特許第5941476号(P5941476)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5941476抽出された金属カルボキシレート塩を用いたオレフィンの重合方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5941476
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月29日
(54)【発明の名称】抽出された金属カルボキシレート塩を用いたオレフィンの重合方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/00 20060101AFI20160616BHJP
   C08F 10/00 20060101ALI20160616BHJP
   C08F 4/6592 20060101ALI20160616BHJP
【FI】
   C08F2/00 F
   C08F10/00 510
   C08F4/6592
【請求項の数】18
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2013-542013(P2013-542013)
(86)(22)【出願日】2011年11月10日
(65)【公表番号】特表2014-501814(P2014-501814A)
(43)【公表日】2014年1月23日
(86)【国際出願番号】US2011060198
(87)【国際公開番号】WO2012074709
(87)【国際公開日】20120607
【審査請求日】2014年9月2日
(31)【優先権主張番号】61/418,069
(32)【優先日】2010年11月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】599168648
【氏名又は名称】ユニベーション・テクノロジーズ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100156476
【弁理士】
【氏名又は名称】潮 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】アール・エリック・ペケーニョ
(72)【発明者】
【氏名】ファティ・デイビッド・フセイン
(72)【発明者】
【氏名】ケヴィン・ジョセフ・カン
(72)【発明者】
【氏名】チー−イー・クオ
(72)【発明者】
【氏名】ブルース・ジョン・サバトスキ
(72)【発明者】
【氏名】エリック・ジェイ・マーケル
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・ポール・ジルカー・ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】アガピオス・キリアコス・アガピオウ
(72)【発明者】
【氏名】デーヴィッド・エム・グロウチェウスキー
【審査官】 渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2002−520428(JP,A)
【文献】 特開2004−307652(JP,A)
【文献】 特表2007−517936(JP,A)
【文献】 特表2013−544316(JP,A)
【文献】 特表2012−504641(JP,A)
【文献】 特表2009−502476(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00−2/60
C08F 4/60−4/70
C08C 19/00−19/44
C08F 6/00−246/00、301/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応器中で触媒組成物及び抽出された金属カルボキシレート塩の存在下でオレフィンを重合させることを含む重合方法であって、
前記の抽出された金属カルボキシレート塩が3.0又はそれより大きい25℃における誘電率を有する有機溶媒で金属カルボキシレート塩を抽出することによって得られたものであり、
前記触媒組成物が、メタロセン触媒化合物を含む触媒化合物を含む、前記方法。
【請求項2】
前記の抽出された金属カルボキシレート塩が遊離のカルボン酸を本質的に含有しない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記の抽出された金属カルボキシレート塩が抽出された金属カルボキシレート塩の総重量を基準として1重量%未満の遊離酸を含有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記有機溶媒がC1−C10アルコール、C1−C10ケトン、C1−C10エステル、C1−C10エーテル、C1−C10アルキルハライド、C1−C10アルキロニトリル、C1−C10ジアルキルスルホキシド及びそれらの組合せより成る群から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記の金属カルボキシレート塩が次式:
MQx(OOCR)y
(ここで、Mは元素周期表からの第13族金属であり;
Qはハロゲン、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、アリールオキシ、シロキシ、シラン又はスルホネート基であり;
Rは12〜30個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であり;
xは0〜3の整数であり;
yはの整数であり;そして
xとyとの合計は金属Mの原子価に等しい)
で表される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記の抽出された金属カルボキシレート塩がカルボン酸アルミニウムを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
前記の抽出された金属カルボキシレート塩を含む連続性添加剤を反応器に加える工程をさらに含み、該連続性添加剤及び前記触媒組成物を反応器に別々に加え
前記連続性添加剤が、脂肪酸アミン、アミド−炭化水素又はエトキシル化アミド化合物、カルボキシレート化合物、脂肪酸−金属錯体;アルコール、エーテル、サルフェート化合物、および金属酸化物の少なくとも1つを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項8】
前記の抽出された金属カルボキシレート塩を含む連続性添加剤と組み合わせて触媒化合物を反応器に加えることをさらに含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項9】
前記触媒組成物が担体をさらに含み、初発湿式含浸を用いて該メタロセン触媒化合物及び担体を一緒にする、ここで前記初発湿式含浸が、前記触媒組成物を前記有機溶媒中に溶解させることを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項10】
前記触媒組成物が担体及び活性剤をさらに含み、前記触媒化合物がチタン原子、ジルコニウム原子及びハフニウム原子より成る群から選択される少なくとも1種の原子を含むメタロセン触媒化合物である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項11】
前記触媒化合物がメタロセン化合物であり、該メタロセン化合物が(ペンタメチルシクロペンタジエニル)(プロピルシクロペンタジエニル)MX2、テトラメチルシクロペンタジエニル)(プロピルシクロペンタジエニル)MX2、(テトラメチルシクロペンタジエニル)(ブチルシクロペンタジエニル)MX2、Me2Si(インデニル)2MX2、Me2Si(テトラヒドロインデニル)2MX2、(n−プロピルシクロペンタジエニル)2MX2、(n−ブチルシクロペンタジエニル)2MX2、(1−メチル−3−ブチルシクロペンタジエニル)2MX2、(プロピルシクロペンタジエニル)(テトラメチルシクロペンタジエニル)MX2、(ブチルシクロペンタジエニル)2MX2、(プロピルシクロペンタジエニル)2MX2及びそれらの組合せ(ここで、MはZr又はHfであり、XはF、Cl、Br、I、Me、Bnz、CH2SiMe3、C1−C5アルキル及びC1−C5アルケニルより成る群から選択される)より成る群から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項12】
前記触媒化合物が、HN(CH2CH2N(2,4,6−Me3フェニル))2MX2、またはHN(CH2CH2N(2,3,4,5,6−Me5フェニル))2MX2を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項13】
前記触媒組成物が担体及び活性剤を含み、前記触媒化合物が(1−メチル−3−ブチルシクロペンタジエニル)2ZrX2(ここで、XはF、Cl、Br、I及びMeより成る群から選択される)から選択されるメタロセン触媒化合物である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項14】
前記触媒組成物が、メタロセン触媒化合物と、チーグラー・ナッタ触媒、クロム系触媒、第15族触媒及びそれらの組合せから選択される少なくとも1種の他の触媒化合物とを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項15】
前記金属カルボキシレート塩が抽出されたものではないことを除いて同じ方法と比較して高められた触媒生産性を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項16】
エチレン/α−オレフィンコポリマーを製造するための重合方法であって、
エチレン及びα−オレフィンと触媒組成物とを反応器中でエチレン/α−オレフィンコポリマーを製造するための重合条件下で接触させ、ここで、前記触媒組成物が重合触媒及び第1の抽出された金属カルボキシレート塩を含み、この第1の抽出された金属カルボキシレート塩が3.0又はそれより大きい25℃における誘電率を有する有機溶媒で金属カルボキシレート塩を抽出することによって得られたものであり;そして
前記反応器に第2の抽出された金属カルボキシレート塩を含む連続性添加剤を加え、ここで、該連続性添加剤及び前記触媒組成物が別々に前記反応器に加えられ、前記の第2の抽出された金属カルボキシレート塩が3.0又はそれより大きい25℃における誘電率を有する有機溶媒で金属カルボキシレート塩を抽出することによって得られたものである:
ことを含み、
前記触媒組成物が、メタロセン触媒化合物を含み、
前記連続性添加剤が、脂肪酸アミン、アミド−炭化水素又はエトキシル化アミド化合物、カルボキシレート化合物、脂肪酸−金属錯体;アルコール、エーテル、サルフェート化合物、および金属酸化物の少なくとも1つを含む、前記重合方法。
【請求項17】
前記の第1の抽出された金属カルボキシレート塩及び第2の抽出された金属カルボキシレート塩がそれぞれ遊離のカルボン酸を本質的に含有しない、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記の第1の抽出された金属カルボキシレート塩及び第2の抽出された金属カルボキシレート塩を得るために抽出される金属カルボキシレート塩がモノステアリン酸アルミニウム、ジステアリン酸アルミニウム、トリステアリン酸アルミニウム及びそれらの組合せから独立的に選択される、請求項16又は17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野及び背景技術】
【0001】
メタロセン触媒は、ポリエチレンポリマー等のポリオレフィンポリマーを製造するために広く用いられている。それらは、効率的な方法並びに様々な新規ポリマー及び改良型ポリマーを提供してきた。しかしながら、産業界では新たなメタロセン触媒組成物及び改良型メタロセン触媒組成物を開発することに継続した焦点が存在する。あるものは新たなポリマーを製造するための触媒組成物を設計することに焦点を置き、別のあるものは操作性の改善に焦点を置き、さらに別のあるものは触媒生産性を改善することに焦点を置く。触媒の生産性、即ち触媒1g当たりに製造されるポリマーの量は、ポリオレフィン製造業者にとっては重大な関心事であり得る。反応器操作性{例えばファウリング(汚れ付着)やシーティングがないこと}は、ポリオレフィン製造業者にとっての別の主要な関心事である。反応器のファウリングの発現を減らせれば、反応器停止時間が減り、ポリオレフィン樹脂の生産量が増加し、しかも高品質の樹脂が得られるという点で、工業的に有益である。
【0002】
反応器のファウリングの問題に対処するために、金属カルボキシレート塩のような他の添加剤が触媒に別個に又は担持された触媒組成物の一部として加えられることがしばしばある。しかしながら、斯かる添加剤は触媒生産性及び樹脂の嵩密度を抑制してしまうことがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、反応器のファウリングの問題に対処するために、例えば触媒生産性及び樹脂嵩密度の望ましくない抑制なしで、金属カルボキシレート塩を利用する改良型重合方法が得られれば、有利であろう。
【課題を解決するための手段】
【0004】
概要
ここに、抽出された金属カルボキシレート塩を用いたオレフィンの重合方法が開示される。この方法は、高められた触媒生産性及び/又は高められた樹脂嵩密度を有することを特徴とし得る。この重合方法は、反応器中で触媒組成物及び抽出された金属カルボキシレート塩の存在下でオレフィンを重合させることを含むことができ、抽出された金属カルボキシレート塩は、25℃において3.0又はそれ以上の誘電率を有する有機溶媒で金属カルボキシレート塩を抽出することによって得られたものである。抽出された金属カルボキシレート塩は、触媒組成物と一緒に又は触媒組成物とは別個に反応器に加えることができる。
【0005】
また、エチレン/α−オレフィンコポリマーを製造するための、高められた触媒生産性及び/又は高められた樹脂嵩密度を有する重合方法であって、反応器中でエチレン/α−オレフィンコポリマーを製造するための重合条件下でエチレン及びα−オレフィンを触媒組成物と接触させることを含み、前記触媒組成物が重合触媒及び第1の抽出された金属カルボキシレート塩を含み、この第1の抽出された金属カルボキシレート塩が25℃において3.0又はそれ以上の誘電率を有する有機溶媒を用いて金属カルボキシレート塩を抽出することによって得られたものである、前記重合方法も提供される。この方法は、第2の抽出された金属カルボキシレート塩を含む連続性添加剤を反応器に加えることをさらに含むことができ、この第2の抽出された金属カルボキシレート塩は前記触媒組成物とは別個に反応器に加えられ、この第2の抽出された金属カルボキシレート塩は25℃において3.0又はそれ以上の誘電率を有する有機溶媒を用いて金属カルボキシレート塩を抽出することによって得られたものである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
詳しい説明
本発明の化合物、成分、組成物及び/又は方法を開示して説明する前に、別段示されていなければ本発明は特定の化合物、成分、組成物、反応成分、反応条件、リガンド、メタロセン構造等に限定されるものではなく、別段の規定がなければ変更可能であるということを理解すべきである。また、本明細書において用いられる用語は、特定の実施形態を説明するためのものであり、限定を意図するものではないことも、理解すべきである。
【0007】
また、本明細書及び特許請求の範囲において用いた時の単数表現は、別段の定めがなければ複数の場合を包含することも、理解しなければならない。従って、例えば「脱離基で置換された」部分におけるような「脱離基」と言った時には、1個より多くの脱離基も包含し、その部分は2個以上のかかる基で置換されていてもよい。同様に、「ハロゲン原子で置換された」部分におけるような「ハロゲン原子」と言った時には、1個より多くのハロゲン原子も包含し、その部分は2個以上のハロゲン原子で置換されていてもよく、「置換基」と言った時には1個以上の置換基を包含し、「リガンド」と言った時には1個以上のリガンドを包含する、等々。
【0008】
ここで用いた時、元素周期表及びその族についてのすべての参照は、HAWLEY'S CONDENSED CHEMICAL DICTIONARY、第13版、John Wiley and Sons社(1997年)に発表された新表記法(IUPACからの認可でそこに再現されたもの)によるものであるが、ローマ数字で示された以前のIUPAC(これも同じものに現れる)を参照している場合や別段の定めがある場合は除く。
【0009】
高められた触媒生産性及び/又は高められた樹脂嵩密度を有するオレフィン重合方法がここに開示される。開示される特定的な方法には、メタロセン触媒化合物及び抽出された金属カルボキシレート塩の存在下でのオレフィンの重合に関するものが包含される。ある実施形態においては、金属カルボキシレート塩とメタロセン触媒化合物とを別々に反応器に加えることができる。また、メタロセン触媒化合物及び抽出された金属カルボキシレート塩を含み、高められた触媒生産性を有する触媒組成物もここに開示される。また、Incipient Wetness(初発湿式)技術によって製造されたメタロセン触媒化合物もここに開示される。さらに、触媒組成物の製造方法及び前記重合方法によって製造されたポリマー製品も開示される。
【0010】
ここに開示される実施形態の内のいくつかにおいて、抽出された金属カルボキシレート塩を触媒化合物と組み合わせて用いることによって、高められた触媒生産性がもたらされることが見出された。さらに、抽出された金属カルボキシレート塩を触媒化合物と組み合わせて用いることによって、より高い樹脂嵩密度がもたらされ得ることも見出された。より高い樹脂嵩密度は、より一層高いプラント速度及びより一層高いモノマー効率(例えばフレアにベントされるエチレンが少なくなる)や、エチレン排出量減少のための環境上の信用の保証を含めて、多くの理由で有利であり得る。さらに、Incipient Wetness含浸によって製造されたメタロセン触媒化合物を用いることによっても、高められた触媒生産性が得られることがわかった。
【0011】
抽出された金属カルボキシレート塩
ここに記載されるオレフィンの重合においては、抽出された金属カルボキシレート塩を用いることができる。抽出された金属カルボキシレート塩とは、25℃において3.0又はそれ以上の誘電率を有する有機溶媒で金属カルボキシレート塩を抽出することによって得ることができるものである。ここで用いた時、用語「金属カルボキシレート塩」とは、元素周期表からの金属部分を持つ任意のモノ−又はジ−又はトリ−カルボン酸塩を指す。理論に縛られるものではないが、金属カルボキシレート塩の抽出は、金属カルボキシレート塩の合成後に残留物として通常残る遊離のカルボン酸又はその誘導体を、減少させるか、又は取り除く可能性さえあるものと信じられる。メタロセン触媒と共に金属カルボキシレート塩を用いた結果として起こる低下した触媒生産性及び樹脂嵩密度は、少なくとも一部は、金属カルボキシレート塩中に存在する遊離のカルボン酸又はその第1族若しくは第2族塩の画分のせいである。
【0012】
ある実施形態において、抽出された金属カルボキシレート塩は遊離のカルボン酸を実質的に含有しないものとする。ここで用いた時、用語「遊離のカルボン酸を実質的に含有しない」とは、抽出された金属カルボキシレート塩がDSC分析において遊離の酸又はその第1族若しくは第2族塩に対応する融解温度(融点)を示さないことを言う。抽出された金属カルボキシレート塩は、クロマトグラフィーで測定した時に抽出された金属カルボキシレート塩の総重量を基準として約1重量%以下の合計遊離酸、又は抽出された金属カルボキシレート塩の総重量を基準として約0.5重量%以下、又は約0.1重量%以下の合計遊離酸を有することができる。
【0013】
抽出された金属カルボキシレート塩は、25℃において3.0又はそれ以上の誘電率を有する有機溶媒で金属カルボキシレート塩を抽出することによって、得ることができる。この極性溶媒は、未精製金属カルボキシレート塩中に存在する遊離の酸を含む極性化合物の抽出の改善をもたらす。好適な有機溶媒の例には、C1−C10アルコール、C1−C10ケトン、C1−C10エステル、C1−C10エーテル、C1−C10アルキルハロゲン化物、C1−C10アルキロニトリル、C1−C10ジアルキルスルホキシド及びそれらの組合せが包含される。別の実施形態において、前記有機溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、メチルブテレート(buterate)、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、クロロホルム、ジクロロメタン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド及びそれらの組合せから選択される。
【0014】
溶媒の誘電率は、次の式におけるεによって規定される:
F=(QQ’)/(εr2
ここで、Fは、溶媒中で距離rだけ隔てられた2つの電荷Q及びQ’の間の引力である。多くの溶媒の誘電率はよく知られており、例えばCRC Handbook of Chemistry and Physics第59版のE-55〜E-62頁に見出すことができる。
【0015】
好ましい溶媒は、25℃における誘電率が3以上、又は5以上、又は7以上、又は10以上、又は12以上、又は15以上、又は17以上のものである。ある種の実施形態において、溶媒は25℃における誘電率が少なくとも20のものであることができる。
【0016】
抽出された金属カルボキシレート塩についての前駆体として用いることができる金属カルボキシレート塩の非限定的な例には、飽和、不飽和、脂肪族、芳香族又は飽和環状カルボン酸塩が包含される。カルボキシレートリガンドの非限定的な例には、アセテート、プロピオネート、ブチレート、バレレート、ピバレート、カプロエート、イソブチルアセテート、t−ブチルアセテート、カプリレート、ヘプタネート、ペラルゴネート、ウンデカノエート、オレエート、オクトエート、パルミテート、ミリステート、マルガレート、ステアレート、アラケート(arachate)及びターコサネート(tercosanoate)がある。金属部分の非限定的な例には、元素周期表からのAl、Mg、Ca、Sr、Sn、Ti、V、Ba、Zn、Cd、Hg、Mn、Fe、Co、Ni、Pd、Li及びNaの群から選択される金属がある。
【0017】
金属カルボキシレート塩は、次の一般式によって表すことができる。
M(Q)x(OOCR)y
(ここで、Mは第3〜16族並びにランタニド及びアクチニド系列からの金属、又は第8〜13族からの金属、又は第13族からの金属であり、1つの特定的な例はアルミニウムであり;
Qはハロゲン、水素、ヒドロキシ又はヒドロキシド、アルキル、アルコキシ、アリールオキシ、シロキシ、シラン又はスルホネート基であり;
Rは1〜100個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であり;
xは0〜3の整数であり、yは1〜4の整数であり、xとyとの合計は金属の原子価に等しい。)
【0018】
上記式中のRは同一であっても異なっていてもよい。Rの非限定的な例には、2〜100個の炭素原子を有するヒドロカルビル基があり、これにはアルキル、アリール、芳香族、脂肪族、環状、飽和又は不飽和のヒドロカルビル基が包含される。ある種の実施形態において、Rは、8個以上の炭素原子、又は12個以上の炭素原子、又は14個を超える炭素原子を有するヒドロカルビル基である。別の実施形態において、Rは、17〜90個の炭素原子、又は17〜72個の炭素原子、又は17〜54個の炭素原子を有するヒドロカルビル基を含むことができる。別の実施形態において、Rは6〜30個の炭素原子、又は8〜24個の炭素原子、又は16〜18個の炭素原子を含む(例えばパルミチル及びステアリル)。
【0019】
上記の式中のQの非限定的な例には、アルキル、シクロアルキル、アリール、アルケニル、アリールアルキル、アリールアルケニル又はアルキルアリール、アルキルシラン、アリールシラン、アルキルアミン、アリールアミン、アルキルホスフィド、アルコキシ(1〜30個の炭素原子を有するもの)のような基を含有する1種以上の同一又は異なる炭化水素が包含される。炭化水素含有基は直鎖状であっても分岐鎖状であってもいいし、さらには置換されていてもよい。Qはまた、ハライド、サルフェート又はホスフェートのような無機基であることもできる。
【0020】
前記金属カルボキシレート塩は、アルミニウムカルボキシレート、例えばアルミニウムモノ−、ジ−及びトリステアレート、アルミニウムオクトエート、オレエート及びシクロヘキシルブチレートを含むことができる。例えば、前記金属カルボキシレート塩は、トリステアリン酸アルミニウム(CH3(CH2)16COO)3Al、ジステアリン酸アルミニウム(CH3(CH2)16COO)2−Al−OH、及び/又はモノステアリン酸アルミニウムCH3(CH2)16COO−Al(OH)2を含むことができる。金属カルボキシレート塩の別の例には、金属カルボキシレート塩の別の例には、チタンステアレート、スズステアレート、カルシウムステアレート、亜鉛ステアレート、ホウ素ステアレート及びストロンチウムステアレートがある。
【0021】
抽出された金属カルボキシレートは、触媒組成物の一部として用いることができ、且つ/又は触媒組成物とは独立して反応器中に直接導入することもできる。例えば、抽出された金属カルボキシレート塩及び触媒組成物を反応器に別々に供給することができる。
【0022】
反応器系に加えられる抽出された金属カルボキシレート塩の量は、用いる触媒系や、反応器予備コンディショニング(帯電を制御するための反応器壁のコーティング)及び他の当業者に周知のファクターに依存し、例えば反応器の状態、温度及び圧力、混合装置のタイプ、組み合わされるべき成分の量、そしてさらには触媒/連続性添加剤組合せ物を反応器中に導入するメカニズムにさえ、依存し得る。ある種の実施形態において、所定の時点における反応器中の抽出された金属カルボキシレート塩の量対製造されるポリマーの量の比は、約0.5ppm〜約1000ppmの範囲、又は約1ppm〜約400ppmの範囲、又は約5ppm〜約50ppmの範囲であることができる。
【0023】
抽出された金属カルボキシレート塩は、溶液として又はスラリーとして、重合反応器に供給することができる。例えば、抽出された金属カルボキシレート塩は、最初に鉱油と混合し又は一緒にして、反応器に供給することができるスラリーを形成させることができる。
【0024】
抽出された金属カルボキシレート塩及び触媒組成物は、一緒に反応器中に注入することができる。例えば、米国特許第5317036号及び同第5693727明細書並びに欧州特許公開第0593083A公報に記載されたように、触媒は非担持の液体の形であることができる。液体の形の触媒は、例えば国際公開WO97/46599号に記載された注入方法を用いて、抽出された金属カルボキシレートと共に反応器に供給することができる。
【0025】
ある種の実施形態においては、触媒化合物を抽出された金属カルボキシレート塩と接触させて触媒組成物を作ることができる。接触とは、一緒にすること、ブレンドすること、混合すること等をも指すことができることとする。
【0026】
抽出された金属カルボキシレート塩は、触媒組成物中に約0.1〜約25重量%存在させることができる。この範囲内で、抽出された金属カルボキシレート塩は、触媒組成物の総重量を基準として0.5%以上、又は1%以上、又は2%以上、又は3%以上、又は4%以上、又は5%以上、又は6%以上、又は7%以上、又は8%以上、又は9%以上、又は10%以上、触媒組成物中に存在させることができる。この範囲内で、また、抽出された金属カルボキシレート塩は、触媒組成物の総重量を基準として20%以下、又は15%以下、又は10%以下の量で、触媒組成物中に存在させることができる。
【0027】
ある種の実施形態においては、メタロセン触媒(及び随意としての別の触媒)を、前記の抽出された金属カルボキシレート塩と一緒にし、接触させ、ブレンドし、且つ/又は混合する。触媒は、担持させることができる。実施形態は、触媒を形成させ、例えば担持された触媒を形成させ、そしてこの触媒を抽出された金属カルボキシレート塩と接触させることを含むことができる。ある種の実施形態においては、初発湿式含浸(incipient wetness impregnation)又は触媒化合物を担体上に付着させるための別の技術によって、担持された触媒を形成させることができる。
【0028】
ある種の実施形態においては、担持されたメタロセン触媒を、抽出された金属カルボキシレート塩と共に、担持触媒のかなりに部分が抽出された金属カルボキシレート塩と混合され且つ/又は実質的に接触するような時間、タンブリングする。また、抽出された金属カルボキシレート塩を反応器中に導入する前に助触媒又は活性剤(例えばメチルアルモキサン又は変性メチルアルモキサンのような有機金属化合物)と予混合することもできる。
【0029】
ある種の実施形態において、触媒組成物は担持されたものであり、そして、実質的に乾燥させ、予備成形し且つ/又は自由流動性である(さらさらしている)ことができる。予備成形した担持触媒組成物を、抽出された金属カルボキシレート塩と接触させる。抽出された金属カルボキシレート塩は、溶液状、エマルション状又はスラリー状であることができる。これはまた、自由流動性の粉体のような固体の形にあってもよい。別の実施形態においては、抽出された金属カルボキシレート塩と担持された触媒組成物、例えば担持されたメタロセン触媒組成物とを、窒素雰囲気下でタンブルミキサーのようなロータリーミキサー中で、又は流動床混合プロセスで、接触させる。
【0030】
ある種の実施形態においては、メタロセン触媒を担体と接触させて担持された触媒化合物を形成させる。触媒化合物用の活性剤を別の担体と接触させて担持された活性剤を形成させることができる。次いで、抽出された金属カルボキシレート塩と担持された触媒化合物又は担持された活性剤とを、任意の順序で混合することができ、別個に混合することができ、同時に混合し、又は担持された触媒若しくは例えば別個に担持された触媒と活性剤とを混合する前の担持された活性剤の内の一方のみと混合することができる。
【0031】
混合及び接触技術は、任意の機械的混合手段、例えば振り混ぜ、撹拌、タンブリング及びローリングを伴うものであることができる。企図される別の技術は、流動化の利用を伴うもの、例えば循環ガスが接触をもたらす流動床反応器中での流動化の利用を伴うものである。
【0032】
追加の連続性添加剤/助剤
上記の抽出された金属カルボキシレート塩に加えて、1種以上の追加の連続性添加剤を、例えば反応器中の静電気レベルの調節を補助するために、用いることが望ましいこともある。ここで用いた時、用語「連続性添加剤又は助剤」及び「ファウリング防止剤」とは、気相又はスラリー相重合方法において反応器のファウリングを減らし又はなくすのに有用な化合物又は化合物の混合物(例えば固体又は液体)を意味する。ここで、ファウリングは、反応器壁のシーティング、入口及び出口管の詰まり、大きい凝集物の形成、又はその他の当業者に周知の形の反応器の不調を含む任意の数の現象によって明らかにされ得る。本発明において、これらの用語は互換的に用いることができる。連続性添加剤は、触媒組成物の一部として用いることもでき、また、触媒組成物とは独立して反応器中に直接導入することもできる。ある種の実施形態において、連続性添加剤は、ここに記載される担持触媒組成物の無機酸化物上に担持される。
【0033】
連続性添加剤の非限定的な例には、脂肪酸アミン、アミド−炭化水素又はエトキシル化アミド化合物、例えば国際公開WO96/11961号に「表面変性剤」として記載されたもの;カルボキシレート化合物、例えばアリールカルボキシレート及び長鎖炭化水素カルボキシレート、並びに脂肪酸−金属錯体;アルコール、エーテル、サルフェート化合物、金属酸化物及び他の当技術分野において周知の化合物がある。連続性添加剤のいくつかの特定的な例には、1,2−ジエーテル有機化合物、酸化マグネシウム、ARMOSTAT 310、ATMER 163、ATMER AS-990、及び他のグリセロールエステル、エトキシル化アミン(例えばN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)オクタデシルアミン)、アルキルスルホネート、及びアルコキシル化脂肪酸エステル;STADIS 450及び425、KEROSTAT CE 4009及びKEROSTAT CE 5009、クロムN−オレイルアントラニレート塩、ジ−t−ブチルフェノール及びMedialan酸のカルシウム塩;POLYFLO 130、TOLAD 511(α−オレフィン−アクリロニトリルコポリマー及びポリマー状ポリアミン)、EDENOL D32、ソルビタンモノオレエート、グリセロールモノステアレート、メチルトルエート、ジメチルマレエート、ジメチルフマレート、トリエチルアミン、3,3−ジフェニル−3−(イミダゾール−1−イル)プロピン並びに類似化合物がある。ある種の実施形態において、追加の連続性添加剤は、記載したカルボキシレート金属化合物(随意に本項に記載した他の化合物と共に)である。
【0034】
前記の追加の連続性添加剤の内の任意のものを追加の連続性添加剤として、単独で又は組合せとして、用いることができる。例えば、抽出された金属カルボキシレート塩をアミン含有調節剤と組み合わせる{例えば、抽出された金属カルボキシレート塩をKEMAMINE(Chemtura Corporation社より入手可能)又はATMER(ICI Americas Inc.社より入手可能) 類に属する任意の類の製品と組み合わせる}ことができる。例えば、抽出された金属カルボキシレート塩を帯電防止剤、例えば脂肪族アミン、例えばKEMAMINE AS 990/2亜鉛添加物、エトキシル化ステアリルアミンとステアリン酸亜鉛とのブレンド、又はKEMAMINE AS 990/3、エトキシル化ステアリルアミンとステアリン酸亜鉛とオクタデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメートとのブレンドと組み合わせることができる。
【0035】
ここに開示される実施形態において有用なその他の追加の連続性添加剤は、当業者によく知られたものである。どの追加連続性添加剤を用いるかに拘わらず、適切な追加の連続性添加剤を選択するに当たっては、反応器中に毒が導入されないように注意を払うべきである。さらに、選択された実施形態において、追加の連続性添加剤は、所望の範囲で静電気を配向させるのに必要最小量で用いるべきである。
【0036】
追加の連続性添加剤は、上に挙げた2種以上の追加の連続性添加剤との組合せとして、又は追加の連続性添加剤と抽出されたカルボキシレート金属塩との組合せとして、反応器に加えることができる。追加の連続性添加剤は、溶液又はスラリー(例えば鉱油とのスラリー)の形で反応器に加えることもでき、個別の供給流として反応器に加えることもでき、反応器に加える前に他の供給物と一緒にすることもできる。例えば、一緒にされた触媒−静電気調節剤の混合物を反応器に供給する前に、追加の連続性添加剤と触媒又は触媒スラリーとを一緒にすることができる。
【0037】
ある種の実施形態において、追加の連続性添加剤は、ポリマー生産速度を基準として約0.05〜約200ppmw、又は約2〜約100ppmw、又は約2〜約50ppmwの範囲の量で、反応器に加えることができる。ある種の実施形態において、追加の連続性添加剤は、ポリマー生産速度を基準として約2ppmw又はそれを超える量で反応器に加えることができる。
【0038】
メタロセン触媒
前記触媒組成物は、少なくとも1種のメタロセン触媒成分を含むことができる。ここで用いた時、用語「触媒組成物」とは、触媒、例えばここに記載されるようなメタロセン触媒と、少なくとも1種の助触媒(時に活性剤とも称される)と、随意成分(担体、添加剤、連続性添加剤/補助剤、スカベンジャー等)との組合せ物を指すことができる。
【0039】
メタロセン触媒又はメタロセン成分は、少なくとも1個の第3〜12族金属原子に結合した1個以上のCpリガンド(シクロペンタジエニルリガンド及びシクロペンタジエニルにアイソローバル類似のリガンド)及び少なくとも1個の金属原子に結合した1個以上の脱離基を有する、「半サンドイッチ」化合物(即ち少なくとも1個のリガンド)及び「全サンドイッチ」化合物(即ち少なくとも2個のリガンド)を含むことができる。以下においては、これらの化合物を「メタロセン」又は「メタロセン触媒成分」と称する。
【0040】
前記の1種以上のメタロセン触媒成分は、次式(I)で表わされる。
CpACpBMXn (I)
【0041】
本明細書及び請求の範囲を通じて記載された時の前記メタロセン触媒化合物の金属原子「M」は、1つの実施形態においては第3〜12族原子及びランタニド系列の原子より成る群から選択することができ;より特定的な実施形態においては第4、5及び6族原子より成る群から選択することができ、より特定的な実施形態においてはTi、Zr、Hf原子から選択することができ、さらにより特定的な実施形態においてはZrであることができる。金属原子「M」に結合する基は、別段示されていなければ、以下に式及び構造において記載した化合物が中性になるようなものである。Cpリガンドが金属原子Mと共に少なくとも1つの化学結合を形成して「メタロセン触媒化合物」を形成する。Cpリガンドは、置換/抽出反応をそれほど受けやすくないという点で、触媒化合物に結合した脱離基とは異なる。
【0042】
ある種の実施形態において、Mは前記の通りであり;各XはMに化学結合し;各Cp基はMに化学結合し;nは0又は1〜4の整数であり;特定的な実施形態においては1又は2である。
【0043】
式(I)中のCpA及びCpBによって表わされるリガンドは同一であっても異なっていてもよく、シクロペンタジエニルリガンド又はシクロペンタジエニルにアイソローバル類似のリガンドであり、それらのいずれか又は両方はヘテロ原子を含有していてもよく、また、それらのいずれか又は両方は基Rで置換されていてもよい。1つの実施形態において、CpA及びCpBはシクロペンタジエニル、インデニル、テトラヒドロインデニル、フルオレニル及びそれらの置換誘導体より成る群から独立的に選択される。
【0044】
式(I)の各CpA及びCpBは独立的に、非置換であってもよく、置換基Rの1つ又は組合せによって置換されていてもよい。構造(I)中に用いられた時の置換基Rの非限定的な例には、水素基、ヒドロカルビル、低級ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロヒドロカルビル、アルキル、低級アルキル、置換アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、低級アルケニル、置換アルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、低級アルキニル、置換アルキニル、ヘテロアルキニル、アルコキシ、低級アルコキシ、アリールオキシ、ヒドロキシル、アルキルチオ、低級アルキルチオ、アリールチオ、チオキシ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、アラルキル、アラルキレン、アルカリール、アルカリーレン、ハライド、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロ環、ヘテロアリール、ヘテロ原子含有基、シリル、ボリル、ホスフィノ、ホスフィン、アミノ、アミン、シクロアルキル、アシル、アロイル、アルキルチオール、ジアルキルアミン、アルキルアミド、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、カルバモイル、アルキル−及びジアルキル−カルバモイル、アシルオキシ、アシルアミノ、アロイルアミノ並びにそれらの組合せが包含される。
【0045】
式(I)に関するアルキル置換基Rの非限定的な例には、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル、フェニル、メチルフェニル及びt−ブチルフェニル基等(それらのすべての異性体、例えばt−ブチル、イソプロピル等を包含する)が包含される。その他の可能な基には、置換アルキル及びアリール、例えばフルオロメチル、フルオロエチル、ジフルオロエチル、ヨードプロピル、ブロモヘキシル、クロロベンジル並びにヒドロカルビル置換オルガノメタロイド基(トリメチルシリル、トリメチルゲルミル、メチルジエチルシリル等を含む);並びにハロカルビル置換オルガノメタロイド基(トリス(トリフルオロメチル)シリル、メチルビス(ジフルオロメチル)シリル、ブロモメチルジメチルゲルミル等を含む);並びに二置換ホウ素基(例えばジメチルホウ素を含む);並びに二置換第15族基(ジメチルアミン、ジメチルホスフィン、ジフェニルアミン、メチルフェニルホスフィンを含む)、第16族基(メトキシ、エトキシ、プロポキシ、フェノキシ、メチルスルフィド及びエチルスルフィドを含む)が包含される。その他の置換基Rには、ビニルを末端基とするリガンドを含むオレフィン性不飽和置換基(これに限定されるわけではない)のようなオレフィン類、例えば3−ブテニル、2−プロペニル、5−ヘキセニル等が包含される。ある種の実施形態においては、少なくとも2個のR基(例えば2個の隣接したR基)が結合して、炭素、窒素、酸素、リン、ケイ素、ゲルマニウム、アルミニウム、ホウ素及びそれらの組合せより成る群から選択される3〜30個の原子を有する環構造を形成する。また、1−ブタニルのような置換基Rが元素Mに対する結合連結を形成してもよい。
【0046】
式(I)中の各Xは、ハロゲンイオン、ヒドリド、ヒドロカルビル、低級ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロヒドロカルビル、アルキル、低級アルキル、置換アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、低級アルケニル、置換アルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、低級アルキニル、置換アルキニル、ヘテロアルキニル、アルコキシ、低級アルコキシ、アリールオキシ、ヒドロキシル、アルキルチオ、低級アルキルチオ、アリールチオ、チオキシ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、アラルキル、アラルキレン、アルカリール、アルカリーレン、ハライド、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロ環、ヘテロアリール、ヘテロ原子含有基、シリル、ボリル、ホスフィノ、ホスフィン、アミノ、アミン、シクロアルキル、アシル、アロイル、アルキルチオール、ジアルキルアミン、アルキルアミド、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、カルバモイル、アルキル−及びジアルキル−カルバモイル、アシルオキシ、アシルアミノ、アロイルアミノ並びにそれらの組合せより成る群から、独立的に選択される。ある種の実施形態において、Xは、C1〜C12アルキル、C2〜C12アルケニル、C6〜C12アリール、C7〜C20アルキルアリール、C1〜C12アルコキシ、C6〜C16アリールオキシ、C7〜C18アルキルアリールオキシ、C1〜C12フルオロアルキル、C6〜C12フルオロアリール及びC1〜C12ヘテロ原子含有炭化水素並びにそれらの置換誘導体であることができる。ある種の実施形態において、Xはヒドリド、ハロゲンイオン、C1〜C6アルキル、C2〜C6アルケニル、C7〜C18アルキルアリール、C1〜C6アルコキシ、C6〜C14アリールオキシ、C7〜C16アルキルアリールオキシ、C1〜C6アルキルカルボキシレート、C1〜C6フッ素化アルキルカルボキシレート、C6〜C12アリールカルボキシレート、C7〜C18アルキルアリールカルボキシレート、C1〜C6フルオロアルキル、C2〜C6フルオロアルケニル及びC7〜C18フルオロアルキルアリールから選択され;さらにより一層特定的な実施形態においてはヒドリド、クロリド、フルオリド、メチル、フェニル、フェノキシ、ベンゾキシ、トシル、フルオロメチル及びフルオロフェニルから選択される。ある種の実施形態において、XはC1〜C12アルキル、C2〜C12アルケニル、C6〜C12アリール、C7〜C20アルキルアリール、置換C1〜C12アルキル、置換C6〜C12アリール、置換C7〜C20アルキルアリール並びにC1〜C12ヘテロ原子含有アルキル、C1〜C12ヘテロ原子含有アリール及びC1〜C12ヘテロ原子含有アルキルアリールから選択することができる。ある種の実施形態において、Xはクロリド、フルオリド、C1〜C6アルキル、C2〜C6アルケニル、C7〜C18アルキルアリール、ハロゲン化C1〜C6アルキル、ハロゲン化C2〜C6アルケニル及びハロゲン化C7〜C18アルキルアリールから選択される。ある種の実施形態において、Xはフルオリド、メチル、エチル、プロピル、フェニル、メチルフェニル、ジメチルフェニル、トリメチルフェニル、フルオロメチル(モノ−、ジ−及びトリフルオロメチル)並びにフルオロフェニル(モノ−、ジ−、トリ−、テトラ−及びペンタフルオロフェニル)から選択される。
【0047】
前記メタロセン触媒化合物及び/又は成分には、式(I)においてCpA及びCpBが少なくとも1つの架橋基(A)によって互いに架橋されて式(II)で表わされる構造になったものが包含される。
CpA(A)CpBMXn (II)
【0048】
式(II)で表わされるこれらの架橋化合物は、「架橋メタロセン」と称される。CpA、CpB、M、X及びnは、式(I)について上で定義した通りであり;ここで、各CpリガンドはMに化学結合し、(A)は各Cpに化学結合する。架橋基(A)の非限定的な例には、二価アルキル、二価低級アルキル、二価置換アルキル、二価ヘテロアルキル、二価アルケニル、二価低級アルケニル、二価置換アルケニル、二価ヘテロアルケニル、二価アルキニル、二価低級アルキニル、二価置換アルキニル、二価ヘテロアルキニル、二価アルコキシ、二価低級アルコキシ、二価アリールオキシ、二価アルキルチオ、二価低級アルキルチオ、二価アリールチオ、二価アリール、二価置換アリール、二価ヘテロアリール、二価アラルキル、二価アラルキレン、二価アルカリール、二価アルカリーレン、二価ハロアルキル、二価ハロアルケニル、二価ハロアルキニル、二価ヘテロアルキル、二価ヘテロ環、二価ヘテロアリール、二価ヘテロ原子含有基、二価ヒドロカルビル、二価低級ヒドロカルビル、二価置換ヒドロカルビル、二価ヘテロヒドロカルビル、二価シリル、二価ボリル、二価ホスフィノ、二価ホスフィン、二価アミノ、二価アミン、二価エーテル、二価チオエーテルが包含される。架橋基Aの追加の非限定的例には、少なくとも1個の第13〜16族原子(例えば炭素、酸素、窒素、ケイ素、アルミニウム、ホウ素、ゲルマニウム及びスズ原子並びにそれらの組合せだが、これらに限定されるわけではない)を含有する二価炭化水素基が包含される。ここで、これらのヘテロ原子はまた、中性原子価を満たすためにC1〜C12アルキル又はアリール置換されていてもよい。架橋基(A)はまた、ハロゲン基及び鉄を含めて(式(I)について)上で規定した通りの置換基Rを含有していてもよい。架橋基(A)のより一層特定的な非限定的例は、C1〜C6アルキレン、置換C1〜C6アルキレン、酸素、硫黄、R'2C=、R'2Si=、−Si(R')2Si(R'2)−、R'2Ge=、R'P=(ここで、「=」は2つの化学結合を表わす)によって代表され、ここで、R'はヒドリド、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロカルビル、置換ハロカルビル、ヒドロカルビル置換オルガノメタロイド、ハロカルビル置換オルガノメタロイド、二置換ホウ素、二置換第15族原子、置換第16族原子及びハロゲン基より成る群から独立的に選択され、2個又はそれより多くのR'が結合して環又は環系を形成してもよい。1つの実施形態において、式(II)の架橋メタロセン触媒成分は、2個又はそれより多くの架橋基(A)を有する。
【0049】
架橋基(A)の他の非限定的な例には、メチレン、エチレン、エチリデン、プロピリデン、イソプロピリデン、ジフェニルメチレン、1,2−ジメチルエチレン、1,2−ジフェニルエチレン、1,1,2,2−テトラメチルエチレン、ジメチルシリル、ジエチルシリル、メチルエチルシリル、トリフルオロメチルブチルシリル、ビス(トリフルオロメチル)シリル、ジ(n−ブチル)シリル、ジ(n−プロピル)シリル、ジ(イソプロピル)シリル、ジ(n−ヘキシル)シリル、ジシクロヘキシルシリル、ジフェニルシリル、シクロヘキシルフェニルシリル、t−ブチルシクロヘキシルシリル、ジ(t−ブチルフェニル)シリル、ジ(p−トリル)シリル及びSi原子がGe又はC原子に置き換えられた対応物が包含され;ジメチルシリル、ジエチルシリル、ジメチルゲルミル及びジエチルゲルミルが包含される。
【0050】
別の実施形態において、架橋基(A)はまた、例えば4〜10個の環員、より特定的な実施形態においては5〜7個の環員を含む環であってもよい。環員は、上に挙げた元素から、特定的な実施形態においてはB、C、Si、Ge、N及びOの内の1種又はそれより多くから選択することができる。架橋部分として又はその一部として存在させることができる環構造の非限定的な例には、シクロブチリデン、シクロペンチリデン、シクロヘキシリデン、シクロヘプチリデン、シクロオクチリデン並びに1個又は2個の炭素原子がSi、Ge、N及びOの内の少なくとも1種、特にSi及びGeの内の少なくとも1種に置き換えられた対応する環がある。環とCp基との間の結合配置は、cis、trans又はそれらの組合せであってよい。
【0051】
環状架橋基(A)は、飽和であっても不飽和であってもよく、且つ/又は1個若しくはそれより多くの置換基を有していてもよく、且つ/又は1個若しくはそれより多くの他の環構造に縮合していてもよい。存在する場合、前記の1個又はそれより多くの置換基は、1つの実施形態においてはヒドロカルビル(例えばメチルのようなアルキル)及びハロゲン(例えばF、Cl)より成る群から選択される。随意に上記の環状架橋部分が縮合していてもよい1個以上のCp基は、飽和であっても不飽和であってもよく、4〜10個の環員、より特定的には5、6又は7個の環員(特定的な実施形態においてはC、N、O及びSより成る群から選択される)を有するもの、例えばシクロペンチル、シクロヘキシル及びフェニルより成る群から選択される。さらに、これらの環構造は、例えばナフチル基の場合のようにそれら自体が縮合していてもよい。さらに、これらの(随意に縮合した)環構造は、1個又はそれより多くの置換基を有していてもよい。例示としてのこれらの置換基の非限定的な例には、ヒドロカルビル(特にアルキル)基及びハロゲン原子がある。
【0052】
式(I)及び(II)のリガンドCpA及びCpBは、1つの実施形態においては互いに異なるものであり、別の実施形態においては同じものである。
【0053】
さらに別の局面において、前記メタロセン触媒成分には、例えば国際公開WO93/08221号(参考用に本明細書に取り入れる)に記載されたようなモノリガンドメタロセン化合物(例えばモノシクロペンタジエニル触媒成分)が包含される。
【0054】
さらに別の局面において、前記の少なくとも1種のメタロセン触媒成分は、式(III)で表わされる非架橋「ハーフサンドイッチ」メタロセンである。
CpAMQqn (III)
【0055】
(ここで、CpAは(I)中のCp基についてと同様に定義され、Mに結合するリガンドであり;
各Qは独立的にMに結合し;Qはまた、1つの実施形態においてはCpAにも結合し;
Xは(I)において上に記載したような脱離基であり;
nは0〜3の範囲であり、1つの実施形態においては1又は2であり、
qは0〜3の範囲であり、1つの実施形態においては1又は2である。)
1つの実施形態において、CpAはシクロペンタジエニル、インデニル、テトラヒドロインデニル、フルオレニル、それらの置換体及びそれらの組合せより成る群から選択される。
【0056】
式(III)において、QはROO−、RO−、R(O)−、−NR−、−CR2−、−S−、−NR2、−CR3、−SR、−SiR3、−PR2、−H並びに置換及び非置換アリール基より成る群から選択され、ここで、Rは、ヒドロカルビル、低級ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロヒドロカルビル、アルキル、低級アルキル、置換アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、低級アルケニル、置換アルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、低級アルキニル、置換アルキニル、ヘテロアルキニル、アルコキシ、低級アルコキシ、アリールオキシ、ヒドロキシル、アルキルチオ、低級アルキルチオ、アリールチオ、チオキシ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、アラルキル、アラルキレン、アルカリール、アルカリーレン、ハライド、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロ環、ヘテロアリール、ヘテロ原子含有基、シリル、ボリル、ホスフィノ、ホスフィン、アミノ、アミン、シクロアルキル、アシル、アロイル、アルキルチオール、ジアルキルアミン、アルキルアミド、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、カルバモイル、アルキル−及びジアルキル−カルバモイル、アシルオキシ、アシルアミノ、アロイルアミノ並びにそれらの組合せより成る群から選択される。別形態において、Rは、C1〜C6アルキル、C6〜C12アリール、C1〜C6アルキルアミン、C6〜C12アルキルアリールアミン、C1〜C6アルコキシ、C6〜C12アリールオキシ等より成る群から選択される。Qの非限定的な例には、C1〜C12カルバメート、C1〜C12カルボキシレート(例えばピバレート)、C2〜C20アリル及びC2〜C20ヘテロアリル部分が包含される。
【0057】
言い換えれば、前記「ハーフサンドイッチ」メタロセンは、例えば米国特許第6069213号明細書に記載されたように式(II)におけるように記載することができる。
CpAM(Q2GZ)Xn 又は T(CpAM(Q2GZ)Xn)m (IV)
【0058】
{ここで、M、CpA、X及びnは上で定義した通りであり;
2GZは多座リガンド単位(例えばピバレート)を形成し、
ここで、Q基の少なくとも1つはMとの結合を形成し、各Qが−O−、−NR−、−CR2−及び−S−より成る群から独立的に選択されるように規定され;
Gは炭素又はケイ素であり;そして
ZはR、−OR、−NR2、−CR3、−SR、−SiR3、−PR2及びヒドリドより成る群から選択され、
但し、Qが−NR−である場合にはZは−OR、−NR2、−SR、−SiR3、−PR2より成る群から選択され、また、Qについての中性原子価はZによって満たされ;
ここで、各Rは、ヒドロカルビル、低級ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロヒドロカルビル、アルキル、低級アルキル、置換アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、低級アルケニル、置換アルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、低級アルキニル、置換アルキニル、ヘテロアルキニル、アルコキシ、低級アルコキシ、アリールオキシ、ヒドロキシル、アルキルチオ、低級アルキルチオ、アリールチオ、チオキシ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、アラルキル、アラルキレン、アルカリール、アルカリーレン、ハライド、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロ環、ヘテロアリール、ヘテロ原子含有基、シリル、ボリル、ホスフィノ、ホスフィン、アミノ、アミン、シクロアルキル、アシル、アロイル、アルキルチオール、ジアルキルアミン、アルキルアミド、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、カルバモイル、アルキル−及びジアルキル−カルバモイル、アシルオキシ、アシルアミノ、アロイルアミノ並びにそれらの組合せより成る群から独立的に選択され;ある種の実施形態において、Rは、C1〜C10ヘテロ原子含有基、C1〜C10アルキル、C6〜C12アリール、C6〜C12アルキルアリール、C1〜C10アルコキシ及びC6〜C12アリールオキシより成る群から独立的に選択され;
nは1又は2であり、
TはC1〜C10アルキレン、C6〜C12アリーレン及びC1〜C10ヘテロ原子含有基及びC6〜C12ヘテロ環式基より成る群から選択される架橋基であり、各T基は隣接する「CpAM(Q2GZ)Xn」基同士を架橋するものであって、CpA基に化学結合し、
mは1〜7の整数、又は2〜6の整数である。}
【0059】
構造(II)中の(A)について上で記載した通りのAは、1つの実施形態においては化学結合、−O−、−S−、−SO2−、−NR−、=SiR2、=GeR2、=SnR2、−R2SiSiR2−、RP=、C1〜C12アルキレン、置換C1〜C12アルキレン、二価C4〜C12環状炭化水素並びに置換及び非置換アリール基より成る群から選択され;より特定的な実施形態においてはC5〜C8環状炭化水素、−CH2CH2−、=CR2及び=SiR2より成る群から選択され;ここで、Rは1つの実施形態においてはアルキル、シクロアルキル、アリール、アルコキシ、フルオロアルキル及びヘテロ原子含有炭化水素より成る群から選択され;より特定的な実施形態においてはRはC1〜C6アルキル、置換フェニル、フェニル及びC1〜C6アルコキシより成る群から選択され;さらにより一層特定的な実施形態においてはメトキシ、メチル、フェノキシ及びフェニルより成る群から選択され;
さらに別の実施形態においてはAは存在していなくてもよく、その場合には各R*はR1〜R13についてと同様に定義され;
各Xは(I)において上で記載した通りであり;
nは整数0〜4、別の実施形態においては1〜3、さらに別の実施形態においては1又は2であり;
1〜R13は独立的に、水素基、ヒドロカルビル、低級ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロヒドロカルビル、アルキル、低級アルキル、置換アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、低級アルケニル、置換アルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、低級アルキニル、置換アルキニル、ヘテロアルキニル、アルコキシ、低級アルコキシ、アリールオキシ、ヒドロキシル、アルキルチオ、低級アルキルチオ、アリールチオ、チオキシ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、アラルキル、アラルキレン、アルカリール、アルカリーレン、ハライド、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロ環、ヘテロアリール、ヘテロ原子含有基、シリル、ボリル、ホスフィノ、ホスフィン、アミノ、アミン、シクロアルキル、アシル、アロイル、アルキルチオール、ジアルキルアミン、アルキルアミド、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、カルバモイル、アルキル−及びジアルキル−カルバモイル、アシルオキシ、アシルアミノ、アロイルアミノより成る群から選択され;
1〜R13はまた、独立的に、1つの実施形態においてはC1〜C12アルキル、C2〜C12アルケニル、C6〜C12アリール、C7〜C20アルキルアリール、C1〜C12アルコキシ、C1〜C12フルオロアルキル、C6〜C12フルオロアリール及びC1〜C12ヘテロ原子含有炭化水素並びにそれらの置換誘導体より成る群から;より特定的な実施形態においては水素基、フッ素基、塩素基、臭素基、C1〜C6アルキル、C2〜C6アルケニル、C7〜C18アルキルアリール、C1〜C6フルオロアルキル、C2〜C6フルオロアルケニル、C7〜C18フルオロアルキルアリールより成る群から選択され;さらにより一層特定的な実施形態においては水素基、フッ素基、塩素基、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ヘキシル、フェニル、2,6−ジメチルフェニル及び4−t−ブチルフェニル基より成る群から選択することもでき;隣接するR基は、飽和、一部飽和又は完全飽和の環を形成してもよい。)
【0060】
上に記載したメタロセン触媒成分がそれらの構造異性体や光学異性体、鏡像異性体(ラセミ混合物)を包含することも構想され、1つの実施形態においては純粋なエナンチオマーであってもよい。
【0061】
ここで用いた時、ラセミ及び/又はメソ異性体を有する単一の架橋非対称置換メタロセン触媒成分は、それ自体では、少なくとも2個の異なる架橋メタロセン触媒成分とは見なさない。
【0062】
前記「メタロセン触媒化合物」(ここでは「メタロセン触媒成分」とも称される)は、ここに記載される任意の「実施形態」の任意の組合せを含むことができる。
【0063】
その他の好適なメタロセンには、それらに限定されるわけではないが、米国特許第7179876号、同第7169864号、同第7157531号、同第7129302号、同第6995109号、同第6958306号、同第6884748号、同第6689847号、同第6309997号、同第6265338号、米国特許出願公開2007/0055028号及び同第2006/019925号の各明細書、並びに国際公開WO97/22635号、WO00/699/22号、WO01/30860号、WO01/30861号、WO02/46246号、WO02/50088号、WO04/026921号、WO06/019494号、及びWO2010/039948号に記載されているものが包含される。
【0064】
慣用の触媒及び混合触媒
触媒組成物には、上記の1種以上のメタロセン触媒及び/又は他の慣用のポリオレフィン触媒や下記の第15族原子含有触媒を含ませることができる。
【0065】
「第15族原子含有」触媒又は「第15族含有」触媒は、第3族〜第12族金属原子の錯体を含むものであることができ、ここで、前記金属原子は2〜8配位であり、その配位部分は少なくとも2個の第15族原子であって4個までの第15族原子を含むものであることができる。例えば、第15族含有触媒成分は、第4族金属と1〜4個のリガンドとの錯体であって、第4族金属は少なくとも2配位であり、その配位部分は少なくとも2個の窒素を含むものであることができる。。代表的な第15族含有化合物は、例えば国際公開WO99/01460号;欧州特許公開第0893454A1号公報;米国特許第5318935号明細書;米国特許第5889128号明細書、米国特許第6333389B2号明細書及び米国特許第6271325B1号明細書に開示されたものである。
【0066】
1つの実施形態において、第15族含有触媒は、任意の程度でオレフィン重合に対して活性な第4族イミノフェノール錯体、第4族ビス(アミド)錯体及び第4族ピリジルアミド錯体を含むことができる。1つの可能な実施形態において、第15族含有触媒成分は、[(2,3,4,5,6Me56)NCH2CH2]2NHZrBz2(Boulder Chemical社より入手)のようなビスアミド化合物を含むことができる。
【0067】
触媒化合物用の活性剤及び活性化方法
触媒組成物の実施形態は、活性剤をさらに含むことができる。ここで用いた時の「活性剤」とは、広い意味において、遷移金属化合物がオレフィン等の不飽和モノマーをオリゴマー化又は重合させる速度を高める物質の任意の組合せと定義される。
【0068】
ある種の実施形態において、活性剤はルイス塩基、例えばジエチルエーテル、ジメチルエーテル、エタノール又はメタノール等である。用いることができるその他の活性剤には、国際公開WO98/07515号に記載されたもの、例えばトリス(2,2',2''−ノナフルオロビフェニル)フルオロアルミネートが包含される。
【0069】
活性剤の組合せ物を用いてもよい。例えば、アルモキサン及びイオン化活性剤を組み合わせて用いることができる。例えば欧州特許公開第0573120B1号公報、国際公開WO94/07928号及び同WO95/14044号並びに米国特許第5153157号及び同第5453410号の各明細書を参照されたい。国際公開WO98/09996号には、過塩素酸塩、過ヨウ素酸塩及びヨウ素酸塩(それらの水和物を含む)によるメタロセン触媒化合物の活性化が記載されている。国際公開WO98/30602号及びWO98/30603号には、メタロセン触媒化合物用活性剤としてリチウム(2,2’−ビスフェニル−ジトリメチルシリケート)・4THFを使用することが記載されている。国際公開WO99/18135号には、オルガノホウ素−アルミニウム活性剤の使用が記載されている。欧州特許公開第0781299B1号公報には、シリリウム塩を非配位相溶性アニオンと組み合わせて使用することが記載されている。国際公開WO2007/024773号には、化学処理された固体酸化物、クレー鉱物、シリケート鉱物又はそれらの任意の組合せを含むことができる活性剤−担体の使用が示唆されている。また、放射線(欧州特許公開第0615981B1号公報を見よ)、電気化学的酸化等を用いる活性化方法も、中性メタロセン触媒化合物又は前駆体をオレフィンを重合させることができるメタロセンカチオンにするための活性化方法として構想することができる。メタロセン触媒化合物を活性化するためのその他の活性剤及び方法は、例えば米国特許第5849852号、同第5859653号及び同第5869723号の各明細書並びに国際公開WO98/32775号に記載されている。
【0070】
ある種の実施形態において、アルモキサンを触媒組成物中の活性剤として用いることができる。アルモキサン類は一般的に、−Al(R)−O−サブ単位(ここで、Rはアルキル基である)を含有するオリゴマー状化合物である。アルモキサン類の例には、メチルアルモキサン(MAO)、変性メチルアルモキサン(MMAO)、エチルアルモキサン及びイソブチルアルモキサンが包含される。特に抽出可能リガンドがハライドである場合には、アルキルアルモキサン及び変性アルキルアルモキサンが触媒活性剤として好適である。様々なアルモキサン及び変性アルモキサンの混合物を用いることもできる。さらなる説明については、米国特許第4665208号、同第4952540号、同第5041584号、同第5091352号、同第5206199号、同第5204419号、同第4874734号、同第4924018号、同第4908463号、同第4968827号、同第5329032号、同第5248801号、同第5235081号、同第5157137号、同第5103031号の各明細書並びに欧州特許公開第0561476A1号、同第0279586B1号、同第0516476A号、同第0594218A1号の各公報並びに国際公開WO94/10180号を参照されたい。
【0071】
アルモキサン類は、それぞれのトリアルキルアルミニウム化合物の加水分解によって製造することができる。MMAOは、トリメチルアルミニウム及びもっと高級のトリアルキルアルミニウム(例えばトリイソブチルアルミニウム)の加水分解によって製造することができる。MMAOは一般的には脂肪族溶媒中により一層可溶であり且つより一層貯蔵安定性が高い。アルモキサン及び変性アルモキサンを調製するための様々な方法があり、その非限定的な例は、米国特許第4665208号、同第4952540号、同第5091352号、同第5206199号、同第5204419号、同第4874734号、同第4924018号、同第4908463号、同第4968827号、同第5308815号、同第5329032号、同第5248801号、同第5235081号、同第5157137号、同第5103031号、同第5391793号、同第5391529号、同第5693838号、同第5731253号、同第5731451号、同第5744656号、同第5847177号、同第5854166号、同第5856256号及び同第5939346号各明細書並びに欧州特許公開第0561476A号、同第0279586B1号、同第0594218A号及び同第0586665B1号の各公報、並びに国際公開WO94/10180号及び同WO99/15534号に記載されている。1つの実施形態においては、目で見て透明なメチルアルモキサンを用いることができる。濁ったアルモキサンやゲル化したアルモキサンは、濾過することによって透明溶液にすることができ、また、濁った溶液から透明アルモキサンをデカンテーションすることもできる。別のアルモキサンとしては、変性メチルアルモキサン(MMAO)助触媒タイプ3A(米国特許第5041584号明細書に開示された、Akzo Chemicals社からModified Methyl Alumoxane type 3Aの商品名で商品として入手できるもの)がある
【0072】
ある種の実施形態においては、中性又はイオン性のイオン化用活性剤又は化学量論的活性剤、例えばトリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素、トリスペルフルオロフェニルホウ素メタロイド前駆体若しくはトリスペルフルオロナフチルホウ素メタロイド前駆体、ポリハロゲン化ヘテロボランアニオン(例えば国際公開WO98/43983号を参照されたい)、ホウ酸(例えば米国特許第5942459号明細書を参照されたい)又はそれらの組み合わせ物を用いてもよい。また、中性又はイオン性活性剤は、単独で用いてもよく、アルモキサン又は変性アルモキサン活性剤と組み合わせて用いてもよい。
【0073】
中性化学量論的活性剤の例には、三置換されたホウ素、テルル、アルミニウム、ガリウム及びインジウム又はそれらの混合物が包含され得る。3つの置換基はそれぞれ独立的にアルキル、アルケニル、ハロゲン、置換アルキル、アリール、アリールハライド、アルコキシ及びハライドから選択することができる。実施形態において、3つの置換基は独立的にハロゲン、単環若しくは多環(ハロ置換されたものを含む)アリール、アルキル及びアルケニル化合物並びにそれらの混合物から選択することができ;ある類の実施形態においては1〜20個の炭素原子を有するアルケニル基、1〜20個の炭素原子を有するアルキル基、1〜20個の炭素原子を有するアルコキシ基及び3〜20個の炭素原子を有するアリール基(置換アリールを含む)である。別態様として、これら3つの基は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル、フェニル、ナフチル又はそれらの混合物である。別の実施形態において、これら3つの基は、ハロゲン化(1つの実施形態においてはフッ素化)されたアリール基である。さらに別の例示的実施形態において、中性化学量論的活性剤は、トリスペルフルオルフェニルホウ素又はトリスペルフルオルナフチルホウ素である。
【0074】
イオン性化学量論的活性剤化合物は、このイオン化用化合物の残りのイオンと連結ししかし該イオンに配位結合せずに又は緩く配位結合しただけの活性プロトン又は他のある種のカチオンを含有することができる。かかる化合物及び類似物は、例えば欧州特許公開第0570982A号、同第0520732A号、同第0495375A号、同第0500944B1号、同第0277003A号及び同第0277004A号の各公報、並びに米国特許第5153157号、同第5198401号、同第5066741号、同第5206197号、同第5241025号、同第5384299号及び同第5502124号の各明細書に記載されている。
【0075】
触媒化合物/活性剤を担持させる方法
上記の触媒化合物は、当技術分野においてよく知られた担持方法又は下記の担持方法の内の1つを用いて、1種以上の担体と組み合わせることができる。例えば、触媒化合物は、担持された形、例えば担体の上に付着させ、担体と接触させ、担体中に組み込み、又は担体中若しくは担体上に吸着若しくは吸収させた形にあることができる。
【0076】
ここで用いた時、用語「担体」とは、第2族、第3族、第4族、第5族、第13族及び第14族酸化物及び塩化物を含む化合物を指す。好適な担体には、例えばシリカ、マグネシア、チタニア、ジルコニア、モンモリロナイト、フィロシリケート、アルミナ、シリカ−アルミナ、シリカ−クロム、シリカ−チタニア、塩化マグネシウム、グラファイト、マグネシア、チタニア、ジルコニア、モンモリロナイト、及びフィロシリケートが包含される。
【0077】
担体は、約0.1〜約50μm、又は約1〜約40μm、又は約5〜約40μmの範囲の平均粒子寸法を有することができる。
【0078】
担体は、約10〜約1000Å、又は約50〜約500Å、又は75〜約350Åの範囲の平均孔寸法を有することができる。ある種の実施形態において、担体の平均孔寸法は、約1〜約50μmである。
【0079】
担体は、約10〜約700m2/g、又は約50〜約500m2/g、又は約100〜約400m2/gの範囲の表面積を有することができる。
【0080】
担体は、約0.1〜約4.0cc/g、又は約0.5〜約3.5cc/g、又は約0.8〜約3.0cc/gの範囲の孔容積を有することができる。
【0081】
担体は、約1〜約500μm、又は約10〜約200μm、又は約5〜約100μmの範囲の平均粒子寸法を有することができる。
【0082】
無機酸化物等の担体は、約10〜約700m2/gの範囲の表面積、約0.1〜約4.0cc/gの範囲の孔容積及び約1〜約500μmの範囲の平均粒子寸法を有することができる。別態様として、担体は約50〜約500m2/gの範囲の表面積、約0.5〜約3.5cc/gの範囲の孔容積、及び約10〜約200μmの範囲の平均粒子寸法を有することができる。ある種の実施形態において、担体の表面積は約100〜約400m2/gであり、この担体は、約0.8〜約3.0cc/gの孔容積及び約5〜約100μmの平均粒子寸法を有する。
【0083】
複数の触媒化合物を同じ担体又は別個の担体上に活性剤と一緒に担持させることもでき、また、活性剤を非担持の形で用いること又は担持された触媒化合物とは別の担体上に付着させることもできる。
【0084】
重合触媒化合物を担持するための当技術分野における様々な別の方法がある。例えば触媒化合物は、例えば米国特許第5473202号及び同第5770755号の各明細書に記載されたようにポリマー結合リガンドを含有することができる;触媒は、例えば米国特許第5648310号明細書に記載されたように噴霧乾燥させることができる;触媒と共に用いられる担体は、欧州特許公開第0802203A号公報に記載されたように官能化させることもでき、また、少なくとも1種の置換基又は脱離基は米国特許第5688880号明細書に記載されたように選択される。
【0085】
ある種の実施形態において、触媒化合物と1種以上の担体材料とを一緒にするために、初発湿式含浸を用いることができる。初発湿式含浸は、他の触媒調製技術と比較して、高められた触媒生産性を有する触媒組成物をもたらすことができる。
【0086】
初発湿式含浸は、触媒組成物の1種以上の成分(例えば触媒化合物、活性剤等)を溶媒中に溶解させることを含むことができる。1種又はそれより多くの触媒成分の混合物の容量は、例えば製造される触媒組成物に応じて、変化し得る。1種又はそれより多くの触媒成分を担体に含浸させるために、この実施形態に従えば、混合物を担体と一緒にすることができる。含浸における特別重要なファクターは、担体の孔容積である。特に、1種又はそれより多くの触媒成分の混合物の体積は、該混合物及び担体のスラリーを形成することなく担体の孔容積を満たすのに充分なものであるべきである。1つの実施形態において、この混合物の体積は、担体の孔容積の約120%を超えず、又は担体の孔容積の約110%を超えず、又は担体の孔容積の約105%を超えないものとする。ある種の実施形態において、この混合物の体積は、担体の孔容積と実質的に同じにする。
【0087】
次いで、担体の含浸された孔から、溶媒を取り除くことができる。例えば、加熱及び/又は真空によって担体から溶媒を除去することができる。ある種の実施形態において、真空についての正圧は、窒素のような不活性ガスによってもたらすことができる。含浸された担体の加熱は、触媒粒子の望ましくない凝集及び/又は用いることができる活性剤の架橋を減らし且つ/又は防ぐために、制御すべきであることを理解されたい。
【0088】
初発湿式含浸において用いるための溶媒には、例えばメタロセン触媒及び/又は活性剤が少なくとも一部可溶である溶媒が包含される。好適な溶媒の非限定的な例には、芳香族炭化水素、ハロゲン化芳香族炭化水素、エーテル類、環状エーテル類又はエステル類が包含される。好適な溶媒の特定的な例には、THF(テトラヒドロフラン)、ジクロロメタン、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、ジエチルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、1,4−ジオキサン及びそれらの組合せが包含され得る。
【0089】
重合方法
重合方法の実施形態には、メタロセン触媒化合物及び抽出された金属カルボキシレート塩の存在下におけるオレフィンの重合が包含され得る。重合方法には、溶液、気相、スラリー相及び高圧法又はそれらの組合せが包含され得る。例示的実施形態においては、1種以上のオレフィン(そのうちの少なくとも1種はエチレン又はプロピレンである)の気相又はスラリー相重合が提供される。
【0090】
上記の触媒及び触媒組成物は、広範な温度及び圧力にわたって任意の予重合及び/又は重合プロセスに使用するのに好適であり得る。温度は約60℃〜約280℃の範囲、又は50℃〜約200℃の範囲、又は約60℃〜約120℃の範囲、又は約70℃〜約100℃の範囲、又は約80℃〜約95℃の範囲であることができ、望ましい温度範囲はここに記載した任意の上限と任意の下限との任意の組合せを包含し得る。
【0091】
この重合方法において用いられる1種以上のオレフィンモノマーは、2〜30個の炭素原子、又は2〜12個の炭素原子、又は2〜8個の炭素原子を有することができる。例えば、この重合方法は、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン等のような2種以上のオレフィン又はコモノマーを用いることができる。
【0092】
エチレンのコポリマーをこの重合方法において製造することができ、ここで、エチレンを4〜15個の炭素原子、又は4〜12個の炭素原子、又は4〜8個の炭素原子を有するα−オレフィンコモノマーと重合させる。
【0093】
典型的には、気相重合法においては、反応器システムのサイクルのある部分において循環ガス流(リサイクル流又は流動化用媒体とも称される)が反応器内で重合の熱によって加熱される連続サイクルが採用される。この熱は、サイクルの別の部分において反応器外部の冷却システムによってリサイクル組成物から取り除かれる。一般的に、ポリマーを製造するための気相流動床法においては、1種以上のモノマーを含有する気体流が反応性条件下において触媒の存在下で流動床を通して連続的に循環される。この気体流は流動床から取り出され、反応器にリサイクルされて戻される。同時に、ポリマー生成物が反応器から取り出され、重合したモノマーの代わりに新たなモノマーが添加される。(例えば米国特許第4543399号、同第4588790号、同第5028670号、同第5317036号、同第5352749号、同第5405922号、同第5436304号、同第5453471号、同第5462999号、同第5616661号及び同第5668228号の各明細書を参照されたい。)
【0094】
気相法における反応器圧は、例えばほぼ大気圧〜約600psig(4138kPa)、又は約100psig(690kPa)〜約500psig(3448kPa)、又は約200psig(1379kPa)〜約400psig(2759kPa)、又は約250psig(1724kPa)〜約350psig(2414kPa)の範囲にすることができる。
【0095】
気相法における反応器温度は、約30℃〜約120℃、又は約60℃〜約115℃、又は約70℃〜110℃、又は約70℃〜約95℃の範囲にすることができる。
【0096】
企図されるその他の気相法には、米国特許第5627242号、同第5665818号及び同第5677375号の各明細書並びに欧州特許公開第0794200A号、同第0802202A号、同第0891990A2号及び同第634421B号の各公報に記載されたものも包含される。
【0097】
スラリー重合法においては一般的に、約1〜約50気圧の範囲及びそれ以上の圧力並びに0℃〜約120℃の範囲の温度が採用される。スラリー重合法においては、エチレン及びコモノマー及びしばしば水素が触媒と共に添加された液状重合希釈剤媒体中で固体粒状ポリマーの懸濁液が形成される。希釈剤を含むこの懸濁液は、断続的に又は連続的に反応器から取り出され、揮発性成分がポリマーから分離され、(随意に蒸留後に)反応器にリサイクルされる。重合媒体中に用いられる液状希釈剤は、3〜7個の炭素原子を有するアルカンであるのが典型的であり、分枝鎖状アルカンであるのが好ましい。用いられる媒体は、重合条件下において液状であり且つ比較的不活性であるべきである。プロパン媒体を用いた場合には、反応希釈剤の臨界温度及び圧力以上においてこの方法を操作しなければならない。1つの実施形態においては、ヘキサン又はイソブタン媒体が用いられる。溶液及びスラリー相重合方法の例には、米国特許第3248179号、同第4613484号、同第4271060号、同第5001205号、同第5236998号及び同第5589555号の各明細書に記載されたものが包含される。
【0098】
ポリマー生成物
ここに記載される方法によって製造されるポリマーは、広範な製品及び末端用途に用いることができる。製造されるポリマーには、線状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレン包含されるが、これらに限定されるわけではない。
【0099】
これらポリマーは、約0.86g/cm3〜約0.97g/cm3の範囲、又は約0.88g/cm3〜約0.965g/cm3の範囲、又は約0.900g/cm3〜約0.96g/cm3の範囲の密度を有することができる。
【0100】
前記ポリマーは、重量平均分子量対数平均分子量の比(Mw/Mn)が例えば1.5超〜約15、特に2超〜約10、より一層好ましくは約2.2超〜約8未満である分子量分布を有することができる。
【0101】
前記ポリマーは、ASTM法D−1238−E(190/2.16)によって測定して0.01dg/分〜1000dg/分の範囲、又は約0.01dg/分〜約100dg/分の範囲、又は約0.1dg/分〜約100dg/分の範囲のメルトインデックス(MI)又は(I2)を有することができる。
【0102】
前記ポリマーは、5〜300in、又は約10〜250未満、又は15〜200、又は20〜180の範囲のメルトインデックス比(I21/I2)(ここでI21はASTM法D−1238−F[190/21.6]によって測定される)を有することができる。
【0103】
ここに開示される方法によって製造されるポリマー及び斯かるポリマーと他のポリマーとのブレンドは、フィルム、パイプ、シート及び繊維の押出及び同時押出並びに吹込成形、射出成形及び回転成形のような成形操作において有用であることができる。
【実施例】
【0104】
以下の実施例は、本発明の化合物をどのように製造して使用するかの完全な開示及び説明を当業者に与えるためのものであり、発明者が発明と見なす範囲を制限することを意図するものではない。
【0105】
実施例においては、以下の触媒化合物及び連続性添加剤を用いた。
【0106】
連続性添加剤1
連続性添加剤1(「CA−1」)は、ヒドロキシエチルステアリルアミン(25〜50重量%)と金属カルボキシレート塩(50〜75重量%)との混合物だった。この金属カルボキシレート塩は、米国テネシー州メンフィス所在のChemtura Corporation社から入手可能なステアリン酸アルミニウムだった。このステアリン酸アルミニウムは、約11〜12重量%の灰分、約0.5重量%の含水量及び約3〜4重量%の遊離脂肪酸含有率を有していた。CA−1は、鉱油中のスラリーとして用いた。
【0107】
連続性添加剤2
連続性添加剤2(「CA−2」)は、アセトンで抽出することによって調製された金属カルボキシレート塩だった。ステアリン酸アルミニウムとアセトンとを撹拌しながら一緒にすることによって、ステアリン酸アルミニウムをアセトンで抽出した。アセトンは、25℃において測定して20.70の誘電率を有していた。アセトン対ステアリン酸アルミニウムの重量比は約6:1だった。一緒にした後に、次いでアセトンを除去し、抽出されたステアリン酸アルミニウムを乾燥させ、篩にかけ、抽出によって取り除かれた材料の量を測定するために計量した。この抽出においては、可溶分3〜4重量%が抽出によって取り除かれた。CA−2は、鉱油中のスラリーとして用いた。
【0108】
連続性添加剤3
連続性添加剤3(「CA−3」)は、メタノールで抽出することによって調製された金属カルボキシレート塩だった。ステアリン酸アルミニウムとメタノールとを撹拌しながら一緒にすることによって、ステアリン酸アルミニウムをメタノールで抽出した。メタノールは25℃において32.63の誘電率を有していた。メタノール対ステアリン酸アルミニウムの重量比は約6:1だった。一緒にした後に、次いでメタノールを除去し、抽出されたステアリン酸アルミニウムを乾燥させ、篩にかけ、抽出によって取り除かれた材料の量を測定するために計量した。この抽出においては、可溶分4〜6重量%が抽出によって取り除かれた。CA−3は、鉱油中のスラリーとして用いた。
【0109】
触媒A
触媒A中のメタロセン触媒化合物は、米国のBoulder Scientific Company社から入手可能なビス(n−プロピル−シクロペンタジエニル)ハフニウムジメチル((n−プロピルCp)2HfMe2)メタロセンだった。この触媒化合物を、空気中で875℃において脱水した約0.4重量%の水の強熱減量(LOI)を有するES757グレードのシリカ上に担持させた。LOIは、約1000℃の温度に加熱して約22時間保った担持材料の重量損失を測ることによって測定される。ES757シリカは、25ミクロンの平均粒子寸法を有し、PQ Corporation社から入手できる。
【0110】
上記のメタロセンタイプの触媒の製造における最初の工程は、前駆体溶液を形成させることを含む。スパージして乾燥させたトルエン2.2ポンド(1kg)を撹拌された反応器に加え、次いでトルエン中の30重量%メチルアルミノキサン(MAO)2.34ポンド(1.06kg)(米国ルイジアナ州Baton Rouge所在のAlbemarle社から入手可能)を加えた。この反応器に、(n−プロピルCp)2HfMe2触媒化合物の24.7重量%トルエン溶液0.205ポンド(93g)及び追加のトルエン0.22ポンド(0.1kg)を導入した。次いでこの前駆体溶液を21.1℃において1時間撹拌する。
【0111】
上記前駆体溶液を撹拌しながら、875℃脱水シリカ担体1.87ポンド(0.85kg)をこの前駆体溶液にゆっくり加え、この混合物を21.1℃において撹拌した。次いで反応器の内容物を75℃に加熱しながら60分間混合する。次いで真空にし、重合触媒混合物を乾燥させて、自由流動性粉体にした。最終的な重合触媒の重量は2.65ポンド(1.2kg)であり、0.8のZr重量%及び12.0のAl重量%を有していた。
【0112】
触媒B
触媒Bは、架橋したバルキー(嵩高)リガンドメタロセン触媒化合物に触媒組成物の一部としてステアリン酸アルミニウムを配合したものだった。用いた架橋したバルキーリガンドメタロセンタイプ触媒化合物は、米国ルイジアナ州Baton Rouge所在のAlbemarle Corporation社から入手可能なジメチルシリルビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド(Me2Si(H4Ind)2ZrCl2)メタロセンだった。Me2Si(H4Ind)2ZrCl2触媒化合物を、600℃において脱水した約1.0重量%の水の強熱減量(LOI)を有するCrosfield ES-70グレードのシリカ上に担持させた。LOIは、約1000℃の温度に加熱して約22時間保った担持材料の重量損失を測ることによって測定した。Crosfield ES-70グレードのシリカは、40ミクロンの平均粒子寸法を有し、英国Warrington所在のCrosfield Limited社から入手できる。
【0113】
上記の担持されたバルキーリガンドメタロセンタイプの触媒の製造における最初の工程は、前駆体溶液を形成させることを含む。スパージして乾燥させたトルエン460ポンド(209kg)を撹拌された反応器に加え、次いでトルエン中の30重量%メチルアルミノキサン(MAO)1060ポンド(482kg)(米国ルイジアナ州Baton Rouge所在のAlbemarle社から入手可能)を加えた。この反応器に、Me2Si(H4Ind)2ZrCl2触媒化合物の2重量%トルエン溶液947ポンド(430g)及び追加のトルエン600ポンド(272kg)を導入した。次いでこの前駆体溶液を80〜100°F(26.7〜37.8℃)において1時間撹拌する。
【0114】
上記前駆体溶液を撹拌しながら、600℃Crosfield脱水シリカ担体850ポンド(386kg)をこの前駆体溶液にゆっくり加え、この混合物を80〜100°F(26.7〜37.8℃)において30分間撹拌した。30分間の混合物撹拌の終わりに、米国テネシー州メンフィス所在のWitco CorporationからKemamine AS-990として入手可能なN,N−ビス(2−ヒドロキシルエチル)オクタデシルアミン((C1837N(CH2CH2OH)2)の10重量%トルエン溶液240ポンド(109kg)を、追加のトルエンすすぎ液110ポンド(50kg)と一緒に加え、次いで反応器の内容物を175°F(79℃)に加熱しながら30分間混合した。30分後に、真空にし、重合触媒混合物を175°F(79℃)において約15時間乾燥させて、自由流動性粉体にした。最終的な重合触媒の重量は1200ポンド(544kg)であり、0.35のZr重量%及び12.0のAl重量%を有していた。
【0115】
触媒C
上記のように調製した触媒Bのサンプル1kgを不活性雰囲気下の3リットルガラスフラスコ中に計量供給した。40gのCA−1を真空下で85℃において乾燥させ、前記フラスコに加え、内容物を室温において20分間タンブリング/混合した。CA−1は触媒粒子全体に均一に分散されたようだった。
【0116】
触媒D
触媒Dは、架橋したバルキー(嵩高)リガンドメタロセンタイプの触媒化合物に触媒組成物の一部として抽出されたステアリン酸アルミニウムを配合したものだった。上記のように調製した触媒Bのサンプル1kgを不活性雰囲気下の3リットルガラスフラスコ中に計量供給した。上記のように調製した40gのCA−2を真空下で85℃において乾燥させ、前記フラスコに加え、内容物を室温において20分間タンブリング/混合した。CA−2は触媒粒子全体に均一に分散されたようだった。
【0117】
触媒E
触媒Eに用いたメタロセン触媒化合物は、米国のBoulder Scientific Company社から入手できるビス(n−プロピル-シクロペンタジエニル)ハフニウムジメチルである。この触媒化合物を、初発湿式含浸を利用して担体上に付着させる。この触媒化合物を、875℃において脱水したES757グレードのシリカ上に担持させる。ES757グレードのシリカは、25ミクロンの平均粒子寸法を有し、PQ Corporation社から入手できる。
【0118】
上記のメタロセンタイプの触媒の製造における最初の工程は、前駆体溶液を形成させることを含む。窒素ドライボックス中で、トルエン中の30重量%メチルアルミノキサン(MAO)の溶液に、ビス(n−プロピル-シクロペンタジエニル)ハフニウムジメチル0.24ポンド(10.88g)を加えた。この前駆体溶液を次いで周囲温度において1時間撹拌した。次に、875℃において脱水したES757シリカ0.882ポンド(400g)を、KitchenAid Blenderのステンレス鋼製混合ボウル中に注いだ。針金製泡立て器を取り付け、シリカを最低設定において撹拌した。シリカを撹拌しながら、上記の前駆体溶液をこのシリカに45分かけてゆっくり加えた。添加後に、触媒混合物を周囲温度においてさらに1時間撹拌した。次いでこの触媒混合物を2個の500ミリリットルの洋梨型フラスコ中に分けた。これらのフラスコを回転式蒸発器に取り付け、真空下で70℃において触媒を乾燥させた。
【0119】
触媒F
触媒Fに用いたメタロセン触媒化合物は、米国のBoulder Scientific Company社から入手できるビス(n−プロピル-シクロペンタジエニル)ハフニウムジメチルである。この触媒化合物を、初発湿式含浸を利用して担体上に付着させる。このメタロセンタイプの触媒は、触媒Eについて上記したものと同様の手順を用いて製造したが、但し、この触媒化合物は、ES757シリカに付着させるのではなくて、600℃において脱水した948グレードのシリカ上に付着させた。この948グレードのシリカは、55ミクロンの平均粒子寸法を有し、米国のWR Grace社から入手できる。
【0120】
例1
以下の例は、パイロットプラント流動床反応器中で、エチレン及びヘキサンコモノマーを用いて実施した気相重合方法に関する。連続性添加剤としての抽出された金属カルボキシレート塩の使用を評価するために、この反応器を用いた。表1に、3つの異なる試験を、各試験についての報告された反応条件と共に、示す。また、触媒生産性も表1に報告する。表2には、得られた生成物の様々な特性を、樹脂嵩密度を含めて、示す。
【0121】
重合は、連続気相流動床反応器中で実施した。各試験は、同じ連続気相流動化反応器を用いて操作した。流動床は、ポリマー粒子から成るものだった。液状コモノマーと一緒にされた水素及びエチレンの気体供給流を、混合用T字配置で互いに混合して、反応器床の下でリサイクルガスライン中に導入した。1−ヘキセンのモノマー群をコモノマーとして用いた。エチレン、水素及びコモノマーの個々の流量は、下記の表1に示したように、一定組成目標を維持するように調節した。エチレン濃度は、一定エチレン分圧を維持するように調節した。水素は、一定の水素対エチレンのモル比を維持するように調節した。すべての気体の濃度は、リサイクルガス流中で比較的一定の組成となるように、オンラインガスクロマトグラフィーによって測定した。
【0122】
触媒Aは、キャリヤーとして精製窒素を用いて流動床中に直接注入した。その速度は、一定製造速度を維持するように調節した。連続性添加剤は、キャリヤーとして精製窒素を用いて流動床中に直接、触媒Aとは別に、注入した。連続性添加剤の速度は、一定の連続性添加剤対生成物の比を維持するように調節した。反応ゾーンに補充供給及びリサイクルガスを連続的に流すことによって、成長するポリマー粒子の反応する床を流動状態に保った。これを達成するために、1〜3フィート/秒(0.3〜0.9m/秒)の見掛け気体速度を用いた。反応器を300psig(2070kPa)の全圧で運転した。一定の反応温度を維持するために、リサイクルガスの温度を連続的に上げたり下げたり調節して、重合による熱の発生の速度の変化に適応するようにした。
【0123】
粒状生成物の生成速度に等しい速度で床の一部を取り出すことによって、流動床を一定の高さに保った。一連の弁を経由して半連続的に生成物を定容量チャンバー中に取り出し、これを同時に排気して反応器に戻した。これは、非常に効率のよい生成物の取り出しを可能にすると当時に、未反応気体の多くを反応器にリサイクルして戻すことを可能にする。この生成物をパージして同伴された炭化水素を除去し、湿った窒素細流で処理して痕跡量の残留触媒を奪活した。
【0124】
下記の表1に、例1についての重合パラメーターを与える。各試験についての触媒生産性も表1に与える。
【表1】
【0125】
上記表1に示されたように、CA−1を30ppm用いた触媒Aは10988g/gの生産性を与え、試験3においてCA−2を30ppm用いた時に触媒生産性は11423g/gに増えた。試験2においてCA−2の装填量を15ppmに減らした時に、触媒生産性はさらに13794 g/gに増えた。
【0126】
例1の各試験において製造された樹脂の特性を、下記の方法によって測定した:
1.メルトインデックス(I2):ASTM法D−1238−04C、190℃、2.16kg;
2.高装填メルトインデックス(I21):ASTM法D−1238−04C、190℃、21.6kg;
3.密度:ASTM法D−105;及び
4.嵩密度:直径7/8インチ(約2.2cm)の漏斗から400ccの定容量シリンダー中に樹脂を注ぐ。嵩密度は、この樹脂の重量を400ccで割ってg/ccで与えられる値として、決定される。
【0127】
下記の表2に、例1で製造された樹脂の特性を与える。
【表2】
【0128】
例2
連続性添加剤としての抽出された金属カルボキシレート塩の使用を評価するために、例1からのパイロットプラント流動床反応器中で追加の気相重合を実施した。表3に、4つの異なる試験を、各試験についての報告された反応条件と共に、示す。また、触媒生産性も表3に報告する。表4には、得られたポリマー生成物の様々な特性を、樹脂嵩密度を含めて、示す。
【0129】
例2について抽出されたステアリン酸アルミニウムを試験するための重合手順は、例1において上に記載して用いたものと同じである。例2では、連続気相流動床反応器を用いて4つの試験を実施した。試験4では、触媒Cを連続性添加剤としてのCA−1と共に用いた。試験5では、触媒Dを連続性添加剤としてのCA−1と共に用いた。試験6では、触媒Dを連続性添加剤としてのCA−2と共に用いた。試験7では、触媒Cを連続性添加剤としてのCA−3と共に用いた。
【0130】
下記の表3に、例2についての重合パラメーターを与える。各試験についての触媒生産性も表3に与える。
【表3】
【0131】
上記表3に示されたように、試験4においてCA−1を用いた触媒Cは6875g/gの生産性を与えた。試験5については、CA−2を用いて配合した触媒Dを同じ濃度のCA−1と共に用いて反応器に加えた時に、触媒生産性が7592g/gに増えた。触媒を抽出されたCA−2と共に配合し且つ連続性添加剤としてもCA−2を反応器に直接加えた試験6については、最も高い生産性が観察された。特に、CA−2を用いた触媒Dは、試験6において7688g/gの生産性を与えた。従って、このデータは、抽出されたステアリン酸アルミニウムを触媒組成物の一部として、又は触媒組成物とは独立して反応器中に直接導入して、用いた時に触媒生産性が増えたことを示し、抽出されたステアリン酸アルミニウムを触媒組成物中に用い且つ独立して反応器に導入した場合に、最大の増加が観察されたことを示している。
【0132】
各試験において製造された樹脂の特性を、例1で製造された樹脂について上に記載した試験方法を用いて、測定した。下記の表4に、例2で製造された樹脂の特性を与える。
【表4】
【0133】
上記の表4に示されたように、ステアリン酸アルミニウムの抽出は高められた樹脂静置嵩密度をも提供した。特に、触媒C及びCA−1を用いた試験4から製造された樹脂は、0.4713g/ccの嵩密度を有していた。しかしながら、試験5〜7については高められた嵩密度が観察された。特に、触媒を抽出されたステアリン酸アルミニウム(CA−2)と共に配合した試験5では、0.4760g/ccの嵩密度が観察された。また、抽出されたステアリン酸アルミニウム(CA−3)を連続性添加剤として用いた試験7についても、高められた嵩密度(0.4743g/cc)が観察された。しかしながら、抽出されたステアリン酸アルミニウム(CA−2)を触媒組成物中に用い且つ反応器中にも独立して導入した試験6については、最大の嵩密度の上昇が観察された。表4に示したように、試験6についての嵩密度は、0.4818g/ccだった。
【0134】
例3
次の例は、初発湿式含浸によって調製したメタロセン触媒化合物の使用を評価するために、エチレン及びヘキセンコモノマーを用いてパイロットプラント流動床反応器中で実施した気相重合に関する。表5に、2つの異なる試験を、各試験についての報告された反応条件と共に、示す。また、触媒生産性も表5に報告する。表6には、得られた生成物の様々な特性を、樹脂嵩密度を含めて、示す。
【0135】
初発湿式含浸を用いて製造した試験触媒E及びFについての重合手順は、例1において上に記載して用いたものと同じである。例3では、連続気相流動床反応器を用いて、2つの試験を実施した。試験8では触媒Eを用い、試験9では触媒Fを用いた。試験8及び試験9では共にCA−1を用いた。
【0136】
下記の表5に、例3についての重合パラメーターを与える。各試験についての触媒生産性も表5に与える。
【表5】
【0137】
上記表5に示されたように、初発湿式含浸によって上に記載したようにして調製された触媒E及びFは、例1からの試験1と比較して、高められた触媒生産性をもたらした。試験1では、初発湿式含浸を利用せずに触媒Aを用いた。特に、触媒Aは試験1においてたった10988g/gの生産性を与えただけだったのに対して、触媒Eは試験8において14974g/gの生産性を与え、触媒Fは試験9において11507の生産性を与えた。従って、このデータは、初発湿式含浸を用いて触媒組成物を担体上に付着させた時には触媒生産性を高めることができるということを示している。
【0138】
例3の各試験において製造された樹脂の特性を、例1で製造された樹脂について上に記載した試験方法を用いて、測定した。下記の表6に、例3で製造された樹脂の特性を与える。
【表6】
【0139】
ここには特定の範囲だけが明示的に開示されるが、明示的に記載されていない範囲を説明するために、任意の下限からの範囲を任意の上限と組み合わせることができ、明示的に記載されていない範囲を説明するために、任意の下限からの範囲を任意の他の下限と組み合わせることができ、同様に、明示的に記載されていない範囲を説明するために、任意の上限からの範囲を任意の他の上限と組み合わせることができる。
【0140】
本発明を数多くの実施形態及び実施例に関して説明してきたが、当業者はこの開示を読めば、ここに開示された本発明の範囲及び思想から逸脱することなく他の実施形態を考え出すことができることがわかるだろう。個別の実施形態が論じられるが、本発明はそれらすべての実施形態のすべての組合せをカバーするものである。
【0141】
ここで引用したすべての文献は、その取り込みを許可するすべての法域については、その開示が本発明の説明と一致する程度に、参照によってすべて取り込まれるものとする。
なお本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下も包含し得る。
(1)反応器中で触媒組成物及び抽出された金属カルボキシレート塩の存在下でオレフィンを重合させることを含む重合方法であって、
前記の抽出された金属カルボキシレート塩が3.0又はそれより大きい25℃における誘電率を有する有機溶媒で金属カルボキシレート塩を抽出することによって得られたものである、前記方法。
(2)前記の抽出された金属カルボキシレート塩が遊離のカルボン酸を本質的に含有しない、上記(1)に記載の方法。
(3)前記の抽出された金属カルボキシレート塩が抽出された金属カルボキシレート塩の総重量を基準として1重量%未満の合計遊離酸を含有する、上記(1)又は(2)に記載の方法。
(4)前記有機溶媒がC1−C10アルコール、C1−C10ケトン、C1−C10エステル、C1−C10エーテル、C1−C10アルキルハライド、C1−C10アルキロニトリル、C1−C10ジアルキルスルホキシド及びそれらの組合せより成る群から選択される、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。
(5)前記有機溶媒がメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、酪酸メチル、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、クロロホルム、ジクロロメタン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド及びそれらの組合せから選択される、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の方法。
(6)前記の金属カルボキシレート塩が次式:
MQx(OOCR)y
(ここで、Mは元素周期表からの第13族金属であり;
Qはハロゲン、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、アリールオキシ、シロキシ、シラン又はスルホネート基であり;
Rは12〜30個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であり;
xは0〜3の整数であり;
yは1〜4の整数であり;そして
xとyとの合計は金属Mの原子価に等しい)
で表される、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の方法。
(7)前記の抽出された金属カルボキシレート塩がカルボン酸アルミニウムを含む、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の方法。
(8)前記の金属カルボキシレート塩がモノステアリン酸アルミニウム、ジステアリン酸アルミニウム、トリステアリン酸アルミニウム及びそれらの組合せより成る群から選択されるステアリン酸アルミニウムを含む、上記(1)〜(7)のいずれかに記載の方法。
(9)前記の抽出された金属カルボキシレート塩を含む連続性添加剤を反応器に加える工程をさらに含み、該連続性添加剤及び前記触媒組成物を反応器に別々に加える、上記(1)〜(8)のいずれかに記載の方法。
(10)前記の抽出された金属カルボキシレート塩を含む連続性添加剤と組み合わせて触媒化合物を反応器に加えることをさらに含む、上記(1)〜(8)のいずれかに記載の方法。
(11)前記触媒組成物が担体をさらに含み、前記触媒化合物がメタロセン触媒化合物であり、初発湿式含浸を用いて該メタロセン触媒化合物及び担体を一緒にする、上記(1)〜(10)のいずれかに記載の方法。
(12)前記触媒組成物が担体及び活性剤をさらに含み、前記触媒化合物がチタン原子、ジルコニウム原子及びハフニウム原子より成る群から選択される少なくとも1種の原子を含むメタロセン触媒化合物である、上記(1)〜(10)のいずれかに記載の方法。
(13)前記メタロセン触媒化合物が(ペンタメチルシクロペンタジエニル)(プロピルシクロペンタジエニル)MX2、テトラメチルシクロペンタジエニル)(プロピルシクロペンタジエニル)MX2、(テトラメチルシクロペンタジエニル)(ブチルシクロペンタジエニル)MX2、Me2Si(インデニル)2MX2、Me2Si(テトラヒドロインデニル)2MX2、(n−プロピルシクロペンタジエニル)2MX2、(n−ブチルシクロペンタジエニル)2MX2、(1−メチル−3−ブチルシクロペンタジエニル)2MX2、HN(CH2CH2N(2,4,6−Me3フェニル))2MX2、HN(CH2CH2N(2,3,4,5,6−Me5フェニル))2MX2、(プロピルシクロペンタジエニル)(テトラメチルシクロペンタジエニル)MX2、(ブチルシクロペンタジエニル)2MX2、(プロピルシクロペンタジエニル)2MX2及びそれらの組合せ(ここで、MはZr又はHfであり、XはF、Cl、Br、I、Me、Bnz、CH2SiMe3、C1−C5アルキル及びC1−C5アルケニルより成る群から選択される)より成る群から選択される、上記(1)〜(11)のいずれかに記載の方法。
(14)前記触媒組成物が担体及び活性剤を含み、前記触媒化合物が(1−メチル−3−ブチルシクロペンタジエニル)2ZrX2(ここで、XはF、Cl、Br、I及びMeより成る群から選択される)から選択されるメタロセン触媒化合物である、上記(1)〜(10)のいずれかに記載の方法。
(15)前記触媒組成物が、メタロセン触媒化合物と、チーグラー・ナッタ触媒、クロム系触媒、メタロセン触媒、第15族触媒及びそれらの組合せから選択される少なくとも1種の他の触媒化合物とを含む、上記(1)〜(10)のいずれかに記載の方法。
(16)高められた触媒生産性を有する、上記(1)〜(15)のいずれかに記載の重合方法。
(17)上記(1)〜(16)のいずれかに記載の重合方法によって製造されたポリオレフィンを含むポリマー製品。
(18)前記ポリマーが、金属カルボキシレート塩が抽出されたものではないことを除いて同じ方法によって製造されたポリマーと比較して高められた樹脂嵩密度を有する、上記(17)に記載のポリマー。
(19)エチレン/α−オレフィンコポリマーを製造するための重合方法であって、
エチレン及びα−オレフィンと触媒組成物とを反応器中でエチレン/α−オレフィンコポリマーを製造するための重合条件下で接触させ、ここで、前記触媒組成物が重合触媒及び第1の抽出された金属カルボキシレート塩を含み、この第1の抽出された金属カルボキシレート塩が3.0又はそれより大きい25℃における誘電率を有する有機溶媒で金属カルボキシレート塩を抽出することによって得られたものであり;そして
前記反応器に第2の抽出された金属カルボキシレート塩を含む連続性添加剤を加え、ここで、該連続性添加剤及び前記触媒組成物が別々に前記反応器に加えられ、前記の第2の抽出された金属カルボキシレート塩が3.0又はそれより大きい25℃における誘電率を有する有機溶媒で金属カルボキシレート塩を抽出することによって得られたものである:
ことを含む、前記重合方法。
(20)前記の第1の抽出された金属カルボキシレート塩及び第2の抽出された金属カルボキシレート塩がそれぞれ遊離のカルボン酸を本質的に含有しない、上記(19)に記載の方法。
(21)前記の第1の抽出された金属カルボキシレート塩及び第2の抽出された金属カルボキシレート塩を得るために抽出される金属カルボキシレート塩がモノステアリン酸アルミニウム、ジステアリン酸アルミニウム、トリステアリン酸アルミニウム及びそれらの組合せから独立的に選択される、上記(19)又は(20)に記載の方法。