特許第5941718号(P5941718)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5941718信号処理回路、車載用電子制御装置、および信号処理回路の車載用電子制御装置への実装方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5941718
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月29日
(54)【発明の名称】信号処理回路、車載用電子制御装置、および信号処理回路の車載用電子制御装置への実装方法
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/244 20060101AFI20160616BHJP
   G01P 3/481 20060101ALI20160616BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20160616BHJP
【FI】
   G01D5/244 Z
   G01P3/481 D
   F02D45/00 362H
   F02D45/00 358M
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-65729(P2012-65729)
(22)【出願日】2012年3月22日
(65)【公開番号】特開2013-195360(P2013-195360A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2015年1月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】富士通テン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木戸 啓介
(72)【発明者】
【氏名】小松 和弘
(72)【発明者】
【氏名】久米 正義
【審査官】 岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−232579(JP,A)
【文献】 特開平10−282132(JP,A)
【文献】 米国特許第4086532(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00− 5/252
G01D 5/39− 5/62
G01B 7/00− 7/34
G01P 3/00− 3/80
F02D45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
MPU方式の回転センサの出力に基づく第1入力信号を処理する第1信号処理部と、
前記第1信号処理部の入力側に接続された第1端子と、
MRE方式の回転センサの出力に基づく第2入力信号を処理する第2信号処理部と、
第1出力部と、
前記第1信号処理部の第1出力信号を前記第1出力部から出力する第1状態と、前記第2信号処理部の第2出力信号を前記第1出力部から出力する第2状態とを選択する切替部と、
前記第1出力信号に基づいて、前記第1入力信号に印加される第3出力信号を出力する第2出力部と、
前記第2信号処理部の入力側と前記第2出力部の出力側の双方に接続された第2端子とを備え、
前記第2状態が選択されたとき、前記切替部は前記第2出力部の出力をハイインピーダンス状態に固定する、信号処理回路。
【請求項2】
前記第2出力部は、コレクタが前記第2端子と前記第2信号処理部の入力側とに接続され、エミッタが接地されたトランジスタを備え、
前記切替部は、前記第2状態が選択されたときに、前記トランジスタのベース電位を当該トランジスタの動作電圧未満に固定する論理回路を備える、請求項1に記載の信号処理回路。
【請求項3】
MPU方式の車載回転センサの出力に基づく第1入力信号を処理する第1信号処理部、MRE方式の車載回転センサの出力に基づく第2入力信号を処理する第2信号処理部、および前記第1信号処理部の第1出力信号を前記第1出力部から出力する第1状態と前記第2信号処理部の第2出力信号を前記第1出力部から出力する第2状態のいずれかを選択する切替部を備える信号処理回路と、
MPU方式の車載回転センサからの出力に基づいて前記第1入力信号を生成する入力信号生成回路とを備え、
前記信号処理回路は、
前記第1入力信号が入力され、前記第1信号処理部の入力側に接続された第1端子と、
前記第1信号処理部の出力側に接続された第1出力部と、
前記第1信号処理部からの出力に基づいて、前記第1入力信号に印加される信号を出力する第2出力部と、
前記第2信号処理部の入力側と前記第2出力部の出力側の双方に接続された第2端子とを備え、
前記切替部が前記第1状態を選択するように設定されていることにより、前記第1出力部は、前記第2信号処理部の出力側と非導通状態とされている、車載用電子制御装置。
【請求項4】
前記第1信号処理部は、前記第1入力信号の電位が第1の閾値以上のときに前記第1出力信号が第1の論理状態をとり、前記第1入力信号の電位が前記第1の閾値よりも小さい第2の閾値以下のときに前記第1出力信号が第2の論理状態をとるものであり、
前記第1入力信号の電位が前記第1の閾値を上回る変化をするときに当該電位を暫時的に上昇させるとともに、前記第1入力信号の電位が前記第2の閾値を下回る変化をするときに当該電位を暫時的に下降させるように、前記入力信号生成回路において前記第3出力信号が前記第1入力信号に印加される、請求項3に記載の車載用電子制御装置。
【請求項5】
MPU方式の車載回転センサの出力に基づく第1入力信号を処理する第1信号処理部、MRE方式の車載回転センサの出力に基づく第2入力信号を処理する第2信号処理部、および前記第1信号処理部の第1出力信号を前記第1出力部から出力する第1状態と前記第2信号処理部の第2出力信号を前記第1出力部から出力する第2状態のいずれかを選択する切替部を備える信号処理回路と、
MRE方式の車載回転センサからの出力に基づいて前記第2入力信号を生成する入力信号生成回路とを備え、
前記信号処理回路は、
前記第1信号処理部の入力側に接続された第1端子と、
前記第2信号処理部の出力側に接続された第1出力部と、
前記第1信号処理部からの出力に基づいて、前記第1入力信号に印加される信号を出力する第2出力部と、
前記第2信号処理部の入力側と前記第2出力部の出力側の双方に接続された第2端子とを備え、
前記切替部が前記第2状態を選択するように設定されていることにより、前記第2入力信号は前記第2端子に入力され、前記第2出力部の出力がハイインピーダンス状態に固定されている、車載用電子制御装置。
【請求項6】
信号処理回路の車載用電子制御装置への実装方法であって、
前記信号処理回路は、
MPU方式の回転センサの出力に基づく第1入力信号を処理する第1信号処理部と、 前記第1信号処理部の入力側に接続された第1端子と、
MRE方式の回転センサの出力に基づく第2入力信号を処理する第2信号処理部と、 第1出力部と、
前記第1信号処理部の第1出力信号を前記第1出力部から出力する第1状態と、前記第2信号処理部の第2出力信号を前記第1出力部から出力する第2状態とを選択する切替部と、
前記第1出力信号に基づいて、前記第1入力信号に印加される第3出力信号を出力する第2出力部と、
前記第2信号処理部の入力側と前記第2出力部の出力側の双方に接続された第2端子とを備え、
前記第2状態が選択されたとき、前記切替部は前記第2出力部の出力をハイインピーダンス状態に固定するものであって、
MPU方式の車載回転センサからの出力に基づいて前記第1入力信号を生成する第1入力信号生成回路と、MRE方式の車載回転センサからの出力に基づいて前記第2入力信号を生成する第2入力信号生成回路のいずれかを選択し、
前記第1入力信号生成回路を選択した場合、前記第1入力信号生成回路を前記第1端子と前記第2端子に接続するとともに、前記第1状態を選択するように前記切替部を設定し、
前記第2入力信号生成回路を選択した場合、前記第2入力信号生成回路を前記第2端子に接続するとともに、前記第2状態を選択するように前記切替部を設定する、実装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転センサの出力に基づく信号を処理する回路、車載回転センサの出力に基づく信号を処理する車載型電子制御装置、および信号処理回路の車載型電子制御装置への実装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンのクランク回転角、回転数、カム角を検出するための車載回転センサとしては、MPU(磁気ピックアップ)方式のものとMRE(磁気抵抗素子)方式のものが知られている。これらセンサの出力電圧レベルは大きく異なるため、センサ出力に基づく信号を処理する回路は各方式ごとに設計が行なわれることが一般的である。
【0003】
回転センサの方式が異なる機種ごとに信号処理回路を設計・製造する必要をなくすために、1つの接続端子にMPU方式の回転センサとMRE方式の回転センサのいずれをも接続できるように構成されたものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−232579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的な接合分離型のICでは負入力電圧を印加すると回路的に意図しない寄生素子が動作するため、クランプ回路等を用いて入力電圧を制限する。しかしながら上記のようにMPU方式とMRE方式の回転センサは出力電圧レベルが大きく異なるため、制限電圧の設定も異なる。すなわちMPU方式用の信号処理回路とMRE方式用の信号処理回路が単純に入力端子を共用する構成とした場合、制限電圧の設定条件を満足する回路の設計に困難が伴い、回路構成も複雑化する。
【0006】
よって本発明は、MPU方式の回転センサとMRE方式の回転センサの双方について共用可能な信号処理回路を、回路構成を複雑化することなく提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明がとりうる第1の態様は、信号処理回路であって、
MPU方式の回転センサの出力に基づく第1入力信号を処理する第1信号処理部と、
前記第1信号処理部の入力側に接続された第1端子と、
MRE方式の回転センサの出力に基づく第2入力信号を処理する第2信号処理部と、
第1出力部と、
前記第1信号処理部の第1出力信号を前記第1出力部から出力する第1状態と、前記第2信号処理部の第2出力信号を前記第1出力部から出力する第2状態とを選択する切替部と、
前記第1出力信号に基づいて、前記第1入力信号に印加される第3出力信号を出力する第2出力部と、
前記第2信号処理部の入力側と前記第2出力部の出力側の双方に接続された第2端子とを備え、
前記第2状態が選択されたとき、前記切替部は前記第2出力部の出力をハイインピーダンス状態に固定する。
【0008】
すなわち、第1信号処理部と第2信号処理部は入力端子を共有するのではなく、第1信号処理部の使用時にのみ必要となる出力端子としての第2端子を、第2信号処理部の入力端子として共用する構成とされている。第2端子は、第2出力部の出力側と第2信号処理部の双方に接続されているが、第2信号処理部の使用時においては、切替部が第2出力部の出力をハイインピーダンス状態に固定する。したがって第2信号処理部に入力される第2入力信号に、第2出力部の出力状態が変化することによる影響が生ずることを防止できる。
【0009】
そのため第1信号処理部と第2信号処理部の構成としては、周知のものを利用可能であり、特にクランプ回路による入力電圧制限に関し、入力端子を共用する場合のような複雑な回路構成が不要となる。よって設計や製造に係るコストを抑制することができる。
【0010】
前記第2出力部は、コレクタが前記第2端子と前記第2信号処理部の入力側とに接続され、エミッタが接地されたトランジスタを備え、
前記切替部は、前記第2状態が選択されたときに、前記トランジスタのベース電位を当該トランジスタの動作電圧未満に固定する論理回路を備える構成としてもよい。
【0011】
この場合、接続されるセンサの方式に応じた回路動作の切替えを、簡易な構成で複雑な制御を伴うことなく行なうことができる。
【0012】
上記の目的を達成するために、本発明がとりうる第2の態様は、信号処理回路の車載用電子制御装置への実装方法であって、
前記信号処理回路は、
MPU方式の回転センサの出力に基づく第1入力信号を処理する第1信号処理部と、
前記第1信号処理部の入力側に接続された第1端子と、
MRE方式の回転センサの出力に基づく第2入力信号を処理する第2信号処理部と、
第1出力部と、
前記第1信号処理部の第1出力信号を前記第1出力部から出力する第1状態と、前記第2信号処理部の第2出力信号を前記第1出力部から出力する第2状態とを選択する切替部と、
前記第1信号処理部からの出力に基づいて、前記第1入力信号に印加される信号を出力する第2出力部と、
前記第2信号処理部の入力側と前記第2出力部の出力側の双方に接続された第2端子とを備え、
前記第2状態が選択されたとき、前記切替部は前記第2出力部の出力をハイインピーダンス状態に固定するものであって、
MPU方式の車載回転センサからの出力に基づいて前記第1入力信号を生成する第1入力信号生成回路と、MRE方式の車載回転センサからの出力に基づいて前記第2入力信号を生成する第2入力信号生成回路のいずれかを選択し、
前記第1入力信号生成回路を選択した場合、前記第1入力信号生成回路を前記第1端子と前記第2端子に接続するとともに、前記第1状態を選択するように前記切替部を設定し、
前記第2入力信号生成回路を選択した場合、前記第2入力信号生成回路を前記第2端子に接続するとともに、前記第2状態を選択するように前記切替部を設定する。
【0013】
上記の実装方法によれば、以下のような構成を備える車載用電子制御装置を得ることができる。すなわち、
MPU方式の車載回転センサの出力に基づく第1入力信号を処理する第1信号処理部、およびMRE方式の車載回転センサの出力に基づく第2入力信号を処理する第2信号処理部を備える信号処理回路と、
MPU方式の車載回転センサからの出力に基づいて前記第1入力信号を生成する入力信号生成回路とを備え、
前記信号処理回路は、
前記第1入力信号が入力され、前記第1信号処理部の入力側に接続された第1端子と、
前記第1信号処理部の出力側に接続された第1出力部と、
前記第1出力信号に基づいて、前記第1入力信号に印加される第3出力信号を出力する第2出力部と、
前記第2信号処理部の入力側と前記第2出力部の出力側の双方に接続された第2端子とを備え、
前記第1出力部は、前記第2信号処理部の出力側と非導通状態とされている。
【0014】
ここで、前記第1信号処理部は、前記第1入力信号の電位が第1の閾値以上のときに前記第1出力信号が第1の論理状態をとり、前記第1入力信号の電位が前記第1の閾値よりも小さい第2の閾値以下のときに前記第1出力信号が第2の論理状態をとるものであり、前記第1入力信号の電位が前記第1の閾値を上回る変化をするときに当該電位を暫時的に上昇させるとともに、前記第1入力信号の電位が前記第2の閾値を下回る変化をするときに当該電位を暫時的に下降させるように、前記入力信号生成回路において前記第3出力信号が前記第1入力信号に印加される構成としてもよい。
【0015】
この場合、第2端子より出力される第3出力信号は、第1入力信号にいわゆるダイナミックヒステリシスを形成するために用いられる。第1信号処理部におけるいわゆる論理のチャタリング現象を回避できるため、第1出力部を通じて出力される第1出力信号を用いた制御を安定化させることができる。
【0016】
上記の実装方法によれば、以下のような構成を備える車載用電子制御装置を得ることができる。すなわち当該車載用電子制御装置は、
MPU方式の車載回転センサの出力に基づく第1入力信号を処理する第1信号処理部、およびMRE方式の車載回転センサの出力に基づく第2入力信号を処理する第2信号処理部を備える信号処理回路と、
MRE方式の車載回転センサからの出力に基づいて前記第2入力信号を生成する入力信号生成回路とを備え、
前記信号処理回路は、
前記第1信号処理部の入力側に接続された第1端子と、
前記第2信号処理部の出力側に接続された第1出力部と、
前記第1信号処理部からの出力に基づいて、前記第1入力信号に印加される信号を出力する第2出力部と、
前記第2信号処理部の入力側と前記第2出力部の出力側の双方に接続された第2端子とを備え、
前記第2入力信号は前記第2端子に入力され、前記第2出力部の出力がハイインピーダンス状態に固定されている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る車載用電子制御装置にMPU方式の車載回転センサが接続された状態を示す回路図である。
図2】本発明の一実施形態に係る車載用電子制御装置にMRE方式の車載回転センサが接続された状態を示す回路図である。
図3】(a)は図1の車載用電子制御装置における各部の信号波形を示す図であり、(b)は図2の車載用電子制御装置における各部の信号波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
添付の図面を参照しつつ本発明について以下詳細に説明する。なお以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするために縮尺を適宜変更している。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係る車載型電子制御装置にMPU方式の車載回転センサが接続された状態を示す回路図である。なお回路図を用いて行なう以降の説明における「接続」という用語は、特に断りのない限り電気的に接続されていることを意味し、物理的接続に関して直接間接を問わない。
【0020】
エンジンの制御等を行なう車載型電子制御装置としてのECU100は、第1センサ接続端子101と第2センサ接続端子102を備えている。
【0021】
エンジンのクランク回転角、回転数、カム角等を検出するための車載回転センサとして、MPU方式のセンサ(以下、MPUセンサと称する)300が第1センサ接続端子101と第2センサ接続端子102に接続されている。
【0022】
ECU100には、第1入力信号生成回路110、および信号処理回路200が実装されている。
【0023】
第1入力信号生成回路110は、MPUセンサ300からの出力に基づいて第1入力信号を生成する回路である。
【0024】
信号処理回路200は、第1入力信号を処理することにより、ECU100のエンジン制御に必要な信号の一部を生成する回路である。信号処理回路200はASIC等で構成されるICである。
【0025】
第1入力信号生成回路110は、第1センサ接続端子101と第2センサ接続端子102の間に介挿され、相互に並列接続された抵抗111、コンデンサ112、およびコンデンサ113を備えている。また第1センサ接続端子101に接続されたコンデンサ112とコンデンサ113の端部の間には抵抗114が介挿されている。
【0026】
図3の(a)に破線で示すように、MPUセンサ300の出力は、検出対象の回転数に応じた周期と、0Vを中心に正負の電圧振幅値を有する正弦波状の信号波形となる。第1入力信号生成回路110により生成される第1入力信号の波形は、基本的にMPUセンサ300の出力に対応するものとなる。
【0027】
信号処理回路200は、第1端子201、第2端子202、およびモード選択端子203を備えている。第1入力信号生成回路110の出力側は、第1端子201に接続されている。第1入力信号生成回路110は、さらに抵抗117を備えており、第2端子202は抵抗117を介してECU100の駆動電源に接続されている。モード選択端子203は接地電位に固定されている。
【0028】
信号処理回路200は、第1信号処理部210、第2信号処理部220、第1出力部230、第2出力部240、および切替部250を備えている。
【0029】
第1信号処理部210は、MPUセンサ300からの出力に基づく第1入力信号を処理して第1出力信号を生成する。第2信号処理部220は、後述するMRE方式のセンサがECUに接続される場合に、当該センサからの出力に基づく入力信号を処理して第2出力信号を生成するものであり、MPUセンサ300の接続時においては使用されない。
【0030】
切替部250は、第1信号処理部210が生成した第1出力信号を第1出力部230から出力する第1状態と、第2信号処理部220が生成した第2出力信号を第1出力部230から出力する第2状態のいずれかを選択可能に構成されている。
【0031】
第2出力部240は、第1信号処理部210が生成した第1出力信号に基づいて、第1入力信号に印加される第3出力信号を出力する。第2出力部240の出力側は第2端子202に接続されている。
【0032】
切替部250は、モード選択端子203に接続されたスイッチ251を備えている。スイッチ251は、モード選択端子203に入力される信号の電位がL論理閾値以下の場合に第1信号処理部210の出力側を第1出力部230に接続し、モード選択端子203に入力される電位がH論理閾値以上の場合に第2信号処理部220の出力側を第1出力部230に接続するように構成されている。図1の例においては、モード選択端子203が接地電位に固定されているため、第1信号処理部210の出力側が第1出力部230に接続されている。
【0033】
第1信号処理部210は、抵抗211、クランプ回路212、比較回路213、およびNOTゲート214を備えている。
【0034】
クランプ回路212は、抵抗211を通じて入力された第1入力信号に所定の波形整形を施す周知の回路である。図3の(a)に示すように、本実施形態においてはプラス側の信号電位の最大値を3V程度に、マイナス側の信号電位の最小値を−V程度に抑えるようにしている。Vは、クランプ回路が備える図示しないトランジスタの動作電圧を示す。過剰な正電圧の印加から回路を保護するとともに、過剰な負電圧入力による寄生素子の動作を防止するようにしている。
【0035】
図3の(a)に示すように、比較回路213は、第1入力信号の電位がH論理閾値VTH以上の場合にH論理電位(5V)の信号を出力し、第1入力信号の電位がL論理閾値VTL以下の場合にL論理電位(0V)の信号を出力するように構成されている。
【0036】
比較回路213の出力はNOTゲート214により論理反転されて第1出力部230より出力される。すなわち、第1入力信号の電位がH論理閾値VTH以上の場合にL論理電位(0V)の信号が出力され、第1入力信号の電位がL論理閾値VTL以下の場合にH論理電位(5V)の信号が出力される。第1出力部230より出力された信号は、ECU100が信号処理回路200とは別に備えるマイクロコンピュータ(図示せず)に送信され、エンジン制御に利用される。
【0037】
切替部250は、さらに2入力のNORゲート252、およびNOTゲート253を備えている。NORゲート252の入力端子の一方は、モード選択端子203に接続されてL論理電位に固定されている。入力端子の他方はNOTゲート253を介して第1出力部230に接続されている。第1出力部230からの出力は、NOTゲート253により論理反転されてNORゲート252に入力される。したがってNORゲート252の出力は、比較回路213の出力がH論理電位の場合のみ、L論理電位となる。
【0038】
第2出力部240は、トランジスタ241を備えている。NORゲート252の出力はトランジスタ241のベース端子に接続されている。トランジスタ241のコレクタ端子は第2端子202に接続され、エミッタ端子は接地電位に固定されている。
【0039】
NORゲート252の出力がH論理電位であるとき、トランジスタ241はオンとなりエミッタ端子へ電流が流れるため、第2端子202の電位はL論理電位となる。一方、NORゲート252の出力がL論理電位であるときトランジスタ241はオフとなり、抵抗117により第2端子202の電位はH論理電位となる。したがって、第2端子202を通じて第2出力部240より出力される第3出力信号は、比較回路213の出力と非反転論理の信号となる。
【0040】
第1入力信号生成回路110は、さらに抵抗115とコンデンサ116を備えている。第2端子202は、抵抗115とコンデンサ116を介して第1入力信号生成回路110の出力側に接続されている。この構成は、第1入力信号の電位がH論理閾値VTHまたはL論理閾値VTL近傍である場合における第1信号処理部210の論理誤判定を防止するために、第2端子202より出力された第3出力信号を第1入力信号に印加するためのものである。
【0041】
具体的には、図3の(a)に示すように、第1入力信号の電位がH論理閾値VTHを上回る変化をするときに当該電位を暫時的に上昇させるとともに、第1入力信号の電位がL論理閾値VTLを下回る変化をするときに当該電位を暫時的に下降させるようにしている(いわゆるダイナミックヒステリシスの形成)。
【0042】
すなわち、第1入力信号の電位がH論理閾値VTHを上回るとき、上述のように第2端子202の電位が上昇するため、その分が第1入力信号の電位に加わる(Vup)。これによりコンデンサ116が充電されるため、第1入力信号の電位は徐々にMPUセンサ300の出力に対応する値に戻る。一方、第1入力信号の電位がL論理閾値VTLを下回るときは、上述のように第2端子202の電位が下降するため、その分が第1入力信号の電位より差し引かれる(Vdown)。これによりコンデンサ116が放電されるため、第1入力信号の電位は徐々にMPUセンサ300の出力に対応する値に戻る。
【0043】
図2は、車載型電子制御装置としてのECU100AにMRE方式の車載回転センサが接続された状態を示す回路図である。図1に示したものと同一または同等の構成要素については同一の参照番号を付与し、繰り返しとなる説明は割愛する。
【0044】
エンジンのクランク回転角、回転数、カム角等を検出するための車載回転センサとして、MRE方式のセンサ(以下、MREセンサと称する)400が、ECU100Aが備えるセンサ接続端子103に接続されている。
【0045】
ECU100Aには、第2入力信号生成回路120、および信号処理回路200が実装されている。第1入力信号生成回路120は、MREセンサ400からの出力に基づいて第2入力信号を生成する回路である。
【0046】
第2入力信号生成回路120は、抵抗121、抵抗122、抵抗123、およびコンデンサ124を備えている。抵抗121の一端はECU100Aの駆動電源に接続されている。抵抗121の他端は、抵抗122の一端に接続されている。抵抗122の他端は、抵抗123の一端とコンデンサ124の一端に接続されている。抵抗123の他端は、信号処理回路200が備える第2端子202に接続されている。コンデンサ124の他端は接地されている。
【0047】
図3の(b)に示すように、MREセンサ400の出力は、検出対象の回転数に応じた周期でH論理電位(5V)とL論理電位(0V)を交互に繰り返す信号波形となる。抵抗122とコンデンサ124はローパスフィルタを形成しており、第2入力信号生成回路120により生成される第2入力信号の波形は、MREセンサ400の出力に含まれる高周波成分が除去されたものに相当する。
【0048】
信号処理回路200の第1端子201はオープンとされ、モード選択端子203は、抵抗204を介してECU100Aの駆動電源に接続されている。したがって切替部250のスイッチ251に入力される信号はH論理電位となり、第2信号処理部220の出力側が第1出力部230に接続される。
【0049】
第2信号処理部220の入力側は、第2端子202に接続されている。第2信号処理部220は、第2端子202を通じて入力される第2入力信号を処理して第2出力信号を生成する。第2信号処理部220は、クランプ回路221、比較回路222、およびNOTゲート223を備えている。
【0050】
クランプ回路221は、過剰な正電圧の印加から回路を保護するとともに、過剰な負電圧入力による寄生素子の動作を防止するための周知の回路である。
【0051】
図3の(b)に示すように、比較回路222は、第2入力信号の電位がH論理閾値VTH以上の場合にH論理電位(5V)の信号を出力し、第2入力信号の電位がL論理閾値VTL以下の場合にL論理電位(0V)の信号を出力するように構成されている。
【0052】
比較回路222の出力はNOTゲート223により論理反転されて第1出力部230より出力される。すなわち、第2入力信号の電位がH論理閾値VTH以上の場合にL論理電位(0V)の信号が出力され、第2入力信号の電位がL論理閾値VTL以下の場合にH論理電位(5V)の信号が出力される。第1出力部230より出力された信号は、ECU100Aが行なうエンジン制御に利用される。
【0053】
上述のように、切替部250が備えるNORゲート252の入力端子の一方は第1出力部230に接続されているため、当該入力端子の電位は第1出力部230からの出力信号の電位に応じて変化する。しかしながらNORゲート252の他方の入力端子はモード選択端子203に接続されてH論理電位に固定されているため、NORゲート252の出力は常にL論理電位となる。
【0054】
すなわち第2出力部240が備えるトランジスタ241は常にオフとなり、コレクタ端子はハイインピーダンス状態、すなわちどのような電圧を加えても電流が流れない(あるいは非常に微弱な電流しか流れない)状態に固定される。このため、第2端子202は第2出力部240の出力側と第2信号処理部220の入力側の双方に接続されているが、第2入力信号は第2信号処理部220に入力されることとなる。
【0055】
本実施形態の信号処理回路200は、MPUセンサ300の出力に基づく第1入力信号を処理する第1信号処理部210と、MREセンサ400の出力に基づく第2入力信号を処理する第2信号処理部220を備えている。切替部250は接続されるセンサの方式に応じて第1信号処理部210の出力側と第2信号処理部220の出力側のいずれかを第1出力部230に接続するように構成されている。
【0056】
そして第1信号処理部210と第2信号処理部220は入力端子を共有するのではなく、第1信号処理部210の使用時にのみ必要となる出力端子としての第2端子202を、第2信号処理部220の入力端子として共用する構成とされている。すなわち第2端子202は、第2出力部240の出力側と第2信号処理部220の入力側の双方に接続されている。しかしながら第2信号処理部220の使用時においては、切替部250が第2出力部240の出力をハイインピーダンス状態に固定する。
【0057】
したがって第2信号処理部に入力される第2入力信号に、第2出力部の出力状態が変化することによる影響が生ずることを防止できる。例えばMREセンサ400が接続されているときにトランジスタ241がオン状態となると、MREセンサ400の出力に基づく第2入力信号が接地電位に引っ張られて波形が崩れてしまう。上記の構成によれば、このような事態を回避できる。
【0058】
そのため第1信号処理部210と第2信号処理部220の構成としては、周知のものを利用可能であり、特にクランプ回路による入力電圧制限に関し、入力端子を共用する場合のような複雑な回路構成が不要となる。よって設計や製造に係るコストを抑制することができる。
【0059】
第1信号処理部210を使用する第1状態と第2信号処理部220を使用する第2状態の切替えは、トランジスタ241とNORゲート252を用い、モード選択端子203の端子電位を切り替えるのみの簡易な構成により行なうことができる。したがって、このことによっても回路構成や制御の複雑化を回避することができる。
【0060】
第1信号処理部210が使用される場合において、第2端子202より出力される第3出力信号は、第1入力信号にいわゆるダイナミックヒステリシスを形成するために用いられるものであるため、第1信号処理部210におけるいわゆる論理のチャタリング現象を回避できる。したがって第1出力部230を通じて出力される第1出力信号を用いた制御を安定化させることができる。
【0061】
上記のような信号処理回路200を車載型電子制御装置としてのECUに実装するにあたっては、まずECUが搭載される車両の種類や仕向け先に応じて、MPUセンサ300とMREセンサ400のいずれを接続するのかを決定する。換言すると、第1入力信号生成回路110と第2入力信号生成回路120のいずれを実装するのかを選択する。
【0062】
MPUセンサ300を接続する場合、切替部250が備えるスイッチ251が第1信号処理部210の出力側を第1出力部230に接続するように、モード選択端子203の電位をL論理電位に固定する。これにより第1出力部230は、第2信号処理部220の出力側とは非導通状態とされる。
【0063】
そして第1入力信号生成回路110の出力側を、信号処理回路200の第1端子201と第2端子202に接続する。これにより図1に示したECU100が得られる。MPUセンサ300は、ECU100の第1センサ接続端子101と第2センサ接続端子102に接続される。
【0064】
MREセンサ400を接続する場合、切替部250が備えるスイッチ251が第2信号処理部220の出力側を第1出力部230に接続するように、モード選択端子203の電位をH論理電位に固定する。これにより、第2出力部240の出力はハイインピーダンス状態に固定される。
【0065】
そして第2入力信号生成回路120の出力側を、信号処理回路200の第2端子202に接続する。これにより図2に示したECU100Aが得られる。MREセンサ400は、ECU100Aのセンサ接続端子103に接続される。
【0066】
以上説明した通り、本発明によれば、MPUセンサ300とMREセンサ400の双方について共用可能な信号処理回路200を、回路構成を複雑化することなく提供することができる。
【0067】
上記の実施形態は本発明の理解を容易にするためのものであって、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく変更・改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは明らかである。
【0068】
スイッチ251の切替えを行なうための信号は、必ずしもモード選択端子203を設けてその電位を固定することにより生成することを要しない。信号処理回路200またはECU100(100A)が備える図示しない内部回路または素子により生成されたH論理電位またはL論理電位を有する信号を、適宜利用してスイッチ251に入力する構成としてもよい。
【0069】
第2入力信号の入力端子として使用される第2端子202は、必ずしもいわゆるダイナミックヒステリシスの形成に用いられる信号を出力するための端子であることを要しない。MPUセンサ300が接続される場合にのみ信号出力端子として利用される端子であれば、適宜のものを利用することができる。
【0070】
MPUセンサ300とMRE400がそれぞれ接続されるECUは、必ずしも上記のように端子構成の異なるハウジングを用いることを要しない。すなわちセンサ接続端子101〜103を備える汎用のハウジングを用意し、センサの接続に使用されない端子については別の用途に使用してもよい。当該空き端子はオープンのままとしてもよい。
【符号の説明】
【0071】
100(100A):ECU、110:第1入力信号生成回路、120:第2入力信号生成回路、200:信号処理回路、201:第1端子、202:第2端子、210:第1信号処理部、220:第2信号処理部、230:第1出力部、240:第2出力部、241:トランジスタ、250:切替部、252:NORゲート、300:MPUセンサ、400:MREセンサ
図1
図2
図3