(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、電子機器をネットワークに接続して通信できるようにするためには、電子機器に通信デバイスまたは通信モジュールを追加した上で、電子機器の制御プログラムに外部ネットワークと通信するための通信プログラムを追加しなければならず、ハードウェアおよびソフトウェア双方の開発コストにより機器のコストが高くなってしまうという問題がある。
【0006】
この発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、電子機器を改変することなくまたコストアップを招くことなくネットワークに接続できるようにし、これにより電子機器の状態や動作結果を表す情報を簡単に送信することができる通信システムLSIを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためにこの発明の第1の観点は、
通信機能を持たない電子機器に
内蔵され、上記電子機器をネットワーク
に接続する通信システムLSIにあって、上記電子機器内で発生した電気信号を受信する信号受信部と、
上記通信システムLSIのIDを保持する初期化プログラムおよびデータを記憶する記憶部と、通信デバイスまたは
通信モジュールが接続されるインタフェース部と、上記信号受信部、記憶部及びインタフェース部に接続される処理部とを具備する。そして、上記処理部において、先ず上記記憶部に記憶された初期化プログラムを実行することにより、
上記インタフェース部に接続された通信デバイスまたは通信モジュールを介して上記IDを含む初期化処理要求を上記ネットワークへ伝送し、上記IDに基づいて上記電子機器に対応する一次解析プログラムを、上記インタフェース部に接続された通信デバイスまたは通信モジュールにより情報処理装置から上記ネットワークを介して取得する。次に、この取得された一次解析プログラムを実行することにより、上記信号受信部が上記電子機器から受信した電気信号を一次解析処理し、当該一次解析処理により得られたデータを、上記情報処理装置に二次解析処理させるために、上
記IDとともに、上記インタフェース部に接続された通信デバイスまたは通信モジュールにより上記ネットワークを介して上記情報処理装置へ送信するようにしたものである。
【0008】
また、上記目的を達成するためにこの発明の第2の観点は、
通信機能を持たない電子機器に
内蔵され、上記電子機器をネットワーク
に接続する通信システムLSIにあって、上記電子機器内で発生した電気信号を受信する信号受信部と、
通信システムLSIのIDを保持する初期化プログラムおよびデータを記憶する記憶部と、上記情報処理装置との間で上記ネットワークを介して通信を行う通信部と、これらの信号受信部、記憶部及び通信部に接続された処理部とを具備する。そして、上記処理部において、先ず上記記憶部に記憶された初期化プログラムを実行することにより、
上記通信部を介して上記IDを含む初期化処理要求を上記ネットワークへ伝送し、上記IDに基づいて上記電子機器に対応する一次解析プログラムを上記通信部により上記情報処理装置から上記ネットワークを介して取得する。次に、この取得された一次解析プログラムを実行することにより、上記信号受信部が
上記電子機器から受信した電気信号を一次解析処理し、当該一次解析処理により得られたデータを、上記情報処理装置に二次解析処理させるために、
上記IDとともに、上記通信部から上記ネットワークを介して上記情報処理装置へ送信するようにしたものである。
【0009】
この発明の第1および第2の観点において、上記処理部に、上記一次解析プログラムを取得済か否かを判定し、取得済でなければ上記初期化プログラムを実行させ、取得済であれば上記一次解析プログラムを実行させる判定手段をさらに備えるとよい。
【0010】
また、上記一次解析プログラムを取得済か否かを判定する際には、上記処理部に、上記一次解析プログラムの取得手段による処理結果をもとに上記一次解析プログラムを取得済か否かを表す情報を生成して上記記憶部に保存する手段をさらに備えておき、この記憶部に保存された情報をもとに上記一次解析プログラムを取得済か否かを判定するとよい。
【発明の効果】
【0011】
この発明の第1の観点に係る通信システムLSIを電子機器に接続すれば、電子機器の制御プログラムにネットワーク通信機能を実装することなく、また通信デバイスまたは通信モジュールのためのインタフェースやデバイスドライバを電子機器側に設けることなく、電子機器をネットワークに接続させることが可能となる。さらに、通信システムLSI上では一次解析処理のみが行われ、サーバやクラウドコンピュータ等の処理能力の高い情報処理装置上で二次解析処理が行われる。すなわち、電子機器で発生された電気信号の解析処理が分散処理される。この結果、電子機器の発する電気信号を効率良く解析することができる。
【0012】
また、通信システムLSIを電子機器に接続した後に当該電子機器に応じた一次解析プログラムを追加することが可能となるので、予め電子機器に応じた一次解析プログラムを通信システムLSIに書き込んでおく必要がなくなり、これにより通信システムLSIの生産管理および在庫管理の負担を軽減することができる。さらに、電子機器が出力する電気信号の方式やフォーマットが変更された場合、通信システムLSIに一次解析プログラムを書き込んでいるとプログラムを書き換えなければならないが、修正された一次解析プログラムを情報処理装置から通信システムLSIにダウンロードすればよいので、プログラム変更に対応するための工数を抑制することができる。
【0013】
一方、この発明の第2の観点に係る通信システムLSIを電子機器に接続すれば、通信システムLSIがネットワークを介して通信を行う通信部をさらに備えているので、通信デバイスまたは通信モジュールを別途用意することなく、ネットワーク上の情報処理装置との間で通信を行うことが可能となる。
【0014】
また、前記一次解析プログラムを取得済か否かを判定し、その判定結果に基づいて初期化プログラムと一次解析プログラムを選択的に実行させるようにすれば、一次解析プログラムを取得済の場合には当該一次解析プログラムを取得するための処理を省略することが可能となり、その分処理部の処理負荷を軽減できると共に、電子機器に関する情報を情報処理装置へ転送するための時間を短縮することができる。
【0015】
さらに、一次解析プログラムの取得手段による処理結果をもとに一次解析プログラムを取得済か否かを表す情報を生成して記憶部に保存しておくようにすれば、一次解析プログラムを取得済か否かの判定処理を簡単化することができる。
【0016】
すなわち、この発明の第1又は第2の観点によれば、電子機器を改変することなくまたコストアップを招くことなくネットワークに接続できるようになり、これにより電子機器の状態や測定結果、表示画面データ等の機器情報を簡単に送信することができる通信システムLSIを提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照してこの発明に係わる実施形態を説明する。
[一実施形態]
(実施例1)
図1は、この発明の一実施形態に係る通信システムLSIの実施例1の構成を示すブロック図である。
この通信システムLSI100Aは、電子機器に内蔵されることで当該電子機器をネットワークに対応させる機能を実現するものであり、CPU101、信号受信部102、通信インタフェース部103、周辺回路104、メモリ105およびシステムバス106を有している。以下、各部について説明する。
【0019】
CPU101は中央処理ユニット(Central Processing Unit)であり、後述するメモリ105に記憶されたプログラムおよびデータを読み出して、所定の演算処理を行うことにより通信システムLSI100Aの各種機能を実現する部である。
【0020】
信号受信部102は、電子機器が所定の通信方式およびフォーマットで出力する電気信号を受け付ける部であり、伝送路上を送られてくるデータを受信する。信号受信部102の受信したデータは、後述する一次解析プログラムをCPU101で実行することにより一次解析され、電子機器の状態または前記電子機器の機能した結果と対応するデータが抽出される。信号受信部102は、特定の通信方式に準拠した構成とする必要はなく、伝送路を送信されてくるデータを検出できる構成であればよい。
【0021】
通信インタフェース部103は、3Gモデム、PHSモデム、WiFi(登録商標)アダプタ、Bluetooth(登録商標)アダプタ等の通信デバイスを接続するためのインタフェースである。
周辺回路104は、タイマ、クロック、割り込み回路、DMA、DA/ADコンバータ等の各種機能を提供する回路を含んでいる。
【0022】
メモリ105は、CPU101で実行するプログラムおよび読み出されるデータを格納した不揮発性かつ書き換え不可能なROM1051と、同じく不揮発性で書き換え可能なFlashROM1053と、CPU101がプログラム実行時に使用する揮発性のRAM1052とから構成されている。ROM1051およびFlashROM1053に格納されたプログラムの詳細については後述する。システムバス106は、上記各部を結んで互いに通信する機能を提供する部である。
【0023】
以上のように構成された通信システムLSI100Aは、通信インタフェース部103に通信デバイスを接続された状態で電子機器に内蔵され、信号受信部102が所定の電気信号を取得できるように配線された状態で、メモリ105に格納されたプログラムをCPU101で実行することにより、後述する動作を実行するものである。
【0024】
(実施例2)
図2は、この発明の一実施形態に係る通信システムLSIの実施例2の構成を示すブロック図である。同図において、
図1と同一部分には同一符号を付して詳しい説明は省略する。
この実施例2に係る通信システムLSI100Bは、
図1に示した通信システムLSI100Aにおける通信インタフェース部103に代えて、無線通信モデムからなる通信部110をLSI上に実装したものである。
このような通信システムLSI100Bは、そのまま電子機器に内蔵され、電子機器から出力された電気信号が信号受信部102に受信されるように配線した状態で、メモリ105に格納されたプログラムをCPU101で実行することにより、後述する動作を実行する。
【0025】
図3は、
図1に示した通信システムLSI100Aのメモリ105に格納されたプログラムの初期状態におけるソフトウェアブロック図である。このプログラム150は、RTOS(Real-Time Operating System)151と、インタフェースドライバ152と、モデム制御プログラム153と、プロトコルスタック154と、ネットワーククライアント155と、スクリプトエンジン156と、初期化スクリプト157とを有している。
【0026】
RTOS151は、通信システムLSI100Aにコンピュータとしての基本的な機能を提供すると共に、処理時間が一定範囲内となることが予測可能なソフトウェア実行環境を提供する。インタフェースドライバ152は、通信インタフェース部103を利用するための機能を提供する。モデム制御プログラム153は、通信インタフェース部103に接続された無線モデムを制御して通信するための機能を提供する。プロトコルスタック154は、PPP(Point-to-Point Protocol)、IP(Internet Protocol)、TCP(Transmission Control Protocol)、UDP(User Datagram Protocol)、Socket及びDNSといった各種通信プロトコルのうち通信システムLSI100Aが必要なモジュールから構成される。ネットワーククライアント155は、スクリプトエンジン156にプロトコルスタック154およびモデム制御プログラム153を利用してネットワーク通信を行う機能を提供するものである。そしてスクリプトエンジン156は、所定のスクリプトを実行することにより、各ソフトウェア機能ブロックの機能を利用して所定の動作を実現する。
【0027】
そして
図1に示すように、初期状態における通信システムLSIには、スクリプトエンジン156で実行されるスクリプトとして初期化スクリプト157のみが実装されている。初期化スクリプト157は、通信システムLSI100AのID番号、通信するサーバまたはクラウドコンピュータのアドレス等の情報および認証情報等が保持されており、スクリプトエンジン156により後述する初期化動作を実現するものである。また、初期化スクリプト157は初期化が終了しているか否かをフラグ等により記録する構成となっている。
【0028】
図4は、後述する初期化動作を行った後の通信システムLSI100Aのソフトウェア構成を示すブロック図である。
図4に示すように、この通信システムLSI100Aのプログラムには、初期化動作によりクラウドネットワークからダウンロードした一次解析スクリプト158が追加されている。一次解析スクリプト158は、スクリプトエンジン156で実行することにより、通信システムLSI100が内蔵または接続された電子機器から発生された電機信号を信号受信部102により受信し、この受信された電気信号を一次解析して電子機器の状態または電子機器の動作結果に対応したデータを抽出し、この抽出されたデータをネットワークに送信する機能を実現する。より具体的には、一次解析スクリプト158は、通信システムLSI100AのID番号、データを送信するサーバまたはクラウドのアドレス等の情報と認証情報等を保持しており、これらの情報をもとにスクリプトエンジン156で上記機能を実現するための処理を実行する。
【0029】
電子機器が発する電気信号から電子機器の状態または電子機器の動作結果に対応したデータを抽出する一次解析処理の内容は、電子機器が出力する電気信号の方式・フォーマット等により異なる。例えば、データ出力に用いる通信リンクが異なる場合、同じ通信リンクを利用したシリアル方式であってもUART、USB、I2C、独自方式のように具体的な通信方式が異なる場合には、いずれも異なる一次解析処理を行う必要がある。さらには、同じ通信リンクかつ同じ通信方式でも、電子機器が出力するデータのフォーマット(送信するデータフレームのサイズ、データの種類および表現形式、各データの位置等)が異なる場合にも、異なる一次解析処理を行う必要がある。
【0030】
ここで、
図2に示した通信システムLSI100Bのプログラムについては、インタフェースドライバ152ではなく、通信部110の実装に応じたソフトウェアを用いればよい。その他は
図3および
図4に示したものに準じた構成とすればよい。
【0031】
以上詳細に説明したようにこの実施形態では、
図1に示した通信システムLSI100Aは通信インタフェース部103にモデムを接続した形態で、また
図2に示した通信システム100Bはそのままの形態で、電子機器に内蔵または接続され、初期化スクリプト157により初期化動作を実行することにより電子機器の種別等に対応した一次解析スクリプト158を取得する。その後、この取得した一次解析スクリプト158を実行することにより、電子機器から受信した電気信号を一次解析して電子機器の状態または電子機器の動作結果を表すデータを抽出し、この抽出されたデータをネットワークへ送信する機能を実現するようにしている。
【0032】
したがって、通信機能を持たない電子機器をネットワークに接続しようとする場合に、通信システムLSI100Aまたは100B以外のハードウェアを用意することなく、電子機器の制御プログラムに最小限の改変を加えるだけで、通信機能を持たない既存の電子機器をそのままネットワークに接続することが可能となる。
【0033】
以下、この発明の一実施形態における通信システムLSIの具体的な適用例を説明する。
[適用例]
図5は、バーコードリーダ200のブロック図である。このバーコードリーダ200は、筐体に設けられた読取開口部201と、前記読取開口部201を介してバーコード210を読み取るイメージセンサ202と、各部の動作を制御する制御部203と、認識結果等を表示する表示部204と、読み取ったバーコード210をデコードするデコード部205と、ユーザの操作を受け付ける操作部206と、制御部203と接続され、制御部203が出力する電気信号を受ける通信システムLSI100Bとを有している。このような構成とするに当たり、制御部203にはバーコードリーダ200としての通常の機能に加えて、通信システムLSI100Bに所定の方式およびフォーマットで認識したコードの情報を含む電気信号を出力する機能が追加されており、制御部203の当該出力が通信システムLSI100Bの入力インタフェース部111に入力されるように配線がなされている。
【0034】
図6は、通信システムLSI100Bを使用した情報システム300の概要図である。この情報システム300は、バーコードリーダ200に通信システムLSI100Bを内蔵させ、通信システムLSI100Bが初期化スクリプト157による初期化動作によりクラウドネットワーク321から一次解析スクリプト158をダウンロードし、バーコードリーダ200が認識したデータをクラウドネットワーク321上に蓄積して閲覧に供するものである。
【0035】
情報システム300は、主として、この発明の一実施形態に係る通信システムLSI100Bを内蔵した、電子機器としてのバーコードリーダ200と、通信端末315と、基地局311,312、ならびにゲートウェイ313を有する無線ネットワーク310と、無線ネットワーク310とゲートウェイ313を介して接続されたインターネット320と、それぞれインターネットに接続して構成されたクラウドネットワーク321およびサービスサーバ329とを有している。
【0036】
このうちクラウドネットワーク321は、ネットワーク上に存在するサーバが提供するサービスを、それらのサーバ群を意識することなしに利用できるように仮想化技術により構成されたコンピュータネットワークである。
クラウドネットワーク321は、初期化処理部322と、対応テーブル保持部323と、一次解析スクリプト保持部324とを有し、さらにデータ受付部325と、データ二次解析部327と、データアクセス部328とを有している。
【0037】
初期化処理部322は、バーコードリーダ200に内蔵された通信システムLSI100Bから、当該通信システムLSI100BのIDを含む一次解析スクリプトのダウンロード要求を受け付けたとき、初期化処理を行う。対応テーブル保持部323には、通信システムLSI100BのIDと、当該通信システムLSI100Bが内蔵または接続された電子機器の種類との対応関係を表す情報が保存されている。一次解析スクリプト保持部324は、電子機器の種類に応じた一次解析スクリプトを保持する。データ受付部325は、通信システムLSI100Bから送信されたデータを受け付ける。データ二次解析部327は、上記受け付けたデータから電子機器の状態または電子機器の動作結果をデータ二次解析処理により求めてデータストア部326に保存する。
【0038】
データアクセス部328は、外部からのアクセスに応じてデータストア部326から該当するデータを読み出し、この読み出されたデータを要求元の電子機器に向け送信する。本実施形態においては、対応テーブル保持部323に通信システムLSI100BのIDがバーコードリーダ200に対応していることが登録されており、一次解析スクリプト保持部324にはバーコードリーダ200が出力する電気信号の一次解析を行うための一次解析スクリプトが登録されている。これらの登録は、後述する初期化動作を行う前になされている必要がある。
【0039】
図7は、
図6に示した情報システム300において、
図2に示した通信システムLSI100Bが、クラウドネットワーク321から一次解析スクリプト158をダウンロードする初期化動作の処理手順と処理内容を示すフローチャートである。
この初期化動作は、先ず通信システムLSI100Bが内蔵又は接続されたバーコードリーダ200において、当該バーコードリーダ200の電源を投入する操作をユーザが行うことにより開始される。バーコードリーダ200の電源が投入されると、通信システムLSI100Bへの給電が開始され(ステップST101)、通信システムLSI100BのCPU101がプログラムの実行を開始する(ステップST102)。
【0040】
次に、通信システムLSI100Bの初期化処理が終了しているか否かが所定のフラグをチェックすること等により判断される(ステップST103)。ステップST103において初期化済みと判断された場合には、後述する初期化完了後の動作へ移動する。その一方で、初期化済みではないと判断された場合には、初期化スクリプト158の実行が開始される(ステップST104)。
【0041】
初期化スクリプト158が実行されると、まず通信システムLSI100BのIDを含む初期化処理要求が、通信部110から基地局311、無線ネットワーク310およびインターネット320を介してクラウドネットワーク321へ伝送される(ステップST105)。クラウドネットワーク320は、ステップST106で上記初期化処理要求を受け取ると、この要求に含まれる通信システムLSIのIDをもとに対応テーブル保持部323に照会し、要求元の通信システムLSI100Bが内蔵又は接続された電子機器の種類を特定する(ステップST107)。続いて、一次解析スクリプト保持部324に対し、上記特定された電子機器の種類に対応する一次解析スクリプトを照会し、該当する一次解析スクリプト138を読み出す(ステップST108)。そして、この読み出された一次解析スクリプト138を要求元の通信システムLSI100Bへ送信する(ステップST109)。
【0042】
通信システムLSI100Bは、上記クラウドネットワーク321から送信された一次解析スクリプト138を受信すると、この受信された一次解析スクリプトをステップST110でメモリ105に記憶する。そして、最後にステップST111で初期化済みフラグをセットする。かくして一連の初期化動作は終了する。
【0043】
以上のような初期化動作により、クラウドネットワーク321から通信システムLSI100Bへバーコードリーダ200に対応する一次解析スクリプト158がダウンロードされ、以後通信システムLSI100Bはバーコードリーダ200により読み取られたバーコードを表す電気信号の一次解析処理が可能となる。なお、上記初期化動作はバーコードリーダ200の出荷前に行っても良いし、エンドユーザが初めて電源を投入した時点で行っても構わない。
【0044】
電子機器によって出力される電気信号の方式やフォーマット等は異なるため、通信システムLSI100Bが内蔵または接続される電子機器に応じた一次解析スクリプトが必要となる。しかし、上記したように一次解析スクリプトを事後的にダウンロードする構成とすれば、内蔵または接続される電子機器毎に異なる一次解析スクリプトを事前に通信システムLSI100Bに書き込む必要がなくなるので、通信システムLSI100Bの生産管理、在庫管理の工数を軽減することができる。また、電子機器が出力する信号の方式、フォーマットが開発中に変更されても、この変更に応じて一次解析スクリプトを容易に更新することができる。
【0045】
以下、上述した通信システムLSI100Bの初期化動作を終えた後に、
図7に示したシステム300において、バーコードリーダ200で認識したコードデータを通信システムLSI100Bによりクラウドネットワーク321へ送信し、クラウドネットワーク321上で認識された物品の情報を蓄積する動作の手順と処理内容を、
図8のフローチャートを参照しながら説明する。
【0046】
先ずユーザがバーコードリーダ200の操作部206を操作してバーコード読み取りを指示すると(ステップST201)、操作部206から制御部203にユーザ操作に応じた操作信号が与えられる。この操作信号を受け取ると制御部203は、イメージセンサ202を制御して読取開口部201を介してバーコード210を読み取る(ステップST202)。続いて制御部203は読み取ったバーコード210のイメージデータをデコード部205に渡し、この読み取ったバーコードのイメージデータをデコード部205でデコードし(ステップST203)、デコードした結果を通信システムLSI100Bに出力する(ステップST204)。
【0047】
上記デコード部205から出力されたデータは、通信システムLSI100Bの信号受信部102で受け付けられる(ステップST205)。通信システムLSI100BのCPU101は、スクリプトエンジン156を利用して一次解析スクリプト158を実行することにより、上記受け付けられたデータからデコード結果のコードを取り出す(ステップST206)。
【0048】
すなわち、通信システムLSI100Bにダウンロードされた一次解析スクリプト158は、バーコードリーダ200が出力するデータの出力方式およびデータフォーマットに基づいて、該データからデコード結果のコードを取り出す処理を実行する。そして、通信システムLSI100BのCPU101は、上記取り出されたコードを自己のIDとともにクラウドネットワーク321へ向け送信する(ステップST207)。
【0049】
通信システムLSI100Bから送信されたコードおよびIDは、クラウドネットワーク321上に構築されたデータ受付部325によって受信される(ステップST208)。データ受付部325によって受信されたデータはデータ二次解析部327に引き渡され、このデータ二次解析部327において上記コードが指し示す商品名を特定する処理が行われる(ステップST209)。
【0050】
すなわち、二次解析部327は、JANコードのように商品識別に利用されるコードと該コードにより識別される商品との対応関係を内部的または外部的に認識可能に構成されており、これによりコードの情報からコードの指す商品名を特定することが可能となっている。ステップST209で商品名を特定すると、データストア部326に特定された商品名を通信システムLSI100BのIDとともに保存する(ステップST210)。
【0051】
以上のような動作によりバーコードリーダ200により読み取られ、かつ一次解析及び二次解析処理により認識されたバーコード210のコードデータは、クラウドネットワーク321上のデータストア部326に蓄積される。このとき、バーコードリーダ200から出力された電気信号から有意なバーコードのデータを抽出する一次解析処理は通信システムLSI100B上で行われ、通信システムLSI100Bにより抽出された有意なバーコードデータを解釈(例えば認識されたコードに対応する商品の特定)する二次解析処理はクラウドネットワーク321上で行われる。
【0052】
このように一次解析処理を通信システムLSI100B上で行うことにより、通信システムLSI100Bは有意なデータのみを送信すれば済むので、その通信コストを抑制することができる。また、有意なデータの意味を解釈する二次解析処理をクラウドネットワーク321上で行うことにより、通信システムLSI100Bにかかる処理の負荷を軽減しつつクラウドネットワーク321の高い処理能力を有効に利用して処理を進めることができる。
【0053】
さらに、クラウドネットワーク321上には、クラウドネットワーク321の外からデータストア部326の内容にアクセスするためのデータアクセス部328が設けられている。例えば、通信端末315からサービスサーバ329に対してバーコードリーダ200に内蔵された通信システムLSI100BのIDを指定することにより、サービスサーバ329はデータアクセス部328に対して当該IDに関連付けられたバーコード210に対応する商品名の履歴を要求する。データアクセス部328は、当該要求に応じて該当する商品名の履歴情報をデータストア部326から取得して要求元の通信端末315へ返送する。かくして、通信端末315では商品名の履歴を閲覧に供することができる。
【0054】
以上詳細に説明したように、本発明の一実施形態に係わる通信システムLSI100Bを適用することにより、バーコードリーダ200のような電子機器に他のハードウェアを追加することなく、また電子機器の制御ソフトウェアに加える改変もデータ出力機能を追加するだけで済むので、電子機器の改変を最小限に抑制しつつ、電子機器のデータをネットワークを介してクラウドシステムへ伝送することができる。また、通信システムLSI100Aを適用した場合には、モデム等の通信デバイスを追加する必要はあるものの、それでも最小限のハードウェアの追加およびソフトウェアの改変だけで、電子機器のデータをネットワークを介してクラウドシステムへ伝送することができる。そして、通信システムLSI100Aまたは100Bを適用した電子機器を用いることで、電子機器の状態や測定結果、表示画面データ等の機器情報を簡単に送信して蓄積し、これにより機器の状態または使用結果の閲覧、統計、診断等の各種サービスを実現するネットワークシステムを容易に構築することができる。
【0055】
さらにこの実施形態では、初期化動作が行われたときに初期化済みか否かを表すフラグを生成して記憶しておき、通信システムLSI100A,100Bが初期化動作を実行する際に、上記初期化フラグにより初期化済みか否かを判定する。そして、初期化が未処理の場合に初期化スクリプト157を実行させて一次解析スクリプト158をダウンロードし、一方初期化済みの場合には初期化動作を省略するようにしている。このため、初期化動作済みか否かにかかわらず無条件に初期化動作を実行する場合に比べ、通信システムLSI100A,100Bの処理負荷を軽減することができ、また通信トラフィックの増加を抑えることができる。
【0056】
[その他の実施形態]
例えば、上記実施形態では周辺回路を通信システムLSIに内蔵した場合を示したが、周辺回路の一部または全部を通信システムLSIの外部に設ける構成としても構わない。また、通信システムLSIを適用する機器も上記に限られるものではなく、各種電子機器に広く適用することが可能である。さらに、情報システム300においてクラウドネットワーク321上に初期化処理部322、対応テーブル保持部323、一次解析スクリプト324、データ受付部325、データストア部326、データ二次解析部327およびデータアクセス部328を設けることも必須ではなく、特定のサーバ上に各部を設ける構成としても構わない。
【0057】
また、上記の適用例では、サービスサーバ329がクラウドネットワーク321上のデータストア部326からバーコードリーダ200の認識した商品の履歴を提供する場合を示したが、サービスサーバ329の機能はこれに限られるものではなく、蓄積されたデータに所定の統計処理を加えて表示するもの、予測するもの、別サーバからの情報をマッシュアップして表示するもの、蓄積されたデータに基づいて所定の診断を行うもの等であってもよく、様々な変形が可能である。
【0058】
さらに、通信システムLSI100Aまたは100Bにおいてセットされた状態で保持している初期化フラグを、クラウドネットワーク321からのコマンドまたはユーザの操作によりリセット可能な構成とすれば、初期化後に一次解析スクリプト168を更新することも可能である。ただし、その場合には後から追加した一次解析スクリプト168が正しく起動されるようにブートローダーに登録するか、古い一次解析スクリプト168を削除してから新しいスクリプトをダウンロードする等の対応が必要となる。もちろん新しいスクリプトで古いスクリプトを上書きするようにしても構わない。
【0059】
要するにこの発明は、上記各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、各実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、
異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。