特許第5941671号(P5941671)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5941671軟質樹脂シートの端縁加工方法及び製品シート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5941671
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月29日
(54)【発明の名称】軟質樹脂シートの端縁加工方法及び製品シート
(51)【国際特許分類】
   B26D 5/00 20060101AFI20160616BHJP
   B26D 3/02 20060101ALI20160616BHJP
   B26D 3/00 20060101ALI20160616BHJP
【FI】
   B26D5/00 F
   B26D3/02
   B26D3/00 601A
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-286529(P2011-286529)
(22)【出願日】2011年12月27日
(65)【公開番号】特開2013-132740(P2013-132740A)
(43)【公開日】2013年7月8日
【審査請求日】2014年9月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】514190497
【氏名又は名称】株式会社アイールコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人 英知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】桃田 匠
【審査官】 矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−198264(JP,A)
【文献】 特開平02−071289(JP,A)
【文献】 特開2007−069387(JP,A)
【文献】 特開平10−175197(JP,A)
【文献】 米国特許第06308391(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 3/00
B26D 3/02
B26D 5/00
A47B 97/00
B44F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟質合成樹脂からなる原シートより、角度が異なる斜め刃と縦刃を用いて、デスクマットやテーブルマットとなる製品シートを切り抜く軟質樹脂シートの端縁加工方法であって、
支持台に対して前記原シートを移動不能に保持するシート保持工程と、
前記支持台に保持された前記原シートの表面に対し前記斜め刃を挿入して、前記製品シートの外形状に沿うように移動させることにより、前記製品シートを囲むように傾斜切れ目を形成する第一カッティング工程と、
前記支持台に保持された前記原シートの前記表面に対し前記縦刃を裏面まで届くように挿入して、前記製品シートの外形状に沿うように移動させることにより、前記傾斜切れ目と繋がる縦切れ目前記製品シートを囲むように形成されるとともに、前記原シートから前記製品シートを分離する第二カッティング工程とを含み、
前記第一カッティング工程では、前記傾斜切れ目による傾斜面の傾斜角度を、前記原シートの前記裏面に対して35〜55度に設定し、前記第二カッティング工程では、前記縦切れ目による垂直面の角度を前記原シートの前記表面及び前記裏面に対して垂直に設定し、前記傾斜面と前記垂直面の交差角度が鈍角になることを特徴とする軟質樹脂シートの端縁加工方法。
【請求項2】
前記第一カッティング工程では、前記原シートに対して前記斜め刃を、その刃先が前記原シートの厚み方向途中で止まるように挿入して、前記傾斜切れ目を前記原シートから前記製品シートが未分離状態となるように形成し、
前記第二カッティング工程では、前記縦刃を前記傾斜切れ目に向けて挿入したことを特徴とする請求項1記載の軟質樹脂シートの端縁加工方法。
【請求項3】
軟質合成樹脂からなるデスクマットやテーブルマットとなる製品シートであって、
その端縁に、傾斜切れ目による傾斜面と、前記傾斜面と繋がる縦切れ目による垂直面と、を全周に亘って備え、
前記傾斜面の傾斜角度が、シト裏面に対して35〜55度であり、前記垂直面の角度がシト表面及び前記シート裏面に対して垂直であり、前記傾斜面と前記垂直面の交差角度が鈍角になることを特徴とする製品シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばポリ塩化ビニルなどの軟質合成樹脂からなるデスクマットやテーブルマットなどの製造に用いられる軟質樹脂シートの端縁加工方法、及び、その方法を用いて生産された、デスクマットやテーブルマットなどの製品シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の軟質樹脂シートの端縁加工方法として、軟質プラスチックシートよりなるデスクマットの周辺側面を上方にかけて内側に傾くような上向きの斜面に形成したものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】登録実用新案第3033132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし乍ら、このような従来の軟質樹脂シートの端縁加工方法では、デスクマットなどの製品シートにおいてシート端縁の角度が鋭角となるため、人体が接触すると、接触角度と接触した時の力によっては人体に怪我を与えるおそれがあり、取り扱いに注意が必要であった。
そこで、シート端縁を面取り加工することが考えられる。効率的にシート端縁の面取り加工を行うには、NCルーターなどを用い、高速回転の切削歯でシート端縁の面取り箇所を研削することになる。
しかし、この場合には、シート端縁の面取り箇所に切削歯を正確に位置合わせする必要があって、その位置合わせに手間取り、調査作業に時間を要するとともに、多量の削りカスが発生してその廃棄に手間と時間を要し、大量生産に不向きであるという問題がある。
【0005】
本発明は、このような問題に対処することを課題とするものであり、原シートに対する製品シートの切り出し加工と面取り加工を同時に且つ簡単に行うこと、などを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的を達成するために本発明による軟質樹脂シートの端縁加工方法は、軟質合成樹脂からなる原シートより、角度が異なる斜め刃と縦刃を用いて、デスクマットやテーブルマットとなる製品シートを切り抜く軟質樹脂シートの端縁加工方法であって、支持台に対して前記原シートを移動不能に保持するシート保持工程と、前記支持台に保持された前記原シートの表面に対し前記斜め刃を挿入して、前記製品シートの外形状に沿うように移動させることにより、前記製品シートを囲むように傾斜切れ目を形成する第一カッティング工程と、前記支持台に保持された前記原シートの前記表面に対し前記縦刃を裏面まで届くように挿入して、前記製品シートの外形状に沿うように移動させることにより、前記傾斜切れ目と繋がる縦切れ目前記製品シートを囲むように形成されるとともに、前記原シートから前記製品シートを分離する第二カッティング工程とを含み、前記第一カッティング工程では、前記傾斜切れ目による傾斜面の傾斜角度を、前記原シートの前記裏面に対して35〜55度に設定し、前記第二カッティング工程では、前記縦切れ目による垂直面の角度を前記原シートの前記表面及び前記裏面に対して垂直に設定し、前記傾斜面と前記垂直面の交差角度が鈍角になることを特徴とする。
【0007】
また本発明による製品シートは、軟質合成樹脂からなるデスクマットやテーブルマットとなる製品シートであって、その端縁に、傾斜切れ目による傾斜面と、前記傾斜面と繋がる縦切れ目による垂直面と、を全周に亘って備え、前記傾斜面の傾斜角度が、シト裏面に対して35〜55度であり、前記垂直面の角度がシト表面及び前記シート裏面に対して垂直であり、前記傾斜面と前記垂直面の交差角度が鈍角になることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
前述した特徴を有する本発明による軟質樹脂シートの端縁加工方法は、支持台に保持された原シートの表面に斜め刃で傾斜切れ目を形成した後に、縦刃で傾斜切れ目と繋がる縦切れ目が形成されて、原シートから製品シートが分離されるので、原シートに対する製品シートの切り出し加工と面取り加工を同時に且つ簡単に行うことができる。
その結果、NCルーターなどを用い高速回転の切削歯でシート端縁の面取り箇所を研削する方法に比べ、面取り加工のために改めて位置合わせする必要がないとともに、削りカスも発生しないため、大量生産できてコストの低減化が図れる。
【0009】
また、前述した特徴を有する本発明による製品シートは、斜面と垂直面が交差する面取り部の角度が鈍角となるので、シート端縁との接触に伴う怪我を防止することができる。
その結果、安全性の向上が図れて、製品シートの取り扱いが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る軟質樹脂シートの端縁加工方法を示す説明図(部分的な縦断正面図)であり、その工程順にしたがって(a)にシート保持工程を示し、(b)に第一カッティング工程を示し、(c)に第二カッティング工程を示している。
図2】本発明の実施形態に係る製品シートを示す説明図(斜視図)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
本発明の実施形態に係る軟質樹脂シートの端縁加工方法は、軟質合成樹脂からなる原シート1より、角度が異なる斜め刃2と縦刃3を用いて製品シートAを切り抜くために用いられる製品シートAの製造方法である。
詳しく説明すると、軟質樹脂シートの端縁加工方法は、図1(a)〜(c)に示すように、支持台Bに対して原シート1を移動不能に保持するシート保持工程と、原シート1の表面1aに対し斜め刃2を挿入して製品シートAの外形状に沿うように傾斜切れ目1Sを形成する第一カッティング工程と、支持台Bに保持された原シート1の表面1aに対し縦刃3を挿入して傾斜切れ目1Sと繋がる縦切れ目1Pを製品シートAの外形状に沿うように形成するとともに原シート1から製品シートAを分離する第二カッティング工程を含んでいる。
【0012】
原シート1は、例えばポリ塩化ビニル(塩ビ)やその他の合成樹脂などの軟質合成樹脂を、その厚みが約2mm前後か又はそれよりも厚い平板状に形成することで構成される。
原シート1を構成する軟質合成樹脂は、無色や有色の透明又は半透明の樹脂を用いることが好ましい。また、その他の例として、不透明な軟質合成樹脂で原シート1を構成することも可能であれる。
製品シートAの具体例としては、例えばデスクマットやテーブルマットなど、その表面1a側のみを使用するものが好ましい。また、その他の例として、一対の製品シートAの裏面1b同士を貼り合わせるなどして、その両面を使用可能にすることも可能である。
【0013】
支持台Bは、カッティングテーブルとも呼ばれ、その上面B1に複数の吸引孔B2が所定間隔毎に開設され、各吸引孔B2に連通する例えばコンプレッサーなどからなる吸引源(図示しない)の作動により、上面B1に対して原シート1を移動不能に吸着保持するように構成されている。
【0014】
さらに、支持台Bの上面B1と対向する位置には、斜め刃2と縦刃3が配設される。
斜め刃2及び縦刃3は、例えばカッティングプロッターやNCカッターなどの切断加工機(図示しない)に備えられる。切断加工機の数値制御(NC)に基づいて斜め刃2及び縦刃3は、予め設定された形状に沿ってそれを囲むように移動させるとともに、それぞれの刃先2a,3aを支持台Bの上面に保持された原シート1に対して、設定された深さまで挿入させるように作動制御されている。
斜め刃2の傾斜角度θは、原シート1の裏面1bに対して約35〜55度、詳しくは40〜45度に設定することが好ましい。
縦刃3の角度は、原シート1の表面1aに対して略垂直に設定することが好ましい。
【0015】
シート保持工程では、図1(a)に示されるように、作業者が手作業で原シート1を搬入するか、又はロボットなどのシート搬送手段(図示しない)を用いて原シート1が搬入され、支持台Bの上面B1における所定位置に原シート1を載置することで、吸引孔B2によって移動不能に吸着保持される。
【0016】
第一カッティング工程では、図1(b)に示されるように、シート保持工程で保持された原シート1の表面1aに対し斜め刃2を挿入して、その挿入状態を維持しながら、製品シートAの外形状に沿うように移動させる。
それにより、傾斜切れ目1Sが製品シートAを囲むように断面ハの字形に連続形成される。
この際、原シート1に対して斜め刃2を、その刃先2aが原シート1の裏面1bまで至らず厚さ方向の途中で止まるように作動制御することが好ましい。
また、その他の例として、斜め刃2の刃先2aを原シート1の裏面1bまで届くように作動制御することも可能である。
【0017】
第二カッティング工程では、図1(c)に示されるように、第一カッティング工程と同じく支持台Bに位置決めされた原シート1の表面1aに対し縦刃3を挿入して、その挿入状態を維持しながら、製品シートAの外形状に沿うように移動させる。
それにより、傾斜切れ目1Sの先端近くと繋がる縦切れ目1Pが製品シートAを囲むように環状に連続形成される。
この際、縦刃3の刃先3aは、原シート1の裏面1bまで届くように作動制御されて、原シート1を製品シートAと余白部1Mに分離させ、原シート1から製品シートAが切り抜き(切り出し)可能になる。
【0018】
このような本発明の実施形態に係る軟質樹脂シートの端縁加工方法によると、支持台Bに保持された原シート1の表面1aに斜め刃2で傾斜切れ目1Sを形成した後に、縦刃3で傾斜切れ目1Sと繋がる縦切れ目1Pが形成されて、原シート1から製品シートAが分離される。
したがって、原シート1に対する製品シートAの切り出し加工と面取り加工を同時に且つ簡単に行うことができる。
【0019】
また、このような本発明の実施形態に係る軟質樹脂シートの端縁加工方法を用いて生産された製品シートAは、図2に示すように、その端縁に傾斜切れ目1Sによる斜面A1と、縦切れ目1Pによる原シート1の表面1a及び裏面1bに対して略垂直な垂直面A2が全周に亘って形成される。
それにより、斜面A1と垂直面A2が交差する面取り部A3の角度が鈍角となる。
したがって、製品シートAの端縁(外縁)に人体が接触しても怪我をするおそれがない。
次に、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0020】
この実施例は、第一カッティング工程において、図1(b)に示すように、原シート1の表面1aに対して斜め刃2を、その刃先2aが原シート1の厚み方向途中で止まるように挿入して、傾斜切れ目1Sを原シート1から製品シートAが未分離状態となるように形成し、その後の第二カッティング工程において、図1(c)に示すように、縦刃3を傾斜切れ目1Sに向けて挿入している。
さらに、この実施例では、図2に示すように、製品シートAが透明又は半透明なデスクマットやテーブルマットである場合を示している。
【0021】
図1(c)に示される例では、縦刃3を傾斜切れ目1Sの先端近くに向けて挿入することにより、製品シートAの面積が少しでも広くなるように切り出している。
また、その他の例として図示しないが、傾斜切れ目1Sの中間位置に向けて縦刃3を挿入することも可能である。
【0022】
さらに、図示される例では、支持台Bの上面B1に、斜め刃2の刃先2aや縦刃3の刃先3aよりも柔らかい、例えばゴムや合成樹脂などの材料からなる切り込み板B3を着脱自在に取り付けている。
それによって、斜め刃2の刃先2aや縦刃3の刃先3aが原シート1の裏面1bを貫通しても、切り込み板B3に接触するだけで、支持台Bの硬質な本体B4との接触による切れ味の低下を防止している。
また、切り込み板B3は、多数の切り溝が生じて、原シート1の切断に支障が出る場合には、切り込み板B3のみを新しい無傷のものに交換する。
【0023】
このような本発明の実施例に係る軟質樹脂シートの端縁加工方法によると、斜め刃2の挿入により傾斜切れ目1Sが原シート1の厚み方向途中まで形成され、原シート1から製品シートAがまだ分離されていない未分離状態で、縦刃3を傾斜切れ目1Sに向けて挿入するため、縦刃3の挿入に伴って製品シートAの端縁となる箇所が逃げるなどの位置ズレが発生せず、傾斜切れ目1Sと正確に繋がるように縦切れ目1Pが形成される。
したがって、傾斜切れ目1Sと縦切れ目1Pを確実に位置合わせすることができる。
その結果、縦刃3の挿入位置を調整し直す必要がなく、精密な切り出し加工と面取り加工を行うことができるという利点がある。
【0024】
なお、前示実施例では、製品シートAが透明又は半透明なデスクマットやテーブルマットである場合を示したが、これに限定されず、不透明なデスクマットやテーブルマット又はそれ以外のものであっても良い。これらの場合も前示した実施例と同様な作用効果が得られる。
さらに図示例では、支持台Bの上面B1に切り込み板B3を着脱自在に取り付けたが、これに限定されず、切り込み板B3に代わって、原シート1の裏面1bに斜め刃2の刃先2aや縦刃3の刃先3aよりも柔らかい紙などを着脱自在に接着しても良い。
【符号の説明】
【0025】
1 原シート 1a 表面
1b 裏面 1S 傾斜切れ目
1P 縦切れ目 2 斜め刃
2a 刃先 3 縦刃
A 製品シート A1 傾斜面
A2 垂直面 B 支持台
図1
図2