特許第5941400号(P5941400)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5941400
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月29日
(54)【発明の名称】内炎式バーナを備えた加熱用燃焼器
(51)【国際特許分類】
   F24C 15/14 20060101AFI20160616BHJP
   F23D 14/06 20060101ALI20160616BHJP
   F24C 15/10 20060101ALI20160616BHJP
   F24C 3/02 20060101ALI20160616BHJP
【FI】
   F24C15/14 E
   F23D14/06 L
   F24C15/10 E
   F24C3/02 J
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-267432(P2012-267432)
(22)【出願日】2012年12月6日
(65)【公開番号】特開2014-114971(P2014-114971A)
(43)【公開日】2014年6月26日
【審査請求日】2015年3月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100105463
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100099128
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 康
(72)【発明者】
【氏名】押部 洋
(72)【発明者】
【氏名】井川 純子
【審査官】 宮崎 光治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−069604(JP,A)
【文献】 特開2000−346365(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内炎式バーナを備えた加熱用燃焼器であって、該加熱用燃焼器は前記内炎式バーナの下方に薄板状の水受け部材を備えており、前記内炎式バーナの上位には被加熱物を保持するための被加熱物支持部材がさらに備えられており、該被加熱物支持部材は、中央に開口部を備えた平板状の被加熱物保持部と、該被加熱物保持部から下方に延出する支持脚とを備え、少なくとも前記被加熱物保持部の表面には水滴を滞留させる手段が設けられていることを特徴とする加熱用燃焼器。
【請求項2】
前記薄板状の水受け部材の表面には水滴を滞留させる手段が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の加熱用燃焼器。
【請求項3】
前記薄板状の水受け部材は前記内炎式バーナと一体に形成されており、内炎式バーナと薄板状の水受け皿との間には二次空気通路が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の加熱用燃焼器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内炎式バーナを備えた加熱用燃焼器に関する。
【背景技術】
【0002】
内炎式バーナを備えた加熱用燃焼器は、特許文献1または2などに記載されるように、よく知られている。通常、使用に当たっては、内炎式バーナの直上位置に鍋やフライパンのような調理容器である被加熱物を安定した姿勢で保持するために、例えば五徳と通称されるような被加熱物支持部材が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−232973号公報
【特許文献2】特開2009−210206号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、家庭用コンロのようなバーナを備えた加熱用燃焼器のための燃料ガスには、メタンやエタンやプロパンのような炭化水素系のものが用いられている。炭化水素系燃料を燃焼させるとCOの発生を避けることができない。環境保全の観点からは、COが発生しないあるいはCOの発生が少ない水素を主成分とする燃料ガスを用いることが望ましい。
【0005】
しかしながら、水素原子を多く含んだ燃料を燃焼させると、生成物の1つとして多くの水(水蒸気)が発生する(式1、式2)。このため、コンロなどの加熱調理器において、鍋などの被加熱物の温度が低い段階では、被加熱物の表面に触れた水蒸気が凝縮して水滴となるのを避けられない。例えば、水素をメタンと同熱量燃やした場合、水素燃料による水蒸気はメタン燃料より約1.6倍多く発生する(式3)。
式1:CH4 +2O2 → CO2+2H2O+39.93 MJ/m3
式2:H2 + (1/2)O2 →H2O +12.78 MJ/m3
式3:3.12 H2 +3.12 (1/2)O2 → 3.12 H2O +39.93 MJ/m3 (3.12=1.56×2)
〈なお、発熱量はいずれも標準状態におけるHHV(出典:ガス燃焼の理論と実際:財団法人 省エネルギーセンター発行、p.11)〉
【0006】
そのために、水素を多く含んだ燃料を家庭用コンロのような内炎式バーナを備えた加熱用燃焼器の燃料ガスとして用いると、大量の水滴が結露水として発生するようになり、その水滴がコンロ床に落ち、水たまりができて作業環境を悪化させることが起こりうる。また、落下する水滴により火炎温度の低下を引き起こしたり、内炎式バーナの炎孔を塞ぎ、所望の出力を得にくくなることも起こり得る。
【0007】
従来の内炎式バーナを備えた加熱用燃焼器は、前記のようにメタンやエタンやプロパンのような炭化水素系の燃料ガスを用いることを前提に作られている。この場合、燃料ガスの燃焼によって生成される水(水蒸気)は無視できる量であって、使用に当たって格別の問題は生じていない。しかし、今後、水素を多く含む燃料ガスを熱源として用いるようになったときに、上記のような問題が顕在化する恐れがある。
【0008】
本発明は、内炎式バーナを備えた加熱用燃焼器において、今後生じる可能性のある上記の問題を解決することを課題としており、より具体的には、水素あるいは水素を多く含む燃料ガスを熱源として用いる場合であっても、燃焼時に発生する生成水に起因する水滴によって作業環境が悪化するのを効果的に回避できるようにした内炎式バーナを備えた加熱用燃焼器を開示することを第1の課題とする。また、燃焼時に発生する生成水に起因する水滴によって、火炎温度が低下したり、内炎式バーナの炎孔が塞がれて所望の出力を得にくくなるのを回避できるようにした内炎式バーナを備えた加熱用燃焼器を開示することを第2の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による内炎式バーナを備えた加熱用燃焼器は、前記内炎式バーナの下方に薄板状の水受け部材を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明による内炎式バーナを備えた加熱用燃焼器を用いて被加熱物を加熱する場合において、被加熱物の外側面が低温状態にある加熱開始時に、燃焼ガス中に含まれる水蒸気が被加熱物の外側面上で凝縮して水滴となって落下しても、その水滴は内炎式バーナの下方に備えた薄板状の水受け部材に捕捉される。そのために、落下する水滴が内炎式バーナ下方のコンロ床面に達することはなく、コンロ床面に水たまりが形成されるようなことはない。それにより、良好な作業環境が維持される。
【0011】
本発明において、薄板状の水受け部材は、内炎式バーナによる加熱時の熱に耐える材料であれば、任意の材料で作ることができる。また、水受け部材の上に落下してくる水滴の重さに耐えるだけの強度を備えていればよく、従って、水受け部材は薄板状のもので十分に所期の目的を達成することができる。
【0012】
好ましくは、薄板状の水受け部材の表面には水滴を滞留させる手段が設けられる。水滴を滞留させる手段の例としては、適数本の凹溝や適数のエンボス(微細な凹凸加工)が挙げられる。また、薄板状の水受け部材が多数の細孔を備えた薄板や金網であってもよい。このような薄板状の水受け部材を用いることにより、落下した水滴が水受け部材から飛散したり落下するのを効果的に阻止することができる。細孔の孔径あるいは金網で編み目の大きさは、0.5〜3mm程度であれば所期の目的は達成可能である。
【0013】
本発明による加熱用燃焼器の一態様において、前記薄板状の水受け部材は前記内炎式バーナと一体に形成されており、内炎式バーナと薄板状の水受け皿との間には二次空気通路が形成されている。この態様の加熱用燃焼器では、加熱用燃焼器に対する薄板状の水受け部材の組付けを内炎式バーナの組み付けと同時に行うことができ、加熱用燃焼器の組立が容易となる。また、内炎式バーナと薄板状の水受け部材とを同時に取り外すことができるので、バーナ床等の清掃作業も容易となる。さらに、内炎式バーナと薄板状の水受け皿との間には二次空気通路が形成されているので、薄板状の水受け部材が内炎式バーナの燃焼に影響を与えることもない。
【0014】
本発明による加熱用燃焼器の一態様において、前記内炎式バーナの上位には被加熱物を保持するための被加熱物支持部材がさらに備えられており、該被加熱物支持部材は、中央に開口部を備えた平板状の被加熱物保持部と、該被加熱物保持部から下方に延出する支持脚とを備え、少なくとも前記被加熱物保持部の表面には水滴を滞留させる手段が設けられていることを特徴とする。
【0015】
上記態様の加熱用燃焼器を用いて被加熱物を加熱する場合において、被加熱物の外側面が低温状態にある加熱開始時に、燃焼ガス中に含まれる水蒸気が被加熱物の外側面上で凝縮して形成された水滴の内、一部は、内炎式バーナで形成される燃焼火炎内を通過して前記した薄板状の水受け部材に落下して、そこに滞留する。また、一部は、被加熱物支持部材を構成する平板状の被加熱物保持部の上に落下して、そこに滞留する。そのために、内炎式バーナで形成される燃焼火炎内を通過する水滴の量は、形成される全水滴量から被加熱物支持部材を構成する平板状の被加熱物保持部の上に滞留する水滴量を除いた量となり、結果として、燃焼時に発生する生成水に起因する水滴によって火炎温度が低下するのを大きく回避することができる。また、一部の水滴は被加熱物支持部材を構成する平板状の被加熱物保持部の上に落下することで、内炎式バーナの炎孔およびその周囲に落下する水滴の量は無いかごく少量であり、このことからも燃焼時に発生する生成水に起因する水滴によって火炎温度が低下するのを回避することができ、同時に、内炎式バーナの炎孔が塞がれて所望の出力を得にくくなるのも回避できる。
【0016】
それらのことから、本発明による内炎式バーナを備えた加熱用燃焼器は、水素または水素を多く含む燃料ガスを熱源として用いる場合に、実用上においてきわめて有効性の高いものとなる。
【0017】
なお、前記被加熱物保持部の表面に設ける水滴を滞留させる手段は、水滴を被加熱物保持部の表面に一定時間滞留させておくことのできる手段であれば任意であり、例えば、適数本の凹溝や適数のエンボス(微細な凹凸加工)が挙げられる。また、多数の細孔を備えた薄板や金網であってもよい。細孔の孔径あるいは金網で編み目の大きさは、0.5〜3mm程度であれば所期の目的は達成可能である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、内炎式バーナを備えた加熱用燃焼器において、燃料ガスの燃焼時に生成される水(水蒸気)に起因する水滴によって、内炎式バーナの下方周辺の環境が悪化するのを効果的に回避することができる。また、本発明による内炎式バーナを備えた加熱用燃焼器の一態様では、落下する水滴により火炎温度が低下したり、所望の出力を得にくくなるのも回避できる。従って、本発明による内炎式バーナを備えた加熱用燃焼器は、熱源として、水素または水素を多く含んだ燃料ガスを用いるときに、特に有効となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明による内炎式バーナを備えた加熱用燃焼器の第1の形態を示す概略的断面図。
図2】本発明による内炎式バーナを備えた加熱用燃焼器の第2の形態を示す概略的断面図。
図3】本発明による内炎式バーナを備えた加熱用燃焼器の第3の形態を示す概略的断面図。
図4】内炎式バーナを説明するための図。
図5】薄板状の水受け部材の一例を説明するための図。
図6】第3の形態の加熱用燃焼器で用いる内炎式バーナと薄板状の水受け部材とを説明するための図。
図7】被加熱物支持部材の一形態を示す斜視図(a)と、図(a)のb−b線に沿う断面図。
図8】被加熱物支持部材の他の形態を示す部分的斜視図(a)と、図(a)のb−b線に沿う断面図。
図9】被加熱物支持部材のさらに他の形態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明をいくつかの実施の形態に基づき説明する。
【0021】
[第1の形態]
図1は、本発明による内炎式バーナを備えた加熱用燃焼器の第1の形態を概略的断面で示している。この例において、加熱用燃焼器A1は所定高さの燃焼器本体部10を備え、燃焼器本体部10には、内周壁12と床面(底面)13とを備えた所要深さの凹陥部11が形成されている。そして、該凹陥部11における燃焼器本体部10の天面14よりも上位の位置には、図4に示すような内炎式バーナ20が図示しない適宜の支持手段により、燃焼器本体部10に対して固定されている。
【0022】
内炎式バーナ20は環状のバーナ本体21を有し、該バーナ本体21の内部空間は燃料ガス通路22となっている。バーナ本体21の内面側は上方に次第に拡開する傾斜面23とされており、該傾斜面23には燃焼ガス通路22に連通する適数の炎孔24が形成されている。また、燃料ガス通路22には図示しない燃料ガスの供給管が接続している。図示の内炎式バーナ20は内炎式バーナの一形態にすぎず、例えば前記特許文献1あるいは2に記載されるような、任意の形態の内炎式バーナを用いることができる。
【0023】
前記内炎式バーナ20の下方における前記凹陥部11内の適所には、薄い金属板からなる円盤状の水受け皿30が、図示しない適宜の手段により、燃焼器本体部10に対して固定されている。水受け皿30の平面視での大きさは、バーナ本体21の内径よりは大きくされ、かつ、最大でも、水受け皿30の外周31と前記凹陥部11の内周壁12との間に燃焼用2次空気が通過できる所要の隙間sが形成される大きさとされる。
【0024】
水受け皿30は、単に薄板状のものであってもよく、薄板の表面に水滴を一時的に滞留させるための適宜の手段が形成されていてもよい。また、図示されるように、上に凸の曲面をなす薄板であってもよい。図示しないが、水滴を一時的に滞留させる手段の具体例としては、適数本の凹溝やエンボス加工による凹凸などが挙げられる。さらには、図5に示すような細かいメッシュの金網32や、パンチングメタルなどであってもよい。金網32のメッシュ(編み目の大きさ)あるいはパンチングメタルでの孔径は、0.5〜3mmであれば、水滴を一時的に保持するという所期の目的を達成することができる。また、水受け皿30の厚みは1〜8mm程度であれば、水滴を一時的に保持するという所期の目的を達成することができる。
【0025】
必須のものではないが、前記水受け皿30と前記凹陥部11の床面(底面)13との間には、ファン40が取り付けてある。このファン40が回転することで、燃焼用2次空気が前記隙間sを通って内炎式バーナ20の炎孔24から噴出する燃焼火炎に積極的に送られる。
【0026】
上記の加熱用燃焼器A1において、その使用に際しては、燃焼器本体部10の天面14に、内炎式バーナ20を跨ぐようにして、五徳と通称されている被加熱物支持部材50が取り付けられる。被加熱物支持部材は、従来のバーナを備えた加熱用燃焼器で用いられているものであってよいが、この例では、図7図8に示す形態の被加熱物支持部材50を用いている。
【0027】
図7(a)に示すように、被加熱物支持部材50は、中央に開口部51を備えた平板状の被加熱物保持部52と、該被加熱物保持部52から下方に延出する支持脚53とを備える。被加熱物支持部材50は、図1に示すように、平板状の被加熱物保持部52の中央開口部51が内炎式バーナ20の直上位となるようにして前記支持脚53によって燃焼器本体部10の天面14上に取り付けられる。
【0028】
図7(b)に示すように、平板状をなす被加熱物保持部52の上面には、全周に亘って凹溝54が形成されている。図8に示すように、前記凹溝54は、被加熱物保持部52の上面に加えて、支持脚53の表面にも形成されていてもよい。なお、図示しないが、凹溝54に加えて、あるいは凹溝54に変えて、被加熱物保持部51の上面および支持脚53の表面には、多数の微細な凹凸が形成されていてもよい。
【0029】
上記の加熱用燃焼器A1の使用態様を説明する。使用に当たっては、図1に示すように、取り付けた被加熱物支持部材50の被加熱物保持部52の上に、内炎式バーナ20の直上位置に底面D1が来るようにして被加熱物Dを載置する。被加熱物Dの中に水のように加熱されにくいものを収容し、内炎式バーナ20を着火して燃料ガスを燃焼させる。高温の燃焼ガスは、図1に点線で示すように、被加熱物Dの底面D1に衝突し、その後、被加熱物支持部材50の被加熱物保持部52の上面と被加熱物Dの底面D1との接点付近を回り込むようにして、被加熱物Dの周側面D2に沿って上昇する。また、一部の燃焼ガスは、支持脚53間を通過して上昇し、さらに被加熱物Dの周側面D2に沿って上昇する場合もある。
【0030】
燃料ガスとして、水素または水素を多く含む燃料ガスを用いる場合、燃焼ガス中には多くの水(水蒸気)が含まれる。加熱開始当初は、被加熱物Dの底面D1および周側面D2の温度は低く、燃焼ガスが被加熱物Dの底面D1と衝接し、さらに周側面D2に接して上昇するときに、燃焼ガス中の水蒸気は底面D1および周側面D2に接することで温度が下がり、凝縮して水滴となる。
【0031】
形成された水滴のうち、底面D1に形成された水滴は燃焼ガス中を落下することが起こり得るが、落下する水滴は水受け皿30によって受け止められ、燃焼器本体部10の前記凹陥部11の床面(底面)13に落下することはない。そのために、床面(底面)13に水滴が散乱して作業環境を悪化する事態が生じるのを回避することができる。また、前記した被加熱物支持部材50を用いていることで、被加熱物Dの周側面D2に形成された水滴は、被加熱物支持部材50の被加熱物保持部52の上面に形成した凹溝54などによって捕集されるので、内炎式バーナ20の燃焼面およびその周囲の天面14や床面13に落下するのも回避できる。それにより、落下する水滴により火炎温度が低下したり、所望の出力を得にくくなるのも回避できる。また、水滴が散乱して作業環境を悪化する事態が生じるのを回避することができる。
【0032】
燃焼が継続して被加熱物Dの表面温度が上昇すると共に水滴は形成されなくなり、また、水受け皿30および被加熱物支持部材50の被加熱物保持部52などの上面などに滞留した水滴も気化して消失する。それ以降は、通常の内炎式バーナを備えた加熱用燃焼器と同じ燃焼状態を継続する。
【0033】
[第2の形態]
図2は、本発明による内炎式バーナを備えた加熱用燃焼器の第2の形態を概略的断面で示している。第2の形態の加熱用燃焼器A2は、内炎式バーナ20が燃焼器本体部10の凹陥部11内に入り込んだ姿勢で、燃焼器本体部10に対して適宜の手段により固定されている点で、前記した第1の形態の加熱用燃焼器A1と相違している。他の構成は、実質的に第1の形態の加熱用燃焼器A1と同じであり、同じ符号を付すことで説明は省略する。この態様の加熱用燃焼器A2は、支持脚53の高さを前記第1の形態ほど高くしなくてよい、燃焼器本体部10の天面14がほぼフラットとなり見た目がよい、という固有の利点がある。
【0034】
[第3の形態]
図3は、本発明による内炎式バーナを備えた加熱用燃焼器の第3の形態を概略的断面で示している。第3の形態の加熱用燃焼器A3は、内炎式バーナ20と水受け皿30とが一体物として作られている点で、前記した第2の形態の加熱用燃焼器A2と相違している。他の構成は、実質的に第2の形態の加熱用燃焼器A2と同じであり、同じ符号を付すことで説明は省略する。
【0035】
すなわち、加熱用燃焼器A3において、内炎式バーナ20の環状のバーナ本体21の下位には、図6に示すように、適数本の接続杆33を介して、水受け皿30が一体に固定されており、バーナ本体21と固定された水受け皿30には所要の隙間s1が形成されている。燃焼時には、この隙間s1を通って燃焼用二次空気が燃焼ガスに供給される。この態様では、内炎式バーナ20と水受け皿30とが一体物となっているので、燃焼器本体部10に対する固定作業が容易となる。
【0036】
[他の形態]
本発明による内炎式バーナを備えた加熱用燃焼器Aにおいて、特に図示はしないが、被加熱物支持部材として、前記した図7図8に示す形態の被加熱物支持部材50を用いることは必須でなく、従来から五徳として知られている任意の被加熱物支持部材を用いることができる。その場合でも、燃焼開始時に形成される水滴のほとんどは水受け皿30によって受け止められるので、燃料ガスの燃焼時に生成される水(水蒸気)に起因する水滴よって、内炎式バーナの下方周辺の環境が悪化するのは効果的に回避することができる。
【0037】
また、被加熱物支持部材50として、図9に示すように、平板状の被加熱物保持部52が気体(燃焼ガス)は通過するが水滴は通過できない孔を有する多孔性材料55で構成された被加熱物支持部材50を用いることもできる。多孔性材料55としては、パンチングメタルや金網のような材料を例示できる。実験によれば、多孔性材料55に形成される孔の径は、0.5〜3mm程度であればよく、その範囲の孔であれば、内炎式バーナ20が燃焼したときの燃焼ガスは通過することができ、加熱当初に被加熱物Dの底面D1や周側面D2に形成される水滴は通過できないことがわかっている。
【符号の説明】
【0038】
A1〜A3…本発明による内炎式バーナを備えた加熱用燃焼器、
D…被加熱物、
D1…被加熱物の底面、
D2…加熱用燃焼器の周側面、
10…燃焼器本体部、
11…燃焼器本体部に形成した凹陥部、
20…内炎式バーナ、
21…環状のバーナ本体、
22…燃料ガス通路、
24…炎孔、
30…薄板状の水受け皿、
40…ファン、
50…被加熱物支持部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9