(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記磁気センサユニットは、互いに一次独立な少なくとも3方向のそれぞれの方向において前記磁性部材が発生する磁場をそれぞれ検知する少なくとも3個の磁気センサを備える、請求項1記載の流量計測装置。
【背景技術】
【0002】
一般住宅、商店や工場等の事業所、ビルディング等のガス(都市ガス)需要家には、そのガス消費量を計測するためのガスメータが備えられている。ガスメータは、装置内に設けられた流量検知機構に基づいてガス流量を計測する。
【0003】
図8は、ガスメータ1(膜式ガスメータ)の流量検知機構の分解斜視図である。
図8に示されるように、ガスメータ1の流量検知機構は、下ケース2内に第1の計量室および第2の計量室(図示せず)と、それぞれの計量室内に配置され、膨張収縮運動を繰り返す第1の膜および第2の膜(ダイヤフラム、図示せず)と、第1の膜および第2の膜の運動に連動するリンク機構3に取り付けられた永久磁石4と、該永久磁石4に近接配置されたリードスイッチ5とを含む。リードスイッチ5は、プリント基板6に取り付けられており、永久磁石4が近傍を通過するたびに開閉し、計量室の容積に対応したガス流量毎に流量パルスを発生する。発生した流量パルスは、プリント基板6に設けられたマイコン(図示せず)で管理される。マイコンは、たとえば、異常流量時にガスの供給を停止するようガスメータ1を制御し得る。なお、
図8において、上ケース7は、ガスケット8を介して下ケース2の上部に装着固定される。参照符号9はガス流入口を示し、参照符号10はガス流出口を示す。
【0004】
ところで、この種のガスメータ1は、一般的に積算流量計であり、1ヵ月単位でのガス消費量を計測することを主目的としている。そのため、メータの分解能は低く、短時間(たとえば1分〜1時間程度)単位でのガス流量計測には不向きである。短時間単位でのガス流量を計測するために、新たにガス流量計(流量計測装置)をガス配管に組み入れることも考えられるが、需要家の理解が得られ難く、またガス供給事業者以外の者がこのような配管工事を行うことは実質的に不可能である。
【0005】
特許文献1には、ガスメータ1の外部に付設され、ガスメータ1内の永久磁石4が発生する漏れ磁場を検知して、短時間単位でのガス流量を算出する流量計測装置が開示されている。この流量計測装置は、
図8において参照符号11で示され、たとえばガスメータ1の上面1aに取り付けられる。この流量計測装置11は、磁気センサを用いて永久磁石4の移動に伴う漏れ磁場の磁束密度の変化を連続的に検知し、検知した磁束密度のピークの発生周期に対応した流量パルスを生成し、流量パルスからガス流量を推定する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の流量検出装置は、たとえば業務用ビルディング等の大型ガスメータや大型配管に付設した場合、磁気センサとメータ内の永久磁石との距離が大きく離れる等の理由により磁気センサに到達する漏れ磁場の大きさが小さくなり、メータ内の永久磁石に由来する磁束密度の変化を正確に検知できない、という問題がある。また、特許文献1に記載の磁気センサは、1箇所のみにおいて漏れ磁場を検知しているため、たとえば近くに他の磁場が存在する等の何らかの外的要因により一時的に漏れ磁場の磁束密度が変化した場合や、何らかの外的要因により当初付設された位置から装置が移動したことにより、漏れ磁場を検知しにくくなった場合に、メータ内の永久磁石に由来する磁束密度の変化を正確に検知できず、誤った情報に基づいて流量パルスを生成する結果、ガス流量を正確に推定できない、という問題がある。
【0008】
図9は、従来の流量検出装置が検出する漏れ磁場の変化の一例を示す波形データ(波形データW)である。横軸は時間(T)を示し、縦軸は磁場の強度に対応する信号強度(I)を示している。従来の流量検出装置は、1箇所(1方向)においてのみ磁場を検知して信号強度のスカラー値のみを示すため、何らかの外的要因により波形データWのピークが消失した場合には、磁場のピーク周期を正しく算出することができない。参照符号12は、正確に検知されなかった波形データWの一部を指し、参照符号13は、正確に検知された場合に出現すると予想された波形データWのピークを示す。そのため、あるピークから次のピークが検知されるまでを1周期とすると、従来の流量検出装置は、正しくは時間4tの間に4周期が含まれ、ピーク周期をt(=4t/4)と算出すべきであるのに対して、波形データの一部が正しく検知されなかった結果、時間4tの間に3周期が含まれると誤認して、ピーク周期を1.33t(=4t/3)と誤って算出する、という問題がある。その結果、従来の流量検出装置は、誤って算出したピーク周期から誤った流量パルスを生成するため、ガス流量を正確に推定できない、という問題がある。
【0009】
本発明の流量計測装置および流量計測方法は、上記従来の問題に鑑みてなされたものであり、大型の流体流通路に付設された場合であっても、流体流通路からの漏れ磁場を正確に検知できるとともに、何らかの外的要因により一時的に漏れ磁場の磁束密度が変化した場合や当初付設された位置から装置が移動した場合であっても、漏れ磁場の磁束密度の変化を正確に検知することができる流量計測装置および流量計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一局面の流量計測装置は、一定量の流体が通過する度に周期的運動を行う磁性部材を備える流体流通路の外部に付設される流量計測装置であって、互いに一次独立な少なくとも3方向において前記磁性部材が発生する磁場を検知し、検知した磁場を波形データとしてそれぞれ出力する磁気センサユニットと、出力されたそれぞれの前記波形データを合成して磁気ベクトルデータを生成するとともに、該磁気ベクトルデータのピーク周期を算出する演算手段と、前記磁気ベクトルデータのピーク周期から前記磁性部材の運動周期を推定し、前記流体流通路内における前記流体の流量を算出する流量算出手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明の流量計測装置は、磁気センサユニットにより、互いに一次独立な少なくとも3方向において磁性部材が発生する磁場を検知し、波形データを生成する。そのため、本発明の流量計測装置は、得られた波形データの信号強度が小さい場合であっても、それぞれの波形データを合成することにより、磁性部材の運動周期を充分に推定し得る程度の大きさのピーク強度を示す磁気ベクトルデータを生成することができる。その結果、ピーク周期を正確に算出でき、当該ピーク周期から磁性部材の運動周期を正確に推定できるため、流体の流量を正確に算出することができる。
【0012】
また、本発明の流量計測装置は、何らかの外的要因によりある1方向の漏れ磁場が正しく検知できない場合や、何らかの影響で装置の付設位置が移動したためにある1方向の漏れ磁場の大きさが当初付設されていた位置における漏れ磁場の大きさよりも小さく検知される場合であっても、他の2以上の方向において漏れ磁場を検知することができる。検知した波形データを合成して得られる磁気ベクトルデータは、磁性部材の運動周期に対応する明確なピークを示すため、本発明の流量計測装置は、磁性部材の運動周期を正確に推定でき、流体の流量を正確に算出することができる。
【0013】
上記構成において、磁気センサユニットは、互いに一次独立な少なくとも3方向のそれぞれの方向において磁性部材が発生する漏れ磁場をそれぞれ検知する少なくとも3個の磁気センサを備えることが好ましい。
【0014】
本発明の流量計測装置は、上記構成を備えることにより、互いに一次独立な少なくとも3方向のそれぞれの方向において、それぞれの方向に対応する磁気センサを備える。それぞれの磁気センサは、それぞれの方向において漏れ磁場の変化を検知し、波形データとして出力できる。それぞれの磁気センサは、互いに一次独立な方向における波形データを生成するため、生成した波形データを合成すると、波形データどうしが打ち消しあうことなく、必ず合成前の波形データの信号強度よりも大きな信号強度を示す磁気ベクトルデータが得られる。そのため、本発明の流量計測装置は、大型ガスメータ等の流体流通路に付設された場合に、ある方向において、ある磁気センサが検知した波形データの信号強度が小さい場合であっても、それぞれの波形データを合成して、磁性部材の運動周期を充分に推定し得る大きさのピークを示す磁気ベクトルデータを生成することができる。磁気ベクトルデータは、磁性部材の運動周期に対応する明確なピークを示すため、本発明の流量計測装置は、磁性部材の運動周期を正確に推定でき、流体の流量を正確に算出することができる。
【0015】
また、本発明の流量計測装置は、何らかの外的要因によりある1方向において1つの磁気センサが漏れ磁場を正しく検知できない場合や、何らかの影響で装置の付設位置が移動したためにある1方向の漏れ磁場の大きさが当初付設されていた位置における漏れ磁場の大きさよりも小さく検知される場合であっても、他の2以上の磁気センサがそれぞれの方向において漏れ磁場を検知することができる。検知した漏れ磁場に基づいて生成された波形データを合成して得られる磁気ベクトルデータは、磁性部材の運動周期に対応する明確なピークを示すため、本発明の流量計測装置は、磁性部材の運動周期を正確に推定でき、流体の流量を正確に算出することができる。
【0016】
上記構成において、磁気センサユニットは、互いに直交する3方向において磁性部材が発生する磁場を検知することが好ましい。
【0017】
本発明の流量計測装置は、上記構成を備えることにより、合成後に得られる磁気ベクトルデータの信号強度を最大化することができ、明確なピークを検知し得る。また、たとえば近くに他の磁場が存在する等の何らかの外的要因により一時的に漏れ磁場が変化した場合や、何らかの外的要因により当初付設された位置から装置が移動したことにより、ある1方向においてある磁気センサが漏れ磁場を検知しにくくなった場合において、他のある1方向を、これら外的要因の影響を受けにくい方向に向けることができ、当該方向において他のある磁気センサにより漏れ磁場を検知することができる。検知した波形データを合成して得られる磁気ベクトルデータは、磁性部材の運動周期に対応する明確なピークを示すため、本発明の流量計測装置は、磁性部材の運動周期を正確に推定でき、流体の流量を正確に算出することができる。
【0018】
本発明の他の一局面の流量計測方法は、一定量の流体が通過する度に周期的運動を行う磁性部材を備える流体流通路の外部において流体の流量を計測する流量計測方法であって、互いに一次独立な少なくとも3方向において磁性部材が発生する磁場を検知するステップと、検知された磁場を波形データとしてそれぞれ出力するステップと、出力されたそれぞれの波形データを合成して磁気ベクトルデータを生成するステップと、生成された磁気ベクトルデータのピーク周期を算出するステップと、算出された磁気ベクトルデータのピーク周期から磁性部材の運動周期を推定するステップと、推定された磁性部材の運動周期から流体流通路内における流体の流量を算出するステップと、を含むことを特徴とする。
【0019】
本発明の流量計測方法は、互いに一次独立な少なくとも3方向において磁性部材が発生する磁場を検知し、波形データを生成する。そのため、本発明の流量計測方法は、得られた波形データの信号強度が小さい場合であっても、それぞれの波形データを合成することにより、磁性部材の運動周期を充分に推定し得る程度の大きさのピーク強度を示す磁気ベクトルデータを生成することができる。その結果、ピーク周期を正確に算出でき、当該ピーク周期から磁性部材の運動周期を正確に推定できるため、流体の流量を正確に算出することができる。
【0020】
また、本発明の流量計測方法は、何らかの外的要因によりある1方向の漏れ磁場が正しく検知できない場合や、何らかの影響で装置の付設位置が移動したためにある1方向の漏れ磁場の大きさが当初付設されていた位置における漏れ磁場の大きさよりも小さく検知される場合であっても、他の2以上の方向において漏れ磁場を検知することができる。検知した漏れ磁場に基づいて生成された波形データを合成して得られる磁気ベクトルデータは、磁性部材の運動周期に対応する明確なピークを示すため、本発明の流量計測方法は、磁性部材の運動周期を正確に推定でき、流体の流量を正確に算出することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、大型の流体流通路に付設された場合であっても、流体流通路からの漏れ磁場を正確に検知できるとともに、何らかの外的要因により一時的に漏れ磁場の磁束密度が変化した場合や当初付設された位置から装置が移動した場合であっても、漏れ磁場の磁束密度の変化を正確に検知することができる流量計測装置および流量計測方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<流量測定装置>
本発明の一実施形態の流量測定装置を図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施形態の流量計測装置の構成を説明する概略的なブロック図である。
【0024】
本実施形態の流量計測装置は、
図8に関連して説明したように、一定量のガス(流体)が通過する度に周期的運動を行う永久磁石4(磁性部材)を備えるガスメータ1(流体流通路)の上面1a(外部)に付設される。流量計測装置11は、
図1に示されるように、磁気センサユニット14と、演算処理装置15(CPU、Central Processing Unit)とを含む。演算処理装置15は、演算部16(演算手段)と、流量算出部17(流量算出手段)とを備える。
【0025】
<ガスメータ1>
ガスメータ1は、ガスの積算流量を検出する乾式流量計であって、
図8に関連して説明したように、上ケース7と下ケース2とからなる本体部と、ガス流量の計測結果を数値で表示するカウンタメータを含む表示部1bと、商用ガス供給管路に接続された入口管の端末が接続されるガス流入口9と、需要家の屋内ガス管路の端末が接続されるガス流出口10とを備える。
【0026】
ガスメータ1は、下ケース2内にガスの検知機構を備える。検知機構は、複数の計量室(図示せず)と、それぞれの計量室内に配置され、ガス流量に応じて膨張収縮運動を繰り返す複数のダイヤフラム(図示せず)と、それぞれのダイヤフラムの運動に連動するリンク機構3と、リンク機構3に取り付けられた永久磁石4とを含む。ダイヤフラムは弾性部材で構成されており、ダイヤフラムの両面にはアルミ鋼板等で構成される膜板が付設されている。ガスメータ1は、積算流量値を示すカウンタメータ(図示せず)を有する。積算流量値は、ダイヤフラムの往復運動を、リンク機構3を介して回転運動として伝達することにより計測される。
【0027】
このように、リンク機構3に取り付けられた永久磁石4は、ガスが使用されるとダイヤフラムの運動に伴って、所定の軌跡に沿って移動する。そのため、流量計測装置11の周囲の磁場(漏れ磁場)は、永久磁石4の移動に伴って周期的に変化する。流量計測装置11に含まれる磁気センサユニット14(
図1参照)は、この漏れ磁場の周期的な変化を検知し、検知した磁気データを波形データとして出力する。
【0028】
<磁気センサユニット>
図2は、本実施形態の磁気センサユニット14の構成を説明する概略的な模式図である。磁気センサユニット14は、直方体状のセンサケース15内に、互いに直交する3方向(互いに一次独立な少なくとも3方向)のそれぞれの方向において漏れ磁場をそれぞれ検知する少なくとも3個の磁気センサ16a、16b、16cを含む。磁気センサ16a〜16cは、基板17に実装される。磁気センサ16aは、x軸方向の漏れ磁場を連続的に検知し、磁気センサ16bは、y軸方向の漏れ磁場を連続的に検知し、磁気センサ16cは、z軸方向の漏れ磁場を連続的に検知する。
【0029】
磁気センサ16a〜16cは、それぞれ磁気インピーダンス素子を備える磁気インピーダンスセンサであり、永久磁石4(
図8参照)の移動に伴う磁場の変化を検知する。磁気インピーダンスセンサは、10
−4ガウス(10
−8テスラ)オーダー以下の微小な磁気を検知し得る。なお、磁気インピーダンスセンサは、原理上一般には磁場の向きは検知できない。そのため、本実施形態では、磁気センサ16a〜16cを基板17に実装して磁気センサユニット14内での磁気センサ16a〜16cの位置を予め定めている。このように磁気センサ16a〜16cの設置位置(設置方向)を規定しておくことにより、漏れ磁場の向きを検知しなくても、向き情報を同時に検知することができる。磁気センサ16a〜16cは、それぞれ検知した漏れ磁場を波形データに変換して、後述する演算部16に出力する。
【0030】
本実施形態の磁気センサ16a〜16cは、互いに一次独立な少なくとも3方向において漏れ磁場を検知する。そのため、それぞれの磁気センサ16a〜16cが生成した波形データWa、Wb、Wcを後述する演算部16(演算手段)で合成すると、波形データどうしが打ち消しあうことなく、必ず合成前の波形データの信号強度よりも大きな信号強度を示す磁気ベクトルデータが得られる。その結果、本実施形態の流量計測装置11は、たとえば大型ガスメータや大型配管に付設した際に、それぞれの方向において磁気センサ16a〜16cが検知した波形データWa〜Wcの信号強度が小さい場合であっても、後述する演算部16でそれぞれの波形データWa〜Wcを合成することにより、永久磁石4(
図8参照)の運動周期を充分に推定し得る程度の大きさのピーク強度を示す磁気ベクトルデータを生成することができ、ガスの正確な流量を算出することができる。
【0031】
特に、本実施形態の磁気センサ16a〜16cは、互いに直交する3方向において漏れ磁場を検知するよう基板17に実装されている。そのため、合成後に得られる磁気ベクトルデータの信号強度を最大化することができ、明確なピークを検知し得る。また、たとえば近くに他の磁場が存在する等の何らかの外的要因により一時的に磁場が変化した場合や、何らかの外的要因により当初付設された位置から装置が移動したことにより、ある1方向において磁気センサ(たとえば磁気センサ16a)が漏れ磁場を検知しにくくなった場合において、少なくとも他のある1方向を、これら外的要因の影響を受けにくい方向に向けることができ、当該方向において他のある磁気センサ(たとえば磁気センサ16b)により永久磁石4に由来する漏れ磁場の磁束密度の変化を検知することができる。
【0032】
図3〜
図5は、
図2に関連して説明したそれぞれの磁気センサ16a〜16cがそれぞれ検知した磁場に基づいて生成する波形データの一例を示す概略的な波形図である。
図3〜
図5において、横軸は時間(T)を示し、縦軸は、それぞれ磁場の強度に対応する信号強度(I)を示している。
【0033】
磁気センサ16a、16b、16cは、
図3に示されるように、それぞれの検出方向に応じた波形データWa、Wb、Wcを生成する。波形データWa〜Wcのピーク周期はいずれもtである。波形データWa〜Wcは、後述する演算部16(演算手段)で合成され、合成前の波形データの信号強度よりも大きな信号強度を示す磁気ベクトルデータVとされる。
【0034】
また、
図4に示されるように、永久磁石4(
図8参照)の移動により磁場が時間tごとに周期的に変化しているにもかかわらず、永久磁石4からの距離が遠いか、何らかの外的要因によりx軸〜z軸のすべての方向において明確なピークが認識できない程度に磁場の変化が検知されない場合であっても、本実施形態の流量計測装置11によれば、波形データWa1、Wb1、Wc1は、後述する演算部16で合成され、時間tごとに明確なピーク強度を示す磁気ベクトルデータV1とされる。
【0035】
さらに、
図5に示されるように、x軸方向およびy軸方向においては磁場が正常に検知され、時間tごとに周期的にピークを示す波形データWa2および波形データWb2が取得されているが、z軸方向においては何らかの外的要因により波形データWc2の一部が消失している場合であっても、本実施形態の流量計測装置11によれば、波形データWc2と正常な波形データWa2および波形データWb2とは、後述する演算部16で合成され、時間tごとに明確なピーク強度を示す磁気ベクトルデータV2を生成することができる。なお、参照符号Wc2aは、正常なピークを示す部分を指し、参照符号Wc2bは、一部が消失した部分を指す。
【0036】
以上より、本実施形態の流量計測装置11は、たとえば大型ガスメータや大型配管に付設した際に、それぞれの方向において磁気センサ16a〜16cが検知した波形データの信号強度が小さい場合や、何らかの外的要因により波形データの一部が消失している場合であっても、後述する演算部16でそれぞれの波形データを合成することにより、永久磁石4(
図8参照)の運動周期を充分に推定し得る程度の大きさのピーク強度を示す磁気ベクトルデータVを生成することができ、ガスの正確な流量を算出することができる。
【0037】
<演算処理装置15>
演算処理装置15(CPU)は、ガス流量を算出するための各種演算処理を行う。演算処理装置15は、演算部16と流量算出部17とを備える。
<演算部16>
演算部16は、上記した磁気センサ16a〜16cのそれぞれから出力されたそれぞれの波形データ(たとえば波形データWa〜Wc、
図3参照)を合成して磁気ベクトルデータ(たとえば磁気ベクトルデータV、
図3参照)を生成する合成部18と、該磁気ベクトルデータVのピーク周期を算出する周期算出部19とを備える。
【0038】
<合成部18>
合成部18は、
図3に示されるように、磁気センサ16aが出力した波形データWaと、磁気センサ16bが出力した波形データWbと、磁気センサ16cが出力した波形データWcとを合成し、磁気ベクトルデータVを生成する。本実施形態の流量計測装置11は、磁気ベクトルデータVのピーク位置をもとに、後述する周期算出部19により、ピーク周期を算出することができる。なお、磁気ベクトルデータVは向き情報を有するが、向き情報は、ガス流量を算出するうえで不要であるため、
図3では省略される。
【0039】
また、合成部18は、
図4に示されるように、互いに一次独立な波形データWa1〜Wc1を合成するため、それぞれの波形データWa1〜Wc1が明確なピークが認識できない程度の小さなピーク強度しか示さない場合であっても、時間tごとに明確なピーク強度を示す磁気ベクトルデータV1を生成することができる。そのため、本実施形態の流量計測装置11は、磁気ベクトルデータV1のピーク位置をもとに、後述する周期算出部19により、ピーク周期を算出することができる。
【0040】
さらに、合成部18は、
図5に示されるように、互いに一次独立な波形データWa2〜Wc2を合成するため、波形データWc2の一部が消失している場合であっても、時間tごとに明確なピーク強度を示す磁気ベクトルデータV2を生成することができる。なお、磁気ベクトルデータV2のうち、参照符号V2aで示される部分は、波形データWc2が消失していたため、波形データWa2と波形データWb2とを合成した部分を示している。そのため、この部分の磁気ベクトルデータV2aは、他の部分の磁気ベクトルデータV2bと比較して、磁気ベクトルデータの強度だけでなく向きも異なる。しかしながら、参照符号V2aで示される部分は、充分にピークを確認できる程度のピーク強度を示しており、また、上記のとおり、ガス流量を算出するうえで向き情報は不要である。そのため、本実施形態の流量計測装置11は、磁気ベクトルデータV2のピーク位置をもとに、後述する周期算出部19により、ピーク周期を算出することができる。
【0041】
<周期算出部19>
周期算出部19は、合成部18が合成した磁気ベクトルデータ(たとえば磁気ベクトルデータV)をもとに、ピーク周期を算出する。ピーク周期は、たとえば、単位時間当たりのピークの出現回数を計数する等により算出することができる。周期算出部19は、得られたピーク周期情報を後述する流量算出部17に出力する。
【0042】
<流量算出部17>
流量算出部17は、磁気ベクトルデータ(たとえば磁気ベクトルデータV)のピーク周期が永久磁石4の運動周期であると推定し、ガスメータ1を流れるガスの流量を算出する。すなわち、上記のとおり、ダイヤフラムが膨張収縮運動を行うごとに流れるガスの量は既知である。また、ダイヤフラムの膨張収縮運動は永久磁石4の周期的な移動と対応関係にある。そのため、流量算出部17は、ダイヤフラムが膨張収縮運動を1回行う際のガス流量(mL/回)をピーク周期(分/回)で除することにより、単位時間当たりのガス流量(mL/分)を算出することができる。
【0043】
算出されたガス流量は、たとえば、流量算出部17と表示装置(モニタ、図示せず)等とを接続することによりユーザが目視で確認し得るよう構成してもよく、ガスメータ1の管理者等が必要時に取り出せるように流量計測装置11に記憶部(不揮発性のROM(Read Only Memory、図示せず)やデータを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory、図示せず)等)を付設し、該記憶部に記憶させてもよい。また、外部にデータサーバ(図示せず)を準備し、無線または有線によりガス流量をデータとして送信して保管してもよく、インターフェイス(I/F)回路20を介して流量算出部17と外部機器21とを接続し、外部機器21を制御する際に利用してもよい。なお、外部機器21は、たとえば、ガスを燃料とする機器であって、単位時間当たりのガスの消費量等をその制御要素の一つとして用いる機器であり、燃料電池装置等が挙げられる。
【0044】
<流量計測方法>
次に、本実施形態の流量計測方法を、
図6に示すフローチャートに基づいて説明する。本実施形態の流量計測方法によれば、まず、互いに一次独立な少なくとも3方向において、一定量のガス(流体)が通過する度に周期的運動を行う永久磁石(磁性部材)を備えるガスメータ(流体流通路)の外部において、磁気センサユニット14(
図1、
図2参照)は、永久磁石が発生する磁場(漏れ磁場)を検知する(ステップS110)。
【0045】
そして、検知された漏れ磁場を波形データとしてそれぞれ出力する工程が実行される(ステップS120)。磁気センサユニット14(
図1、
図2参照)は、波形データ(
図3〜
図5参照)をそれぞれ出力する。
【0046】
次に、出力されたそれぞれの波形データを合成して磁気ベクトルデータを生成する工程が実行される(ステップS130)。演算部16(
図1参照)は、波形データを合成する(
図1参照)。
【0047】
その後、生成された磁気ベクトルデータのピーク周期を算出する工程が実行される(ステップS140)。演算部16(
図1参照)は、ピーク周期を算出する。
【0048】
続いて、算出された磁気ベクトルデータのピーク周期から永久磁石の運動周期を推定する工程が実行される(ステップS150)。流量算出部17(
図1参照)は、永久磁石の運動周期を推定する。
【0049】
その後、推定された磁性部材の運動周期からガスメータ内における流体の流量を算出する工程が実行され(ステップS160)、処理が完了する。流量算出部17(
図1参照)は、ガスメータ内におけるガスの流量を算出する。
【0050】
算出されたガス流量は、たとえば、流量算出部と表示装置等とを接続することによりユーザが目視で確認し得るよう構成してもよく、ガスメータの管理者等が必要時に取り出せるように流量計測装置に記憶部(不揮発性のROM(Read Only Memory)やデータを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)等)を付設し、該記憶部に記憶させてもよい。また、外部にデータサーバを準備し、無線または有線によりガス流量をデータとして送信して保管してもよく、インターフェイス(I/F)回路を介して流量算出部と外部機器とを接続し、外部機器を制御する際に利用してもよい。なお、外部機器は、たとえば、ガスを燃料とする機器であって、単位時間当たりのガスの消費量等をその制御要素の一つとして用いる機器であり、燃料電池装置等が挙げられる。
【0051】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、たとえば次のような変形実施形態を採用ことができる。
【0052】
(1)上記実施形態では、周期的運動を行う磁性部材を備える流体流通路の一例として都市ガスのガスメータを例示した。これに代えて、本発明の流量計測装置は、空気や酸素等の他の気体、水やオイル等の液体を計測する計量装置であって、一定量の流体が通過する度に周期的運動を行う磁性部材を備える計量装置にも適用することができる。また、一定量の流体が通過する度に周期的運動を行う磁性部材を備える装置を含んでいれば、計量装置以外の装置であってもよい。
【0053】
(2)上記実施形態では、流量計測装置が求めたガス流量を、インターフェイス回路を介して外部機器へ出力させる例を示した。これに代えて、本発明の流量計測装置は、外部機器内に流量計測装置の機能を内蔵させる構成としてもよい。
【0054】
(3)上記実施形態では、磁性部材の一例として永久磁石を例示した。これに代えて、本発明の流量計測装置は、ガスメータ内のダイヤフラムに付設された膜板を構成する磁性材料(アルミニウム等)が残留磁化などにより微小な磁場を発生する場合には、ダイヤフラムの膨張収縮運動に伴って周期的運動を行う膜板を磁性部材と捉えてもよい。この場合、漏れ磁場は、定常的な地磁気等の外乱磁場と比較して微小であるため、外乱磁場の影響を排除するために、検知した磁場のうち所定の周波数で変化する成分のみを抽出するようフィルタ処理を行うことが好ましい。また、検知した微小な磁場は、波形データに変化する前後において、適宜アンプ等を用いて増幅してもよい。さらに、磁気センサユニットのセンサケースを構成する面のうち、ガスメータに向ける検知面は非磁性材料で、検知面以外のシールド面は磁性材料で構成してもよい。この構成により、漏れ磁場は検知面を通して検知することができ、地磁気などの外乱磁場はシールド面により遮蔽することができる。非磁性材料としては、プラスチックのほか、アルミニウムや銅などの金属が挙げられる。磁性材料としては、低周波の磁気遮蔽にはフェライト系磁気遮蔽材料、高周波の磁気遮蔽には軟磁性アモルファス合金などが挙げられる。
【0055】
(4)上記実施形態では、リンク機構に永久磁石が取り付けられ、ダイヤフラムの膨張収縮運動と連動して永久磁石が周期的運動を行う場合を例示した。これに代えて、本発明の流量計測装置は、リンク機構以外の箇所に永久磁石を取り付けることにより、永久磁石がダイヤフラムの膨張収縮運動と連動して周期的運動を行うよう構成してもよい。
【0056】
(5)上記実施形態では、ガスメータの上面に付設された流量計測装置を例示した。これに代えて、本発明の流量計測装置は、流量計測装置をガスメータの上面以外の面に付設してもよい。また、漏れ磁場を検知し得る限度において、流量計測装置をガスメータから離間させた位置に配置してもよい。
【0057】
(6)上記実施形態では、互いに直交する3方向(x軸方向、y軸方向、z軸方向)にそれぞれ対応する磁気センサを備えた磁気センサユニットを例示した。これに代えて、本発明の流量計測装置は、互いに一次独立な3以上の方向において、3以上の磁気センサを備える磁気センサユニットを用いてもよい。
【0058】
(7)上記実施形態では、磁気センサとして磁気インピーダンスセンサを例示した。これに代えて、本発明の流量計測装置は、たとえば、フラックスゲートセンサ、ホール素子、ファラデー素子等を備える磁気センサを使用してもよい。なお、ホール素子やフラックスゲートセンサは、磁場の向きを判別できるため、たとえば磁気センサユニットの設置向きが初期位置から変化した場合であっても磁場の方向を適切に把握し得る。
【0059】
(8)上記実施形態では、流量算出部を演算処理装置内に設けた流量計測装置を例示した。これに代えて、本発明の流量計測装置は、
図7に示されるように、流量算出部17aを、流量計測装置11aとは別に設けられた外部サーバ22等に設けてもよい。この場合、演算処理装置15aに備えられた演算部16aで算出された磁気ベクトルデータのピーク周期は、ピーク周期データとして、たとえばI/F回路20を介して流量算出部17aへ無線または有線で出力したり、USBメモリ等の可搬型メモリを介して流量算出部17aに出力することができる。このように、流量算出部17aを外部サーバ23等に設けることにより、個々の流量計測装置11aの構成を簡略化、小型化することができるとともに、データの一括管理や集約、加工が容易となる。