(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
溝嵌合フック部(31)は、隣り合う屋根板材の連結用凸条部(2)の溝部(23)に嵌合した状態で、その全長が溝部(23)の底部を含む内面に密着当接するように構成されることを特徴とする請求項1に記載の屋根板材。
少なくとも、屋根板材本体部(1)、連結用凸条部(3)の本体部(30)および連結用凸条部(2)の湾曲状部(21)に縦リブ(6)が形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の屋根板材。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に示される屋根構造は、タイトフレームを用いる従来の屋根構造や特許文献1に示される屋根構造に比べて、タイトフレームや支持部材を用いる必要がなく、施工も容易であるため、材料コストや施工コストを低く抑えることができる利点がある。しかし、屋根板材どうしの連結部の防水性、風の吹き上げに対する連結強度、雪の荷重に対する強度などが必ずしも十分とは言えない。
【0006】
したがって本発明の目的は、以上のような従来技術の課題を解決し、タイトフレームや支持部材を用いることなく、少ない手間で簡単に施工できる屋根板材であって、屋根板材どうしの連結部において、優れた防水性能と風の吹き上げに対する高い連結強度が得られるとともに、雪などの荷重に耐え得る高い強度(特に、長手方向のたわみに対する高い強度)が得られ、しかも構造が簡単で製造も容易な屋根板材を提供することにある。また、本発明の他の目的は、そのような屋根板材を用いた屋根構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]金属板を成形加工した屋根板材であって、幅方向両端側に、隣り合う屋根板材と連結するための構造を備えた屋根板材において、
幅方向一端側には、屋根板材本体部(1)から立ち上がり形成された第1の連結用凸条部(2)と、該連結用凸条部(2)の外側に連成された取付固定用板部(4)を有するとともに、幅方向他端側には、屋根板材本体部(1)から立ち上がり形成された第2の連結用凸条部(3)を有し、
連結用凸条部(2)は、頂部(20)で隔てられた屋根板材本体部(1)側に湾曲状部(21)が形成されるとともに、取付固定用板部(4)側に縦壁部(22)が形成され、
該縦壁部(22)は、上部側が取付固定用板部(4)側に傾いた傾斜を有するとともに、該縦壁部(22)の下端に前記取付固定用板部(4)が連成され、湾曲状部(21)の下部途中または下端には、溝開口から深さ方向に向かって上向きに傾斜した溝部(23)が形成され、
連結用凸条部(3)は、その本体部(30)が湾曲状に構成されるとともに、該本体部(30)の自由端側に、本体部(30)の内側に延出する溝嵌合フック部(31)が連成され、該溝嵌合フック部(31)は、先端側部分(310)が上側にU字状に折り返され、隣り合う屋根板材の連結用凸条部(2)の溝部(23)に嵌合可能な形状に構成され、
溝嵌合フック部(31)を、隣り合う屋根板材の連結用凸条部(2)の溝部(23)に嵌合した状態で、溝部(23)内に、該溝部(23)の内面と溝嵌合フック部(31)とで囲まれる空間部(5)が形成されるようにしたことを特徴とする屋根板材。
【0008】
[2]上記
[1]の屋根板材において、溝嵌合フック部(31)は、隣り合う屋根板材の連結用凸条部(2)の溝部(23)に嵌合した状態で、その全長が溝部(23)の底部を含む内面に密着当接するように構成されることを特徴とする屋根板材。
[3]上記[1]
または[2]の屋根板材において、少なくとも、屋根板材本体部(1)、連結用凸条部(3)の本体部(30)および連結用凸条部(2)の湾曲状部(21)に縦リブ(6)が形成されることを特徴とする屋根板材。
【0009】
[4]上記[1]〜
[3]のいずれかの屋根板材を用いた屋根構造であって、
各屋根板材(A)は、取付固定用板部(4)を固定手段(B)により屋根構造材(C)に固定することにより屋根に取付固定され、
隣り合う2つの屋根板材(A),(A)は、一方の屋根板材(A)の連結用凸条部(3)が、他方の屋根板材(A)の連結用凸条部(2)に被せられた状態で、前記連結用凸条部(3)の溝嵌合フック部(31)が前記連結用凸条部(2)の溝部(23)に嵌合し、且つ、前記連結用凸条部(3)の湾曲状の本体部(30)が、前記連結用凸条部(2)の湾曲状部(21)に重なり合うことにより、連結されることを特徴とする屋根構造。
【0010】
[5]上記
[4]の屋根構造において、各屋根板材(A)に対して、長手方向で間隔をおいて複数の補強金具(D)が配置され、該補強金具(D)は、金属板を成形加工した部材であって、縦壁部(10)と、該縦壁部(10)の下端に連成され、縦壁部(10)の前面側に延出する取付固定部(11)と、縦壁部(10)の上端に連成され、縦壁部(10)の背面側に延出する鍔部(12)を備え、縦壁部(10)の背面が連結用凸条部(2)の縦壁部(22)の外面に、取付固定部(11)の下面が取付固定用板部(4)の上面に、鍔部(12)の下面が湾曲状部(21)の一部の外面に、それぞれ当接するように屋根板材(A)に対して配置され、取付固定部(11)が、固定手段(B)により取付固定用板部(4)とともに屋根構造材(C)に固定されることを特徴とする屋根構造。
[6]上記
[5]の屋根構造において、補強金具(D)は、縦壁部(10)の上下方向に沿って形成されるリブ(14)を1本以上有することを特徴とする屋根構造。
【発明の効果】
【0011】
本発明の屋根板材および屋根構造は、タイトフレームや支持部材を用いることなく、少ない手間で簡単に施工することができ、また、屋根板材どうしの連結部において、優れた防水性能と風の吹き上げに対する高い連結強度が得られるとともに、雪などの荷重に耐え得る高い強度、特に長手方向のたわみに対する高い強度が得られ、しかも構造が簡単で製造も容易である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1〜
図8は、本発明の屋根板材Aとこれを用いた屋根構造の一実施形態を示すものであり、
図1は屋根板材Aの正面図、
図2は同じく斜視図、
図3は屋根板材Aを構成する連結用凸状部2を示す拡大正面図である。
図4は屋根構造を模式的に示した正面図であり、簡単のために、隣り合う屋根板材Aを破線と実線で交互に示し、補強金具の図示を省略してある。
図5〜
図7は屋根構造の詳細を示したものであり、
図5は正面図、
図6は部分拡大図、
図7は側面図である。
図5〜
図7では、便宜上、1つの屋根板材Aを実線で、その両側に連結される屋根板材Aと屋根構造材Cを仮想線で示してある。
図8は屋根構造で用いた補強金具Dの斜視図である。
【0014】
本発明の屋根板材Aは、金属板を成形(曲げ成形)加工して得られたものであり、幅方向両端側に、隣り合う屋根板材と連結するための構造を備えた屋根板材である。金属板の種類に特に制限はないが、通常、板厚が1mm以下の鋼板(塗装鋼板、表面処理鋼板など)が用いられる。
屋根板材Aは、幅方向一端側に、屋根板材本体部1から立ち上がり形成された第1の連結用凸条部2と、この連結用凸条部2の外側に連成された取付固定用板部4を有するとともに、幅方向他端側に、屋根板材本体部1から立ち上がり形成された第2の連結用凸条部3を有している。隣り合う屋根板材Aは、それらの連結用凸条部2と連結用凸条部3を係合させる(重なり合わせる)とともに、一部を嵌合させることにより連結される。
【0015】
連結用凸条部2,3間の屋根板材本体部1は、通常、フラットな板部(ただし、本実施形態のような補強用の縦リブ6を設けた板部や、波板状の板部である場合を含む)であるが、適当な凸条部や突起などを設けることもできる。
取付固定用板部4は、連結用凸条部2の端部(後述する縦壁部22の下端)から水平方向に延出した板部であり、その自由端側に立ち上がり部40が形成されている。この立ち上がり部40の内側は、結露した水滴を水下側に排水する樋の役目をする。取付固定用板部4には、屋根板材長手方向で間隔をおいてビス止め用の取付孔(図示せず)が設けられている。
【0016】
連結用凸条部2は、頂部20で隔てられた屋根板材本体部1側に湾曲状部21(凸状の湾曲状部)が形成されるとともに、取付固定用板部4側に縦壁部22が形成され、この縦壁部22の下端に取付固定用板部4が連成されている。本実施形態では、湾曲状部21は円弧状に構成され、連結用凸条部2は、略1/4円形状に立ち上がり成形された成形部となっている。
縦壁部22の上端(頂部20)は、取付固定用板部4に設けられたビス止め用の取付孔(図示せず)の真上よりも、屋根板材本体部1側に位置している。
【0017】
連結用凸条部2の縦壁部22は、この連結用凸条部2に重ね合された連結用凸条部3(他の屋根板材の連結用凸条部3)の本体部30を内側から支える支持構造材として機能するとともに、屋根板材長手方向での曲げ(たわみ)に対する耐力材として機能する。縦壁部22は垂直壁ではなく、上部側が取付固定用板部4側に傾いた傾斜を有している。このように縦壁部22に傾きをもたせることにより、上記のような縦壁部22の機能を確保しつつ、湾曲状部21の周長を大きくとることができる。
縦壁部22の垂直方向に対する傾斜角α(
図3に示す)は特に制限はないが、傾斜角αが小さすぎると傾斜をもたせる意味が小さくなり、傾斜角αが大きすぎると上記のような縦壁部22の機能が低下するとともに、縦壁部22が取付固定用板部4の上方にせりだして、取付固定用板部4を屋根構造材にビス止めする際の作業性が悪くなる。以上の観点から、縦壁部22の垂直方向に対する傾斜角αは5〜15°程度が好ましい。
【0018】
湾曲状部21の下部途中または下端には、溝開口230から深さ方向に向かって上向きに傾斜した溝部23が形成されている。この溝部23は、隣り合う他の屋根板材の一部(溝嵌合フック部31)を嵌合させるものであるが、溝開口230から深さ方向(奥行き方向)に向かって上向きに傾斜させているのは、雨水が嵌合部分から連結部内に浸入しないようにするとともに、隣り合う他の屋根板材の一部(溝嵌合フック部31)が溝部23に確実に引っ掛かり、風の吹き上げにより屋根板材どうしの連結が外れることがないようにするためである。
【0019】
溝部23の深さ方向の傾斜角θ(水平に対する傾斜角)や深さd(奥行き)、幅w(いずれも
図3に示す)は特に制限はないが、溝部23の傾斜角θが小さすぎると、雨水が嵌合部分から連結部内に侵入しやすくなるとともに、隣り合う他の屋根板材の一部(溝嵌合フック部31)が溝部23に引っ掛かる角度が浅くなるため連結強度が低下しやすくなる。一方、溝部23の傾斜角θが大きすぎると、隣り合う他の屋根板材の一部(溝嵌合フック部31)を溝部23に嵌合させる際の作業性が低下するとともに、連結用凸条部2自体の強度が低下しやすくなる。また、溝部23の深さd(奥行き)が小さすぎると、隣り合う他の屋根板材の一部(溝嵌合フック部31)と溝部23との嵌合長さが小さくなるので防水性が低下しやすくなるとともに、嵌合した状態で溝部23内に形成される空間部5の容積が小さくなり、この空間部5による排水性が低下しやすくなる。さらに、隣り合う他の屋根板材の一部(溝嵌合フック部31)の溝部23への引っ掛かりが小さくなるため連結強度も低下しやすくなる。一方、溝部23の深さd(奥行き)が大きすぎると、連結用凸条部2自体の強度が低下しやすくなる。また、溝部23の幅wが小さすぎると、隣り合う他の屋根板材の一部(溝嵌合フック部31)を溝部23に嵌合させる際の作業性が低下するとともに、嵌合した状態で溝部23により形成される空間部5の容積が小さくなり、この空間部5による排水性が低下しやすくなる。また、溝部23の幅wが大きすぎると、本発明条件に合致した溝部23が形成しにくくなる。
【0020】
以上の観点から、溝部23の傾斜角θは20〜45°程度、深さd(奥行き)は連結用凸条部2の高さhの0.2〜0.5程度、幅wは深さd(奥行き)の0.15〜0.4程度が好ましい。
なお、溝部23の溝開口230は、湾曲状部21の下部途中または下端に形成されるが、その下端縁のベース面(屋根板材本体部1)からの高さh
Oは、連結用凸条部2の高さhの0.1〜0.3程度が好ましい。
【0021】
連結用凸条部3は、その本体部30が湾曲状(凸湾曲状)に構成されるとともに、この本体部30の自由端側に、湾曲した本体部30の内側に延出する溝嵌合フック部31が連成されている。本実施形態の本体部30は、略半円形の円弧状に構成されている。また、溝嵌合フック部31は、先端側部分310が上側にU字状に折り返され、隣り合う屋根板材の連結用凸条部2の溝部23に嵌合可能な形状に構成されている。すなわち、溝嵌合フック部31は、本体部30の内面に対して鋭角となるようにフック状に折り曲げ形成されるとともに、先端側部分310が上側(本体部30側)にU字状に折り返された形状を有している。そして、この溝嵌合フック部31を、隣り合う屋根板材の連結用凸条部2の溝部23に嵌合した状態で、溝部23内に、溝部23の内面と溝嵌合フック部31とで囲まれる空間部5が形成されるようにしている。また、溝嵌合フック部31は、隣り合う屋根板材の連結用凸条部2の溝部23に嵌合した状態で、その全長が溝部23の底部を含む内面に密着当接するように構成されている。
【0022】
連結用凸条部3の基端部(屋根板材本体部1との接続部)と、連結用凸条部2の基端部(屋根板材本体部1との接続部)には、それぞれアール部32(カーブ)とアール部24(カーブ)が形成され、隣り合う屋根板材の連結用凸条部2と連結用凸条部3が重なり合って形成される連結部Eが、全体としてなだらかな円弧状となるように構成されている。
また、本発明の屋根板材は、雪などの荷重に対する強度、特に長手方向のたわみに対する強度を高めるため、必要な箇所に縦リブを設けたり、必要な箇所を縦波板状に構成したりすることができる。本実施形態では、屋根板材本体部1、連結用凸条部3の本体部30、連結用凸条部2の湾曲状部21に、所定の間隔で縦リブ6(屋根板材長手方向に形成されるリブ)が形成されている。本実施形態では、小断面で高さの低い凸状の縦リブ6が形成されている。なお、縦リブ6は、さらに他の部位に形成してもよい。
【0023】
以下、上述した屋根板材Aを用いた本発明の屋根構造について説明する。
図4に示すように、各屋根板材Aは、取付固定用板部4を固定手段Bにより屋根構造材Cに固定することにより屋根に取付固定される。屋根構造材Cは、母屋、垂木、野地板(例えば耐火ボードなど)など任意である。固定手段Bも任意であるが、本実施形態ではビス7と押え用のリング8が用いられている。すなわち、取付固定用板部4に設けられた取付孔(図示せず)を介して、頭部に押さえ用のリング8を装着したビス7で取付固定用板部4を屋根構造材Cに固定(ビス止め)する。
図4では省略してあるが、通常、
図5〜
図8に示すような補強金具Dが配置され、この補強金具Dが取付固定用板部4とともに屋根構造材Cに固定(ビス止め)される。
【0024】
ここで、隣り合う2つの屋根板材Aの連結構造を、
図4、
図5〜
図7の隣り合う2つの屋根板材Ax、Ayを例に説明すると、一方の屋根板材Ayの連結用凸条部3yが、他方の屋根板材Axの連結用凸条部2xに被せられた状態(重ね合された状態)で、連結用凸条部3yの溝嵌合フック部31yが連結用凸条部2xの溝部23xに嵌合し、且つ、連結用凸条部3yの湾曲状の本体部30yが、連結用凸条部2xの湾曲状部21xに重なり合うことにより、隣り合う2つの屋根板材Ax、Ayが連結される。この連結により、隣り合う屋根板材Ax、Ayの連結用凸条部2xと連結用凸条部3yが重なり合った湾曲状(本実施形態では略半円形の円弧状)の連結部Eが構成される。
【0025】
この連結部Eでは、溝部23x内に、溝部23xの内面と溝嵌合フック部31yとで囲まれる空間部5が形成される。また、溝嵌合フック部31yは、その全長が溝部23xの底部を含む内面に密着当接する。また、溝部23xの溝開口230は、溝嵌合フック部31yの基端部で塞がれた状態となる。
なお、溝嵌合フック部31yや溝嵌合フック部31yの先端側部分310は、弾性変形した状態で溝部23xに嵌合(弾性嵌合)してもよい。
【0026】
また、各屋根板材Aに対して、長手方向で間隔をおいて複数の補強金具Dが配置される。この補強金具Dは、金属板を成形加工(曲げ成形)した部材であって、
図8に示すように、縦壁部10と、この縦壁部10の下端に連成され、縦壁部10の前面側に延出する取付固定部11と、縦壁部10の上端に連成され、縦壁部10の背面側に延出する鍔部12を備えている。また、取付固定部11は水平な板部であり、その自由端側に立ち上がり部110が形成されている。この取付固定部11には、ビス止め用の取付孔(図示せず)が設けられている。
【0027】
このような補強金具Dは、その縦壁部10の背面が連結用凸条部2の縦壁部22の外面に、取付固定部11の下面が取付固定用板部4の上面に、鍔部12の下面が湾曲状部21の一部の外面に、それぞれ当接するように屋根板材Aに対して配置され、取付固定部11が、固定手段Bにより取付固定用板部4とともに屋根構造材Cに固定される。本実施形態では、取付固定部11と取付固定用板部4にそれぞれ設けられた取付孔を介して、頭部に押え用のリング8装着したビス7によって取付固定部11と取付固定用板部4を屋根構造材Cに固定(ビス止め)している。
【0028】
この補強金具Dの配置間隔に特に制限はなく、任意の間隔(例えば、0mm〜1000mm程度の任意の間隔)で配置すればよい。また、固定される屋根構造材Cが野地板(耐火ボードなど)の場合には、1枚の野地板に対して両端部とその間の1箇所以上に配置することができ、例えば、1800mmの野地板(耐火ボードなど)に対して、900mm間隔で3箇所(両端部と中央部)に、或いは600mm間隔で4箇所(両端部とその間の2箇所)に配置するような配置間隔とすることができる。
このような補強金具Dを用いることにより縦壁部22が補強され、連結用凸条部3の湾曲状の本体部30を内側から支える支持構造材としての機能と、屋根板材長手方向での曲げ(たわみ)に対する耐力材として機能が強化され、雪などの荷重に対する強度、特に屋根板材の長手方向のたわみに対する強度をより高めることができる。
【0029】
また、補強金具Dは、
図9に示すように取付固定部11にリブ13を設けてもよく、このような補強金具Dを用いることにより、屋根板材の補強効果をより高めることができる。
図9の例では、取付固定部11に屋根板材長手方向に沿って2本のリブ13が平行に形成され、そのリブ13間に形成された取付孔(図示せず)を介して、ビス7により取付固定部11と取付固定用板部4が屋根構造材Cに固定(ビス止め)されている。また、
図10は、同様の補強金具Dを用い、ビス7の頭部に装着した押え用のリング8を2つのリブ13を跨ぐように配置し、ビス7により取付固定部11と取付固定用板部4が屋根構造材Cに固定(ビス止め)されている。この
図10の実施形態は、ビス7の頭部およびリング8と取付固定部11との間に、リブ13の高さ分の隙間ができるため、結露が生じにくい利点がある。
【0030】
図11は、補強金具の他の実施形態を示すもので、
図11(a)は斜視図、
図11(b)は
図11(a)中のb−b線に沿う断面図である。この補強金具Dは、縦壁部10の上下方向に沿ってリブ14(縦リブ)を形成したものである。本実施形態では、縦壁部10の幅方向中央の1箇所にリブ14を形成したものであるが、縦壁部10の幅方向の複数箇所にリブ14(すなわち複数の縦リブ)を形成してもよい。
本実施形態のように、補強金具Dの縦壁部10の上下方向に沿ってリブ14を形成すると、屋根板材の縦壁部22がより強固に補強されることで上述した機能がより高められ、特に屋根板材の長手方向のたわみに対する強度をより高めることができる。
なお、リブ14は、
図9または
図10に示す補強金具Dの縦壁部10にも形成できることは言うまでもない。
【0031】
また、以上のような屋根構造の施工手順は、屋根板材Axの取付固定用板部4を固定手段B(ビス7など)で屋根構造材Cに固定した状態で、その連結用凸条部2xの上に、次の屋根板材Ayの連結用凸条部3yを被せ(重ね合せ)、その溝嵌合フック部31yを連結用凸条部2xの溝部23xに引っ掛けて嵌合させ、次いで、この屋根板材Ayの取付固定用板部4を固定手段B(ビス7など)で屋根構造材Cに固定する。その際、補強金具Dを屋根板材長手方向で適宜間隔(例えば、60〜90cm程度の間隔)をおいて配置し、その取付固定部11を固定手段B(ビス7など)で取付固定用板部4とともに屋根構造材Cに固定する。さらに、その連結用凸条部2yの上に、次の屋根板材Azの連結用凸条部3zを被せ(重ね合せ)、その溝嵌合フック部31zを連結用凸条部2yの溝部23yに引っ掛けて嵌合させた後、同様の固定を行う。以上を繰り返し行うことにより、隣り合う複数の屋根板材Aを順次連結しながら屋根に取付固定するものである。
【0032】
このような屋根構造の施工は、前の屋根板材A(取付固定済みの屋根板材A)の連結用凸条部2の上に、次の屋根板材Aの連結用凸条部3を被せ(重ね合せ)、その溝嵌合フック部31を連結用凸条部2の溝部23に引っ掛けて嵌合し、その取付固定用板部4を固定手段B(ビス7など)で屋根構造材Cに固定するだけでよく、特別な工具や熟練技術を要することなく、簡単に施工することができる。
【0033】
以下、本発明の屋根板材とこれを用いた屋根構造の諸性能について説明する。
(1)防水性
連結部Eでは、連結用凸条部2の溝部23が、溝開口230から深さ方向に向かって上向きに傾斜した状態に形成され、この溝部23に連結用凸条部3の溝嵌合フック部31が嵌合し、しかも、この溝嵌合フック部31は、先端側部分310が上側にU字状に折り返された形状であるため、嵌合部分から連結部E内に雨水が浸入しにくく、優れた防水性が得られる。
【0034】
また、溝部23内に、溝部23の内面と溝嵌合フック部31とで囲まれる空間部5が形成され、且つ溝嵌合フック部31は、先端側部分310が上側にU字状に折り返された形状を有するため、仮に、溝嵌合フック部31と溝部23との隙間から雨水が侵入した場合でも、侵入した雨水はすべて空間部5に入り、この空間部5が水路となって水下側に排水される。このため、雨水が空間部5を超えて湾曲状部21(連結用凸条部2)と本体部30(連結用凸条部3)との隙間に侵入することが阻止される。また、本実施形態の空間部5は十分な大きさがあるため、排水性能が高く、このため、雨水が空間部5を超えて湾曲状部21と本体部30yとの隙間に侵入することをより確実に阻止することができる。また、仮に、湾曲状部21と本体部30との隙間の一部(下部領域)に雨水が侵入したとしても、湾曲状部21と本体部30との隙間は十分高さを有しており、雨水が連結用凸条部2の頂部20を超えて取付固定用板部4側に侵入することはない。以上のように連結部Eは多重的な防水構造となっているため、雨水が屋根裏側に侵入することを確実に防止できる。
【0035】
(2)雪などの荷重に対する強度
連結部Eは、(i)全体が湾曲した凸状(本実施形態では略半円形の円弧状)であって、且つ連結用凸条部2の湾曲状部21と連結用凸条部3の湾曲状の本体部30が重なり合った構造であることにより、所定の強度が得られること、(ii)連結用凸条部2の縦壁部22が、連結用凸条部3の湾曲状の本体部30を内側から支える支持構造材として機能するとともに、屋根板材長手方向での曲げ(たわみ)に対する耐力材として機能すること、(iii)溝部23と溝嵌合フック部31による嵌合部も、屋根板材長手方向での曲げ(たわみ)に対する耐力材として機能すること、などの作用が複合的に得られることにより雪などの荷重に対して高い強度、特に屋根板材の長手方向のたわみに対する高い強度を有する。また、本実施形態のように縦リブ6を形成することにより、より高い強度(特に屋根板材の長手方向のたわみに対する強度)を得ることができる。
【0036】
さらに、補強金具Dを用いることにより屋根板材の縦壁部22が補強されるため、上記(ii)の機能が強化され、より高い強度(特に屋根板材の長手方向のたわみに対する強度)を得ることができる。また、
図11に示すような縦壁部10にリブ14を形成した補強金具Dを用いることにより縦壁部22がさらに強固に補強されるため、上記(ii)の機能がより強化され、さらに高い強度(特に屋根板材の長手方向のたわみに対する強度)を得ることができる。
また、上記のように高い強度を有することから、天井を吊り上げる効果が得られ、このため、例えば、従来構造に比べて母屋の間隔を広くして母屋の数を減らすことができるなど、材料コストの低減にも寄与できる。
【0037】
(3)風の吹き上げに対する連結強度
連結部Eは、一方の屋根板材Aの連結用凸条部2の上に、他方の屋根板材Aの連結用凸条部3を被せ(重ね合せ)、その溝嵌合フック部31を連結用凸条部2の溝部23に引っ掛けて嵌合させた構造であるため、風の吹き上げに対して高い連結強度が得られる。特に、溝部23は湾曲状部21の下部途中または下端に設けられているので、風の吹き上げに対抗して連結状態を安定して維持することができる。このため、強い風が吹き上げても連結部Eの連結が外れることがない。
【0038】
(4)施工性
先行の屋根板材Aを屋根構造材Cに取付固定した状態で、その連結用凸条部2の上に、手作業で次の屋根板材Aの連結用凸条部3を被せ、その溝嵌合フック部31を連結用凸条部2の溝部23に引っ掛けて嵌合し、この屋根板材Aの取付固定用板部4を屋根構造材Cに固定するだけでよいため、特別な工具や熟練技術を要することなく、簡単に施工ができる。
【0039】
(5)外観
連結部Eは全体が湾曲した凸状(本実施形態では略半円形の円弧状)であり、連結部E間は、必要に応じて縦リブが形成された屋根板材本体部1で構成されるので、シンプルで美麗な外観の屋根を構築することができる。また、本実施形態の連結部Eは、両側にアール部32(カーブ)とアール部24(カーブ)が形成された全体としてなだらかな円弧状であるため、特に美麗な外観の屋根を構築することができる。