(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記無機粒子が、酸化アルミニウム粒子、酸化ケイ素粒子、酸化マグネシウム粒子または水酸化マグネシウム粒子から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項3に記載のリチウムイオンキャパシタ。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明の蓄電デバイスとして、以下、リチウムイオンキャパシタを具体例に挙げて説明する。
本発明に係るリチウムイオンキャパシタは、基本的に、正極と負極とを、セパレータを介して交互に積層させた電極ユニットが外装容器内に収容されていると共に、電解液が充填されている。外装容器は、円筒型、角型、ラミネート型等の筐体を適宜使用することができ、特に限定されない。なお、積層とは巻回も含める概念である。
本発明に係るリチウムイオンキャパシタにおいて、「正極」とは、放電の際に電流が流出し、充電の際に電流が流入する側の極を意味し、「負極」とは、放電の際に電流が流入し、充電の際に電流が流出する側の極を意味する。
【0020】
リチウムイオンキャパシタにおいては、正極または負極に形成された活物質層にリチウムイオンおよびアニオンが予めドープされている。本明細書において、「ドープ」とは、吸蔵、吸着または挿入をも意味し、広く、正極活物質にリチウムイオンおよびアニオンの少なくとも一方が入る現象、あるいはまた、負極活物質にリチウムイオンが入る現象をいう。また、「脱ドープ」とは、脱離、放出をも意味し、正極活物質からリチウムイオンもしくはアニオンが脱離する現象、または負極活物質からリチウムイオンが脱離する現象をいう。
【0021】
正極および負極の少なくとも一方にリチウムイオンを予めドープする方法としては、例えば、金属リチウム等のリチウムイオン供給源をリチウム極として外装容器内に配置し、正極および負極の少なくとも一方とリチウムイオン供給源との電気化学的接触によって、リチウムイオンをドープさせる方法が用いられる。
【0022】
本発明に係るリチウムイオンキャパシタでは、リチウム極を外装容器内に局所的に配置して電気化学的接触させることによっても、正極および負極の少なくとも一方にリチウムイオンを均一にドープすることができる。
従って、正極および負極が積層された、または更に巻回された大容量の電極ユニットを構成する場合にも、正極および負極の少なくとも一方に円滑にかつ均一にリチウムイオンをドープすることができる。
【0023】
〔セパレータ〕
本発明の蓄電デバイスを構成するセパレータは、当該セパレータの基材となる不織布と、当該不織布の少なくとも一方の面に有された無機粒子とから構成されている。そして、当該不織布は、ポリフッ化ビニリデン繊維またはポリフッ化ビニリデン共重合体繊維を用いて形成された、目付け量が8〜12g/m
2 の不織布である。以下において、本発明に係るセパレータの基材となる、ポリフッ化ビニリデン繊維またはポリフッ化ビニリデン共重合体繊維を用いて形成された、目付け量が8〜12g/m
2 の不織布を、「特定の不織布」ともいう。
ここで、不織布の目付け量とは、「単位面積当たりに存在する繊維の重量」を示しており、繊維の粗密を示すパラメーターである。
セパレータを構成する不織布の目付け量が8g/m
2 未満である場合は、繊維が粗の状態となるため、ラビリンス状に絡まった繊維(繊維が複雑に絡み合った状態の繊維)によって形成される貫通孔の開口面積が大きくなる傾向にある。そのため、リチウムデンドライトが析出した際に正極と負極との短絡を抑制することができない。また、目付け量が12g/m
2 を超える場合は、ラビリンス状に絡まった繊維が密の状態となる、および/またはセパレータの厚みが大きくなるが、セパレータの厚みが大きくなった場合にはリチウムイオンキャパシタの高エネルギー密度化を図ることができない。また、リチウムイオンの移動路を十分に確保できずにリチウムイオンキャパシタの抵抗が上昇するため、電極(正極または負極)の静電容量が小さくなる傾向にある。
【0024】
本発明の蓄電デバイスを構成するセパレータの厚みは、例えば5〜100μmであり、10〜50μmであることが好ましい。セパレータの厚みが5μm未満である場合は、リチウムデンドライトが析出した際に正極と負極との短絡を抑制することが困難となるおそれがある。また、セパレータの厚みが100μmを超える場合は、厚膜であるためにリチウムイオンキャパシタの高エネルギー密度化を図ることが困難となるおそれがある。また、リチウムイオンの移動路を十分に確保できずにリチウムイオンキャパシタの抵抗が上昇するため、電極の静電容量が小さくなる傾向にある。
【0025】
セパレータを構成する特定の不織布としては、ポリフッ化ビニリデン繊維またはポリフッ化ビニリデン共重合体繊維によって形成された不織布が使用されており、その繊維は直径(繊維径)が0.05〜2μmの範囲であり、長さが1〜300μmの範囲であることが好ましい。繊維径が2μmを超える場合は、ラビリンス状に絡まった繊維が粗の状態になる傾向にあり、リチウムデンドライトが析出した際に正極と負極との短絡を抑制することが困難となるおそれがある。また、繊維径が0.05μm未満である場合は、ラビリンス状に絡まった繊維が密の状態となる、および/またはセパレータの厚みが大きくなるが、セパレータの厚みが大きくなった場合には、リチウムイオンキャパシタの高エネルギー密度化を図ることができない。また、リチウムイオンの移動路を十分に確保できずにリチウムイオンキャパシタの抵抗が上昇するため、電極の静電容量が小さくなる傾向にある。さらに、繊維径が0.05μm未満になると、実質的に繊維の製造が困難であるため、不織布を製造することが困難である。
繊維の長さが1μm未満である場合は、繊維同士の絡まりが弱くなり、不織布にクラックが入りやすく極めて脆くなってしまうために、リチウムデンドライトが析出した際に正極と負極との短絡を抑制することが困難となるおそれがある。また、繊維の長さが300μmを超える場合は、繊維同士の絡まりは強く、ラビリンス状に絡まった繊維が密の状態となる、および/またはセパレータの厚みが大きくなるが、セパレータの厚みが大きくなった場合にはリチウムイオンキャパシタの高エネルギー密度化を図ることができない。また、リチウムイオンの移動路を十分に確保できずにリチウムイオンキャパシタの抵抗が上昇するため、電極の静電容量が小さくなる傾向にある。
【0026】
不織布を構成する繊維の繊維径および繊維の長さ、不織布の目付け量は、以下の方法によって測定される。
(不織布の繊維径の求め方)
(1)SEMにより不織布の表面のSEM写真を撮影する。
(2)当該SEM写真のスケールと、撮影された繊維像との比較から繊維径を算出する。
(不織布の繊維の長さの求め方)
(1)SEMにより不織布の表面のSEM写真を撮影する。
(2)当該SEM写真のスケールと、撮影された繊維像との比較から繊維の長さを算出する。
(不織布の目付け量の求め方)
(1)不織布を一定面積に切り取る。
(2)切り取った切片の質量(g)を測定する。
(3)切片の厚み(μm)をミツトヨ社製のデジマチックインジケーター「IDH−0530」を用いて測定する。
(4)面積と厚みと質量とから、切片の密度を求め、目付け量(g/cm
2 )を下記式1に従って算出する。
式1:目付け量(g/cm
2 )=切片の質量(g)/切片の厚み(μm)
【0027】
本発明において、ポリフッ化ビニリデン繊維とは、ポリフッ化ビニリデンから形成された繊維をいい、ポリフッ化ビニリデン共重合体繊維とは、ポリフッ化ビニリデン共重合体から形成された繊維をいう。
ポリフッ化ビニリデン共重合体繊維を形成するポリフッ化ビニリデン共重合体は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体、ラジカル共重合体のいずれの構成を有していてもよい。
ポリフッ化ビニリデン共重合体としては、例えば、四フッ化エチレン、六フッ化プロピレン、三フッ化プロピレン、三フッ化塩化エチレンから選ばれた1種類以上とフッ化ビニリデンとの共重合体などが挙げられる。
【0028】
ポリフッ化ビニリデン共重合体は、フッ化ビニリデンに由来する繰り返し単位とフッ化ビニリデン以外の単量体に由来する繰り返し単位との質量比率(フッ化ビニリデン:フッ化ビニリデン以外の単量体)が95:5〜60:40の範囲であることが好ましい。
【0029】
本発明に係るセパレータを構成する特定の不織布は、ポリフッ化ビニリデン繊維およびポリフッ化ビニリデン共重合体繊維のいずれかを単独で用いて形成された不織布であってもよく、これらが適当な割合で配合されて形成された不織布であってもよい。また、ポリフッ化ビニリデン繊維またはポリフッ化ビニリデン共重合体繊維の他に、任意繊維成分として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等による繊維が配合されて形成された不織布であってもよい。
【0030】
特定の不織布においては、当該特定の不織布を形成する繊維を構成する重合体100質量%に対して、当該重合体を構成する全繰り返し単位中のフッ化ビニリデンに由来する繰り返し単位の割合が、50質量%以上であり、最大100質量%であることが好ましい。フッ化ビニリデンに由来する繰り返し単位の割合が50質量%以上であることにより、十分な電解液の保持性を得ることができる。
【0031】
〔無機粒子〕
本発明に係るセパレータを構成する無機粒子は、セラミックス粒子であることが好ましく、また、金属酸化物粒子または金属水酸化物粒子であることが好ましく、具体的には、例えば、酸化アルミニウム粒子、酸化ケイ素粒子、酸化マグネシウム粒子または水酸化マグネシウム粒子から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。これらの中でも、リチウムイオンキャパシタの安全性および特定の不織布に対する密着性の点から、酸化アルミニウム粒子または酸化ケイ素粒子を用いることが好ましい。酸化アルミニウム粒子や酸化ケイ素粒子は、表面に細孔を有しており、後記に詳述するようにセパレータ形成用塗布液に溶剤が含有される場合は当該溶剤と馴染みやすいため、無機粒子が特定の不織布に対して偏在することなく当該特定の不織布の表面に密着しやすい。更に、セパレータ形成用塗布液に水が含有される場合は当該水への溶解性がないために、高い塗布性が得られる。
【0032】
このように無機粒子を有するセパレータによれば、当該セパレータが薄膜化されていても、正極と負極との短絡を有効に抑止することができる。
また、無機粒子を有するセパレータによれば、電解液の保持性が向上される。
また、無機粒子を有するセパレータは、機械的性質、特に曲げ弾性率が高いために、当該セパレータのハンドリング性が向上される。
【0033】
無機粒子の平均粒子径(D50)は、0.1〜5μmであることが好ましい。無機粒子の平均粒子径(D50)が0.1μm未満である場合は、特定の不織布に形成された貫通孔における局所的に大きな貫通孔を有効に埋めることができず、リチウムデンドライトが析出した際に正極と負極との短絡を抑制することが困難となるおそれがある。また、無機粒子の平均粒子径(D50)が5μmを超える場合は、特定の不織布の表面からの無機粒子の脱離が多くなって、得られるセパレータの厚みのバラつきが大きくなりやすく、局所的に電極間距離が小さな部分が生じてしまうため、当該部分においてリチウムデンドライトの成長が早まり、正極と負極との短絡を抑制することが困難となるおそれがあるので好ましくない。
無機粒子の平均粒子径(D50)は、レーザー回折式粒度分布測定法によって測定される体積換算で頻度が50%となる粒子径をいう。
特定の不織布における無機粒子の有無は、EDX(エネルギー分散型X線分光法)を用いて分析することによって確認することができる。
【0034】
本発明に係るセパレータにおいては、無機粒子が、特定の不織布に対して重合体によって結着されている。以下、無機粒子を特定の不織布に対して結着してセパレータを形成するための当該重合体を「セパレータ用結着剤」と称する。
当該セパレータは、無機粒子を特定の不織布の表面に塗布することによって形成される。その際、特定の不織布の表面の凹凸を無機粒子で埋めた部分の厚みも含めた厚みの平均値を本発明に係るセパレータの厚みとする。セパレータの厚みは上述の通りである。
【0035】
〔セパレータ用結着剤〕
セパレータ用結着剤を構成する重合体としては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ素アクリル重合体、スチレンブタジエンラバー(SBR)、ポリアクリル酸等を用いることができ、ガスの発生を抑制する観点から、フッ素アクリル重合体を用いることが好ましい。ここに、フッ化ビニリデン系ポリマーとアクリルポリマーとを分子レベルで相溶化した重合体をフッ素アクリル重合体という。
セパレータ用結着剤の使用割合は、セパレータ形成用塗布液の全質量に対して0.1〜12wt%であることが好ましく、0.5〜10wt%であることがより好ましい。セパレータ用結着剤の含有割合が12wt%を超える場合は、セパレータ形成用塗布液の粘度が高くなって特定の不織布の表面上に平坦に塗布し難くなり、その結果、無機粒子が一部凝集してしまってラビリンス状に絡まった繊維が粗の状態になった箇所に無機粒子を偏在させることが困難になるおそれがある。また、セパレータ用結着剤の含有割合が0.1wt%未満である場合は、セパレータ形成用塗布液の粘度が低くなって、ラビリンス状に絡まった繊維が粗の状態となった箇所に無機粒子を留めさせることが困難となるおそれがある。いずれの場合においても、特定の不織布における繊維が粗の状態となった箇所に無機粒子を適度に配置させることが困難となるため、リチウムデンドライトが析出した際に正極と負極との短絡を抑制することが困難となるおそれがある。
【0036】
〔帯電防止剤〕
本発明に係るセパレータにおいては、特定の不織布の表面に無機粒子と共に帯電防止剤を結着させてもよい。帯電防止剤が含有されたセパレータによっては、以下の効果を得ることができる。
すなわち、薄膜化されたセパレータは帯電しやすく、静電気による影響が発生しやすくなる。そのため、例えば正極と負極とをセパレータを介して交互に積層させる際に、セパレータに帯電した静電気によって、セパレータにしわやよれが発生する傾向にある。セパレータにしわやよれが発生すると、電極間距離のバラつきが大きくなり、電極間距離が大きい箇所において局所的に抵抗が高くなってしまう。このためリチウムイオンの均一なドープを図ることができず、所期のリチウムイオンキャパシタが得られない。然るに、帯電防止剤が含有させることによって、静電気の発生を抑制することができる。
更に、後述するように、帯電防止剤をセパレータ形成用塗布液に添加することによって、主に無機粒子に存在する細孔に帯電防止剤が吸着するため、無機粒子の特定の不織布に対する密着性が高まる傾向にある。
【0037】
帯電防止剤としては、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤等が挙げられる。両性界面活性剤としては、例えば、「エレクトロストリッパーAC」(花王ケミカル社製)が挙げられる。非イオン性界面活性剤としては、例えば、「エレクトロストリッパーEA」、「エレクトロストリッパーHS−12N」、「エレクトロストリッパーHS−12PA」、「エレクトロストリッパーTS−11B」、「エレクトロストリッパーTS−13B」、「エレクトロストリッパーTS−2B」、「エレクトロストリッパーTS−2PA」、「エレクトロストリッパーTS−3B」、「エレクトロストリッパーTS−5」〜「エレクトロストリッパーTS−9」(以上、花王ケミカル社製)等が挙げられる。陰イオン性界面活性剤としては、例えば、「エレクトロストリッパーF」、「エレクトロストリッパーPC」、「エレクトロストリッパーPC−3」(以上、花王ケミカル社製)等が挙げられる。陽イオン性界面活性剤としては、例えば、「エレクトロストリッパーQN」(花王ケミカル社製)が挙げられる。
【0038】
帯電防止剤の使用割合は、セパレータ形成用塗布液の全質量に対して0.1〜0.5wt%であることが好ましい。帯電防止剤の使用割合が0.1wt%未満である場合は、リチウムイオンキャパシタの製造時にセパレータに帯電した静電気によって当該セパレータにしわやよれが発生してしまい、その結果、リチウムイオンを均一にドープすることができずに電極の静電容量が低くなってしまう傾向にある。また、帯電防止剤の使用割合が0.5wt%を超える場合は、当該帯電防止剤を含むセパレータの表面の粘着性が高くなってしまい、リチウムイオンキャパシタの製造時に意図しない場所にセパレータが付着するなど、リチウムイオンキャパシタの製造に係るハンドリング性が低くなる傾向にある。
【0039】
〔セパレータの作製方法〕
本発明に係るセパレータは、特定の不織布に対して、無機粒子を有するセパレータ形成用塗布液を塗布することによって形成することができる。無機粒子を結着させる場合には、セパレータ形成用塗布液にセパレータ用結着剤を含有させればよい。
【0040】
本発明に係るセパレータは、具体的には、以下の手順により作製することができる。
まず、特定の不織布を作製する。特定の不織布の作製方法(紡糸法)としては、特に限定されず、既存の不織布の作製方法を採用することができる。具体的には、メルトブロー法、セルフアッセンブリー法、フェイズ・セパレーション法およびエレクトロスピニング法等が挙げられるが、いずれを用いてもよい。例えば、メルトブロー法を用いて、ポリフッ化ビニリデン繊維またはポリフッ化ビニリデン共重合体繊維を吹き付けることによって、特定の不織布を作製することができる。
特定の不織布の目付け量および厚みは、溶融された繊維の吐出時間を制御することにより、任意に制御することができる。特定の不織布を形成する繊維の繊維径と繊維の長さは、吐出口径を調整することによって最適化することができる。
一方、無機粒子を有するセパレータ形成用塗布液を調製する。具体的には、溶剤またはイオン交換水や精製水等の水に無機粒子を添加し、必要に応じて帯電防止剤等を添加して、スクリューミキサーやホモジナイザー等の撹拌装置を用いて分散させることによってセパレータ形成用塗布液を調製することができる。セパレータ用結着剤は無機粒子を分散させると同時または無機粒子の分散後に添加することができる。また、セパレータ用結着剤は溶剤や水に予め分散させた状態にして添加してもよい。
次いで、このセパレータ形成用塗布液を基材となる特定の不織布に塗布して塗布膜を形成する。セパレータ形成用塗布液を塗布する際には、特定の不織布をコロナ放電処理等によって表面の親水化を行うことが好ましい。特定の不織布の表面を親水化することによって、セパレータ形成用塗布液の濡れ性が確保され、均一な塗布膜を形成することができる。セパレータ形成用塗布液の塗布に使用する装置としては、例えば、バーコーター、ダイコーター、グラビアコーター、リバースロールコーター、スクイズロールコーター、カーテンコーター、ブレードコーター、ナイフコーター等の、従来から知られている装置を用いることができる。
その後、塗布膜から溶剤や水を加熱処理によって除去する。加熱処理としては、電熱線や赤外線、蒸気間接加熱等を用いることができる。
なお、本発明に係るセパレータの作製方法は、以上の方法に限られない。
【0041】
〔増粘剤〕
本発明に係るセパレータを形成するためのセパレータ形成用塗布液には、当該セパレータ形成用塗布液の粘度を調整するために、増粘剤を含有させることができる。
増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)等を用いることができる。
増粘剤の含有量は、セパレータ形成用塗布液の全質量中0.5〜2wt%であることが好ましい。
セパレータ形成用塗布液にCMC等を含有させる場合は、当該CMCについて紫外線やガンマ線の照射またはアルコールによる滅菌処理を行うことが好ましい。CMCは生分解性を有し、バクテリア等により容易に分解されたり酸性溶液に分散させるとゲル化する。そして、ゲル化した場合はセパレータ形成用塗布液の特定の不織布への塗布が困難となる傾向にあるが、このような処理を行うことによって、CMCのゲル化を抑制することができる。
セパレータ形成用塗布液に増粘剤を含有させる場合は、増粘剤は無機粒子を分散させると同時または無機粒子の分散後に添加することができ、また、複数回に分けて添加してもよい。また、増粘剤は溶剤や水に予め分散させた状態にして添加してもよい。
【0042】
〔正極および負極〕
本発明に係るリチウムイオンキャパシタを構成する正極および負極は、例えば正極集電体、負極集電体(以下、両者を併せて「電極集電体」ともいう。)上における一方の表面あるいは両方の表面に、電極活物質(正極活物質または負極活物質)が結着剤によって結着された状態の活物質層(正極活物質層または負極活物質層)が積層された構成を有する。
【0043】
〔集電体〕
電極集電体としては、例えば、パンチングメタル、エキスパンドメタルまたは電解エッチング箔のような表裏面を貫通する貫通孔や空隙が形成された多孔材を用い、これにより、リチウム極を正極および負極の少なくとも一方に対向させて配置することにより、電気化学的にリチウムイオンを活物質層に供給することが好ましい。貫通孔の形態、数等は特に限定されず、電解液中におけるリチウムイオンが電極集電体に遮断されることなく、正極(負極)の表裏間を移動できるように設定することができる。
【0044】
電極集電体の貫通孔は、エッチング等によって開孔を形成する方法、機械的な打ち込みにより開孔を形成する方法のいずれの方法によって形成されてもよい。電極集電体の貫通孔の径は、例えば0.1〜100μmであり、0.5〜80μmであることが好ましく、1〜50μmであることが特に好ましい。
また、電極集電体の気孔率は、20〜80%であることが好ましく、30〜70%であることがより好ましい。
ここで、気孔率は、下記数式(1)によって算出される。
数式(1):気孔率=[1−(電極集電体の質量/電極集電体の真比重)/(電極集電体の見かけ体積)]×100
【0045】
電極集電体の材質としては、例えば、正極集電体としては、アルミニウム、ステンレス鋼等を用いることができ、一方、負極集電体としては、ステンレス鋼、銅、ニッケル等を用いることができる。
電極集電体の厚みは特に限定されないが、通常2〜100μmであればよく、5〜80μmであることが好ましく、7〜50μmであることが特に好ましい。
【0046】
〔正極活物質〕
正極活物質層に含有される正極活物質としては、リチウムイオンおよびテトラフルオロボレート等の少なくとも1種のアニオンを可逆的に吸着(ドープ)・脱離(脱ドープ)可能な物質が用いられ、例えば活性炭粉末が挙げられる。
この活性炭粉末の数平均粒径(D50)は、2μm以上であることが好ましく、より好ましくは2〜50μm、特に好ましくは2〜20μmである。また、平均細孔径は10nm以下であることが好ましく、更に、比表面積は600〜3000m
2 /gであることが好ましく、より好ましくは1300〜2500m
2 /gである。
【0047】
〔負極活物質〕
一方、負極活物質層に含有される負極活物質としては、リチウムイオンを可逆的にドープ・脱ドープ可能である物質のうち、黒鉛系材料が用いられる。
黒鉛系材料としては、具体的には、黒鉛(グラファイト)、複合炭素等が挙げられる。
複合炭素としては、非晶質性炭素により表面の一部または全部が被覆された黒鉛である被覆黒鉛粒子、非晶質性炭素と黒鉛とを混合した黒鉛である複合黒鉛粒子等が挙げられる。
被覆黒鉛粒子は、具体的には、黒鉛系粒子の表面がハードカーボン、コークス、1500℃以下に焼成したメソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、メソフェーズピッチカーボンファイバー(MCF)等の非晶質性炭素によって被覆された粒子であり、例えば天然黒鉛、人造黒鉛、ハードカーボンやコークス等の黒鉛系粒子の表面をタールやピッチ等で被覆して熱処理を行なうことによって製造することができる。また、被覆黒鉛粒子は、トルエンガスを炭素原料として、化学蒸着処理法によって天然黒鉛の表面を天然黒鉛の質量に対して10質量%の非晶質性炭素で被覆することによっても製造することができる。
このような被覆黒鉛粒子において、粒子表面におけるタールやピッチ由来の非晶質性炭素による被覆の有無は、ラマンスペクトル、XRD等の測定により確認することができる。また、被覆構造は、集束イオンビーム(FIB)にて粒子の一部の断面を切り取り、透過型電子顕微鏡(TEM)によってその構造を確認することができる。
複合黒鉛粒子は、例えば前述した非晶質性炭素と黒鉛系粒子とを適宜混合することによって製造することができる。
これらの黒鉛系材料は、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を混合して使用してもよい。
本発明においては、負極活物質として、特に被覆黒鉛粒子を用いることが好ましい。
【0048】
黒鉛(グラファイト)としては、X線広角回折法による(002)面の平均面間隔(d002)が3.357Åであり、また、アルゴンレーザーラマンによる1580cm
-1付近のピークに対する1355cm
-1付近のピークの強度比(I1355/I1580)が、0.25であり、さらに、X線回折で求めた結晶子サイズLcおよびLaが100nm以上であるものを用いることが好ましい。
また、複合炭素としては、アルゴンレーザーラマンによる1580cm
-1付近のピークに対する1355cm
-1付近のピークの強度比が1.03であるものを用いることが好ましい。
【0049】
負極活物質としては、正極活物質と同様に粉末状のものが用いられる。具体的には、数平均粒径(D50)が0.1〜5μmであるものを用いることが好ましい。数平均粒径(D50)が0.1μm未満のものは製造が困難である。一方、数平均粒径(D50)が5μmを超える負極活物質を用いた場合は、内部抵抗が十分に小さいリチウムイオンキャパシタを得ることができないおそれがある。
また、負極活物質としては、比表面積が0.1〜2000m
2 /gであるものを用いることが好ましく、より好ましくは0.1〜600m
2 /gである。
【0050】
〔活物質層〕
正極および負極の活物質層の膜厚は、1〜100μmであればよく、1〜80μmであることが好ましく、2〜70μmであることがより好ましい。
【0051】
〔正極および負極の作製方法〕
正極または負極は、通常用いられる既知の方法によって作製することができる。例えば、各活物質粉末と、電極用バインダと、必要に応じて、導電材、CMC(カルボキシメチルセルロース塩を含む)等の増粘剤とが少なくとも含有された電極形成用スラリーを、各電極集電体の一方の表面あるいは両方の表面に塗布することにより、あるいは、当該電極形成用スラリーをシート状に成形したものを各電極集電体に貼付することにより、正極または負極を作製することができる。
【0052】
〔電極用バインダ〕
正極および負極の作製において用いる電極用バインダとしては、具体的には、水系分散体バインダを用いることが好ましい。水や水溶性有機溶媒、またはこれらの混合溶媒にバインダ樹脂が分散された分散体を水系分散体バインダという。
水系分散体バインダに分散されるバインダ樹脂としては、例えば、SBR等のゴム系樹脂、ポリ四フッ化エチレン、ポリフッ化ビニリデン等の含フッ素系樹脂、ポリプロピレンおよびポリエチレン等の熱可塑性樹脂、アクリル系樹脂、フッ素アクリル重合体等の含フッ素アクリル系樹脂などを用いることができる。特に良好な密着性および優れた電気特性が得られる観点から、フッ素アクリル重合体が分散された水系分散体バインダを用いることが好ましい。
電極用バインダの添加量は、電極形成用スラリーの全質量に対して、1〜10wt%であることが好ましい。電極用バインダの添加量が1wt%未満である場合は電極活物質の電極集電体に対する結着性が十分に得られず、電極集電体と電極活物質との間に空隙が生じたり、電極活物質の滑落が発生するため、電極活物質と電極集電体との電子の授受が円滑に行われ難くなり、リチウムイオンキャパシタのサイクル特性が劣る傾向にある。また、電極用バインダの添加量が10wt%を超える場合は、電極活物質の電極集電体に対する結着性は確保されるものの、電極活物質と電極集電体との間が電極用バインダによって埋められてしまい、これによっても電極活物質と電極集電体との電子の授受が円滑に行われ難くなり、リチウムイオンキャパシタのサイクル特性が劣る傾向にある。
【0053】
〔導電材〕
導電材としては、例えば、アセチレンブラックやケッチェンブラック等のカーボンブラック、グラファイト、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、その他の気相法炭素繊維、金属粉末等が挙げられる。
導電材の添加量は、用いる電極活物質の電気伝導度、作製される電極形状等によっても異なるが、いずれも、通常、電極活物質に対して2〜40質量%であることが好ましい。
【0054】
〔電解液〕
本発明に係るリチウムイオンキャパシタにおいては、電解液として、リチウム塩などの支持電解質が非プロトン性有機溶媒に溶解された電解質溶液が用いられる。以下に、電解液中の各成分について説明する。
【0055】
〔非プロトン性有機溶媒〕
電解液を構成する非プロトン性有機溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート等の環状カーボネート、ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、メチルブチルカーボネート(MBC)等の鎖状カーボネートが挙げられる。これらのうちの2種以上を混合した混合溶媒を用いてもよく、特に、粘度が低く、解離度が高く、イオン伝導性が高い電解液が得られることから、環状カーボネートと鎖状カーボネートとの混合物を用いることが好ましい。
本発明において、電解液を構成する非プロトン性有機溶媒は、環状カーボネートおよび鎖状カーボネート以外の有機溶媒、例えば、γ−ブチロラクトン等の環状エステル、スルホラン等の環状スルホン、ジオキソラン等の環状エーテル、プロピオン酸エチル等の鎖状カルボン酸エステル、ジメトキシエタン等の鎖状エーテル等を含有していてもよい。
【0056】
非プロトン性有機溶媒が環状カーボネートと鎖状カーボネートとの混合溶媒である場合は、その混合割合は、環状カーボネート:鎖状カーボネートが、質量比で5:95〜80:20であることが好ましく、さらに好ましくは10:90〜70:30である。このような混合割合であることによって、電解液の粘度の上昇が抑制され、支持電解質の解離度を高めることができるため、充放電特性に関わる電解液の伝導度を高めることができ、また、支持電解質の溶解度をさらに高めることができる。
【0057】
〔支持電解質〕
電解液を構成する支持電解質としては、リチウム塩を用いることが好ましく、リチウム塩としては、例えば、LiClO
4 、LiAsF
6 、LiBF
4 、LiPF
6 、Li(C
2 F
5 SO
2 )
2 、LiN(CF
3 SO
2 )
2 等が挙げられ、特に、イオン伝導性が高く、低抵抗であることから、LiPF
6 が好適に用いられる。電解液におけるリチウム塩の濃度は、低い内部抵抗が得られることから、0.1mol/L以上であることが好ましく、0.5〜1.5mol/Lであることがより好ましい。
【0058】
〔リチウムイオンキャパシタの構造〕
本発明に係るリチウムイオンキャパシタの構造としては、特に、電極ユニットが帯状の正極と負極とをセパレータを介して積層して巻回させる巻回型、板状またはシート状の正極と負極とをセパレータを介して各3層以上積層された積層型、並びに、このように積層された構成の電極ユニットを外装フィルム内に封入したフィルム型等が挙げられる。
これらのリチウムイオンキャパシタの構造は、特開2004−266091号公報等により既知であり、それらと同様の構成とすることができる。
【0059】
以上、本発明の実施の形態について具体的に説明したが、本発明の実施の形態は上記の例に限定されず、種々の変更を加えることができる。
例えば、本発明の蓄電デバイスは、リチウムイオンキャパシタに限定されず、電気二重層キャパシタおよびリチウムイオン二次電池にも好適に適用することができる。
【実施例】
【0060】
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0061】
〔実施例1:リチウムイオンキャパシタ〕
(1)正極の作製
正極集電体:(気孔率47%、厚さ38μmのアルミニウム製エキスパンドメタル(日本金属工業株式会社製))の両面に、導電性塗料を、縦型ダイ方式の両面塗工機を用い、塗工幅が130mm、塗工速度が8m/minの塗工条件により、両面合わせた塗布厚みの目標値を20μmに設定して両面塗工した後、200℃で24時間の条件で減圧乾燥させることにより、正極集電体前駆体の表裏面に導電層を形成した。
次いで、正極集電体前駆体の表裏面に形成された導電層上に、電極用バインダ:フッ素アクリル重合体を含む水系分散体バインダ「TRD201B」(JSR社製)5wt%、CMCナトリウム塩1wt%および正極活物質94wt%が混合された電極形成用スラリーを、縦型ダイ方式の両面塗工機を用い、塗工速度8m/minの塗工条件により、両面合わせた塗布厚み(総厚み)の目標値を10μmに設定して両面塗工した後、200℃で24時間の条件で減圧乾燥させることにより、導電層上に正極活物質層を形成した。
このようにして得られた、正極集電体前駆体の一部分に導電層および正極活物質層が積層された材料を、導電層および正極活物質層が積層された部分(以下、正極電極シートについて「塗工部」ともいう。)が98mm×126mm、いずれの層も形成されてない部分(以下、正極電極シートについて「未塗工部」ともいう。)が98mm×15mmとなるように、98mm×141mmの大きさに切断することにより、正極集電体の両面に正極活物質層が形成された正極電極シートを作製した。
【0062】
(2)負極の作製
負極集電体(気孔率57%、厚さ32μmの銅製エキスパンドメタル(日本金属工業株式会社製))の両面に、電極用バインダ:フッ素アクリル重合体を含む水系分散体バインダ「TRD201B」(JSR社製)5wt%、CMCナトリウム塩1wt%および負極活物質(数平均粒径(D50)が4μmである被覆黒鉛粒子)94wt%が混合された電極形成用スラリーを、縦型ダイ方式の両面塗工機を用い、塗工幅が130mm、塗工速度が8m/minの塗工条件により、両面合わせた塗布厚み(総厚み)の目標値を80μmに設定して両面塗工した後、200℃で24時間の条件で減圧乾燥させることにより、負極集電体の表裏面に負極活物質層を形成した。
このようにして得られた、負極集電体の一部分に負極活物質層が形成された材料を、負極活物質層が形成された部分(以下、負極電極シートについて「塗工部」ともいう。)が100mm×128mm、負極活物質層が形成されてない部分(以下、負極電極シートについて「未塗工部」ともいう。)が100mm×15mmになるように、100mm×143mmの大きさに切断することにより、負極集電体の両面に負極活物質層が形成された負極電極シートを作製した。
ここに用いた被覆黒鉛粒子は、数平均粒径(D50)2.5μmの微粒子状の黒鉛粉末100質量部に対して、前駆体となるピッチ50質量部をニーダーで混合し、窒素雰囲気下において、5℃/minの割合で昇温し、温度1000℃で6時間保持することにより焼成し、得られる焼成物を数平均粒径(D50)の値が4μmとなるまで解砕することにより、得られた粒子である。
【0063】
(3)セパレータの作製
メルトブロー法によって温度を適宜調節し、溶融したポリフッ化ビニリデンを直径が0.2〜1μmとなるように台紙へ吹き付け、その後、台紙を剥がすことによって、不織布を形成した(目付け量10g/m
2 )。一方、セパレータ用結着剤(SBR)および無機粒子(平均粒子径(D50)が1.0μmである酸化ケイ素粒子)を混合することによってセパレータ形成用塗布液を調製した。このセパレータ形成用塗布液を上記の不織布の一面にバーコーター「自動塗工装置」(テスター産業社製)を用いて全体の厚みが20μmとなるように均一に塗布し、乾燥することにより、大面積セパレータを形成した。この大面積セパレータを102mm×130mmの大きさに切断することにより、セパレータを作製した。
得られたセパレータの厚みは21μmであった。
【0064】
(4)電極ユニットの作製
先ず、正極電極シート10枚、負極電極シート11枚、セパレータ22枚を用意し、正極電極シートと負極電極シートとを、それぞれの塗工部は重なるが、それぞれの未塗工部は反対側になり重ならないよう、セパレータ、負極電極シート、セパレータ、正極電極シートの順で積重し、積重体の4辺をテープにより固定することにより、電極積層ユニットを作製した。
次いで、厚み100μmの箔状のリチウム極を切断し、厚さ40μmの銅網に圧着することにより、リチウムイオン供給源を作製し、このリチウムイオン供給源を電極積層ユニットの上側に負極と対向するよう配置した。
そして、作製した電極積層ユニットの10枚の正極電極シートの各々の未塗工部に、予め幅50mm、長さ50mm、厚さ0.2mmのアルミニウム製の正極用電源タブにシーラントフィルムを熱融着し、正極用電源タブを重ねて溶接した。一方、電極積層ユニットの11枚の負極電極シートの各々の未塗工部およびリチウムイオン供給源の各々に、予め幅50mm、長さ50mm、厚さ0.2mmの銅製の負極用電源タブにシーラントフィルムを熱融着し、負極用電源タブを重ねて溶接し、もって電極ユニットを作製した。
【0065】
(5)リチウムイオンキャパシタの作製
次いで、ポリプロピレン層、アルミニウム層およびナイロン層が積層されてなり、寸法が125mm(縦幅)×160mm(横幅)×0.15mm(厚み)で、中央部分に105mm(縦幅)×146mm(横幅)の絞り加工が施された一方の外装フィルム、並びにポリプロピレン層、アルミニウム層およびナイロン層が積層されてなり、寸法が125mm(縦幅)×160mm(横幅)×0.15mm(厚み)の他方の外装フィルムを作製した。
【0066】
次いで、他方の外装フィルム上における収容部となる位置に、上記の電極ユニットを、その正極端子および負極端子の各々が、他方の外装フィルムの端部から外方に突出するよう配置し、この電極ユニットに一方の外装フィルムを重ね合わせ、一方の外装フィルムおよび他方の外装フィルムの外周縁部における3辺(正極端子および負極端子が突出する2辺を含む)を熱融着した。
一方、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートおよびジエチルカーボネート(体積比で3:1:4)の混合溶媒を用い、濃度1.2mol/LのLiPF
6 を含む電解液を調製した。
次いで、一方の外装フィルムおよび他方の外装フィルムの間に、上記電解液を注入した後、一方の外装フィルムおよび他方の外装フィルムの外周縁部における残りの一辺を熱融着した。
以上のようにして、ラミネート外装リチウムイオンキャパシタ(以下、「リチウムイオンキャパシタセル」という。)〔LIC(1)〕を合計10個作製した。
【0067】
〔実施例2:リチウムイオンキャパシタ〕
セパレータ用結着剤としてフッ素アクリル重合体を用いると共に、無機粒子として平均粒子径(D50)が2.0μmである酸化ケイ素粒子を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオンキャパシタセル〔LIC(2)〕を合計10個作製した。
【0068】
〔実施例3:リチウムイオンキャパシタ〕
セパレータを構成する無機粒子として、平均粒子径(D50)が1.0μmである酸化マグネシウム粒子を用いたこと以外は、実施例2と同様にしてリチウムイオンキャパシタセル〔LIC(3)〕を合計10個作製した。
【0069】
〔実施例4:リチウムイオンキャパシタ〕
セパレータを構成する不織布として、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体から得られるポリフッ化ビニリデン共重合体繊維(繊維径:0.2〜1μm、長さ:270μm)によって形成された不織布(目付け量10g/m
2 )を用いたこと以外は、実施例2と同様にしてリチウムイオンキャパシタセル〔LIC(4)〕を合計10個作製した。
【0070】
〔実施例5:リチウムイオンキャパシタ〕
セパレータを構成する無機粒子として平均粒子径(D50)が1.0μmである酸化ケイ素粒子を用いると共に、正極および負極を作製する電極用バインダとしてそれぞれポリフッ化ビニリデンのバインダを用いたこと以外は、実施例2と同様にしてリチウムイオンキャパシタセル〔LIC(5)〕を合計10個作製した。
【0071】
〔実施例6:リチウムイオンキャパシタ〕
セパレータを構成する無機粒子として平均粒子径(D50)が6.0μmである酸化ケイ素粒子を用いたこと以外は、実施例2と同様にしてリチウムイオンキャパシタセル〔LIC(6)〕を合計10個作製した。
【0072】
〔比較例1:リチウムイオンキャパシタ〕
セパレータにおいて無機粒子を使用しなかったこと以外は、実施例2と同様にしてリチウムイオンキャパシタセル〔LIC(7)〕を合計10個作製した。
【0073】
〔比較例2:リチウムイオンキャパシタ〕
セパレータを構成する不織布として、繊維径が1〜4μmであるポリエチレン繊維によって形成された不織布(目付け量15g/m
2 )を用いたこと以外は、実施例2と同様にしてリチウムイオンキャパシタセル〔LIC(8)〕を合計10個作製した。
【0074】
〔比較例3:リチウムイオンキャパシタ〕
セパレータを構成する不織布として、繊維径が1〜5μmであるポリエチレンテレフタレート繊維によって形成された不織布(目付け量20g/m
2 )を用いたこと以外は、実施例2と同様にしてリチウムイオンキャパシタセル〔LIC(9)〕を合計10個作製した。
【0075】
〔比較例4:リチウムイオンキャパシタ〕
セパレータにおいて、無機粒子の代わりに平均粒子径(D50)が2.5μmであるポリフッ化ビニリデン粉末(有機粒子)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオンキャパシタセル〔LIC(10)〕を合計10個作製した。
【0076】
〔比較例5:リチウムイオンキャパシタ〕
セパレータを構成する不織布として、ポリフッ化ビニリデン繊維(繊維径:0.02〜0.04μm、長さ:170μm)によって形成された不織布(目付け量7g/m
2 )を用いたこと以外は、実施例2と同様にしてリチウムイオンキャパシタセル〔LIC(11)〕を合計10個作製した。
【0077】
〔比較例6:リチウムイオンキャパシタ〕
セパレータを構成する不織布として、ポリフッ化ビニリデン繊維(繊維径:3〜5μm、長さ:290μm)によって形成された不織布(目付け量4g/m
2 )を用いたこと以外は、実施例2と同様にしてリチウムイオンキャパシタセル〔LIC(12)〕を合計10個作製した。
【0078】
〔
参考例:リチウムイオン二次電池〕
(1)正極の作製
厚さ20μmのアルミニウム製圧延箔(東海アルミ箔株式会社製)の両面に、電極用バインダ:フッ素アクリルバインダ「TRD201B」(JSR株式会社製)4wt%、CMCナトリウム塩「セロゲン」(第一工業製薬株式会社製)1wt%、導電材「Super−P」(ティムカル・ジャパン株式会社製)5wt%および正極活物質「NMC05」(三菱化学株式会社製)90wt%を含有した電極形成用スラリーを、縦型ダイ方式の両面塗工機を用い、塗工速度が8m/minの塗工条件により、両面合わせた塗布厚みの目標値を100μmに設定して両面塗工した後、200℃で24時間の条件で減圧乾燥させることにより、正極集電体上に正極活物質層を形成した。
次いでロールプレス機(由利ロール株式会社製)を用いて正極活物質層の密度が3.3g/cm
3 になるまで圧縮した。
このようにして得られた、正極集電体の一部分に正極活物質層が形成された材料を、正極活物質層が形成された部分(以下、正極電極シートについて「塗工部」ともいう。)が98mm×126mm、正極活物質層が形成されてない部分(以下、正極電極シートについて「未塗工部」ともいう。)が98mm×15mmとなるように、98mm×141mmの大きさに切断することにより、正極集電体の両面に正極活物質層が形成された正極電極シートを作製した。
【0079】
(2)負極の作製
厚さ15μmの銅製圧延箔(日本製箔株式会社製)の両面に、電極用バインダ:フッ素アクリルバインダ「TRD201B」(JSR株式会社製)6wt%、CMCナトリウム塩「セロゲン」(第一工業製薬株式会社製)1wt%、導電材「Super−P」(ティムカル・ジャパン株式会社製)5wt%および負極活物質「GRAMAX」(大阪ガスケミカル株式会社製)88wt%を含有した電極形成用スラリーを、縦型ダイ方式の両面塗工機を用い、塗工速度が8m/minの塗工条件により、両面合わせた塗布厚みの目標値を120μmに設定して両面塗工した後、200℃で24時間の条件で減圧乾燥させることにより、負極集電体上に負極活物質層を形成した。
次いでロールプレス機(由利ロール株式会社製)を用いて、負極活物質層の密度が1.1g/cm
3 になるまで圧縮した。
このようにして得られた、負極集電体の一部分に負極活物質層が形成された材料を、負極活物質層が形成された部分(以下、負極電極シートについて「塗工部」ともいう。)が100mm×128mm、負極活物質層が形成されてない部分(以下、負極電極シートについて「未塗工部」ともいう。)が100mm×15mmになるように、100mm×143mmの大きさに切断することにより、負極集電体の両面に負極活物質層が形成された負極電極シートを作製した。
【0080】
(3)セパレータの作製
メルトブロー法によって温度を適宜調節し、溶融したポリフッ化ビニリデンを直径が0.2〜1μmとなるように台紙へ吹き付け、その後、台紙を剥がすことによって、不織布を形成した(目付け量10g/m
2 )。一方、セパレータ用結着剤(フッ素アクリル重合体)および無機粒子(平均粒子径(D50)が1.0μmである酸化ケイ素粒子)を混合することによってセパレータ形成用塗布液を調製した。このセパレータ形成用塗布液を上記の不織布の一面にバーコーター「自動塗工装置」(テスター産業社製)を用いて全体の厚みが20μmとなるように均一に塗布し、乾燥することにより、大面積セパレータを形成した。この大面積セパレータを102mm×130mmの大きさに切断することにより、セパレータを作製した。
得られた不織布の厚みは19μm、セパレータの厚みは13μmであった。
【0081】
(4)電極ユニットの作製
先ず、正極電極シート20枚、負極電極シート21枚、セパレータ40枚を用意し、正極電極シートと負極電極シートとを、それぞれの塗工部は重なるが、それぞれの未塗工部は反対側になり重ならないよう、負極電極シート、セパレータ、正極電極シート、セパレータの順で積重し、積重体の4辺をテープにより固定することにより、電極積層ユニットを作製した。
そして、作製した電極積層ユニットの10枚の正極電極シートの各々の未塗工部に、予め幅50mm、長さ50mm、厚さ0.2mmのアルミニウム製の正極用電源タブにシーラントフィルムを熱融着し、正極用電源タブを重ねて溶接した。一方、電極積層ユニットの11枚の負極電極シートの各々の未塗工部およびリチウムイオン供給源の各々に、予め幅50mm、長さ50mm、厚さ0.2mmの銅製の負極用電源タブにシーラントフィルムを熱融着し、負極用電源タブを重ねて溶接し、もって電極ユニットを作製した。
【0082】
(5)リチウムイオン二次電池の作製
次いで、ポリプロピレン層、アルミニウム層およびナイロン層が積層されてなり、寸法が125mm(縦幅)×160mm(横幅)×0.15mm(厚み)で、中央部分に105mm(縦幅)×146mm(横幅)の絞り加工が施された一方の外装フィルム、並びにポリプロピレン層、アルミニウム層およびナイロン層が積層されてなり、寸法が125mm(縦幅)×160mm(横幅)×0.15mm(厚み)の他方の外装フィルムを作製した。
次いで、他方の外装フィルム上における収容部となる位置に、上記の電極ユニットを、その正極端子および負極端子の各々が、他方の外装フィルムの端部から外方に突出するよう配置し、この電極ユニットに一方の外装フィルムを重ね合わせ、一方の外装フィルムおよび他方の外装フィルムの外周縁部における3辺(正極端子および負極端子が突出する2辺を含む)を熱融着した。
一方、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートおよびジエチルカーボネート(体積比で3:1:4)の混合溶媒を用い、濃度1.2mol/LのLiPF
6 を含む電解液を調製した。
次いで、一方の外装フィルムおよび他方の外装フィルムの間に、上記電解液を注入した後、一方の外装フィルムおよび他方の外装フィルムの外周縁部における残りの一辺を熱融着した。
以上のようにして、ラミネート外装リチウムイオン二次電池(以下、「リチウムイオン二次電池セル」という。)〔LIB(1)〕を合計10個作製した。
【0083】
〔比較例7:リチウムイオン二次電池〕
セパレータとして比較例1と同様のセパレータを用いたこと以外は、実施例7と同様にしてリチウムイオン二次電池セル〔LIB(2)〕を合計10個作製した。
【0084】
〔リチウムイオンキャパシタセルの静電容量およびDC−IR〕
実施例1〜6および比較例1〜4で作製したリチウムイオンキャパシタセル〔LIC(1)〕〜〔LIC(12)〕の10個ずつの各々について、充放電装置(日本電計株式会社製)を用い、温度25℃の環境下で電圧範囲3.8〜2.2V、電流値10Aの条件によってCC放電(定電流放電)を行い、そのCC放電の際のIRドロップ(直流抵抗の低下量)の値に基づいて、セルの静電容量(F)およびDC−IR(Ω)を各リチウムイオンキャパシタセルの平均値として算出した。結果を表1に示す。
【0085】
〔リチウムイオン二次電池セルの静電容量およびDC−IR〕
参考例および比較例7で作製したリチウムイオン二次電池セル〔LIB(1)〕、〔LIB(2)〕の10個ずつの各々について、充放電装置(日本電計株式会社製)を用い、温度25℃の環境下で電圧範囲4.2〜2.7V、電流値20Aの条件によってCC放電(定電流放電)を行い、そのCC放電の際のIRドロップ(直流抵抗の低下量)の値に基づいて、セルの放電容量(Ah)およびDC−IR(Ω)を各リチウムイオン二次電池セルの平均値として算出した。結果を表1に示す。
【0086】
〔リチウムイオンキャパシタセルの充放電サイクル試験〕
実施例1〜6および比較例1〜4で作製したリチウムイオンキャパシタセル〔LIC(1)〕〜〔LIC(12)〕の10個ずつの各々について、25℃において100Cの電流密度で10万回充放電サイクルを行った後、1サイクル目と比較した容量保持率(%)を測定した。結果を表1に示す。
また、以下に、容量保持率の定義を示す。
【0087】
(容量保持率の定義)
1サイクル目のリチウムイオンキャパシタセルの容量を測定した際の値を100%としたとき、10万サイクル目のリチウムイオンキャパシタセルの容量の保持率を測定した。
【0088】
〔リチウムイオン二次電池セルの充放電サイクル試験〕
参考例および比較例7で作製したリチウムイオン二次電池セル〔LIB(1)〕、〔LIB(2)〕の10個ずつの各々について、25℃において10Cの電流密度で1000回充放電サイクルを行った後、1サイクル目と比較した容量保持率(%)を測定した。結果を表1に示す。
また、以下に、容量保持率の定義を示す。
【0089】
(容量保持率の定義)
1サイクル目のリチウムイオン二次電池セルの容量を測定した際の値を100%としたとき、1000サイクル目のリチウムイオン二次電池セルの容量の保持率を測定した。
【0090】
〔安全性の評価〕
実施例1〜
6、参考例および比較例1〜5で作製したリチウムイオンキャパシタセル〔LIC(1)〕〜〔LIC(12)〕、リチウムイオン二次電池セル〔LIB(1)〕、〔LIB(2)〕の10個ずつからそれぞれ任意に選択した1個について、温度25℃、大気環境下において、電圧範囲20V、電流値100Aで動作させて安全弁からガスが発生する様子を観察し、下記の評価基準に従って評価した。結果を表1に示す。
−評価基準−
○:安全弁からガスの発生が確認された
△:安全弁からガスの激しい発生が確認された
×:安全弁からガスの激しい発生と電解液の吹き出しが確認された
【0091】
【表1】
【0092】
実施例1に係るリチウムイオンキャパシタセル〔LIC(1)〕は、ポリフッ化ビニリデン繊維によって形成された不織布にSBRおよび酸化ケイ素粒子を塗布したセパレータを用いていることにより、良好な安全性が得られることが確認された。また、ポリフッ化ビニリデン繊維によって形成された不織布は電解液の保持性が高いため、高いイオン伝導性を示した。
【0093】
実施例2に係るリチウムイオンキャパシタセル〔LIC(2)〕は、ポリフッ化ビニリデン繊維によって形成された不織布に酸化ケイ素粒子を塗布したセパレータを用いていることにより、良好な安全性が得られることが確認された。更に、セパレータ用結着剤としてフッ素アクリル重合体を用いたことによりSBRを用いた場合に比べて酸化ケイ素粒子の不織布に対する密着性が向上され、また、平均粒子径(D50)の大きな酸化ケイ素粒子を用いたことにより酸化ケイ素粒子の脱落がほとんどなく、高い安全性と優れたサイクル特性を得ることができた。
【0094】
実施例3に係るリチウムイオンキャパシタセル〔LIC(3)〕は、ポリフッ化ビニリデン繊維によって形成された不織布に酸化マグネシウム粒子を塗布したセパレータを用いていることにより、比較的良好な安全性が得られることが確認された。更に、セパレータ用結着剤としてフッ素アクリル重合体を用いたことによりSBRを用いた場合に比べて酸化マグネシウム粒子の不織布に対する密着性が向上されたため、酸化マグネシウム粒子の脱落がほとんどなく、優れたサイクル特性を得ることができた。
【0095】
実施例4に係るリチウムイオンキャパシタセル〔LIC(4)〕は、ポリフッ化ビニリデン共重合体繊維(フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体繊維)によって形成された不織布に酸化ケイ素粒子を塗布したセパレータを用いていることにより、比較的良好な安全性が得られることが確認された。更に、セパレータ用結着剤としてフッ素アクリル重合体を用いたことによりSBRを用いた場合に比べて酸化ケイ素粒子の不織布に対する密着性が向上され、また、平均粒子径(D50)の大きな酸化ケイ素粒子を用いたことにより酸化ケイ素粒子の脱落がほとんどなく、高い安全性と優れたサイクル特性を得ることができた。
【0096】
実施例5に係るリチウムイオンキャパシタセル〔LIC(5)〕は、ポリフッ化ビニリデン繊維によって形成された不織布に酸化ケイ素粒子を塗布したセパレータを用いていることにより、比較的良好な安全性が得られることが確認された。更に、セパレータ用結着剤としてフッ素アクリル重合体を用いたことによりSBRを用いた場合に比べて酸化ケイ素粒子の不織布に対する密着性が向上されたため、酸化ケイ素粒子の脱落がほとんどなく、優れたサイクル特性を得ることができた。しかしながら、電極用バインダとしてPVDFを使用したことから、電極用バインダにフッ素アクリル重合体を使用した場合と比較して僅かに容量保持率が低い結果となった。
【0097】
実施例6に係るリチウムイオンキャパシタセル〔LIC(6)〕は、ポリフッ化ビニリデン繊維によって形成された不織布に酸化ケイ素粒子を塗布したセパレータを用いていることにより、比較的良好な安全性が得られることが確認された。更に、セパレータ用結着剤としてフッ素アクリル重合体を用いたことによりSBRを用いた場合に比べて酸化ケイ素粒子の不織布に対する密着性が向上されたため、酸化ケイ素粒子の脱落がほとんどなく、優れたサイクル特性を得ることができた。しかしながら、過度に平均粒子径(D50)の大きな酸化ケイ素粒子を用いたために、適度な平均粒子径(D50)の酸化ケイ素粒子を用いた実施例2に比べて電解液の保持性が低く、僅かに容量保持率が低い結果となった。
【0098】
参考例に係るリチウムイオン二次電池セル〔LIB(1)〕は、ポリフッ化ビニリデン繊維によって形成された不織布に酸化ケイ素粒子を塗布したセパレータを用いていることにより、比較的良好な安全性が得られることが確認された。
【0099】
比較例1に係るリチウムイオンキャパシタセル〔LIC(7)〕は、無機粒子が塗布されていないセパレータを用いているために、ラビリンス状に絡まった繊維が粗の状態になっている部分が大きな貫通孔となって、リチウムデンドライトの析出により良好な容量保持率が得られなかった。また、無機粒子が塗布されていないためにセパレータの融解が発生し、そのため、実施例2に比べて安全性が低かった。
【0100】
比較例2に係るリチウムイオンキャパシタセル〔LIC(8)〕は、繊維径が1〜4μmであるポリエチレン繊維によって形成された不織布によるセパレータを用いており、ラビリンス状に絡まった繊維が粗の状態になっている部分が大きな貫通孔となったために、リチウムデンドライトの析出により正極と負極との間で一部短絡している箇所が確認され、安全性は良好ではなかった。また、セパレータ用結着剤としてフッ素アクリル重合体を用いたものの、ポリエチレン繊維によって形成された不織布はポリフッ化ビニリデン繊維またはポリフッ化ビニリデン共重合体繊維による不織布と比較して電解液の保持性が低いため、優れたサイクル特性を得ることができなかった。
【0101】
比較例3に係るリチウムイオンキャパシタセル〔LIC(9)〕は、繊維径が1〜5μmであるポリエチレンテレフタレート繊維によって形成された不織布によるセパレータを用いており、ラビリンス状に絡まった繊維が粗の状態になっている部分が大きな貫通孔となったために、リチウムデンドライトの析出により正極と負極との間で短絡している箇所が多数確認され、良好な安全性が得られなかった。また、セパレータ用結着剤としてフッ素アクリル重合体を用いたものの、ポリエチレンテレフタレート繊維によって形成された不織布はポリフッ化ビニリデン繊維またはポリフッ化ビニリデン共重合体繊維による不織布と比較して電解液の保持性が低いため、優れたサイクル特性を得ることができなかった。
【0102】
比較例4に係るリチウムイオンキャパシタセル〔LIC(10)〕は、ポリフッ化ビニリデン粒子を塗布したセパレータを用いているために、充放電の際にラビリンス状に絡まった繊維が粗の状態になっている部分を埋めていたポリフッ化ビニリデン粒子が膨潤し、柔らかくそして大きくなる。その結果、ポリフッ化ビニリデン粒子間の隙間が小さくなり、イオン伝導が阻害されて抵抗が上昇した。更に、安全性の試験において有機粒子がセパレータと同時に融解することにより正極と負極との間の絶縁を維持することができず、安全弁からガスと共に多くの火花を放出する結果となった。
【0103】
比較例5に係るリチウムイオンキャパシタセル〔LIC(11)〕は、繊維径が0.02〜0.04μmであるポリフッ化ビニリデン繊維によって形成された不織布に酸化ケイ素粒子を塗布したセパレータを用いている。繊維径が小さいため、不織布の強度が弱く、その製造段階で破断が多く発生した。また、セルの内部抵抗が上昇して放電容量が低下した。安全性の試験では問題なかったが、これは抵抗上昇による影響が大きい。
【0104】
比較例6に係るリチウムイオンキャパシタセル〔LIC(12)〕は、繊維径が3〜5μmであるポリフッ化ビニリデン繊維によって形成された不織布に酸化ケイ素粒子を塗布したセパレータを用いている。繊維径が大きいために、充放電サイクルは途中から一気に悪くなり、最後は内部ショートして電圧ゼロとなった。安全性試験では特に問題なく安全弁から白煙が放出されるに留まった。
【0105】
比較例7に係るリチウムイオン二次電池セル〔LIB(2)〕は、無機粒子が塗布されていないセパレータを用いているために、安全性の試験において有機粒子がセパレータと同時に融解することにより正極と負極との間の絶縁を維持することができず、安全弁からガスと共に多くの火花を放出する結果となった。また、無機粒子が塗布されていないために電解液の保持性が低く、充放電サイクル試験中に多くのガスが発生してドライアップするという不具合が生じ、また、容量保持率も極めて低かった。