特許第5941486号(P5941486)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5941486
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月29日
(54)【発明の名称】パンク修理キット
(51)【国際特許分類】
   B29C 73/02 20060101AFI20160616BHJP
   B29C 73/24 20060101ALI20160616BHJP
   B60C 23/00 20060101ALI20160616BHJP
【FI】
   B29C73/02
   B29C73/24
   B60C23/00 E
   B60C23/00 Z
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-21582(P2014-21582)
(22)【出願日】2014年2月6日
(65)【公開番号】特開2015-147352(P2015-147352A)
(43)【公開日】2015年8月20日
【審査請求日】2015年1月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】川谷 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】河野 励
【審査官】 大塚 徹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−067013(JP,A)
【文献】 特開2010−094944(JP,A)
【文献】 特開2012−086470(JP,A)
【文献】 特開2008−055769(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 73/00 − 73/34
B60C 23/00
F16B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮空気を吐出させる圧縮空気吐出口部を具えるコンプレッサ、
パンク修理液を収容したボトル容器の口部に、抽出キャップを取り付けたボトルユニット、
及び前記コンプレッサと前記ボトルユニットの抽出キャップとを互いに連結して固定しうる連結手段を具えるパンク修理キットであって、
前記抽出キャップは、前記圧縮空気吐出口部に接続方向に直接接続できかつ該圧縮空気吐出口部からの圧縮空気をボトル容器内に第1の流路をへて取り込む取入れ口部と、この圧縮空気の取り込みにより前記ボトル容器からパンク修理液と圧縮空気とを第2の流路をへて順次取り出す取出し口部とを具え、
前記連結手段は、抽出キャップ側に形成される第1の連結部と、コンプレッサ側に形成される第2の連結部とからなり、
前記第1の連結部は、前記抽出キャップから前記取入れ口部の両側を通って接続方向にのびる一対の板状基部と、各板状基部の先端部に設けられかつ該板状基部の外側面から外向きに突出する係止面を含む断面三角形状のフック爪部とを有し、
前記第2の連結部は、前記係止面と係合することにより前記直接接続の状態にてコンプレッサと抽出キャップとを固定する係合面を具えるとともに、
前記板状基部と直交する断面において、接続方向の前方に向く基準線に対する前記係止面の角度θ1が、前記基準線に対する前記係合面の角度θ2と相違することにより、前記係止面は係合面と線接触し、しかも前記角度θ1は90〜150度であることを特徴とするパンク修理キット。
【請求項2】
前記角度θ1は、角度θ2より小であることを特徴とする請求項1記載のパンク修理キット。
【請求項3】
前記板状基部は、少なくとも前記フック爪部が形成される領域を含む先端領域に、板状基部がフック爪部側に傾斜する傾斜部を具えることを特徴とする請求項1又は2記載のパンク修理キット。
【請求項4】
前記板状基部と直交する断面において、前記傾斜部の前記基準線に対する角度αは、5度以下であることを特徴とする請求項3記載のパンク修理キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パンクしたタイヤにパンク修理液と圧縮空気とを順次注入してパンクを応急的に修理するパンク修理キットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば下記の特許文献1には、図11(A)に示すように、圧縮空気吐出口部a1を有するコンプレッサaと、ボトル容器bに抽出キャップcを取り付けたボトルユニットdとを用いたパンク修理キットが記載されている。
【0003】
前記抽出キャップcは、圧縮空気吐出口部a1からの圧縮空気をボトル容器b内に第1の流路f1をへて取り込む取入れ口部b1と、この圧縮空気の取り込みにより前記ボトル容器bからパンク修理液と圧縮空気とを第2の流路f2をへて順次取り出す取出し口部b2とを具える。
【0004】
又前記取入れ口部b1は凸状の接続ノズルからなり、凹状の圧縮空気吐出口部a1とは上下方向に直接接続可能に形成されている。又パンク修理キットには、直接接続の状態にてコンプレッサaと抽出キャップcとを固定する連結手段gが配される。
【0005】
この連結手段gは、抽出キャップ側に形成される第1の連結部g1と、コンプレッサ側に形成される第2の連結部g2とからなる。図11(B)に拡大して示すように、第1の連結部g1は、抽出キャップcから下方にのびる板状基部g1aの先端部に、係止面s1を有する断面三角形状のフック爪部g1bを外向きに具える。又第2の連結部g2は、前記係止面s1を面接触によって係止する係合面s2を具える。
【0006】
上記構造の連結手段gでは、350kPa程度の圧縮空気をボトル容器b内に注入する場合、常温環境(25℃)においては、抽出キャップcのコンプレッサaからの外れは十分に阻止される。しかしながら、高温環境(60℃)においては、抽出キャップcが軟化してその剛性が弱くなる。その結果、第1の連結部g1のフック爪部g1bが、圧縮空気の圧力に耐えきれなくなって変形し、抽出キャップcがコンプレッサaから外れやすくなるという問題が生じる。
【0007】
これに対して、フック爪部g1bの突出高さhを増すことで係合面s2から外れにくくすることが提案される。しかし低温環境(−40℃)においては抽出キャップcの剛性が高くなるため、前記フック爪部g1bの突出高さhを増す場合には、第1の連結部g1が第2の連結部g2に填りにくくなり、抽出キャップcのコンプレッサaへの装着に大きな力が必要となるという問題を招く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2013−67013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで本発明は、フック爪部の突出高さを増すことなく、フック爪部を係合面から外れ難くすることができ、低温環境における抽出キャップの装着力を低く抑えながら、高温環境における抽出キャップの外れを抑制しうるパンク修理キットを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、圧縮空気を吐出させる圧縮空気吐出口部を具えるコンプレッサ、
パンク修理液を収容したボトル容器の口部に、抽出キャップを取り付けたボトルユニット、
及び前記コンプレッサと前記ボトルユニットの抽出キャップとを互いに連結して固定しうる連結手段を具えるパンク修理キットであって、
前記抽出キャップは、前記圧縮空気吐出口部に接続方向に直接接続できかつ該圧縮空気吐出口部からの圧縮空気をボトル容器内に第1の流路をへて取り込む取入れ口部と、この圧縮空気の取り込みにより前記ボトル容器からパンク修理液と圧縮空気とを第2の流路をへて順次取り出す取出し口部とを具え、
前記連結手段は、抽出キャップ側に形成される第1の連結部と、コンプレッサ側に形成される第2の連結部とからなり、
前記第1の連結部は、前記抽出キャップから前記取入れ口部の両側を通って接続方向にのびる一対の板状基部と、各板状基部の先端部に設けられかつ該板状基部の外側面から外向きに突出する係止面を含む断面三角形状のフック爪部とを有し、
前記第2の連結部は、前記係止面と係合することにより前記直接接続の状態にてコンプレッサと抽出キャップとを固定する係合面を具えるとともに、
前記板状基部と直交する断面において、接続方向の前方に向く基準線に対する前記係止面の角度θ1が、前記基準線に対する前記係合面の角度θ2と相違することにより、前記係止面は係合面と線接触し、しかも前記角度θ1は90〜150度であることを特徴としている。
【0011】
本発明に係る前記パンク修理キットでは、前記角度θ1は、角度θ2より小であることが好ましい。
【0013】
本発明に係る前記パンク修理キットでは、前記板状基部は、少なくとも前記フック爪部が形成される領域を含む先端領域に、板状基部がフック爪部側に傾斜する傾斜部を具えることが好ましい。
【0014】
本発明に係る前記パンク修理キットでは、前記板状基部と直交する断面において、前記傾斜部の前記基準線に対する角度αは、5度以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明は叙上の如く、連結手段において、係止面の角度θ1と係合面の角度θ2とを相違させ、これにより係止面と係合面とを線接触させている。この線接触により、係止面と係合面との接触圧を、従来の面接触の場合に比して大きくすることができ、フック爪部を係合面から外れ難くすることができる。
【0016】
従って、低温環境における抽出キャップの装着力を低く抑えながら、高温環境における抽出キャップの外れを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明のパンク修理キットの連結状態を示す斜視図である。
図2】連結前のコンプレッサを示す斜視図である。
図3】連結前のボトルユニットを示す部分断面図である。
図4】抽出キャップを示す斜視図である。
図5】(A)、(B)は連結前、及び連結状態における第2の閉止手段を示す部分断面図である。
図6】(A)、(B)は連結前、及び連結状態における第1の閉止手段を示す部分断面図である。
図7】連結前における連結手段を示す断面図である。
図8】連結状態におけるパンク修理キットを示す断面図である。
図9】連結手段を拡大して示す断面図である。
図10】コンプレッサの着座用凹部を上方から見た部分平面図である。
図11】(A)は従来のパンク修理キットを示す断面図、(B)はその連結手段を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
図1、2に示すように、本実施形態のパンク修理キット1は、コンプレッサ3、ボトル容器4に抽出キャップ5を取り付けたボトルユニット6、及びコンプレッサ3と抽出キャップ5とを互いに連結して固定しうる連結手段7(図3に示す)を具える。
【0019】
前記コンプレッサ3は、例えば偏平な矩形箱状の収納ケース内に、モータ、ピストン、シリンダなどを用いた周知構造の可動部を有する。本例のコンプレッサ3は、その上面3Sに、前記抽出キャップ5が着座する着座用凹部22を具えるとともに、前記着座用凹部22に、圧縮空気を吐出させる圧縮空気吐出口部2が上向きに配される。
【0020】
ボトルユニット6は、ボトル容器4と、その口部4Aに取り付く抽出キャップ5とを具える。ボトル容器4は、パンク修理液を収容する容器部4Bと、その下端から突出する小径円筒状の前記口部4Aとを具える。
【0021】
図3、4に示すように、前記抽出キャップ5は、前記圧縮空気吐出口部2からの圧縮空気をボトル容器4内に第1の流路8をへて取り込む取入れ口部10と、この圧縮空気の取り込みにより前記ボトル容器4からパンク修理液と圧縮空気とを第2の流路9をへて順次取り出す取出し口部11とを具える。又本例の抽出キャップ5は、前記連結手段7による連結前の状態Y1において前記第1、第2の流路8、9を閉じる第1、第2の閉止手段12、13をさらに具える。
【0022】
具体的には、本例の抽出キャップ5は、キャップ本体14と鞘管15とを含んで構成され、前記キャップ本体14は、胴部16と送空気管部17とを具える。胴部16は、前記ボトル容器4の口部4Aが取り付くボトル取り付け部を上端部に有する筒状部分16Aと、該筒状部分16Aの下端部を閉じる底板部分16Bとからなる。前記筒状部分16Aの内孔16Hは、ボトル容器4内に連通する。本例では、前記口部4Aと筒状部分16Aの内孔16Hとが螺着される場合が示される。
【0023】
前記送空気管部17は、前記底板部分16Bから筒状部分16Aと同心に立ち上がり、その中心孔17Hが前記第1の流路8を構成する。本例では、前記送空気管部17の上端は、前記パンク修理液の液面よりも下方に位置するとともに、前記第1の流路8内に、ボトル容器4からのパンク修理液の逆流を阻止する一方弁45が配される。前記一方弁45は、第1の流路8内に形成される弁座部45aと、この弁座部45aを開閉するボール弁45bと、ボール弁45bを弁座部45aに押し付けるバネ45cとを含む。
【0024】
前記胴部16は、第1の流路8に通じる取入れ口部10を具える。この取入れ口部10は、コンプレッサ3の前記圧縮空気吐出口部2と、ホースなどを介することなく直接接続される。具体的には、前記圧縮空気吐出口部2と取入れ口部10との一方は、他方に向かって突出する接続ノズル25からなり、かつ他方は、接続ノズル25が接続方向(本例では上下方向)に填り込むノズル受け26から形成される。本例では、前記取入れ口部10が、底板部分16Bから下方に突出する接続ノズル25として形成され、かつ圧縮空気吐出口部2がノズル受け26として形成される場合が示される。
【0025】
次に、前記鞘管15は、前記送空気管部17に、上下に摺動可能に外挿保持されるとともに、この鞘管15の下端には、前記直接接続に伴い該鞘管15を上方に押し上げる押上げレバー19が形成される。前記押上げレバー19は、鞘管15の下端から、前記底板部分16Bを貫通して下方に突出してのびる例えば2〜3本(本例では2本)の突出片からなる。なお底板部分16Bには、前記押上げレバー19を貫通させる貫通孔16Bhが形成される。この押上げレバー19は、前記直接接続に伴い、コンプレッサ3の当接面21と当接し、鞘管15を上方に押し上げる。本例の押上げレバー19は、図4に示すように、胴部16と同心な円弧状に湾曲している。
【0026】
前記鞘管15には、前記第2の流路9を閉じる第2の閉止手段13が前記鞘管15と一体移動可能に設けられる。又前記送空気管部17の上端部17Eには、前記第1の流路8を閉じる第1の閉止手段12が形成される。これら第1、第2の閉止手段12、13は、鞘管15の押し上げによって作動し、第1、第2の流路8、9を開放する。
【0027】
図5(A)に拡大して示すように、前記第2の流路9は、前記鞘管15と筒状部分16Aとの間の間隙によって形成される環状の縦の流路部9Aと、この縦の流路部9Aに交点Pで連なりかつ該交点Pから取出し口部11の先端開口部までのびる横の流路部9Bとを具える。前記取出し口部11は、タイヤ側にパンク修理液及び圧縮空気を注入するホースの接続部として、前記筒状部分16Aから半径方向外方に突出して形成される。
【0028】
前記筒状部分16Aの内壁面Wは、前記内孔16Hが大径をなす大径壁部Waと、この大径壁部Waに段差部Wbを介して下方側に連なる小径壁部Wcとを具える。前記段差部Wbは、前記交点Pよりも上方位置に形成され、従って、小径壁部Wcは、前記段差部Wbと交点Pとの間の上の小径壁部WcUと、交点Pよりも下方側の下の小径壁部WcLとにさらに区分される。
【0029】
本例の第2の閉止手段13は、前記鞘管15に一体移動可能に設けられる上下のリング状のシール部材20U、20Lにより形成される。前記シール部材20U、20Lは、所謂Oリングであって、前記鞘管15の外周に形成される周溝によって保持される。この第2の閉止手段13は、前記連結前の状態Y1(図5(A)に示す)においては、上のシール部材20Uが、上の小径壁部WcUと当接して、前記第2の流路9を閉止し、パンク修理液が取出し口部11側に流出するのを防止する。又連結状態Y2(図5(B)に示す)においては、前記押上げレバー19による前記鞘管15の押し上げにより、前記上のシール部材20Uは、前記段差部Wbをこえて上方に移動する。このとき、前記上のシール部材20Uと大径壁部Waとの間に隙間Gが形成され、これによって前記第2の流路9を開放する。
【0030】
図6(A)、(B)に示すように、前記第1の閉止手段12は、送空気管部17の上端部17Eに嵌着される内蓋18である。この内蓋18は、前記鞘管15によって突き上げられ、前記送空気管部17から外れて第1の流路8を開放する。送空気管部17の上端部17Eには、送空気管部17の外周面から小高さで突出する第1の係止突部33が配される。又内蓋18には、内蓋18の内周面から小高さで突出し、かつ前記第1の係止突部33に係止される第2の係止突部34が配される。
【0031】
前記第1の係止突部33は、周方向に連続してのびる環状突起として形成される。又前記第2の係止突部34は、周方向に間隔を有して配される複数の係止突起34Aから形成される。係止突起34Aの形成数は偶数(例えば2、4等)であり、2つの係止突起34Aを対として、それぞれ直径線上で互いに向かい合わせて配置される。各係止突起34Aの周方向の巾は、前記内蓋18の中心点廻りの中心角に換算した値が5〜45°であるのが好ましい。
【0032】
連結前の状態Y1において、第2の係止突部34は、第1の係止突部33とはその下側で係合する。又鞘管15の突き上げにより内蓋18が弾性変形し、第2の係止突部34が第1の係止突部33を乗り越えることで、内蓋18が外れる。
【0033】
送空気管部17には、鞘管15との間をシールする、Oリングなどのシールリング35が取り付けられる。又本例では、鞘管15の上端面15Sには、前記内蓋18を突き上げる突上げ突部36が段差状に突設される。突上げ突部36は、前記上端面15Sのうち鞘管15の中心点廻りの中心角が90°以下の角度範囲に形成されるのが好ましい。この突上げ突部36の形成により、例えば栓抜きに近い効果が生まれ、保管時における内蓋18の外れを抑制しながら、より少ない突き上げ力にて内蓋18を容易に取り外すことが可能となる。
【0034】
図7に示すように、連結手段7は、抽出キャップ5側に形成される第1の連結部7Aと、コンプレッサ3側に形成される第2の連結部7Bとから構成される。
【0035】
前記第1の連結部7Aは、前記抽出キャップ5から前記取入れ口部10の両側を通って接続方向にのびる板状基部27の先端部にフック爪部28を設けた一対のフック片24からなる。本例では前記板状基部27が、抽出キャップ5の底板部分16Bから、接続ノズル25の両側を通って下方にのびる。又フック爪部28は、前記板状基部27の外側面から外向きに突出する係止面28Sを上面とした断面三角形状をなす。
【0036】
前記第2の連結部7Bは、前記係止面28Sと係合することにより前記直接接続の状態にてコンプレッサ3と抽出キャップ5とを固定する係合面29Sを有する係合部29を具える。本例の係合部29は、前記ノズル受け26と一体に形成されるフレーム板30に形成されるとともに、該フレーム板30は、コンプレッサ3のシリンダ3Aからのびるノズル受け形成用の継ぎ筒部分3Bの上端部に一体に形成される。このフレーム板30は、前記着座用凹部22の下方に配され、前記当接面21をなすフレーム板30の上面は、前記着座用凹部22の底部に設ける切欠き口22Aを介して露出する。
【0037】
図9に拡大して示すように、前記係合部29は、フック爪部28が通過可能な爪挿通孔31を含み、前記係合面29Sは、フレーム板30の下面に前記爪挿通孔31に連なって形成される。この係止面28Sは、前記板状基部27と直交する断面において、接続方向前方に向く基準線Kに対する角度θ1が、前記基準線Kに対する前記係合面29Sの角度θ2と相違している。これにより係止面28Sは、係合面29Sと線接触しうる。なお前記角度θ1は角度θ2よりも小であり、この角度θ1は90〜150度の範囲であるのが好ましい。
【0038】
このように構成した連結手段7では、係止面28Sと係合面29Sとが線接触しうるため、係止面28Sと係合面29Sとの接触圧を、従来の面接触の場合に比して大きくすることができる。その結果、フック爪部28を係合面29Sから外れ難くすることができる。なお係合面29Sの先端Eが、フレーム板30の下面30S(基準線Kに対して略直角)との接触を防止するため、前記下面30Sに突起部32設け、この突起部32の下面に前記係合面29Sを形成している。
【0039】
前記角度θ1が150度を超えると、角度θ2をさらに大きくする必要がある。この場合、前記突起部32の先端が鋭角化し過ぎて強度が低下し、衝撃や振動等で破損する恐れを招く。又前記角度θ1が大き過ぎると、高温環境においては、前記角度θ1が減じる向きに抽出キャップ5が熱膨張する傾向が強くなる。そのため前記角度θ1が150度を超えると、高温環境において係合面29Sと面接触し易くなって接触圧が減じるという不利を招く。又圧縮空気を供給した際、抽出キャップ5には上向きの力が作用するため、前記角度θ1が90度を下回る場合、フック爪部28は力学的に外れ易すくなる。
【0040】
なお寸法公差を考慮すると、確実に線接触させるためには、前記角度θ1、θ2の差(θ2−θ1)は5度以上であるのが好ましい。
【0041】
本例の板状基部27は、少なくとも前記フック爪部28が形成される領域を含む先端領域に、板状基部27がフック爪部28側に傾斜する傾斜部27Aを具える。これにより、板状基部27が変形し難くなってフック爪部28の外れをさらに抑制することができる。前記傾斜部27Aの基準線Kに対する角度αは、5度以下であることが好ましい。この角度αが5度を越えると、低温環境において抽出キャップ5の装着力が高まる傾向を招く。
【0042】
次に、本例のパンク修理キット1には、図4、7に示すように、直接接続の際の抽出キャップ5の装着の向きを規制するガイド手段50が配される。このガイド手段50は、抽出キャップ5から前記取入れ口部10(接続ノズル25)の両側を通って接続方向にのびる第1、第2のガイド板部51A、51Bと、前記コンプレッサ3に設けられかつ前記第1、第2のガイド板部51A、51Bがそれぞれ挿入される第1、第2のガイド差込み口52A、52Bとから構成される。
【0043】
第1、第2のガイド板部51A、51Bは、本例では、前記フック片24の外側に、該フック片24と略平行に形成される。又第1、第2のガイド差込み口52A、52Bは、図10に示すように、着座用凹部22に設けた前記切欠き口22Aの側縁22Aeと、フレーム板30の側縁30eとで囲まれた領域として形成される。しかし着座用凹部22の底面、或いはフレーム板30に形成することもできる。
【0044】
そして第1、第2のガイド板部51A、51Bは、その形成位置、及び/又は形状が互いに相違し、これによって誤挿入が防止され抽出キャップ5の向きが規制される。なお第1、第2のガイド差込み口52A、52Bは、それぞれ第1、第2のガイド板部51A、51Bに合った形成位置、及び/又は開口形状を有し、これにより誤挿入が防止される。その結果、ボトルユニット6の装着の向きが違った場合における、接続ノズル25やフック片24の挿入深さを減じる、或いは挿入自体を抑制することができ、ボトルユニット6をセットし直す際の接続ノズル25やフック片24への破損を低減することができる。
【0045】
本例では、第1のガイド板部51Aの巾WAが、第2のガイド板部51Bの巾WBと相違する場合が形成される。この場合、誤挿入防止のためには、熱膨張による寸法変化も考慮し、巾WAと巾Wbとは3mm以上相違させるのが好ましい。
【0046】
図7に示すように、第1、第2のガイド板部51A、51Bの抽出キャップ5からの突出長さHaは、前記接続ノズル25の抽出キャップ5からの突出長さHb、及び前記フック片24の抽出キャップ5からの突出長さHcよりも大であるのが好ましい。これにより、接続ノズル25やフック片24を保護でき、ボトルユニット6を誤って落下させた場合の、接続ノズル25やフック片24の損傷を防止しうる。この場合、前記突出長さHaは、前記突出長さHbとHcのうちの大きい方の突出長さHmax との差(Ha−Hmax )を2〜20mmとするのが好ましい。前記差(Ha−Hmax )が2mmを下回ると、保護効果が十分発揮されない恐れがある。又20mmを越えても保護効果の上昇は見込めず、逆に抽出キャップ5が大型化するという不利を招く。
【0047】
パンク修理キット1では、パンク修理後、ボトルユニット6をコンプレッサ3から取り外すために、ドライバー等の解除棒を用いて前記フック爪部28を内向き(接続ノズル25側)に押し、これによって連結手段7による連結を解除することが必要である。そのために本例の第1、第2のガイド板部51A、51Bには、その先端に前記解除棒が通る例えばU字状の挿通孔23が形成されている。なおコンプレッサ3の側壁にも、同様に解除棒が通る挿通孔23が形成される。
【0048】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【実施例】
【0049】
図1〜3に示す構造のパンク修理キットを表1の仕様に基づき試作した。各試供品に対し、低温環境における抽出キャップの装着性、高温環境における抽出キャップの外れ性についてテストした。各パンク修理キットとも、連結手段における係止面および係合面の角度θ1、θ2、及び板状基部における傾斜部の角度αのみ相違する。
【0050】
(1)低温環境における抽出キャップの装着性:
コンプレッサとボトルユニットとを恒温槽にて低温環境(−40℃)にて24時間放置。その後、ボトルユニットをコンプレッサに装着する際の挿入力(単位N)を、測定器(DIGITAL FORCE GAUGE/株式会社イマダ社製:モデルDPS−50)により測定した。挿入力が小さいほど装着性に優れている。
【0051】
(2)高温環境における抽出キャップの外れ性:
コンプレッサとボトルユニットとを恒温槽にて高温環境(60℃)にて24時間放置。その後、恒温槽内にてボトルユニットとコンプレッサとを接続し、コンプレッサを作動して連続1時間昇圧テストを実施した。そして昇圧テスト中における、抽出キャップのコンプレッサからの外れ(フック爪部の外れ)の発生の有無をチェックした。
【0052】
【表1】
【0053】
表の如く実施例は、低温環境における抽出キャップの装着力を低く抑えながら、高温環境における抽出キャップの外れを抑制しうるのが確認できる。
【符号の説明】
【0054】
1 パンク修理キット
2 圧縮空気吐出口部
3 コンプレッサ
4 ボトル容器
4A 口部
5 抽出キャップ
6 ボトルユニット
7 連結手段
7A 第1の連結部
7B 第2の連結部
8 第1の流路
9 第2の流路
10 取入れ口部
11 取出し口部
24 フック片
27 板状基部
27A 傾斜部
28 フック爪部
28S 係止面
29S 係合面
K 基準線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11