(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
有機硫黄化合物0.02〜5.0質量部および/またはスチレン/α−メチルスチレンコポリマー樹脂5〜50質量部を更に含んでなる、請求項1または2記載のタイヤ用ゴム組成物。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を構成する各要素について説明する。
【0017】
<ジエン系ゴム成分>
本発明にかかわるジエン系ゴム成分は、少なくともスチレン−ブタジエンゴム(SBR)を含むものである。かかるSBRとしては、いずれのものをも好適に用いることができるが、溶液重合スチレンブタジエンゴム(S−SBR)であることが好ましい。SBRにおける結合スチレン量は、10質量%以上が好ましく、より好ましくは15質量%以上である。結合スチレン量が10質量%未満では充分なグリップ力が得られない傾向がある。一方、結合スチレン量は80質量%以下が好ましく、より好ましくは75質量%以下である。結合スチレン量が80質量%を超えると硬度が高くなる傾向がある。
【0018】
ジエン系ゴム成分中におけるSBRの含有量は、70質量%以上が好ましく、より好ましくは80質量%以上である。70質量%未満では充分なグリップ力が得られない傾向がある。最も好ましい態様においては、SBRの含有量は100%である。
【0019】
ジエン系ゴム成分として含まれる、SBR以外の他のゴム成分としては、通常のジエン系ゴムをいずれも使用することができ、例えば、天然ゴム(NR)やブチルゴム(IIR)の他、スチレン−イソプレンゴム(SIR)等の共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物との共重合体、ポリイソプレンゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(BR)等の共役ジエン化合物の単独重合体、エチレン−プロピレン共重合体、およびこれらの混合物である合成ゴムなどが挙げられる。
【0020】
本発明において、ジエン系ゴムは、その一部が、多官能型変性剤、例えば、四塩化スズ等によって変性され、分岐構造を有しているものを用いることもできる。
【0021】
ジエン系ゴムは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0022】
<不飽和カルボン酸エステル>
不飽和カルボン酸エステルの不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの炭素数3〜8のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸が挙げられる。このうち、アクリル酸またはメタアクリル酸が好ましい。また、不飽和カルボン酸エステルのエステルとしては、アルキルエステル、アリールエステル、ビニル(vinyl)エステルなどが挙げられ、このうち、アルキルエステルが好ましい。アルキルエステルを構成するアルキル基としては、炭素数1〜12のアルキル基が好ましく、炭素数1〜8のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜4のアルキル基がさらに好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、イソブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。アリールエステルを構成するアリール基としては、フェニル基、ベンジル基、トリル基、o−、m−またはp−キシリル基等が挙げられる。
【0023】
不飽和カルボン酸エステルの具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、イソブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート、トリルアクリレート、o−、m−若しくはp−キシリルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、フェニルメタアクリレート、ベンジルメタアクリレート、トリルメタアクリレート、o−、m−若しくはp−キシリルメタアクリレート等が挙げられる。
【0024】
不飽和カルボン酸エステルの配合量は5質量部以上であり、好ましくは10質量部以上である。配合量が5質量部未満では、不飽和カルボン酸エステルがジエン系ゴム成分に充分グラフトせず、本願所望の物性が得られない傾向がある。一方、該配合量は50質量部以下であり、好ましくは35質量部以下である。配合量が50質量部を超えると充分な弾性が得られず、ゴムが硬くなり過ぎる傾向がある。
【0025】
不飽和カルボン酸は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0026】
<ラジカル発生剤>
有機過酸化物からなるラジカル発生剤としては、例えば、熱または酸化還元系の存在下で、パーオキシラジカルを発生するものであればいずれのものも用いることができ、そのような有機過酸化物としては、例えば、ジクミルパーオキサイド(例えば、日本油脂(株)のパークミル(登録商標)D)、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン(例えば、日本油脂(株)のパーヘキサ(登録商標)C)、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルヒドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)−p−ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3−ヘキシン(例えば、日本油脂(株)のパーヘキシン(登録商標)25B)、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)へキサン、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネートなどが挙げられる。なかでも、ジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)へキサン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3−ヘキシン、またはt−ブチルパーオキサイドが好ましい。
【0027】
また、有機過酸化物からなるラジカル発生剤としては、10時間半減期温度(T10:有機過酸化物の半減期が10時間となる温度)が110℃以上であるものが好ましい。これら有機過酸化物が加硫工程前に架橋反応を起こすことをできるだけ回避するとの観点からである。このような有機過酸化物としては、例えば、ジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルヒドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)−p−ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3−ヘキシン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネートなどが挙げられる。
【0028】
有機過酸化物からなるラジカル発生剤の配合量は、上記ゴム成分100質量部に対して0.02質量部以上であり、好ましくは0.2質量部以上である。0.02質量部未満では配合の効果が小さく、ゴム組成物のtanδを充分に向上させることができない傾向がある。一方、該配合量は5.0質量部以下であり、好ましくは3.0質量部以下である。配合量が5質量部を超えると、ゴム組成物の破壊強度(耐破壊性)が低下してしまう傾向がある。
【0029】
有機過酸化物からなるラジカル発生剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0030】
<有機硫黄化合物>
本発明で用いられる有機硫黄化合物には、一般式(1)で示されるもの(チオール型、または、SH型)、一般式(2)で示されるもの(スルフィド型、または、Sn型)、並びに、一般式(3)および(4)で示されるもの(金属塩型、または、SM型)が含まれる。
【0031】
一般式(1)〜(4)で示される有機硫黄化合物において、R
1〜R
6におけるアリール基、へテロアリール基、アルキル基、アルケニル基、またはアラルキル基の置換基としては、例えば、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、臭素原子、塩素原子またはヨウ素原子)、C
1-4のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基またはt−ブチル基)、カルボキシル基、アミノ基、C
1-4のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基またはt−ブトキシ基)、ベンゾイルアミノ基、ニトロ基、メルカプト基などが挙げられる。このうち、ハロゲン原子、特に塩素原子が好ましい。それぞれの基(すなわち、アリール基、へテロアリール基、アルキル基、アルケニル基、またはアラルキル基)における置換基の数は、1個以上であり、置換可能なすべての部位が置換されていてもよい。
【0032】
R
1〜R
6において、アリール基としては、例えば、6〜10員のアリール基であり、好ましくは、例えば、フェニル基またはナフチル基である。へテロアリール基としては、例えば、含N、Sおよび/またはOの5〜10員ヘテロアリール基であり、好ましくは、例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基またはベンゾチアゾリル基である。アルキル基としては、例えば、C
1-12のアルキル基であり、好ましくは、例えば、メチル基、エチル基またはドデシル基である。アルケニル基としては、例えば、C
1-12のアルケニル基であり、好ましくは、例えば、アリル基である。アラルキル基としては、例えば、6〜10員のアリール基で置換されたC
1-12のアルキル基であり、好ましくは、例えば、フェニル基またはナフチル基で置換されたメチル基、エチル基またはドデシル基である。このうち、アリール基、特に、フェニル基が好ましい。
【0033】
M
1について、1価の金属原子としては、例えば、ナトリウム、リチウム、カリウム、銅(I)、銀(I)などが挙げられ、このうち、ナトリウムまたはカリウムが好ましい。
【0034】
M
2について、2価の金属原子としては、例えば、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、チタン(II)、マンガン(II)、鉄(II)、コバルト(II)、ニッケル(II)、ジルコニウム(II)、スズ(II)などが挙げられ、このうち、亜鉛またはマグネシウムが好ましい。
【0035】
nは、1以上の整数であるが、上限値としては、好ましくは2である。nの好ましい具体例としては、1または2である。
【0036】
一般式(1)で示されるチオール型有機硫黄化合物の具体例としては、例えば、ペンタクロロチオフェノール、ペンタフルオロチオフェノール、4−クロロチオフェノール、4−ブロモチオフェノール、4−フルオロチオフェノール、4−t−ブチルチオフェノール、2,3−ジクロロチオフェノール、2,4−ジクロロチオフェノール、2,5−ジクロロチオフェノール、2,6−ジクロロチオフェノール、3,4−ジクロロチオフェノール、3,5−ジクロロチオフェノール、2,4,5−トリクロロチオフェノール、チオサリチル酸、メチルチオサリチル酸、o−トルエンチオール、m−トルエンチオール、p−トルエンチオール、3−アミノチオフェノール、4−アミノチオフェノール、3−メトキシチオフェノール、4−メトキシチオフェノール、または2−ベンズアミドチオフェノールが挙げられる。
【0037】
一般式(2)で示されるスルフィド型有機硫黄化合物の具体例としては、例えば、ジスルフィド体である、ジフェニルジスルフィド、ビス(2−アミノフェニル)ジスルフィド、ビス(4−アミノフェニル)ジスルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジスルフィド、ビス(4−メチルフェニル)ジスルフィド、ビス(4−t−ブチルフェニル)ジスルフィド、ビス(2−ベンズアミドフェニル)ジスルフィド、ジキシリルジスルフィド、ジ(o−ベンズアミドフェニル)ジスルフィド、ジモルホリノジスルフィド、ビス(4−クロロフェニル)ジスルフィド、ビス(フルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(ヨードフェニル)ジスルフィド、ビス(2,5−ジクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(3,5−ジクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5−トリクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2−シアノフェニル)ジスルフィド、ビス(2−ニトロフェニル)ジスルフィド、ビス(4−ニトロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4−ジニトロフェニル)ジスルフィド、2,2−ジチオジ安息香酸、5,5−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)、ビス(ペンタフルオロフェニル)ジスルフィド、ジベンジルジスルフィド、ジ−t−ドデシルジスルフィド、ジアリルジスルフィド、ジフルフリルジスルフィド、2,2’−ジベンゾチアゾリルジスルフィド、ビス(2−ナフチル)ジスルフィド、ビス(4−メルカプトフェニル)ジスルフィド、4−(2−ベンゾチアゾリルジチオ)モルホリン、2,2−ジピリジルジスルフィド、2,2−ジチオビス(5−ニトロピリジン)、2,2−ジチオジアニリン、4,4−ジチオジアニリン、ジチオジグリコール酸、4,4’−ジチオモルホリンまたはL−シスチンが、あるいは、これらジスルフィド体(n=2)におけるnの数が、nの取りうる範囲内において、1や、あるいは、2よりも大きな数に変化したものが挙げられる。n=1の場合の具体例としては、例えば、ビス(4−メルカプトフェニル)スルフィドなどが挙げられる
【0038】
一般式(3)で示される金属塩型有機硫黄化合物の具体例としては、例えば、上記チオール型有機硫黄化合物の具体例と、1価の金属原子との塩が挙げられる。
【0039】
一般式(4)で示される金属塩型有機硫黄化合物の具体例としては、例えば、上記チオール型有機硫黄化合物の具体例と、2価の金属原子との塩が挙げられる。
【0040】
有機硫黄化合物の配合量は、上記ゴム成分100質量部に対して、0.02質量部以上であり、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上である。0.02質量部未満では、配合の効果が小さく、ゴム組成物のtanδを充分に向上させることができない傾向がある。一方、配合量は5.0質量部以下であり、好ましくは4.5質量部以下、より好ましくは4質量部以下である。5.0質量部を超えると、ゴム組成物の破壊強度(耐破壊性)が低下してしまう傾向がある。
【0041】
有機硫黄化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0042】
<スチレン/α−メチルスチレンコポリマー樹脂>
スチレン/α−メチルスチレンコポリマー樹脂とは、スチレンとα−メチルスチレンとを重合させて得られる樹脂である。スチレンとα−メチルスチレンの重合割合については、特に限定されるものではないが、好ましくは、スチレンモノマー約40〜約70質量%およびα−メチルスチレンモノマー約60〜30質量%からなるものであることが好ましい。
【0043】
スチレン/α−メチルスチレンコポリマー樹脂の軟化点(Softening Point)は、180℃以下、より好ましくは150℃以下である。180℃を超えると、硬度が高くなる傾向がある。一方、該軟化点の下限値については特に限定はないが、通常30℃以上である。なお、本明細書において、軟化点とは、JIS K 6220に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
【0044】
スチレン/α−メチルスチレンコポリマー樹脂の重量平均分子量(Mw)は、20000以下、好ましくは10000以下、より好ましくは5000以下である。Mwが20000を超えると、硬度が高くなる傾向がある。一方、Mwの下限値について特に限定はないが、通常約200程度である。なお、本明細書において、Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)(東ソー(株)製GPC−8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMALTPORE HZ−M)による測定値を基に標準ポリスチレン換算により求めたものである。
【0045】
スチレン/α−メチルスチレンコポリマー樹脂の使用量は、上記ゴム成分100質量部に対して、5質量部以上であり、好ましくは10質量部以上である。5質量部未満では、不飽和カルボン酸エステルが自己重合を起こす場合がある。一方、配合量は50質量部以下であり、好ましくは35質量部以下である。50質量部を超えると、硬度が高くなり充分なグリップ力が得られなくなる傾向がある。
【0046】
スチレン/α−メチルスチレンコポリマー樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0047】
<充填剤>
本発明のゴム組成物には、充填剤を配合することができる。充填剤としては、慣用のものをいずれも用いることができ、そのような充填剤としては、例えば、カーボンブラックなどが挙げられる。
【0048】
カーボンブラックの種類は、特に限定されず、この分野で通常使用されるものをいずれも使用することができるが、好ましくは、例えば、FEF,SRF,HAF,ISAF,SAFグレードのもの等が挙げられる。このうち、耐摩耗性を向上させる観点からは、HAF,ISAF,SAFグレードのものがより好ましい。
【0049】
カーボンブラックは、ヨウ素吸着量(IA)が80mg/g以上であることが好ましく、より好ましくは90mg/g以上、さらに好ましくは100mg/g以上である。IAが80mg/g未満では充分な補強性が得られない傾向がある。IAの上限値について特に限定はないが、通常、1000mg/g以下である。なお、カーボンブラックのヨウ素吸着量は、JIS K6217−1の測定方法によって求められる。
【0050】
カーボンブラックは、ジブチルフタレート(DBP)吸油量が80mL/100g以上であることが好ましく、より好ましくは90mL/100g以上、さらに好ましくは100mL/100g以上である。DBPが80mL/100g未満では耐破壊特性が悪化する傾向がある。一方、DBPの上限値について特に限定はないが、通常、200mL/100gである。なお、カーボンブラックのDBP吸油量は、JIS K6217−4の測定方法によって求められる。
【0051】
充填剤の配合量は、補強性とそれによる諸物性の改良効率の観点から、所定の範囲内であることが好ましい。下限値については、例えば、上記ゴム成分100質量部に対して、10質量部以上、好ましくは20質量部以上である。10質量部未満では、破壊特性等が十分でない傾向がある。一方、上限値については、250質量部以下、好ましくは150質量部である。250質量部を超えると、ゴム組成物の加工性が低下する傾向がある。
【0052】
<その他の配合成分>
本発明のゴム組成物には、一般的なゴム用架橋系を用いることができ、かかる目的には、通常、架橋剤と加硫促進剤とを組み合わせて用いる。ここで、架橋剤としては、例えば、硫黄が挙げられる。架橋剤の配合量は、上記ゴム成分100質量部に対して、硫黄分として0.1質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。0.1質量部未満では、加硫ゴムの耐破壊性および低発熱性が低下する傾向がある。一方、架橋剤の配合量は10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。10質量部を超えると、ゴム弾性が失われる傾向がある。
【0053】
一方、上記加硫促進剤としては、特に限定されるものではないが、2−メルカプトベンゾチアゾール(M)、ジベンゾチアジルジスルフィド(DM)、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド(CZ)、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(NS)等のチアゾール系加硫促進剤、ジフェニルグアニジン(DPG)等のグアニジン系加硫促進剤等、通常この分野で使用されるものを、いずれも好適に使用することができる。
【0054】
加硫促進剤の配合量は、上記ゴム成分100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、0.2質量部以上がより好ましい。0.1質量部未満では、充分な架橋密度が得られない傾向がある。一方、配合量は5質量部以下が好ましく、3質量部以下がより好ましい。5質量部を超えると、硬度が高くなる傾向がある。
【0055】
加硫促進剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0056】
本発明のゴム組成物には、軟化剤としてプロセスオイル等を配合することができる。プロセスオイルとしては、この分野で通常使用されるものをいずれも好適に使用することができ、例えば、パラフィン系オイル、ナフテン系オイル、アロマチック系オイル等が挙げられる。これらの中でも、引張強度および耐摩耗性の観点からは、アロマチック系オイルが好ましく、ヒステリシスロスおよび低温特性の観点からは、ナフテン系オイルおよびパラフィン系オイルが好ましい。
【0057】
プロセスオイルの使用量は、上記ゴム成分100質量部に対して、0〜100質量部の範囲が好ましい。プロセスオイルの使用量がゴム成分100質量部に対して100質量部を超えると、加硫ゴムの引張強度および低発熱性が悪化する傾向がある。
【0058】
プロセスオイルは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0059】
本発明のゴム組成物には、上記の他、例えば、老化防止剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、酸化防止剤、オゾン劣化防止剤等の、この分野で通常用いられる添加剤を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して配合することができる。
【0060】
こうして得られる本発明のゴム組成物は、タイヤのトレッド、アンダートレッド、カーカス、サイドウォール、ビード等のタイヤ用途を始め、防振ゴム、ベルト、ホース、その他の工業製品等にも用いることができるが、その特性から、特に、タイヤのトレッドとして好適に使用することができる。また、本発明のゴム組成物は、乗用車用、バス用、トラック用として好適に使用することができる。
【0061】
<タイヤ>
本発明のゴム組成物は、タイヤの製造に使用され、通常の方法により、タイヤとすることができる。すなわち、必要に応じて前記成分を適宜配合した混合物をロール、インターナルミキサー等の混練り機を用いて混錬りし、未加硫の段階でタイヤの各部剤の形状に合わせて押出し加工し、タイヤ成形機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することによりタイヤを得ることができ、これに、注入ガスとして、通常の空気を入れ、空気入りタイヤとすることができる。なお、注入ガスとしては、通常の空気の他、酸素分圧を調整した空気、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを用いることもできる。本発明のゴム組成物においては、構成成分として不飽和カルボン酸エステルを含むため、混錬りは、該不飽和カルボン酸エステルが揮発しない温度域で行うことが好ましい。そのような温度は、不飽和カルボン酸エステルの種類にもよるが、通常、例えば、80〜100℃である。
【0062】
なお、理論に拘束されることは意図しないが、本発明によれば、所定のジエン系ゴム成分に、不飽和カルボン酸エステルを用いて、または、該不飽和カルボン酸エステルと有機過酸化物からなるラジカル発生剤とを用いて、混練り時にジエン系ゴム成分にグラフトすることで、耐摩耗性等の耐破壊性を確保しつつタイヤの操縦安定性を改善できるタイヤ用ゴム組成物が得られるものと考えられる。さらに、所定の有機硫黄化合物、および/または、スチレン/α−メチルスチレンコポリマー樹脂を配合する場合には、これらが「グラフト鎖の分子量調整剤」として機能するため、これにより、ガラス転移点が十分に高い(共)重合体が配合された、tanδが高く、十分な破壊特性を有するゴム組成物を、より容易に得ることができると考えられる。
【0063】
本明細書において、ガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量計(DSC)により測定される。
【実施例】
【0064】
本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明は、実施例にのみ限定されるものではない。
【0065】
以下に、実施例および比較例のゴム組成物の製造に用いた各種薬品をまとめて示す。各種薬品は必要に応じて常法に従い精製を行った。
<ゴム組成物の製造に用いた各種薬品>
SBR:旭化成(株)製のスチレンブタジエンゴム「タフデン4350」(結合スチレン量=39質量%)
カーボンブラック:三菱化学(株)製のダイヤブラックA(N110)(IA:139mg/g、DBP吸油量:115mL/100g)
不飽和カルボン酸エステル:アクリル酸tert−ブチル(沸点:127℃、密度:0.88)
ラジカル発生剤1:日本油脂(株)製のパークミル(登録商標)D(分子量:270、比重:1.11(25℃)、T10:116.4℃)
ラジカル発生剤2:日本油脂(株)製のパーヘキシン(登録商標)25B(分子量:286、比重:0.886(20℃)、T10:128.4℃)
ラジカル発生剤3:日本油脂(株)製のパーヘキサ(登録商標)C(分子量:260、比重:0.902(20℃)、T10:90.7℃)
有機硫黄化合物1(SH型):和光純薬工業(株)製のペンタクロロチオフェノール
有機硫黄化合物2(SH型):和光純薬工業(株)製のベンゼンチオール
有機硫黄化合物3(Sn型):和光純薬工業(株)製のジフェニルジスルフィド
有機硫黄化合物4(Sn型):和光純薬工業(株)製のペンタクロロジフェニルジスルフィド
有機硫黄化合物5(SM型):和光純薬工業(株)製のベンゼンチオール亜鉛塩
有機硫黄化合物6(SM型):和光純薬工業(株)製のペンタクロロチオフェノール亜鉛塩
STY−AMS樹脂(スチレン/α−メチルスチレンコポリマー樹脂)1:アリゾナケミカル社製のSylvares SA85(軟化点:85℃、Mw:700)
STY−AMS樹脂2:プラストリン290(軟化点:Mw:13500)
オイル:(株)ジャパンエナジー製のプロセスX−260(アロマオイル)
老化防止剤1:フレキシス社製のサントフレックス13(N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン)
老化防止剤2:フレキシス社製のノクラック224(2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体)
ステアリン酸:日本油脂(株)製のステアリン酸
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛2種
硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
【0066】
実施例1
表1記載の配合に従い、上記ゴム各種薬品(硫黄および加硫促進剤を除く)を、バンバリーミキサーにて、100℃で6分間混錬りし、混練り物を得た。得られた混錬物に、硫黄ならびに加硫促進剤を添加して、オープンロールを用いて、120℃で5分間混錬りし、未加硫ゴム組成物を得た。該未加硫ゴム組成物を、170℃で20分間プレス加硫し、加硫ゴム組成物を得た。
【0067】
実施例2〜15および比較例1〜5
表1記載の配合に従い、対応原料化合物を実施例1と同様に処理して、それぞれ、対応する未加硫ゴム組成物および加硫ゴム組成物を得た。
【0068】
<評価>
(1)耐破壊性
JIS K6301−1995に準拠して引張試験を行い、加硫ゴム組成物の引張り強さ(TB)を測定した。比較例1の引張り強さを100として、各実施例および比較例におけるTBを指数表示した。指数値が大きい程、耐破壊性が良好であることを示す。
【0069】
(2)操縦安定性
レオメトリックス社製メカニカルスペクトロメーターを用い、せん断歪5%、温度60℃、周波数15Hzで、tanδを測定した。比較例1のtanδを100として、各実施例および比較例におけるtanδを指数表示した。指数値が大きい程、ヒステリシスロスが大きく、操縦安定性が良好であることを示す。
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】