(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、モータ保護装置は、あくまでモータの保護を目的としており、コンベヤ装置の保護を目的としたものではなかった。コンベヤ装置自体の保護を目的とした構成としては、例えば、コンベヤ装置にとって過負荷の状態となった時、コンベヤ装置の回転軸をスリップさせて停止させる過負荷保護機構や、タイマーで設定した所定の時間回転内にコンベヤ装置のベルトを正転・逆転の運動を繰り返し、過負荷の原因となる切り屑等を除去する機構、あるいは、コンベヤ装置本体と駆動源との間に該コンベヤ装置の駆動状態を制御し得る専用の過負荷制御装置を別途組み込む構成等が、知られているが、いずれの構成もコンベヤ装置にとって専用且つ高コストの付加的な制御装置を必要としていた。
【0006】
本発明では、上記の問題を解決するために、被駆動装置に対して専用且つ高コストな制御装置を必要としない簡易な構成で、ギヤモータによって駆動される被駆動装置が破壊されることを防止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、モータと、減速機と、を備えているギヤモータにおいて、
被駆動装置の通常運転中に前記モータに流れる電流値よりも大きく、かつ前記モータの定格トルクを出力する定格電流相当値未満であって、被駆動装置を保護するための所定の閾値を有すると共に、前記モータに流れる電流が、当該定格電流相当値未満の所定の閾値を超えたことを検知するモニタ手段と、前記モータに流れる電流が、前記所定の閾値を超えた場合には、前記モータに流れる電流を遮断する被駆動装置保護器と、を備えたことにより、上記課題を解決した。
【0008】
本発明に係るギヤモータは、ギヤモータにとって過負荷となる電流値相当の閾値ではなく、モータの定格トルクを出力する定格電流相当値「未満」の所定の閾値を有しており、モータに流れる電流が、該所定の閾値を超えたことを検知するモニタ手段を「ギヤモータ自体」が備えた構成を採用している。
【0009】
なお、本発明において「定格トルク」とは、「モータの連続運転が可能な最大トルク」を意味しているものとする。即ち、本発明では、ギヤモータにとって全く問題のない電流が流れている状況であるにも拘らず、敢えてモータの定格トルクを出力する定格電流相当値未満の所定の閾値を超えたか否かを検出することとしている。この構成により、モータに流れる電流が、この所定の閾値を超えた場合に、警報を発して、作業者に被駆動装置が破損する恐れがあることを知らせたり、被駆動装置の操業自体を中止したりして、被駆動装置が破損することを未然に防止できる。
【0010】
本発明によれば、被駆動装置の回転軸本体のスリップ機構やベルトの回転方向の変更機構、あるいは高コストの専用の過負荷制御装置等の付加設備等が一切不要であり、被駆動装置に「ギヤモータ単体」をそのまま単に組み込むだけで同じ機能を実現することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、被駆動装置に対して専用且つ高コストな制御装置を必要としない簡易な構成で、ギヤモータによって駆動される被駆動装置が破壊されることを防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態の一例を詳細に説明する。
【0014】
図1に本発明の実施形態の一例にかかるギヤモータGの側面図を示す。
【0015】
ギヤモータGは、モータ100と、減速機101と、端子箱103と、を備えている。端子箱103は、モータ100の側面(
図1において、上側)に配置されている。
【0016】
モータ100のモータ軸(図示略)は、減速機101の入力軸(図示略)を兼用しており、該モータ軸の先端には、ハイポイドピニオン(図示略)が形成されている。減速機101は、ハイポイドピニオンと、該ハイポイドピニオンと歯合するハイポイドギヤと、により構成される平行軸歯車セット(いずれも図示略)とを有するハイポイド減速機である。従って、モータ100の回転は、減速されると共に、直交方向に回転軸が変換され、減速機101の出力軸101Aから出力される。
【0017】
図2は、ギヤモータGにより駆動されるチップコンベヤ装置(被駆動装置)110の構成を示す模式図を示している。
【0018】
減速機101の出力軸101Aは、チップコンベヤ装置110のスプロケット110A1に直結されており、減速機101の出力軸101Aから出力された回転は、チップコンベヤ装置110のスプロケット110A1に直接入力される。スプロケット110A1の回転により、スプロケット110A2、110A3、110A4によって所定の状態に張り渡されているベルト110Bが回転し、金属の切り屑がベルト110Bに載った状態で所定の位置に送出される。
【0019】
端子箱103は、自身の内部にチップコンベヤ装置110の過負荷を保護するコンベヤ保護器(被駆動装置保護器)105を有している。コンベヤ保護器105は、例えば、単体のギヤモータGとチップコンベヤ装置110との間に別個に用意した(専用のプログラムを組み込んだ)コンピュータ等から構成されるものではなく、ギヤモータG自体の構成要素として該ギヤモータGの端子箱103の内部に設置されている。
【0020】
図3は、コンベヤ保護器105の構成を示す回路図である。3相電源107の線路R、S、Tとそれぞれ接続されている線路107R、107S、107Tは、端子台103Aにおいて、それぞれ線路103U、103V、103Wと接続されている。線路103U、103Wは、コンベヤ保護器105に接続され、更にコンベヤ保護器105からモータ100のU、W相と接続されている。モータ100のV相に接続されている線路103Vは、コンベヤ保護器105には接続されず、直接モータ100のV相に接続されている。
【0021】
なお、直接モータに接続される相はV相に限らず、該モータのU相、W相でもよい。
【0022】
コンベヤ保護器105は、モータ100に流れる電流Iを計測するモニタ手段105Mを備えている。
【0023】
モニタ手段105Mは、モータ100の定格トルクを出力する定格電流相当値A未満の第1の閾値B、第2の閾値C(所定の閾値)を有している。第2の閾値Cは、第1の閾値Bより大きくなっている(B<C<A)。
【0024】
第1、第2の閾値B、Cは、ギヤモータGにとって過負荷となる電流値ではなく、ギヤモータGによって駆動されるチップコンベヤ装置110にとって過負荷となる電流値である。第1の閾値Bは、チップコンベヤ装置110が(破損はしないものの)高負荷領域に入ったことを知るための閾値である。第2の閾値Cは、チップコンベヤ装置110にこれ以上の負荷が掛かると破損する可能性が高いので操業を停止するための閾値である。
【0025】
モニタ手段105Mは、モータ100に流れる電流Iが定格電流値A未満の第1、第2の閾値B、C(特定の状態)を超えたことを多段階的に検知する。
【0026】
モニタ手段105Mが、モータ100に流れる電流が第1の閾値Bを超えたことを検知した場合には、コンベヤ保護器105は第1の警報BOを発する。モニタ手段105Mが、モータ100に流れる電流が第2の閾値Cを超えたことを検知した場合には、コンベヤ保護器105は第2の警報CO(第1の警報BOと異なる)を発するとともに、モータ100に流れる電流を遮断するように構成されている。
【0027】
警報BO、COとしては、例えば、コンベヤ保護器105に図示せぬブザーを付設することにより、該ブザーから警告音を鳴らしたり、またはモータGのケーシングに図示せぬ液晶モニタ等を組み込むことにより警告内容を表示したり、モニタGのケーシングに埋め込んだ液晶ランプ等の表示色を変更したりするものが採用できる。
【0028】
このように、本発明における「被駆動装置保護器」は、警報を出すべきことを「指示する」機能を有していれば足りる。即ち、該指示を受けて、実際に音や光などを発するブザー、ランプ、液晶モニタなどの警報表示器を「被駆動装置保護器自体」が有している必要は必ずしもない。
【0029】
これらの警報表示器は、上記実施形態のように、被駆動装置保護器自体が、あるいはギヤモータ自体が有しているのが、ギヤモータ単体で制御が完結する制御の簡易性、低コスト性等の観点で好ましいが、例えば、ギヤモータ自体が外部から見にくい部分に組み込まれていたり、音が聞こえにくい部分に組み込まれていたりした場合には、装置保護器自体は、単に警報を出すべき旨の「指示」のみを発生し、これをコネクタ等から出力し、ケーブル等の伝達手段を介してギヤモータとは離れた場所にある警報表示器に伝達するものであってもよい。
【0030】
第1、第2の閾値B、Cは、可変に設定可能とされている。第1、第2の閾値B、Cの設定は、例えば、
図4の端子箱103内部の側面図に示す端子箱103内部のボリューム103Bを回転させ、第1、第2の閾値B、Cを構成する抵抗値を調整することにより行われる。
【0031】
なお、本実施形態においては、1個のボリュームにより、2つの第1、第2の閾値を調整しているが、2個のボリュームを用いて、一方のボリュームが第1の閾値を、他方のボリュームが第2の閾値を調整できるようにしてもよい。
【0032】
また、電流値のモニタは、モータの駆動回路中に電圧降下をもたらす部品を並列に挿入し、当該部品の前後での電圧(降下)をモニタすることによって代替されている。尚、モータの電流値を直接モニタしても、勿論構わない。
【0033】
コンベヤ保護器105は、モータ100の起動時から設定した(所定の)時間Tを計測するタイマー(図示略)を備えている。モニタ手段105Mは、モータ100を起動させてからタイマーで設定した時間Tが経過した後、モータ100に流れる電流Iの計測を開始する。
【0034】
これは、モータ100の起動時に、該モータ100に流れる電流Iが、通常運転時の電流値Dよりも過大に上昇したとしても、モニタ手段105Mが、この過大な電流Iを、第1、第2の閾値B、Cを越えた電流値として検知しないようにするためである。
【0035】
コンベヤ保護器105内には上記一連の作業を実現し得る電気的回路、あるいは単機能のマイクロコンピュータなどが組み込まれている。
【0036】
次に、
図5を参照しつつ、ギヤモータGの作用について説明する。
【0037】
モニタ手段105Mは、モータ100を起動させてからタイマーで設定した時間Tが、例えば2〜2.5秒経過するまで、モータ100に流れる電流Iの計測を開始しないため、モニタ手段105Mは、モータ100の動作開始直後に電流Iが第1、第2の閾値B、Cを超えて多大に流れたとしても、該第1、第2の閾値B、Cを超えた電流値としては検知しない。これにより、ギヤモータGは、停止せずに、チップコンベヤ装置110を継続して運転することができる。
【0038】
モータ100が起動してから時間Tが経過した後、モニタ手段105Mは、モータ100に流れる電流Iが、第1、第2の閾値B、Cを超えたことを多段階的に検知する。
【0039】
まず、モニタ手段105Mが、モータ100に流れる電流Iが第1の閾値Bを超えたことを検知した場合には、コンベヤ保護器105は、チップコンベヤ装置110が(破損はしないものの)高負荷領域に入ったことを知らせる第1の警報BOを発する(
図5:実際は、0.3秒程度の継続時間を経た位置Bp)。なお、閾値Bを越えたことに関し、0.3秒程度の継続を確認するのは、瞬間的なノイズ成分によって誤検知するのを排除するためである。作業者は、第1の警報BOにより、チップコンベヤ装置110が通常運転ではない状態であることを極めて早い段階で察知することができ、その原因を探る等の対応をとることができる。必要ならば、作業者自らモータ100の電流を遮断し、チップコンベヤ装置110を停止させることもできる。例えば、作業者は、電流を上昇させた原因がベルト110Bとスプロケット110A1〜110A4の間につまっている金属の切り屑であると判断した場合には、この段階で排除することができる。これにより、チップコンベヤ装置110の過負荷や破損を未然に防止することができる。
【0040】
しかしながら、万が一、作業者が第1の警報BOに気付かないうちに、例えばベルト110Bとスプロケット110A1〜110A4との間に(金属の)切り屑が更に堆積し、あるいは突然に大量の切り屑が詰まってベルト110Bの回転を妨げる場合がある。
【0041】
こうした状況下で、モータ100に流れる電流Iが大きくなり、第2の閾値Cを超えてしまった場合には、コンベヤ保護器105は第2の警報COを発し、作業者に当該状況が知らされると共に、3相電源107からモータ100に流れる電流Iが強制的に遮断され、モータ110に流れる電流は0とされる(
図5:実際は、誤検知防止のため、0.3秒程度の継続時間を経た位置Cp)。この結果、チップコンベヤ装置110は停止され、保護される。
【0042】
なお、モータ100に流れる電流Iが第2の所定の閾値Cを超えたが故にモータ100の電流を遮断する場合には、コンベヤ保護器105は、モータ100が直前まで回転していた方向αと逆方向βにモータ100を一時的に回転させた後、モータ100に流れる電流Iを遮断するとよい。コンベヤ保護器105が、モータ100が停止する直前まで回転していた方向αと逆方向βにモータ100を回転させることにより、スプロケット110A1〜110A4とベルト110Bの間に食い込んでいる切り屑が排出されやすくなり、作業者はチップコンベヤ装置110のメンテナンスをしやすくすることができる。
【0043】
尚、チップコンベヤ装置110を長期間使用した際の経時変化等により、通常運転時の電流値Dが変わることが考えられる。この場合であっても、第1、第2の閾値B、Cは、可変に設定可能とされているため、電流値Dの変化に応じて、コンベヤ保護器105の第1、第2の閾値B、Cを変更し、警報あるいは動力遮断の発生の時期を調整することができる。また、このギヤモータGは、チップチップコンベヤ装置110以外のコンベヤ装置、更にはコンベヤ装置以外の例えば、生塵処理機、破砕機、攪拌機等の色々な被駆動装置に対しても取り付けることができ、この場合に駆動する被駆動装置の耐負荷特性を考慮して、当該被駆動装置にとって最適な第1、第2の閾値B、Cを再設定することもできる。
【0044】
なお、上記実施形態では、モニタ手段が、所定の閾値を2つ有し、モータに流れる電流が定格電流値未満の特定の状態を超えたことを多段階的に検知するようにしていたが、所定の閾値は必ずしも複数設ける必要はなく、モータに流れる電流が、単一の所定の閾値を超えた場合に、警報を発するのみでもよいし、到達モータに流れる電流を即遮断する構成としてもよい。
【0045】
例えば、
図6のモータに流す電流の通電時間と該電流値の変化を示すグラフに示すように、モニタ手段が、モータに流れる電流が閾値Eを超えたことを検知した後(
図6の実際は、誤検知防止のため、0.3秒程度の継続時間を経た位置:Ep)、被駆動装置保護器は、警報等を鳴らさずに、直ぐにモータに流れる電流を遮断してもよい。ギヤモータを組み込む被駆動装置が、何らかの理由(金属の切り屑の詰まり等)によりモータに流れる電流を上昇させるケースのほとんどが当該電流を急激に上昇させてしまう場合等にあっては、このような構成でも十分であり、この場合、ギヤモータは警報を作動させる構成を省略することができるので、製造コストをより低減させることができる。
【0046】
逆に、所定の閾値を3つ以上有していてもよい。また、所定の閾値は、あらかじめ設定し固定した後、作業中に調整できる様な構成でなくてもよい。