(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
本発明の断熱材の第1実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る断熱材1の施工例としての床構造を示す斜視図であり、断熱材1は、互いに平行に延びる大引あるいは根太等の断面矩形状の支持用木材110,110間に嵌合されて保持される。
本実施形態の断熱材1は、
図2〜5に示すように、平面視で正方形の板状の断熱材本体10と、断熱材本体10の側面10aを全体にわたって被覆するカバー20とを備える。
【0010】
本実施形態における断熱材本体10は、3枚の板状体11a,11b,11cが積層した積層体からなる。なお、本明細書では、3枚の板状体11a,11b,11cを、上から順に第1板状体11a、第2板状体11b、第3板状体11cという。
【0011】
各板状体11a,11b,11cは、複数の棒状の発泡体13a,13b,13cが一方向に配向して一体化され、板状に形成されたものである。
発泡体13a,13b,13cは、ポリオレフィン樹脂と、セルロールと、でんぷんとを含む材料を含むことが好ましい。
ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などが挙げられる。
セルロースとしては、新聞紙や雑誌等の古紙を原料として用いることができる。古紙は粉砕機により所望の大きさに粉砕されて用いられる。
でんぷんとしては、とうもろこし澱粉(コーンスターチ)、小麦澱粉、米澱粉などを用いることができる。
発泡体13a,13b,13cを構成する発泡材料100質量%中の各成分の割合は、ポリオレフィン樹脂が30〜50質量%であることが好ましく、セルロースが10〜40質量%であることが好ましく、でんぷんが20〜40質量%であることが好ましい。
また、発泡材料には、必要に応じて酸化防止剤、防かび剤、顔料など、断熱材に用いられる各種添加剤が含まれてもよい。
断熱材本体10は、セルロース(古紙)やでんぷんを含む板状体11a,11b,11cより構成されているため、環境への負荷が小さいものとなっている。
【0012】
発泡体13a,13b,13cは、その表面に不規則な凹凸形状が形成され、隣り合う発泡体同士の溶着が不連続とされて、隙間が形成されていることが好ましい。このように隙間が形成されていると、該隙間を介して排水または排湿が可能になる。
【0013】
板状体11a,11b,11cは、例えば以下の方法により作製できる。
まず、水等の発泡剤を含ませた発泡材料を複数の細孔を有するダイより吐出することにより発泡させて、一方向に配向した複数の棒状の発泡体13a,13b,13cを形成すると共に、各発泡体13a,13b,13cを互いに隙間なく密着させ、一体化して、集合体を得る。そして、集合体を板状に成形して板状体11a,11b,11cを得る。
【0014】
断熱材本体10は、積層方向に隣り合う板状体11a,11b,11cが、一方の板状体の発泡体の配向方向と、他方の板状体の発泡体の配向方向とが略直交するように積層されている。
すなわち、第1板状体11aの発泡体13aの配向方向と、第2板状体11bの発泡体13bの配向方向とが略直交し、かつ第2板状体11bの発泡体13bの配向方向と、第3板状体11cの発泡体13cの配向方向とが略直交している。また、第1板状体11aの発泡体13aの配向方向と、第3板状体11cの発泡体13cの配向方向は、同じ方向とされている。なお、本発明において、「略直交」とは、90°±10°の範囲内を意味する。
第1板状体11a、第2板状体11bおよび第3板状体11cの厚さは、各々、5〜50mmが好ましく、20〜50mmがより好ましい。
【0015】
本実施形態におけるカバー20は、断熱材本体10が嵌め込まれる枠体であり、平面視において外形が四角形の独立発泡の発泡体からなるものである。また、本実施形態におけるカバー20は、平面視でL字型の4個の部品21,22,23,24が結合されて形成されている。
また、本実施形態におけるカバー20は、断熱材本体10側は、断熱材本体10と同じ厚みとされているが、外側は、断熱材本体10よりも薄く且つ支持用木材110とほぼ同じ厚みとされている。これにより、充分に高い断熱性を確保できると共に、床の基礎と支持用木材110の間の換気用隙間を塞ぐことがなく、床下を充分に換気できる。
また、本実施形態におけるカバー20の下面20c側には、断熱材本体10に対向する内面20dから突出した突出部25が設けられている。この突出部25が設けられていることによって、断熱材本体10が落下しないように保持されている。
【0016】
また、本実施形態におけるカバー20は、支持用木材110に接する端面20aが、下側に向かうにつれて断熱材本体10側に近づくように傾斜している。すなわち、カバー20は、嵌合方向の先端側の幅が狭くなっている。
また、端面20aの近傍には、上面20bから下面20cの方向に向かって切り込まれたスリット26が、端面20aに沿って形成されている。
カバー20の端面20aが傾斜し、且つ、カバー20にスリット26が形成されていることにより、断熱材1を支持用木材110,110の間に容易に嵌め込むことができる。また、支持用木材110,110の間に嵌め込んだ後には、支持用木材110に対して充分な密着性を確保できる。さらに、支持用木材110,110の間の間隔が一定でない場合でも、同一サイズの断熱材1を嵌め込むことができる。
カバー20の、支持用木材110に接しない端面20eは傾斜していない。そのため、隣接する断熱材1同士で密着できるようになっている。
【0017】
カバー20は、例えば、以下の方法により作製できる。
まず、樹脂と発泡剤とを含む成形材料を、L字型の部品21,22,23,24を形成するための型枠内に充填し、密閉する。次いで、型枠を加熱することにより、成形すると共に発泡させて、L字型の部品21,22,23,24を得る。次いで、部品21,22,23,24を結合して、カバー20を得る。
【0018】
以上説明した断熱材1では、断熱材本体10の側面10aの全体がカバー20によって被覆されているため、側面10aが露出していない。そのため、基礎と支持用木材110との間の隙間から流入した外気が、側面10aに当たらないようになっている。そのため、外気に含まれる水分が、断熱材本体10を構成する発泡体13a,13b,13cの気泡に入り込みにくくなっている。
断熱材本体10の気泡に水分が入り込みにくくなっていることにより、断熱材本体10や支持用木材110の劣化を防止でき、耐久性を向上させることができる。また、冬季では、気泡に入り込んだ水分の凍結による断熱材本体10の損傷が発生しにくい。
また、断熱材本体10の気泡に水分が入り込みにくくなっていることにより、水分が気泡を埋めることが抑制されるため、断熱性の低下を抑制することができる。
さらに、断熱材本体10の気泡に水分が入り込みにくくなっていることにより、気泡内部での黴の発生を抑制することもできる。
しかも、カバー20が独立発泡の発泡樹脂からなるため、断熱材1全体として断熱性がより高くなる上に、外気がカバー20に当たっても断熱材本体10の内部に入り込みにくいから、上記の効果をより発揮させることができる。
【0019】
(第2実施形態)
本発明の断熱材の第2実施形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態に係る断熱材2も、支持用木材間に嵌合されて保持されるものであり、
図6〜9に示すように、平面視で正方形の板状の断熱材本体30と、断熱材本体30の側面30aを全体にわたって被覆するカバー40とを備える。
【0020】
本実施形態における断熱材本体30は、上から順に第1板状体31a、第2板状体31b、第3板状体31cが積層した積層体からなる。断熱材本体30においては、全ての板状体31a,31b,31cの発泡体の配向方向が同一になるように積層されている。
第1板状体31a、第2板状体31bおよび第3板状体31cは、第1実施形態における第1板状体11a、第2板状体11bおよび第3板状体11cと同様のものである。ただし、平面視において、第1板状体31aおよび第2板状体31bの面積は同一であるが、第3板状体31cの面積は小さくなっている。
【0021】
本実施形態におけるカバー40は、断熱材本体30が嵌め込まれる板状体からなる枠体である。
また、本実施形態におけるカバー40の下面40c側には、断熱材本体30に対向する内面40dから突出した突出部45が設けられている。
カバー40は、断熱材本体30の耐久性がより高くなることから、JIS A9511に従って測定した吸水量が2g/cm
2以下であることが好ましい。さらに、結露を防止するためには、カバー40の熱伝導率が1W/mK以下であることが好ましい。吸水量2g/cm
2以下且つ熱伝導率1W/mK以下にするためには、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル等からなるシート状または板状の非発泡体を選択すればよいが、発泡体であっても満たすものはある(例えば、発泡ポリスチレン)。なお、断熱材本体30の吸水量は5g/cm
2程度である。
【0022】
また、本実施形態における断熱材2は、支持用木材に接する端面40a,40aの間の長さが下側に向かうにつれて短くなるように傾斜している。また、第1板状体31aおよび第2板状体31bとカバー40には、端面40aと平行にスリット36,46が形成されている。これにより、断熱材2を支持用木材の間に容易に嵌め込むことができる。
【0023】
本実施形態の断熱材2においても、断熱材本体30の側面30aの全体がカバー40によって被覆されているため、第1実施形態と同様の理由により、水分を含んだ外気が入り込みにくく、断熱性および耐久性に優れる。
【0024】
(他の実施形態)
なお、本発明の断熱材は、上記実施形態のものに限定されるものではない。
例えば、断熱材本体は、3枚の板状体が積層した積層体でなくてもよく、1枚の板状体のみでもよいし、2枚の板状体が積層した積層体でもよいし、4枚以上の板状体が積層したものでもよい。
また、カバーは独立発泡の発泡体でなくてもよく、連続発泡の発泡体や非発泡体であってもよい。
カバーの形状は、断熱材本体の側面を被覆できればよく、例えば、一定の厚さの板状物であっても構わない。また、支持用木材に接する端面が傾斜していなくてもよいし、カバーにスリットが形成されていなくてもよい。
また、カバーは、4個のL字型部品が結合したものでなくもよく、分割不能な1個の枠体であってもよいし、2個または5個以上の部品が結合したものでもよい。
【0025】
また、本発明の断熱材は、床構造用の断熱材に限定されず、例えば壁用や天井用の断熱材としても使用することもできる。
本発明の断熱材を壁用として用いる場合、断熱材は柱と柱の間、柱と間柱の間などに配置される。また、天井用として用いる場合、断熱材は垂木と垂木の間などに配置される。