特許第5941564号(P5941564)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5941564
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月29日
(54)【発明の名称】ケーブル被覆剥ぎ取り工具
(51)【国際特許分類】
   H02G 1/12 20060101AFI20160616BHJP
   B26B 27/00 20060101ALI20160616BHJP
【FI】
   H02G1/12 009
   H02G1/12 017
   H02G1/12 029
   B26B27/00 G
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-3263(P2015-3263)
(22)【出願日】2015年1月9日
【審査請求日】2015年1月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000215202
【氏名又は名称】通研電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100153110
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100131037
【弁理士】
【氏名又は名称】坪井 健児
(72)【発明者】
【氏名】田村 憲
(72)【発明者】
【氏名】矢澤 暁洋
(72)【発明者】
【氏名】立花 哲也
(72)【発明者】
【氏名】奈良 洋一
【審査官】 神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−40952(JP,A)
【文献】 実開昭62−67576(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/12
B26B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面が把持部となる工具本体と、
刃を下方にして前記工具本体の前端から延出して設けられる切断刃と、
前記工具本体の前端から前記切断刃を露出させて覆うガイド部材と、
下面が把持部となると共に、前記工具本体の後端に軸着され、回動して前記工具本体の下面を収納する本体カバーとを備え、
該本体カバーが、前記工具本体の前端に設けた前記ガイド部材を挟むように配置されており、前記工具本体の前端から露出した前記切断刃に対向する位置に、ケーブルを位置決めする凹部を有していることを特徴とするケーブル被覆剥ぎ取り工具。
【請求項2】
前記ガイド部材は、前記工具本体の前端から露出した前記切断刃の先端部よりも下方に延出して設けられた係合爪を有し、該係合爪は、その厚みが前記切断刃の先端部から下方に向けて次第に薄く形成されていることを特徴とする請求項1に記載のケーブル被覆剥ぎ取り工具。
【請求項3】
前記切断刃は、薄板状の刃であり、当該薄板状の刃の根元が前記切断刃の先端部として前記工具本体の前端から露出することを特徴とする請求項1または2に記載のケーブル被覆剥ぎ取り工具。
【請求項4】
前記本体カバーは、前記工具本体の後端に軸着される軸部を有し、該軸部は、放射状に突出して前記工具本体に接触する突起を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のケーブル被覆剥ぎ取り工具。
【請求項5】
前記工具本体は、該工具本体の厚み方向に撓んで前記本体カバーに係合可能なストッパを有し、前記本体カバーは、前記ストッパに係合する係合穴を有することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のケーブル被覆剥ぎ取り工具。
【請求項6】
前記工具本体の下面は、前記切断刃の略中央部を露出させる開口を有し、前記本体カバーは、閉じた状態で、前記工具本体から露出した前記切断刃の略中央部を収納し、開けた状態で、前記開口から前記切断刃の略中央部を露出させることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のケーブル被覆剥ぎ取り工具。
【請求項7】
前記工具本体は、前記上面の近傍であって前記切断刃の略中央部を露出させる開口に対向した位置に、外側に突出した突出部を有し、前記本体カバーは、前記開口に対向した位置に、前記本体カバーの下面に向けて湾曲した湾曲部を有することを特徴とする請求項6に記載のケーブル被覆剥ぎ取り工具。
【請求項8】
前記工具本体の後端は、前記本体カバーを軸着するカバー支持部と、ストラップを通すストラップ設置部とを有し、該ストラップ設置部が、開いた状態の前記本体カバーの端部に当接することにより、該本体カバーの回動範囲を規制することを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のケーブル被覆剥ぎ取り工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブル被覆剥ぎ取り工具に関し、詳細には、通信用ケーブルや、制御回路の配線用ケーブルなどの外被の剥ぎ取りに好適なケーブル被覆剥ぎ取り工具に関する。
【背景技術】
【0002】
通信用ケーブルや、制御回路等の配線に用いられる配線用ケーブルを敷設する場合、外被(ケーブル被覆ともいう)を除去して電線の端部を露出させた後、この電線の端部に配線端子を取り付ける。また、複数の電線(芯線)を束ねたケーブルを敷設する場合、露出した各芯線の端部に配線端子を取り付けるが、配線端子を取り付ける前にケーブル被覆を所定長さに亘って剥ぎ取る必要がある。
【0003】
ケーブル被覆を剥ぎ取る場合に汎用のカッターナイフを用いると、不慣れな作業者は負傷するおそれがある。そこで、例えば、特許文献1には、作業者にとって安全なケーブル被覆剥ぎ取り工具の技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5130412号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ケーブルの長手方向に沿ってケーブル被覆を切り裂く作業(縦切り作業ともいう)では、作業者は、ケーブルのうち、ケーブルの切り込み位置から離れた位置を掴んでいることが多い。この場合、特許文献1に記載のケーブル被覆剥ぎ取り工具では、切断刃によるケーブル被覆への切り込み角度が安定せず、ケーブル被覆をその長手方向に沿って切り裂きにくいという問題があった。
【0006】
本発明は、上述のような実情に鑑みてなされたもので、ケーブル被覆をその長手方向に沿って切り裂きやすくするケーブル被覆剥ぎ取り工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の技術手段は、上面が把持部となる工具本体と、刃を下方にして前記工具本体の前端から延出して設けられる切断刃と、前記工具本体の前端から前記切断刃を露出させて覆うガイド部材と、下面が把持部となると共に、前記工具本体の後端に軸着され、回動して前記工具本体の下面を収納する本体カバーとを備え、該本体カバーが、前記工具本体の前端に設けた前記ガイド部材を挟むように配置されており、前記工具本体の前端から露出した前記切断刃に対向する位置に、ケーブルを位置決めする凹部を有していることを特徴とする。
【0008】
第2の技術手段は、第1の技術手段において、前記ガイド部材は、前記工具本体の前端から露出した前記切断刃の先端部よりも下方に延出して設けられた係合爪を有し、該係合爪は、その厚みが前記切断刃の先端部から下方に向けて次第に薄く形成されていることを特徴とする。
【0009】
第3の技術手段は、第1または2の技術手段において、前記切断刃は、薄板状の刃であり、当該薄板状の刃の根元が前記切断刃の先端部として前記工具本体の前端から露出することを特徴とする。
【0010】
第4の技術手段は、第1から3のいずれか一の技術手段において、前記本体カバーは、前記工具本体の後端に軸着される軸部を有し、該軸部は、放射状に突出して前記工具本体に接触する突起を有することを特徴とする。
【0011】
第5の技術手段は、第1から3のいずれか一の技術手段において、前記工具本体は、該工具本体の厚み方向に撓んで前記本体カバーに係合可能なストッパを有し、前記本体カバーは、前記ストッパに係合する係合穴を有することを特徴とする。
【0012】
第6の技術手段は、第1から5のいずれか一の技術手段において、前記工具本体の下面は、前記切断刃の略中央部を露出させる開口を有し、前記本体カバーは、閉じた状態で、前記工具本体から露出した前記切断刃の略中央部を収納し、開けた状態で、前記開口から前記切断刃の略中央部を露出させることを特徴とする。
【0013】
第7の技術手段は、第6の技術手段において、前記工具本体は、前記上面の近傍であって前記切断刃の略中央部を露出させる開口に対向した位置に、外側に突出した突出部を有し、前記本体カバーは、前記開口に対向した位置に、前記本体カバーの下面に向けて湾曲した湾曲部を有することを特徴とする。
【0014】
第8の技術手段は、第1から7のいずれか一の技術手段において、前記工具本体の後端は、前記本体カバーを軸着するカバー支持部と、ストラップを通すストラップ設置部とを有し、該ストラップ設置部が、開いた状態の前記本体カバーの端部に当接することにより、該本体カバーの回動範囲を規制することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、本体カバーが、工具本体のカバーの他、ケーブルの縦切り作業時のガイドとして機能し、本体カバーの凹部が切断刃によるケーブル被覆への切り込み角度を安定させるので、ケーブル被覆をその長手方向に沿って切り裂きやすくなる。この結果、縦切り作業時の操作性向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係るケーブル被覆剥ぎ取り工具の概要を示す斜視図である。
図2図1の工具本体の斜視図である。
図3図1の工具本体の底面図である。
図4図1の工具本体の内部を説明する図である。
図5図1の本体カバーの斜視図である。
図6図1の本体カバーの底面図である。
図7図1の本体カバーの側面図である。
図8図1の本体カバーの分解斜視図である。
図9図1のケーブル被覆剥ぎ取り工具の使用態様を示す図である。
図10図1のケーブル被覆剥ぎ取り工具の使用態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下図を参照して、本発明に係るケーブル被覆剥ぎ取り工具を説明する。図1は、本発明に係るケーブル被覆剥ぎ取り工具の概要を示す斜視図である。
ケーブル被覆剥ぎ取り工具は、工具本体1と本体カバー40とからなり、工具本体1の内部に、切断刃20およびガイドプレート30を備えている。なお、ガイドプレート30が本発明のガイド部材に相当する。
【0018】
図2は、図1の工具本体の斜視図、図3は、図1の工具本体の底面図であり、図4は、図1の工具本体の内部を説明する図である。
工具本体1は、例えば、右側(裏面部材15に相当する)と左側(正面部材10に相当する)の2枚で構成され、硬質プラスチック材で形成される。正面部材10および裏面部材15の各内壁にはスペーサとして機能するボス(図示省略)が形成されている。正面部材10と裏面部材15を突き合わせ、各ネジ孔14にネジ17をそれぞれ挿入して正面部材10と裏面部材15を締結すると、上面2が把持部として機能する。
【0019】
工具本体1は、上面2の反対側に下面3を有し、また、その長手方向の両端に前端4と後端5とを有する。工具本体1の内部には、後述のように切断刃20が刃を下方にして配置されており、図2,4に示す先端位置の刃部22が図3に示す前端4の開口4aから延出している。また、下面3の例えば略中間位置には、上面2に向けて湾曲した湾曲開口3aが形成され、図4に示すように、略中央位置の刃部23が湾曲開口3aから露出している。この略中央位置の刃部23がケーブル被覆をケーブルの円周方向に切り裂くために機能する。なお、湾曲開口3aが本発明の開口に相当し、略中央位置の刃部23が本発明の切断刃の略中央部に相当する。
【0020】
後端5には、本体カバー40を軸着するカバー支持部7や、ストラップ(図示省略)を通すストラップ設置部6がそれぞれ設けられている。ストラップ設置部6は、開いた状態の本体カバー40の端部に当接することにより、本体カバー40の回動範囲を90度に規制できる。
図2,3に示すように、工具本体1の正面部材10には、例えば前端4の近傍に、ストッパ11が形成されている。ストッパ11は、工具本体1の厚み方向に撓んで本体カバー40に係合可能である。
【0021】
また、工具本体1の正面部材10や裏面部材15には、例えば上面2の近傍であって湾曲開口3aに対向した位置に、外側に突出した突出部12や突出部16がそれぞれ形成されており、例えば右手の親指で正面部材10の突出部12に、右手の人差し指で裏面部材15の突出部16にそれぞれ触れて工具本体1を摘まんでおけば、ストッパ11による工具本体1と本体カバー40との係合を解除した場合、本体カバー40を工具本体1に対して容易に開くことができる。
【0022】
切断刃20は、例えば、工具鋼で構成され、汎用のカッターナイフに使用される薄板状の刃であり、正面視で平行四辺形をなし、下方に鋭利な切れ刃が形成されている。切断刃20には、切れ刃に対して所定角度をなす刃折り線(図示省略)が片面(切断刃20の表面)に一定のピッチで設けられている。また、この薄板状の刃の根元には、図4に示した工具本体1の裏面部材15の内壁に形成されたボス33に係合する貫通孔(図示省略)が設けられている。汎用のカッターナイフは入手が容易であり、ケーブル被覆剥ぎ取り工具の製造コストの低廉化にも寄与する。
【0023】
そして、図4に示すように、切断刃20は、上記刃折り線を有した表面を下側にして工具本体1の裏面部材15の内壁に載置されると、この薄板状の刃の先端20a(切れ刃と鋭角に交差する切断刃20の端縁を含む部分)が工具本体1の後端5に対峙し、刃の根元20b(切れ刃と鈍角で交差する切断刃20の端縁を含む部分)の刃部分が先端位置の刃部22として工具本体1の前端4から露出している。この先端位置の刃部22が本発明の切断刃の先端部に相当し、ケーブル被覆をケーブルの長手方向に切り裂くために機能する。このように、正面視で平行四辺形に形成された薄板状の刃の根元20bをケーブルの縦切り作業時に使用すれば刃の欠ける可能性が少ないため、刃の先端20aを使用した場合に比べて刃の耐久性が向上し、切断刃の交換頻度を減らすことができる。
【0024】
ガイドプレート30は、切断刃20の裏面の一部を押圧可能な押え部31を有し、各ネジ孔14にネジ17をそれぞれ挿入して工具本体1の正面部材10と裏面部材15を締結すると、切断刃20も工具本体1に固定される。なお、押え部31には、各ネジ孔14の間に、工具本体1のボス33に係合する貫通孔が形成されている。
また、ガイドプレート30は、先端位置の刃部22を除いて刃の根元20bを覆い、工具本体1の前端4から露出している。
【0025】
具体的には、ガイドプレート30は、刃の根元20bの形状に沿って形成されており、その端部に係合爪32を有している。係合爪32は、切れ刃と鈍角で交差する切断刃20の端縁に沿って延出して設けられ、先端位置の刃部22よりも例えば1mm程度下方に突出した延出部32aを有している。
また、係合爪32の厚みは、例えば、延出部32aが下方に向けて次第に薄く形成されており、ケーブルの縦切り作業時には、係合爪32がケーブル被覆に滑らかに食い付き、その直後に、先端位置の刃部22がケーブル被覆を切り裂くことができる。なお、係合爪32の厚みを、延出部32aよりも上方、つまり、切断刃20の端縁に対向した位置から下方に向けて次第に薄く形成してもよい。
【0026】
図5は、図1の本体カバーの斜視図、図6は、図1の本体カバーの底面図、図7は、図1の本体カバーの側面図である。また、図8は、図1の本体カバーの分解斜視図である。
本体カバー40は、例えば硬質プラスチック材製の右側(裏面部材55に相当する)と左側(正面部材50に相当する)の2枚で構成され、図7,8(A)に示すように、正面部材50および裏面部材55の各内壁にはスペーサとして機能するボス53およびボス56が形成されている。正面部材50と裏面部材55を突き合わせ、ボス53とボス56にそれぞれ設けられた各ネジ孔54に、ネジ57をそれぞれ挿入して正面部材50と裏面部材55を締結すると、本体カバー40の下面41が把持部として機能する。
【0027】
本体カバー40は、下面41の上方に収納溝43を有し、また、その長手方向の両端にケーブル支持部44と軸部42とを有する。軸部42は、図2で説明した工具本体1のカバー支持部7に軸着されるが、軸部42の外周面には、放射状に突出してカバー支持部7に接触する突起42aが形成されている。突起42aで接触すれば接触面積が少なくなるので、本体カバーが工具本体に対して滑らかに回動できる。
【0028】
図5,8(B)に示すように、本体カバー40の正面部材50には、図2で説明した工具本体1のストッパ11に対向した位置に、係合穴51が形成されている。ストッパ11と係合穴51との係合により、本体カバーを工具本体に容易に固定できる。
また、正面部材50および裏面部材55には、工具本体1の湾曲開口3aや突出部12,16に対向した位置に、本体カバー40の下面41に向けて湾曲した湾曲部52が形成されており、突出部12,16を摘まみやすくしていると共に、湾曲開口3aと協働して横切り作業時にケーブルを固定しやすくしている。なお、正面部材50および裏面部材55の外側には、湾曲部52の形成による本体カバー40の強度を補うために、補強片52aが形成される。
【0029】
一方、収納溝43は、本体カバー40が閉じる方向に回動すると、図3,4で説明した工具本体1の略中央位置の刃部23を露出させる下面3を収納できる。また、ケーブル支持部44は、本体カバー40が工具本体1の下面3を収納すると、図1に示すように、工具本体1の前端4よりも前方に突出して、ガイドプレート30を挟むように配置される。
ここで、本体カバー40は、先端位置の刃部22に対向する位置に、凹部45を有している。詳しくは、図5〜7に示すように、凹部45は、下面41の前端付近に設けられ、本体カバー40の軸部42に向けて凹んでおり、後述するケーブルの外周面に当接してケーブルを位置決めできる。
【0030】
図9,10は、図1のケーブル被覆剥ぎ取り工具の使用態様を示す図であり、図9は、ケーブルの縦切り作業を示し、図10は、ケーブルの横切り作業を示している。
図9に示した縦切り作業では、ケーブル被覆剥ぎ取り工具を閉じた状態にし、作業者は、例えば右手の人差し指、中指、薬指、小指で工具本体1の上面2を、右手の親指や母指球で本体カバー40の下面41で把持する。一方、例えば左手でケーブルC(例えば10mm〜30mmの外径が好適である)を把持する。
【0031】
次いで、ケーブルCの端部を係合爪32の先端付近に配置し、ケーブルCの外周面を凹部45に当接させる。
そして、工具をケーブルCの長手方向に沿って下方に引くと、係合爪32がケーブル被覆C1に食い付いた後、露出した先端位置の刃部22がケーブル被覆C1を切り裂くので、剥ぎ取りが必要な長さに到達するまで切り裂くことができる。
【0032】
このように、本体カバー40が、工具本体1のカバーの他、ケーブルの縦切り作業時のガイドとして機能し、本体カバーの凹部45が切断刃によるケーブル被覆C1への切り込み角度を安定させるので、ケーブル被覆C1をその長手方向に沿って切り裂きやすくなる。この結果、縦切り作業時の操作性向上を図ることができる。
【0033】
図10に示した横切り作業では、作業者は、工具本体1の正面部材10および本体カバー40の正面部材50を手前に向け、例えば右手の親指で正面部材10の突出部12に、右手の人差し指で裏面部材15の突出部16に触れて工具本体1を摘まむ。一方、例えば左手の人差し指で本体カバー40の裏面部材55を支持しておき、左手の親指でストッパ11を押して係合穴51との係合を解除すると、本体カバー40を工具本体1に対して開くことができる。
【0034】
そして、工具をケーブルCの太さに合わせて開いた状態にし、図3,4で説明した略中央位置の刃部23を露出させ、図10に示すように、工具本体1の湾曲開口3aと本体カバー40の湾曲部52でケーブルCを挟む。作業者は、例えば右手の親指や母指球で工具本体1の上面2を、右手の人差し指、中指、薬指、小指で本体カバー40の下面41で把持する。一方、例えば左手でケーブルCを把持する。
【0035】
次いで、工具をケーブルの円周方向に沿って回動すると、略中央位置の刃部23がケーブル被覆C1をその円周方向に切り裂くことができる。
よって、種々のケーブルに対し、ケーブルの端部の被覆に係合爪を係合し、縦切りした後に横切りすることにより、ケーブル被覆を任意の長さで簡単に剥ぎ取ることができる。
また、途中位置のケーブル被覆を剥ぎ取る場合は、剥ぎ取りが必要な両端2箇所でケーブル被覆を横切りし、次いで、この横切りした部分に係合爪を係合させてケーブル被覆を縦切りすればよい。
【0036】
また、上記実施例では、例えば射出成型によって大量に製造可能にするために、工具本体及び本体カバーがいずれも右側と左側の2枚からなる例を挙げて説明した。しかし、本発明に係る本体カバーは、右側と左側を一体形成してもよい。この場合、ネジ等の部品を減らすことができる。
【0037】
また、上記実施例で説明した本体カバー40のケーブル支持部44も、ケーブルの外周面に当接できる。このため、当該ケーブル支持部についても、凹部45と同様に、ケーブルを位置決めできるように、ケーブルの軸心から離間する方向に向けて凹んでいてもよい。この場合には、上記凹部45と相俟って、切断刃によるケーブル被覆への切り込み角度がより一層安定する。
【0038】
なお、上記実施例では、電線ケーブルのケーブル被覆を剥ぎ取る例を挙げて説明したが、本発明に係るケーブル被覆剥ぎ取り工具は、電線ケーブルに限らず、例えば光ファイバーケーブル等、種々のケーブルのケーブル被覆の剥ぎ取りにも適用できることは明らかである。
【符号の説明】
【0039】
1…工具本体、2…上面、3…下面、3a…湾曲開口、4…前端、4a…開口、5…後端、6…ストラップ設置部、7…カバー支持部、10…正面部材、11…ストッパ、12…突出部、14…ネジ孔、15…裏面部材、16…突出部、17…ネジ、20…切断刃、20a…先端、20b…根元、22…先端位置の刃部、23…略中央位置の刃部、30…ガイドプレート、31…押え部、32…係合爪、32a…延出部、33…ボス、40…本体カバー、41…下面、42…軸部、42a…突起、43…収納溝、44…ケーブル支持部、45…凹部、50…正面部材、51…係合穴、52…湾曲部、52a…補強片、53…ボス、54…ネジ孔、55…裏面部材、56…ボス、57…ネジ。
【要約】
【課題】ケーブル被覆をその長手方向に沿って切り裂きやすくするケーブル被覆剥ぎ取り工具を提供する。
【解決手段】ケーブル被覆剥ぎ取り工具は、上面2が把持部となる工具本体1と、刃を下方にして工具本体の前端4から延出して設けられる切断刃20と、工具本体の前端から切断刃を露出させて覆うガイド部材30と、下面41が把持部となると共に、工具本体の後端5に軸着され、回動して工具本体の下面3を収納する本体カバー40とを備える。本体カバーが、工具本体の前端に設けたガイド部材を挟むように配置されており、工具本体の前端から露出した切断刃に対向する位置に、ケーブルを位置決めする凹部45を有している。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10