(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、ここでは、プリント配線板としてフレキシブルプリント配線板(FPC)を例にとり説明するが、本発明は、リジットフレキシブルプリント配線板など、他のプリント配線板にも適用可能である。また、以下の説明では、フレキシブルプリント配線板を、ZIF(Zero Insertion Force)コネクタに挿入して使用する例を示しているが、本発明のプリント配線板は、プリント配線板の厚みを利用して嵌合力を得る非ZIFコネクタやバックボードコネクタに対しても使用することができる。
【0024】
(フレキシブルプリント配線板)
図1〜4に示すように、本実施の形態のフレキシブルプリント配線板1は、ベース基板としてのベースフィルム3と、このベースフィルム3の一方の面(ここでは上面)を覆うように接着層4により貼り合わされた第1のカバーレイ(以下、便宜上「上面側カバーレイ」という。)5と、上記ベースフィルム3の他方の面(ここでは下面)を覆うように接着層6により貼り合わされた第2のカバーレイ(以下、便宜上「下面側カバーレイ」という。)7とを備えている。ベースフィルム3は、可撓性を有する絶縁性樹脂により形成されており、例えば、ポリイミド、ポリエステル、ポリエチレンナフタレートを例に挙げることができる。また、上面側カバーレイ5及び下面側カバーレイ7は、ポリイミド等の絶縁性樹脂フィルムを貼着する他、熱硬化インクや紫外線硬化インク、感光性インクを塗布、硬化することにより形成することもできる。
【0025】
フレキシブルプリント配線板1は、差込方向Iの少なくとも一方の端部に、後述するコネクタの挿入口に挿入される接続端部13を有している。接続端部13の上面側はカバーレイ5によって被覆されておらず、接続端部13の露出部分には、差込方向Iでみて前後二列15,17の千鳥配列で配置された電気接続用の複数のパッド15a,17aが形成されている。なお、パッド15a,17aは千鳥配列で配置しなくてもよく、前列15のパッド15aの幅方向(差込方向Iを横切る方向)Wの位置と後列17のパッド17aの幅方向Wの位置とを同じとしてもよく(
図5参照)、このようなパッド配置によれば、同じ数のパッドを千鳥配置する場合と比べて、フレキシブルプリント配線板1の幅を小さくすることができる。前列15のパッド15a及び後列17のパッド17aの最上面には、めっき層(例えば金めっき層)18,19が形成されている。最上面のめっき層18,19は、最低限導電性を有していればよく、耐腐食性や耐摩耗性等も有していることが好ま
しい。めっき層18,19としては、金めっき以外に、導電性カーボン層や半田層などが挙げられる。接続端部13の最下層には、下面側カバーレイ7の下面に接着層21を介して貼り合わされた補強フィルム23が設けられている。補強フィルム23は、例えばポリイミドにより形成することができる。
【0026】
また、フレキシブルプリント配線板1は、前列15のパッド15aに接続された第1の配線9と、後列17のパッド17aに接続された第2の配線11とを有している。
図1に示す例では、第1の配線9及び第2の配線11は共に、ベースフィルム3の、パッド15a,17aが設けられた側とは反対側、つまり、ベースフィルム3と下面側カバーレイ7との間に配置されている。なお、本例のように、第1の配線9及び第2の配線11を共に、ベースフィルム3の裏面側に配置する場合には、上面側カバーレイ5は設けなくてもよい(
図16及び
図17参照)。第1の配線9及び第2の配線11は、幅方向(差込方向Iを横切る方向)Wに隣り合うとともに、コネクタへの差込方向(接続方向)Iに延びている。第1の配線9及び第2の配線11は、導電性の公知の金属、例えば銅または銅合金で形成することができる。また、第1の配線9及び第2の配線11の外面には、めっき層(例えば銅めっき層)43を形成してもよい。
【0027】
図3及び4に示すように、前列15の各パッド15aと、ベースフィルム3の下面側(他方の面側)に配置された第1の配線9とは、ベースフィルム3を貫通するビア24を介して接続されている。同様に、後列17の各パッド17aと、ベースフィルム3の下面側(他方の面側)に配置された第2の配線11とは、ベースフィルム3を貫通するビア25を介して接続されている。図示例では、ビア24,25は、パッド15a,17aに対して各1つ設けられているが、パッド15a,17aの安定性向上や電気抵抗の低減等の観点から、ビア24,25は各パッド15a,17aに対して2つ以上設けることもできる。
【0028】
また、
図4に示すように、本実施形態では、第1の配線9及び第2の配線11は、上方の各パッド15a,17aに対応する位置に拡幅部9a,11aを有している。拡幅部9a,11aは、パッド15a,17aの箇所においてフレキシブルプリント配線板1の厚さを均一に保つ、つまり耐クリープ性を向上させる補強材としての役割を有しており、他の電子部品のコンタクトとは直接接触しない。表面側のパッド15a,17aに対応する、ベースフィルム3の裏面側の位置に、拡幅部又は補強材がない場合には、特に高温環境下でフレキシブルプリント配線板1に含まれる接着層がクリープ変形し、フレキシブルプリント配線板1の厚さが不均一となり、ひいては電気接触性が悪化するおそれがある。本実施形態では、これらの拡幅部9a,11aは、上方に位置するパッド15a,17aに対応した形状、すなわち略同一の形状を有しているが、パッド15a,17aと他の電子部品のコンタクトとの接触安定性が損なわれない範囲において、上方に位置するパッド15a,17aよりも小さくまたは大きく形成してもよい。なお、本発明において、これらの拡幅部9a,11aは設けなくてもよい。
【0029】
また、
図1及び
図2に示すように、本実施形態のフレキシブルプリント配線板1は、接続端部13の側縁部分(幅方向における端縁)の少なくとも一方、ここでは両側縁部分に、接続対象である他の電子部品の係合部(例えば後述するコネクタに設けられたタブ状のロック部材)に引き抜き方向(接続方向とは逆向き)で係止される被係合部28,29を有している。
図1及び
図2に示す例では、被係合部28,29は、接続端部13の側縁部分に形成された切欠き部により構成されているが、これに限らず、
図6に示すような貫通孔29や有底孔(図示省略)により構成してもよい。
【0030】
そして、本実施形態のフレキシブルプリント配線板1は、
図1及び
図4に示すように、他の電子部品との接続方向(差込方向I)でみて被係合部28,29の少なくとも前方側
でかつベースフィルム3の上面側(パッド15a,17aが設けられた側)に、パッド、ここでは前列15のパッド15aのうち幅方向最外側に位置するパッド15aと一体に形成された補強層31,32を有している。
【0031】
補強層31,32は、配線9,11と同じ厚さとしてもよいが、必要な強度が得られる限りにおいて、配線9,11よりも厚くまたは薄く形成することもできる。また、補強層31,32の幅(幅方向Wに沿った長さ)は、十分な引き抜け強度を確保する観点から、被係合部28,29の幅の100%以上とするのがよい。また、補強層31,32の長さ(差込方向Iに沿った長さ)は、種々の条件(強度や材質等)に応じて、適宜設定することができるものである。なお、補強層31,32の形状は、図示例では矩形であるが、これに限らず、
図7(a)に示すような少なくとも一部に円弧を有する形状、あるいは
図7(b),(c)に示すような被係合部28,29を取り囲むような形状など、種々の形状を採用することができる。なお、
図6及び7(a)等のように、補強層31,32が被係合部28,29の端縁に露出しないように配置することで、フレキシブルプリント配線板1を、製造時に、金型により最終形状に打ち抜き加工する際、当該金型が銅箔を直接せん断することがなくなるため、金型の寿命が高まり、また、バリ等の製造不良を未然に防止することができる。
【0032】
また、本実施形態のフレキシブルプリント配線板1は、補強層31,32の表面に絶縁層34,35を有している。詳細には、絶縁層34,35は、上面側カバーレイ5の幅方向外側部分を、パッド15a,17aに被さることのないよう前方に延出させ、この延出部で補強層31,32の上面を覆うことで構成されている。なお、本例では、絶縁層34,35は上面側カバーレイ5によって形成しており、このようにすれば絶縁層34,35を容易に形成することができるが、これに限らず、上面側カバーレイ5ではない絶縁層(図示省略)を別途、補強層31,32の上面に貼り付けるようにしてよい。
【0033】
上記の構成を有する本実施形態のフレキシブルプリント配線板1によれば、接続端部13の側縁部分に他の電子部品の係合部に引き抜き方向で係止される被係合部28,29を設けるのに加えて、該被係合部28,29の前方側でかつベースフィルム3の上面側にパッド15aと一体をなす補強層31,32を設けたことにより、被係合部28,29の前方側の強度を高めることができ、フレキシブルプリント配線板1の薄型化、小型化を図ってもなお、他の電子部品の係合部との十分な係止力(耐引き抜け性)を確保することができる。さらに、他の電子部品の係合部が、グランドに接地される場合においても、補強層31,32は、絶縁層34,35によって覆われているため、他の電子部品の係合部が補強層31,32に直接接することはなく、パッド15a,17aの信号が補強層31,32及び他の電子部品の係合部を介してグランドに短絡するのを防止することができる。
【0034】
さらに、本実施形態のフレキシブルプリント配線板1のように、前列15のパッド15aに接続された第1の配線9と、後列17のパッド17aに接続された第2の配線11とを共に、ベースフィルム3の裏面(他方の面)に配置すれば、フレキシブルプリント配線板1の表面側の配線をなくすことができるため、該表面側にチップ等の他の電子部品を実装する場合の実装スペースを広くとることができるという利点もある。
【0035】
さらに、本実施形態のフレキシブルプリント配線板1のように、第1の配線9及び第2の配線11の、パッド15a,17aに対応する位置に、拡幅部9a,11aを設ければ、パッド15a,17aに接触する他の電子部品のコンタクトが、製作誤差等により正規の接触位置よりもパッド内において多少ずれて接触した場合でも、フレキシブルプリント配線板1の、コンタクトが接触する部分の厚さを均一とすることができているため、つまり耐クリープ性を向上させることができるため、パッド15a,17aと他の電子部品のコンタクトとの安定した接続を長期間に亘って維持することができる。特に、本実施形態
のように、拡幅部9a,11aを、パッド15a,17aに対応した形状とすることで、当該効果をより確実に得ることができる。
【0036】
さらに、本実施形態のフレキシブルプリント配線板1のように、補強層31,32を、配線9,11と同じ厚さとすれば、フレキシブルプリント配線板1の、他の電子部品の係合部が当接する箇所において十分な厚さを確保することができ、フレキシブルプリント配線板1の耐引き抜け性を確実に高めることができる。
【0037】
さらに、本実施形態のフレキシブルプリント配線板1のように、被係合部28,29及び補強層31,32を、接続端部13の両側縁部分に設ければ、フレキシブルプリント配線板1の耐引き抜け性をさらに高めることができるとともにより安定した保持を実現することができる。
【0038】
なお、上記説明では、
図1〜4に示したように、第1の配線9及び第2の配線11を共に、ベースフィルム3の裏面側に配置する例を示したが、これに限定されず、
図8(a),(b)に示すように、第1の配線9及び第2の配線11を共に、ベースフィルム3の表面側、つまりパッド15a,17aが位置する側に配置してもよい。なお、この場合にも、ベースフィルム3の裏面側(他方の面側)の、上方のパッド15a,17aに対応する位置に、上述の拡幅部9a,11aの代わりとして補強材9a’,11a’を設けてもよい。この補強材9a’,11a’は、
図8の例では配線9,11と同じ材料から形成されているが、補強材9a’,11a’は配線9,11の一部ではないため、耐クリープ性を有する樹脂等の他の材料から形成することもできる。
【0039】
また、第1の配線9及び第2の配線11の配置の変形例として、
図5及び9(a),(b)に示すように、第2の配線11をベースフィルム3の表面側(一方の面側)に配置し、第1の配線9をベースフィルム3の裏面側(他方の面側)に配置してもよい。ここで、
図5の場合には、ベースフィルム3の裏面側に設けられた第1の配線9によって、前列15のパッド15aに対応する拡幅部9a及び後列17のパッド17aに対応する拡幅部9bを形成している。
図9の場合においても、図示は省略するが、前列15のパッド15aに対応する裏面側位置に
図4で示したような拡幅部9aを設けるとともに、後列17のパッド17aに対応する裏面側位置に
図7(b)で示したような補強材11a’を設けるか、あるいは
図5に示すようにベースフィルム3の裏面側に設けられた第1の配線によって、前列15のパッド15aに対応する拡幅部及び後列17のパッド17aに対応する拡幅部を形成するようにしてもよい。
【0040】
(フレキシブルプリント配線板の製造方法)
次に、
図1〜4で示したフレキシブルプリント配線板1の製造方法の一例について、
図10〜
図12及び
図3を参照しながら説明する。
【0041】
まず、
図10(a)に示すように、ポリイミドからなるベースフィルム3の両面にそれぞれ銅箔36,37が積層された両面銅張積層体39を出発材料として形成する。両面銅張積層体39は、ベースフィルム3に銅を蒸着またはスパッタリングした後に銅めっきをしたものであっても、ベースフィルム3と銅箔36,37とを接着剤等を介して貼り合わせたものであってもよい。次いで、
図10(b)に示すように、両面銅張積層体39の所定位置に、レーザ加工やCNCドリル加工等によって下方(下面側)から銅箔37及びベースフィルム3を貫通するブラインドビアホール41,42を形成する。
【0042】
次に、
図10(c)に示すように、DPP(Direct Plating Process)処理によって、ブラインドビアホール41,42の内周面に導体層を形成し、次いで、ブラインドビアホール41,42の内面を含めた両面銅張積層体39の表面全体に
銅めっき層43を形成する。なお、銅めっき層43を形成するに際しては、ボタンめっきと呼ばれる構造の、部分的にめっきする工法を採用してもよい。これにより、両面銅張積層体39の上面側の銅箔36と、下面側の銅箔37とを電気的に接続するビア24,25が形成される。ビア24,25は、ブラインドビアホール41,42の内周面のみをめっきしてなる中空のものでも、ブラインドビアホール41,42内をめっきで充填もしくは導電性材料で充填したいわゆるフィルドビアであってもよい。続いて、
図10(d)に示すように、上面側の銅箔36及び下面側の銅箔37をパターンニングして、ベースフィルム3の表面上のパッド48,49、ベースフィルム3の下面側の配線パターン46,47及び補強層(図示省略)を形成する。上面側の銅箔36及び下面側の銅箔37のパターンニングは、例えばフォトリソグラフィ技術により上面側の銅箔36及び下面側の銅箔37の表面にマスクパターンを形成した後、上面側の銅箔36及び下面側の銅箔37をエッジングすることで行われる。
【0043】
次いで、配線パターンが形成された両面銅張積層体39の両面に上面側カバーレイ5及び下面側カバーレイ7(
図3参照)を、接着剤を介して貼り合わせる。
【0044】
次いで、上面側に形成されたパッド15a,17aの表面に金めっき層18,19を形成し、次いで、接続端部の両側縁部分を金型等によって部分的に除去することで当該両側縁部分に被係合部28,29を形成する。これにより、
図1〜4に示すようなフレキシブルプリント配線板1が完成する。なお、ブラインドビアホール41,42は、
図11(a)に示すように、上方側(上面側)から形成してもよく、あるいは
図11(b)に示すように、スルーホールとして形成することもできる。また、上述のように、銅めっき層43は、両面銅張積層体39の表面全体に形成しなくてもよく、例えば、
図12(a)に示すように、接続端部13の領域にのみに形成してもよく(両面部分めっき)、
図12(b)に示すように、接続端部13の領域において、上面側の銅箔36上にのみ形成してもよい(片面部分めっき)。
【0045】
(他の実施形態のフレキシブルプリント配線板)
次いで、本発明に係る他の実施形態のフレキシブルプリント配線板について、
図13〜
図17を参照して説明する。なお、先の実施形態のフレキシブルプリント配線板1における要素と同様の要素には同一の符号を付し、その詳細は省略する。
【0046】
先の実施形態のフレキシブルプリント配線板1は、補強層31,32を、ベースフィルム3の表面側(一方の面側)のパッド15aと一体に形成していたが、
図13(a),(b)に示すフレキシブルプリント配線板1では、補強層31’,32’を、パッド15aとは別体として形成している。つまり、補強層31’,32’は、パッド15a,17aから離間しており、パッド15a,17aに電気的に接続されていない。
【0047】
このようにすれば、補強層31’,32’により、フレキシブルプリント配線板1の耐引き抜け性を高めることができる上、他の電子部品の係合部がグランドに接続されている場合においても、補強層31’,32’とパッド15a,17aとは電気的に接続されていないため、パッド15a,17aの信号が補強層31’,32’及び他の電子部品の係合部を介してグランドに短絡するのを防止することができる。
【0048】
なお、
図13(a),(b)の例では、第1の配線9及び第2の配線11は共に、ベースフィルム3の裏面側に配置されているが、
図8と同様に、第1の配線9及び第2の配線11を共に、ベースフィルム3の表面側に配置してもよく、あるいは
図5及び9と同様に、第1の配線9をベースフィルム3の裏面側に配置するとともに第2の配線11はベースフィルム3の表面側に配置してもよい(図示省略)。
【0049】
次いで、
図14(a),(b)に
図13で示したフレキシブルプリント配線板の変形例を示すように、
図14(a),(b)のフレキシブルプリント配線板1は、補強層31’,32’の表面に絶縁層34,35を有している点で、
図13のフレキシブルプリント配線板1とは異なる。
【0050】
詳細には、絶縁層34,35は、上面側カバーレイ5の幅方向外側部分を、パッド15a,17aに被さることのないよう前方に延出させ、この延出部で補強層31’,32’の上面を覆うことで構成されている。
【0051】
このようにすれば、補強層31’,32’により、フレキシブルプリント配線板1の耐引き抜け性を高めることができる上、他の電子部品の係合部がグランドに接続されている場合においても、補強層31’,32’がパッド15a,17aとは電気的に接続されておらずかつ他の電子部品の係合部が絶縁層34,35によって補強層31’,32’から絶縁されるため、パッド15aの信号が補強層31’,32’及び他の電子部品の係合部を介してグランドに短絡するのをより確実に防止することができる。さらに、このような絶縁層34,35は、被係合部28,29の周囲の強度を高める補強層としても役立つものであり、フレキシブルプリント配線板1の耐引き抜け性を更に高めることができる。
【0052】
なお、
図14(a),(b)の例では、第1の配線9及び第2の配線11は共に、ベースフィルム3の裏面側に配置されているが、
図8と同様に、第1の配線9及び第2の配線11を共に、ベースフィルム3の表面側に配置してもよく、あるいは
図5及び9と同様に、第1の配線9をベースフィルム3の裏面側に配置するとともに第2の配線11はベースフィルム3の表面側に配置してもよい(図示省略)。また、
図14の例では、絶縁層34,35は上面側カバーレイ5によって形成したが、これに限らず、上面側カバーレイ5ではない絶縁層を別途、補強層31’,32’の上面に貼り付けるようにしてよい。
【0053】
次いで、
図15に、フレキシブルプリント配線板の更なる変形例を示す。
図15に示すフレキシブルプリント配線板1は、上面側カバーレイ5の幅方向外側部分を、パッド15a,17aに被さることのないよう前方に延出させ、この延出部でパッド15a,17aとは別体の補強層31’’,32’’を構成したものである。このような構成によっても、被係合部28,29の前方側の強度を高めることが可能である。
【0054】
次いで、
図16に、本発明に従う更に他の実施形態のフレキシブルプリント配線板を示すように、
図16のフレキシブルプリント配線板1は、前列15のパッド15aに接続された第1の配線9と、後列17のパッド17aに接続された第2の配線11とが共にベースフィルム3の他方の面(裏面)に配置されかつ補強層31,32及び該補強層31,32の表面を覆う絶縁層34’,35’を有するものの、上面側カバーレイを有していない点で、
図1のフレキシブルプリント配線板1とは異なるものである。絶縁層34’,35’は、絶縁性樹脂、例えば、ポリイミド、ポリエステル、ポリエチレンナフタレートにより形成することができる。図示例では、絶縁層34’,35’は、パッド15a,17aの幅方向外側で、後列17のパッド17aの手前位置から接続端部13の先端位置まで、被係合部28,29を取り囲むように設けられている。絶縁層34’,35’は補強層31,32だけを覆うように設けることもできる。
【0055】
このようなフレキシブルプリント配線板1によれば、表面側にチップ等の他の電子部品を実装する場合の実装スペースを広くとることができるという利点がある。また、補強層31,32によりフレキシブルプリント配線板1の耐引き抜け性を高めることができる上、絶縁層34’,35’により、補強層31,32と他の電子部品の係合部とを絶縁できるため、他の電子部品の係合部がグランドに接続されている場合においても、パッド15aの信号が補強層31,32及び他の電子部品の係合部を介して、グランドへ短絡するの
を防止することができる。さらに、このような絶縁層34’,35’は、被係合部28,29の周囲の強度を高める補強部材としても役立つものであり、フレキシブルプリント配線板1の耐引き抜け性を更に高めることもできる。
【0056】
次いで、
図17に、本発明に従う更に他の実施形態のフレキシブルプリント配線板を示すように、
図17のフレキシブルプリント配線板1では、前列15のパッド15aに接続された第1の配線9と、後列17のパッド17aに接続された第2の配線11とが共にベースフィルム3の他方の面(裏面)に配置されかつ補強層31’’’,32’’’を有するものの、上面側カバーレイを有していない点で、
図15のフレキシブルプリント配線板1とは異なるものである。
【0057】
詳細には、補強層31’’’,32’’’は、絶縁性樹脂、例えば、ポリイミド、ポリエステル、ポリエチレンナフタレートにより形成することができる。図示例では、補強層31’’’,32’’’は、パッド15a,17aの幅方向外側で、後列17のパッド17aの手前位置から接続端部13の先端位置まで、被係合部28,29を取り囲むように設けられている。補強層31’’’,32’’’は、他の電子部品との接続方向でみて被係合部28,29の前方側部分にのみ設けることもできる。
【0058】
このようなフレキシブルプリント配線板1によれば、補強層31’’’,32’’’によりフレキシブルプリント配線板1の耐引き抜け性を高めることができる上、他の電子部品の係合部がグランドに接続されている場合においても、パッド15aの信号が補強層31’’’,32’’’及び他の電子部品の係合部を介して、グランドへ短絡するのを防止することができる。
【0059】
以上、本発明に従うフレキシブルプリント配線板の幾つかの実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、様々な変更が可能である。例えば、図示は省略するが、上記実施形態のフレキシブルプリント配線板1において、ベースフィルム3の裏面側にも、表面側と同様の補強層を設けてもよく、このようにすれば、フレキシブルプリント配線板1の耐引き抜け性をより一層高めることができる。
【0060】
(コネクタ)
次に、上述したフレキシブルプリント配線板1を他の配線板に接続する、本発明に従う一実施形態のコネクタについて説明する。
【0061】
図18に示すように、コネクタ50は、フレキシブルプリント配線板1が挿入されるハウジング52と、フレキシブルプリント配線板1のパッド15a,17aと電気的に接続される複数のコンタクト54と、ハウジング52に挿入されたフレキシブルプリント配線板1をコンタクト54を介して押圧する、作動部材としての回動部材56と、フレキシブルプリント配線板1の接続端部13の両側縁部分に設けられた被係合部28,29に係止する、係合部としてのタブ状のロック部材(
図20参照)と、を備えている。
【0062】
ハウジング52は電気絶縁性のプラスチックで形成されており、公知の射出成形法によって製作することができる。材質としては寸法安定性や加工性やコスト等を考慮して適宜選択されるが、一般的にはポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアミド(66PA、46PA)、液晶ポリマー(LCP)、ポリカーボネート(PC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、またはこれらの合成材料を挙げることができる。
【0063】
ハウジング52には、コンタクト54が挿入される所要数の挿入溝が設けられるとともに、後方側にフレキシブルプリント配線板1が挿入される挿入口60が設けられている。
【0064】
各コンタクト54は、プレス加工や切削加工等、公知の加工方法によって製作可能である。コンタクト54は、バネ性や導電性などが要求され、黄銅やベリリウム銅、リン青銅等により形成することができる。また、
図19(a),(b)に示すように、コンタクト54は、フレキシブルプリント配線板1の前列15のパッド15aと後列17のパッド17aとに対応して2種類用いられるとともに、挿入方向を互い違いに代えて千鳥配列されている。2種類のコンタクト54a,54bはいずれも、フレキシブルプリント基板1の接続端部13が挿入される後方側の開口62,63と、回動部材56の後述するカム65が挿入される前方側の開口67,68とが形成された略H形状を有している。また、ロック部材58も同様に、
図20に示すように、フレキシブルプリント配線板1の接続端部13が挿入される後方側の開口58aと、回動部材56の後述するカム65が挿入される前方側の開口58bとが形成された略H形状を有しており、コンタクト54の両側にそれぞれ配置されている。
【0065】
図21に示すように、回動部材56は、その両端においてハウジング52に、幅方向Wを回動軸線として軸支されている。また、回動部材56は、回動軸線上に、上述したコンタクト54の前方側の開口67,68及びロック部材58の前方側の開口58bに挿入されるカム65を有しており、ハウジング52の挿入口60にフレキシブルプリント配線板1を挿入した後に、回動部材56を傾倒方向へ回動することで、カム65によって、コンタクト54及びロック部材58のバネ力に抗してコンタクト54の前方側の開口67,68及びロック部材58の前方側の開口58bが押し広げられる。これにより、
図20に示すように、コンタクト54の後方側の開口62,63及びロック部材58の後方側の開口58aが狭まり、コンタクト54とフレキシブルプリント配線板1との電気的な接続及びロック部材54の被係合部28,29への係止が行われる。反対に、
図21に示すように、回動部材56を起立方向へ回動することで、これらの電気的な接続及びロック部材58の係止は解除される。
【0066】
なお、作動部材としては、上述したような回動部材56のほか、ハウジングにフレキシブルプリント配線板を挿入した後に挿入し、フレキシブルプリント配線板をコンタクトに押し付けるスライダであってもよい。具体的には、
図22及び
図23に示すようなコネクタ70であって、主としてハウジング72とコンタクト74とスライダ76とを備えて構成されるものがある。コンタクト74は、
図23のように略コ字形状をしており、主にフレキシブルプリント配線板1と接触する接触部74aと、基板等に接続する接続部74bと、ハウジング72に固定される固定部74cとから構成されている。このコンタクト74は、圧入等によってハウジング72に固定されている。スライダ76は、
図23のように略楔形状をしており、所要数のコンタクト74が配置されたハウジング72にフレキシブルプリント配線板1を挿入した後に、スライダ76を挿入する。このようなスライダ76は、主にハウジング72に装着される装着部76aと、フレキシブルプリント配線板1をコンタクト74の接触部74aに押圧する押圧部76bとを備えている。フレキシブルプリント配線板1が挿入される以前は、スライダ76はハウジング72に仮装着された状態になっており、フレキシブルプリント配線板1が挿入された後にスライダ76を挿入すると、
図23(b)のようにフレキシブルプリント配線板1と平行にスライダ76の押圧部76bが挿入され、コンタクト74の接触部74aにフレキシブルプリント配線板1が押圧されるようになる。なお、図示は省略するが、本コネクタ70も、先のコネクタ50と同様、スライダ76の挿入時に、フレキシブルプリント配線板1に設けられた被係合部28,29に係合する係合部を有している。
【0067】
また、
図18〜21に示したコネクタ50では、回動部材56を、ハウジング52の、挿入方向前方位置に配置する例を示したが、回動部材56は、ハウジング52の、挿入方向後方位置に配置されるものであってもよい(図示省略)。
【実施例】
【0068】
次に、本発明の効果を確認するため試験を行ったので以下説明する。
【0069】
(実施例1)
実施例1として、
図1〜4に示す構造を有するフレキシブルプリント配線板を試作した。具体的には、フレキシブルプリント配線板は、接続端部に、前列15枚、後列14枚の千鳥配列されたパッドを有し、パッドのピッチは0.175mm(各列では0.35mm)であり、前列のパッドの配線及び後列のパッドの配線を共にベースフィルムの、パッドが設けられた面とは反対側の面(裏面)に有し、さらに切欠き部(被係合部)の前方側でかつ表面側に、パッドと一体の補強層を配設したものである。また、補強層の上面には、上面側カバーレイの延出部によって絶縁層を形成した。パッド、配線及び補強層は銅製とし、パッドの上面には金めっき層を形成した。ベースフィルムには、厚さ20μmのポリイミド製のフィルムを用いた。上面側カバーレイ及び下面側カバーレイには、厚さ12.5μmのポリイミド製のフィルムを用いた。補強フィルムには、厚さ12.5μmのポリイミド製のフィルムを用いた。補強層は、幅0.5mm、長さ0.5mm、厚さ22.5μm(銅:12.5μm,銅めっき:10μmであり、配線と同じである。)とした。また、切欠き部の寸法は、幅を0.5mm、長さを0.5mmとした。
【0070】
(実施例2)
実施例2として、ベースフィルムの上面側(パッドが形成された側)の補強層が、
図13に示すように別体として形成されておりかつ該補強層を覆う絶縁層を有していない点のみが実施例1とは異なるフレキシブルプリント配線板を試作した。
【0071】
(実施例3)
実施例3として、
図14に示すように、補強層を覆う絶縁層を有する点のみが実施例2とは異なるフレキシブルプリント配線板を試作した。詳細には、実施例3のフレキシブルプリント配線板は、補強層を覆う絶縁層を、上面側カバーレイの幅方向外側部分から前方に延びる延出部で構成したものである。
【0072】
(実施例4)
実施例4として、ベースフィルムの上面側(パッドが形成された側)に、実施例2の補強層に代えて、
図15に示すような補強層を有する点のみが実施例2とは異なるフレキシブルプリント配線板を試作した。詳細には、実施例4のフレキシブルプリント配線板は、上面側のパッドとは別体としての補強層を、上面側カバーレイの幅方向外側部分から前方に延びる延出部で構成したものである。
【0073】
(比較例1)
比較例1として、
図24に示すように、上記補強層及び絶縁層を有していない点を除いて、実施例1と同じ構造を有するフレキシブルプリント配線板を試作した。
【0074】
(耐引抜け性試験)
耐引抜け性試験は、実施例1〜4及び比較例1のフレキシブルプリント配線板をそれぞれ、
図18に示した構造を有するコネクタ(但し、コンタクトは設けていない。)に接続し、タブ状のロック部材のみでフレキシブルプリント配線板を嵌合、保持した状態において、引張試験機で、各フレキシブルプリント配線板をコネクタに対して、引き抜き方向(接続方向とは逆向き)に引っ張り、フレキシブルプリント配線板がコネクタから外れたときの引張試験機に加わる荷重を測定することにより行った。
【0075】
(試験結果)
試験の結果、比較例1のフレキシブルプリント配線板における、フレキシブルプリント
配線板がコネクタから外れたときの荷重を100%として、実施例1のフレキシブルプリント配線板における、フレキシブルプリント配線板がコネクタから外れたときの荷重は168%であり、実施例2のフレキシブルプリント配線板における、フレキシブルプリント配線板がコネクタから外れたときの荷重は146%であり、実施例3のフレキシブルプリント配線板における、フレキシブルプリント配線板がコネクタから外れたときの荷重は168%であり、実施例4のフレキシブルプリント配線板における、フレキシブルプリント配線板がコネクタから外れたときの荷重は115%であり、本発明の適用により、フレキシブルプリント配線板の耐引き抜け性が向上することが確認された。