特許第5941688号(P5941688)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5941688
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月29日
(54)【発明の名称】引出し用ローラ構造の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65G 39/09 20060101AFI20160616BHJP
   A47B 88/10 20060101ALI20160616BHJP
   F16C 19/06 20060101ALI20160616BHJP
   F16C 33/76 20060101ALI20160616BHJP
   F16C 35/063 20060101ALI20160616BHJP
   F16C 35/067 20060101ALI20160616BHJP
   F16C 13/02 20060101ALI20160616BHJP
【FI】
   B65G39/09
   A47B88/10 A
   F16C19/06
   F16C33/76 A
   F16C35/063
   F16C35/067
   F16C13/02
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-26888(P2012-26888)
(22)【出願日】2012年2月10日
(65)【公開番号】特開2013-163566(P2013-163566A)
(43)【公開日】2013年8月22日
【審査請求日】2014年9月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000112934
【氏名又は名称】ブイアイブイエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080746
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 武嗣
(72)【発明者】
【氏名】菱田 匡
【審査官】 葛原 怜士郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭48−087581(JP,A)
【文献】 特開平05−149389(JP,A)
【文献】 実開昭51−045548(JP,U)
【文献】 特開2002−339992(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 88/10
B65G 13/00−13/12
B65G 39/00−39/20
F16C 13/00−15/00
F16C 19/00−19/56
F16C 33/30−33/82
F16C 35/00−39/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手部材に接触して転動する合成樹脂製外環体(10)と、該外環体(10)に内嵌されてラジアル内径側から支持する総玉軸受(3)とを、備え、該総玉軸受(3)を被覆する第1防塵用カバー部材(6)・第2防塵用カバー部材(7)を有する引出し用ローラ構造の製造方法に於て
上記総玉軸受(3)は、上記外環体(10)の内周面に装着される外輪(4)と、内輪(5)と、複数のボール(8)とを、有し、該外輪(4)と該内輪(5)の間にて複数の該ボール(8)が転動自在となるように組み立て、複数の該ボール(8)と上記外輪(4)・内輪(5)との隙間(9)に、潤滑油(13)を入れ、該隙間(9)上記第1防塵用カバー部材(6)・第2防塵用カバー部材(7)によって閉鎖
上記総玉軸受(3)を組立てる前に、インサート成型にて、上記第1防塵用カバー部材(6)、上記外環体(10)と上記外輪(4)に一体状に挟着
上記総玉軸受(3)を組立てた後に、上記外環体(10)のラジアル内径側の小凹周溝部(11)に、上記第2防塵用カバー部材(7)を弾性変形させつつ外周端縁(18)を嵌め込んで取付けことを特徴とする引出し用ローラ構造の製造方法
【請求項2】
上記第1防塵用カバー部材(6)及び上記第2防塵用カバー部材(7)は、合成樹脂製である請求項1記載の引出し用ローラ構造の製造方法
【請求項3】
総玉軸受(3)の組立て前の半製品としての外輪(4)に、円環状の第1防塵用カバー部材(6)を組み合わせて、インサート成型にて、該外輪(4)を外嵌状に被覆する合成樹脂製外環体(10)を一体に形成すると共に上記第1防塵用カバー部材(6)を該外環体(10)と該外輪(4)に挟着状に保持させ、
次に、上記外輪(4)のラジアル内径側に複数のボール(8)を全周にわたって配置し、複数の該ボール(8)を該外輪(4)と内輪(5)の間に転動自在として挟み込むようにして、上記総玉軸受(3)を組立て、そして、該総玉軸受(3)の上記ボール(8)と上記外輪(4)・内輪(5)の隙間(9)に潤滑油(13)を入れ、
次に、上記外環体(10)のラジアル内径側に形成された小凹周溝部(11)に、円環状の第2防塵用カバー部材(7)を弾性変形させつつ外周端縁(18)を嵌め込んで取付け、上記内輪(5)に軸(2)を挿通して固着することを特徴とする引出し用ローラ構造の製造方法。
【請求項4】
総玉軸受(3)の組立て前の半製品としての外輪(4)に、円環状の第1防塵用カバー部材(6)を組み合わせて、インサート成型にて、該外輪(4)を外嵌状に被覆する合成樹脂製外環体(10)を一体に形成すると共に上記第1防塵用カバー部材(6)を該外環体(10)と該外輪(4)に挟着状に保持させ、
次に、上記外輪(4)のラジアル内径側に複数のボール(8)を全周にわたって配置し、複数の該ボール(8)を該外輪(4)と内輪(5)の間に転動自在として挟み込むようにして、上記総玉軸受(3)を組立て、
次に、上記内輪(5)に軸(2)を挿通して固着し、該総玉軸受(3)の上記ボール(8)と上記外輪(4)・内輪(5)の隙間(9)に潤滑油(13)を入れ、
次に、上記外環体(10)のラジアル内径側に形成された小凹周溝部(11)に、円環状の第2防塵用カバー部材(7)を弾性変形させつつ外周端縁(18)を嵌め込んで取付けることを特徴とする引出し用ローラ構造の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引出し用ローラ構造の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷蔵庫の引出しをスライド自在に支持するための引出し用ローラが普及している(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−139534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の引出し用ローラ構造は、ボールを保持するリテーナ(保持器)を有するリテーナタイプの軸受(ベアリング)を具備している。
【0005】
冷蔵庫の野菜や果物等を収納するための引出しの容量が増大傾向にあって、引出しを支持するローラの負荷重量は大きくなっている。しかし、リテーナタイプの軸受は、ボール1個当りの負荷が大きくなるため重荷容量が小さいという欠点があった。引出し用ローラは、冷蔵庫内の限られた狭いスペースに設置されるものであるため、許容寸法が制限されており、車輪の外径寸法を大きく設計してボールの数を増やしたり、又は、軸受のボールの玉径を大きくしたりするのは好ましくない。つまり、引出し用ローラは、コンパクトなまま重荷容量を大きくすることが要求され、リテーナタイプの軸受では、その対応が難しかった。
【0006】
そこで、従来より用いられてきた総玉タイプの軸受とすれば、より多くのボールで荷重を分担でき、サイズを変更することなく重荷容量を増やすことができる。しかしながら、従来の総玉タイプの軸受は、内輪が単一のものであると、ボールを組み込むことができないため、内輪を2個に分割した構造であり、ボールの組込み後、分割内輪を組み立てて構成されていた。よって、総玉タイプの軸受は、ボールと内輪の接触による騒音を発生しやすく、また、ボールとボールが相互に摺接して摩耗しやすいという欠点があった。
【0007】
この総玉軸受に於て、上記の欠点を克服するために、ボールと内輪・外輪の隙間に潤滑油(グリス)を注入して、滑りを良くする対策が考えられるが、隙間が封鎖されていないため潤滑油が漏出しやすく、その効果が長持ちしなかった。また、小さなゴミや埃が侵入するのを防止できなかった。
【0008】
そこで、本発明は、コンパクトなまま重荷重に耐え、かつ、スムーズな回転が長持ちする引出し用ローラ構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る引出し用ローラ構造の製造方法は、相手部材に接触して転動する合成樹脂製外環体と、該外環体に内嵌されてラジアル内径側から支持する総玉軸受とを、備え、該総玉軸受を被覆する第1防塵用カバー部材・第2防塵用カバー部材を有する引出し用ローラ構造の製造方法に於て、上記総玉軸受は、上記外環体の内周面に装着される外輪と、内輪と、複数のボールとを、有し、該外輪と該内輪の間にて複数の該ボールが転動自在となるように組み立て、複数の該ボールと上記外輪・内輪との隙間に、潤滑油を入れ、該隙間上記第1防塵用カバー部材・第2防塵用カバー部材によって閉鎖、上記総玉軸受を組立てる前に、インサート成型にて、上記第1防塵用カバー部材、上記外環体と上記外輪に一体状に挟着、上記総玉軸受を組立てた後に、上記外環体のラジアル内径側の小凹周溝部に、上記第2防塵用カバー部材を弾性変形させつつ外周端縁を嵌め込んで取付けものである。
【0010】
また、上記第1防塵用カバー部材及び上記第2防塵用カバー部材は、合成樹脂製であるものである。
【0011】
また、総玉軸受の組立て前の半製品としての外輪に、円環状の第1防塵用カバー部材を組み合わせて、インサート成型にて、該外輪を外嵌状に被覆する合成樹脂製外環体を一体に形成すると共に上記第1防塵用カバー部材を該外環体と該外輪に挟着状に保持させ、次に、上記外輪のラジアル内径側に複数のボールを全周にわたって配置し、複数の該ボールを該外輪と内輪の間に転動自在として挟み込むようにして、上記総玉軸受を組立て、そして、該総玉軸受の上記ボールと上記外輪・内輪の隙間に潤滑油を入れ、次に、上記外環体のラジアル内径側に形成された小凹周溝部に、円環状の第2防塵用カバー部材を弾性変形させつつ外周端縁を嵌め込んで取付け、上記内輪に軸を挿通して固着する製造方法である。
【0012】
また、総玉軸受の組立て前の半製品としての外輪に、円環状の第1防塵用カバー部材を組み合わせて、インサート成型にて、該外輪を外嵌状に被覆する合成樹脂製外環体を一体に形成すると共に上記第1防塵用カバー部材を該外環体と該外輪に挟着状に保持させ、次に、上記外輪のラジアル内径側に複数のボールを全周にわたって配置し、複数の該ボールを該外輪と内輪の間に転動自在として挟み込むようにして、上記総玉軸受を組立て、次に、上記内輪に軸を挿通して固着し、該総玉軸受の上記ボールと上記外輪・内輪の隙間に潤滑油を入れ、次に、上記外環体のラジアル内径側に形成された小凹周溝部に、円環状の第2防塵用カバー部材を弾性変形させつつ外周端縁を嵌め込んで取付ける製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の引出し用ローラ構造の製造方法によれば、寸法の限られた狭いスペースにも設置できるコンパクトな寸法のままで、大きな荷重を支持するローラ構造が得られる。また、第1防塵用カバー部材・第2防塵用カバー部材により、小さなゴミや埃が総玉軸受に侵入するのを防止でき、潤滑油が漏出するのを抑制して長期間保持できる。
本発明の引出し用ローラ構造の製造方法によれば、相手部材に接触して転動する外環体を回転軸心に対して偏心させることなく形成でき、かつ、第1防塵用カバー部材を確実に外輪に取り付けることができる。また、総玉軸受を組立てた後、第2防塵用カバー部材を簡単に取り付けることができ、小さなゴミや埃が総玉軸受に侵入するのを防止でき、かつ、潤滑油の漏出を抑制して長期間保持できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施の一形態を示した断面正面図である。
図2】本発明の実施の一形態を示した破断側面図である。
図3】本発明の製造方法を示した断面正面図である。
図4】本発明の製造方法を示した断面正面図である。
図5】本発明の製造方法を示した断面正面図である。
図6】本発明の製造方法を示した断面正面図である。
図7】本発明の製造方法を示した断面正面図である。
図8】本発明の製造方法を示した断面正面図である。
図9】本発明の他の製造方法を示した断面正面図である。
図10】本発明の他の製造方法を示した断面正面図である。
図11】本発明の他の製造方法を示した断面正面図である。
図12】本発明の他の製造方法を示した断面正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施の形態を示す図面に基づき本発明を詳説する。
本発明の引出し用ローラ構造は、冷蔵庫内に設置される野菜や果物等を収納するための引出しに取付けられて、スライド自在に支持するものである。また、冷蔵庫本体に取付けて、引出しをスライド自在として、その荷重を支持するものであって良い。あるいは、書類や本を収納するキャビネットの引出しレールに取付けて使用することもできる。
図1図2に示すように、本発明の引出し用ローラ構造は、相手部材に接触して転動する合成樹脂製外環体10と、外環体10に内嵌されてラジアル内径側から支持する総玉軸受3とを、備えたローラ本体1を、軸2に回転自在に支持させている。
【0016】
総玉軸受3は、外環体10の内周面に装着される外輪4と、内輪5と、複数のボール8とを、有し、外輪4と内輪5の間にて複数のボール8が転動自在となるように組み立てられている。複数の該ボール8と外輪4・内輪5との隙間9には、潤滑油13が入れられている。
玉軸受3は、外輪4と内輪5の間に全周(360°)にわたって複数のボール8を配設したものであって、リテーナ(保持器)を備えていない。なお、内輪5は、分割内輪を組み立てて構成されたものである。外輪4の内周側と内輪5の外周側には、一対の凹溝部24,25が形成され、この凹溝部24,25に複数のボール8が挟まれて保持されている。
【0017】
また、引出し用ローラ構造は、総玉軸受3を被覆する第1防塵用カバー部材6・第2防塵用カバー部材7を有している。第1防塵用カバー部材6及び第2防塵用カバー部材7は、合成樹脂製である。
第1防塵用カバー部材6は、全体が円環状であって、断面L字状に形成されている。第1防塵用カバー部材6は、総玉軸受3を組立てる前に、インサート成型にて、外環体10と外輪4に一体状に挟着されている。第1防塵用カバー部材6の内周端縁16は、外輪4の内周面14よりもラジアル内径側に突出し、内輪5の一側面に摺接している。
第2防塵用カバー部材7は、全体が円環状であって、断面一文字状である。第2防塵用カバー部材7は、総玉軸受3を組立てた後に、外環体10のラジアル内径側の小凹周溝部11に、第2防塵用カバー部材7を弾性変形させつつ外周端縁18を嵌め込んで取付けられている。第2防塵用カバー部材7の内周端縁17は、内輪5の他側面に摺接している。つまり、総玉軸受3の隙間9が、第1防塵用カバー部材6・第2防塵用カバー部材7によって、軸心方向両側から閉鎖(封鎖)されている。
【0018】
次に、引出し用ローラ構造の製造方法を説明する。
図3に示すように、総玉軸受3の組立て前の半製品としての外輪4に、円環状の第1防塵用カバー部材6を組み合わせて、インサート成型にて、外輪4を外嵌状に被覆する合成樹脂製外環体10を一体に形成すると共に第1防塵用カバー部材6を外環体10と外輪4に挟着状に保持させる。
インサート成型の際、断面L字状の第1防塵用カバー部材6が外輪4の外周面15から一側面4Aにわたって当接した状態で、合成樹脂の固化により外環体10が形成され、第1防塵用カバー部材6はラジアル内径側に抜け落ちることがないように係止される。また、外環体10のラジアル内径側であって、外輪4の他側面4Bに向かい合う箇所に、小凹周溝部11を形成する。
【0019】
次に、図4に示すように、外輪4のラジアル内径側に複数のボール8を全周にわたって配置し、複数のボール8を外輪4と内輪5の間に転動自在として挟み込むようにして、総玉軸受3を組立てる。そして、図5に示すように、総玉軸受3のボール8と外輪4・内輪5の隙間9に潤滑油13を入れる。
【0020】
次に、図6図7に示すように、外環体10のラジアル内径側に形成された小凹周溝部11に、円環状の第2防塵用カバー部材7を弾性変形させつつ外周端縁18を嵌め込んで取付ける。
第2防塵用カバー部材7は、合成樹脂製であるため、外周端縁18を外輪4の他側面4Bに向けて押し込めば簡単に嵌め込むことができる。
【0021】
図8では、総玉軸受3を組立てた後、第2防塵用カバー部材7を取り付けてから、内輪5に軸2を挿通して固着する。
軸2は、内輪5が段部に当接するまで挿入されたところで、先端部2Aをカシめて拡径することで内輪5に係止され、総玉軸受3に固着される。
【0022】
次に、引出し用ローラ構造の他の製造方法について説明する。
図3図4に示すように、総玉軸受3の組立て前の半製品としての外輪4に、円環状の第1防塵用カバー部材6を組み合わせて、インサート成型にて、外輪4を外嵌状に被覆する合成樹脂製外環体10を一体に形成すると共に第1防塵用カバー部材6を外環体10と外輪4に挟着状に保持させ、次に、外輪4のラジアル内径側に複数のボール8を全周にわたって配置し、複数のボール8を外輪4と内輪5の間に転動自在として挟み込むようにして、総玉軸受3を組立てるところまでは、上述の製造方法と同様である。
【0023】
総玉軸受3を組立てた後、図9図10に示すように、内輪5に軸2を挿通して固着し、総玉軸受3のボール8と外輪4・内輪5の隙間9に潤滑油13を入れる。
次に、図11図12に示すように、外環体10のラジアル内径側に形成された小凹周溝部11に、円環状の第2防塵用カバー部材7を弾性変形させつつ外周端縁18を嵌め込んで取付ける。
【0024】
本発明では、総玉軸受3を組立てる前に、インサート成型にて、第1防塵用カバー部材6が、外環体10と外輪4に一体状に挟着されており、この構成により、外環体10と総玉軸受3の同心度を高精度に保つことができる。
図示省略するが、本発明との作用・効果の相違を示す比較対象例として、外輪と内輪の間に複数のボールを転動自在に組み込んで総玉軸受を組立てた後に、総玉軸受を金型内に挿入し、溶融樹脂を注入してインサート成型を行なうと、外環体が回転軸心に対して偏心して形成され、ローラ本体がスムーズに転動しない虞れがある。その原因としては、総玉軸受の内輪が分割状であるため、正確に寸法を決めるのが難しいからである。
【0025】
なお、本発明は、設計変更可能であって、例えば、総玉軸受3の転動部材は、ボールに限定されず、コロやニードル状の転動部材を用いるも良い。軸2は、先端部2Aをカシめて総玉軸受3に固着しているが、ボルトやナットを用いて螺着する構造とするも良い。
【0026】
以上のように、引出し用ローラ構造は、相手部材に接触して転動する合成樹脂製外環体10と、外環体10に内嵌されてラジアル内径側から支持する総玉軸受3とを、備え、総玉軸受3を被覆する第1防塵用カバー部材6・第2防塵用カバー部材7を有するので、冷蔵庫やキャビネット等の寸法の限られた狭いスペースにも設置できるコンパクトな設計で、かつ、大きな荷重を支持することができる。第1防塵用カバー部材6・第2防塵用カバー部材7により、小さなゴミや埃が総玉軸受3の隙間9に侵入するのを防止でき、潤滑油13が漏出するのを抑制してスムーズな回転を長期間保持できる。
【0027】
また、第1防塵用カバー部材6及び第2防塵用カバー部材7は、合成樹脂製であるので、適度な弾性を有し、かつ、安価に製造できる。
【0028】
また、総玉軸受3は、外環体10の内周面に装着される外輪4と、内輪5と、複数のボール8とを、有し、外輪4と内輪5の間にて複数の該ボール8が転動自在となるように組み立てられ、複数のボール8と外輪4・内輪5との隙間9には、潤滑油13が入れられて、隙間9が第1防塵用カバー部材6・第2防塵用カバー部材7によって閉鎖されているので、複数のボール8で荷重を分担でき、外環体10のサイズを変更することなく重荷容量を増やすことができる。ボール8と内輪5の接触による騒音を低減でき、ボール8相互の摩耗を抑制できる。潤滑油13の漏出を抑制して、スムーズな回転を保持できる。
【0029】
また、総玉軸受3を組立てる前に、インサート成型にて、第1防塵用カバー部材6が、外環体10と外輪4に一体状に挟着され、総玉軸受3を組立てた後に、外環体10のラジアル内径側の小凹周溝部11に、第2防塵用カバー部材7を弾性変形させつつ外周端縁18を嵌め込んで取付けられたので、外環体10と総玉軸受3の同心度を高精度に保つことができ、かつ、第2防塵用カバー部材7を簡単に取り付けることができる。
【0030】
また、本発明の引出し用ローラ構造の製造方法は、総玉軸受3の組立て前の半製品としての外輪4に、円環状の第1防塵用カバー部材6を組み合わせて、インサート成型にて、外輪4を外嵌状に被覆する合成樹脂製外環体10を一体に形成すると共に第1防塵用カバー部材6を外環体10と外輪4に挟着状に保持させ、次に、外輪4のラジアル内径側に複数のボール8を全周にわたって配置し、複数のボール8を外輪4と内輪5の間に転動自在として挟み込むようにして、総玉軸受3を組立て、そして、総玉軸受3のボール8と外輪4・内輪5の隙間9に潤滑油13を入れ、次に、外環体10のラジアル内径側に形成された小凹周溝部11に、円環状の第2防塵用カバー部材7を弾性変形させつつ外周端縁18を嵌め込んで取付け、内輪5に軸2を挿通して固着するので、相手部材に接触して転動する外環体10を回転軸心に対して偏心させることなく形成でき、かつ、第1防塵用カバー部材6を確実に外輪4に取り付けることができる。また、総玉軸受3を組立てた後、第2防塵用カバー部材7を簡単に取り付けることができ、小さなゴミや埃が総玉軸受3に侵入するのを防止でき、かつ、潤滑油13の漏出を抑制して長期間保持できる。
【0031】
また、総玉軸受3の組立て前の半製品としての外輪4に、円環状の第1防塵用カバー部材6を組み合わせて、インサート成型にて、外輪4を外嵌状に被覆する合成樹脂製外環体10を一体に形成すると共に第1防塵用カバー部材6を外環体10と外輪4に挟着状に保持させ、次に、外輪4のラジアル内径側に複数のボール8を全周にわたって配置し、複数のボール8を外輪4と内輪5の間に転動自在として挟み込むようにして、総玉軸受3を組立て、次に、内輪5に軸2を挿通して固着し、総玉軸受3のボール8と外輪4・内輪5の隙間9に潤滑油13を入れ、次に、外環体10のラジアル内径側に形成された小凹周溝部11に、円環状の第2防塵用カバー部材7を弾性変形させつつ外周端縁18を嵌め込んで取付けるので、相手部材に接触して転動する外環体10を回転軸心に対して偏心させることなく形成でき、かつ、第1防塵用カバー部材6を確実に外輪4に取り付けることができる。また、総玉軸受3を組立てた後、軸2を固着して姿勢を安定させてから、第2防塵用カバー部材7を簡単に取り付けることができる。小さなゴミや埃が総玉軸受3に侵入するのを防止でき、かつ、潤滑油13の漏出を抑制して長期間保持できる。
【符号の説明】
【0032】
2 軸
3 総玉軸受
4 外輪
5 内輪
6 第1防塵用カバー部材
7 第2防塵用カバー部材
8 ボール
9 隙間
10 外環体
11 小凹周溝部
13 潤滑油
18 外周端縁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12