(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本願発明に係るボールジョイントの第1乃至第5実施形態について、その構成等を示す図面を参照して説明する。なお、本願において使用している「上端」及び「下端」、「上面」及び「下面」、「上方」及び「下方」等の呼称は、図示状態での方向(上下関係)を表しており、本願発明に係るボールジョイントを転地逆や横倒しで配置した場合には、これらの方向に関する呼称は、配置方向に対応させることになる。
【0023】
[第1実施形態]
図1は、本願発明に係るボールジョイントの第1実施形態の構成を示す説明図である。
図1において、ボールジョイント10は、ボールスタッド12、ボールシート30、ソケット32、ダストカバー36で構成され、組み付け対象のナックルアーム80にナット82で固定されている。
【0024】
ボールジョイント10は、ボールスタッド12の下端に形成した球頭部16を、ボールシート30を介してソケット32に組み込み、ソケット32の開口部34をカシメ成形してボールスタッド12を揺動及び摺動自在に支持している。また、ボールスタッド12とソケット32の間には、開口部34から内部に水や埃が侵入するのを防止するダストカバー36を装着している。
【0025】
図2は、
図1のダストカバー36とボールスタッド12の各々を分離して示す説明図であり、
図2(A)はダストカバー36の断面、
図2(B)はボールスタッド12を示している。
【0026】
図2(A)において、ゴム等の弾性材で形成されたダストカバー36は、膜部38の上端に小径開口部40、下端には大径開口部70を有し、小径開口部40には樹脂や金属等で形成された補強環56を埋め込み、大径開口部70には金属製の圧入環74を埋め込んだ周縁部72が設けられている。
【0027】
図2(B)において、ボールスタッド12は、スタッド部14の下端に球頭部16を設け、スタッド部14には、球頭部16側から順に頚部18、鍔部20、軸部22、ネジ部24を設けている。また、軸部22には、鍔部20側に外周面26、ネジ部24側にテーパ面28が形成されている。
【0028】
本実施形態においては、大径開口部70に圧入環74を埋め込み、
図1に示すように、ダストカバー36を圧入環74によって剛性を確保してソケット32に固定しているが、ダストカバー36のソケット32側への取り付けは他の形態でも構わない。
【0029】
また、ダストカバー36の
膜部38の形状は、未装着状態で釣鐘状となっているが、他の形状、例えば、蛇腹状等でも構わない。
【0030】
また、ダストカバー36のボールスタッド12側への取り付けは、ソケット32に固定されたダストカバー36をボールスタッド12と共にナックルアーム80に組み付け、ナット82でネジ部24を締め上げてテーパ面28を圧入状態とし、ボールスタッド12を固定することで、小径開口部40の内周部を軸部22の外周面26に嵌め合わせ、小径開口部40の軸方向を鍔部20とナックルアーム80で押さえ込むことで行っているが、同様の構成になれば他の固定方法でも構わない。
【0031】
また、ネジ部24を、組み付け対象の部品としてナックルアーム80にナット82で固定しているが、ボールジョイント10の組み付け対象は任意である。更に、膜部38の形状は、
図2(A)に示す形状に限定されるものではなく他の形状でも構わない。
【0032】
図3は、第1実施形態のダストカバー36の小径開口部40を拡大して示す断面図であり、
図2(A)に示す小径開口部40の右側部分を抜き出している。
図3において、小径開口部40は、内周部42側にガイド部44及びシール部46、上端側にリップ部48、下端部52側に係合部54を設け、内部には補強環56を埋め込んでいる。
【0033】
補強環56には、筒状部58と鍔状部60が形成され、本実施形態では、鍔状部60の内周面60a及び筒状部58の下端面58aが、ダストカバー36を形成するゴム等の弾性材から露出し、内周面60aがガイド部44を、下端面58aが係合部54を構成している。
【0034】
ガイド部44は、軸部22の外周面26に径方向の微小隙間を有して嵌合し、係合部54は、スタッド部14の鍔部20上面に軸方向に当接して係合する。シール部46は、径方向の締め代により軸部22の外周面26に密接し、小径開口部40のシール性を確保している。また、リップ部48は、弾性によりナックルアーム80の下面に密接し、小径開口部40のシール性を補強している。
【0035】
なお、本実施形態においては、リップ部48を設けているが、組み付け対象の部品形状の都合等により、
リップ部48を設定しない場合もある。
【0036】
このように、高剛性体の補強環56で連結したガイド部44と係合部54の両部位で、スタッド部14に対する小径開口部40の径方向位置及び軸方向位置を規制したことで、小径開口部40が膜部38に引っ張られても小径開口部40の傾きを抑制できるため、シール部46の密接を維持することができ、また、軸部22の外周面26とガイド部44とに微小隙間を設けたことで、ガイド部44がこじられることを防止できる。
【0037】
また、シール部46をガイド部44よりも下方(ガイド部44と係合部54との間)に設けたことで、ガイド部44と係合部54の両方の位置規制部間の距離を長く設定することができるため、スタッド部14とガイド部44の微小隙間に対する小径開口部40の傾きをより小さく抑えることができる。
【0038】
更に、シール部46がガイド部44よりも上方にある場合、例えば、特許文献1のものと比べ、小径開口部40の傾きに対するシール部46の径方向変位をより小さく抑えことができる。
【0039】
次に、スタッド部14とガイド部44の嵌合部に微小隙間を設ける理由を説明する。ボールジョイント10が作動する際に、ボールスタッド12は、ソケット32に対して揺動及び摺動することになる。ここで、揺動は、ボールスタッド12が球頭部16の中心点回りに傾斜する動作を、摺動は、ボールスタッド12がスタッド部14の中心軸回りに回転する動作を意味する。
【0040】
ダストカバー36は、小径開口部40をボールスタッド12に、大径開口部70をソケット32に装着するため、ボールスタッド12の摺動によるダストカバー36の膜部38の捩れ破損を防ぐには、小径開口部40は、ボールスタッド12に対して摺動自在に密接させる必要がある。
【0041】
従って、膜部38の捩れ破損の防止には、高剛性の補強環56が露出または近接するガイド部44と、軸部22の外周面26との間には隙間を設けておくこと、すなわち、ガイド部44とスタッド部14の嵌合に遊びを設けることが有効である。
【0042】
なお、シール部46は、ゴム弾性により変形するため、締め代があっても小径開口部40の摺動自在性は確保できる。また、補強環56が露出せずにガイド部44に近接する構成については、後述の第2実施形態で説明する。
【0043】
図4は、
図3の補強環56を詳細に示す説明図であり、
図4(A)は補強環56の断面、
図4(B)は補強環56の下側平面を示している。
図4(A)(B)において、補強環56は、例えばアルミダイカスト等で、筒状部58と鍔状部60が形成され、筒状部58の下端部58aには、ダストカバー36の成形時にゴム等の弾性材料を流動させるための径方向溝62が複数設けられている。
【0044】
補強環56は、ダストカバー36としてインサート成形された際に、鍔状部60の内周面60aがガイド部44、筒状部58の軸方向の下端面58aが係合部54を構成することになり、補強環56は、ダストカバーの弾性部分に用いられるゴム等の材料よりも充分に高い剛性を有した樹脂や金属等の材料を用いで形成されているため、ガイド部44と係合部54とは、高い剛性で連結される。
【0045】
図5は、第1実施形態における、ダストカバー36の小径開口部40の微小隙間と締め代との関係を示す説明図であり、
図5(A)はダストカバー36の未装着状態、
図5(B)は、
図1に示すように、ダストカバー36の小径開口部40が、ボールスタッド12の鍔部上面20aとナックルアーム下面80aの間に装着された状態である。
【0046】
図5(B)において、小径開口部40は、ガイド部44となる補強環56の内周部60aが、軸部22の外周面26に径方向の微小隙間Cmを有して嵌合し、係合部54となる補強環56の下端部58aが、鍔部上面20aに当接して係合している。
【0047】
この状態で、シール部46は、軸部22の外周面26に密接し、ダストカバー36のシール性を確保している。また、リップ部48は、ナックルアーム下面80aに弾性によって密接し、ダストカバー36のシール性を補強している。
【0048】
ここで、
図5(A)(B)に示すように、未装着状態のシール部46の内径をDs、軸部22(外周面26)の外径をDo、ガイド部44(補強環56の内周面60a)の内径をDgとすると、ガイド部44の外周面26に対する微小隙間Cmと、シール部46の外周面26に対する締め代Ciとの関係が、
Cm=(Dg−Do)/2
Ci=(Do−Ds)/2
Ci>Cm
となるように構成する。
【0049】
すなわち、締め代Ciは、軸部22の外半径(Do/2)とシール部46の未装着時の内半径(Ds/2)との差であり、微小隙間Cmは、軸部22の外半径(Do/2)とガイド部44の内半径(Dg/2)との差となり、また、締め代Ciは微小隙間Cmより大きくなる。
【0050】
ここで、締め代を微小隙間より大きくする理由を説明する。小径開口部40の傾きにより生じる内周部42の径方向変位は、ガイド部44よりも、ガイド部44の下方に位置するシール部46の方が小さい。
【0051】
ガイド部44の径方向隙間(微小隙間Cm)の量よりも、シール部46の締め代Ciを大きく設定することで、ガイド部44の内周面60aの一部が軸部22の外周面26に当接するまで小径開口部40が傾いた場合でも、シール部46は締め代を有した状態を維持できる。なお、この小径開口部40が傾いた状態の締め代は、初期状態の締め代Ciより、実質的に、小さくなる。
【0052】
[第2実施形態]
図6は、本願発明に係るボールジョイントの第2実施形態の構成を示す説明図である。
図6において、ボールジョイント110は、ボールスタッド112、リテーナ120、ボールシート130、ソケット132、ダストカバー136、クランプ174、プラグ180で構成され、組み付け対象のナックルアーム80にナット82で固定されている。
【0053】
第1実施形のボールスタッド12が鍔部20を一体に形成しているのに対し、
図6のボールスタッド112は、鍔部120cを備えたリテーナ120を軸部122の外周面126に圧入している。
【0054】
リテーナ120は、ボールスタッド112とは別部材として設けているが、ボールスタッド112に固定されているため、リテーナ120の鍔部120cは、第1実施形の鍔部20と実質的に同じ構造物となり、また、同等の機能を備えている。
【0055】
なお、リテーナ120をボールスタッド112と別部材とすることで、ボールスタッド112をソケット132
に組み込んだ後に、リテーナ120をボールスタッド112に圧入できるため、ソケット132の開口部134の内径よりも大きな外形の鍔部120cを設定することができる。
【0056】
ボールジョイント110は、ボールスタッド112の下端に形成した球頭部116を、ボールシート130を介してソケット132に組み込み、プラグ180をカシメ成形で閉塞してボールスタッド112を揺動及び摺動自在に支持している。また、ボールスタッド112とソケット132の間には、開口部134から内部に水や埃が侵入するのを防止するダストカバー136を装着している。
【0057】
図7は、
図6のダストカバー136、リテーナ120及びボールスタッド112の各々を分離して示す説明図であり、
図7(A)はダストカバー136の断面、
図7(B)はリテーナ120の断面、
図7(C)はボールスタッド112を示している。
【0058】
図7(A)において、ゴム等の弾性材で形成されたダストカバー136は、膜部138の上端に小径開口部140、下端には大径開口部170を有し、小径開口部140には樹脂等で形成された補強環156を埋め込み、大径開口部170にはクランプ174を装着するクランプ溝182を備えた周縁部172が設けられている。
【0059】
図7(B)において、リテーナ120は、円筒部120a及び鍔部120cを形成し、円筒部120aを軸部122の外周面126に圧入し固定した状態で、鍔部120cが、第1実施形態のボールスタッド12の鍔部20に対応する。
【0060】
また、この場合、円筒部120aの外周面120bが、第1実施形態の軸部22の外周面26に置き換わり、鍔部120cの上面120dが、第1実施形態の鍔部上面20aに置き換わることになる。
【0061】
図7(C)において、ボールスタッド112は、スタッド部114の下端に球頭部116を設け、スタッド部114は、球頭部116側から順に頚部118、軸部122、ネジ部124を設けている。軸部122には、頚部118側に外周面126、ネジ部124側にテーパ面128が形成されている。
【0062】
本実施形態においては、大径開口部170の周縁部172をソケット132の外周上部に設けられた溝に嵌め、クランプ溝
182に金属製のクランプ174を嵌めて、ダストカバー136をソケット132に固定しているが、ダストカバー136のソケット132側への取り付けは他の形態でも構わない。
【0063】
また、第1実施形態と同様に、ダストカバー136のボールスタッド112側への取り付けは、同様の構成になれば他の固定方法でも良く、また、ボールジョイント110の組み付け対象も任意である。
【0064】
図8は、第2実施形態のダストカバー136の小径開口部140を拡大して示す断面図であり、
図7(A)に示す小径開口部140の右側部分を抜き出している。
図8において、小径開口部140は、内周部142側にガイド部144、シール部146及び内周突起部150、上端側にリップ部
148、下端部152側に係合部154を設け、内部には補強環156を埋め込んでいる。
【0065】
本実施形態では、シール部146として、溝を1本設けた形状(峰を2列設けた形状)を挙げているが、第1実施形態で示した溝無しの形状や、他の周知のものでも良く、シール部の形状はシール性を損なわない限り任意である。
【0066】
補強環156には、筒状部158と鍔状部160が形成され、本実施形態では、鍔状部160の内周面160a及び筒状部158の下端面158aは、ダストカバー136を形成するゴム等の弾性材から露出せずに、内周面160aをガイド部144の内周面に臨む位置に、下端面158aを係合部154に臨む位置に配置している。
【0067】
樹脂や金属の部品をゴム等の製品にインサート成形する際には、成形性等の理由によりインサート部品の表面を露出させるのが困難な場合があり、本実施形態は、このように補強環156の内周面160a及び下端面158aが、ゴム等の弾性体(ダストカバーを形成する材料)の薄い膜で被覆され、この被覆の表面がガイド部144及び係合部154を構成する場合を示している。
【0068】
なお、この被覆の厚さは、成形条件や設計条件によって任意であるが、ガイド部144と係合部154の連結剛性を高めるためには、薄い方が望ましい。なお、連結剛性のためには、補強環は露出している方がより望ましい。
【0069】
ガイド部144は、軸部122の外周面126に径方向の微小隙間を有して嵌合し、係合部154は、リテーナ120の鍔部上面120dに軸方向に当接して係合する。シール部146は、径方向の締め代により軸部122の外周面126に密接し、小径開口部140のシール性を確保している。
【0070】
リップ部148は、弾性によりナックルアーム80の下面に密接し、小径開口部140のシール性を補強しているが、リップ部148の設定の有無は、第1実施形態と同様に任意である。また、弾性を有した内周突起部150を設けることで、スタッド部140に対する小径開口部140の摺動自在性を保ちつつ、小径開口部114が傾くことに抗する力を増大させている。
【0071】
内周突起部150を設けた場合、小径開口部140が膜部138に引っ張られる力が、内周突起部150がない場合と同等であっても、小径開口部140の傾き角度をより小さい角度に抑えることができるため、ダストカバー136のシール耐久性を向上させることができる。
【0072】
図9は、
図8の補強環156を詳細に示す説明図であり、
図9(A)は補強環156の断面、
図9(B)は補強環156の下側平面を示している。
図9(A)(B)において、補強環156は、例えばプラスチックモールド等で、筒状部158と鍔状部160が形成され、筒状部158の下端面158aには、ダストカバー136の成形時にゴム等の弾性材料を流動させるための径方向溝162が複数設けられている。
【0073】
補強環156は、ダストカバー136としてインサート成形された際に、鍔状部160の内周面160aがガイド部144の内周面に臨む位置、筒状部158の軸方向の下端面158aが係合部154に臨む位置に配置されることになり、補強環156は、ダストカバーの弾性部分に用いられるゴム等の材料よりも充分に高い剛性を有した樹脂や金属等の材料を用いで形成されているため、ガイド部144と係合部154とは、高い剛性で連結される。
【0074】
図10は、第2実施形態における、ダストカバー136の小径開口部140の微小隙間と締め代との関係を示す説明図であり、
図10(A)は、ダストカバー136の未装着状態、
図10(B)は、
図6に示すように、ダストカバー136の小径開口部140が、リテーナ120の鍔部上面120dとナックルアーム下面80aの間に装着された状態である。
【0075】
図10(B)において、小径開口部140は、内側に補強環156の内周面160aが臨んでいるガイド部144が、リテーナ120の外周面120bに径方向の微小隙間Cmを有して嵌合し、補強環156の下端面158aが臨んでいる係合部154が、リテーナ鍔部上面120dに当接して係合している。
【0076】
この状態で、シール部146は、リテーナ120の外周面120bに密接し、ダストカバー136のシール性を確保している。また、リップ部148は、ナックルアーム下面80aに弾性によって密接し、ダストカバー136のシール性を補強している。
【0077】
ここで、
図10(A)(B)に示すように、未装着状態のシール部146の内径をDs、リテーナ外周面120bの外径(軸部の外径)をDo、ガイド部144の内径をDgとすると、ガイド部144の外周面120bに対する微小隙間Cmと、シール部146の外周面120bに対する締め代Ciとの関係が、
Cm=(Dg−Do)/2
Ci=(Do−Ds)/2
Ci>Cm
となるように構成する。
【0078】
すなわち、締め代Ciは、リテーナ外周面120bの外半径(Do/2)とシール部146の未装着時の内半径(Ds/2)との差であり、微小隙間Cmは、リテーナ外周面120bの外半径(Do/2)とガイド部144の内半径(Dg/2)との差となり、また、締め代Ciは微小隙間Cmより大きくなる。
【0079】
[第3実施形態]
図11は、ダストカバーの第3実施形態の小径開口部を拡大して示す断面図であり、補強環及びダストカバー本体部分の一部の形状が異なっている以外は、
図8に示す第2実施形態のダストカバー136と同じ構成である。
【0080】
図11において、ダストカバー236の小径開口部240は、内周部242側にガイド部244、シール部246及び内周突起部250、上端側にリップ部248、下端部252側に係合部254を設け、内部には樹脂等で形成された補強環256を埋め込んでいる。
【0081】
補強環256には、筒状部258と鍔状部260が形成され、本実施形態では、鍔状部260の内周面260a及び筒状部258の下端面258aは、ダストカバー236を形成するゴム等の弾性材から露出せずに、内周面260aをガイド部244の内周面に臨む位置に、下端面258aを係合部254に臨む位置に配置している。
【0082】
また、ダストカバー236の本体部分には、ダストカバー236の成形時に金型内で補強環256を保持するための位置決めピンの痕跡が、補強環256の上下方向に複数のピン穴266、267となって残っているため、筒状部258の下端面258aは、このピン穴267の部分だけがゴム等の弾性材から露出することになるが、このピン穴267は、機能上特に必要なものではない。
【0083】
図12は、
図11の補強環256を詳細に示す説明図であり、
図12(A)は補強環256の断面、
図12(B)は補強環256の下側平面を示している。
図12(A)(B)において、補強環256は、例えばプラスチックモールド等で筒状部258と鍔状部260が形成され、筒状部258の下端部258aと鍔状部260の内周面260aには、ダストカバー236の成形時にゴム等の弾性材料を流動させるための径方向溝262と軸方向溝264が複数設けられている。
【0084】
筒状部258の下端部258aだけではなく、鍔状部260の内周面260aにも溝を設けることで、補強環256をインサートしてダストカバー236を成形する際に、補強環256周りにゴム等の弾性材料を充填するための流路を確保し、ガイド部244に臨む補強環256の内周面260a(溝ではない部分)をガイド部244の内周面により近接させることができる。
【0085】
従って、ダストカバー236の成形性の都合等により、ガイド部244の内周面と補強環256の内周面260aとの間に、ゴム等の弾性体の薄膜が必要となる場合においても、ガイド部の剛性を高めることができ、ダストカバーの良好なシール性を確保できる。
【0086】
補強環256の溝(径方向溝262、軸方向溝264)の形状、大きさ、個数は、ダストカバー236成形時のゴム等の弾性材料の流れを阻害しない範囲で設定すれば良く、
図12に示す形態に限定するものではない。また、このことは、他の実施形態にも同様に適用される。
【0087】
[第4実施形態]
図13は、ダストカバーの第4実施形態の小径開口部を拡大して示す断面図であり、補強環及びダストカバー本体部分の一部の形状が異なっている以外は、
図8に示す第2実施形態のダストカバー136と同じ構成である。
【0088】
図13において、ダストカバー336の小径開口部340は、内周部342側にガイド部344、シール部346及び内周突起部350、上端側にリップ部348、下端部352側に係合部354を設け、内部には金属で板金プレス形成された補強環356を埋め込んでいる。
【0089】
補強環356には、筒状部358と鍔状部360が形成され、本実施形態では、筒状部358の下端面358aは、ダストカバー336を形成するゴム等の弾性材から露出して係合部354を構成し、鍔状部360の内周面360aは、露出せずにガイド部344の内周面に臨む位置に配置している。
【0090】
また、ダストカバー336の本体部分には、ダストカバー336の成形時に金型内で補強環356を保持するための位置決めピンの痕跡が、補強環356の上方向に複数のピン穴366となって残っているが、このピン穴366は、機能上特に必要なものではない。
【0091】
図14は、
図13の補強環356を詳細に示す説明図であり、
図14(A)は補強環356の断面、
図14(B)は補強環356の下側平面を示している。
図14(A)(B)において、補強環356は、金属の板金プレスで筒状部358と鍔状部360が形成され、筒状部358には、ダストカバー336の成形時にゴム等の弾性材料を流動させるための径方向孔362が複数設けられている。
【0092】
[第5実施形態]
図15は、ダストカバーの第5実施形態の小径開口部を拡大して示す断面図であり、補強環及びダストカバーの本体部分の一部の形状が異なっている以外は、
図8に示す第2実施形態のダストカバー136と同じ構成である。
【0093】
図15において、ダストカバー436の小径開口部440は、内周部442側にガイド部444、シール部446及び内周突起部450、下端部452側に係合部454を設け、内部には金属や樹脂等で形成された補強環456を埋め込んでいる。
【0094】
補強環456には、筒状部458と鍔状部460が形成され、本実施形態では、筒状部458の下端面458aは、ダストカバー436を形成するゴム等の弾性材から露出して係合部454を構成し、鍔状部460の内周面460aは、露出せずにガイド部444の内周面に臨む位置に配置している。
【0095】
また、補強環456は、筒状部458の上端面458b及び上部外周面458cも露出しており、上部外周面458cは、ダストカバー436の成形時に金型内で補強環456を保持する位置決め部を構成している。
【0096】
補強環をインサートしてダストカバー本体を成形する際の、補強環の位置決め方法は、成形上の都合により任意であり、本実施形態のように筒状部458の上部外周面458cを露出させ位置決めに利用する以外に、例えば、
図11に示すように、金型に設置した位置決めピンを用いる等の周知の方法を用いることができる。
【0097】
本発明は、車両用リンク機構の連結装置として用いられるボールジョイントに限らず、ダストカバーを備えたあらゆるボールジョイントに適用可能であり、また上記の実施形態に限定されず、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含む。