特許第5941355号(P5941355)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5941355-猫用玩具の製造方法および猫用玩具 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5941355
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月29日
(54)【発明の名称】猫用玩具の製造方法および猫用玩具
(51)【国際特許分類】
   A01K 29/00 20060101AFI20160616BHJP
【FI】
   A01K29/00
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-147067(P2012-147067)
(22)【出願日】2012年6月29日
(65)【公開番号】特開2014-8008(P2014-8008A)
(43)【公開日】2014年1月20日
【審査請求日】2014年6月6日
【審判番号】不服2015-15421(P2015-15421/J1)
【審判請求日】2015年8月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000111638
【氏名又は名称】ドギーマンハヤシ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129632
【弁理士】
【氏名又は名称】仲 晃一
(72)【発明者】
【氏名】角辻 智也
【合議体】
【審判長】 小野 忠悦
【審判官】 中田 誠
【審判官】 住田 秀弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−69876(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3119260(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K11/00-29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
猫を遊ばせるための猫用玩具の製造方法であって、
リプロピレンからなる樹脂原料を溶融してこれと虫こぶ由来のマタタビとを混合することにより成形原料を作成する予備混合工程と、
前記予備混合工程により作成された前記成形原料を溶融して玩具の形状に成形する成形工程と、を有し、
前記予備混合工程において、の前記成形原料における前記虫こぶ由来のマタタビの含有量が10〜20質量%であること、
を特徴とする猫用玩具の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペットの猫を遊ばせる玩具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、猫は犬と並んでペットとして人気が高く、近年少子化傾向が顕著になったこともあって、子供のいない家庭、子育てが終わった家庭で、子供の代わりとして猫を飼うことも多くなっている。ペットとして猫を飼う家庭が多くなったことにより、猫用の玩具もペットショップ等で数多く販売されている。
ところで、猫はマタタビに特有の反応(興味)を示すことが古くから知られており、マタタビを使用した猫用玩具も提案されている(特許文献1〜3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−279227号公報
【特許文献2】登録実用新案第3139208号公報
【特許文献3】特開平9−19232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に提案された球状の猫用玩具(フェルトアロマボール)では、マタタビは、コルク等に着香されて球の中心に配されている。この猫用玩具は、インテリアとしての装飾性を付与するために表面が羊毛で覆われており、猫が直に触れて遊ぶのに適さず、装飾性を高めたことにより製造コストが高くなるという問題を有する。
特許文献2に提案された猫用玩具は、マスコット人形をゴム紐で吊し、猫に飛びかからせて猫の肥満を減少させるものである。マタタビは、マスコット人形の背中に設けられたポケットに入れられる。この猫用玩具も、猫が直に触れて遊ぶことが想定されてなく、ポケットの取り付け作業等、製造コストが高くなるおそれがある。
【0005】
特許文献3に提案された猫用玩具は、木工品の表面に複数の孔を設け、孔にマタタビの実または茎等を入れて猫の興味を引くようにしたものである。しこの猫用玩具は、猫が直に触れて遊ぶことが想定されているものの、木材加工品であるために猫の爪等により傷つき易く、また切削作業、マタタビを孔に詰める作業等に手間が掛かるという問題がある。
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたもので、猫が直に触れて遊ぶことができかつ生産性に優れた猫用玩具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る、猫を遊ばせるための猫用玩具の製造方法は、先ず、樹脂原料を溶融してこれとマタタビとを混合することにより成形原料を作成する。マタタビは、溶融する樹脂原料に混合されるときに猫に対する活性を増加させる。次に、マタタビが混入する成形原料を溶融して玩具の形状に成形し猫用玩具となる。
成形原料には虫こぶ由来のマタタビが10〜20質量%含まれるのが好ましい。
【0007】
本発明に係る猫用玩具は、樹脂原料とマタタビとの混合物が射出成形された部分を有する。猫用玩具における射出成形された部分には、虫こぶ由来のマタタビが10〜20質量%含まれるのが好ましい。
本発明に係る他の猫用玩具は、魚を背側と腹側とに2分割した背側部および腹側部で構成される。背側部および腹側部は、いずれも頭と尾とを結ぶ方向に直交する断面がU字状で背側部が背側におよび腹側部が腹側にそれぞれ凸となるように湾曲している。
【0008】
背側部は、魚の目となる位置に魚の体表となる他の表面よりも凹んだ基部と、それぞれの基部から外方に突出する突部と、を備える。
腹側部は、魚の目となる位置に、魚の体表から内方に貫通する貫通孔をそれぞれ備える。「それぞれ備える」としたのは、目は1対あり、貫通孔はそれぞれの目の位置に備えられているからである。
【0009】
背側部および腹側部のいずれか一方または両方は、樹脂原料に虫こぶ由来のマタタビが
10〜20質量%混入されたもので形成されている。
猫用玩具は、背側部の突部が貫通孔に嵌め入れられて背側部および腹側部が一体化されたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、猫が直に触れて遊ぶことができかつ生産性に優れた猫用玩具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は猫用玩具の斜視図である。
図2図2は猫用玩具の構成部品を示す図である。
図3図3は表1におけるマタタビ量と猫の反応の指数との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は猫用玩具1の斜視図、図2は猫用玩具1の構成部品を示す図である。
猫用玩具1は、全体として魚の形状を有しており、背側部2および腹側部3の2つの部分からなる。
背側部2は、魚形状の猫用玩具1を背側と腹側に略2等分割した背側の部分である。背側部2は、長手方向、つまり頭と尾とを結ぶ方向に直交する断面がU字状となるように、中空であって背側が凸となるように湾曲する。なお、猫用玩具1に背びれが設けられていないが、「背側」とは通常の魚における背びれがある側をいう。
【0013】
背側部2は、魚の目の位置に、外方に向けて円柱状に突出する突部11を有する。突部11は、形状が略円形であって表面が平らな基部12から所定の高さで突出する。基部12は、その近傍の背側部2の表面に対して凹んで(奥深くなって)いる。つまり、基部12が背側部2の表面に対して凹んでいることにより、突部11が形成されている。
背側部2には、内方に、リブ13により補強された円柱状のスナップフィット座14が2箇所に設けられている。スナップフィット座14は、先端に凹みを有し、魚の腹側に突出する。また、尾に近い部分の2箇所には、凹みである凹部15が設けられている。
【0014】
背側部2は、ポリプロピレン樹脂(PP)の成形品であり、20質量%のマタタビ粉が含まれる。
腹側部3は、魚形状の猫用玩具1における腹側の部分である。腹側部3は、長手方向に直交する断面が背側部2と同様にU字状であり、中空であって腹側が凸となるように湾曲する。腹側部3は、魚の目の位置に、断面円径の貫通孔21,21が設けられている。貫通孔21の径は突部11の径に略等しい。
【0015】
腹側部3は、リブ22により補強された円柱状のスナップフィット座23を2箇所に有する。スナップフィット座23は、魚の背側に突出し、先端にボール状の結合部24を備える。尾に近い部分の2箇所には、鉤状の保持部25,25が設けられている。
腹側部3は、ポリプロピレン樹脂(PP)で形成されており、マタタビ粉は含まれない。
【0016】
背側部2と腹側部3とは、背側部2の突部11を腹側部3の貫通孔21に嵌め入れ、背側部2のスナップフィット座14,14の先端の凹みに腹側部3のスナップフィット座23,23の結合部24,24を嵌め入れ、および背側部2の凹部15に腹側部3の保持部25,25を嵌め入れて一体化される。また、同時に背側部2の1対の突部11が腹側部3の1対の貫通孔21,21に嵌め入れられる。
【0017】
したがって、腹側部3の2つのスナップフィット座23,23は、背側部2と腹側部3とを魚の形に組み合わせたときそれぞれが背側部2のスナップフィット座14,14に嵌め入れ可能な位置に、腹側部3の保持部25,25は、同様に凹部15に嵌め入れ可能な位置に、かつ背側部2の突部11は、腹側部3の貫通孔21,21に嵌め入れ可能な位置に設けられる。
【0018】
次に、猫用玩具1の製造過程について説明する。
背側部2は、マタタビ粉とPPペレットとを質量比2:8で混合し、ホッパーにおいても混合操作を継続しながらルーダー(押出機)に供給し、複数の孔を有するダイから押し
出してストランドカットによりマタタビ混合PPペレットを製造する(予備混合工程)。ルーダーにおける操作温度は180℃である。
【0019】
使用されるマタタビ粉は、日本粉末薬品株式会社販売、商品名「またたび末CM」、PPペレット(ポリプロピレン樹脂)は、株式会社プライムポリマー販売、プライムポリプロ(登録商標)、品番J−3021GAである。
マタタビは、昆虫が卵を産み付けるとこぶ状の突起である虫こぶができ、この虫こぶにネコ科の動物が酔うことが知られている。使用されるマタタビ粉は、この虫こぶ由来のものが100%である。
【0020】
マタタビ混合PPペレットは、160℃に温調されたプラスチック成形加工機に供給され、溶融物は金型で背側部2に成形される。
腹側部3は、PPペレットが直接に160℃に温調されたプラスチック成形加工機に供給されて金型により成形される。
ところで、本発明者は、猫用玩具1を試作する途中で、事前にマタタビを加熱することにより、一層猫が反応することを発見し、背側部2の成形に、上述したマタタビとPPとの予備混合工程を採用した。表1は、射出成形工程の前にマタタビ粉を事前に加熱することによる猫の反応の活性化の効果を、量を変化させたマタタビ粉の加熱の有無によって確かめた結果である。
【0021】
【表1】
【0022】
猫の反応を見るための試料は、表1の「マタタビ量」の列に記載された各質量のマタタビ粉を各シャーレに秤量し、蓋のしたのちに170度で10分間、恒温槽内で加熱し、室温まで自然冷却(放置し冷却)して調整した。表1の「猫の反応の指数」は、このようにして得た各質量のマタタビ粉の組み合わせ1組と加熱しないでシャーレに秤量したのみの各質量のマタタビ粉の組み合わせ1組とについて、それぞれのシャーレを猫の近くに置いて蓋を取ったときの猫の反応を飼い主が評価したものである。猫の反応の指数の数値は、以下の猫の反応に対応する。
【0023】
指数1:反応がない(においを嗅ぐために近寄るが継続性はない)。
指数2:少し反応する(においを嗅ぎ続けようとする)。
指数3:マタタビを舐める。マタタビを移動させるとマタタビを追いかける。
指数4:マタタビをからだにこすりつける。
指数5:陶酔状態になり、よだれをたらす。
【0024】
図3は表1におけるマタタビ量と猫の反応の指数との関係を示す図である。
図3から、試料としてのマタタビ粉が微量の場合には、加熱の有無による猫の反応の差は見られないが、マタタビ粉が一定の量以上になると、加熱したものの方により猫が反応することが判る。
上述の実施形態において、猫用玩具1をPP以外の他の樹脂で製造することができる。また、マタタビ粉として虫こぶの含有率が異なるものを使用することができる。マタタビ粉を背側部2の樹脂原料に予備混合するのではなく腹側部3の樹脂原料に予備混合してもよく、猫用玩具を一体物として射出成形する場合には、その樹脂原料に予備混合してもよい。
【0025】
猫用玩具1は、樹脂により形成されていることにより、猫が直に触れて遊んでも傷つきにくく壊れにくい。また、猫用玩具1は樹脂成形により製造されるので、木工製品に比べて生産性に優れる。
その他、猫用玩具1、および猫用玩具1の各構成または全体の構造、形状、寸法、部品個数、材質などは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、ペットの猫を遊ばせる猫用玩具に利用することができる。
【符号の説明】
【0027】
1 猫用玩具
2 背側部
3 腹側部
11 突部
12 基部
21 貫通孔
図2
図1
図3