特許第5941380号(P5941380)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5941380
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月29日
(54)【発明の名称】自己与熱保温効果を具備する蒸留塔
(51)【国際特許分類】
   B01D 3/00 20060101AFI20160616BHJP
【FI】
   B01D3/00 Z
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-196203(P2012-196203)
(22)【出願日】2012年9月6日
(65)【公開番号】特開2014-54582(P2014-54582A)
(43)【公開日】2014年3月27日
【審査請求日】2014年8月18日
(31)【優先権主張番号】特願2012-178253(P2012-178253)
(32)【優先日】2012年8月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591196474
【氏名又は名称】有限会社桐山製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100068076
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 肇
(72)【発明者】
【氏名】桐山 弥太郎
(72)【発明者】
【氏名】桐山 時男
(72)【発明者】
【氏名】板倉 啓祐
(72)【発明者】
【氏名】加藤 大介
【審査官】 團野 克也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−205901(JP,A)
【文献】 実開平05−026105(JP,U)
【文献】 特公昭30−001864(JP,B1)
【文献】 中国特許出願公開第102188834(CN,A)
【文献】 米国特許第03083545(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC B01D3/00−3/42
B01L1/00−3/18
DB DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸留塔において、
蒸留塔本体と、前記塔本体の外周面の略全域との間に略円筒状の空隙部を形成して設けた保温用の外筒体とを備え、
蒸留釜内の液体混合物から発生する蒸発蒸気を前記塔本体及び前記空隙部へ導入し、前記空隙部へ導入する前記蒸気により、前記空隙部に、前記塔本体を熱保温する自己与熱保温効果を具備させるように構成した
ことを特徴とする蒸留塔。
【請求項2】
請求項1に記載の蒸留塔において、前記外筒体の外側に保温用真空ジャケットその他の保温手段を設けたことを特徴とする蒸留塔。
【請求項3】
前記空隙部と連通させて前記外筒体の上端部から上方部側へ向けて突出させて設けた蒸気導出管部と、
前記導出管部と連通させて前記導出管部の上端部に設けた冷却器とを備えている
ことを特徴とする請求項1に記載の蒸留塔。
【請求項4】
前記空隙部と連通させて前記外筒部の上端部から上方部側へ向けて突出させて設けた蒸気導出管部と、
前記導出管部と連通させて前記導出管部の上端部に設けた冷却器と、
一端部の先端を前記導出管部と連通させて前記導出管部に気密性を保持して固定すると共に他端部の先端を前記空隙部と連通させて前記外筒体の所望の部位に気密性を保持して固定して設けた還流用管路とを備えている
ことを特徴とする請求項1に記載の蒸留塔。
【請求項5】
請求項4に記載の蒸留塔において、前記還流用管路は、前記他端部にU字状管部を備えていることを特徴とする蒸留塔。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸留塔に関する。さらに詳しくは、例えば、化学研究、石油工業、薬学その他の各種分野の蒸留技術において、液体混合物を加熱蒸発させて成分分離する際等に使用する蒸留塔に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸留塔は、その構造等により、例えば充填塔、オルダーショウ塔、シープ塔、棚段塔、ビーグロー塔、ヘンベル塔、シュナイダー塔、その他多数の形式のものがある(例えば、非特許文献1等参照)。
【0003】
蒸留塔の性能を高めるためには、上昇蒸気と塔高(長)の各位置で自然に冷却還流する液体との気液接触が必要であり、その熱交換の多少(多い少ない)により性能に差が生じる。塔長を長くすれば熱交換が多く行なわれ低沸点成分が多くなるが、熱の放出、逸散が多くなるため、実際は塔長に限度がある。
【0004】
そこで、電熱線やリボンヒーター等で蒸留塔(塔内を上昇する蒸気)を人為的に加熱保温する方法が一般的に採用されているが、混合留分の上昇と最適の加熱温度を得て保温を行なうことは対象試料(蒸留対象の液体混合物)の多様性により、先づ不可能に近い。
【0005】
本発明者らは、蒸留塔を上述した最適な温度で加熱保温(与熱保温)することにより、分留効果に多大な影響をもたらすものと確信した。しかるに、上記技術は未だ開発されていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献1】丸善株式会社発行の科学大辞典
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記のような実情に鑑み、蒸留塔の前記与熱保温が分留効果に多大な影響があるとの技術思想(理念)に基づき自然に、人為的技術によらないで所謂インテリジェントな与熱保温の効果を簡単な原理的構成により蒸留塔に具備させ、蒸留性能を大巾に向上し得る蒸留塔を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明者らは、試験、研究を継続して行なった結果、所期の目的を達成した発明を完成したので、ここに提案する。
【0009】
即ち、本発明のうち、1つの発明(第1の発明)は、蒸留塔において、
蒸留塔本体と、前記塔本体の外周面の略全域との間に略円筒状の空隙部を形成して設けた保温用の外筒体とを備え、
蒸留釜内の液体混合物から発生する蒸発蒸気を前記塔本体及び前記空隙部へ導入し、前記空隙部へ導入する前記蒸気により、前記空隙部に、前記塔本体を熱保温する自己与熱保温効果を具備させるように構成したことを特徴とする。
【0010】
本発明は上記のように蒸留釜内の液体混合物そのものの蒸発蒸気を塔本体及び前記空隙部へ導入し、前記液体混合物の蒸発蒸気そのもので塔本体を与熱保温(加熱保温)するように構成されている。前記同一液体混合物での上昇蒸気は、当然複数種の混合液であるから、塔本体の下部側では混合液中の高沸点物蒸気、また、塔本体の上部側は低沸点物蒸気により加熱保温され、この温度勾配は両者ともに同一成分の液体混合物の蒸発蒸気であるため、塔本体内を上昇する蒸留対象の液体混合物の蒸発蒸気に近似の温度分布を与える。これにより、過加熱、フラッディング、低温による上昇困難等を防止して分留を行なうことができる。
【0011】
なお、本発明において、「蒸留塔」の用語は、分留塔、精留塔、蒸留管、分留管及び精留管と同義語として用いられている。また、「液体混合物」には、「混合溶液」も含まれる。さらにまた、「蒸留釜」には、蒸留フラスコなども含まれる。
【0012】
本発明は、充填塔、オルダーショウ塔、シープ塔、棚段塔、ビーグロー塔(管)、ヘンベル塔(管)、シュナイダー塔(管)、その他各種形式の工業用及び実験用の蒸留塔に適用可能である。
また、常圧蒸留,減圧(真空)蒸留及び加圧蒸留の全ての蒸留操作に適用できる。
【0013】
本発明の他の1つの発明(第2の発明)は、第1の発明の蒸留塔において、前記外筒体の外側に保温用真空ジャケットその他の保温手段を設けたことを特徴とする。
【0014】
本発明の他の1つの発明(第3の発明)は、第1又は第2の発明の蒸留塔において、前記空隙部と連通させて前記外筒体の上端部から上方部側へ向けて突出させて設けた蒸気導出管部と、
前記導出管部と連通させて前記導出管部の上端部に設けた冷却器とを備えていることを特徴とする。
【0015】
本発明の他の1つの発明(第4の発明)は、第1又は第2の発明の蒸留塔において、前記空隙部と連通させて前記外筒部の上端部から上方部側へ向けて突出させて設けた蒸気導出管部と、
前記導出管部と連通させて前記導出管部の上端部に設けた冷却器と、
一端部の先端を前記導出管部と連通させて前記導出管部に気密性を保持して固定すると共に他端部の先端を前記空隙部と連通させて前記外筒体の所望の部位に気密性を保持して固定して設けた還流用管路とを備えていることを特徴とする。
【0016】
本発明の他の1つの発明(第5の発明)は、第4の発明の蒸留塔において、前記還流用管路は、前記他端部にU字状管路を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、次のような作用効果を奏する。
(1)蒸留塔本体の外側面から加熱保温などの面倒な操作を必要とせず、外筒体の蒸気に起因する自己与熱保温効果により、蒸留塔自身で保温機能が働き、理論段数50段以上の高性能の精密蒸留が達成できる自己制御可能な蒸留塔を提供できる。
(2)フラッデイング、過加熱、及び低温による上昇困難等を防止することができる。
(3)沸点が極めて接近した化合物、例えば、香料産業などで重要なゲラニオール(沸点230℃)とネロール(沸点227℃)などテルペン化合物の異性体の精密分留等にも最適な蒸留機能を発揮する。
(4)第3及び第4の発明によれば、上記諸効果に加え、前記空隙部へ導入された蒸発蒸気が上昇し易くなる。したがって、分留(蒸留)性能を一層向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態の蒸留塔の構成を概略的に示す図であって、同図(a)は縦断面図、同図(b)は同図(a)のA−A線拡大断面図である。
図2】前記蒸留塔の一部を拡大し、使用状態及び作用を示す説明図である。
図3】前記蒸留塔を用いて構成した蒸留装置の一例の構成を概略的に示す説明図である。
図4】前記蒸留塔を用いて構成した理論段数測定用の蒸留装置を概略的に示す説明図である。
図5】本発明の他の実施形態の蒸留塔の要部の構成を概略的に示す縦断面図である。
図6】本発明のさらに他の実施形態の蒸留塔の構成を概略的に示す縦断面図である。
図7】本発明のさらに他の実施形態の蒸留塔の構成を概略的に示す図であって、同図(a)は縦断面図、同図(b)は同図(a)の前記蒸留塔に採用した冷却器を拡大し、その構成を概略的に示す縦断面図である。
図8】本発明のさらに他の実施形態の蒸留塔の構成を概略的に示す図であって、同図(a)は縦断面図、同図(b)は同図(a)の蒸留塔の上端部側の一部を拡大し、その構成を概略的に示す縦断面説明図、同図(c)は同じく下端部側の一端を拡大し、その構成を概略的に示す縦断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施形態の一例について説明する。
【0020】
図1は本発明の一実施形態(実施形態1)を示す。実施形態1は、本発明の蒸留塔を実験用の蒸留塔に適用した一例を示す。
【0021】
実施形態1の蒸留塔100は充填塔で構成され、蒸留塔本体1と、保温用の外筒体2とを備える。外筒体2は、塔本体1の外周面の略全域との間に略円筒状の空隙部20を形成して設けてある。
【0022】
塔本体1は下端を開口し、上端部にジョイント口管10(メスジョイント)を備える。実施形態1の塔本体1は開口下端に充填物受け用の円錐状金網11を備え、塔本体1内には蒸留用充填物12が充填されている。
【0023】
前記外筒体2は前記塔本体1の下端近くに位置させて縮径して形成した縮径部21と、この縮径部21の下端から垂直に延設した両端開口のジョイント用栓体22(オスジョイント)とを備える。空隙部20の下端及び塔本体1の開口下端部は縮径部を介して前記栓体22内と連通させてある。
前記外筒体2の上端はジョイント口管10の下端近くに位置させて塔本体1の上端部外周面に気密性を保持して溶着され、これより、空隙部20の上端は気密に閉塞されている。
【0024】
実施形態1の蒸留塔100は、図2に示すように、ジョイント用栓体22を蒸留釜3のジョイント口管30(メスジョイント)に気密に嵌挿して使用される。そして、蒸留釜3を加熱することにより、釜3内の液体混合物31から発生する蒸発蒸気は、栓体22内を通過して上昇し、同図矢印32で示すように塔本体1内に導入され、塔本体1内を上昇する。同時に前記蒸発蒸気は図2の矢印33で示すように分流して空隙部20内へ導入され、空隙部20内を上昇する。これにより、空隙部20内へ導入される前記蒸気により、前記空隙部に、塔本体1を与熱保温(加熱保温)する自己与熱保温効果を具備させるように構成してある。
【0025】
なお、図2において、34はモノヒート(マントルヒーター)、35はサンプル抜出し口、36はサンプル抜出し用注射器、37は温度調節器を示す。
【0026】
実施形態1の蒸留塔100は上記のように構成され、所望の器具を組み合わせて蒸留装置を構成して使用される。図3には実施形態1の蒸留塔を用いて構成した実験用の蒸留装置4の一例が開示されている。同図において、40は温度計、41は分留ヘッド、42及び43は冷却器、44はボールジョイント用クリップ、45は受留受器、46は丸底フラスコ、47は蒸留釜3に設けたキャピラリー栓、48は温度計を示す。
【0027】
次に実施形態1の蒸留塔を用いて実施した実験例の一例について説明する。図4は実施形態1の蒸留塔を用いて構成した理論段数測定用の蒸留装置5を示す。なお、図1及び図2において既に説明した構成と共通する構成等には同一符号を付して説明を省略する。
【0028】
図4において、50は冷却器、51はサンプル抜出し用のマイクロシリンジ、52は温度計、53はサンプル抜出し口兼用の蒸留釜内圧力測定用取出し口、54はサンプル抜出し用注射器、55は差圧計、56は同圧用コック、57,57は液の入出用ゴム栓、58,59は接続管を示す。また、図4において、冷却器50の上端は大気中に開放されている。
【0029】
実験例は、測定用試薬として、n‐ヘプタン(℃)及びメチルシクロヘキサン(℃)を約1対1(重量%)の割合で混合した液体混合物を用いた。
理論段数の測定は次のような方法で行なった。所定の電圧を印加し、充分時間を置いて還流が安定したところで、塔頂及び塔底(蒸留釜内)から液をサンプリングし、ガスクロ測定装置を使用して、組成分析を行なった。
【0030】
常法に従って、下記のフェンスケの式(数1)によって、蒸留塔の理論段数を算出した。
【0031】
【数1】
【0032】
上記数1の式中、Nは理論段数、XDLは塔頂のn‐ヘプタン組成、XDHは塔頂のメチルシクロヘキサン組成、XWLは塔底のn‐ヘプタン組成、XWHは塔底のメチルシクロヘキサン組成を示す。
また、αはn‐ヘプタンとメチルシクロヘキサンの相対揮発度(常温では1.075を採用)を示す。
【0033】
なお、充填物の量は、所定の充填密度(g/cc)となるように予め計算しておき、充填ムラができないように注意して充填することが肝要である。
また、蒸留塔の圧力損失は、図4に示すようなガラス製差圧計を作成し、蒸留水を入れて塔頂、塔底の水圧mmHOを実測した。
【0034】
本実験例では、蒸留塔として、蒸留塔本体内径25mm、充填高さ1500mm、外筒体外径60mm、高さ1550mmからなる図1に示す蒸留塔の塔本体に充填物452gを充填して構成した蒸留塔を用いた。前記充填物として、特開2011−125841号公報に記載の充填物を採用した。充填密度は0.614g/ccであった。
【0035】
1Lの蒸留釜に蒸留塔とサンプル抜出し口兼用の蒸留釜内圧力測定用取出し口を取付け、n‐ヘプタンとメチルシクロヘキサンを各350g仕込み、マントルヒーター(100V、350W)を使用して加熱還流を行なった。全還流状態で還流を継続し、時々、塔頂からサンプルを抜出し、ガスクロ測定装置で組成分析を行なった。組成が安定したところで、蒸留釜から塔底サンプルを抜出し、フェンスケの式から理論段数を算出した。その算出結果を表1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
上記表1に示すように、電圧範囲80〜90Vで、理論段数58〜64段の性能が得られた。そのときの塔頂と蒸留釜の差圧は40〜90mmHOであった。なお、上記表1中、H.E.T.Pは1理論段当りの充填高さを示す。
【0038】
図5は本発明の他の実施形態(実施形態2)を示す。この実施形態2及び以下に開示する各実施形態の蒸留塔において、実施形態1で既に説明した構成と共通する構成部等には同一符号を付して説明を省略する。
【0039】
実施形態2の蒸留塔200は、蒸留塔本体1Aの下端部を保温用の外筒体2の縮径部21の上端部に連通させると共に気密性を保持して外筒体2に溶着13して固定してある。また、実施形態2では、塔本体1Aの下端部に前記空隙部20と連通させて形成した任意数(図示では4個)の連通孔14,14が設けてある。
【0040】
上記構成により、蒸留釜3内の液体混合物31から発生する蒸発蒸気は塔本体1内に導入され、図5に矢印aで示すように、塔本体1内を上昇する。また、塔本体1内に導入される前記蒸気の一部は、図5に矢印bで示すように、塔本体1内で分流して前記各孔14を通じて空隙部20内へ導入され、空隙部20内を上昇するように構成されている。これにより、空隙部20内へ導入される前記蒸気により、実施形態1と同様に、外筒体2に対し、塔本体1を与熱保(加熱保温)する自己与熱保温効果を具備させるように構成してある。他の構成は実施形態1と同様である。
【0041】
実施形態2の蒸留塔は上記のように構成され、実施形態1と同様に使用するものであり、実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0042】
図6は本発明のさらに他の実施形態(実施形態3)を示す。実施形態3の蒸留塔300は、実施形態1の蒸留塔100において、前記外筒体2のさらに外側に保温用真空ジャケット6を設けたことを特徴とするものである。他の構成は実施形態1と同様である。
【0043】
実施形態3の蒸留塔は上記のように構成され、実施形態1と同様に使用するものであり、実施形態1の作用効果に加え、外筒体を保温する効果を奏する。実施形態3の蒸留塔は、例えば冬期の寒冷地等での実施に最適である。なお、この場合において、前記ジャケット6に代え、外筒体2の外周に断熱性の布地を被覆し、或いは発泡材等で外筒体2に断熱効果を具備させる構成、その他の保温手段を採用してもよい。
【0044】
なお、実施形態3においては、実施形態1の蒸留塔100の前記外筒体2の外側に保温用真空ジャケット6その他の保温手段を設ける例を開示したが、前記構成は実施形態2の蒸留塔200においても採用可能なこと勿論である。また、後述する各実施形態の蒸留塔にも採用することができる。
【0045】
図7は本発明のさらに他の実施形態(実施形態4)を示す。実施形態4の蒸留塔400は、実施形態1の蒸留塔において、蒸気導出管部と冷却器とを設けた構成に特徴がある。
【0046】
実施形態4の蒸留塔400は、前記空隙部20の上端部と連通させて前記外筒体2の上端部から上方部側へ向けて突出させて設けた蒸気導出管部7と、この導出管部7に装着して設けた冷却器8とを備える。
【0047】
実施形態4の導出管部7は、所望の曲率で上方へ弯曲した弯曲管部70と、弯曲管部70から略垂直に延設した垂直管部71と、この垂直管部71の上端から略垂直に延設したジョイント口管72(メスジョイント)とを備える。
【0048】
冷却器8は、導出管部7から導出される蒸発蒸気を冷却して液化(凝縮)する凝縮用の冷却器である。実施形態4の冷却器8は、所望の径及び長さの円筒状に形成した冷却室80と、冷却室80内に配置して設けた熱交換用(冷却用)のコイル管81(パイプ製コイル)と、冷却室80の一端部(図において下端部)を縮径して形成した縮径部82の先端(図において下端)から垂直に延設した両端開口のジョイント栓体83(オスジョイント)とを備える。前記栓体83は前記ジョイント口管72に気密に適合して嵌挿するように構成されている。
【0049】
前記冷却室80は、所望の部位に所望の大きさの気体出口部84(圧力出口部)を備える。実施形態4の気体出口部84は、冷却室80の他端部(図において上端部)を縮径し、この縮径部の中央部から上方へ突出させて設けてある。前記出口部84の開口先端は大気中に開放されている。前記出口部84は息抜き用である。
【0050】
前記コイル管81の両端部は気密性を保持して冷却室80外に突出させ、一端部で熱交換用流体(冷媒)の入口部85が、また、他端部で出口部86が形成されている。冷媒は入口部85から供給され、コイル管81を循環させて出口部86から流出させる。冷媒としては、例えば水道水,地下水,冷水等の液体が採用される。他の構成は実施形態1と同様である。
【0051】
実施形態4の蒸留塔400は上記のように構成され、冷却器8を蒸気導出管部7の上端部に装着して使用する以外は実施形態1と同様に使用される。
【0052】
実施形態4のように構成すると、空隙部20へ導入されて上昇する前記蒸発蒸気の一部は、図7(a)の矢印73で示すように、空隙部20の上端部から導出管部7へ導出し、導出管部7を通過して図7(b)の矢印74で示すように冷却器8の冷却室80内へ導入される。したがって、前記蒸気が上昇し易くなる。
【0053】
冷却室80内へ導入された前記蒸気は冷却室80内で冷却されて液化(凝縮)され、図7の矢印75で示すように流下し、導出管部7を通って空隙部20へ還流する。このように、実施形態4によれば、実施形態1の作用効果に加え、空隙部20へ導入された前記蒸気は、実施形態1と比べて上昇し易くなる。
【0054】
なお、前記蒸気の導入により冷却室80内の圧力は高くなるが、冷却室80は気体出口部84を備えているので、所定値以上の圧力は前記出口部84から室外へ順次排出される。したがって、前記蒸気は室内へ連続的に安定して円滑に導入する。
また、冷却室80内へ導入される前記蒸気は冷却されて液化して流下するので、前記蒸気が前記出口部から排出することは無い。
【0055】
実施形態4の構成を具備した蒸留塔は、例えば、特に大型の蒸留塔に最適である。但し、小型の蒸留塔としても効果的に採用できること勿論である。
【0056】
図8は本発明のさらに他の実施形態(実施形態5)を示す。実施形態5の蒸留塔500は、実施形態4の蒸留塔において、還流用管路を設けた構成に特徴がある。なお、実施形態5の蒸留塔において、実施形態4で既に説明した構成と共通する構成部等には同一符号を付して説明を省略する。
【0057】
実施形態5の蒸留塔500は、実施形態4の蒸留塔において、一端部の先端を導出管部7と連通させて導出管部7に溶着その他の手段で気密性を保持して固定(実施形態5では溶着)すると共に他端部の先端を空隙部20と連通させて外筒部の所望の部位に溶着その他の手段で気密性を保持して固定(実施形態5では溶着)して設けた還流用管路9を備える。
【0058】
還流用管路9は、前記他端部(図において下端部)にU字状管部90を備える。また、前記管路9には、一端部(図において上端部)の近くに位置させて管路9に介装して設けた開閉バルブ91を備える。実施形態5では、前記管路9の他端部(下端部)の先端を外筒体2の下端部近くに溶接して固定してある。前記U字状管部は、空隙部から管路9へ前記蒸気が導入するのを防止するために設けたものである。
【0059】
前記管路9は冷却器8の冷却室80内で液化した液体を流下させて空隙部20へ還流するもので、管の径は特に限定するものではないが、例えば、液体が流通可能な細径の管材を採用できる。前記バルブ91は、例えば、装置の稼動停止中や稼動開始当初、その他の所望ないし必要時に閉じるもので、それ以外は開いた状態にしておく。なお、このバルブ91は省略することも可能である。
【0060】
前記U字状管部90は空隙部20へ導入された前記蒸発蒸気が還流用管路9へ導入するのを防止するために設けたものである。他の構成は実施形態及び実施形態1と同様である。
【0061】
実施形態5の蒸留塔500は上記のように構成され、実施形態と同様に冷却器8を蒸気導出管部7の上端部に装着して使用する以外は実施形態1と同様に使用される。
【0062】
実施形態5のように構成すると、冷却室80で液化した液体の大部分は、図8(a)の矢印92で示すように管路9を通って空隙部20の下端部側へ還流する。そのため、空隙部20を上昇する前記蒸気との接触が実施形態4と比べて少なくなる。したがって、還流する液体との接触による影響が実施形態4に比べて減少する。
【0063】
実施形態5の構成を具備した蒸留塔は、実施形態4と同様に、例えば、特に大型の蒸留塔に最適である。但し、小型の蒸留塔としても効果的に採用できる。
【0064】
なお、実施形態4及び実施形態5では、実施形態1の蒸留塔に前記構成を具備した例を開示したが、上記構成は実施形態2及び3の蒸留塔においても採用可能なこと勿論である。
【0065】
また、上記した各実施形態では、充填塔で構成した蒸留塔を開示したが、充填等に代え、オルダーショウ塔、シープ塔、棚段塔、その他の任意の種類や形式の実験用及び工業用の蒸留塔を採用できること勿論である。
【0066】
なお、上記した各実施形態の蒸留塔は一例として開示したもので、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の技術思想を越脱しない範囲内において任意に変更可能なものである。
【符号の説明】
【0067】
1 蒸留塔本体
2 保温用の外筒体
3 蒸留釜
20 空隙部
31 液体混合物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8