(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数の燃焼触媒部のうち前段には低温活性および耐熱性に優れた白金−パラジウムを担持したハニカム触媒が配設され、後段には脱硝効果の高い白金−ロジウムを担持したハニカム触媒が配設されていることを特徴とする請求項2に記載の不活性ガスの製造方法。
前記熱交換装置の周囲に沿って配され、前記第2混合体を流通させるバイパス経路が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の不活性ガスの製造方法。
前記熱交換装置を通過した前記第2混合体の温度が触媒の活性温度より低い場合には、ヒータにより加熱されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の不活性ガスの製造方法。
前記燃料ガスの供給量は、レシオコントロール弁により、不活性ガス需要量の負荷変動に対する瞬時適正流量によって制御されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の不活性ガスの製造方法。
前記燃料ガスが供給される燃料ガス供給部と、脱酸・脱硝処理が行われる触媒槽との間に、燃料ガスの付臭剤中に含まれる有機硫黄分を吸着・除去する銅を担持した触媒を配設した前処理触媒槽を有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の不活性ガスの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の燃焼式不活性ガス製造方式は、例えばメタンやブタン等の燃料ガスを用いて、大気中に含まれる21%の酸素を燃焼により脱酸処理する方法が知られている。ところで、近年では、地球環境の問題から二酸化炭素の排出量を低減させ、製造コストを低下させることが要求されていることから、燃料ガスの使用量を低減しても、不活性ガス中に含まれる酸素濃度を微量に維持することが求められていた。
また、特許文献1では、蒸気発生の増減に伴うボイラ燃焼量の負荷変動は、排ガス流量の変化や、排気温度の変化や、反応前酸素濃度の変化が予測される。このような負荷変動に対応した温度制御が必要である。さらに、排ガスと燃焼ガスを反応させるためには混合したガスを触媒の活性温度まで上げる必要があり、この活性温度が不足すると、上述した減酸素の効果が安定しないという問題があり、その活性温度を上昇させるための加熱エネルギーにかかるコストも大きくなることから、その点で改善の余地があった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、燃料ガスの使用量を低減しても不活性ガス中に含まれる酸素の濃度が高くなるのを抑制することができるうえ、酸素を含むガスと燃料ガスとからなる混合体の温度の管理にかかわる熱効率を向上させることで、加熱エネルギーにかかるコストの低減を図ることができ、触媒反応熱によって高温になった混合体の温度を効率よく触媒の活性温度まで低下させることができる不活性ガスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、この発明は以下の手段を提供している。
本発明に係る不活性ガスの製造方法は、酸素を含むガスと燃料ガスとからなる混合体に燃焼触媒部を通過させて不活性ガスを製造する不活性ガスの製造方法であって、燃焼触媒部を通過した第1混合体と、燃焼触媒部に到達する前の混合体または酸素を含むガスからなる第2混合体とを熱交換装置に通過せることで、第1混合体と第2混合体とのそれぞれの熱を交換させ
、酸素を含むガスの酸素濃度水準に応じて、燃料ガスの流量演算値を段階的に補正するように制御され、制御のみによって不活性ガス中の残留可燃物濃度を減少させることを特徴としている。
【0008】
本発明では、熱交換装置において、燃焼触媒部を通過し触媒反応の反応熱によって温度が上昇した第1混合体の熱の一部を、燃焼触媒部に到達する前の混合体または酸素を含むガスからなる第2混合体に伝達する熱交換を行うことができる。つまり、第1混合体を熱交換装置に通過させて反応熱の一部を第2混合体に伝達させることで、第1混合体を触媒の活性温度まで下げることができる。そのため、混合体は、燃焼触媒部において、燃料ガスと酸素を含むガス(排ガス)を反応させて排ガス中の酸素濃度を減少させることで高温になっても、熱交換装置を通過したときには温度を低下させることができる。
また、燃焼触媒部に通過させる前の未反応の第2混合体を触媒の活性温度に上昇させることが可能となる。なお、熱交換により第2混合体が活性温度に満たない場合には、さらに第2混合体を加熱する必要があるが、前記熱交換前の温度よりは上昇しているので、加熱エネルギーを低減することができる。
つまり、第2混合体の冷却媒体は、第1混合体自体であり、自己完結型の熱バランスを保つ構成となり、熱効率に優れた製造方法を実現することができる。
【0009】
また、本製造方法では、脱酸・脱硝処理する混合体に含まれる混合ガスとして、燃料ガスをボイラーで空気を用いて燃焼したときに生成されたものを使用することで、含有する酸素の濃度が空気よりも低いボイラー排ガスとなるため、燃料ガスの使用量を低減し、混合体から除去する酸素の量を削減しても、不活性ガス中に含まれる酸素の濃度が高くなるのを抑制することが可能になり、不活性ガスの製造コストを削減することができる。
また、この場合には、酸素を含むガスの酸素濃度水準に応じて、燃料ガスの流量演算値を段階的に補正するように制御されるので、燃料ガスのロスを少なくすることができ、さらに製造される不活性ガス中の残留可燃物濃度を極めて小さくすることができるという効果を奏する。
【0010】
また、上記本発明の不活性ガスの製造方法において、燃焼触媒部は複数設けられ、第1混合体を通過経路に戻して次の燃焼触媒部に通過させ、複数の燃焼触媒部を通過させて複数回にわたって脱酸・脱硝処理を行うことが好ましい。
【0011】
この発明によれば、脱酸・脱硝処理を複数回にわたって行うこととなり、不活性ガス中に含まれる酸素の濃度を例えば10ppm未満に確実に抑えることができる。
そして、複数の燃焼触媒部を順次通過させる場合であっても、燃焼触媒部で高温になった混合体を熱交換装置によって触媒の活性温度まで低下させることが可能となるので、次の燃焼触媒部の通過中に高温により触媒を溶かしてしまうといった不具合を防止することができる。
【0012】
また、上記本発明の不活性ガスの製造方法では、複数の燃焼触媒部のうち前段には低温活性および耐熱性に優れた白金−パラジウムを担持したハニカム触媒が配設され、後段には脱硝効果の高い白金−ロジウムを担持したハニカム触媒が配設されていることが好ましい。
【0013】
この場合、複数設けられる燃焼触媒部のうち前段の燃焼触媒部では、混合体の低温活性化と耐熱性を向上させることができ、後段あるいは最終段階の燃焼触媒部では、脱酸効果を向上させることができる。
【0014】
また、上記本発明の不活性ガスの製造方法において、熱交換装置の周囲に沿って配され、第2混合体を流通させるバイパス経路が設けられていることが好ましい。
【0015】
この場合には、バイパス経路において熱交換装置を流通する第2混合体の流量制御を行うことが可能となるので、燃焼触媒部を通過した第1混合体と熱交換を効果的に行うことができる。
【0016】
また、上記本発明の不活性ガスの製造方法では、熱交換装置を通過した第2混合体の温度が触媒の活性温度より低い場合には、ヒータにより加熱されることが好ましい。
【0017】
この場合、第2混合体は熱交換装置により第1混合体の熱の一部を回収して上昇するが、その上昇温度が触媒の活性温度に満たない場合にはヒータによって活性温度まで上昇させることができる。このとき、熱交換装置を通過した第2混合体の温度は前記熱交換前の温度よりは上昇しているので、加熱エネルギーを低減させることができる。
【0018】
また、上記本発明の不活性ガスの製造方法において、燃料ガスの供給量は、レシオコントロール弁により、不活性ガス需要量の負荷変動に対する瞬時適正流量によって制御されていることが好ましい。
【0019】
この場合には、レシオコントロール弁によって、不活性ガスの流量差圧に基づいて流量比率に比例した燃料ガスの流量を制御することができ、不活性ガスの流量の変化に対してほぼ同時のタイミングで燃料流量を追従させることが可能となり、不活性ガス中に含まれる酸素濃度を微量に維持すること、さらに燃料ガスのロスを少なくすることができる。
【0020】
また、上記本発明の不活性ガスの製造方法において、燃料ガスが供給される燃料ガス供給部と、脱酸・脱硝処理が行われる触媒槽との間に、燃料ガスの付臭剤中に含まれる有機硫黄分を吸着・除去する銅を担持した触媒を配設した前処理触媒槽を有することが好ましい。
【0021】
この場合には、前処理触媒槽に第2混合体を通過させることで、付臭剤としてTBM(ターシャリーブチルメルカプタン)やDMS(ジメチルサルファイド)などが添加され、パラジウム触媒に対して有機硫黄分による被毒作用が顕著に現れる燃料ガスであっても、活性が低下するのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る不活性ガスの製造方法によれば、燃料ガスの使用量を低減しても不活性ガス中に含まれる酸素の濃度が高くなるのを抑制することができるうえ、酸素を含むガスと燃料ガスとからなる混合体の温度の管理にかかわる熱効率を向上させることで、加熱エネルギーにかかるコストの低減を図ることができ、触媒反応熱によって高温になった混合体の温度を効率よく触媒の活性温度まで低下させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る不活性ガスの製造方法の実施の形態について、
図1を参照して説明する。
【0027】
まず、この方法を実施するための不活性ガスの製造装置について説明する。
図1に示すように、本実施の形態の不活性ガスの製造装置1は、図示されないボイラーや加熱炉等から大気中に放散されている排ガスGを供給する排ガス供給部10と、燃料ガスKを供給する燃料ガス供給部20と、排ガスGおよび燃料ガスKからなる混合体Wに脱酸・脱硝処理を施す複数段の脱酸・脱硝処理部30、40、50と、を備えて概略構成されている。
ここで、排ガスGは、例えば2〜4%の酸素を含むとともに、窒素、水蒸気、二酸化炭素、窒素化合物よりなる原料ガスであり、その酸素濃度は空気よりも低くなっている。
【0028】
脱酸・脱硝処理部は、ガスの流通方向で上流側から下流側へ向けて第1脱酸・脱硝処理部30、第2脱酸・脱硝処理部40、第3脱酸・脱硝処理部50の順で直列に配置されている。そして、脱酸・脱硝処理部のうち最終段階の脱酸・脱硝処理部50では、その手前の第2脱酸・脱硝処理部40を通過した混合体Wに対して脱酸・脱硝処理を施して不活性ガスNが製造される。
また、排ガス供給部10と燃料ガス供給部20には、排ガス供給部10から供給される排ガスGの条件に応じて燃料ガスKの供給量を制御する燃料制御部60が設けられている。
【0029】
排ガス供給部10は、前記ボイラー等から流通するダクト等の排ガスGの排ガス流路11と、排ガス流路11から分岐弁15を介して分岐させた排ガスGを貯留する貯留タンク12と、排ガスGを吸引させて前記貯留タンク12へ誘引する誘引ファン13と、貯留タンク12の内部を攪拌する攪拌ブロワー14と、を備えている。
【0030】
貯留タンク12は、排ガスGの滞留時間として例えば2.5分の流量となる容積のものが用いられている。貯留タンク12内では、排ガスG中のハンチングする酸素濃度を均一化させるように、時間当たりの排ガス処理流量と同等の撹拌流量となるような攪拌ブロワー14を備えている。
そして、貯留タンク12内に吸引された排ガスGは、複数段で設けられる脱酸・脱硝処理部のうち最も上流側に位置する第1脱酸・脱硝処理部30へ供給される。
【0031】
燃料ガス供給部20は、排ガスGの急激な流量変動にも燃料ガス流量を追従させ得るレシオレギュレター21(レシオコントロール弁)と、燃料ガスKを脱酸・脱硝処理部30、40、50のそれぞれに適宜な分配比で供給する燃料ガス供給弁22と、を備えている。燃料ガス供給弁22は、供給路23に設けられている。供給路23は、第1脱酸・脱硝処理部30に燃料ガスKを供給する第1供給分岐路23Aと、第2脱酸・脱硝処理部40に燃料ガスKを供給する第2供給分岐路23Bと、第3脱酸・脱硝処理部50に燃料ガスKを供給する第3供給分岐路23Cと、に分岐されており、各分岐路23A、23B、23Cのそれぞれに前記燃料ガス供給弁22が設けられている。燃料ガス供給弁22は、後述する燃料制御部60によって制御されている。
【0032】
第1脱酸・脱硝処理部30は、排ガスGに対して貴金属触媒の活性を促すための電気ヒータ31と、排ガスGおよび燃料ガスKからなる混合体W(W0)に対して前処理を施す前処理触媒槽32と、この前処理触媒槽32で処理した混合体W0に対して脱酸・脱硝処理を施す第1触媒槽33と、電気ヒータ31の上流側で前処理触媒槽32に供給される前の排ガスG(本願の第2混合体に相当)と混合体W0のそれぞれの熱を交換させる第1熱交換装置34と、第1熱交換装置34の入口から出口に接続する第1迂回配管80と、電気ヒータ31の温度を制御するヒータ温度制御装置35と、第1触媒槽33の入口温度を制御する第1温度制御装置36と、を備えている。
【0033】
前処理触媒槽32の上流側には、燃料ガス供給部20の第1供給分岐路23Aが接続される燃料ガス供給点P1を有している。そして、電気ヒータ31は、第1熱交換装置34を通過し燃料ガス供給点P1までの配管に設けられ、前記ヒータ温度制御装置35によって温度制御されている。つまり、燃料ガス供給点P1では、電気ヒータ31によって適宜な温度に加熱された排ガスGと燃料ガスKとが混合されることになる。
ここで、第1触媒槽33は、白金−パラジウム(Pt−Pd)からなるハニカム触媒を有しているので、混合体Wの低温活性化と耐熱性を向上させることができる。
【0034】
なお、前処理触媒槽32は、燃料供給部P1の下流部に配置され、アルミナに銅を担持させている。これにより、付臭剤としてTBM(ターシャリーブチルメルカプタン)やDMS(ジメチルサルファイド)などが添加され、パラジウム触媒に対して有機硫黄分による被毒作用が顕著に現れる燃料ガスKであっても、活性が低下するのを抑制することができる。
【0035】
第1触媒槽入口温度を制御するため、第1熱交換装置34は周囲に沿って第1熱交換装置34の入口から出口に接続する第1迂回配管80を設けている。
第1熱交換装置34は、第1触媒槽33で脱酸・脱硝処理されたときに温度上昇し、熱交換装置に流通する混合体W1の反応熱の一部を回収し、その熱を排ガスGに伝達してそのガス温度を上昇させつつ、混合体W1の温度を例えば400℃の活性温度まで下げるものである。つまり、混合体W1の冷却媒体は、第1熱交換装置34を通過する排ガスG自体であり、自己完結型の熱バランスを保っている。そして、混合体W1は、第2脱酸・脱硝処理部40へ送られることになる。
【0036】
なお、第1温度制御装置36は、第1熱交換装置34の入口から出口に接続する迂回配管80に設けられる開閉弁38の開度を調整し、迂回配管80の流量を変化させて、熱交換による温度を制御するようになっている。配管39には、途中の段階で不活性ガスを取り出すための第1分岐供給弁71が設けられている。
【0037】
第2脱酸・脱硝処理部40は、第1触媒槽33で処理された排ガスGおよび燃料ガスKからなる混合体W1に対して前処理を施す前処理触媒槽41と、この前処理触媒槽41で処理した混合体W2に対して脱酸・脱硝処理を施す第2触媒槽42と、前処理触媒槽41の上流側で前処理触媒槽41に供給される前の混合体W1(本願の第2混合体に相当)と混合体W1のそれぞれの熱を交換させる第2熱交換装置43と、第2熱交換装置43の入口から出口に接続する第2迂回配管81と、第2触媒槽42の入口温度を制御する第2温度制御装置44と、を備えている。
【0038】
前処理触媒槽41の上流側には、燃料ガス供給部20の第2供給分岐路23Bが接続される燃料ガス供給点P2を有している。
ここで、第2触媒槽42は、白金−パラジウム(Pt−Pd)からなるハニカム触媒を有しているので、第1触媒槽33と同様に混合体Wの低温活性化と耐熱性を向上させることができる。
【0039】
第2触媒槽入口温度を制御するため、第2熱交換装置43は周囲に沿って第2熱交換装置43の入口から出口に接続する第2迂回配管81を設けている。
第2熱交換装置43は、第2触媒槽42で脱酸・脱硝処理されたときに温度上昇し、熱交換装置に流通する混合体W2の反応熱の一部を回収し、その熱を混合体W1に伝達してそのガス温度を上昇させつつ、混合体W2の温度を例えば400℃の活性温度まで下げるものである。つまり、混合体W2の冷却媒体は、第2熱交換装置43を通過する混合体W1自体であり、自己完結型の熱バランスを保っている。そして、混合体W2は、第3脱酸・脱硝処理部50へ送られることになる。
【0040】
なお、第2温度制御装置44は、第2熱交換装置43の入口から出口に接続する迂回配管81に設けられる開閉弁47の開度を調整し、迂回配管81の流量を変化させて、熱交換による温度を制御するようになっている。配管46には、途中の段階で不活性ガスを取り出すための第2分岐供給弁72が設けられている。
【0041】
第3脱酸・脱硝処理部50は、第2触媒槽42で処理された排ガスGおよび燃料ガスKからなる混合体W2に対して脱酸・脱硝処理を施す第3触媒槽51と、第2触媒槽42および第3触媒槽51をその順で通過した高温不活性ガスHを冷却して不活性ガスNを製造する冷却器52と、を備えている。
第3触媒槽51の上流側には、燃料ガス供給部20の第3供給分岐路23Cが接続される燃料ガス供給点P3を有している。
ここで、最終段をなす第3触媒槽51では、とくに脱硝効果の高い白金−ロジウム(Pt−Rh)からなるハニカム触媒を有しているので、脱酸効果を向上させることができる。
【0042】
燃料制御部60は、排ガスGの流量や、酸素濃度に応じて適切な燃料ガス流量を演算し出力する演算器61が設けられ、燃料流量調節計62と、燃料ガスKの供給路23に設けられる燃料ガス制御弁63および流量センサー64とを制御する構成となっている。
【0043】
次に、以上のように構成された不活性ガスの製造装置1を用いて不活性ガスNを製造する方法について、
図1に基づいて具体的に説明する。
【0044】
先ず、排ガス供給部10の分岐弁15を開き、誘引ファン13により排ガスGを吸引する。なお、このときの排ガスGの最大流量は、排ガス発生源となる既存設備の運転に支障がないように、最小負荷における発生源の排ガス流量未満とする。そして、排ガスGの誘引により例えば10kPa程度まで昇圧させる。なお、排ガスGを脱酸し不活性化するために、外気の侵入が無く、かつ圧力をプロセスラインで保持するようにする。
【0045】
次いで、昇圧させた排ガスGを貯留タンク12へ導入する。この貯留タンク12では、排ガスGのガス成分を均質にする。均質化された排ガスGにおいては、例えば酸素(O
2)の濃度が約4%、二酸化炭素(CO
2)の濃度が約9%、水(H
2O)の濃度が約15%、窒素(N
2)の濃度が約72%であり、温度が約200℃〜250℃となっている。
また、このとき貯留タンク12の入口において、例えば±0.6%の幅にハンチングする酸素濃度は、貯留タンク12の出口で±0.04%未満に減衰される。そして、減衰後の酸素濃度は燃料ガスKの演算制御に安定化をもたらすため、酸素濃度の乱れによる演算遅れが無くなり、適正な燃料流量を供給することができる。
【0046】
次に、貯留タンク12内の均質な排ガスGを、誘引ファン13により、複数の触媒槽33、42、51のうち最初の触媒槽33に供給する。この際同時に、第1燃料ガス供給部P1から燃料ガスKを供給する。なお、この燃料ガスKの供給量は、複数の触媒槽33、42、51のそれぞれに供給され、各触媒槽33、42、51で触媒反応させるのに足りる量となっている。なお、本実施の形態では、燃料ガスKとして、例えばメタンガス等の都市ガスを採用した。
具体的には、演算器61において、排ガスGの流量と酸素濃度に対して適正な燃料流量を演算し出力する。燃料ガスKの流量は、温度補正後の排ガス湿り流量に排ガスG中から検出された酸素の出力濃度を乗じ、さらに酸化反応に必要な燃料のモル比率(ガス区分13Aの都市ガス=0.444)と任意で決められる燃料ガスKの余裕係数を乗じることで算出される。
【0047】
そして、第1脱酸・脱硝処理部30では、排ガス供給部10から供給された排ガスGが第1熱交換装置34を通過し、必要に応じて電気ヒータ31で加熱することで触媒の活性温度に設定され、さらに第1燃料ガス供給部P1において燃料ガスKと混合され、その混合体W0が前処理触媒槽32および第1触媒槽33をその順で通過して脱酸・脱硝処理が施され、さらに混合体W1が第2脱酸・脱硝処理部40へ向けて送られる。
【0048】
ここで、第1熱交換装置34では、第1触媒槽33を通過し触媒反応の反応熱によって温度が上昇した混合体W1の熱の一部を、前処理触媒槽32に到達する前の排ガスGに伝達する熱交換が行われることになる。つまり、混合体W1を第1熱交換装置34に通過させて反応熱の一部を排ガスGに伝達させることで、混合体W1を触媒の溶融を防ぐことのできる温度まで下げることができる。そのため、混合体W1は、第1脱酸・脱硝処理部30において、燃料ガスKと排ガスGを反応させて排ガスG中の酸素濃度を減少させることで高温になっても、第1熱交換装置34を通過したときには温度を低下させることができる。
また、第1熱交換装置34では、第1脱酸・脱硝処理部30に通過させる前の未反応の排ガスGを触媒の活性温度に上昇させることが可能となる。なお、熱交換により排ガスGが活性温度に満たない場合には、さらに排ガスGを電気ヒータ31によって加熱する必要があるが、第1熱交換装置34を通過した排ガスGの温度は前記熱交換前の温度よりは上昇しているので、加熱エネルギーを低減することができる。
つまり、排ガスGの冷却媒体は、混合体W1自体であり、自己完結型の熱バランスを保つ構成となり、熱効率に優れた製造方法を実現することができる。
【0049】
次いで、第2脱酸・脱硝処理部40では、第1脱酸・脱硝処理部30を通過した混合体W1が第2熱交換装置43を通過して活性温度に設定され、さらに第2燃料ガス供給部P2において燃料ガスKと混合され、前処理触媒槽41および第2触媒槽42をその順で通過して脱酸・脱硝処理が施され、さらに混合体W2が第3脱酸・脱硝処理部50へ向けて送られる。
なお、第2熱交換装置43による熱交換作用は、上述した第1熱交換装置34と同様であるので、ここでは詳しい説明は省略する。
【0050】
次に、第3脱酸・脱硝処理部50では、第2脱酸・脱硝処理部40を通過し触媒の活性温度に保たれた混合体W2が第3燃料ガス供給部P3において燃料ガスKと混合され、第3触媒槽51を通過して脱酸・脱硝処理が施され、さらに脱酸・脱硝された高温不活性ガスHを冷却器52で常温まで冷却し、混合体W2から不活性ガスを除く他のガスを除去して不活性ガスNを得る。なお、冷却時に凝集され生成された水(H
2O)は、不活性ガスNの製造装置1の外部に排出される。
また、第3触媒槽51を通過して製造された不活性ガスNにおいては、酸素(O
2)の濃度が10ppm以下、窒素(N
2)の濃度が99.999%となっている。
【0051】
本実施の形態の製造方法では、脱酸・脱硝処理する混合体Wに含まれる混合ガスとして、燃料ガスKをボイラーで空気を用いて燃焼したときに生成されたものを使用することで、含有する酸素の濃度が空気(大気中の酸素濃度)に比較して例えば1/5〜1/10と低いボイラー排ガスとなるため、燃料ガスKの使用量を低減し、混合体Wから除去する酸素の量を削減しても、不活性ガスN中に含まれる酸素濃度は低く、高純度の不活性ガスを得ることができ、不活性ガスNの製造コストを削減することができる。
【0052】
また、3段の触媒槽33、42、51を設けることで、酸化反応熱を分散化させることができる。つまり、脱酸・脱硝処理を複数回にわたって行うので、不活性ガスN中に含まれる酸素の濃度を上記10ppm未満に確実に抑えることができる。そして、触媒槽33、42で高温になった混合体Wをそれぞれ熱交換装置34、43によって触媒の活性温度まで低下させることが可能となるので、次の触媒槽の通過中に高温により触媒を溶かしてしまうのを防止することができる。
具体的には、各触媒槽33、42、51における反応熱による昇温は、120℃/1%O
2相当である。例えば、排ガスG中の酸素濃度が4%存在し、触媒槽33、42、51の入口温度が400℃の場合に酸化反応処理をしたとき、出口温度は880℃となり、触媒の耐熱温度650℃を上回るため、使用に耐えないこととなる。これに対して、酸化反応熱を分散化するようにして、触媒槽33、42、51、および熱交換装置34、43をそれぞれ複数配置することで、貴金属のシンタリング防止や熱劣化によるセラミック担体細孔表面積の減少を防止し、触媒寿命を延ばすことが可能となる。
【0053】
また、既存の排ガスGの温度は、およそ200℃であり、触媒の脱酸・脱硝反応にかかわるには触媒の活性温度として不足する。そのため、本製造装置1での開始時には、電気ヒータ31で排ガスGを例えば400℃まで予熱する。この予熱温度は、燃料ガスKの種類によっても異なるが、広範囲に使用されている13A都市ガスを使用した場合、反応率100%の脱酸・脱硝反応を促すことが可能である。なお、LPGブタンガスの場合には、300℃の予熱温度で反応率100%の活性が可能となり、プロパンガスでは、350℃の予熱温度で反応率100%の活性が可能となる。
【0054】
そして、上記13A都市ガス燃料の場合、排ガスGの予熱温度を400℃まで昇温させ、燃料ガスKを添加した後に第1触媒槽33で酸化反応させた余剰熱は、第1熱交換装置34において200℃の排ガスGを熱交換により400℃となるように熱交換される。この熱平衡後、電気ヒータ31は、自動的に制御オフとなる。そのため、反応熱での運転を継続することで、電気ヒータ31の使用電力を低減することができる。
【0055】
さらに、本実施の形態では、需要と用途に応じて複数種類の純度の不活性ガスNを使用することが可能である。
例えば、最終的な不活性ガスNは、この後にガス圧縮してゴム製品の加硫やシール用に用いることができ、或いは冷凍機や吸着式のドライヤーによる脱水処理を経て無酸化熱処理炉やパージガスとして使用することができる。
一方、不活性ガスNの純度をあまり必要としない用途においては、第1触媒槽33で脱酸・脱硝処理された混合体Wを第1分岐供給弁71から取り出して、不活性ガスNを供給することができる。この場合、酸素及び窒素酸化物の濃度は、例えば排ガスG中に含まれる50%まで除去されている。さらに、第2触媒槽42で脱酸・脱硝処理された混合体Wを第2分岐供給弁72から取り出して、不活性ガスNを供給することができる。この場合、例えば酸素濃度が100ppm未満、窒素酸化物濃度が10ppm未満にまで除去されており、酸素濃度の要求レベルに応じて供給することができる。
【0056】
次に、上述した燃料ガスKの流量制御について、さらに具体的に説明する。
本実施の形態による燃料ガスKの流量制御は、2つの外的変化(酸素濃度の変化および不活性ガスNの需要変動)に対応して、同時にかつ瞬時に燃料ガスKを加減する制御を行うことができる。すなわち、燃料ガスKの流量制御は、排ガス酸素分析計からの出力値を基に演算しているが、分析計には数十秒の応答遅れがある。演算し、流量制御された燃料流量は、応答遅れ前の酸素濃度を基準にしている。したがって、分析計の応答時間より短い周期で酸素濃度が変化している場合には、燃料流量制御が実際の酸素濃度に合った燃料流量ではない。そのため、酸素濃度の均一化が必要であり、排ガスGの滞留と撹拌処理を行う貯留タンク12を通過させ、その結果、入口で±0.6%の変動幅は、出口において±0.04%にまで均一化することができ、これにより酸素濃度に等しい燃料流量を制御することができる。
【0057】
一方、燃焼炉等の運転負荷状態によって変化する酸素濃度は、およそ2〜4%の範囲である。この濃度範囲の演算値としては、Δ2%を複数に等分化することで、0.1%あるいは0.2%の階段を備えた濃度範囲をテーブル表にプログラムする。排ガス酸素濃度の現在値が複数段階で示された濃度範囲の枠内にあるとき、決められた演算使用値で演算した出力は、燃料流量調節計62に送られ、必要な燃料ガスK流量は燃料ガス制御弁63によって制御される。このように、酸素濃度の均一化と濃度範囲枠で捉えた酸素濃度の演算から算出された燃料流量は、 過不足のない適正な量を制御することができることから、不活性ガスN中の残留可燃物濃度を極めて少なくすることができる。
【0058】
また、不活性ガスNの需要変動に対する燃料制御は、差圧式のレシオレギュレター21で行う。不活性ガスNの流量差圧は、導管を用いてレシオレギュレター21に圧力伝播し、流量比率に比例した燃料流量を自力で制御する。不活性ガスNの流量の変化に対し、ほぼ同時のタイミングで燃料流量を追従させることができ、燃料ガスKの過不足ロスをなくすことができる。
【0059】
上述のように本実施の形態による不活性ガスの製造方法では、燃料ガスKの使用量を低減しても不活性ガスN中に含まれる酸素の濃度が高くなるのを抑制することができるうえ、排ガスGと燃料ガスKとからなる混合体Wの温度の管理にかかわる熱効率を向上させることで、加熱エネルギーにかかるコストの低減を図ることができ、触媒反応熱によって高温になった混合体Wの温度を効率よく触媒の活性温度まで低下させることができる。
【0060】
次に、上述した実施の形態による不活性ガスの製造方法の効果を裏付けるために行った実施例について以下説明する。
【0061】
(実施例)
本実施例では、上記実施の形態の不活性ガスの製造装置を製作し、この装置によって製造された不活性ガスの酸素濃度、窒素化合物の濃度、残留メタンの濃度を確認した。
実施例では、ボイラより煙突へ放散されている排ガスの一部を排ガスダクト(上記の排ガス流路11)の分岐弁より誘引した。この排ガスは、排ガス処理流量が60m
3N/h(湿り)、温度は150℃、酸素濃度は3%、窒素酸化物は80ppm(酸素5%換算値)、二酸化炭素は8%、水分は15%、残りが窒素で構成されたものである。燃料ガスとしては、0.8m
3N/hの都市ガスを使用した。また、前処理触媒槽には、銅を担持した粒状の脱硫触媒(空間速度SV=20000
−h)使用し、第1触媒槽には、白金−パラジウムを担時したハニカム触媒(空間速度SV=26600
−h)を使用し、第2触媒槽には白金−パラジウムを担時したハニカム触媒(空間速度SV=26600
−h)を使用し、第3触媒槽には白金−ロジウムを担時したハニカム触媒(空間速度SV=26600
−h)を使用した。
【0062】
そして、熱交換装置の下流側に設けられる触媒入口の排ガス温度を400℃で保持されるように制御し、500時間の連続運転を含む延べ2400時間の運転を行った。
その結果、不活性ガスの酸素濃度が2ppm、窒素酸化物は1ppmとなり、残留メタン濃度0.1%となった。
なお、酸素濃度の測定には、1ppmまでを計測することが可能な燃料電池方式の微量酸素分析計を使用し、窒素酸化物の測定には、1ppmまで計測することが可能な非分散型赤外線式の燃焼排ガス分析計と0.2ppmまで検知することが可能な窒素酸化物検知管を使用した。
【0063】
なお、本発明の技術範囲は、上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を加えることが可能である。
【0064】
例えば、本実施の形態では燃料ガスKは一般的な13A都市ガスとしているが、これに限定されず、LPG(プロパンガス・ブタンガス)を使用することができる。また水素ガス、一酸化炭素ガスを使用してもよい。
また、本実施の形態では、脱酸・脱硝処理部30、40、50、すなわち触媒槽33、42、51(燃焼触媒部)を3つ(3段)設けたが、この数量に制限されることはなく、2つ以上であれば適宜変更してもよい。
【0065】
さらに、本実施の形態では、貯留タンク12を設けた構成としているが、貯留タンク12は設けなくてもよい。
さらにまた、複数の燃焼触媒部が有する触媒の材質は、前記実施形態に限らず適宜変更してもよく、また、これらの燃焼触媒部が有する触媒の材質を互いに異ならせてもよい。
また、本実施の形態では電気ヒータ31を設ける構成としているが、この電気ヒータ31を省略することも可能である。
そして、本実施の形態では、第1触媒槽33および第2触媒槽42の上流側に前処理触媒槽32、41を設けているが、前処理触媒槽を設けなくてもよい。
【0066】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。