(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5941343
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月29日
(54)【発明の名称】エレベータ駆動制御装置
(51)【国際特許分類】
B66B 1/34 20060101AFI20160616BHJP
B66B 1/06 20060101ALI20160616BHJP
【FI】
B66B1/34 A
B66B1/06 K
【請求項の数】5
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-132049(P2012-132049)
(22)【出願日】2012年6月11日
(65)【公開番号】特開2013-256343(P2013-256343A)
(43)【公開日】2013年12月26日
【審査請求日】2015年5月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】505356468
【氏名又は名称】パナソニック ホームエレベーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087767
【弁理士】
【氏名又は名称】西川 惠清
(74)【代理人】
【識別番号】100155745
【弁理士】
【氏名又は名称】水尻 勝久
(74)【代理人】
【識別番号】100155756
【弁理士】
【氏名又は名称】坂口 武
(74)【代理人】
【識別番号】100161883
【弁理士】
【氏名又は名称】北出 英敏
(72)【発明者】
【氏名】福井 博雄
(72)【発明者】
【氏名】加藤 慶一郎
(72)【発明者】
【氏名】市瀬 弘毅
【審査官】
八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−025509(JP,A)
【文献】
特開2001−261246(JP,A)
【文献】
特開2006−036399(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0010751(US,A1)
【文献】
実開昭58−151162(JP,U)
【文献】
特開昭60−009336(JP,A)
【文献】
特開昭63−197772(JP,A)
【文献】
特開2002−003112(JP,A)
【文献】
国際公開第2005/085113(WO,A1)
【文献】
特開平05−017078(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/00−1/52
H02P 7/00−7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータかごを昇降させる電動モータと、この電動モータの制御駆動を行うインバータと、該インバータの動作を制御する制御部と、商用交流電源を直流電源に変換して前記インバータ及び前記制御部に供給するAC−DC変換器とを備えたエレベータ駆動制御装置であって、
前記電動モータが停止しているエレベータかごの待機時、前記制御部出力を受けて前記AC−DC変換器から前記インバータへの電源供給を遮断するとともに前記制御部出力を受けて前記インバータへの電源供給を再開するスイッチを備えていることを特徴とするエレベータ駆動制御装置。
【請求項2】
エレベータかごの呼び出し操作で上記スイッチを閉じて前記インバータへの電源供給を開始する前記制御部は、前記インバータへの電源供給の遮断時、定期的に上記スイッチを閉じて前記インバータに電源供給を行うものであることを特徴とする請求項1記載のエレベータ駆動制御装置。
【請求項3】
前記スイッチは、制御部出力でオンオフされるDCパワーリレーであることを特徴とする請求項1または2記載のエレベータ駆動制御装置。
【請求項4】
前記AC−DC変換器と前記インバータとは二線式配線で接続されて該二線式配線の一方の配線に前記スイッチが設けられ、前記制御部は上記二線式配線における一方の配線のスイッチとAC−DC変換器との間と他方の配線とから分岐させた電源供給線で電源が供給されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のエレベータ駆動制御装置。
【請求項5】
前記電動モータの回生電力を前記制御部に供給する回生経路を備えて、この回生経路中に前記回生電力の逆流阻止用ダイオードを備えていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のエレベータ駆動制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータの駆動制御を行う駆動制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エレベータにおけるエレベータかごを昇降させる電動モータを、可変電圧可変周波数のインバータによって制御駆動するものでは、上記インバータの動作を制御する制御部と、商用交流電源を直流電源に変換して前記インバータ及び前記制御部に供給するAC−DC変換器(コンバータ)とを備えている。
【0003】
このようなエレベータ駆動制御装置において、エレベータかごがいずれかの階で待機している時の待機電力の低減のために、商用交流電源とコンバータとの間にスイッチを介在させたものがある。エレベータかごの待機時にはスイッチを開いてコンバータ及び制御部への電源供給を遮断し、エレベータかごの呼び出し操作で上記スイッチを閉じてコンバータ及び制御部への電源供給を再開する(特許文献1)。
【0004】
このものでは、エレベータかごの待機時、コンバータと該コンバータから電源が供給されるインバータ、そして制御部もオフとしてしまうために、待機電力を大きく低減することができる。
【0005】
ところで家庭用のエレベータは、長時間にわたる待機状態が続くことが多く、時には何日も待機状態のままとなることがある。一方、インバータには駆動時の安定を保つためにコンデンサが内蔵されており、適切なサイクル・時間でコンデンサが充電されないと、インバータの寿命劣化や立ち上がり遅れが発生してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−51660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、待機電力の削減とともにインバータの安定動作を確保することができるエレベータ駆動制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、エレベータかごを昇降させる電動モータと、この電動モータの制御駆動を行うインバータと、該インバータの動作を制御する制御部と、商用交流電源を直流電源に変換して前記インバータ及び前記制御部に供給するAC−DC変換器とを備えたエレベータ駆動制御装置において、前記電動モータが停止しているエレベータかごの待機時、前記制御部出力を受けて前記AC−DC変換器から前記インバータへの電源供給を遮断するとともに前記制御部出力を受けて前記インバータへの電源供給を再開するスイッチを備えていることに特徴を有している。
【0009】
上記エレベータかごの呼び出し操作で上記スイッチを閉じて前記インバータへの電源供給を開始する前記制御部は、前記インバータへの電源供給の遮断時、定期的に上記スイッチを閉じて前記インバータに電源供給を行うものが好ましい。
【0010】
前記スイッチは、制御部出力でオンオフされるDCパワーリレーを好適に用いることができる。
【0011】
また、前記AC−DC変換器と前記インバータとは二線式配線で接続されて該二線式配線の一方の配線に前記スイッチが設けられ、前記制御部は上記二線式配線における一方の配線のスイッチとAC−DC変換器との間と他方の配線とから分岐させた電源供給線で電源が供給されていることが好ましい。
【0012】
前記電動モータの回生電力を前記制御部に供給する回生経路を備えて、この回生経路中に前記回生電力の逆流阻止用ダイオードを備えていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明においては、エレベータかごの待機時における待機電力削減のためのスイッチは、AC−DC変換器とインバータとの間に配置し、このスイッチは制御部出力で電源出力を再開することができるようにしているために、必要に応じてスイッチを閉じてインバータへの電源供給を行うことができるものであり、このためにインバータへの電源供給が長時間にわたり遮断される状態を避けることができて、インバータの動作停止による待機電力削減とともに、インバータの安定動作を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施の形態の一例を示すもので、(a)は通常時、(b)は待機時におけるブロック回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下本発明を図示実施例に基づいて詳述すると、
図1に示すように、このエレベータ駆動制御装置は、エレベータかごを昇降させる電動モータ4と、この電動モータ4の制御駆動を行うインバータ3と、該インバータ3の動作を制御する制御部6と、商用交流電源2を直流電源に変換して前記インバータ3及び前記制御部6に供給するAC−DC変換器1と、インバータ3への電力供給を遮断するスイッチ5、そして電動モータ4の回生電力を制御部6に送る回生経路9とからなる。
【0016】
AC−DC変換器1は力率改善回路を備えたもので、例えば単相200Vの商用交流電源2に接続されて交流を直流に変換し、その直流出力を二線式配線によってインバータ3に供給する。インバータ3に接続された電動モータ4によるエレベータかごの昇降は、ロープ式であっても油圧式であってもよい。なお、インバータ3は、直流を三相交流に変換するとともに可変電圧可変周波数で電動モータ4の速度制御駆動を行う。
【0017】
上記スイッチ5は、AC−DC変換器1とインバータ3とを接続している上記二線式配線のうちの一方の配線に挿入されており、このスイッチ5の開閉によってインバータ3への電源供給がオンオフされる。
【0018】
上記スイッチ5は、ここではインバータ3の制御を司る制御部6の出力で駆動されるパワーリレーの接点部として構成されている。エレベータかごの呼び出し検知やエレベータかご内の人体検知、戸の開閉状態検知等のための各種センサー7が接続されている上記制御部6は、インバータ3の動作制御と、上記スイッチ5の開閉とを行う。
【0019】
上記二線式配線における一方の配線のスイッチ5とAC−DC変換器1との間と、他方の配線とから分岐させた電源供給線によってAC−DC変換器1から電源部8を介して制御部6には電源が常時供給されている。
【0020】
また、エレベータかごの上昇運転に際してはインバータ3からの三相交流で電動モータ4の制御駆動を行い、エレベータかごの下降運転では電動モータ4からの回生電力を回生経路9を通して電源部8や制御部6やセンサー7に供給している。図中10はこの回生経路9中に挿入された逆流阻止用ダイオードであり、図中11は余剰回生電力を消費して熱に変換するための回生抵抗である。
【0021】
そして、このエレベータ駆動制御回路では、エレベータかごがいずれかの階で停止しているとともに、エレベータかご内に人が乗っておらず、さらに各階に設けられている呼び出しスイッチ(センサー)が操作されていない時、制御部6は待機中であるとして、スイッチ5をオフとし、インバータ3への電力供給を遮断することで待機電力の削減を行う。また、エレベータかごの呼び出しスイッチが操作されたならば、制御部6はスイッチ5をオンとしてインバータ3への電源供給を再開し、戸の開閉やエレベータかごの昇降動作を行わせる。
【0022】
待機時にはインバータ3への電源供給を遮断してしまうために、
図2に示すように待機電力を削減することができる。しかも、スイッチ5の開閉を行う制御部6への電力供給は遮断していないために、インバータ3への電力遮断状態が長時間続く時、制御部6がエレベータかごの呼び出し操作の有無に関係なく、スイッチ5をしばしオンとしてインバータ3への電源供給を行うことができる。たとえば電力遮断状態が24時間続いた時には10分間だけインバータ3への電源供給をエレベータかごの呼び出し操作に関係なく行うことで、インバータ3の寿命劣化や立ち上がり遅れを防ぐことができる。
【符号の説明】
【0023】
1 AC−DC変換器
2 商用交流電源
3 インバータ
4 電動モータ
5 スイッチ
6 制御部
7 センサー
8 電源部
9 回生経路