(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
(1)本発明の潤滑油組成物は、(A)100℃における動粘度が2〜6mm
2/s、%CAが0.5%以下、3級炭素分が7%以上である鉱油系基油と(B)100℃における動粘度が6mm
2/s以上、160mm
2/s以下のポリ−α−オレフィン及び/又はその水素化物を基油全量基準で2〜40質量%
および(C)100℃における動粘度が2〜10mm2/sのエステル系基油を基油組成物全量基準で5〜20質量%配合してなる基油に、(D)重量平均分子量が5,000以上、200,000以下のポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤を含有することを特徴とする
100℃における動粘度が10mm2/s以下の自動車用のギヤユニット用潤滑油組成物である。
(2)また、前記潤滑油組成物において、(B)成分のポリ−α−オレフィンが、100℃における動粘度が(B−1)3.5mm
2/s以上15mm
2/s以下と(B−2)15mm
2/sを超え160mm
2/s以下の少なくとも2種類のポリ−α−オレフィン及び/又はその水素化物の混合物であることが好ましい。
(
3)また、前記(C)エステル系基油が、多価アルコールエステル系基油であることが好ましい。
(
4)また、前記潤滑油組成物において、(D)成分のポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤が、(D−1)分散型ポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤であるが好ましい。
(
5)また、前記潤滑油組成物において、(D)成分のポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤が、(D−2)一般式(1)で表わされるモノマーから誘導される構成単位を含む非分散型ポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤であることが好ましい。
【化1】
(一般式(1)において、R
1は水素又はメチル基、R
2は炭素数1〜30の炭化水素基を示す。)
【0013】
本発明の潤滑油組成物における潤滑油基油は、少なくとも(A)100℃における動粘度が2〜6mm
2/s、%CAが0.5%以下、3級炭素分が7%以上である1種以上からなる鉱油系基油と(B)100℃における動粘度が6mm
2/s以上、160mm
2/s以下のポリ−α−オレフィン及び/又はその水素化物を基油全量基準で2〜40質量%
および(C)100℃における動粘度が2〜10mm2/sのエステル系基油を基油組成物全量基準で5〜20質量%配合してなる。
【0014】
(A) 成分の潤滑油基油は100℃における動粘度が、2mm
2/s以上であることが必要であり、好ましくは2.5mm
2/s以上、さらに好ましくは3mm
2/s以上である。また6mm
2/s以下であることが必要であり、好ましくは5.5mm
2/s以下、より好ましくは5mm
2/s以下、さらに好ましくは4.5mm
2/s以下である。
(A)成分の潤滑油基油の100℃における動粘度が2mm
2/s未満の場合は、極圧性やベアリングの疲労寿命が著しく低下することにより装置の信頼性が低下するため好ましくない。一方、6mm
2/sを超えると粘度増加により省エネ性が低下する。
【0015】
(A)成分の潤滑油基油の%CAは0.5%以下であることが必要であり、0.3%以下であることが好ましく、0.2%以下であることがより好ましい。(A)成分の潤滑油基油の%CAを0.5%以下とすることで、酸化安定性に優れた組成物を得ることができる。
なお、本発明でいう%CAとは、ASTM D 3238−85に準拠した方法(n−d−M環分析)により求められる芳香族炭素数の全炭素数に対する百分率を意味する。
【0016】
(A)成分の潤滑油基油の%CNは15%以下であることが好ましく、12%以下であることがより好ましく、10%以下であることがさらに好ましく、9%以下であることがよりさらに好ましく、8%以下であることが最も好ましい。また3%以上であることが好ましく、4%以上であることがより好ましく、5%以上であることがさらに好ましく、6%以上であることがより特に好ましく、7%以上であることが最も好ましい。
(A)成分の潤滑油基油の%CNが3%未満の場合、金属疲労寿命が十分ではなく、また15%を超えると酸化安定性や粘度指数が低下する。
なお、本発明でいう%CNとは、ASTM D 3238−85に準拠した方法(n−d−M環分析)により求められるナフテン環構造を構成する炭素数の全炭素数に対する百分率を意味する。
【0017】
(A) 成分の潤滑油基油の3級炭素分は7%以上であることが必要である。ここで、3級炭素分とは、構成炭素の全量に占める3級炭素の割合のことであり、
13C−NMRにより測定される、全炭素の積分強度の合計に対する3級炭素(>CH−)の炭素原子に起因するシグナルの積分強度の合計の割合を意味する。
なお、本発明では、
13C−NMRの測定の際に、サンプルとして試料0.5gに重クロロホルム3gを加えて希釈したものを使用し、測定温度を室温、共鳴周波数を100MHzとした。また、測定法はゲート付でカップリング法を使用した。ただし、同等の結果が得られるのであればその他の方法を用いてもよい。
【0018】
上記分析により、(a)化学シフト約10−50ppmの積分強度の合計(炭化水素の全炭素に起因する積分強度の合計)、及び(b)化学シフト約27.9−28.1ppm、28.4−28.6ppm、32.6−33.2ppm、34.4−34.6ppm、37.4−37.6ppm、38.8−39.1ppm、及び、40.4−40.6ppmの積分強度の合計(メチル基、エチル基及びその他分岐基がついた3級炭素及びナフテン3級炭素に起因する積分強度の合計)をそれぞれ測定し、(a)100%とした時の(b)の割合(%)を算出した。(b)の割合は基油を構成する全炭素原子に対する全3級炭素原子の割合を示す。
【0019】
本発明においては、潤滑油基油の構成炭素の全量に占める3級炭素の割合は7%以上であることが必要であり、好ましくは7.3%以上、より好ましくは7.6%以上、さらに好ましくは8%以上である。また10%以下であることが好ましく、より好ましくは9.5%以下であり、さらに好ましくは9%以下である。3級炭素の割合が7%未満の場合には、分子内分岐の量が十分ではなく、低温時の粘度増加が大きくなり、また10%を超えると、分岐が多すぎ、粘度指数が低くなるため好ましくない。
【0020】
(A)成分は、上記性状を有する限りにおいてその製造法に特に制限はないが、具体的には、以下に示す基油(1)〜(8)を原料とし、この原料油及び/又はこの原料油から回収された潤滑油留分を、所定の精製方法によって精製し、潤滑油留分を回収することによって得られる基油を挙げることができる。
(1)パラフィン基系原油及び/又は混合基系原油の常圧蒸留による留出油
(2)パラフィン基系原油及び/又は混合基系原油の常圧蒸留残渣油の減圧蒸留による留出油(WVGO)
(3)潤滑油脱ろう工程により得られるワックス(スラックワックス等)及び/又はガストゥリキッド(GTL)プロセス等により得られる合成ワックス(フィッシャートロプシュワックス、GTLワックス等)
(4)基油(1)〜(3)から選ばれる1種又は2種以上の混合油及び/又は当該混合油のマイルドハイドロクラッキング処理油
(5)基油(1)〜(4)から選ばれる2種以上の混合油
(6)基油(1)、(2)、(3)、(4)又は(5)の脱れき油(DAO)
(7)基油(6)のマイルドハイドロクラッキング処理油(MHC)
(8)基油(1)〜(7)から選ばれる2種以上の混合油
【0021】
なお、上記所定の精製方法としては、水素化分解、水素化仕上げなどの水素化精製;フルフラール溶剤抽出などの溶剤精製;溶剤脱ろうや接触脱ろうなどの脱ろう;酸性白土や活性白土などによる白土精製;硫酸洗浄、苛性ソーダ洗浄などの薬品(酸又はアルカリ)洗浄などが好ましい。本発明では、これらの精製方法のうちの1種を単独で行ってもよく、2種以上を組み合わせて行ってもよい。また、2種以上の精製方法を組み合わせる場合、その順序は特に制限されず、適宜選定することができる。
【0022】
更に、本発明にかかる潤滑油基油としては、上記基油(3)から選ばれる基油又は当該基油から回収された潤滑油留分について所定の処理を行うことにより得られる下記基油(9)又は(10)が特に好ましい。
(9)上記基油(1)〜(8)から選ばれる基油又は当該基油から回収された潤滑油留分を水素化分解し、その生成物又はその生成物から蒸留等により回収される潤滑油留分について溶剤脱ろうや接触脱ろうなどの脱ろう処理を行い、または当該脱ろう処理をした後に蒸留することによって得られる水素化分解鉱油
(10)上記基油(1)〜(8)から選ばれる基油又は当該基油から回収された潤滑油留分を水素化異性化し、その生成物又はその生成物から蒸留等により回収される潤滑油留分について溶剤脱ろうや接触脱ろうなどの脱ろう処理を行い、または、当該脱ろう処理をしたあとに蒸留することによって得られる水素化異性化鉱油
【0023】
上記(9)又は(10)の潤滑油基油を得るに際して、脱ろう工程としては、熱・酸化安定性と低温粘度特性をより高めることができ、潤滑油組成物の疲労防止性能をより高めることができる点で、接触脱ろう工程を含むことが特に好ましい。
また、上記(9)又は(10)の潤滑油基油を得るに際して、必要に応じて溶剤精製処理及び/又は水素化仕上げ処理工程を更に設けてもよい。
【0024】
また、接触脱ろう(触媒脱ろう)の場合は、水素化分解・異性化生成油を、適当な脱ろう触媒の存在下、流動点を下げるのに有効な条件で水素と反応させる。接触脱ろうでは、分解/異性化生成物中の高沸点物質の一部を低沸点物質へと転化させ、その低沸点物質をより重い基油留分から分離し、基油留分を分留し、2種以上の潤滑油基油を得る。低沸点物質の分離は、目的の潤滑油基油を得る前に、あるいは分留中に行うことができる。
【0025】
脱ろう触媒としては、分解/異性化生成油の流動点を低下させることが可能なものであれば特に制限されないが、分解/異性化生成油から高収率で目的の潤滑油基油を得ることができるものが好ましい。このような脱ろう触媒としては、形状選択的分子篩(モレキュラーシーブ)が好ましく、具体的には、フェリエライト、モルデナイト、ZSM−5、ZSM−11、ZSM−23、ZSM−35、ZSM−22(シータワン又はTONとも呼ばれる)、シリコアルミノホスフェート類(SAPO)などが挙げられる。これらのモレキュラーシーブは、触媒金属成分と組み合わせて使用することが好ましく、貴金属と組み合わせることがより好ましい。好ましい組合せとしては、例えば白金とH−モルデナイトとを複合化したものが挙げられる。
【0026】
脱ろう条件は特に制限されないが、温度は200〜500℃が好ましく、水素圧は10〜200バール(1MPa〜20MPa)がそれぞれ好ましい。また、フロースルー反応器の場合、H2処理速度は0.1〜10kg/l/hrが好ましく、LHSVは0.1〜10h
−1が好ましく、0.2〜2.0h
−1がより好ましい。また、脱ろうは、分解/異性化生成油に含まれる、通常40質量%以下、好ましくは30質量%以下の、初留点が350〜400℃である物質をこの初留点未満の沸点を有する物質へと転換するように行うことが好ましい。
【0027】
また、接触脱ろう(触媒脱ろう)の場合は、水素化分解・異性化生成油を、適当な脱ろう触媒の存在下、流動点を下げるのに有効な条件で水素と反応させる。接触脱ろうでは、分解/異性化生成物中の高沸点物質の一部を低沸点物質へと転化させ、その低沸点物質をより重い基油留分から分離し、基油留分を分留し、2種以上の潤滑油基油を得る。低沸点物質の分離は、目的の潤滑油基油を得る前に、あるいは分留中に行うことができる。
【0028】
(A) 成分の鉱油系潤滑油基油としては、100℃における動粘度、%CAおよび3級炭素分が上述の要件を具備する限り特に限定されるものではないが、水素化分解鉱油系基油が好ましい。また、石油系あるいはフィッシャートロピッシュ合成油等のワックスを50質量%以上含む原料を異性化して得られるワックス異性化イソパラフィン系基油も好ましく用いられる。これらは、単独でも任意に混合して使用することができるが、ワックス異性化基油を単独で使用することが好ましい。
【0029】
(A)成分の潤滑油基油の粘度指数については格別の限定はないが、100以上であることが好ましく、より好ましくは120以上、さらに好ましくは130以上、特に好ましくは140以上であり、通常200以下、好ましくは160以下である。粘度指数を100以上とすることによって、低温から高温にわたり良好な粘度特性を示す組成物を得ることができる。一方、粘度指数が高すぎると疲労寿命に対して効果が小さい。
【0030】
(A)成分のアニリン点については特に制限はないが、低温粘度特性と疲労寿命に優れる潤滑油組成物を得ることができる点で90℃以上であることが好ましく、より好ましくは100℃以上、さらに好ましくは110℃以上であり、特に好ましくは115℃以上である。また、その上限については特に制限はなく、本発明の1つの態様として130℃以上でもよいが、添加剤やスラッジの溶解性により優れ、シール材への適合性により優れる点で好ましくは125℃以下である。
【0031】
また、(A)成分の潤滑油基油の硫黄含有量については格別の限定はないが、0.05質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以下であることがより好ましく、0.005質量%以下であることがさらに好ましい。(A)成分の硫黄含有量を低減することで酸化安定性により優れた組成物を得ることができる。
【0032】
基油中の(A)成分の含有量は、基油組成物全量基準で、40質量%以上であることが好ましく、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上であり、また好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下である。
上記範囲より少ないと、本成分による粘度温度特性が十分発揮されないし、多すぎると後述する(B)成分の量が少なくなり、(B)成分との組合せによる疲労寿命ならびに低温粘度特性効果が低下する。
【0033】
本発明の潤滑油組成物における(B)成分の潤滑油基油は、100℃における動粘度が6mm
2/s以上160mm
2/s以下であるポリ−α−オレフィン及び/又はその水素化である。
【0034】
(B)成分のポリ−α−オレフィンとしては、典型的には、炭素数2〜32、好ましくは6〜16、特に好ましくは8〜12のα−オレフィンのオリゴマーまたはコオリゴマーが好ましい。
【0035】
ポリ−α−オレフィンの製法は特に制限されないが、例えば、三塩化アルミニウムまたは三フッ化ホウ素と、水、アルコール(エタノール、プロパノール、ブタノール等)、カルボン酸またはエステルとの錯体、チーグラーナッタ系あるいはメタロセン触媒のような重合触媒の存在下、α−オレフィンを重合する方法が挙げられる。
【0036】
(B)成分のポリ−α−オレフィンは、100℃における動粘度が(B−1)3.5mm
2/s以上15mm
2/s以下と、(B−2)15mm
2/sを超え160mm
2/s以下の少なくとも2種類のポリ−α−オレフィン及び/又はその水素化物である混合物であることが好ましい。
【0037】
(B−1)成分のポリ−α−オレフィンの100℃における動粘度は4mm
2/s以上であることが好ましく、5mm
2/s以上であることがより好ましく、7mm
2/s以上であることがさらに好ましく、9mm
2/s以上であることが最も好ましい。また、13mm
2/s以下であることが好ましく、11mm
2/s以下であることがより好ましい。100℃における動粘度が3.5〜15mm
2/sのポリ−α−オレフィンを配合することによりベアリング疲労寿命、ギヤの疲労寿命が著しく向上するばかりでなく、低温時の流動性が大幅に改善される。
【0038】
(B−2)成分のポリ−α−オレフィンの100℃における動粘度は20mm
2/s以上であることが好ましく、30mm
2/s以上であることがより好ましく、35mm
2/s以上であることがさらに好ましい。また、120mm
2/s以下であることが好ましく、80mm
2/s以下であることがより好ましく、60mm
2/s以下であることがさらに好ましい。100℃における動粘度が15mm
2/sを超え160mm
2/s以下のポリ−α−オレフィンを配合することによりベアリング疲労寿命、ギヤの疲労寿命が著しく向上するばかりでなく、組成物の粘度指数が大幅に向上する。
【0039】
また、本発明において(B)成分のポリ−α−オレフィンの含有量は基油組成物全量基準で2〜40質量%であるが、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。一方、シール材適合性の観点から、35質量%以下とすることが好ましく、30質量%以下とすることがより好ましい。
【0040】
また、本発明において(B−1)成分のポリ−α−オレフィンの含有量は特に制限はないが、基油全量基準で3質量%以上であることが好ましく、7質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましい。一方、シール材適合性の観点から、20質量%以下とすることが好ましく、15質量%以下がより好ましい。
【0041】
また、本発明において(B−2)成分のポリ−α−オレフィンの含有量は特に制限はないが、基油全量基準で5質量%以上であることが好ましく、7質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましい。一方、シール材適合性の観点から、20質量%以下とすることが好ましく、15質量%以下がより好ましい。
【0042】
また、本発明において、低温粘度特性の観点から、(B−1)成分と(B−2)成分の質量比((B−1)/(B−2))が0.1以上であることが好ましく、0.2以上であることがより好ましく、0.3以上であることがさらに好ましい。また粘度指数の観点から1.2以下とすることが好ましく、1.0以下がより好ましく、0.8以下がさらに好ましい。
【0043】
本発明の潤滑油組成物においては、基油として前記(A)成分および(B)成分に加え、さらに(C)成分として100℃における動粘度が2〜10mm
2/sのエステル系基油を配合することが好ましい。
【0044】
ここでいうエステルは有機酸エステルであり、具体的には、以下に示す1価アルコール類又は多価アルコールと1塩基酸又は多塩基酸とのエステル等が例示される。
(a)1価アルコールと1塩基酸とのエステル
(b)多価アルコールと1塩基酸とのエステル
(c)1価アルコールと多塩基酸とのエステル
(d)多価アルコールと多塩基酸とのエステル
(e)1価アルコール及び多価アルコールとの混合物と、多塩基酸との混合エステル
(f)多価アルコールと、1塩基酸及び多塩基酸の混合物との混合エステル
(g)1価アルコール及び多価アルコールとの混合物と、1塩基酸及び多塩基酸の混合物との混合エステル
【0045】
上記1価アルコール又は多価アルコールとしては、炭素数1〜30、好ましくは炭素数4〜20、より好ましくは炭素数6〜18の炭化水素基を有する1価アルコール又は多価アルコール類が挙げられる。
また、上記1塩基酸又は多塩基酸としては、炭素数1〜30、好ましくは炭素数4〜20、より好ましくは炭素数6〜18の炭化水素基を有する1塩基酸又は多塩基酸類が挙げられる。
ここでいう炭素数1〜30の炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アルキルシクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基等の炭化水素基が挙げられる。
【0046】
アルキル基としては、好ましくは炭素数4〜20のアルキル基、特に好ましくは炭素数6〜18のアルキル基である。アルケニル基としては、好ましくは炭素数4〜20のアルケニル基、特に好ましくは炭素数6〜18のアルケニル基である。
【0047】
また、上記1価アルコール類としては、炭素数1〜30の1価アルキルアルコール類(これらアルキル基は直鎖状であっても分枝状であっても良い。);エテノール、プロペノール、ブテノール、ヘキセノール、オクテノール、デセノール、ドデセノール、オクタデセノール(オレイルアルコール等)等炭素数2〜40の1価アルケニルアルコール類(これらアルケニル基は直鎖状であっても分枝状であっても良く、また、二重結合の位置も任意である。)等及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0048】
上記多価アルコール類としては、炭素数2〜30の2価のアルキル又はアルケニルジオール類(これらアルキル基又はアルケニル基は直鎖状でも分枝状でも良く、アルケニル基の二重結合の位置は任意であり、ヒドロキシル基の置換位置も任意である。);グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン等のトリメチロールアルカン、エリスリトール、ペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,3,5−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3,4−ブタンテトロール、ソルビトール、アドニトール、アラビトール、キシリトール、マンニトール等、及びこれらの重合体又は縮合物(例えば、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン等のグリセリンの2〜8量体等、ジトリメチロールプロパン等のトリメチロールプロパンの2〜8量体等、ジペンタエリスリトール等のペンタエリスリトールの2〜4量体等、ソルビタン、ソルビトールグリセリン縮合物等の縮合化合物(分子内縮合化合物、分子間縮合化合物又は自己縮合化合物))等が挙げられる。
【0049】
また、上記アルコール類は、炭素数2〜6、好ましくは炭素数2〜4のアルキレンオキサイドあるいはその重合体又は共重合体を付加させ、アルコール類のヒドロキシル基をハイドロカルビルエーテル化又はハイドロカルビルエステル化したものを用いても良い。炭素数2〜6のアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2−エポキシブタン(α−ブチレンオキサイド)、2,3−エポキシブタン(β−ブチレンオキサイド)、1,2−エポキシ−1−メチルプロパン、1,2−エポキシヘプタン、1,2−エポキシヘキサン等が挙げられる。これらの中では、低摩擦性に優れる点から、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドが好ましく、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドがより好ましい。なお、2種以上のアルキレンオキサイドを用いた場合には、オキシアルキレン基の重合形式に特に制限はなく、ランダム共重合していても、ブロック共重合していてもよい。また、ヒドロキシル基を2〜6個有する多価アルコールにアルキレンオキサイドを付加させる際、全てのヒドロキシル基に付加させてもよいし、一部のヒドロキシル基のみに付加させてもよい。
【0050】
また、上記1塩基酸としては、炭素数1〜30の炭化水素基を有する脂肪酸が用いられ、その脂肪酸は直鎖のものでも分岐のものでもよく、また飽和のものでも不飽和のものでもよい。具体的には、例えば、酢酸、プロピオン酸、直鎖状又は分岐状のブタン酸、直鎖状又は分岐状のペンタン酸、直鎖状又は分岐状のヘキサン酸、直鎖状又は分岐状のヘプタン酸、直鎖状又は分岐状のオクタン酸、直鎖状又は分岐状のノナン酸、直鎖状又は分岐状のデカン酸、直鎖状又は分岐状のウンデカン酸、直鎖状又は分岐状のドデカン酸、直鎖状又は分岐状のトリデカン酸、直鎖状又は分岐状のテトラデカン酸、直鎖状又は分岐状のペンタデカン酸、直鎖状又は分岐状のヘキサデカン酸、直鎖状又は分岐状のヘプタデカン酸、直鎖状又は分岐状のオクタデカン酸、直鎖状又は分岐状のヒドロキシオクタデカン酸、直鎖状又は分岐状のノナデカン酸、直鎖状又は分岐状のイコサン酸、直鎖状又は分岐状のヘンイコサン酸、直鎖状又は分岐状のドコサン酸、直鎖状又は分岐状のトリコサン酸、直鎖状又は分岐状のテトラコサン酸等の飽和脂肪酸、アクリル酸、直鎖状又は分岐状のブテン酸、直鎖状又は分岐状のペンテン酸、直鎖状又は分岐状のヘキセン酸、直鎖状又は分岐状のヘプテン酸、直鎖状又は分岐状のオクテン酸、直鎖状又は分岐状のノネン酸、直鎖状又は分岐状のデセン酸、直鎖状又は分岐状のウンデセン酸、直鎖状又は分岐状のドデセン酸、直鎖状又は分岐状のトリデセン酸、直鎖状又は分岐状のテトラデセン酸、直鎖状又は分岐状のペンタデセン酸、直鎖状又は分岐状のヘキサデセン酸、直鎖状又は分岐状のヘプタデセン酸、直鎖状又は分岐状のオクタデセン酸、直鎖状又は分岐状のヒドロキシオクタデセン酸、直鎖状又は分岐状のノナデセン酸、直鎖状又は分岐状のイコセン酸、直鎖状又は分岐状のヘンイコセン酸、直鎖状又は分岐状のドコセン酸、直鎖状又は分岐状のトリコセン酸、直鎖状又は分岐状のテトラコセン酸等の不飽和脂肪酸、及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0051】
また、上記多塩基酸としては、炭素数2〜30の飽和又は不飽和脂肪族ジカルボン酸(これら飽和脂肪族又は不飽和脂肪族は直鎖状でも分枝状でもよく、また不飽和結合の位置も任意である。);プロパントリカルボン酸、ブタントリカルボン酸、ペンタントリカルボン酸、ヘキサントリカルボン酸、ヘプタントリカルボン酸、オクタントリカルボン酸、ノナントリカルボン酸、デカントリカルボン酸等の飽和又は不飽和脂肪族トリカルボン酸(これら飽和脂肪族又は不飽和脂肪族は直鎖状でも分枝状でもよく、また不飽和結合の位置も任意である。);飽和又は不飽和脂肪族テトラカルボン酸(これら飽和脂肪族又は不飽和脂肪族は直鎖状でも分枝状でもよく、また不飽和結合の位置も任意である。)等が挙げられる。
【0052】
本発明における(C)成分のエステル系基油としては、上記規定を満たす1種又は2種以上のエステル系基油を混合して用いることができ、また、混合物が上記規定を満たす限り、上記規定を満たす1種又は2種以上のエステル系基油と上記規定を満たさないエステル系基油を混合して用いても良い。
【0053】
本発明における(C)エステル系基油としては多価アルコールエステル系基油が好ましく、具体的にはトリメチロールプロパン、トリメチロールブタン等のトリメチロールアルカン、エリスリトール、ペンタエリスリトールと、炭素数6〜18、好ましくは炭素数12〜18の1価の飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸(これら脂肪酸は、直鎖状でも分枝状でもよく、二重結合位置は任意である。)と多価脂肪族アルコールとのエステルから選ばれることが特に好ましい。
【0054】
(C)成分のエステル系基油の100℃における動粘度は2〜10mm
2/sであることが好ましく、3〜8mm
2/sであることがより好ましい。100℃における動粘度が2〜10mm
2/sのエステル系基油を配合することによりベアリング疲労寿命、ギヤの疲労寿命が著しく向上する。
【0055】
なお、本発明において、前記(B)成分および(C)成分の他には、100℃における動粘度が6mm
2/sを超え10mm
2/s未満の基油を含まないことが好ましい。この基油を含むと疲労寿命が低下する傾向にあるためである。
【0056】
(C)成分のエステル系基油の流動点については特に制限はないが、好ましくは−20℃以下であり、より好ましくは−30℃以下、特に好ましくは−40℃以下である。流動点を−20℃以下とすることで、低温領域における低摩擦性にも優れ、始動性あるいは始動直後の省燃費性能にも優れた組成物を得ることができる。
【0057】
また、本発明において(C)成分のエステル系基油の含有量は特に制限はないが、基油全量基準で5質量%以上であることが好ましく、7質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましい。一方、シール材膨潤性能の観点から、20質量%以下とすることが好ましく、15質量%以下とすることがより好ましい。
【0058】
本発明の潤滑油組成物における潤滑油基油は、100℃における動粘度が3mm
2/s以上、好ましくは4mm
2/s以上、さらに好ましくは5mm
2/s以上、また8mm
2/s以下、好ましくは7mm
2/s以下、さらに好ましくは6.5mm
2/s以下に調整してなる潤滑油基油であることが好ましい。
基油の粘度は疲労寿命に大きく影響し、高いほうが、基本的に寿命が長くなるが、低温粘度が悪化するため適正な粘度範囲が存在する。
【0059】
本発明の潤滑油組成物は、(D)重量平均分子量が5,000以上、200,000以下のポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤を含有する。
【0060】
本発明における(D)成分としては、下記一般式(1)で表される構造単位を有するポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤である。
【0062】
一般式(1)において、R
1は水素又はメチル基、好ましくはメチル基、R
2は炭素数1から30の炭化水素基である。なお、ポリ(メタ)アクリレートの構造単位には、R
2の炭素数が20以上の構造単位が1モル%以上含まれることが好ましい。
【0063】
上記ポリ(メタ)アクリレートの製造法は任意であるが、例えば、ベンゾイルパーオキシド等の重合開始剤の存在下で、後述するモノマーの混合物を適当な炭化水素系溶剤中、たとえばベンゼンやトルエン等の芳香族溶剤でもよいし、単純な石油系溶剤、例えば潤滑油基油等の溶液中で、ラジカル溶液重合させることにより容易に得ることができる。
【0064】
(D)成分のポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤の重量平均分子量(M
W)は5,000以上、200,000以下である。より好ましくは10,000以上であり、さらに好ましくは20,000以上であり、また、200,000以下であるが、好ましくは100,000以下、より好ましくは70,000以下であり、さらに好ましくは50,000以下である。
重量平均分子量が5,000未満の場合には粘度温度特性の向上効果や粘度指数向上効果が小さく、重量平均分子量が200,0000を超える場合にはせん断安定性や基油への溶解性、貯蔵安定性が悪くなるおそれがある。
【0065】
なお、ここでいう重量平均分子量は、ウォーターズ社製150−C
ALC/GPC装置に東ソー社製のGMHHR−M(7.8mmID×30cm)のカラムを2本直列に使用し、溶媒としてはテトラヒドロフラン、温度23℃、流速1mL/分、試料濃度1質量%、試料注入量75μL、検出器示差屈折率計(RI)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を意味する。
【0066】
本発明の潤滑油組成物における(D)粘度指数向上剤の含有量は、組成物全量基準で1質量%以上であるが、好ましくは2質量%以上、また20質量%以下であることが好ましく、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、最も好ましくは8質量%以下である。
(D)粘度指数向上剤の含有量が1質量%より少なくなると、粘度指数向上効果や製品粘度の低減効果が小さくなることから、省燃費性の向上が図れなくなるおそれがある。また、20質量%よりも多くなると、製品コストが大幅に上昇すると共に、基油粘度を低下させる必要が出てくることから、厳しい潤滑条件(高温高せん断条件)における潤滑性能を低下させ、摩耗や焼き付き、疲労破壊等の不具合が発生原因となる。
【0067】
本発明の潤滑油組成物は、(D)成分のポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤が、(D−1)分散型ポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤であることが好ましい。
【0068】
本発明における(D−1)分散型ポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤は、下記一般式(2)および/または(3)で表されるモノマーから誘導される構造単位を含む。
【0070】
一般式(2)において、R
3は水素又はメチル基、好ましくはメチル基、R
4は炭素数1〜30のアルキレン基、E
1は窒素原子を1〜2個、酸素原子を0〜2個含有するアミン残基又は複素環残基を示し、aは0又は1の整数を示す。
【0072】
一般式(3)において、R
5は水素又はメチル基である。E
2は窒素原子を1〜2個、酸素原子を0〜2個含有するアミン残基又は複素環残基を示す。
【0073】
E
1およびE
2で表される基としては、具体的には、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、アニリノ基、トルイジノ基、キシリジノ基、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、モルホリノ基、ピロリル基、ピロリノ基、ピリジル基、メチルピリジル基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、キノニル基、ピロリドニル基、ピロリドノ基、イミダゾリノ基、およびピラジノ基等が例示できる。
【0074】
この好ましい例としては、具体的には、ジメチルアミノメチルメタクリレート、ジエチルアミノメチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、2−メチル−5−ビニルピリジン、モルホリノメチルメタクリレート、モルホリノエチルメタクリレート、N−ビニルピロリドン及びこれらの混合物等が例示できる。
【0075】
(D−1)分散型ポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤は、具体的には、下記(D−1a)〜(D−1d)からなる一般式(1)のモノマーと、一般式(2)および/または(3)で表される(D−1e)の極性基含有モノマーとの共重合体である。
(D−1a)R
2が炭素数1〜4のアルキル基である(メタ)アクリレート
(D−1b)R
2が炭素数5〜10のアルキル基である(メタ)アクリレート
(D−1c)R
2が炭素数11〜19のアルキル基である(メタ)アクリレート
(D−1d)R
2が炭素数20以上のアルキル基である(メタ)アクリレート
(D−1e)極性基含有モノマー
【0076】
本発明においては、粘度指数向上剤(D−1)成分におけるモノマーの構成比としては、ポリ(メタ)アクリレートを構成するモノマー全量基準で、以下の通りであることが好ましい。
(D−1a)成分:好ましくは25mol%以上、より好ましくは45mol%以上、更に好ましくは65mol%以上、好ましくは95mol%以下、より好ましくは90mol%以下、さらに好ましくは85mol%以下。
(D−1b)成分:好ましくは0mol%以上、好ましくは50mol%以下、より好ましくは20mol%以下。
(D−1c)成分:好ましくは0mol%以上、より好ましくは5mol%以上、更に好ましくは10mol%以上、好ましくは60mol%以下、より好ましくは45mol%以下、さらに好ましくは30mol%以下。
(D−1d)成分:好ましくは1mol%以上、より好ましくは3mol%以上、更に好ましくは5mol%以上、好ましくは55mol%以下、より好ましくは35mol%以下、さらに好ましくは15mol%以下。
(D−1e)成分:0.1mol%以上、好ましくは0.3mol%以上、より好ましくは0.5mol%以上、さらに好ましくは1mol%以上、最も好ましくは2mol%以上、好ましくは20mol%以下、より好ましくは10mol%以下、さらに好ましくは5mol%以下。
【0077】
この組成にすることにより、低温粘度特性と疲労寿命に有効なポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤とすることができる。
【0078】
本発明の潤滑油組成物は、(D)成分のポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤が、(D−2)一般式(1)で表わされるモノマーから誘導される構成単位を含む非分散型ポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤であることが好ましい。
【0079】
(D−2)非分散型ポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤は、具体的には、下記(D−2a)〜(D−2c)からなる一般式(1)である(D−2d)のモノマーとの共重合体である。
(D−2a)R
2が炭素数1〜4のアルキル基である(メタ)アクリレート
(D−2b)R
2が炭素数5〜10のアルキル基である(メタ)アクリレート
(D−2c)R
2が炭素数11〜19のアルキル基である(メタ)アクリレート
(D−2d)R
2が炭素数20以上のアルキル基である(メタ)アクリレート
【0080】
本発明においては、粘度指数向上剤(D−2)成分におけるモノマーの構成比としては、ポリ(メタ)アクリレートを構成するモノマー全量基準で、以下の通りであることが好ましい。
(D−2a)成分:好ましくは25mol%以上、より好ましくは45mol%以上、更に好ましくは65mol%以上、好ましくは95mol%以下、より好ましくは90mol%以下、更に好ましくは85mol%以下。
(D−2b)成分:好ましくは0mol%以上、好ましくは50mol%以下、より好ましくは20mol%以下。
(D−2c)成分:好ましくは0mol%以上、より好ましくは5mol%以上、更に好ましくは10mol%以上、好ましくは60mol%以下、より好ましくは45mol%以下、更に好ましくは30mol%以下。
(D−2d)成分:好ましくは0.1mol%以上、より好ましくは0.5mol%以上、更に好ましくは1mol%以上、特に好ましくは2mol%以上、最も好ましくは4mol%以上、好ましくは50mol%以下、より好ましくは35mol%以下、更に好ましくは20mol%以下、特に好ましくは15mol%以下。
【0081】
この組成にすることにより、低温粘度特性と疲労寿命に有効なポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤とすることができる。
【0082】
なお本発明においては(D−1)成分と(D−2)成分を混合して用いることもできる。ただし、(D−1)成分あるいは(D−2)成分を単独で使用したほうが疲労寿命延長にはより効果的であり、(D−1)成分を単独で使用することがより好ましい。
【0083】
本発明の潤滑油組成物は、粘度指数向上剤としては、前記した粘度指数向上剤に加えて、他の粘度指数向上剤を含有することができる。例えば、前記以外の非分散型または分散型ポリ(メタ)アクリレート、非分散型または分散型エチレン−α−オレフィン共重合体またはその水素化物、ポリイソブチレンまたはその水素化物、スチレン−ジエン水素化共重合体を、スチレン−無水マレイン酸エステル共重合体およびポリアルキルスチレン等である。
【0084】
また本発明の潤滑油組成物は、粘度指数向上剤は別に(D−3)ポリ(メタ)アクリレート系の流動点降下剤を添加することが好ましい。この構造は(D−2)成分と基本的には同じであるが、(D−2d)成分を含まず、その分(D−2c)成分が多い組成である。
(D−3)ポリ(メタ)アクリレート系の流動点降下剤の重量平均分子量は、50,000以上、200,000以下が好ましい。50,000未満では流動点降下性に乏しく、200,000を超えると剪断安定が低下するため好ましくない。
(D−3)ポリ(メタ)アクリレート系の流動点降下剤の添加量は、組成物全量基準で0.05質量%以上、5%質量以下が好ましい。0.1質量%以上がより好ましく、3%質量以下がより好ましい。0.05質量%未満では流動点降下性に乏しく、5質量%を超えると剪断による粘度低下が大きく、好ましくない。
【0085】
本発明の潤滑油組成物は、(E)ジアルキルジチオリン酸亜鉛(以下(E)成分という。)を含有すること好ましい。ジアルキルジチオリン酸亜鉛としては次の一般式(4)で表される化合物が挙げられる。
【0087】
上記一般式(4)中、R
1、R
2、R
3およびR
4は、別個に、炭素数1〜18の炭化水素基を示し、そうした炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、直鎖または分枝のペンチル基、直鎖または分枝のヘキシル基、直鎖または分枝のヘプチル基、直鎖または分枝のオクチル基、直鎖または分枝のノニル基、直鎖または分枝のデシル基、直鎖または分枝のウンデシル基、直鎖または分枝のドデシル基、直鎖または分枝のトリデシル基、直鎖または分枝のテトラデシル基、直鎖または分枝のペンタデシル基、直鎖または分枝のヘキサデシル基、直鎖または分枝のヘプタデシル基、直鎖または分枝のオクタデシル基などの炭素数1〜18のアルキル基である。
【0088】
(E)成分のジアルキルジチオリン酸亜鉛として特に好ましい具体例を例示すると、例えば、ジイソプロピルジチオリン酸亜鉛、ジイソブチルジチオリン酸亜鉛、ジ−sec−ブチルジチオリン酸亜鉛、ジ−sec−ペンチルジチオリン酸亜鉛、ジ−n−ヘキシルジチオリン酸亜鉛、ジ−sec−ヘキシルジチオリン酸亜鉛、ジ−n−オクチルジチオリン酸亜鉛、ジ−2−エチルヘキシルジチオリン酸亜鉛、ジ−n−デシルジチオリン酸亜鉛、ジ−n−ドデシルジチオリン酸亜鉛、ジイソトリデシルジチオリン酸亜鉛、およびこれらの混合物などを挙げることができる。これらの中でもジ−sec−ブチルジチオリン酸亜鉛、ジ−sec−ペンチルジチオリン酸亜鉛、ジ−sec−ヘキシルジチオリン酸亜鉛等のジ−sec−アルキルジチオリン酸亜鉛が好ましい。
【0089】
本発明の潤滑油組成物における(E)成分の含有量は、潤滑油組成物全量基準で、亜鉛金属量として、その下限値が0.02質量%以上、好ましくは0.1質量%以上であり、一方、その上限値は0.5質量%以下、好ましくは0.4質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下である。(E)成分の含有量が0.02質量%未満の場合は、際だった寿命延長効果や耐摩耗性が得られず、0.5質量%を超える場合は、酸化安定性に悪影響を与えるため、それぞれ好ましくない。
【0090】
本発明の潤滑油組成物は、(F)塩基価が100mgKOH/g以上のアルカリ土類金属系清浄剤(以下(F)成分という。)を含有することが好ましい。かかるアルカリ土類金属系清浄剤としては、例えば、アルカリ土類金属スルホネート、アルカリ土類金属フェネート、アルカリ土類金属サリシレート、アルカリ土類金属ホスホネート、あるいはこれらの混合物等が挙げられる。
【0091】
アルカリ土類金属スルホネートとしては、より具体的には、例えば分子量100〜1500、好ましくは200〜700のアルキル芳香族化合物をスルホン化することによって得られるアルキル芳香族スルホン酸のアルカリ土類金属塩、特にマグネシウム塩及び/又はカルシウム塩が好ましく用いられ、アルキル芳香族スルホン酸としては、いわゆる石油スルホン酸や合成スルホン酸等が挙げられる。
【0092】
石油スルホン酸としては、一般に鉱油の潤滑油留分のアルキル芳香族化合物をスルホン化したものやホワイトオイル製造時に副生する、いわゆるマホガニー酸等が用いられる。また合成スルホン酸としては、例えば洗剤の原料となるアルキルベンゼン製造プラントや、ポリオレフィンをベンゼンにアルキル化することにより得られる、直鎖状や分枝状のアルキル基を有するアルキルベンゼンを原料とし、これをスルホン化したもの、あるいはジノニルナフタレンをスルホン化したもの等が用いられる。またこれらアルキル芳香族化合物をスルホン化する際のスルホン化剤としては特に制限はないが、通常発煙硫酸や硫酸が用いられる。
【0093】
アルカリ土類金属フェネートとしては、より具体的には、炭素数4〜30、好ましくは6〜18の直鎖状又は分枝状のアルキル基を少なくとも1個有するアルキルフェノール、このアルキルフェノールと元素硫黄を反応させて得られるアルキルフェノールサルファイド又はこのアルキルフェノールとホルムアルデヒドを反応させて得られるアルキルフェノールのマンニッヒ反応生成物のアルカリ土類金属塩、特にマグネシウム塩及び/又はカルシウム塩等が好ましく用いられる。
【0094】
アルカリ土類金属サリシレートとしては、より具体的には、炭素数4〜30、好ましくは6〜18の直鎖状又は分枝状のアルキル基を少なくとも1個有するアルキルサリチル酸のアルカリ土類金属塩、特にマグネシウム塩及び/又はカルシウム塩等が好ましく用いられる。
【0095】
また、アルカリ土類金属スルホネート、アルカリ土類金属フェネート及びアルカリ土類金属サリシレートには、アルキル芳香族スルホン酸、アルキルフェノール、アルキルフェノールサルファイド、アルキルフェノールのマンニッヒ反応生成物、アルキルサリチル酸等を、直接、アルカリ土類金属の酸化物や水酸化物等の金属塩基と反応させたり、又は一度ナトリウム塩やカリウム塩等のアルカリ金属塩としてからアルカリ土類金属塩と置換させること等により得られる中性塩(正塩)だけでなく、さらにこれら中性塩(正塩)と過剰のアルカリ土類金属塩やアルカリ土類金属塩基(アルカリ土類金属の水酸化物や酸化物)を水の存在下で加熱することにより得られる塩基性塩や、炭酸ガス又はホウ酸若しくはホウ酸塩の存在下で中性塩(正塩)をアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物等の塩基と反応させることにより得られる過塩基性塩(超塩基性塩)も含まれる。なお、これらの反応は、通常、溶媒(ヘキサン等の脂肪族炭化水素溶剤、キシレン等の芳香族炭化水素溶剤、軽質潤滑油基油等)中で行われる。
【0096】
さらに本発明の潤滑油組成物における(F)成分は中性塩より過剰の金属塩たとえば炭酸塩をふくむ、過塩基性金属系清浄剤が好ましい。具体的には、金属比、すなわちアルカリ土類金属のモル数に価数2をかけたものを金属系清浄剤の石鹸基のモル数で割った値が2.5以上であることが好ましい。
【0097】
本発明においては、(F)成分としては、アルカリ土類金属のスルホネート、フェネート、サリシレート等から選ばれる金属系清浄剤を1種又は2種以上併用して使用することができる。
中でも本発明の潤滑油組成物においては、アルカリ土類金属スルホネートまたはアルカリ土類フェネートが好ましい。最も好ましくはアルカリ土類金属スルホネートである。これは、(F)成分の金属系清浄剤の中では、スルホネートが最も摩耗防止性能に優れており、ついでフェネートが優れていることによる。
【0098】
本発明の潤滑油組成物における(F)成分のアルカリ土類金属系清浄剤の全塩基価は、100mgKOH/g以上であることが好ましく、より好ましくは140mgKOH/g以上であり、さらに好ましくは200mgKOH/g以上である。また500mgKOH/g以下であることが好ましく、より好ましくは450mgKOH/g以下であり、さらに好ましくは400mgKOH/g以下である。塩基価が100mgKOH/g未満では疲労寿命延長効果が認めらない。また塩基価が500mgKOH/gを超えると潤滑油組成物として安定性に欠ける。
なお、ここでいう全塩基価とは、JISK2501「石油製品及び潤滑油−中和価試験法」の7.に準拠して測定される過塩素酸法による全塩基価を意味する。
【0099】
本発明において、(F)成分の含有量については特に制限はないが、通常、組成物全量基準で、金属元素換算量で0.5質量%以下であることが好ましく、組成物の硫酸灰分が1.2質量%以下となるようにその他の添加剤と合わせて調整することが好ましい。そのような観点から金属系清浄剤の含有量の上限値は、より好ましくは組成物全量基準で、金属元素換算量で0.3質量%以下であり、さらに好ましくは0.25質量%以下、特に好ましくは0.2質量%以下である。また、その下限値には特に制限はないが0.01質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.02質量%以上、特に好ましくは0.05質量%以上である。
【0100】
なお、金属系清浄剤は通常、軽質潤滑油基油等で希釈された状態で市販されており、また、入手可能であるが、一般的に、その金属含有量が1.0〜20質量%、好ましくは2.0〜16質量%のものを用いるのが望ましい。
【0101】
本発明の潤滑油組成物は、(G)硫化オレフィン(以下(G)成分という。)を含有するのが好ましい。かかる硫化オレフィンとしては、例えば下記一般式(5)で示される化合物を挙げることができる。
R
1−Sx−R
2 (5)
一般式(5)において、R
1は炭素数2〜15のアルケニル基、R
2は炭素数2〜15のアルキル基またはアルケニル基を示し、xは1〜8の整数を示す。
この化合物は炭素数2〜15のオレフィンまたはその2〜4量体を硫黄、塩化硫黄等の硫化剤と反応させることによって得ることができる。オレフィンとしては、例えば、プロピレン、イソブテン、ジイソブテンなどが好ましく用いられる。
【0102】
また硫化オレフィンの別の形態としてジヒドロカルビルポリスルフィドが挙げられる。ジヒドロカルビルポリスルフィドは、下記一般式(6)で示される化合物である。
R
3−Sy−R
4 (6)
一般式(6)において、R
3及びR
4は、それぞれ個別に、炭素数1〜20のアルキル基(シクロアルキル基も含む)、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアリールアルキル基を示し、それらは互いに同一であっても異なっていてもよく、yは2〜8の整数を示す。
【0103】
上記R
3及びR
4の例としては、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基、各種ノニル基、各種デシル基、各種ドデシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、ベンジル基、及びフェネチル基などを挙げることができる。
【0104】
ジヒドロカルビルポリスルフィドの例の好ましいものとしては、具体的には、ジベンジルポリスルフィド、ジ−tert−ノニルポリスルフィド、ジドデシルポリスルフィド、ジ−tert−ブチルポリスルフィド、ジオクチルポリスルフィド、ジフェニルポリスルフィド、及びジシクロヘキシルポリスルフィドなどが挙げられる。
【0105】
本発明における(G)硫化オレフィンの添加量は、潤滑油組成物全量基準で0.1質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.2質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上、また2質量%以下であることが好ましく、より好ましくは1.5質量%以下である。0.1質量%未満では耐焼付き性の向上効果が認められず、また2質量%を超えると組成物の酸化安定性が大幅に低下する。
【0106】
本発明の潤滑油組成物には、さらにその性能を向上させるために、その目的に応じて潤滑油に一般的に使用されている任意の添加剤を含有させることができる。このような添加剤としては、例えば、(F)成分の過塩基性金属塩以外の金属系清浄剤、無灰分散剤、摩耗防止剤(または極圧剤)、酸化防止剤、腐食防止剤、防錆剤、抗乳化剤、金属不活性化剤、消泡剤等の添加剤等を挙げることができる。
【0107】
(F)成分の過塩基性金属塩以外の金属系清浄剤として、アルカリ金属/アルカリ土類金属スルホネート、アルカリ金属/アルカリ土類金属フェネート、およびアルカリ金属/アルカリ土類金属サリシレート等の正塩または塩基性塩を挙げることができる。アルカリ金属としてはナトリウム、カリウム等、アルカリ土類金属としてはマグネシウム、カルシウム、バリウム等が挙げられるが、マグネシウムまたはカルシウムが好ましく、特にカルシウムがより好ましい。
【0108】
無灰分散剤としては、潤滑油に用いられる任意の無灰分散剤が使用でき、例えば、炭素数40〜400の直鎖もしくは分枝状のアルキル基またはアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するモノまたはビスコハク酸イミド、炭素数40〜400のアルキル基またはアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するベンジルアミン、あるいは炭素数40〜400のアルキル基またはアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するポリアミン、あるいはこれらのホウ素化合物、カルボン酸、リン酸等による変成品等が挙げられる。使用に際してはこれらの中から任意に選ばれる1種類あるいは2種類以上を配合することができる。
【0109】
酸化防止剤としては、フェノール系、アミン系等の無灰酸化防止剤、銅系、モリブデン系等の金属系酸化防止剤が挙げられる。具体的には、2−6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール等のアルキルフェノール類、メチレン−4,4−ビスフェノール(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール)等のビスフェノール類、フェニル−α−ナフチルアミン等のナフチルアミン類、ジアルキルジフェニルアミン類、ジ−2−エチルヘキシルジチオリン酸亜鉛等のジアルキルジチオリン酸亜鉛類、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)脂肪酸(プロピオン酸等)あるいは(3−メチル−5−tertブチル−4−ヒドロキシフェニル)脂肪酸(プロピオン酸等)と1価又は多価アルコール、例えばメタノール、オクタノール、オクタデカノール、1,6ヘキサジオール、ネオペンチルグリコール、チオジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ペンタエリスリトール等とのエステル等が挙げられる。
【0110】
摩耗防止剤(または極圧剤)としては、本発明の(E)成分以外に潤滑油に用いられる任意の摩耗防止剤・極圧剤が使用できる。例えば、硫黄系、リン系、硫黄−リン系の極圧剤等が使用でき、具体的には、亜リン酸エステル類、チオ亜リン酸エステル類、ジチオ亜リン酸エステル類、トリチオ亜リン酸エステル類、リン酸エステル類、チオリン酸エステル類、ジチオリン酸エステル類、トリチオリン酸エステル類、これらのアミン塩、これらの金属塩、これらの誘導体、ジチオカーバメート、亜鉛ジチオカーバメート、モリブデンジチオカーバメート、ジサルファイド類、ポリサルファイド類、硫化油脂類等が挙げられる。
【0111】
腐食防止剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、トリルトリアゾール系、チアジアゾール系、またはイミダゾール系化合物等が挙げられる。
【0112】
防錆剤としては、例えば、石油スルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、ジノニルナフタレンスルホネート、アルケニルコハク酸エステル等が挙げられる。
【0113】
抗乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、またはポリオキシエチレンアルキルナフチルエーテル等のポリアルキレングリコール系非イオン系界面活性剤等が挙げられる。
【0114】
金属不活性化剤としては、例えば、イミダゾリン、ピリミジン誘導体、アルキルチアジアゾール、メルカプトベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾールまたはその誘導体、1,3,4−チアジアゾールポリスルフィド、1,3,4−チアジアゾリル−2,5−ビスジアルキルジチオカーバメート、2−(アルキルジチオ)ベンゾイミダゾール、またはβ−(o−カルボキシベンジルチオ)プロピオンニトリル等が挙げられる。
【0115】
消泡剤としては、例えば、25℃における動粘度が1000〜10万mm
2/sのシリコーンオイル、アルケニルコハク酸誘導体、ポリヒドロキシ脂肪族アルコールと長鎖脂肪酸のエステル、メチルサリチレートとo−ヒドロキシベンジルアルコール等が挙げられる。
【0116】
これらの添加剤を本発明の潤滑油組成物に含有させる場合には、それぞれその含有量は潤滑油組成物全量基準で、0.001〜10質量%であることが好ましい。
【0117】
摩擦調整剤としては、潤滑油用の摩擦調整剤として通常用いられる任意の化合物が使用可能であるが、炭素数6〜30のアルキル基又はアルケニル基、特に炭素数6〜30の直鎖アルキル基又は直鎖アルケニル基を分子中に少なくとも1個有する、アミン化合物、イミド化合物、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、脂肪酸金属塩等が好ましく用いられる。
アミン化合物としては、炭素数6〜30の直鎖状若しくは分枝状、好ましくは直鎖状の脂肪族モノアミン、直鎖状若しくは分枝状、好ましくは直鎖状の脂肪族ポリアミン、又はこれら脂肪族アミンのアルキレンオキシド付加物等が例示できる。イミド化合物としては、炭素数6〜30の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基又はアルケニル基を有するコハク酸イミド及び/又はそのカルボン酸、ホウ酸、リン酸、硫酸等による変性化合物等が挙げられる。脂肪酸エステルとしては、炭素数7〜31の直鎖状又は分枝状、好ましくは直鎖状の脂肪酸と、脂肪族1価アルコール又は脂肪族多価アルコールとのエステル等が例示できる。脂肪酸アミドとしては、炭素数7〜31の直鎖状又は分枝状、好ましくは直鎖状の脂肪酸と、脂肪族モノアミン又は脂肪族ポリアミンとのアミド等が例示できる。脂肪酸金属塩としては、炭素数7〜31の直鎖状又は分枝状、好ましくは直鎖状の脂肪酸の、アルカリ土類金属塩(マグネシウム塩、カルシウム塩等)や亜鉛塩等が挙げられる。
特に手動変速機用摩擦調整剤として、硫化油脂が好ましく使用される。硫化油脂としては、例えば、硫化ラード、硫化なたね油、硫化ひまし油、硫化大豆油、硫化米ぬか油などの油;硫化オレイン酸などの二硫化脂肪酸;及び硫化オレイン酸メチルなどの硫化エステルを挙げることができる。
【0118】
本発明においては、上記摩擦調整剤の中から任意に選ばれた1種類あるいは2種類以上の化合物を任意の量で含有させることができるが、通常その含有量は、潤滑油組成物全量基準で0.01〜5.0質量%が好ましく、より好ましくは0.03〜3.0質量%である。
【0119】
本発明の潤滑油組成物の100℃における動粘度は、10mm
2/s以下であることが好ましく、より好ましくは9mm
2/s以下、さらに好ましくは8mm
2/s以下である。また、本発明の潤滑油組成物の100℃における動粘度は、好ましくは4mm
2/s以上、より好ましくは5mm
2/s以上、さらに好ましくは6mm
2/s以上である。
ここでいう100℃における動粘度とは、ASTM D−445に規定される100℃での動粘度を示す。100℃における動粘度が4mm
2/s未満の場合には、潤滑性不足を来たすおそれがあり、10mm
2/sを超える場合には必要な低温粘度および十分な省燃費性能が得られないおそれがある。
【0120】
本発明の潤滑油組成物の粘度指数は、130〜250の範囲であることが好ましく、より好ましくは140以上、さらに好ましくは160以上、特に好ましくは180以上である。本発明の潤滑油組成物の粘度指数が130未満の場合には、省燃費性を向上させることが困難となるおそれがある。また、本発明の潤滑油組成物の粘度指数が250を超える場合には、蒸発性が悪化するおそれがあり、更に添加剤の溶解性やシール材料との適合性が不足することによる不具合が発生するおそれがある。
【実施例】
【0121】
以下、実施例および比較例を用いて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例に何ら限定されるものではない。
【0122】
(実施例1〜9および比較例1〜6)
表1に各種の潤滑油基油及び添加剤を配合量と性能を記載した。基油の配合量(質量%)は基油組成物全量基準であり、各添加剤の添加量(質量%)は潤滑油組成物全量基準である。
得られた各組成物について、疲労寿命を以下の(1)に示す疲労寿命試験により評価した。また、初期および長期間使用後の極圧性を以下の(2)に示す極圧性試験により評価した。また(3)に示す酸化安定性試験結果を記載した。
【0123】
(1)疲労寿命試験
(a)FZG
FZG試験機を用いて以下の条件で運転を行い、歯車にピッチングが発生するまでのギヤの疲労寿命を評価した。
[条件]荷重ステージ:12、油温:120℃、回転数:620rpm
【0124】
(2)極圧性試験
(a)ASTM D2783に準拠し、高速四球試験機を用い、各潤滑油組成物の1800rpmにおける最大非焼付き荷重(LNSL)を測定した。
(b)ASTM D4172に準拠し、高速四球試験機を用い、各潤滑油組成物の1800rpm、荷重392N、試験時間1時間における摩耗痕径を測定した。
(c)ASTM D3233に準拠し、ファレックス試験機を用い、各潤滑油組成物の290rpmにおける110℃での焼付荷重を測定した。
【0125】
(3)酸化安定性
JIS K 2514 4.(内燃機関用潤滑油酸化安定度試験方法)に準拠して実施し、動粘度比を測定した。
【0126】
【表1】