(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5941559
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月29日
(54)【発明の名称】低誘電性光画像形成性組成物及びそれから製造した電子デバイス
(51)【国際特許分類】
G03F 7/075 20060101AFI20160616BHJP
【FI】
G03F7/075 511
【請求項の数】16
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-556147(P2014-556147)
(86)(22)【出願日】2013年2月8日
(65)【公表番号】特表2015-508184(P2015-508184A)
(43)【公表日】2015年3月16日
(86)【国際出願番号】IB2013000170
(87)【国際公開番号】WO2013117989
(87)【国際公開日】20130815
【審査請求日】2015年11月19日
(31)【優先権主張番号】13/369,809
(32)【優先日】2012年2月9日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】511293803
【氏名又は名称】アーゼッド・エレクトロニック・マテリアルズ(ルクセンブルグ)ソシエテ・ア・レスポンサビリテ・リミテ
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】チャン・ルージュー
(72)【発明者】
【氏名】キム・ジウン
(72)【発明者】
【氏名】パテール・バラクマー・ケー
(72)【発明者】
【氏名】ウォルファー・エリザベス
【審査官】
倉本 勝利
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−154214(JP,A)
【文献】
特開2012−109594(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/133617(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F7/004−7/06;7/075−7/115;
7/16−7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)次式の少なくとも一種の繰り返し単位を有しかつ複数の官能性末端基を有するアルカリ可溶性ポリマー、
【化1】
[R
1は非加水分解性の基であり、そしてnは1〜3の範囲の整数であり、前記ポリマーは、架橋触媒で架橋させることができる]
(b)前記アルカリ可溶性ポリマーと混和性の水溶性有機ポリマー、及び
(c)光酸発生剤及び光塩基発生剤の少なくとも一種から選択される架橋触媒、
を含む、光画像形成性誘電性組成物。
【請求項2】
非加水分解性の基が、水素、置換されたアルキル、アルキル、置換されたモノシクロアルキル、モノシクロアルキル、ポリシクロアルキル、置換されたポリシクロアルキル、置換された単環式アリール、単環式アリール、置換された多環式アリール、多環式アリール、置換された単環式アラルキル、単環式アラルキル、多環式アラルキル、置換された多環式アラルキル、カルボキシ及びカルビノールから選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
官能性末端基が、ヒドロキシ、アルコキシ、エポキシ類、オキセタン類、ビニルエーテル類、マレイミド類、フェノール類、(メタ)アクリレート類、チオール類、カルボン酸エステル類、カルボニル官能基、及びスルホネートエステル類から選択される、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
水溶性有機ポリマーが、100℃超のガラス転移温度及び10未満の誘電率を有する、請求項1〜3のいずれか一つに記載の組成物。
【請求項5】
コーティング及び乾燥後に、光画像形成後に、及び熱硬化、光硬化もしくは両者の後に、4未満の誘電率を有する絶縁性組成物を供する、請求項1〜4のいずれか一つに記載の組成物。
【請求項6】
水溶性有機ポリマーが、コーティング及び乾燥後に、光画像形成後に、及び/または熱硬化、光硬化もしくは両者の後にクラックの無い組成物を供するための有効量で組成物中に含まれ、前記有効量は、組成物のアリカリ可溶性ポリマーの重量を基準にして0.1重量%〜35重量%の範囲である、請求項1〜5のいずれか一つに記載の組成物。
【請求項7】
クエンチャを更に含む、請求項1〜6のいずれか一つに記載の組成物。
【請求項8】
堆積及び乾燥後に粘着性の無いコーティングを供する、請求項1〜7のいずれか一つに記載の組成物。
【請求項9】
水溶性有機ポリマーが、ビニルラクタム類、ビニルラクトン類、ビニルイミダゾール類、ビニルピロリドン、ビニルアルコール類、ビニルアセテート類、またはこれらのコポリマーから誘導されるモノマー性単位を含む、請求項1〜8のいずれか一つに記載の組成物。
【請求項10】
水溶性有機ポリマーが、コーティングされた時に5マイクロメーター超のコーティングを与えるための有効量で組成物中に含まれる、請求項1〜9のいずれか一つに記載の組成物。
【請求項11】
a)請求項1〜10のいずれか一つに記載の組成物で基材をコーティングするステップ、b)組成物を加熱して溶媒を実質的に除去するステップ、
c)乾燥した組成物を化学線で像様露光するステップ、
d)任意選択的に、露光された組成物を加熱してそれを更に硬化するステップ、
e)水性アルカリ性現像剤を用いて組成物を現像して、組成物の未露光の部分を除去するステップ、及び
f)任意選択的に、得られた露光及び現像された組成物を加熱してそれを更に硬化するステップ、
を含む、基材上に誘電性パターンを形成する方法。
【請求項12】
誘電性パターンにクラックがない、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
コーティングが、5マイクロメーター超である、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
コーティング及び乾燥後に組成物に粘着性が無い、請求項11〜13のいずれか一つに記載の方法。
【請求項15】
基材上に形成された誘電性パターンを含むデバイスを製造する方法であって、
a)請求項1〜10のいずれか一つに記載の組成物で基材をコーティングするステップ、b)組成物を加熱して溶媒を実質的に除去するステップ、
c)乾燥した組成物を化学線で像様露光するステップ、
d)任意選択的に、露光された組成物を加熱してそれを更に硬化するステップ、
e)水性アルカリ性現像剤を用いて組成物を現像して、組成物の未露光の部分を除去するステップ、及び
f)任意選択的に、得られた露光及び現像された組成物を加熱してそれを更に硬化するステップ、
を含む、前記方法。
【請求項16】
基材上での誘電性パターンの形成における、請求項1〜11のいずれか一つに記載の組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には、電子デバイスに使用するのに適した低k誘電率材料の形成に使用することができるケイ素をベースとするフォトレジスト組成物、それの使用方法、及びそれから製造した電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
電子デバイスはより小型になっているため、エレクトロニクス産業では、電子部品、例えば集積回路、回路基板、マルチチップモジュール、チップテストデバイスなどにおいて、電気的性能を劣化させることなく、例えばクロストークまたは静電結合などを起こすことなく、回路密度を高めること、並びにこれらの部品において信号伝搬速度を高めることに対する絶え間のない要望がある。これらの目的を達成するための一つの方法は、これらの部品で使用される層間絶縁材料の誘電率を低めることである。
【0003】
シロキサンをベースとする材料が、このような層間絶縁材料の誘電率を低減するための低k材料として認定及び使用されている。一般的に、シロキサン層を基材上に堆積し、その後、フォトリソグラフィプロセスを介してエッチングの後にシロキサンをベースとするパターンを得、これに金属ライン、ビア及び他の電子部品を配設することができる。最近、光画像形成可能なシロキサン組成物が開示され、このような組成物では、感光性開始剤が、化学線に暴露された時に、官能性シロキサンポリマーなどのシロキサン材料と反応して、現像剤に対するそれの溶解性を変化させる。
【0004】
これらの用途においては多くのシロキサンポリマーが、加工するのが非常に困難な液状または粘着性のシロキサン層をまねく非常に低いガラス転移温度(Tg)を特徴とする。高いTgを有するシロキサンポリマー、それ故、粘着性のないコーティングを提供しようとする試みは、簡単に割れてしまう脆い層を与えてきた。そのため、それらの使用及び達成できる厚さが制限されてきた。超小型回路のための層間誘電性コーティングでの脆さの問題に取り組んだハイブリッド型ケイ素−炭素ポリマーシステムが提案されている。ChandrossらのUS6,251,486(特許文献1)は、低誘電率材料として使用するための変性されたメチルシルセスキオキサン組成物を開示している。このメチルシルセスキオキサンは、全てのメチルシルセスキオキサンよりも良好な耐クラック性を供するためにジメチル及びフェニル側基を含んでいる。それ故、コーティングの前のポリマー中への上記側基の導入を介して、コーティングされた物品に耐クラック性が達成される。しかし、ケイ素ポリマーへのジメチルシロキサンの添加は、粘着性のコーティングを招く。露光中にシロキサンポリマーと架橋する添加剤官能化ポリマーによって、シロキサンコーティングの可撓性が得られている。これらの組成物に適した官能化ポリマーは、一般的に、水不溶性であり、これは、スカムや、スカムを除去しようとした時の画像の過剰現像などの現像の際の問題を招く恐れがある。シロキサン組成物のコーティング厚は薄い。それは、一部は、これらの成分で達成可能な低い粘度の故である。典型的には、固形分を多くするためにより多量のシロキサンを組成物に添加することは、安定性の問題や、達成可能な粘度の制限などから妨げられる。
【0005】
それ故、可撓性であり、粘着性がなく、厚いコーティングを形成することができ、かつ結果生ずる画像を劣化させることなく簡単に現像可能な、低k誘電性フォトレジストに対する要望がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】US6,251,486
【特許文献2】US4,442,197
【特許文献3】US4,603,101
【特許文献4】US4,624,912
【特許文献5】US6,274,286
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】the Journal of Photopolymer Science and Technology,Vol.4,No.3,337−340(1991)
【発明の概要】
【0008】
驚くべきことに、様々な水溶性ポリマーを含むシロキサンベースのフォトレジスト組成物が、向上した可撓性及び耐クラック性を供すること、並びに組成物の粘度を高めて、シロキサンベースのフォトレジスト組成物単独から得ることができるものよりも厚いコーティングを可能にすることが見出された。本発明の組成物は、ネガトーン組成物またはポジトーン組成物であることができる。
【0010】
【化1】
の少なくとも一種の繰り返し単位を有するアルカリ可溶性ポリマー(前記ポリマーは、複数の官能性末端基を有し、そしてR
1は、非加水分解性の基であり、そしてnは、1〜3の範囲、好ましくは2〜3の範囲の整数であり、前記ポリマーは、架橋触媒を用いて架橋することが可能である)、前記アルカリ可溶性ポリマーと混和可能な水溶性有機ポリマー、及び光酸発生剤及び光塩基発生剤の少なくとも一種から選択される架橋触媒を含む光画像形成性誘電性組成物が開示及び特許請求される。
【0011】
本特許出願の第二の態様では、官能性末端基が、ヒドロキシ、アルコキシ、エポキシ、オキセタン類、ビニルエーテル類、マレイミド類、フェノール類、(メタ)アクリレート類、チオール類、カルボン酸エステル、カルボニル官能基及びスルホネートエステルからなる群から選択される、上記態様の組成物が開示及び特許請求される。
【0012】
本特許出願の第三の態様では、水溶性有機ポリマーが、約100℃を超えるガラス転移温度及び約10未満の誘電率を有し、かつ該組成物中に、光画像形成の前及び後に乾燥状態で可撓性を向上させるための有効量で存在する、前記態様の組成物が開示及び特許請求される。
【0013】
本特許出願の第四の態様では、水溶性有機ポリマーが、コーティングした時に約5マイクロメーターを超えるコーティングを供するための有効量で組成物中に存在する、上記態様の組成物が開示及び特許請求される。
【0014】
本特許出願の第五の態様では、組成物が、堆積及び乾燥後に粘着性の無いコーティングを供する、上記態様の組成物が開示及び特許請求される。
【0015】
本特許出願の第六の態様では、水溶性有機ポリマーが、ビニルラクタム類、ビニルラクトン類、ビニルイミダゾール類、ビニルピロリドン、ビニルアルコール類、ビニルアセテート類、またはこれらのコポリマーなどのモノマーから誘導されるモノマー性単位を含む上記態様の組成物が開示及び特許請求される。
【0016】
本特許出願の第七の態様では、更にクエンチャを含む上記態様の組成物が開示及び特許請求される。
【0017】
本特許出願の第八の態様では、非加水分解性の基が、水素、置換されたアルキル、アルキル、置換されたモノシクロアルキル、モノシクロアルキル、ポリシクロアルキル、置換されたポリシクロアルキル、置換された単環式アリール、単環式アリール、置換された多環式アリール、多環式アリール、置換された多環式アラルキル、単環式アラルキル、多環式アラルキル、置換された多環式アラルキル、カルボキシ及びカルビノールから選択される、上記態様の組成物が開示及び特許請求される。
【0018】
本特許出願の他の態様では、次のステップ、すなわちa)上記態様の組成物で基材をコーティングするステップ、b)組成物を加熱して、溶媒を実質的に除去し、乾燥した組成物を、好ましくはフォトマスクを介して、化学線で像様露光するステップ、d)任意選択的に、露光された組成物を加熱してそれを更に硬化するステップ、e)水性アルカリ性現像剤を用いて組成物を現像して、組成物の未露光の部分を除去し、そして任意選択的に、生じた露光及び現像された組成物を加熱して更にそれを硬化するステップを含む、基材上に誘電性画像を形成する方法が開示及び特許請求される。好ましくは、水溶性有機ポリマーは、所望の厚さ、可撓性及び粘着性の無い表面を供するための有効量で存在する。
【0019】
他の態様では、誘電性パターンにクラックが無い、及び/またはコーティングが約5マイクロメータ(ミクロン)を超える、及び/または組成物が、コーティング及び乾燥後に粘着性が無い、本発明の方法が開示及び特許請求される。
【0020】
本特許出願の更に別の態様では、上記の態様のいずれかを用いて製造されるデバイスが開示及び特許請求される。
【0021】
本発明の更に別の態様では、基材上での誘電性パターンの形成における上記の態様の組成物の使用が開示及び特許請求される。
【発明を実施するための形態】
【0022】
他に記載がなければ、本発明において使用する“及び”という接続詞は包括的であることを意図し、“または”という接続詞は排他的であることを意図していない。例えば、“または、二者選択的に”という記載は排他的であることを意図している。
【0024】
【化2】
の少なくとも一種の繰り返し単位を有するアルカリ可溶性ポリマー(ここで、前記ポリマーは、複数の官能性末端基を有し、及びR
1は、非加水分解性の基であり、そしてnは1〜3、好ましくは2〜3の範囲の整数であり、かつ前記ポリマーは、架橋触媒を用いて架橋され得るものである)、前記アルカリ可溶性ポリマーと混和できる水溶性有機ポリマー、及び光酸発生剤及び光塩基発生剤の少なくとも一種から選択される架橋触媒を含む、光画像形成性誘電性組成物に関する。官能性末端基は、ヒドロキシル、アルコキシ、エポキシ類、オキセタン類、ビニルエーテル類、マレイミド類、フェノール類、(メタ)アクリレート類、チオール類、カルボン酸エステル、カルボニル官能基及びスルホネートエステル類からなる群から選択することができる。
【0025】
一つの好ましい態様では、nは3である、すなわちポリマーは、R
1SiO
3/2のシルセスキオキサン単位を含む。
【0026】
本発明の組成物は、ネガトーン組成物またはポジトーン組成物であることができる。本発明の一つの態様では、ネガトーン組成物が使用される。
【0027】
アルカリ可溶性ポリマーは、二つ以上のメカニズムによって可溶化することができる。例えば、このポリマーは、水性アルカリ性現像剤と反応してポリマーを可溶化できるSi−OH官能基を含むことができる。R
1は、水性アルカリ性現像剤と反応してポリマーを可溶化する基、例えばフェノール基を含むことができる。アルカリ可溶性ポリマーは、複数種のシロキサンモノマーから製造できる。
【0028】
本発明において有用なポリマーには、例えば、シロキサン類、シルセスキオキサン類、及びかご型シロキサン類、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。該ポリマーは、1〜99.5重量%、例えば60〜98.5重量%の量で組成物中に存在し得る。R
1の典型的な有機基には、置換された及び置換されていないアルキル、置換された及び置換されていないアリール(アラルキルも包含する)及び複素環式基が挙げられる。アルキル基は、例えば炭素原子数が1〜20の、直鎖状、分岐状または環状であることができ、典型的には1〜20個の炭素原子を有し、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、t−ブチル、t−アミル、オクチル、デシル、ドデシル、セチル、ステアリル、シクロヘキシル、及び2−エチルヘキシルであることができる。アルキル基は、例えば、アルキル鎖中で及び/またはアルキル鎖上でヘテロ原子で置換されていることができ、または非芳香族環状基、例えばシクロペンチル、シクロヘキシル、ノルボニル、アダマンチル、ピペリジニル、テトラヒドロフラニル及びテトラヒドロチオフェニル基であることができる。典型的なアリール基には、炭素原子数6〜20の基、例えば炭素原子数6〜15の基、例えばフェニル、トリル、ベンジル、エチルフェニル、1−ナフチル、2−ナフチル及び2−フェナントリルが挙げられ、そしてヘテロ原子で置換されていることができる。複素環式基は、芳香族、例えばチオフェン、ピリジン、ピリミジン、ピロール、ホスホール、アルソール及びフランであることができる。典型的な有機基は、更に、アルカリ可溶性現像剤と反応するアルカリ可溶性基で置換されていてもよい。
【0029】
該ポリマーは、ランダムタイプまたはブロックタイプのいずれかのコポリマーまたはより高次の(higher order)ポリマーの形態をとることができる。ポリマーは、例えば、二つ以上の追加のケイ素含有単位を、それぞれの単位について、ポリマーを基準にしてそれぞれ1〜85重量%、例えば15〜80重量%または25〜60重量%、または25〜50重量%の割合で含むことができる。これらの追加の単位は、例えば、シロキサン類、シルセスキオキサン類、かご形シロキサン類及び/またはこれらの組み合わせとして表すことができる。例えば、ポリマーは、更に、式(R
2SiO
1.5)の重合された単位を含むことができ、式中、R
2は、R
1について上述したような置換されたまたは置換されていない有機基である。R
1及びR
2のうちの一つは、例えば、置換されたもしくは置換されていないアルキル基から選択することができ、R
1及びR
2の残りは、置換されたもしくは置換されていないアリール基から選択することができる。ポリマーは、例えば、アルキルケイ素ポリマー、例えばメチルシルセスキオキサン単位及びブチルシルセスキオキサン単位を含むコポリマー; アリールケイ素ポリマー、例えばフェニルシルセスキオキサン単位及びトリフルオロメチルフェニルシルセスキオキサン単位を含むコポリマー、またはアラルキルケイ素コポリマー、例えばメチル及びフェニルシルセスキオキサン単位を含むコポリマーであることができる。後者は、好ましい態様において使用される。特に好ましいものは、90重量%のメチルトリエトキシシランと10重量%のフェニルトリエトキシシランとの縮合反応によって合成されるシルセスキオキサンポリマー(90:10メチル−フェニルシルセスキオキサン)である。
【0030】
上述のように、ポリマーの側鎖基は、任意選択的に、置換されていることができる。“置換された”とは、側鎖基上の一つ以上の水素原子が他の置換基、例えば重水素、ハロゲン、例えばフッ素、臭素及び塩素、(C
1〜C
6)アルキル、(C
1〜C
6)ハロアルキル、(C
1〜C
10)アルコキシ、(C
1〜C
10)アルキルカルボニル、(C
1〜C
10)アルコキシカルボニル、(C
1〜C
10)アルキルカルボニルオキシ、アルキルアミン、アルキルスルファー含有材料、及び類似物などによって置き換えられていることを意味する。ポリマーは、ランダムまたはブロック状のいずれかで幅広い範囲の繰り返し単位を含んでよい。ポリマーは、好ましくはGPC(ゲル透過クロマトグラフィ)で測定して、約500〜15,000の重量平均分子量(Mw)を有することができる。
【0031】
ポリマーは、更に、硬化または架橋を起こすことを可能にする二つ以上の官能性末端基を含む。このような末端基は、例えば、ヒドロキシ(Si−OH)アルコキシ(Si−Oアルキル)、例えばエトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ;カルボキシエステル、アミノ、アミド、エポキシ、イミノ、カルボキシ酸、無水物、オレフィン系、アクリル系、アセタール、オルトエステル、ビニルエーテル、及びこれらの組み合わせであることができる。これらの中で、ヒドロキシ基が典型的である。官能性末端の含有率は、ケイ素を除いて鎖末端の最後の部分の重量から計算して、例えば、ポリマーを基準にして約0.5〜35重量%、例えば約1〜10重量%、または約2〜5重量%であることができる。
【0032】
ポリマーは、更に、任意選択的に、一つ以上のシロキサン単位、例えばジフェニルまたはジメチル置換シロキサンを含むことができる。
【0033】
上記のポリマー材料は、直ぐに入手できる原料を用いて既知の方法によって製造することができる。例えば、90:10メチル−フェニルシルセスキオキサン含有コポリマーは、90重量%のメチルトリエトキシシランと10重量%のフェニルトリエトキシシランとの縮合反応によって合成することができる。
【0034】
本発明の光画像形成性誘電性組成物は、前記アルカリ可溶性ケイ素ポリマーと混和可能な水溶性有機ポリマー、及び光酸発生剤及び光塩基発生剤の少なくとも一つから選択された架橋触媒も含む。水溶性ポリマーは、ケイ素を含まないものであってもよい。
【0035】
本発明のシルセスキオキサンポリマーとはポリマーの全てが混和性であるわけではないことが見出された。ポリマーの混和性は、初期コーティングの完全性(integrity)、フォトリソグラフィプロセス、及び最終的に得られる誘電性画像にとって重要である。不混和性は、望ましくない現像剤による攻撃及び最終の画像における不完全さを招く恐れがあり、これは、誘電機能性を悪化させる。スチレン−co−アクリレートポリマーは、不混和性ポリマーの一例である。
【0036】
本発明に適した水溶性ポリマーは、例えば、ビニルラクタム類、ビニルラクトン類、ビニルイミダゾール類、ビニルピロリドン、ビニルアルコール類、ビニルアセテート類、またはこれらのコポリマーから誘導されるモノマー性単位を含む。このようなポリマーの例は、ポリ(ビニルピロリドン−co−ビニルアセテート)、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセテート及びこれらの組み合わせである。これらのポリマーは、必ずしもアルカリ可溶性ケイ素ポリマーと架橋する必要はないが、このような架橋は、本発明の知見から除外されない。水溶性ポリマーは、100℃超、例えば105℃、例えば175〜180℃のガラス転移温度(Tg)、及び10未満、例えば6未満、例えば4未満の誘電率(k)を有する。
【0037】
本発明の水溶性ポリマーは、シロキサンポリマー、好ましくはシルセスキオキサンポリマーとの組み合わせで、組成物をコーティング及び乾燥した時並びに露光、現像及び硬化等の更なる加工の間に、粘着性の無い表面を有するコーティングが達成されるように選択し得る。粘着性の無いコーティングを与えるための水溶性ポリマーの有効量は、約0.1重量%から約35重量%の間、または例えば約0.1重量%〜約25重量%、または例えば約0.5重量%〜約20重量%であり、これらの重量%は、組成物のシロキサンポリマー、好ましくはシルセスキオキサンポリマーの重量を基準とする。粘着性の無い表面は、オンコンタクト印刷を可能とし、並びにコーティング表面と他の材料との接触の結果生じる恐れのある欠陥を減らすかまたは防止する。
【0038】
本発明の水溶性ポリマーのタイプ及び量は、シロキサンポリマー、好ましくはシルセスキオキサンポリマーとの組み合わせで、ポリマーが有効量で存在する時に組成物の粘度が、125マイクロメーターまで、または100マイクロメーターまで、または75マイクロメーターまでの単コーティング厚が達成できるように上昇するように、選択することができる。該新規組成物は、5マイクロメーター超、7マイクロメーター超または10マイクロメーター超のコーティングフィルムに有用である。それ故、水溶性ポリマー及び有効量の慎重な操作によって、コーティングプロセスから結果生ずる幅広い様々なコーティング厚を達成することができる。このような有効量は、約0.1重量%から約35重量%の間、または例えば約0.1重量%〜約25重量%、または例えば約0.5重量%〜約20重量%であり、これらの重量%は、組成物のシロキサンポリマー、好ましくはシルセスキオキサンポリマーの重量を基準とする。
【0039】
本発明の水溶性ポリマーは、シロキサンポリマー、好ましくはシルセスキオキサンポリマーとの組み合わせで、コーティング、乾燥、露光、現像の後で並びにどの硬化ステップの後でも、クラックが組成物に無く、そうして結果得られる画像にもクラックが無いように選択することができる。クラックの無いコーティング及び画像を供するための水溶性ポリマーの有効量は、約0.1重量%から約35重量%の間、または例えば約0.1重量%〜約25重量%、または例えば約0.5重量%〜約20重量%であり、これらの重量%は、組成物のシロキサンポリマー、好ましくはシルセスキオキサンポリマーの重量を基準とする。
【0040】
本発明において有用な光酸発生剤は、露光時に酸を発生するものであれば任意の化合物(複数種可)であることができる。適当な光酸発生剤は既知であり、そして限定はされないが、ハロゲン化トリアジン、オニウム塩、スルホン化エステル、置換されたヒドロキシイミド、置換されたヒドロキシルイミン、アジド、ナフトキノン類、例えばジアゾナフトキノン類、ジアゾ化合物、及びこれらの組み合わせなどが挙げられる。特に有用なハロゲン化トリアジンには、例えば、ハロゲン化アルキルトリアジン、例えばトリハロメチル−s−トリアジンなどが挙げられる。s−トリアジン化合物は、或る種のメチル−トリハロメチル−s−トリアジンと或る種のアルデヒドまたはアルデヒド誘導体との縮合反応生成物である。
【0041】
弱求核性アニオンを有するオニウム塩が、本発明において光酸発生剤として使用するのに特に適している。このようなアニオンの例は、二価乃至七価金属または非金属、例えばアンチモン、スズ、鉄、ビスマス、アルミニウム、ガリウム、インジウム、チタン、ジルコニウム、スカンジウム、クロム、ハフニウム、銅、ホウ素、リン及びヒ素のハロゲン錯体アニオンである。適当なオニウム塩の例には、限定はされないが、ジアゾニウム塩、例えば周期律表の第VA及びB族、第IIA及びB族、及び第I族のジアリール−ジアゾニウム塩及びオニウム塩、例えばハロニウム塩、例えばヨードニウム塩、第四アンモニウム、ホスホニウム及びアルソニウム塩、スルホニウム塩、例えば芳香族スルホニウム塩、スルホキソニウム塩またはセレニウム塩などが挙げられる。適当なオニウム塩の例は、例えばUS4,442,197(特許文献2)、US4,603,101(特許文献3)及びUS4,624,912(特許文献3)に記載されている。トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェートなどのスルホニウム塩及びこれらの混合物が例である。本発明において光酸発生剤として有用なスルホン化エステルには、例えばスルホニルオキシケトン類などが挙げられる。
【0042】
適当なスルホン化エステルには、限定はされないが、ベンゾイントシレート、t−ブチルフェニルアルファ−(p−トルエンスルホニルオキシ)アセテート、2,6−ジニトロベンジルトシレート、及びt−ブチルアルファ(p−トルエンスルホニルオキシ)アセテートなどが挙げられる。このようなスルホン化エステルは、例えばthe Journal of Photopolymer Science and Technology,Vol.4,No.3,337−340(1991)(非特許文献1)に開示されている。
【0043】
使用し得る置換されたヒドロキシイミド類には、例えばn−トリフルオロメチルスルホニルオキシ−2,3−ジフェニルマレイミド及び2−トリフルオロメチルベンゼンスルホニルオキシ−2,3−ジフェニルマレイミドなどが挙げられる。適当な置換されたヒドロキシルイミン類には、例えば、2−(−ニトリロ−2−メチルベンジリデン)−(5−ヒドロキシイミノブチルスルホニル)チオフェンなどが挙げられる。本発明において有用なアジドには、例えば、2,6−(4−アジドベンジリデン)シクロヘキサノンなどが挙げられる。ナフトキノン類には、例えば、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノンの2,1−ジアゾナフトキノン−4−スルホネートエステルなどが挙げられ得る。
【0044】
ジアゾ化合物の中では、1,7−ビス(4−クロロスルホニルフェニル)−4−ジアゾ−3,5−ヘプタンジオンを使用することができる。
【0045】
本発明において有用な光塩基発生剤は、露光時に塩基を遊離する任意の化合物(複数種可)であることができる。適当な光塩基発生剤には、限定はされないが、ベンジルカルバメート類、例えばO−2−ニトロベンジル−N−シクロヘキシルカルバメート、ベンゾインカルバメート類、O−カルバモイルヒドロキシアミン類、O−カルバモイルオキシム類、芳香族スルホンアミド類、アルファ−ラクタム類、N−(2−アリルエテニル)アミド類、アリールアジド化合物、N−アリールホルムアミド類、4−(オルト−ニトロフェニル)ジヒドロキシピリジン類及びこれらの組み合わせなどが挙げられる。
【0046】
露光領域から未露光領域への酸の移動の制御を助けるために組成物にクエンチャを加えてもよい。クエンチャは、一般的に、アミン系材料、例えばトリエチルアミン、トリエタノールアミン、アニリン、エチレンジアミン、ピリジン、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシドまたはそれの塩である。非揮発性アミン系クエンチャの使用も含まれる。他のアミン類は、塩基性、低揮発性及びレジスト調合物中での溶解性を維持しながら、求核反応性を妨げるように立体障害構造を有し、例えばプロトンスポンジ、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、ジイソプロピルアニリン、環状アルキルアミン、メラミン誘導体もしくはポリマー、グリコールウリル類もしくはその誘導体、またはUS6,274,286(特許文献4)に記載のものなどのポリエーテル含有アミン類などが挙げられる。
【0047】
本発明の組成物は、任意選択的に、一種以上の溶媒を含むことができる。このような溶剤は、本発明の組成物の調合の助けとなり、また基材上に本発明の組成物をコーティングする時の助けとなる。幅広い様々な溶媒を使用し得る。適当な溶媒には、限定はされないが、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類、二塩基性エステル類、プロピレンカーボネートなどのカーボネート類、γ−ブチロラクトン;乳酸エチル、酢酸n−アミル及び酢酸n−ブチルなどのエステル類;n−プロパノール、イソプロパノールなどのアルコール類;シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン及び2−ヘプタノンなどのケトン類;γ−ブチロラクトン及びγ−カプロラクトンなどのラクトン類;ジフェニルエーテル及びアニソールなどのエーテル類、メシチレン、トルエン及びキシレンなどの炭化水素、及びN−メチル−2−ピロリドン、N,N’−ジメチルプロピレン尿素などの複素環式化合物、またはこれらの混合物などが挙げられる。
【0048】
本発明はまた、本発明により開示される組成物を使用する方法にも関する。本発明の組成物は、当業者には周知の技術、例えばディップコート法、スピンコート法もしくはスプレーコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、フラッドコート法、スクリーンコート法、及びスロットコート法を用いて基材上にコーティングすることができる。コーティング及び基材は、次いでホットプレートまたは対流炉または他の周知の加熱方法で加熱して、コーティングから溶媒を実質的に除去する。ここで使用する“溶媒を実施的に除去する”という記載は、残った溶媒が、約5重量%未満の濃度である程度まで溶媒を除去することを意味する。
【0049】
ここで、コーティング及び基材を化学線で像様露光する。露光は、オンコンタクトオンコンタクト印刷技術またはオフコンタクト印刷技術を用いて工業的に周知の幾つかの露光ツールによって供することができる。本発明の方法に適した化学線には、g線、i線、h線、並びに例えばKrF及びArF放射線、極端UV線などの半導体レーザー放射線などが挙げられる。電子ビーム、及びX線、一般的に約450nm〜約6nmの任意の放射線を露光に使用し得る。
【0050】
コーティングの露光された領域は、以下に記載の現像プロセスに耐えるように十分に硬化され得る。しかし、ここで、任意選択的に、コーティング及び基材をホットプレートまたは対流炉または他の周知の加熱方法を用いて加熱して、コーティングの露光された領域を更に硬化してもよい。次いで、コーティングは水性アルカリ性現像剤中で現像され、これはコーティングの未露光の領域を除去する。適当な水性現像剤には、例えば、水中の水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、並びに水中のテトラメチルアンモニウムヒドロキシドなどのテトラアルキルアンモニウムヒドロキシドなどが挙げられる。このような現像剤は、典型的には、0.1〜2N、例えば0.15〜1.0N、または0.26〜0.7Nの濃度で使用される。現像剤溶液は、任意選択的に、一種以上の既知の界面活性剤、例えばポリエチレングリコール、アルキルスルホネート類、及び当技術分野において周知の他の界面活性剤を含んでいてもよい。界面活性剤は、典型的には、0.01〜3重量%の量で現像剤中に含まれる。消泡剤も、現像剤中に有利に含まれ得る。
【0051】
生じる誘電性画像は、上述したような加熱技術を用いた更なる加熱によって更に硬化してもよい。
【0052】
上記の組成物及び方法は、誘電性材料が使用される電子デバイス及び部品に適している。このようなデバイス及び部品には、半導体デバイスのための集積回路、マルチチップモジュール、半導体パッケージング、パッシベーション層、再配線層、バッファ層、LCDデバイス、フラットパネルディスプレーデバイス、MEMS、発光ダイオード、並びに他の電子デバイスなどにおける誘電性層が挙げられる。
【実施例】
【0053】
例1:
409.74gの90:10メチル:フェニルシルセスキオキサンポリマー(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)中69.0%固形物)、29.76gのポリ(ビニルピロリドン−co−ビニルアセテート)ポリマー(プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)中50%固形物(Sigma−Aldrichから入手可能))、及び29.76gのIrgacure 108(メチルイソブチルケトン(MIBK)中20.0%固形物:Cibaから入手可能)をPGME中に溶解して、60%全固形物を達成した。
【0054】
得られた光画像形成性誘電性組成物を濾過し、そして0.1524m(6インチ)ケイ素ウェハ上にスピンコートしそして90℃で60秒間ソフトベークして、フィルム厚が10.1マイクロメーターの粘着性が無くかつクラックの無いフィルムを得た。このフォトレジストフィルムを、Ultratechステッパで広帯域光にパターン様に暴露し、そして80℃で60秒間ポスト露光ベークした。次いで、2.38重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)現像剤を用いて30秒間のパドル現像を行い、9.6マイクロメーターのフィルム厚で図形を解像した。断面走査電子顕微鏡(X−SEM)結果は、該組成物及び方法が、10ミクロン微小寸法(CD)で1:1コンタクトホールを、10マイクロメーターCDで1:1ポストパターンを、及び10ミクロンCDで1:1トレンチパターンを解像したことを示した。
【0055】
結果生じたパターン化された誘電性画像の二つを、それぞれ、窒素雰囲気下にホットプレート上で200℃及び250℃で60分間ベークした。チップ上の硬化された誘電性フィルムをX−SEMで検査した。クラックは観察されなかった。加えて、CD縮小もパターンプロフィル変化も観察されなかった。
【0056】
例1から得られた誘電性フィルムの電気的性質を、CVmap92システムを用いて測定した(C−V及びI−V測定)。誘電率は、Hgプローブを備えたMIS構造によって測定し、3.69の値が得られた。
【0057】
機械的性質は、インストルメンテッド・インデンテーションの規格であるASTM E2546及びISO 14577をベースとしたナノインデンテーション法によって測定した。モジュラス及び硬度は、それぞれ3.35GPa及び0.19GPaであった。
【0058】
例2
84.12gの90:10メチル:フェニルシルセスキオキサンポリマー(PGMEA中69.0%固形物)、12.90gのポリ(ビニルピロリドン−co−ビニルアセテート)ポリマー(PGME中50%固形物)(Sigma−Aldrichから入手可能)、及びIrgacure 108(2−メチル−アルファ−[2−[[オクチルスルホニル)オキシ]イミノ]−3(2H)−チエニリデン]ベンゼンアセトニトリル、MIBK中20.0%固形物)を、PGME中に溶解して、64.6%全固形物を達成した。
【0059】
生じた光画像形成性誘電性組成物を濾過し、0.2032m(8インチ)ケイ素ウェハ上にスピンコートし、そして140℃で30秒間ソフトベークして、フォトレジストフィルムを得た。次いで、同じ調合物を、上記のウェハの表面にもう一度コーティングし(ダブルコート)、そして140℃で300秒間ソフトベークして、フィルム厚が150マイクロメーター超のフォトレジストフィルムを得た。このフォトレジストフィルムを、Suss Aligner上で広帯域光にパターン様に暴露し、そして80℃で80秒間ポスト露光ベークした。次いで、2.38重量%TMAH現像剤を用いた90秒間のパドル現像ステップを四回行って、フィルム厚が130マイクロメーターの図形を解像した。広帯域リソグラフィーによって暴露されたこの誘電性画像のX−SEM結果は、30マイクロメーターのターゲットCDで孤立トレンチパターンを、並びに20マイクロメーターターゲットCDで孤立トレンチパターンを解像できたことを示した。
【0060】
次いで、得られたパターン化された誘電性フィルムを、窒素雰囲気下にホットプレートで200℃で60分間ベークした。チップ上の硬化した誘電性フィルムをX−SEMで検査した。クラックは観察されなかった。加えて、CD縮小も、パターンプロフィル変化も観察されなかった。
【0061】
例3:
164.39gの90:10メチル:フェニルシルセスキオキサンポリマー(PGMEA中69.0%固形物)、11.94gのポリビニルピロリドンポリマー(PGME中50%固形物)(Sigma−Aldrichから入手可能)、及び11.94gのIrgacure 108(MIBK中20.0%固形物)をPGME中に溶解して60%全固形物を達成した。生じた光画像形成性誘電性組成物を濾過し、0.1524m(6インチ)ケイ素ウェハ上にスピンコートし、そして95℃で60秒間ソフトベークして、フィルム厚が10.5マイクロメーターのフォトレジストフィルムを得た。これらのフォトレジストフィルムを、Ultratechステッパ上で広帯域光にパターン様に暴露し、そしてそれぞれ90℃/60秒間、95℃/60秒間、及び100℃/60秒間でポスト露光ベークした。次いで、2.38重量%TMAH現像剤を用いて30秒間のパドル現像ステップを行って、約10マイクロメーターのフィルム厚の図形を解像した。次いで、得られたパターン化された誘電性フィルムを、窒素雰囲気下にホットプレートで250℃で60分間ベークした。
【0062】
チップ上の硬化した誘電性フィルムをX−SEMで検査した。クラックは観察されなかった。加えて、CD縮小も、パターンプロフィル変化も観察されなかった。10ミクロンCDの1:1緻密トレンチパターンが容易に解像された。次いで、得られたパターン化された誘電性フィルムを、窒素雰囲気下にホットプレートで250℃で60分間ベークした。チップ上の硬化した誘電性フィルムをX−SEMで検査した。クラックは観察されなかった。加えて、CD縮小も、パターンプロフィル変化も観察されなかった。
【0063】
例4:
252.06gの90:10メチル:フェニルシルセスキオキサンポリマー(PGMEA中71.30%固形物)、39.94gのポリ(ビニルピロリドン−co−ビニルアセテート)ポリマー(PGME中50%固形物)(Sigma−Aldrichから入手可能)、及び9.98gのIrgacure 108(MIBK中20.0%固形物)をPGMEA中に溶解して66.8%全固形物を達成した。生じた光画像形成性誘電性組成物を濾過し、0.1524m(6インチ)ケイ素ウェハ上にスピンコートし、そして140℃で300秒間ソフトベークし、その後、他のコーティング及び140℃で300秒間のソフトベークを行って、フィルム厚が約80μmのフィルムを得た。このフォトレジストフィルムを、Suss Alinerで広帯域光にパターン様に暴露し、そして80℃で80秒間ポスト露光ベークした。次いで、2.38重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)現像剤を用いて60秒間のパドル現像を三回行って、フィルム厚が約80マイクロメーターの40ミクロンラインの図形を解像した。得られたパターン化された誘電性画像の二つを、窒素雰囲気下にホットプレート上で温度ランピングを用いて200℃で60分間ベークした。チップ上の硬化した誘電性フィルムを顕微鏡で検査した。クラックは観察されなかった。
【0064】
比較例:
21.25gの90:10メチル:フェニルシルセスキオキサンポリマー(PGMEA中69.0%固形物)、及び0.146gのNIN PAG(N−ヒドロキシナフタルイミドノナフレート、Toyo Gosei,Tokyo,Japanから入手可能)をPGMEA中に溶解して59%全固形物を達成した。
【0065】
生じた光画像形成性誘電性組成物を濾過し、そして6インチケイ素ウェハ上にスピンコートし、そして90℃で120秒間ソフトベークして、フィルム厚が10.1マイクロメーターのフォトレジストフィルムを得た。このフォトレジストフィルムを、ASMLステッパでi線(365nm)光にパターン様に暴露し、そして60℃で30秒間ポスト露光ベークした。次いで、2.38重量%TMAH現像剤を用いた30秒間のパドル現像を行って、フィルム厚が9.6マイクロメーターの図形を解像した。
【0066】
次いで、得られたパターン化された誘電性フィルムを、それぞれ窒素雰囲気下にホットプレートで250℃で30分間ベークした。チップ上の硬化した誘電性フィルムを光学顕微鏡で検査した。ひどいクラックが観察された。それ故、わずか9.6マイクロメーターのフィルムは、ひどくクラックが生じたフィルムを与え、そしてこの組成物ではより厚いコーティングはリソグラフィーの面で有用ではない。
本願は特許請求の範囲に記載の発明に係るものであるが、本願の開示は以下も包含する。
1.
(a)次式の少なくとも一種の繰り返し単位を有しかつ複数の官能性末端基を有するアルカリ可溶性ポリマー、
【化3】
[R1は非加水分解性の基であり、そしてnは2〜3の範囲の整数であり、前記ポリマーは、架橋剤で架橋させることができる]
(b)前記アルカリ可溶性ポリマーと混和性の水溶性有機ポリマー、及び
(c)光酸発生剤及び光塩基発生剤の少なくとも一種から選択される架橋触媒、
を含む、光画像形成性誘電性組成物。
2.
非加水分解性の基が、水素、置換されたアルキル、アルキル、置換されたモノシクロアルキル、モノシクロアルキル、ポリシクロアルキル、置換されたポリシクロアルキル、置換された単環式アリール、単環式アリール、置換された多環式アリール、多環式アリール、置換された単環式アラルキル、単環式アラルキル、多環式アラルキル、置換された多環式アラルキル、カルボキシ及びカルビノールから選択される、請求項1に記載の組成物。
3.
官能性末端基が、ヒドロキシ、アルコキシ、エポキシ類、オキセタン類、ビニルエーテル類、マレイミド類、フェノール類、(メタ)アクリレート類、チオール類、カルボン酸エステル類、カルボニル官能基、及びスルホネートエステル類から選択される、請求項1または2に記載の組成物。
4.
水溶性有機ポリマーが、約100℃超のガラス転移温度及び約10未満の誘電率を有する、請求項1〜3のいずれか一つに記載の組成物。
5.
コーティング及び乾燥後に、光画像形成後に、及び熱硬化、光硬化もしくは両者の後に、4未満の誘電率を有する絶縁性組成物を供する、請求項1〜4のいずれか一つに記載の組成物。
6.
水溶性有機ポリマーが、コーティング及び乾燥後に、光画像形成後に、及び/または熱硬化、光硬化もしくは両者の後にクラックの無い組成物を供するための有効量で組成物中に含まれる、請求項1〜5のいずれか一つに記載の組成物。
7.
クエンチャを更に含む、請求項1〜6のいずれか一つに記載の組成物。
8.
堆積及び乾燥後に粘着性の無いコーティングを供する、請求項1〜7のいずれか一つに記載の組成物。
9.
水溶性有機ポリマーが、ビニルラクタム類、ビニルラクトン類、ビニルイミダゾール類、ビニルピロリドン、ビニルアルコール類、ビニルアセテート類、またはこれらのコポリマーから誘導されるモノマー性単位を含む、請求項1〜8のいずれか一つに記載の組成物。
10.
水溶性有機ポリマーが、コーティングされた時に約5マイクロメーター超のコーティングを与えるための有効量で組成物中に含まれる、請求項1〜9のいずれか一つに記載の組成物。
11.
a)請求項1〜10のいずれか一つに記載の組成物で基材をコーティングするステップ、b)組成物を加熱して溶媒を実質的に除去するステップ、
c)乾燥した組成物を化学線で像様露光するステップ、
d)任意選択的に、露光された組成物を加熱してそれを更に硬化するステップ、
e)水性アルカリ性現像剤を用いて組成物を現像して、組成物の未露光の部分を除去するステップ、及び
f)任意選択的に、得られた露光及び現像された組成物を加熱してそれを更に硬化するステップ、
を含む、基材上に誘電性パターンを形成する方法。
12.
誘電性パターンにクラックがない、請求項11に記載の方法。
13.
コーティングが、約5マイクロメーター超である、請求項11または12に記載の方法。
14.
コーティング及び乾燥後に組成物に粘着性が無い、請求項11〜13のいずれか一つに記載の方法。
15.
請求項11〜14のいずれか一つに記載の方法によって製造されるデバイス。
16.
基材上での誘電性パターンの形成における、請求項1〜11のいずれか一つに記載の組成物の使用。