(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記上フレームと前記下フレームは、直立した状態の前記車両の側面視で、前記下フレームの前記リンク支持部との連結部と前記下フレームの前記パワーユニットとの連結部との間に設けられた接続部を介して接続されている、請求項1に記載の車両。
直立した前記車両の側面視で、前記上フレームの上縁は、前記左操舵軸線の方向について、前記中間下軸線と前記左操舵軸線との交点と前記後輪揺動軸とを結ぶ線分より上方に位置している、請求項1から4のいずれか一項に記載の車両。
前記下フレームは、直立した前記車両の側面視で、前記中間下軸線の方向について前記右前輪および前記左前輪の可動範囲の後縁よりも前方において、前記左操舵軸線の方向について前記中間下軸線よりも下方に位置する部分を含む、請求項7に記載の車両。
直立した状態の前記車両の側面視で、前記下フレームの前記パワーユニットとの連結部は、前記中間下軸線と前記左操舵軸線との交点と前記後輪揺動軸とを結ぶ線分の中間点より前方に位置している、請求項1から8のいずれか一項に記載の車両。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような車両として、非特許文献1に記載の車両が販売されている。非特許文献1に記載の車両は、車両の駆動力を生成する内燃機関を含むパワーユニットを備えている。非特許文献1に記載の車両に搭載されているエンジンは125ccの排気量を有する比較的小さいエンジンである。小型エンジンを有するパワーユニットは軽量で燃費性能に優れるという利点がある。
【0007】
しかし、長距離の移動を快適に行いたい場合など、大きなエンジンを搭載した車両が有利な場合もある。本発明者は、非特許文献1に記載の傾斜可能な車体フレームと2つの前輪を備えた車両に、大型のパワーユニットを搭載することを検討した。パワーユニットの大型化に伴い、加速性能等が大きくなり、長距離の移動における快適性が向上すると考えた。そこで、加速性能などの向上に伴ってリンク支持部に作用する荷重が大きくなる。リンク支持部に作用する加重が大きくなると、リンク支持部に求められる剛性が大きくなる。しかし、リンク支持部の剛性を高めようとすると、車体フレームが大型化してしまうことが想定される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで本発明は、リンク機構の支持剛性を確保しつつ大型化が抑制された車体フレームを有する車両を提供することを目的とする。
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明がとりうる一態様は、
(1)車両であって、
右旋回時に前記車両の右方に傾斜し、左旋回時に前記車両の左方へ傾斜可能な車体フレームと、
前記車体フレームの左右方向に並べて配置された右前輪および左前輪と、
前記右前輪および前記左前輪よりも後方に位置し、前記車体フレームに設けられた後輪揺動軸回りに揺動可能に設けられた後輪と、
前記後輪を駆動するパワーユニットと、
下部に前記右前輪を支持し、上部に対する前記右前輪の前記車体フレームの上下方向における変位を緩衝する右緩衝機構と、
下部に前記左前輪を支持し、上部に対する前記左前輪の前記車体フレームの上下方向における変位を緩衝する左緩衝機構と、
リンク機構と、
を有する車両であって、
前記リンク機構は、
前記右緩衝機構の上部を前記車体フレームの上下方向に延びる右操舵軸線回りに回動可能に支持する右サイド部材と、
前記左緩衝機構の上部を前記右操舵軸線と平行な左操舵軸線回りに回動可能に支持する左サイド部材と、
前記右サイド部材の上部を右端部に前記車体フレームの前後方向に延びる右上軸線回りに回動可能に支持し、前記左サイド部材の上部を左端部に前記右上軸線に平行な左上軸線回りに回動可能に支持し、中間部が前記車体フレームに前記右上軸線および前記左上軸線に平行な中間上軸線回りに回動可能に支持される上クロス部材と、
前記右サイド部材の下部を右端部に前記右上軸線に平行な右下軸線回りに回動可能に支持し、前記左サイド部材の下部を左端部に前記左上軸線に平行な左下軸線回りに回動可能に支持し、中間部が前記車体フレームに前記中間上軸線と平行な中間下軸線回りに回動可能に支持される下クロス部材と、を有し、
前記車体フレームは、少なくとも前記リンク機構と前記後輪揺動軸とを連結し、
前記車体フレームは、
前記右前輪および前記左前輪よりも上方で、前記上クロス部材の前記中間部および前記下クロス部材の前記中間部を回動可能に支持するリンク支持部と、
直立した状態の前記車両の側面視で、前記中間下軸線と前記左操舵軸線との交点と前記後輪揺動軸とを結ぶ線分に少なくとも一部が重なる位置に設けられた前記パワーユニットと、前記リンク支持部とを連結する下フレームと、
前記左操舵軸線の方向について前記下フレームの前記リンク支持部との連結部よりも上方で前記リンク支持部に連結され、前記中間下軸線の方向において、少なくとも前記下フレームの前記パワーユニットとの連結部まで後方へ延びる上フレームと、を有し、
直立した状態の前記車両の側面視で、前記下フレームの前記パワーユニットとの連結部を通り前記中間下軸線と直交する直線と前記上フレームの上縁との交点が、前記左操舵軸線の方向について前記中間下軸線と前記左操舵軸線との交点よりも上方に位置する。
【0010】
本発明者は、リンク支持部に作用する荷重について検討した。
車体フレームは、リンク機構を支持するリンク支持部を備えている。リンク支持部は上下方向に延びる部材である。上クロス部材の左右方向の中間部は、リンク支持部に支持されている。下クロス部材の左右方向の中間部は、上クロス部材より下方でリンク支持部に支持されている。下クロス部材の左右方向の中間部は、左右前輪の上端より上方でリンク支持部に支持されている。
【0011】
傾斜可能な車体フレームと2つの前輪を有する車両において、リンク支持部に大きな荷重が作用する場面として様々な場面が想定される。
【0012】
例えば、右前輪と左前輪の両方に同じ大きさの制動力を作用させる場面を想定する。右前輪および左前輪に制動力を作用させると、右前輪および左前輪に後ろ向きの荷重が作用する。
右前輪に作用した力は、右緩衝機構を介して、リンク機構の右サイド部材に伝達される。さらに、右サイド部材に作用した力は、右サイド部材に連結された上クロス部材の右部および下クロス部材の右部に伝達される。さらに、上クロス部材の右部に作用した力は、上クロス部材を支持するリンク支持部に伝達される。また、下クロス部材の右部に作用した力は、下クロス部材を支持するリンク支持部に伝達される。
同様に、左前輪に作用した力は、左緩衝機構を介して、リンク機構の左サイド部材に伝達される。さらに、左サイド部材に作用した力は、左サイド部材に連結された上クロス部材の左部および下クロス部材の左部に伝達される。さらに、上クロス部材の左部に作用した力は、上クロス部材を支持するリンク支持部に伝達される。また、下クロス部材の左部に作用した力は、下クロス部材を支持するリンク支持部に伝達される。
【0013】
別の例として、例えば、右前輪が平坦な路面を走行し左前輪が段差を乗り越えようとする場面を想定する。右前輪が平坦な路面を走行し左前輪が段差を乗り越えようとする場合、左前輪のみに段差に起因する後方へ押す力が作用する。すると、左前輪に作用した力は、左緩衝機構を介して、リンク機構の左サイド部材に伝達される。さらに、左サイド部材に作用した力は、左サイド部材に連結された上クロス部材および下クロス部材の左部に伝達される。さらに、上クロス部材の左部に作用した力は、上クロス部材を支持するリンク支持部に伝達される。また、下クロス部材の左部に作用した力は、下クロス部材を支持するリンク支持部に伝達される。
【0014】
リンク支持部を含む車体フレームは、これらの力に対して剛性を有する必要がある。
【0015】
発明者は、リンク支持部に荷重が作用する様々な場面を想定した結果、リンク支持部に作用する荷重のほとんどは、上クロス部材の左部および/または右部から、そして下クロス部材の左部および/または右部から伝達されるということに気がついた。
そして、大型化を抑制しながら剛性を確保するために、上クロス部材からリンク支持部に伝達される力と下クロス部材からリンク支持部に伝達される力の大きさを分析した。
その結果、下クロス部材からリンク支持部に伝達される力の方が上クロス部材からリンク支持部に伝達される力よりも大きい傾向があることと、リンク支持部に伝達される力の方向は、上下方向や左右方向よりも前後方向の成分が大きいという傾向を見出し、本発明に至った。
【0016】
本発明者は、上述したように、リンク支持部に作用する荷重について、下クロス部材から伝達される荷重の方が上クロス部材から伝達される荷重よりも大きい傾向があることに気が付いた。このため、リンク支持部を支持する上フレームと下フレームのうち、特に、下フレームの剛性について検討した。
【0017】
本発明に係る車両において、下フレームは、直立した状態の車両の側面視で、中間下軸線と左操舵軸線との交点と後輪揺動軸とを結ぶ線分に少なくとも一部が重なる位置に設けられたパワーユニットと、リンク支持部とを連結する。つまり、リンク機構と後輪揺動軸との間に剛性の高いパワーユニットが位置し、該パワーユニットは下フレームに連結されている。下フレームには、パワーユニットが支持される支持部が設けられている。なお、下フレームはブラケットなどの部材を介してパワーユニットを支持していてもよい。
【0018】
本発明とは異なり特許文献1に係る車両のように、パワーユニットが後輪揺動軸より後方に設けられている場合には、リンク機構と後輪揺動軸との間に剛体であるパワーユニットがない。また、このような車両においては、パワーユニットのように剛性の高い部材がリンク機構と後輪揺動軸との間に設けられておらず、リンク機構と後輪揺動軸とを連結する車体フレームの剛性を高めにくい。そこで、車体フレームに必要な剛性を確保するために車体フレームの径を大きくし、さらの他部材と車体フレームとの干渉とを回避する結果、車体フレームが大型化しやすい。
【0019】
しかし、本発明に係る車両によれば、リンク機構と後輪揺動軸との間に剛体であるパワーユニットが配置され、下フレームはリンク機構とパワーユニットとに連結されている。このため、剛体であるパワーユニットを使って、リンク機構とパワーユニットとを連結する下フレームの剛性を高めやすい。このため、必要な剛性を確保しつつ、下フレームを小型化しやすい。また、剛性の高いパワーユニットが下フレームを強固に支持しているため、下フレームは高い剛性でリンク支持部を支持できる。そのため、剛性を高めるために下フレームの径を大径化させなくてもよいので、下フレームと、下クロス部材、右前輪、左前輪、右緩衝機構、左緩衝機構や操舵機構などとの干渉を抑制できる。このようにして、下フレームを大型化させることなく必要な剛性を確保できることを見出した。
【0020】
リンク支持部に荷重が作用したときには、上フレームおよび下フレームには、圧縮荷重や引張荷重、曲げ荷重が作用する。これらのうち、上フレームおよび下フレームに求められる剛性を考慮する上で支配的な荷重は、曲げ荷重である。
【0021】
リンク支持部から下フレームに曲げ荷重が作用する場合には、下フレームのリンク支持部との連結部が作用点となり、下フレームのパワーユニットとの連結部が支点となるように、下フレームに曲げモーメントが作用する。上述したように、リンク機構とパワーユニットとの距離が短いので、下フレームに作用する曲げモーメントが小さくなり、下フレームに要求される剛性が低減される。
【0022】
また、本発明に係る車両によれば、直立した状態の車両の側面視で、下フレームのパワーユニットとの連結部を通り中間下軸線と直交する直線と上フレームの上縁との交点が、左操舵軸線の方向について中間下軸線と左操舵軸線との交点よりも上方に位置する。つまり、上フレームの上縁を高い位置に配置することにより、上フレームを、前後方向に沿わせやすくなる。これにより、上フレームに前後方向の荷重が作用したときに、該荷重の曲げ成分よりも伸縮方向の成分を大きくしやすく、上フレームに要求される剛性を低減しやすい。
【0023】
以上のような理由により、必要な剛性を確保しつつ上フレームや下フレームを小径にしやすく、車体フレームの大型化が抑制される。また、車体フレームが大型化しないので、下クロス部材や右前輪、左前輪、右緩衝機構、左緩衝機構や操舵機構などと上フレームおよび下フレームとの干渉を避けやすく、車両全体としての大型化も抑制される。
【0024】
(2)上述の車両において、以下の構成を採用してもよい。
前記上フレームと前記下フレームは、直立した状態の前記車両の側面視で、前記下フレームの前記リンク支持部との連結部と前記下フレームの前記パワーユニットとの連結部との間に設けられた接続部を介して接続されている。
【0025】
下フレームのリンク支持部との連結部と下フレームのパワーユニットとの連結部との間に、上フレームと下フレームとを接続する接続部が設けられている。このため、下フレームに作用する曲げ荷重の一部を上フレームが支持することができるため、下フレームに求められる剛性を低減できる。
【0026】
(3)上述の車両において、以下の構成を採用してもよい。
前記下フレームは、前記左操舵軸線の方向について、前記下クロス部材より下方で前記リンク支持部に連結され、
前記上フレームの少なくとも一部は、前記中間上軸線の前方から見て前記上クロス部材と重なる位置に設けられている。
【0027】
上クロス部材からリンク支持部に作用する荷重は、中間上軸線に沿って作用する。上フレームの延びる方向と、リンク支持部に作用する前後方向の力の方向とをより一致させやすく、上フレームに作用する曲げモーメントをさらに小さくしやすい。そのため、上フレームをさらに小径にしやすく、上クロス部材や下クロス部材との干渉を避けやすい。
【0028】
(4)上述の車両において、以下の構成を採用してもよい。
前記下フレームは、下右フレームと、前記車両の左右方向について前記下右フレームより左方に設けられた下左フレームと、を有し、
前記下右フレームは前記パワーユニットの右部に固定され、前記下左フレームは前記パワーユニットの左部に固定されている。
【0029】
下右フレームをパワーユニットの右部に固定すると、車両の上面視で、下右フレームを、リンク支持部からパワーユニットに向かって右斜め後方に延びるように配置しやすい。
また、下左フレームをパワーユニットの左部に固定すると、車両の上面視で、下左フレームを、リンク支持部からパワーユニットに向かって左斜め後方に延びるように配置しやすい。
このため、リンク支持部に伝達される荷重の左右方向の成分が大きい場合であっても、該左右方向の力が下右フレームおよび下左フレームに圧縮又は引張方向の力として作用し、曲げの成分が小さくなる。つまり、下右フレームおよび下左フレームに該荷重が作用したときに、曲げ成分よりも伸縮方向の成分を大きくしやすく、下右フレームおよび下左フレームに要求される剛性を低減しやすい。このため、下右フレームおよび下左フレームに要求される剛性を確保しつつ、車体フレームを小型化しやすい。
【0030】
(5)上述の車両において、以下の構成を採用してもよい。
直立した前記車両の側面視で、前記上フレームの上縁は、前記左操舵軸線の方向について、前記中間下軸線と前記左操舵軸線との交点と前記後輪揺動軸とを結ぶ線分より上方に位置している。
【0031】
上フレームの上縁の全体を高い位置に配置することにより、上フレームのリンク支持部から後方に延びる部位の向きを、より中間上軸線に沿わせやすくなる。これにより、上フレームに前後方向の荷重が作用したときに、該荷重の曲げ成分よりも伸縮方向の成分をより大きくしやすく、上フレームに要求される剛性を低減しやすい。
【0032】
(6)上述の車両において、以下の構成を採用してもよい。
前記上フレームは、上右フレームと、前記車両の左右方向について前記上右フレームより左方に設けられた上左フレームと、を有し、
前記下フレームは、下右フレームと、前記車両の左右方向について前記下右フレームより左方に設けられた下左フレームと、を有し、
前記上右フレームと前記下右フレームとが、前記中間下軸線の方向について前記リンク機構の後端より後方で一体であり、
前記上左フレームと前記下左フレームとが、前記中間下軸線の方向について前記リンク機構の後端より後方で一体である。
【0033】
上右フレームと下右フレームが一体化されているので、上右フレームが下右フレームに作用する荷重の一部を支え、下右フレームが上右フレームに作用する荷重の一部を支えることができる。
上左フレームと下左フレームが一体化されているので、上左フレームが下左フレームに作用する荷重の一部を支え、下左フレームが上左フレームに作用する荷重の一部を支えることができる。
【0034】
(7)上述の車両において、以下の構成を採用してもよい。
前記上フレームは、上右フレームと、前記車両の左右方向について前記上右フレームより左方に設けられた上左フレームと、を有し、
前記下フレームは、下右フレームと、前記車両の左右方向について前記下右フレームより左方に設けられた下左フレームと、を有し、
前記車両の上面視で、前記下クロス部材に重なる前記上右フレーム、前記上左フレーム、前記下右フレームおよび前記下左フレームの一部は、前記下クロス部材を左右方向に3つに区分けしたときの中央部に位置している。
【0035】
下クロス部材は、中間下軸線回りに回動する。このため、リンク機構が作動しても、下クロス部の左右方向の中央部は、その左部および右部に比べて変位量が少ない。このため、上右フレーム、上左フレーム、下右フレームおよび下左フレームと、下クロス部材との干渉を避けやすく、上右フレーム、上左フレーム、下右フレームおよび下左フレームを下クロス部材の近くに配置しやすい。これにより、車両の大型化を抑制しやすい。
【0036】
(8)上記(7)に記載の車両において、以下の構成を採用してもよい。
前記下右フレームおよび前記下左フレームは、直立した前記車両の側面視で、前記中間下軸線の方向について前記右前輪および前記左前輪の可動範囲の後縁よりも前方において、前記左操舵軸線の方向について前記中間下軸線よりも下方に位置する部分を含む。
【0037】
車両の上面視で、下クロス部材に重なる下右フレームおよび下左フレームの一部は、下クロス部材を左右方向に3つに区分けしたときの中央部に位置しており、下右フレームおよび下左フレームが下クロス部材と干渉しにくい。また、リンク機構が作動して右前輪および左前輪が上下に移動しても、右前輪および左前輪は下クロス部材を左右方向に3つに区分けしたときの右部および左部に比べて、右前輪、右緩衝機構、左前輪および左緩衝機構は中央部に侵入しにくい。このため、下右フレームおよび下左フレームを左操舵軸線の方向について下中間軸線より下方に配置しても、下右フレームおよび下左フレームが、下クロス部材、右前輪、左前輪、右緩衝機構、左緩衝機構などと干渉しにくい。
【0038】
(9)上述の車両において、以下の構成を採用してもよい。
直立した状態の前記車両の側面視で、前記下フレームの前記パワーユニットとの連結部は、前記中間下軸線と前記左操舵軸線との交点と前記後輪揺動軸とを結ぶ線分の中間点より前方に位置している。
【0039】
下フレームに曲げモーメントが作用するときの下フレームの作用点と支点との距離をさらに短くしやすく、作用する曲げモーメントを小さくできる。このため、下フレームを小型化しやすく、上クロス部材、下クロス部材、右前輪および左前輪との干渉を避けやすく、車体フレームの大型化を抑制できる。
【0040】
(10)上述の車両において、以下の構成を採用してもよい。
前記下フレームは、下右フレームと、前記下右フレームより左方に設けられた下左フレームと、を有し、
前記下右フレームは、直立した前記車両の側面視で、前記パワーユニットとの連結部より前方に位置する前下右フレームと、前記前下右フレームの後端より後方に位置し前記前下右フレームに溶接された後下右フレームと、を有し、
前記下左フレームは、直立した前記車両の側面視で、前記パワーユニットとの連結部より前方に位置する前下左フレームと、前記前下左フレームの後端より後方に位置し前記前下左フレームに溶接された後下左フレームと、を有し、
前記上フレームは、上右フレームと、前記上右フレームより左方に位置する上左フレームと、を有し、
前記上右フレームは、直立した前記車両の側面視で、前記パワーユニットとの連結部より前方に位置する前上右フレームと、前記前上右フレームの後端より後方に位置し前記前上右フレームに溶接された後上右フレームと、を有し、
前記上左フレームは、直立した前記車両の側面視で、前記パワーユニットとの連結部より前方に位置する前上左フレームと、前記前上左フレームの後端より後方に位置し前記前上左フレームに溶接された後上左フレームと、を有する。
【0041】
リンク支持部の下クロス部材を支持する軸部を加工するための工具を入れやすく、軸部の形状精度を高めやすい。
【0042】
(11) また、本発明によれば、以下が提供される。
車両であって、
右旋回時に前記車両の右方に傾斜し、左旋回時に前記車両の左方へ傾斜可能な車体フレームと、
前記車体フレームの左右方向に並べて配置された右前輪および左前輪と、
前記右前輪および前記左前輪よりも後方に位置し、前記車体フレームに設けられた後輪揺動軸回りに揺動可能に設けられた後輪と、
前記後輪を駆動するパワーユニットと、
下部に前記右前輪を支持し、上部に対する前記右前輪の前記車体フレームの上下方向における変位を緩衝する右緩衝機構と、
下部に前記左前輪を支持し、上部に対する前記左前輪の前記車体フレームの上下方向における変位を緩衝する左緩衝機構と、
リンク機構と、
を有する車両であって、
前記リンク機構は、
前記右緩衝機構の上部を前記車体フレームの上下方向に延びる右操舵軸線回りに回動可能に支持する右サイド部材と、
前記左緩衝機構の上部を前記右操舵軸線と平行な左操舵軸線回りに回動可能に支持する左サイド部材と、
前記右サイド部材の上部を右端部に前記車体フレームの前後方向に延びる右上軸線回りに回動可能に支持し、前記左サイド部材の上部を左端部に前記右上軸線に平行な左上軸線回りに回動可能に支持し、中間部が前記車体フレームに前記右上軸線および前記左上軸線に平行な中間上軸線回りに回動可能に支持される上クロス部材と、
前記右サイド部材の下部を右端部に前記右上軸線に平行な右下軸線回りに回動可能に支持し、前記左サイド部材の下部を左端部に前記左上軸線に平行な左下軸線回りに回動可能に支持し、中間部が前記車体フレームに前記中間上軸線と平行な中間下軸線回りに回動可能に支持される下クロス部材と、を有し、
前記車体フレームは、少なくとも前記リンク機構と前記後輪揺動軸とを連結し、
前記車体フレームは、
前記右前輪および前記左前輪よりも上方で、前記上クロス部材の前記中間部および前記下クロス部材の前記中間部を回動可能に支持するリンク支持部と、
直立した状態の前記車両の側面視で、前記中間下軸線と前記左操舵軸線との交点と前記後輪揺動軸とを結ぶ線分に少なくとも一部が重なる位置に設けられた前記パワーユニットと、前記リンク支持部とを連結する下フレームと、
前記左操舵軸線の方向について前記下フレームの前記リンク支持部との連結部よりも上方で前記リンク支持部に連結され、前記中間下軸線の方向において、少なくとも前記下フレームの前記パワーユニットとの連結部まで後方へ延びる上フレームと、を有し、
前記下フレームは、下右フレームと、前記下右フレームより左方に設けられた下左フレームと、を有し、
前記下右フレームは、直立した前記車両の側面視で、前記パワーユニットとの連結部より前方に位置する前下右フレームと、前記前下右フレームの後端より後方に位置し前記前下右フレームに溶接された後下右フレームと、を有し、
前記下左フレームは、直立した前記車両の側面視で、前記パワーユニットとの連結部より前方に位置する前下左フレームと、前記前下左フレームの後端より後方に位置し前記前下左フレームに溶接された後下左フレームと、を有し、
前記上フレームは、上右フレームと、前記上右フレームより左方に位置する上左フレームと、を有し、
前記上右フレームは、直立した前記車両の側面視で、前記パワーユニットとの連結部より前方に位置する前上右フレームと、前記前上右フレームの後端より後方に位置し前記前上右フレームに溶接された後上右フレームと、を有し、
前記上左フレームは、直立した前記車両の側面視で、前記パワーユニットとの連結部より前方に位置する前上左フレームと、前記前上左フレームの後端より後方に位置し前記前上左フレームに溶接された後上左フレームと、を有する車両。
【0043】
本発明に係る車両によれば、リンク機構を高い剛性で支持し、かつ、リンク支持部より後方に位置するリンク機構の要素を取り付ける箇所の加工が容易である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
添付の図面を参照しつつ、本発明に係る実施形態の例について、以下詳細に説明する。
【0046】
添付の図面において、矢印Fは、車両の前方向を示している。矢印Bは、車両の後方向を示している。矢印Uは、車両の上方向を示している。矢印Dは、車両の下方向を示している。矢印Rは、車両の右方向を示している。矢印Lは、車両の左方向を示している。
【0047】
車両は、車体フレームを鉛直方向に対して車両の左右方向に傾斜させて旋回する。そこで車両を基準とした方向に加え、車体フレームを基準とした方向が定められる。添付の図面において、矢印FFは、車体フレームの前方向を示している。矢印FBは、車体フレームの後方向を示している。矢印FUは、車体フレームの上方向を示している。矢印FDは、車体フレームの下方向を示している。矢印FRは、車体フレームの右方向を示している。矢印FLは、車体フレームの左方向を示している。
【0048】
本明細書において、「車体フレームの前後方向」、「車体フレームの左右方向」、および「車体フレームの上下方向」とは、車両を運転する運転者から見たとき、車体フレームを基準とした前後方向、左右方向、および上下方向を意味する。「車体フレームの側方」とは、車体フレームの左右方向における右方あるいは左方を意味している。
【0049】
本明細書において、「車体フレームの前後方向に延びる」とは、車体フレームの前後方向に対して傾いて延びることを含み、車体フレームの左右方向および上下方向と比較して、車体フレームの前後方向に近い傾きで延びることを意味する。
【0050】
本明細書において、「車体フレームの左右方向に延びる」とは、車体フレームの左右方向に対して傾いて延びることを含み、車体フレームの前後方向および上下方向と比較して、車体フレームの左右方向に近い傾きで延びることを意味する。
【0051】
本明細書において、「車体フレームの上下方向に延びる」とは、車体フレームの上下方向に対して傾いて延びることを含み、車体フレームの前後方向および左右方向と比較して、車体フレームの上下方向に近い傾きで延びることを意味する。
【0052】
本明細書において、「車体フレームの直立状態」とは、無転舵状態かつ車体フレームの上下方向が鉛直方向と一致している状態を意味する。この状態においては、車両を基準にした方向と車体フレームを基準にした方向は一致する。車体フレームを鉛直方向に対して左右方向に傾斜させて旋回しているときは、車両の左右方向と車体フレームの左右方向は一致しない。また車両の上下方向と車体フレームの上下方向も一致しない。しかしながら、車両の前後方向と車体フレームの前後方向は一致する。
【0053】
本明細書において、「車体フレームの左右方向における部材Aの左方」とは、車体フレームの左右方向における左方へ部材Aを平行移動させたときに当該部材Aが通過する空間を指す。部材Aの右方についても同様に定義される。
【0054】
本明細書において、「部材Aより車体フレームの左右方向における左方」とは、車体フレームの左右方向における左方へ部材Aを平行移動させたときに当該部材Aが通過する空間に加え、当該空間から車体フレームの左右方向に直交する向きに広がる空間を含む。部材Aより右方についても同様に定義される。
【0055】
本明細書において、「車体フレームの上下方向における部材Aの上方」とは、車体フレームの上下方向における上方へ部材Aを平行移動させたときに当該部材Aが通過する空間を指す。部材Aの下方についても同様に定義される。
【0056】
本明細書において、「部材Aより車体フレームの上下方向における上方」とは、車体フレームの上下方向における上方へ部材Aを平行移動させたときに当該部材Aが通過する空間に加え、当該空間から車体フレームの上下方向に直交する向きに広がる空間を含む。部材Aより下方についても同様に定義される。
【0057】
本明細書において、「車体フレームの前後方向における部材Aの前方」とは、車体フレームの前後方向における前方へ部材Aを平行移動させたときに当該部材Aが通過する空間を指す。部材Aの後方についても同様に定義される。
【0058】
本明細書において、「部材Aより車体フレームの前後方向における前方」とは、車体フレームの前後方向における前方へ部材Aを平行移動させたときに当該部材Aが通過する空間に加え、当該空間から車体フレームの前後方向に直交する向きに広がる空間を含む。部材Aより後方についても同様に定義される。
【0059】
図1から
図9を参照しつつ、一実施形態に係る車両1について説明する。車両1は、傾斜可能な車体フレームと、その車体フレームの左右方向に並んで配置された2つの前輪を備える車両である。
【0060】
図1に示すように、車両1は、車両本体部2、2つの前輪3、後輪4、リンク機構5、および操舵機構6を備えている。
【0061】
車両本体部2は、車体フレーム21、車体カバー22、シート23、パワーユニット24、およびリアアーム26を含んでいる。
図1において、車体フレーム21は直立状態にある。
図1を参照する以降の説明は、車体フレーム21の直立状態を前提にしている。
図1は、車両1の全体を車体フレーム21の左右方向における左方から見た左側面図である。
【0062】
車体フレーム21は、ヘッドパイプ211とメインフレーム212を含んでいる。
図1においては、車体フレーム21の車体カバー22に隠れている部分は破線で示している。車体フレーム21は、シート23とパワーユニット24を支持している。
【0063】
ヘッドパイプ211は、車両1の前部に配置されている。車体フレーム21の左右方向における左方から車両1を見たとき、ヘッドパイプ211の上部は、ヘッドパイプ211の下部より車体フレーム21の前後方向における後方に配置されている。
【0064】
メインフレーム212は、ヘッドパイプ211に接続されている。メインフレーム212は、ヘッドパイプ211より車体フレーム21の前後方向における後方に配置されている。メインフレーム212は、シート23、パワーユニット24、およびリアアーム26を支持している。
【0065】
リアアーム26は、メインフレーム212より車体フレーム21の前後方向における後方に配置されている。リアアーム26は、車体フレーム21の前後方向に延びている。リアアーム26の前端部は、メインフレーム212に支持され、車体フレーム21の左右方向に延びる軸線を中心として回動可能とされている。リアアーム26の後端部は、後輪4を支持している。
【0066】
車体カバー22は、フロントカバー221とリアフェンダー222を含んでいる。車体カバー22は、2つの前輪3、車体フレーム21、リンク機構5、操舵機構6などの車両1を構成する部品群の少なくとも一部を覆う車体部品である。
【0067】
フロントカバー221は、シート23より車体フレーム21の前後方向における前方に配置されている。フロントカバー221は、リンク機構5と操舵機構6の少なくとも一部を覆っている。フロントカバー221は、車体フレーム21に対して変位不能に配置されている。
【0068】
リアフェンダー222の少なくとも一部は、車体フレーム21の上下方向における後輪4の上方に配置されている。リアフェンダー222は、リアアーム26に対して変位不能に配置されている。
【0069】
2つの前輪3は、ヘッドパイプ211より車体フレーム21の上下方向における下方に配置されている。2つの前輪3の少なくとも一部は、車体フレーム21の上下方向におけるフロントカバー221の下方に配置されている。
【0070】
後輪4の少なくとも一部は、シート23より車体フレーム21の上下方向における下方に配置されている。後輪4の少なくとも一部は、車体フレーム21の上下方向におけるリアフェンダー223の下方に配置されている。
【0071】
本実施形態に係る車両1は、運転者が車体フレーム21に跨った姿勢で乗車する車両である。すなわち、運転時において、運転者の着座するシート23より車体フレーム21の前後方向における前方に配置される車体フレーム21の一部は、運転者の両脚の間に配置される。運転者は、シート23より車体フレーム21の前後方向における前方に位置するメインフレーム212またはフロントカバー221を両脚で挟んだ姿勢で車両1を運転する。
【0072】
パワーユニット24は、車体フレーム21の左右方向から車両1を見たとき、後輪4の前端より車体フレーム21の前後方向における前方に配置されている。パワーユニット24は、車体フレーム21に対して変位不能に配置されている。パワーユニット24は、メインフレーム212に対して変位不能に配置されている。パワーユニット24は、エンジン241と変速部242を備えている。エンジン241は、車両1を駆動する力を生成する。変速部242は、エンジン241により生成された駆動力を後輪4に伝達するとともに、後輪4の回転速度を変更するための機構である。変速部242は、ギアボックス、クラッチなどを備えている。変速部242は、変速機構を備えている。変速機構は、複数段を備えた有段変速機構であってもよいし、無段変速機構(CVT)であってもよい。
【0073】
図2は、車両1の前部を車体フレーム21の前後方向における前方から見た正面図である。
図2において、車体フレーム21は直立状態にある。
図2を参照する以降の説明は、車体フレーム21の直立状態を前提にしている。
図2では、破線で示す車体カバー22を透視した状態が示されている。
【0074】
2つの前輪3は、左前輪31と右前輪32を含んでいる。左前輪31は、車体フレーム21の一部であるヘッドパイプ211より車体フレーム21の左右方向における左方に配置されている。右前輪32は、ヘッドパイプ211より車体フレーム21の左右方向における右方に配置されている。左前輪31と右前輪32は、車体フレーム21の左右方向に並んで配置されている。
【0075】
操舵機構6は、左緩衝機構61、右緩衝機構62、左ブラケット63、および右ブラケット64を含んでいる。
【0076】
左緩衝機構61は、左下部61aを含んでいる。左下部61aは、左前輪31を支持している。左下部61aは、車体フレーム21の上下方向に延びている。左下部61aは、その下端部に左支持部61bを備えている。左前輪31は、左支持部61bに支持されている。
【0077】
左緩衝機構61は、左上部61cを含んでいる。左上部61cは、車体フレーム21の上下方向に延びている。左上部61cは、その一部が左下部61aに挿入された状態で、車体フレーム21の上下方向における左下部61aの上方に配置されている。左下部61aの上端部は、左ブラケット63に固定されている。
【0078】
左緩衝機構61は、いわゆるテレスコピック式の緩衝機構である。左上部61cが左下部61aに対して左下部61aの延びる方向に相対移動することにより、左緩衝機構61は、当該方向に伸縮可能である。これにより、左緩衝機構61は、左上部61cに対する左前輪31の車体フレーム21の上下方向における変位を緩衝する。
【0079】
右緩衝機構62は、右下部62aを含んでいる。右下部62aは、右前輪32を支持している。右下部62aは、車体フレーム21の上下方向に延びている。右下部62aは、その下端部に右支持部62bを備えている。右前輪32は、右支持部62bに支持されている。
【0080】
右緩衝機構62は、右上部62cを含んでいる。右上部62cは、車体フレーム21の上下方向に延びている。右上部62cは、その一部が右下部62aに挿入された状態で、車体フレーム21の上下方向における右下部62aの上方に配置されている。右下部62aの上端部は、右ブラケット64に固定されている。
【0081】
右緩衝機構62は、いわゆるテレスコピック式の緩衝機構である。右上部62cが右下部62aに対して右下部62aの延びる方向に相対移動することにより、右緩衝機構62は、当該方向に伸縮可能である。これにより、右緩衝機構62は、右上部62cに対する右前輪32の車体フレーム21の上下方向における変位を緩衝する。
【0082】
操舵機構6は、操舵力伝達機構65を含んでいる。操舵力伝達機構65は、ハンドル651とステアリングシャフト652を含んでいる。ハンドル651は、ステアリングシャフト652の上部に取り付けられている。ステアリングシャフト652は、その一部がヘッドパイプ211に回動可能に支持されている。ステアリングシャフト652の中間操舵軸線Zは、車体フレーム21の上下方向に延びている。
図1に示すように、ステアリングシャフト652の上部は、その下部より車体フレーム21の前後方向における後方に配置されている。したがって、ステアリングシャフト652の中間操舵軸線Zは、車体フレーム21の前後方向に傾斜している。ステアリングシャフト652は、運転者によるハンドル651の操作に応じて、中間操舵軸線Zを中心として回動する。
【0083】
操舵力伝達機構65は、運転者がハンドル651を操作する操舵力を、左ブラケット63と右ブラケット64に伝達する。具体的な構成については、後に詳述する。
【0084】
本実施形態に係る車両1においては、平行四節リンク(パラレログラムリンクとも呼ばれる)方式のリンク機構5を採用している。
【0085】
図2に示すように、リンク機構5は、ハンドル651より車体フレーム21の上下方向における下方に配置されている。リンク機構5は、左前輪31と右前輪32より車体フレーム21の上下方向における上方に配置されている。リンク機構5は、上クロス部材51、下クロス部材52、左サイド部材53、および右サイド部材54を含んでいる。リンク機構5は、ハンドル651の操作に伴うステアリングシャフト652の中間操舵軸線Zを中心とする回動に連動しない。すなわち、リンク機構5は、当該中間操舵軸線Zを中心として、車体フレーム21に対して回動しない。
【0086】
上クロス部材51の中間部は、支持部51aによってヘッドパイプ211に支持されている。上クロス部材51は、支持部51aを通り車体フレーム21の前後方向に延びる中間上軸線を中心として、ヘッドパイプ211に対して回動可能である。
【0087】
上クロス部材51の左端部は、支持部51bによって左サイド部材53に支持されている。上クロス部材51は、支持部51bを通り車体フレーム21の前後方向に延びる左上軸線を中心として、左サイド部材53に対して回動可能である。
【0088】
上クロス部材51の右端部は、支持部51cによって右サイド部材54に支持されている。上クロス部材51は、支持部51cを通り車体フレーム21の前後方向に延びる右上軸線を中心として、右サイド部材54に対して回動可能である。
【0089】
下クロス部材52の中間部は、支持部52aによってヘッドパイプ211に支持されている。下クロス部材52は、支持部52aを通り車体フレーム21の前後方向に延びる中間下軸線を中心として回動可能である。
【0090】
下クロス部材52の左端部は、支持部52bによって左サイド部材53に支持されている。下クロス部材52は、支持部52bを通り車体フレーム21の前後方向に延びる左下軸線を中心として回動可能である。
【0091】
下クロス部材52の右端部は、支持部52cによって右サイド部材54に支持されている。下クロス部材52は、支持部52cを通り車体フレーム21の前後方向に延びる右下軸線を中心として回動可能である。
【0092】
中間上軸線、右上軸線、左上軸線、中間下軸線、右下軸線、および左下軸線は、互いに平行に延びている。中間上軸線、右上軸線、左上軸線、中間下軸線、右下軸線、および左下軸線は、左前輪31と右前輪32より車体フレーム21の上下方向における上方に配置されている。
【0093】
図3は、車両1の前部を車体フレーム21の上下方向における上方から見た平面図である。
図3において、車体フレーム21は直立状態にある。
図3を参照する以降の説明は、車体フレーム21の直立状態を前提にしている。
図3では、破線で示す車体カバー22を透視した状態が示されている。
【0094】
上クロス部材51は、ヘッドパイプ211より車体フレーム21の前後方向における前方に配置されている。上クロス部材51は、車体フレーム21の左右方向に延びている板状部材である。
【0095】
下クロス部材52は、前板状部材521と後板状部材522を含んでいる。前板状部材521は、ヘッドパイプ211より車体フレーム21の前後方向における前方に配置されている。後板状部材522は、ヘッドパイプ211より車体フレーム21の前後方向における後方に配置されている。前板状部材521と後板状部材522は、車体フレーム21の左右方向に延びている。下クロス部材52は、上クロス部材51より車体フレーム21の上下方向における下方に配置されている。下クロス部材52の車体フレーム21の左右方向における長さ寸法は、上クロス部材51の車体フレーム21の左右方向における長さ寸法と同一または同等である。下クロス部材52は、上クロス部材51と平行に延びている。
【0096】
図2と
図3に示すように、左サイド部材53は、車体フレーム21の左右方向におけるヘッドパイプ211の左方に配置されている。左サイド部材53は、左前輪31より車体フレーム21の上下方向における上方に配置されている。左サイド部材53は、ヘッドパイプ211が延びる方向に延びている。左サイド部材53は、ステアリングシャフト652の中間操舵軸線Zが延びる方向に延びている。左サイド部材53の上部は、その下部より車体フレーム21の前後方向における後方に配置されている。
【0097】
左ブラケット63は、その上部に図示しない左回動部材を備えている。左回動部材は、左サイド部材53の内部に配置され、左サイド部材53が延びる方向と同じ向きに延びている。左回動部材は、左サイド部材53に対して、左操舵軸線Xを中心として回動可能である。すなわち、左ブラケット63は、左サイド部材53に対して、左操舵軸線Xを中心として回動可能である。左操舵軸線Xは、左サイド部材53が延びる方向に延びている。
図2に示すように、左操舵軸線Xは、ステアリングシャフト652の中間操舵軸線Zと平行に、車体フレーム21の上下方向に延びている。
図3に示すように、左操舵軸線Xは、ステアリングシャフト652の中間操舵軸線Zと平行に、車体フレーム21の前後方向に延びている。
【0098】
図2と
図3に示すように、右サイド部材54は、車体フレーム21の左右方向におけるヘッドパイプ211の右方に配置されている。右サイド部材54は、右前輪32より車体フレーム21の上下方向における上方に配置されている。右サイド部材54は、ヘッドパイプ211が延びる方向に延びている。右サイド部材54は、ステアリングシャフト652の中間操舵軸線Zが延びる方向に延びている。右サイド部材54の上部は、その下部より車体フレーム21の前後方向における後方に配置されている。
【0099】
右ブラケット64は、その上部に図示しない右回動部材を備えている。右回動部材は、右サイド部材54の内部に配置され、右サイド部材54が延びる方向と同じ向きに延びている。右回動部材は、右サイド部材54に対して、右操舵軸線Yを中心として回動可能である。すなわち、右ブラケット64は、右サイド部材54に対して、右操舵軸線Yを中心として回動可能である。右操舵軸線Yは、右サイド部材54が延びる方向に延びている。
図2に示すように、右操舵軸線Yは、ステアリングシャフト652の中間操舵軸線Zと平行に、車体フレーム21の上下方向に延びている。
図3に示すように、右操舵軸線Yは、ステアリングシャフト652の中間操舵軸線Zと平行に、車体フレーム21の前後方向に延びている。
【0100】
以上説明したように、上クロス部材51、下クロス部材52、左サイド部材53、および右サイド部材54は、上クロス部材51と下クロス部材52が相互に平行な姿勢を保ち、左サイド部材53と右サイド部材54が相互に平行な姿勢を保つように、車体フレーム21に支持されている。
【0101】
図2と
図3に示すように、操舵力伝達機構65は、前述のハンドル651とステアリングシャフト652に加え、中間伝達プレート653、左伝達プレート654、右伝達プレート655、中間ジョイント656、左ジョイント657、右ジョイント658、およびタイロッド659を含んでいる。
【0102】
中間伝達プレート653は、ステアリングシャフト652の下部に接続されている。中間伝達プレート653は、ステアリングシャフト652に対して相対回動不能である。中間伝達プレート653は、ヘッドパイプ211に対して、ステアリングシャフト652の中間操舵軸線Zを中心として回動可能である。
【0103】
左伝達プレート654は、中間伝達プレート653の左方に配置されている。左伝達プレート654は、左ブラケット63の下部に接続されている。左伝達プレート654は、左ブラケット63に対して相対回動不能である。左伝達プレート654は、左サイド部材53に対して、左操舵軸線Xを中心として回動可能である。
【0104】
右伝達プレート655は、車体フレーム21の左右方向における中間伝達プレート653の右方に配置されている。右伝達プレート655は、右ブラケット64の下部に接続されている。右伝達プレート655は、右ブラケット64に対して相対回動不能である。右伝達プレート655は、右サイド部材54に対して、右操舵軸線Yを中心として回動可能である。
【0105】
図3に示すように、中間ジョイント656は、車体フレーム21の上下方向に延びる軸部を介して中間伝達プレート653の前部に連結されている。中間伝達プレート653と中間ジョイント656は、当該軸部を中心として相対回動可能とされている。左ジョイント657は、中間ジョイント656より車体フレーム21の左右方向における左方に配置されている。左ジョイント657は、車体フレーム21の上下方向に延びる軸部を介して左伝達プレート654の前部に連結されている。左伝達プレート654と左ジョイント657は、当該軸部を中心として相対回動可能とされている。右ジョイント658は、中間ジョイント656より車体フレーム21の左右方向における右方に配置されている。右ジョイント658は、車体フレームの上下方向に延びる軸部を介して右伝達プレート655の前部に連結されている。右伝達プレート655と右ジョイント658は、当該軸部を中心として相対回動可能とされている。
【0106】
中間ジョイント656の前部には、車体フレーム21の前後方向に延びる軸部が設けられている。左ジョイント657の前部には、車体フレーム21の前後方向に延びる軸部が設けられている。右ジョイント658の前部には、車体フレーム21の前後方向に延びる軸部が設けられている。タイロッド659は、車体フレーム21の左右方向に延びている。タイロッド659は、これらの軸部を介して、中間ジョイント656、左ジョイント657、および右ジョイント658に連結されている。タイロッド659と中間ジョイント656は、中間ジョイント656の前部に設けられた軸部を中心として相対回動可能とされている。タイロッド659と左ジョイント657は、左ジョイント657の前部に設けられた軸部を中心として相対回動可能とされている。タイロッド659と右ジョイント658は、右ジョイント658の前部に設けられた軸部を中心として相対回動可能とされている。
【0107】
左伝達プレート654は、左ジョイント657、タイロッド659、および中間ジョイント656を介して、中間伝達プレート653と連結されている。右伝達プレート655は、右ジョイント658、タイロッド659、および中間ジョイント656を介して、中間伝達プレート653と連結されている。左伝達プレート654と右伝達プレート655は、左ジョイント657、タイロッド659、および右ジョイント658を介して、相互に連結されている。
【0108】
次に、
図3と
図4を参照しつつ、車両1の操舵動作について説明する。
図4は、左前輪31と右前輪32を左転舵させた状態における車両1の前部を、車体フレーム21の上下方向における上方から見た平面図である。
図4では、破線で示す車体カバー22を透視した状態が示されている。
【0109】
運転者がハンドル651を操作すると、ステアリングシャフト652は、中間操舵軸線Zを中心としてヘッドパイプ211に対して回動する。
図4に示す左転舵の場合、ステアリングシャフト652は、矢印Tの方向に回動する。ステアリングシャフト652の回動に伴って、中間伝達プレート653は、ヘッドパイプ211に対して、中間操舵軸線Zを中心として矢印Tの方向へ回動する。
【0110】
中間伝達プレート653の矢印Tの方向への回動に伴って、タイロッド659の中間ジョイント656は、中間伝達プレート653に対して、矢印S方向に回動する。これにより、タイロッド659は、その姿勢を維持したまま、車体フレーム21の左右方向における左方かつ車体フレーム21の前後方向における後方へ移動する。
【0111】
上記のタイロッド659の移動に伴って、タイロッド659の左ジョイント657と右ジョイント658は、それぞれ左伝達プレート654と右伝達プレート655に対して矢印S方向に回動する。これにより、タイロッド659はその姿勢を維持したまま、左伝達プレート654と右伝達プレート655が、矢印Tの方向に回動する。
【0112】
左伝達プレート654が矢印Tの方向に回動すると、左伝達プレート654に対して相対回動不能である左ブラケット63が、左サイド部材53に対して、左操舵軸線Xを中心として、矢印Tの方向に回動する。
【0113】
右伝達プレート655が矢印Tの方向に回動すると、右伝達プレート655に対して相対回動不能である右ブラケット64が、右サイド部材54に対して、右操舵軸線Yを中心として、矢印Tの方向に回動する。
【0114】
左ブラケット63が矢印Tの方向に回動すると、左ブラケット63に支持されている左緩衝機構61が、左サイド部材53に対して、左操舵軸線Xを中心として、矢印Tの方向に回動する。左緩衝機構61が矢印Tの方向に回動すると、左支持部61bを介して左緩衝機構61に支持されている左前輪31が、左サイド部材53に対して、左操舵軸線Xを中心として、矢印Tの方向に回動する。
【0115】
右ブラケット64が矢印Tの方向に回動すると、右ブラケット64に支持されている右緩衝機構62が、右サイド部材54に対して、右操舵軸線Yを中心として、矢印Tの方向に回動する。右緩衝機構62が矢印Tの方向に回動すると、右支持部62bを介して右緩衝機構62に支持されている右前輪32が、右サイド部材54に対して、右操舵軸線Yを中心として、矢印Tの方向に回動する。
【0116】
右転舵するように運転者がハンドル651を操作すると、上述した各要素は、左転舵時とは逆方向に回動する。各要素の動きは左右が逆になるのみであるため、詳細な説明は省略する。
【0117】
以上説明したように、操舵機構6は、運転者によるハンドル651の操作に応じて、操舵力を左前輪31と右前輪32に伝達する。左前輪31と右前輪32は、それぞれ左操舵軸線Xと右操舵軸線Yを中心として、運転者によるハンドル651の操作方向に応じた方向に回動する。
【0118】
次に、
図2と
図5を参照しつつ、車両1の傾斜動作について説明する。
図5は、車体フレーム21が車両1の左方に傾斜した状態における車両1の前部を、車体フレーム21の前後方向における前方から見た正面図である。
図5では、破線で示す車体カバー22を透視した状態が示されている。
【0119】
図2に示すように、直立状態における車体フレーム21の前方から車両1を見たとき、リンク機構5は長方形状をなしている。
図5に示すように、傾斜状態における車体フレーム21の前方から車両1を見たとき、リンク機構5は平行四辺形状をなしている。リンク機構5の作動と車体フレーム21の左右方向への傾斜は連動する。リンク機構5の作動とは、リンク機構5を構成する上クロス部材51、下クロス部材52、左サイド部材53、および右サイド部材54が、それぞれの支持部51a、51b、51c、52a、52b、52cを通る回動軸線を中心として相対回動し、リンク機構5の形状が変化することを意味している。
【0120】
例えば、
図5に示すように、運転者が車両1を左方に傾斜させると、ヘッドパイプ211が鉛直方向に対して左方に傾斜する。ヘッドパイプ211が傾斜すると、上クロス部材51は、支持部51aを通る中間上軸線を中心として、ヘッドパイプ211に対して、車両1の前方から見て反時計回りに回動する。同様に、下クロス部材52は、支持部52aを通る中間下軸線を中心として、ヘッドパイプ211に対して、車両1の前方から見て反時計回りに回動する。これにより、上クロス部材51は、下クロス部材52に対して、車体フレーム21に左右方向における左方に移動する。
【0121】
この移動により、上クロス部材51は、支持部51bを通る左上軸線と支持部51cを通る右上軸線を中心として、それぞれ左サイド部材53と右サイド部材54に対して、車両1の前方から見て反時計回りに回動する。同様に、下クロス部材52は、支持部52bを通る左下軸線と支持部52cを通る右下軸線を中心として、それぞれ左サイド部材53と右サイド部材54に対して、車両1の前方から見て反時計回りに回動する。これにより、左サイド部材53と右サイド部材54は、ヘッドパイプ211と平行な姿勢を保ったまま、鉛直方向に対して車両1の左方に傾斜する。
【0122】
このとき、下クロス部材52は、タイロッド659に対して、車体フレーム21の左右方向における左方に移動する。この移動により、中間ジョイント656、左ジョイント657、および右ジョイント658の各前部に設けられた軸部がタイロッド659に対して回動する。これにより、タイロッド659は、上クロス部材51および下クロス部材52と平行な姿勢を保つ。
【0123】
車両1の左方への左サイド部材53の傾斜に伴い、左回動部材を介して左サイド部材53に支持されている左ブラケット63は、車両1の左方に傾斜する。この傾斜に伴い、左ブラケット63に支持されている左緩衝機構61も、車両1の左方に傾斜する。これにより、左緩衝機構61に支持されている左前輪31が、ヘッドパイプ211と平行な姿勢を保ったまま、車両1の左方に傾斜する。
【0124】
車両1の左方への右サイド部材54の傾斜に伴い、右回動部材を介して右サイド部材54に支持されている右ブラケット64は、車両1の左方に傾斜する。この傾斜に伴い、右ブラケット64に支持されている右緩衝機構62も、車両1の左方に傾斜する。これにより、右緩衝機構62に支持されている右前輪32が、ヘッドパイプ211と平行な姿勢を保ったまま、車両1の左方に傾斜する。
【0125】
上記の左前輪31と右前輪32の傾斜動作に係る説明は、鉛直方向を基準としている。しかしながら、車両1の傾斜動作時(リンク機構5の作動時)においては、車体フレーム21の上下方向と鉛直上下方向は一致しない。車体フレーム21の上下方向を基準とした場合、リンク機構5の作動時において、左前輪31と右前輪32は、車体フレーム21の上下方向における相対位置が変化している。換言すると、リンク機構5は、車体フレーム21の上下方向における左前輪31と右前輪32の相対位置を変更することにより、鉛直方向から車両1の左方または右方に車体フレーム21を傾斜させる。
【0126】
運転者が車両1を右方に傾斜させると、各要素は右方に傾斜する。各要素の動きは左右が逆になるのみであるため、詳細な説明は省略する。
【0127】
図6は、車両1を傾斜させ、かつ転舵させた状態における車両1の前部を車体フレーム21の前後方向における前方から見た正面図である。車両1が左方に傾斜した状態で左方に転舵した状態を示している。
図6では、破線で示す車体カバー22を透視した状態が示されている。
【0128】
操舵動作により、左前輪31は左操舵軸線Xを中心として反時計回りに回動され、右前輪32は右操舵軸線Yを中心として反時計回りに回動されている。傾斜動作により、左前輪31と右前輪32は、車体フレーム21とともに車両1の左方に傾斜している。すなわち、この状態においては、リンク機構5は平行四辺形状を呈している。タイロッド659は、車体フレーム21の直立状態における位置から、車体フレーム21の左右方向における左方、かつ車体フレーム21の前後方向における後方に移動している。
【0129】
<リンク機構を支持する車体フレームの一部>
次に、リンク機構5とパワーユニット24とを連結する車体フレーム21の一部を
図7、
図8および
図9を用いて詳細に説明する。
図7は、車両前部の車体フレーム21を示す側面図である。
図8は、リンク機構5と、上フレーム70および下フレーム80の一部を示す正面図である。
図9は、リンク機構5と上フレーム70を示す上面図である。
【0130】
図7において、矢印XUは、左操舵軸線Xの方向における上方を示す。左操舵軸線Xの方向は、その上部がその下部より後方に位置するように鉛直方向に対して傾斜している。車両1の正面視で、上述した車体フレーム21の上下方向と左操舵軸線Xの方向とは一致している。
また、矢印XFは、中間下軸線L4の方向における前方を示す。中間下軸線L4の方向は、その前部がその後部より上方に位置するように水平方向に対して傾斜している。
【0131】
図7に示すように、パワーユニット24は、車体フレーム21に連結されている。パワーユニット24の前部と、パワーユニット24の後部が車体フレーム21に支持されている。パワーユニット24の後部は後輪揺動軸90で車体フレーム21に支持されている。後輪揺動軸90は、リアアーム213を、車体フレーム21の左右方向に延びる軸線回りに回動可能に支持している。後輪4は、リアアーム213を介して、後輪揺動軸90回りに揺動可能とされている。本実施形態においては、メインフレーム212と、パワーユニット24と、リアアーム213とが、後輪揺動軸90によって共締めされている。
【0132】
パワーユニット24は、直立した状態の車両1の側面視で、中間下軸線L4と左操舵軸線Xとの交点Pと後輪揺動軸90とを結ぶ線分S1に少なくとも一部が重なる位置に設けられている。図示の例では、パワーユニット24の後部の一部が、該線分S1に重なっている。パワーユニット24は、車体フレーム21の上下方向に車両1を上部と下部とに区分けしたときの下部に設けられている。
【0133】
車体フレーム21は、少なくともリンク機構5と後輪揺動軸90とを連結している。この車体フレーム21は、ヘッドパイプ211と、下フレーム80と、上フレーム70と、後フレーム77とを備えている。本実施形態に係る車両1において、メインフレーム212が下フレーム80と上フレーム70と後フレーム77とを備えている。
【0134】
ヘッドパイプ211は、左操舵軸線Xの方向に延びている。ヘッドパイプ211は、中間下軸線L4の方向についてその上部がその下部より後方に位置するように、鉛直方向に対して傾斜して設けられている。
ヘッドパイプ211は中空の部材である。ヘッドパイプ211の内部に、ステアリングシャフト652が回動可能に挿通されている。ヘッドパイプ211は、左操舵軸線Xの方向について右前輪32および左前輪31よりも上方で、上クロス部材51の中間部および下クロス部材52の中間部を回動可能に支持している。
【0135】
下フレーム80は、後述する連結部C1から連結部C2までの車体フレーム21の一部である。上フレーム70は、中間上軸線L1の方向について、後述する連結部C3から連結部C2と同じ位置までの車体フレーム21の一部である。後フレーム77は、中間下軸線L4の方向について連結部C2から後輪揺動軸90までの車体フレーム21の一部である。後フレーム77は、パワーユニット24と後輪揺動軸90とを支持している。上フレーム70および下フレーム80について、以下に詳細に説明する。
【0136】
(下フレーム)
下フレーム80は、ヘッドパイプ211とパワーユニット24とを連結する、車体フレーム21の一部である。下フレーム80は車両1の前後方向に延びている。下フレーム80は、車両1の左右方向について左右対称な形状である。
下フレーム80は、連結部C1でヘッドパイプ211と連結されている。下フレーム80は、連結部C2でパワーユニット24と連結されている。下フレーム80とヘッドパイプ211との連結部C1は、左操舵軸線Xの方向において下クロス部材52より下方に位置している。下フレーム80とパワーユニット24との連結部C2は、車両1の側面視で、パワーユニット24の上部に位置している。
【0137】
下フレーム80は車体フレーム21の一部であって、左操舵軸線Xの方向について中間下軸線L4よりも下方においてヘッドパイプ211から後方に向かって延びる。下フレーム80は、連結部C1から連結部C2までの車体フレーム21の一部である。下フレーム80は、ヘッドパイプ211から、中間下軸線L4の方向について後輪揺動軸90より前方に位置する車体フレーム21とパワーユニット24との連結部までの、車体フレーム21の一部である。
図示の例では、下フレーム80は後フレーム77と一体である。パワーユニット24と後輪揺動軸90とを連結する車体フレーム21の一部が下フレーム80と一体である。下フレーム80は、連結部C2から後輪揺動軸90までの車体フレーム21の一部と一体である。中間下軸線L4の前後方向について後輪揺動軸90よりも前方に位置するパワーユニット24と車体フレーム21との連結部C2から後輪揺動軸90までの車体フレーム21の一部が、下フレーム80と一体である。下フレーム80は、直立した状態の車両1の側面視で、車両1の上下方向においてパワーユニット24より上方に設けられている。
【0138】
図示の例において、下フレーム80とパワーユニット24との連結部C2は、中間下軸線L4の方向について、中間下軸線L4と左操舵軸線Xとの交点Pと後輪揺動軸90とを結ぶ線分S1の中間点Mより前方に位置している。
【0139】
(上フレーム)
上フレーム70は、左操舵軸線Xの方向において下フレーム80よりも上方に位置する。上フレーム70は、車両1の前後方向に延びている。上フレーム70は、車両1の左右方向について左右対称な形状である。
上フレーム70とヘッドパイプ211との連結部C3は、左操舵軸線Xの方向において下フレーム80とヘッドパイプ211との連結部C1より上方に位置する。上フレーム70は、中間下軸線L4の方向において連結部C3から少なくとも下フレーム80のパワーユニット24との連結部C2の上方の位置まで後方へ延びている。上フレーム70は、中間上軸線L1の方向について連結部C3から連結部C2と同じ位置までの車体フレーム21の一部である。上フレーム70は、連結部C3から中間上軸線L1の方向について後輪揺動軸90よりも前方に設けられた車体フレーム21とパワーユニット24との連結部C2と同じ位置までの車体フレーム21の一部である。
図示の例では、上フレーム70は後フレーム77と一体である。上フレーム70の後部から車体フレーム21の後輪揺動軸90との連結箇所までの部分が上フレーム70と一体に形成されている。中間上軸線L1の方向について連結部C2と同じ位置から後輪揺動軸90までの部分が上フレーム70と一体である。中間下軸線L4の方向について後輪揺動軸90よりも前方に位置する車体フレーム21のパワーユニット24との連結部C2から後輪揺動軸90までの部分が上フレーム70と一体である。
【0140】
図7および
図8に示すように、上フレーム70の少なくとも一部が中間上軸線L1の前方から見て上クロス部材51と重なるように、上フレーム70が設けられている。この上クロス部材51と重なる上フレーム70の一部は、おおよそ中間上軸線L1に沿って延びている。
【0141】
(上フレームの上縁)
直立した状態の車両1の側面視で、下フレーム80のパワーユニット24との連結部C2を通り中間下軸線L4と直交する直線L7と上フレーム70の上縁73との交点73aは、左操舵軸線Xの方向について中間下軸線L4と左操舵軸線Xとの交点Pよりも上方に位置している。
図示の例においては、直立した車両1の側面視で、上フレーム70の上縁73の全体が、左操舵軸線Xの方向について、中間下軸線L4と左操舵軸線Xとの交点Pと後輪揺動軸90とを結ぶ線分S1より上方に位置している。図示の例では、上フレーム70の上縁73と後フレーム77の上縁とが連続している。上フレーム70の上縁73の全体、および、後フレーム77の上縁の全体が、線分S1より上方に位置している。
【0142】
(接続部)
下フレーム80と上フレーム70は、接続部75を介して接続されている。接続部75は、直立した状態の車両1の側面視で、下フレーム80のヘッドパイプ211との連結部C1と下フレーム80のパワーユニット24との連結部C2との間に設けられている。下フレーム80と上フレーム70は、中間下軸線L4の方向において、接続部75よりも後方で一体となっている。
なお、図示した例においては、車体フレーム21のうち、パワーユニット24と下フレーム80との連結部C2を通り中間下軸線L4と直交する直線L7より中間下軸線L4の方向について後方に位置する部位が、後フレーム77である。
車体フレーム21のうち、直線L7上における上フレーム70の上縁73と下フレーム80の下縁との中間点より前方かつ上方に位置する部位が、上フレーム70である。
車体フレーム21のうち、直線L7上における上フレーム70の上縁73と下フレーム80の下縁との中間点より前方かつ下方に位置する部位が、下フレーム80である。
【0143】
(上右フレームおよび上左フレーム)
図9に示すように、上フレーム70は、上右フレーム72と、上左フレーム71とを備えている。上左フレーム71は、車両1の左右方向について上右フレーム72より左方に位置している。
上右フレーム72は、ヘッドパイプ211の右部に連結され、パワーユニット24の右部に連結されている。上右フレーム72は、ヘッドパイプ211からパワーユニット24へ向かって右斜め後方へ延びている。
上左フレーム71は、ヘッドパイプ211の左部に連結され、パワーユニット24の左部に連結されている。上左フレーム71は、ヘッドパイプ211からパワーユニット24へ向かって左斜め後方へ延びている。
【0144】
(下右フレームおよび下左フレーム)
なお、下フレーム80も、下右フレーム82と、下左フレーム81とを備えている(
図8参照)。平面視における下右フレーム82と下左フレーム81の形状は、それぞれ、上右フレーム72と上左フレーム71と同様である。
図9に示した上面図では、下右フレーム82と下左フレーム81は、それぞれ、上右フレーム72および上左フレーム71と重なっている。
【0145】
図7に示したように、上左フレーム71と下左フレーム81とが、接続部75を介して中間下軸線L4の方向についてリンク機構5の後端より後方で一体とされている。図示の例においては、リンク機構5の後端とは、下クロス部材52の後端である。図示しないが、上右フレーム72と下右フレーム82も、リンク機構5の後端より後方で一体とされている。
【0146】
図9に示すように、車両1の上面視で、下クロス部材52に重なる上右フレーム72および上左フレーム71の一部は、下クロス部材52を左右方向に3つに区分けしたときの中央部A1に位置している。図示の例においては、上右フレーム72の前部72dおよび上左フレーム71の前部71dが、下クロス部材52に重なっており、下クロス部材52を車両1の左右方向に3つに区分けしたときの中央部A1に位置している。
なお、図示しないが、本実施形態においては、下フレーム80についても、車両1の上面視で、下クロス部材52に重なる下右フレーム82および下左フレーム81の一部は、下クロス部材52を左右方向に3つに区分けしたときの中央部A1に位置している。
【0147】
上記のような車体フレーム21の構成を想到する前に、本発明者は、車体フレーム21のうち、リンク機構5を支持するリンク支持部に作用する荷重について検討した。上述した実施形態に係る車両1において、リンク支持部はヘッドパイプ211が該当する。
【0148】
上クロス部材51の左右方向の中間部は、リンク支持部に支持されている。下クロス部材52の左右方向の中間部は、上クロス部材51より下方でリンク支持部に支持されている。下クロス部材52の左右方向の中間部は、左右の前輪3の上端より上方でリンク支持部に支持されている。
【0149】
傾斜可能な車体フレーム21と2つの前輪3を有する車両1において、リンク支持部に大きな荷重が作用する場面として様々な場面が想定される。
【0150】
例えば、右前輪32と左前輪31の両方に同じ大きさの制動力を作用させる場面を想定する。右前輪32および左前輪31に制動力を作用させると、右前輪32および左前輪31に後ろ向きの荷重が作用する。
【0151】
右前輪32に作用した力は、右緩衝機構62を介して、リンク機構5の右サイド部材54に伝達される。さらに、右サイド部材54に作用した力は、右サイド部材54に連結された上クロス部材51の右部および下クロス部材52の右部に伝達される。さらに、上クロス部材51の右部に作用した力は、上クロス部材51を支持するリンク支持部に伝達される。また、下クロス部材52の右部に作用した力は、下クロス部材52を支持するリンク支持部に伝達される。
【0152】
同様に、左前輪31に作用した力は、左緩衝機構61を介して、リンク機構5の左サイド部材53に伝達される。さらに、左サイド部材53に作用した力は、左サイド部材53に連結された上クロス部材51の左部および下クロス部材52の左部に伝達される。さらに、上クロス部材51の左部に作用した力は、上クロス部材51を支持するリンク支持部に伝達される。また、下クロス部材52の左部に作用した力は、下クロス部材52を支持するリンク支持部に伝達される。
【0153】
別の例として、例えば、右前輪32が平坦な路面を走行し左前輪31が段差を乗り越えようとする場面を想定する。右前輪32が平坦な路面を走行し左前輪31が段差を乗り越えようとする場合、左前輪31のみに段差に起因する後方へ押す力が作用する。すると、左前輪31に作用した力は、左緩衝機構61を介して、リンク機構5の左サイド部材53に伝達される。さらに、左サイド部材53に作用した力は、左サイド部材53に連結された上クロス部材51および下クロス部材52の左部に伝達される。さらに、上クロス部材51の左部に作用した力は、上クロス部材51を支持するリンク支持部に伝達される。また、下クロス部材52の左部に作用した力は、下クロス部材52を支持するリンク支持部に伝達される。
【0154】
リンク支持部を含む車体フレーム21は、これらの力に対して剛性を有する必要がある。
【0155】
発明者は、リンク支持部に荷重が作用する様々な場面を想定した結果、リンク支持部に作用する荷重のほとんどは、上クロス部材51の左部および/または右部から、そして下クロス部材52の左部および/または右部から伝達されるということに気がついた。
そして、車両1の大型化を抑制しながら剛性を確保するために、上クロス部材51からリンク支持部に伝達される力と下クロス部材52からリンク支持部に伝達される力の大きさを分析した。その結果、下クロス部材52からリンク支持部に伝達される力の方が上クロス部材51からリンク支持部に伝達される力よりも大きい傾向があることと、リンク支持部に伝達される力の方向は、上下方向や左右方向よりも前後方向の成分が大きいという傾向を見出し、本発明に至った。
【0156】
本発明者は、上述したように、リンク支持部に作用する荷重について、下クロス部材52から伝達される荷重の方が上クロス部材51から伝達される荷重よりも大きい傾向があることに気が付いた。このため、リンク支持部を支持する上フレーム70と下フレーム80のうち、下フレーム80の剛性を高める手法を検討した。
【0157】
そこで本発明に係る車両1において、下フレーム80は、直立した状態の車両1の側面視で、中間下軸線L4と左操舵軸線Xとの交点Pと後輪揺動軸90とを結ぶ線分S1に少なくとも一部が重なる位置に設けられたパワーユニット24と、リンク支持部(ヘッドパイプ211)とを連結する。つまり、リンク機構5と後輪揺動軸90との間に剛性の高いパワーユニット24が位置し、該パワーユニット24は下フレーム80に連結されている。下フレーム80には、パワーユニット24が支持される支持部が設けられている。なお、下フレーム80は、ブラケットなどの部材を介してパワーユニット24を支持していてもよい。
【0158】
本発明とは異なり特許文献1に係る車両1のように、パワーユニット24が後輪揺動軸90より後方に設けられている場合には、リンク機構5と後輪揺動軸90との間に剛体であるパワーユニット24がない。また、このような車両1においては、パワーユニット24のように剛性の高い部材がリンク機構5と後輪揺動軸90との間に設けられておらず、リンク機構5と後輪揺動軸90とを連結する車体フレーム21の剛性を高めにくい。そこで、車体フレーム21に必要な剛性を確保するために車体フレーム21の径を大きくし、さらの他部材と車体フレーム21との干渉とを回避する結果、車体フレーム21が大型化しやすい。
【0159】
しかし、本実施形態に係る車両1によれば、リンク機構5と後輪揺動軸90との間に剛体であるパワーユニット24が配置され、下フレーム80はリンク機構5とパワーユニット24とに連結されている。このため、剛体であるパワーユニット24を使って、リンク機構5とパワーユニット24とを連結する下フレーム80の剛性を高めやすい。このため、必要な剛性を確保しつつ、下フレーム80を小型化しやすい。
また、剛性の高いパワーユニット24が下フレーム80を強固に支持できるため、下フレーム80は高い剛性でリンク支持部を支持できる。そのため、剛性を高めるために下フレーム80の径を大径化させなくてもよいので、下フレーム80と、下クロス部材や右前輪、左前輪、右緩衝機構、左緩衝機構、操舵機構などとの干渉を抑制できる。このようにして、下フレーム80を大型化させることなく必要な剛性を確保できることを本発明者らは見出した。
【0160】
リンク支持部に荷重が作用したときには、上フレーム70および下フレーム80には、圧縮荷重や引張荷重、曲げ荷重が作用する。これらのうち、上フレーム70および下フレーム80に求められる剛性を考慮する上で支配的な荷重は、曲げ荷重である。
【0161】
リンク支持部から下フレーム80に曲げ荷重が作用する場合には、下フレーム80のリンク支持部との連結部C1が作用点となり、下フレーム80のパワーユニット24との連結部C2が支点となるように、下フレーム80に曲げモーメントが作用する。上述したように、リンク機構5とパワーユニット24との距離が短いので、下フレーム80に作用する曲げモーメントが小さくなり、下フレーム80に要求される剛性が低減される。
【0162】
本実施形態に係る車両1によれば、上フレーム70の上縁73は、直立した状態の車両1の側面視で、下フレーム80のパワーユニット24との連結部C2を通る位置において、中間下軸線L4と直交する上下方向L7について中間下軸線L4と左操舵軸線Xとの交点Pよりも上方に位置する。つまり、上フレーム70の上縁73を高い位置に配置することにより、上フレーム70を前後方向に沿った形状としやすい。これにより、上フレーム70に前後方向の荷重が作用したときに、該荷重の曲げ成分よりも伸縮方向の成分を大きくしやすく、上フレーム70に要求される剛性を低減しやすい。
【0163】
以上のような理由により、必要な剛性を確保しつつ上フレーム70や下フレーム80を小径にしやすく、車体フレーム21の大型化が抑制される。また、車体フレーム21が大型化しないので、下クロス部材52や右前輪32、左前輪31、右緩衝機構62、左緩衝機構61や操舵機構6などと上フレーム70および下フレーム80との干渉を避けやすく、車両1全体としての大型化も抑制される。
【0164】
(2)上述した実施形態に係る車両1において、
図7に示したように、上フレーム70と下フレーム80は、直立した状態の車両1の側面視で、下フレーム80のヘッドパイプ211との連結部C1と下フレーム80のパワーユニット24と連結部C2との間に設けられた接続部75を介して接続されている。
【0165】
つまり、連結部C1と連結部C2との間に、上フレーム70と下フレーム80とを連結する接続部75が設けられている。このため、下フレーム80に作用する曲げ荷重の一部を接続部75を介して上フレーム70が支持することができるため、下フレーム80に要求される剛性を低減できる。
【0166】
(3)上述した実施形態に係る車両1において、
図7に示したように、下フレーム80は、左操舵軸線Xの方向について、下クロス部材52より下方でリンク支持部(ヘッドパイプ211)に連結され、
図8に示したように、上フレーム70の少なくとも一部は、中間上軸線L1の前方から見て上クロス部材51と重なる位置に設けられている。
【0167】
上クロス部材51からリンク支持部に作用する荷重は、中間上軸線L1に沿って作用する。本実施形態に係る車両1によれば、上フレーム70の延びる方向と、上クロス部材51からリンク支持部に作用する前後方向の力の方向とをより一致させやすく、上フレーム70に作用する曲げモーメントをさらに小さくしやすい。そのため、上フレーム70をさらに小径にしやすく、上クロス部材51や下クロス部材52との干渉を避けやすい。
【0168】
(4)上述した実施形態に係る車両1において、
図9に示した上フレーム70と同様に、下フレーム80は、下右フレーム82と、車両1の左右方向について下右フレーム82より左方に設けられた下左フレーム81と、を有し、
下右フレーム82はパワーユニット24の右部に固定され、下左フレーム81はパワーユニット24の左部に固定されている。
【0169】
下右フレーム82をパワーユニット24の右部に固定すると、車両1の上面視で、下右フレーム82を、リンク支持部からパワーユニット24に向かって右斜め後方に延びるように配置しやすい。
また、下左フレーム81をパワーユニット24の左部に固定すると、車両1の上面視で、下左フレーム81を、リンク支持部からパワーユニット24に向かって左斜め後方に延びるように配置しやすい。
【0170】
このため、リンク支持部に伝達される荷重の左右方向の成分が大きい場合であっても、該左右方向の力が下右フレーム82および下左フレーム81に圧縮又は引張方向の力として作用し、曲げの成分が小さくなる。つまり、下右フレーム82および下左フレーム81に該荷重が作用したときに、曲げ成分よりも伸縮方向の成分を大きくしやすく、下右フレーム82および下左フレーム81に要求される剛性を低減しやすい。このため、下右フレーム82および下左フレーム81に要求される剛性を確保しつつ、車体フレーム21を小型化しやすい。
【0171】
(5)上述した実施形態に係る車両1において、
図7に示したように、直立した車両1の側面視で、上フレーム70の上縁73は、左操舵軸線Xの方向について、中間下軸線L4と左操舵軸線Xとの交点Pと後輪揺動軸90とを結ぶ線分S1より上方に位置している。
【0172】
上フレーム70の上縁73の全体を高い位置に配置することにより、上フレーム70のヘッドパイプ211から後方に延びる部位の向きを、より中間上軸線L1に沿わせやすくなる。これにより、上フレーム70に前後方向の荷重が作用したときに、該荷重の曲げ成分よりも伸縮方向の成分をより大きくしやすく、上フレーム70に要求される剛性を低減しやすい。
【0173】
(6)上述した実施形態に係る車両1において、
図7に示したように、上フレーム70は、上右フレーム72と、車両1の左右方向について上右フレーム72より左方に設けられた上左フレーム71と、を有し、
下フレーム80は、下右フレーム82と、車両1の左右方向について下右フレーム82より左方に設けられた下左フレーム81と、を有し、
上右フレーム72と下右フレーム82とが、中間下軸線L4の方向についてリンク機構5の後端より後方で一体であり、
上左フレーム71と下左フレーム81とが、中間下軸線L4の方向についてリンク機構5の後端より後方で一体である。
【0174】
上右フレーム72と下右フレーム82が一体化されているので、上右フレーム72が下右フレーム82に作用する荷重の一部を支え、下右フレーム82が上右フレーム72に作用する荷重の一部を支えることができる。
上左フレーム71と下左フレーム81が一体化されているので、上左フレーム71が下左フレーム81に作用する荷重の一部を支え、下左フレーム81が上左フレーム71に作用する荷重の一部を支えることができる。
これにより、上フレーム70に要求される剛性を低減できる。
【0175】
(7)上述した実施形態に係る車両1において、
図9に示したように、上フレーム70は、上右フレーム72と、車両1の左右方向について上右フレーム72より左方に設けられた上左フレーム71と、を有し、
下フレーム80は、下右フレーム82と、車両1の左右方向について下右フレーム82より左方に設けられた下左フレーム81と、を有し、
車両1の上面視で、下クロス部材52に重なる上右フレーム72、上左フレーム71、下右フレーム82および下左フレーム81の一部72d,71dは、下クロス部材52を左右方向に3つに区分けしたときの中央部A1に位置している。
【0176】
下クロス部材52は、中間下軸線L4回りに回動する。このため、リンク機構5が作動しても、下クロス部材52の左右方向の中央部は、その左部および右部に比べて変位量が少ない。このため、上右フレーム72、上左フレーム71、下右フレーム82および下左フレーム81と、下クロス部材52との干渉を避けやすく、上右フレーム72、上左フレーム71、下右フレーム82および下左フレーム81を下クロス部材52の近くに配置しやすい。これにより、車両1の大型化を抑制しやすい。
【0177】
(8)
図7に示したように、下左フレーム81は、直立した車両1の側面視で、中間下軸線L4の方向について左前輪31の可動範囲の後縁L8よりも前方において、左操舵軸線Xの方向について中間下軸線L4よりも下方に位置する部分を含む。
図7において、直線L8は、左前輪31の可動範囲の後縁に沿う直線を示す。左前輪31を左操舵軸線X回りに転舵させずにリンク機構5を作動させると、左前輪31は中間下軸線L4に直交する方向に移動する。このとき、左前輪31の後端は直線L8に沿って移動する。なお、左前輪31を左操舵軸線X回りに回動させると、左前輪31の後端は直線L8より前方に位置する。
図示しないが、下右フレームについても同様に、直立した車両1の側面視で、中間下軸線L4の方向について右前輪32の可動範囲の後縁よりも前方において、左操舵軸線Xの方向について中間下軸線L4よりも下方に位置する部分を含む。
【0178】
図9に示したように、車両1の上面視で、ヘッドパイプ211より後方に位置する下クロス部材52に重なる下右フレーム82および下左フレーム81の一部は、下クロス部材52を左右方向に3つに区分けしたときの中央部A1に位置しており、下右フレーム82および下左フレーム81が下クロス部材52と干渉しにくい。また、リンク機構5が作動して右前輪32および左前輪31が上下に移動しても、右前輪32および左前輪31は下クロス部材52を左右方向に3つに区分けしたときの右部および左部に比べて、右前輪32、右緩衝機構62、左前輪31および左緩衝機構61は中央部A1に侵入しにくい。このため、下右フレーム82および下左フレーム81を左操舵軸線Xの方向について中間下軸線L4より下方に配置しても、下右フレーム82および下左フレーム81が、下クロス部材52、右前輪32、左前輪31、右緩衝機構62、左緩衝機構61などと干渉しにくい。
【0179】
(9)
図7に示したように、直立した状態の車両1の側面視で、下フレーム80のパワーユニット24との連結部C2は、中間下軸線L4と左操舵軸線Xとの交点Pと後輪揺動軸90とを結ぶ線分S1の中間点Mより前方に位置している。
【0180】
下フレーム80に曲げモーメントが作用するときの下フレーム80の作用点と支点との距離をさらに短くしやすく、作用する曲げモーメントを小さくできる。このため、下フレーム80を小型化しやすく、上クロス部材51、下クロス部材52、右前輪32および左前輪31との干渉を避けやすく、車体フレーム21の大型化を抑制できる。
【0181】
(10)
図9に示す上フレーム70と同様に、下左フレーム81は、互いに溶接された前下左フレーム81aと後下左フレーム81bとを有する。
図7に示すように、前下左フレーム81aは、直立した車両1の側面視で、連結部C2より前方に位置する。後下左フレーム81bは、前下左フレーム81aの後端より後方に位置し前下左フレーム81aに溶接されている。前下左フレーム81aと後下左フレーム81bとの境界には溶接部81cが形成されている。
図示しないが、下右フレーム82も下左フレーム81と同様に、直立した車両1の側面視で、連結部C2より前方に位置する前下右フレームと、前下右フレームの後端より後方に位置し前下右フレームに溶接された後下右フレームと、を有する。前下右フレームと後下右フレームとの境界には溶接部が形成されている。
【0182】
上左フレーム71は、互いに溶接された前上左フレーム71aと後上左フレーム71bとを有する。前上左フレーム71aは、直立した車両1の側面視で、連結部C2より前方に位置する。後上左フレーム71bは、前上左フレーム71aの後端より後方に位置し前上左フレーム71aに溶接されている。前上左フレーム71aと後上左フレーム71bとの境界には、溶接部71cが形成されている。
図示しないが、上右フレーム72も上左フレーム71と同様に、直立した車両1の側面視で、連結部C2より前方に位置する前上右フレームと、前上右フレームの後端より後方に位置し前上右フレームに溶接された後上右フレームと、を有する。前上右フレームと後上右フレームとの境界には溶接部が形成されている。
【0183】
図7に示したように、本実施形態に係る車両1において、下クロス部材52は、中間下軸線L4の方向について、ヘッドパイプ211より前方に位置する前部材52dと、ヘッドパイプ211より後方に位置する後部材52eとを備えている。ヘッドパイプ211から中間下軸線L4の方向について後方に延びる突出部の後端面211aが後部材52eを支持している。後部材52eの回動中心の精度を高めるために、この突出部の後端面211aの加工精度が高いことが好ましい。
【0184】
そこで、上述した実施形態のように、ヘッドパイプ211から後方に延びる上フレーム70および下フレーム80が、前後方向に二分割されていることが好ましい。この場合には、まず、前下左フレーム81aと、前下右フレームと、前上左フレーム71aと前上右フレームとが連結されたヘッドパイプ211を用意する。次に、このヘッドパイプ211に、後方から工具を近づけて、突出部の後端面211aを加工する。この後、後下左フレーム81bと、後下右フレームと、後上左フレーム71bと後上右フレームを、それぞれ、前下左フレーム81aと、前下右フレームと、前上左フレーム71aと前上右フレームに溶接する。
このような加工方法によれば、突出部の後端面211aを加工する際に、工具が突出部の後端面211aに届きやすく、容易に加工できるので突出部の後端面211aの加工精度を高めやすい。
【0185】
ところで、非特許文献1に記載の車両のように、傾斜可能な車体フレームと2つの左右に並ぶ車輪を備えた車両においては、右前輪と左前輪とにそれぞれ衝撃力が作用するため、右前輪および左前輪を支持するリンク機構を支えるために大きな支持剛性が必要になっている。そこで、非特許文献1に記載の車両においては、リンク機構を支持するリンク支持部の支持剛性を高めるために、大径の単一のヘッドパイプと、ヘッドパイプの下部から後方に延びるダウンフレームと、ヘッドパイプの下部とダウンフレームとの連結箇所を補強するガセットとにより、車体フレームの剛性を高めて、リンク機構を支持している。
非特許文献1に記載の車両において、下クロス部材を構成する前下クロス要素と後下クロス要素は、前後方向について、ヘッドパイプを挟むように設けられている。
後下クロス要素をヘッドパイプに取り付ける際には、例えば、後下クロス要素の回動時に接触する部位の平面度を高めたり、該部位の平面の方向を修正するように、加工することがある。特許文献1に記載の車両においては、後下クロス要素が取り付けられる位置やその周囲の部位から後方に延びる車体フレームが設けられていない。このため、工具を後方から近づけることができ、該取付箇所を簡単に加工できる。
このような構成によれば、リンク機構を高い剛性で支持しつつ、リンク機構をヘッドパイプに取り付けた後でヘッドパイプを容易に加工することができる。
【0186】
ところで、本発明者は、リンク機構5の支持剛性をさらに高めることを検討した。そこで、上述した本実施形態のように、リンク支持部211(ヘッドパイプ)と上フレーム70との連結点C3を、リンク支持部211の下部よりも上方に位置させて、リンク機構5からリンク支持部211を介して上フレーム70に伝達される荷重を、上フレーム70の長手方向に作用させることを考えた。長尺部材は長手方向の剛性が、長尺方向に直交する方向の剛性よりも大きい。このレイアウトにより、上フレーム70は、リンク機構5をより高い剛性で支持することができるからである。
しかし、このようにレイアウトすると、
図7に示したように、上フレーム70や下フレーム80が、下クロス部材52の後部材52eに接近してしまう。このため、後部材52eの取付箇所に対して後方から工具を近づけにくく、該取付箇所の加工がしにくい。
そこで、本発明は、リンク機構5を高い剛性で支持し、かつ、リンク支持部211より後方に位置するリンク機構5の要素を取り付ける箇所の加工が容易な車両を提供することも目的とする。
【0187】
(11) そこで、本実施形態に係る車両1は、
右旋回時に車両1の右方に傾斜し、左旋回時に車両1の左方へ傾斜可能な車体フレーム21と、
車体フレーム21の左右方向に並べて配置された右前輪32および左前輪31と、
右前輪32および左前輪31よりも後方に位置し、車体フレーム21に設けられた後輪揺動軸90回りに揺動可能に設けられた後輪4と、
後輪4を駆動するパワーユニット24と、
下部に右前輪32を支持し、上部に対する右前輪32の車体フレーム21の上下方向における変位を緩衝する右緩衝機構62と、
下部に左前輪31を支持し、上部に対する左前輪31の車体フレーム21の上下方向における変位を緩衝する左緩衝機構61と、
リンク機構5と、を有する。
リンク機構5は、
右緩衝機構62の上部を車体フレーム21の上下方向に延びる右操舵軸線Y回りに回動可能に支持する右サイド部材54と、
左緩衝機構61の上部を右操舵軸線Yと平行な左操舵軸線X回りに回動可能に支持する左サイド部材53と、
右サイド部材54の上部を右端部に車体フレーム21の前後方向に延びる右上軸線回りに回動可能に支持し、左サイド部材53の上部を左端部に右上軸線に平行な左上軸線回りに回動可能に支持し、中間部が車体フレーム21に右上軸線および左上軸線に平行な中間上軸線L1回りに回動可能に支持される上クロス部材51と、
右サイド部材54の下部を右端部に右上軸線に平行な右下軸線回りに回動可能に支持し、左サイド部材53の下部を左端部に左上軸線に平行な左下軸線回りに回動可能に支持し、中間部が車体フレーム21に中間上軸線と平行な中間下軸線L4回りに回動可能に支持される下クロス部材52と、を有する。
車体フレーム21は、少なくともリンク機構5と後輪揺動軸90とを連結する。
車体フレーム21は、
右前輪32および左前輪31よりも上方で、上クロス部材51の中間部および下クロス部材52の中間部を回動可能に支持するリンク支持部211と、
直立した状態の車両1の側面視で、中間下軸線L4と左操舵軸線Xとの交点Pと後輪揺動軸90とを結ぶ線分S1に少なくとも一部が重なる位置に設けられたパワーユニット24と、リンク支持部211とを連結する下フレーム80と、
左操舵軸線Xの方向について下フレーム80のリンク支持部211との連結部C1よりも上方でリンク支持部211に連結され、中間下軸線L4の方向において、少なくとも下フレーム80のパワーユニット24との連結部C2まで後方へ延びる上フレーム70と、を有する。
下フレーム80は、下右フレームと、下右フレームより左方に設けられた下左フレーム81と、を有する。
下右フレームは、直立した車両1の側面視で、パワーユニット24との連結部より前方に位置する前下右フレームと、前下右フレームの後端より後方に位置し前下右フレームに溶接された後下右フレームと、を有する。
下左フレーム81は、直立した車両1の側面視で、パワーユニット24との連結部C2より前方に位置する前下左フレーム81aと、前下左フレーム81aの後端より後方に位置し前下左フレーム81aに溶接された後下左フレーム81bと、を有する。
上フレーム70は、上右フレームと、上右フレームより左方に位置する上左フレーム71と、を有する。
上右フレームは、直立した車両1の側面視で、パワーユニット24との連結部より前方に位置する前上右フレームと、前上右フレームの後端より後方に位置し前上右フレームに溶接された後上右フレームと、を有する。
上左フレーム71は、直立した車両1の側面視で、パワーユニット24との連結部C2より前方に位置する前上左フレーム71aと、前上左フレーム71aの後端より後方に位置し前上左フレーム71aに溶接された後上左フレーム71bと、を有する。
【0188】
本実施形態に係る車両によれば、
直立した状態の車両1の側面視で、中間下軸線L4と左操舵軸線Xとの交点Pと後輪揺動軸90とを結ぶ線分S1に少なくとも一部が重なる位置に設けられたパワーユニット24と、リンク支持部211とを連結する下フレーム80と、
左操舵軸線Xの方向について下フレーム80のリンク支持部211との連結部C1よりも上方でリンク支持部211に連結され、中間下軸線L4の方向において、少なくとも下フレーム80のパワーユニット24との連結部C2まで後方へ延びる上フレーム70と、を有する。
【0189】
つまり、本実施形態に係る車両によれば、上フレーム70は、リンク支持部211から後方に延びており、かつ、上フレーム70は下フレーム80より上方でリンク支持部211を支持している。このため、リンク機構5からリンク支持部211を介して伝達される荷重は、上フレーム70の長手方向に作用するため、リンク機構5は高い剛性で支持される。
【0190】
また、本実施形態に係る車両によれば、
下右フレームが、前下右フレームと、前下右フレームに溶接される後下右フレームを有する。
下左フレーム81が、前下左フレーム81aと、前下左フレーム81aに溶接される後下左フレーム81bを有する。
上右フレームが、前上右フレームと、前上右フレームに溶接される後上右フレームを有する。
上左フレーム71が、前上左フレーム71aと、前上左フレーム71aに溶接される後上左フレーム71bを有する。
【0191】
そこで、突出部の後端面211aを加工した後で、後下右フレームを前下右フレームに溶接し、後下左フレーム81bを前下左フレーム81aに溶接し、後上右フレームを前上右フレームに溶接し、後上左フレーム71bを前上左フレーム71aに溶接する。これにより、突出部の後端面211aを加工する際には、リンク支持部211には、前下右フレームと、前下左フレーム81aと、前上右フレームと、前上左フレーム71aしか設けられていないので、工具が突出部の後端面211aに届きやすく、後端面211aを加工しやすい。
【0192】
このような理由により、本実施形態に係る車両1によれば、リンク機構5を高い剛性で支持し、かつ、リンク支持部211より後方に位置するリンク機構5の要素を取り付ける箇所の加工が容易である。
【0193】
<種々の変形例>
上記の実施形態は本発明の理解を容易にするためのものであって、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく変更・改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは明らかである。
【0194】
本明細書で用いられた用語および表現は、説明のために用いられたものであって、限定的に解釈するために用いられたものではない。本明細書に示され、かつ述べられた特徴事項のいかなる均等物をも排除するものではなく、本発明のクレームされた範囲内における各種変形をも許容するものであると認識されねばならない。
【0195】
[車体フレーム]
例えば、車体フレーム21の形状は、上述した実施形態に限られない。
上述した実施形態に係る車両1において、直立した状態の車両1の側面視で、下フレーム80がパワーユニット24に連結される連結部C2は、中間下軸線L4と左操舵軸線Xとの交点Pと後輪揺動軸90とを結ぶ線分S1の中間点Mより前方に位置した例を説明したが、これに限られない。連結部C2は、中間下軸線L4と左操舵軸線Xとの交点Pと後輪揺動軸90とを結ぶ線分S1の中間点Mより後方に位置してもよい。このような構成によれば、直立した車両1の側面視で、右前輪32および左前輪31と、パワーユニット24との間隔を大きく確保しやすい。このため、この空間を使って上クロス部材51、下クロス部材52、右前輪32および左前輪31との干渉を避けるように下フレーム80を配置することができる。
【0196】
上述した実施形態に係る車両1において、後フレーム77が下フレーム80と一体である例を説明したが、パワーユニット24と後輪揺動軸90とを連結する車体フレーム21の一部が下フレーム80と別体であってもよい。
【0197】
また、上述した実施形態に係る車両1において、上フレーム70が、車体フレーム21と後輪揺動軸90との連結箇所と一体である例を説明したが、上フレーム70の後部と後輪揺動軸90の連結箇所が別体であってもよい。
【0198】
上述した実施形態に係る車両1において、下フレーム80と上フレーム70とが左右対称の形状である例を説明したが、下フレーム80と上フレーム70とが左右非対称であってもよい。
【0199】
上述した実施形態に係る車両1において、上左フレーム71と下左フレーム81が一体である例を示したが、上左フレーム71と下左フレーム81とが別体であってもよい。あるいは、上右フレーム72と上左フレーム71が別体である例を説明したが、上右フレーム72と上左フレーム71が一体であってもよい。同様に、下右フレーム82と下左フレーム81が一体であってもよい。なお、一体とは、複数の部位が鋳造などで一体に成形されていることを意味する。あるいは、一体とは、それぞれの部位が個別に成形された後に、それぞれが溶接などで一体化されていることを含む。別体とは、それぞれの部位が個別に成形された後に、それぞれがボルトおよびナットやリベットなどの締結手段などを用いて連結されていることを含む。あるいは、パイプ部材を溶接やボルトなどで連結し、車体フレーム21を構成してもよい。
【0200】
上述した実施形態に係る車両1において、上フレーム70の前端と下フレーム80の前端とが、左操舵軸線Xの方向に離間した例を図示したが、上フレーム70の前端と下フレーム80の前端とが一体であってもよい。
あるいは、上フレーム70と下フレーム80とが一体化されており、直立した状態の車両1の側面視で、上フレーム70と下フレーム80が全体として板状の部材を形成するように構成されていてもよい。または、直立した状態の車両1の側面視で、上フレーム70と下フレーム80の間に位置する中間フレームが設けられていてもよい。
また、上フレーム70と下フレーム80は相対的な上下関係で命名しているに過ぎない。上フレーム70は最も上方に位置するフレームを意味しておらず、下フレーム80よりも上方に位置していることを意味しているに過ぎない。
【0201】
上述した実施形態に係る車両1において、下フレーム80はパワーユニット24の上部に連結された例を説明したが、これに限られない。下フレーム80はパワーユニット24の下部、前部、後部などに連結されていてもよい。
【0202】
上述した実施形態に係る車両1において、直立した状態の車両1の側面視で、パワーユニット24を上下および前後に4分割したときの前上の領域に連結部C2が設けられる例を説明したが、これに限られない。連結部C2を、パワーユニットの前下の領域、後上の領域、後下の領域に設けてもよい。
また、上述した実施形態に係る車両1において、連結部C2をパワーユニット24の右側面および左側面に設けた例を説明したが、これに限られない。連結部C2をパワーユニット24の上面、下面、前面、後面に設けてもよい。なお、パワーユニット24が下フレーム80に支持される部位は、連結部C2の他に複数個所設けられていてもよい。また、上フレーム70および下フレーム80は、複数個所でヘッドパイプ211に連結されていてもよい。
さらに、上述した実施形態に係る車両1において、下フレーム80の少なくとも一部がパワーユニット24より上方に設けられる例を説明したが、下フレーム80の少なくとも一部がパワーユニット24より下方に設けられていてもよい。あるいは、下フレーム80の少なくとも一部がパワーユニット24と重なる位置に設けられていてもよい。
【0203】
上述した実施形態に係る車両1において、下フレーム80と上フレーム70とが接続部75を介して一体である例を説明したが、本発明はこれに限られない。下フレーム80と上フレーム70が別体であってもよい。なお、下フレーム80と上フレーム70が一体である場合、接続部75は、車両1の側面視において、上下に分かれている部分の上フレーム70の下縁と下フレーム80の上縁とが合流する部位をいう。
【0204】
上述した実施形態に係る車両1では、ヘッドパイプ211がリンク機構5を支持する例を説明したが、ステアリングシャフト652を回動可能に支持するヘッドパイプ211と、リンク機構5を支持する部位とが別の部位であってもよい。
【0205】
[パワーユニット]
上述した実施形態に係る車両1では、パワーユニット24が、燃焼室を有するシリンダ(エンジン241)、ギアボックス、クラッチ機構などを一体に備えた例を説明したが、これに限られない。シリンダ、ギアボックス、クラッチ機構が別体に設けられて、これらが全体としてパワーユニット24を構成していてもよい。また、パワーユニット24は、自動変速機構を備えていてもよい。また、シリンダの替わりに電動モータを備えてもよい。さらには、パワーユニット24にバッテリが固定されていてもよい。
【0206】
上述した実施形態に係る車両1において、パワーユニット24が、直立した状態の車両1の側面視で車両1の下部に設けられた例を説明したが、本発明はこれに限られない。パワーユニット24は、直立した状態の車両1の側面視で、中間下軸線L4と左操舵軸線Xとの交点Pと後輪揺動軸90とを結ぶ線分S1に少なくとも一部が重なる位置に設けられていれば、車両1の上部に設けられていてもよい。
また、上述の実施形態に係る車両1において、直立した状態の車両1の側面視で、パワーユニット24の後部の一部が線分S1に重なっている例を説明したが、これに限られない。パワーユニット24の前部の一部が線分S1に重なっていてもよい。
また、上述の実施形態に係る車両1において、直立した状態の車両1の側面視で、パワーユニット24の上部の一部が線分S1に重なっている例を説明したが、パワーユニット24の下部の一部が線分S1に重なっていてもよい。
【0207】
また、本実施形態に係る車両1は、大型のパワーユニット24を搭載しても車両1の大型化が抑制される。本発明は、小型のパワーユニット24を搭載した車両1にも適用可能である。本発明を、排気量が125ccや50ccなど小型のパワーユニット24を搭載した車両1に適用した場合には、車両1の小型化が図れる。
【0208】
[鋭角]
本発明および上記実施形態における鋭角とは、0°を含み90°より小さい角度とする。本来、鋭角は、0°を含まないが、本発明および上記実施形態においては、鋭角は0°を含むものとする。また、上記実施例では、クロス部材51,52の中間上軸線L1および中間下軸線L4と垂直に交わる仮想平面は、後方かつ上方に延びる平面である。しかしながら、これに限定されることなく、クロス部材51,52の中間上軸線L1および中間下軸線L4と垂直に交わる仮想平面が、前方かつ上方に延びる平面であっても良い。
【0209】
[平行・延びる・沿う]
本明細書において、「平行」は、±40°の範囲で傾斜し、部材として交わらない2つの直線も含む。本発明において、「方向」および「部材」等に対して「沿う」は、±40°の範囲で傾斜する場合も含む。本発明において、「方向」に対して「延びる」は、±40°の範囲で傾斜する場合も含む。
【0210】
[車輪・パワーユニット・車体カバー]
本実施形態に係る車両1は、傾斜可能な車体フレーム21と左右に並ぶ2つの前輪3を備えた車両1である。前輪3が2つであって、後輪4の数は1以上である車両1としてもよいし、後輪4が2つであって、前輪3の数が2つ以上である車両1としてもよい。また、車体フレーム21を覆う車体カバー22を備えていても良い。車体フレーム21を覆う車体カバー22を備えていなくても良い。
【0211】
上記の実施形態においては、後輪4の車体フレーム21の左右方向における中央は、車体フレーム21の左右方向における左前輪31と右前輪32の間隔の中央と一致している。このような構成が好ましいものの、後輪4の車体フレーム21の左右方向における中央は、車体フレーム21の左右方向における左前輪31と右前輪32の間隔の中央と一致していなくてもよい。
【0212】
[ヘッドパイプとサイド部の位置関係]
上記各実施形態においては、車体フレーム21の側面視で、右サイド部材54、左サイド部材53およびヘッドパイプ211は、重なる位置に設けられている。しかしながら、車体フレーム21の側面視で、右サイド部材54と左サイド部材53に対しヘッドパイプ211が前後方向の異なる位置に設けられていてもよい。また、右サイド部材54と左サイド部材53の車体フレーム21の上下方向に対する傾斜角度が、ヘッドパイプ211の傾斜角度と異なっていてもよい。
【0213】
[ヘッドパイプ]
なお、リンク機構5を支持するヘッドパイプ211は、一片の部品で構成されていても、複数の部品で構成されていても良い。複数の部品で構成されている場合、溶接、接着などにより結合されていても、ボルト、リベットなどの締結部材で結合されていても良い。
【0214】
[鋭角の大きさ:ステアリングシャフトと緩衝機構]
上記の実施形態においては、左緩衝機構61と右緩衝機構62は、それぞれ一対のテレスコピック機構を備えている。しかしながら、車両1の仕様に応じて、左緩衝機構61と右緩衝機構62がそれぞれ備えるテレスコピック機構の数は、1つであってもよい。
本実施形態において、ステアリングシャフト652の中間操舵軸線Zと車体フレーム21の上下方向のなす鋭角は、右緩衝機構62および左緩衝機構61の伸縮方向と車体フレーム21の上下方向とがなす鋭角と一致している。しかしながら、本発明においては、上記実施形態に限定されない。例えば、ステアリングシャフト652の中間操舵軸線Zと車体フレーム21の上下方向のなす鋭角は、右緩衝機構62および左緩衝機構61の伸縮方向と車体フレーム21の上下方向とがなす鋭角よりも小さくても良いし、大きくてもよい。
【0215】
また、本実施形態において、ステアリングシャフト652の中間操舵軸線Zと右緩衝機構62および左緩衝機構61の伸縮方向は、一致している。しかしながら、本発明においては、上記実施形態に限定されない。車両1が直立した状態の側面視で、ステアリングシャフト652の中間操舵軸線Zと右緩衝機構62および左緩衝機構61の伸縮方向は、前後方向に離間していてもよい。また、例えば、交差していてもよい。
【0216】
さらに、本実施形態において、右緩衝機構62の伸縮方向と右緩衝機構62の右操舵軸線Yが一致し、右緩衝機構62の伸縮方向と左緩衝機構61の左操舵軸線Xが一致している。しかしながら、本発明においては、上記実施形態に限定されない。右緩衝機構62の伸縮方向と右緩衝機構62の右操舵軸線Yが一致せず、右緩衝機構62の伸縮方向と左緩衝機構61の左操舵軸線Xが一致していなくてもよい。
【0217】
[クロス部材およびサイド部材]
なお、上クロス部材51は、一片の部品で構成される上前クロス部、一片の部品で構成される上後クロス部、およびそれらの間に設けられ、複数の部品で構成される接続部材を含んでいても良い。複数の部品で構成されている場合、溶接、接着などにより結合されていても、ボルト、リベットなどの締結部材で結合されていても良い。
【0218】
なお、下クロス部材52は、一片の部品で構成される下前クロス部、一片の部品で構成される下後クロス部、およびそれらの間に設けられ、複数の部品で構成される接続部材を含んでいても良い。複数の部品で構成されている場合、溶接、接着などにより結合されていても、ボルト、リベットなどの締結部材で結合されていても良い。
【0219】
なお、右サイド部材54および左サイド部材53は、一片の部品で構成されていても、複数の部品で構成されていても良い。複数の部品で構成されている場合、溶接、接着などにより結合されていても、ボルト、リベットなどの締結部材で結合されていても良い。また、上クロス部材51または下クロス部材52より車体フレーム21の前後方向の前方に配置される部位と後方に配置される部位を含んでいても良い。右サイド部材54および左サイド部材53の前方に配置される部位と後方に配置される部位の間に上クロス部材51または下クロス部材52が配置されても良い。
【0220】
なお、本発明では、リンク機構5は、上クロス部材51と下クロス部材52の他にさらにクロス部材を備えていても良い。上クロス部材51と下クロス部材52は、相対的な上下関係で命名しているに過ぎない。上クロス部材51は、リンク機構5における最上位のクロス部材を示していない。上クロス部材51は、それより下方の別のクロス部材より上方にあるクロス部材を意味する。下クロス部材52は、リンク機構5における最下位のクロス部材を示していない。下クロス部材52は、それより上方の別のクロス部材より下方にあるクロス部材を意味する。このように、上クロス部材51および下クロス部材52は、リンク機能を有する範囲で、複数のクロス部材で構成しても良い。さらに、上クロス部材51と下クロス部材52の間に他のクロス部材を設けても良い。リンク機構5は、上クロス部材51および下クロス部材52を含んでいれば良い。
【0221】
本発明は、多くの異なった形態で具現化され得るものである。この開示は本発明の原理の実施形態を提供するものと見なされるべきである。それらの実施形態は、本発明をここに記載しかつ/または図示した好ましい実施形態に限定することを意図するものではないという了解のもとで、多くの図示実施形態がここに記載されている。
【0222】
本発明の図示実施形態を幾つかここに記載した。本発明は、ここに記載した各種の好ましい実施形態に限定されるものではない。本発明は、この開示に基づいて当業者によって認識され得る、均等な要素、修正、削除、組み合わせ(例えば、各種実施形態に跨る特徴の組み合わせ)、改良および/または変更を含むあらゆる実施形態をも包含する。クレームの限定事項はそのクレームで用いられた用語に基づいて広く解釈されるべきであり、本明細書あるいは本願のプロセキューション中に記載された実施形態に限定されるべきではない。そのような実施形態は非排他的であると解釈されるべきである。例えば、この開示において、「好ましくは」や「よい」という用語は非排他的なものであって、「好ましいがこれに限定されるものではない」や「よいがこれに限定されるものではない」ということを意味するものである。
車体フレームは、リンク機構5を支持するリンク支持部211と、直立した状態の車両1の側面視で、線分S1に少なくとも一部が重なる位置に設けられたパワーユニット24とリンク支持部211とを連結する下フレーム80と、下フレーム80のリンク支持部211との連結部C1よりも上方でリンク支持部211に連結された上フレーム70と、を有する。直立した状態の車両1の側面視で、連結部C2を通り中間下軸線L4と直交する直線L7と上フレーム70の上縁73との交点73aが、左操舵軸線Xの方向について中間下軸線L4と左操舵軸線Xとの交点Pよりも上方に位置する。