径軸部13gと中空軸37とは、中空軸37に穿設されているピン挿通孔37aに挿通された連結ピン38を細径軸部13gに穿設されているダボ穴13hに圧入することで固定され、この中空軸37を介してボール部13bとテーパ軸部13aとが連結されている。更に、又、この中空軸37の上端と細径軸部13gの基端との間に空隙が形成されている。
【0070】
このような構成では、ボールスタッド13''のテーパ軸部13aとボール部13bとを分離すると共に、この両者を中空軸37を介して連結したので、タイロッドエンド8からの操舵トルクは、ボール部13bから中空軸37、連結ピン38、細径軸部13g、テーパ軸部13aを介して、ナックルアーム10に伝達される。
【0071】
ボール部13bに固着されている中空軸37が、細径軸部13gに形成されているくびれ部13eの下部に穿設されているダボ穴13hに連結ピン38を介して連結されているので、ボールスタッド13''がねじり荷重を受けると、くびれ部13eがねじれ方向にばね変形して、このねじり荷重を吸収する。
【0072】
その際、細径軸部13gが中空軸37に挿通されており、更に、この中空軸37の上部がナックルアーム10に穿設されているテーパ孔18の下部に形成された軸孔部18aに挿通されているため、くびれ部13eに過大なねじり荷重が印加されて破断した場合であっても、ボールスタッド13''が脱落することはない。その他の効果は、上述した第6実施形態と同様である。
【0073】
[第8実施形態]
図12、
図13に本発明の第8実施形態を示す。本実施形態は、上述した第7実施形態の変形例である。第7実施形態では、中空軸37の上部はテーパ軸部13aに挿通されているだけであるが、本実施形態では中空軸37の上部と細径軸部13gの上部とを連結ピン38で連設したものである。尚、第7実施形態と同一の構成部分については同一の符号を付して説明を簡略化し、或いは省略する。
【0074】
すなわち、中空軸37の上部には複数(本実施形態では2箇所)のピン挿通長孔37bが軸周方向に沿って穿設されており、このピン挿通長孔37bに対応する細径軸部13gにダボ穴13hが穿設されている。又、このピン挿通長孔37bに挿通された連結ピン38aがダボ穴13hに圧入されている。
【0075】
ダボ穴13hに圧入されている連結ピン38aがピン挿通長孔37bに支持されているため、くびれ部13eがねじれ方向にばね変形した際の中空軸37とテーパ軸部13aとの相対移動が許容される。尚、連結ピン38aは中空軸37の外周と同一面か、それよりもやや埋め込まれた位置にある。又、このピン挿通長孔37bにて規制される連結ピン38aの許容回動範囲は、くびれ部13eのねじれ変形が限界に達するよりも長く設定されている。
【0076】
このような構成では、上述した第7実施形態の構成に加えて、中空軸37の上部とテーパ軸部13aの細径軸部13gの上部とを連結ピン38aで連結すると共に、この連結ピン38aの軸周方向へ相対回動をピン挿通長孔37bで許容したので、くびれ部13eに過大なねじり荷重が印加されて破断した場合であっても、ボール部13bとテーパ軸部13aとが分離することはなく、タイロッドエンド8がナックルアーム10から外れることはない。