【実施例】
【0016】
図1は、本発明に係るキャップ付き筆記具の一例を示している。
このキャップ付き筆記具1は、長尺筒状の軸筒10と、該軸筒10の前端側に着脱可能に接続されるキャップ20とを備え、キャップ20の周壁に、外方からの押圧操作によりキャップ内側へ変形可能な変形部21b1を設け、キャップ内側へ変形した際の前記変形部21b1により軸筒10を押圧して、前記キャップ20が前記軸筒10から外されるようにしている。
このキャップ付き筆記具1は、軸筒10内の中綿40に充填されたインクを、毛細管力により前方へ導き筆記部30の前端から吐出するように構成される。
【0017】
軸筒10は、前軸11と後軸12とを接続してなる一体筒状に構成される。なお、この軸筒10の他例としては、単一の筒状部材からなる態様や、3つ以上の筒体を接続してなる態様とすることも可能である。
【0018】
前軸11の外周面の前端側には、先窄み状の傾斜面11aが形成されている。この傾斜面11aは、前方(
図1によれば左方向)へ向かって徐々に縮径された略円錐状の面である。
前軸11における前記傾斜面11aよりも前側の部分には、小径状の筒部11bが形成され、この筒部11bの外周面は、後述するキャップ20の内キャップの内面に対し全周にわたって密接してインク洩れを防止する。
前軸11における前記傾斜面11aよりも後側の部分は、キャップ20に嵌り合う大径筒状に形成され、この筒状部分の外周面には、キャップ20をキャップ軸方向へ乗り越えさせて嵌合する環状突起11cが形成される。
前軸11における環状突起11cよりも後ろ側には、キャップ20の後端縁に当接して該後端縁を受ける環状凸部11dが設けられる。そして、前軸11における環状凸部11dよりも更に後側の部分は、後軸12の前端開口部に挿入され嵌合接続されている。
また、前軸11内周面における前端側には、後軸12内から前方へ吐出されるインクを一時的に貯溜するインク貯溜溝11eが設けられる。このインク貯溜溝11eは、軸筒軸方向へ連続する溝であり、周方向に間隔を置いて複数設けられる。
【0019】
後軸12は、後端部を閉鎖した有底筒状に形成され、前軸11の後端部に嵌合接続されている。
【0020】
キャップ20は、
図3に示すように、二重筒状のキャップ本体部21と、該キャップ本体部21における内キャップ21aと外キャップ21bの間への筆記部30の挿入を阻む挿入阻止部22とから構成される。
【0021】
キャップ本体部21は、筆記部30の周囲を覆うようにして設けられた小径筒状の内キャップ21aと、内キャップ21aに対しその外周側に間隔を置いて設けられた外キャップ21bとを有する二重筒状に一体成形されている。
内キャップ21aは、前軸11前端側の小径な筒部11bよりも一回り程大きい筒状に形成され、その後端側の内周面には、前記筒部11bの前端側外周面に密接してインク洩れを防ぐ環状突起21a1を有する。
【0022】
外キャップ21bは、有底筒状に形成され、その周壁には、外方からの押圧操作により自由端側をキャップ内へ弾性的に撓み変形可能な変形部21b1が設けられる。
変形部21b1の外表面は、外キャップ21b外周面における最大径部分(但し、突起21hを含まない最大径部分)と略面一、又は前記最大径部分よりも凹んで設けられる。換言すれば、変形部21b1は、外キャップ21b外周面における前記最大径部分よりも径外方向へ突出しないように設けられる。
【0023】
変形部21b1は、キャップ本体部21の周壁に、該周壁をキャップ径方向貫通する平面視略凹状(
図2(b)参照)の切欠部21b2を設けることで、この切欠部21b2の内側に形成された方持ち梁状の部分であり、その基端側に対する逆端側(
図1〜3によれば右端側)の自由端部を、軸筒後方(図示の右方)へ向けている。
切欠部21b2及び変形部21b1は、図示例によれば、軸心を挟んで対向するように二つ設けられる。
【0024】
各変形部21b1は、弓なりに弾性変形可能な縦断面凹状に形成され、キャップ内側へ変形した際に、自由端側(図示の右端側)の内縁によって軸筒10先端側の傾斜面11aを押圧する。
この変形部21b1の自由端部の外表面は、外キャップ21bにおける後端側(図示の右端側)の外表面(突起21h以外の部分における最大径部分)と、略面一になっている。
この変形部21b1は、キャップ軸方向において、縦断面凹状の部分の中央側が、キャップ内側へ凹むようにして、その両側の部分よりも徐々に薄肉になるように形成される(
図1〜3参照)。この構成によれば、変形部21b1の中央側が押圧された際に、該変形部21b1を効果的に弓なり変形させることができる。
【0025】
そして、変形部21b1の凹状の表面には、指fの滑り止めになるとともに変形部21b1の変形を促進するように、複数の凹凸条21b12が設けられる。
この凹凸条21b12は、キャップ軸方向に直交する方向の突条と凹溝を交互に並べることで形成される。
【0026】
また、変形部21b1の自由端部の内縁には、軸筒10先端側の傾斜面11aに摺接可能な凹凸部21eが設けられる。この凹凸部21eは、図示例によれば、変形部21b1の自由端部の内縁を、断面略階段状に形成することで形成される。
この構成によれば、変形部21b1がキャップ内側へ撓んだ際に、変形部21b1の自由端部の内縁側の凹凸部21eを、軸筒10先端側の傾斜面11aに安定的に接触させることができ、変形部21b1を撓ませてキャップ20を外す際の操作を良好に行うことができる。
【0027】
そして、外キャップ21bの外表面における変形部21b1(詳細には、凹状の切欠部21b2)に隣接する部分には、押圧操作のための指fを逃すために、変形部21aの外表面よりもキャップ内側へ凹んだ第1及び第2の逃し凹部21b3,21b4が設けられる。
【0028】
第1の逃し凹部21b3は、変形部21b1の自由端部に対し、切欠部21b2を間に置いて、その後方側(
図1〜3及び5によれば右方側)から隣接するようにして、外キャップ21b周壁の外表面に設けられている。そして、この第1の逃し凹部21b3は、図示例によれば、前方へ向かってキャップ内側へ傾斜する傾斜面状に形成される。
【0029】
第2の逃し凹部21b4は、変形部21b1の両側端部に対し、切欠部21b2を間において、その両側から隣接するように、外キャップ21b周壁の外表面に設けられている(
図2(b)参照)。換言すれば、この第2の逃し凹部21b4は、変形部21b1及び切欠部21b2を、キャップ周方向の両側から挟むようにして二つ配設される。
図示例についてより詳細に説明すれば、各第2の逃し凹部21b4は、キャップ内側へ凹む略円弧状に形成される(
図2(a)参照)。この第2の逃し凹部21b4のキャップ軸方向の長さは、変形部21b1表面の凹状部分を全て含む長さに設定される。
【0030】
また、外キャップ21bには、必要に応じて、切欠部21b2を跨るようにして変形部21b1を覆う弾性被覆部23が設けられる(
図2(a)参照)。
この弾性被覆部23は、エラストマー樹脂等の弾性を有する合成樹脂材料の被膜であり、キャップ本体部21を成形する際に同時成形(二色成形)される。
【0031】
なお、弾性被覆部23は、図示例では、外キャップ21bの周方向及び軸方向において部分的に設けられて、変形部21b1及び切欠部21b2を覆うようにしているが、他例としては、変形部21b1及び切欠部21b2を部分的に覆う筒状に形成された態様や、外キャップ21bの外面を全て覆う態様等とすることも可能である。
さらに、この弾性被覆部23の他例としては、キャップ本体部21とは別体に成形されたものを、キャップ本体部21に対し装着するようにしてもよい。
【0032】
また、キャップ本体部21内周面の開口端側(
図3によれば右端側)には、キャップ20が軸筒10に嵌め合わせられる際、軸筒10の環状突起11c(
図1参照)を軸方向へ乗り越えるように、乗越え突起21iが設けられる。この突起21iは、緩やか傾斜面を有する断面山形の突起であり、キャップ周方向に間隔を置いて複数(図示例によれば四つ)設けられている。
【0033】
また、キャップ本体部21内周面には、キャップ軸方向へわたる縦リブ21jが、周方向へ略等間隔を置いて複数設けられる。これら複数の縦リブ21jは、キャップ20内周面と軸筒10外周面との当接力を、周方向に略均等に分散することで、キャップ20内周面と軸筒10外周面とを安定した接触状態に保持する。
【0034】
また、キャップ本体部21の外周面には、略半球状の突起21hが、キャップ軸方向へ間隔を置いて複数設けられる(
図3参照)。これら突起21hは、キャップ本体部21及び当該キャップ付き筆記具1が平坦面上に載置された際に、転がり防止として作用する。
【0035】
挿入阻止部22は、内キャップ21aに接続される接続部22aと、該接続部22aから延設されたガイド部22bとを具備し、ガイド部22bの自由端側を、変形部21b1の内面に対し、近接又は接触させている。
【0036】
接続部22aは、内キャップ21aの外周面に沿う略円筒状に形成され、その内周面には、軸筒軸方向へ伸びる突部22a1を、周方向に間隔を置いて複数有する。
各突部22a1は、略円筒状の接続部22aの前端部から後方へ離れた位置に設けられ、内キャップ21a外周面に圧接されるように形成される。接続部22a内周面における突部22a1よりも前側の部分は、内キャップ21aの最大径よりも若干大きい外径に形成される。
これらの構成によれば、接続部22aを内キャップ21aに対し環状に装着する際、内キャップ21aの先端側外周部が、接続部22a内にスムーズに挿入さされ、接続部22a内の複数の突部22a1が内キャップ21a外周部に圧接されることで、接続部22aが、軸筒軸方向及び周方向へ移動しないように固定される。
【0037】
また、ガイド部22bは、筆記部30を内キャップ21a内へ案内するように軸筒側(
図3によれば右方向側)へ向かって拡径する略円錐状に形成される。
このガイド部22bの自由端部は、図示例によれば、変形部21b1の内面に対し、略接触に近い状態で近接している。そして、このガイド部22bには、該ガイド部22bを周方向に分割するようにして、筆記部30を挿通不能な幅のスリット22b1が、周方向に間隔を置いて複数設けられる。
各スリット22b1は、図示例によれば、ガイド部22bの後端(
図3によれば右端)から、該ガイド部22bの軸方向長さの略中央よりも前側にいたる長さに形成される。
【0038】
なお、
図1中、符号30は、インクを毛細管力によって前方へ導く筆記部、符号40は、インクを含浸した中綿であり筆記部30の後端側が挿入されている。
【0039】
次に、上記構成のキャップ付き筆記具1について、その特徴的な作用効果を詳細に説明する。
図5(a)に示すように、軸筒10にキャップ20を装着した状態では、変形部21b1の外表面の最大径部分(自由端部の外縁部)が、キャップ本体部21の外キャップ21b周壁の外表面と略面一であるため、例えば、搬送中に当該キャップ付き筆記具1が梱包箱等に当接したとしても、変形部21b1が押されてキャップ20が外れてしまうようなことがない。
【0040】
また、軸筒10からキャップ20を外す際には、例えば、
図5(b)に示すように、変形部21b1から第1の逃し凹部21b3にわたる範囲が、指f,fによって摘まれて押圧されると、指fの先端側が第1の逃し凹部21b3内へ若干沈み込むとともに、同指fの腹部分は第2の逃し凹部21b4(
図2参照)内へ沈み込み、変形部21b1がキャップ内側へ撓む。
したがって、仮に逃し凹部21b3,21b4がない場合と比較し、変形部21b1の撓み量を大きく確保することができる。
【0041】
そして、変形部21b1の前記撓みに伴って、挿入阻止部22のガイド部22bも、内キャップ21a内側へ撓む。この際、ガイド部22bは、後端部を変形部21b1内面に摺接させるとともに、各スリット22b1を狭めながら、滑らか且つスムーズに弾性変形する(
図5及び
図6参照)。
同時に、変形部21b1は、若干弓なりに変形する(
図5(b)参照)
【0042】
そして、撓んだ変形部21b1は、自由端部の内縁側の複数の凹凸部21eを、軸筒10先端の傾斜面11aに摺接させることで、軸筒10を後方へ押動する。そのため、外キャップ21b内周面の乗越え突起21i(
図3参照)と軸筒10外周面の環状突起11cとの乗越え嵌合状態が解除されて、キャップ20が軸筒10から前方へ外れる(
図5(b)参照)。
この際、若干弓なりに変形した変形部21b1が弾性的に復元する際の弾発力によって、軸筒10が後方へ弾かれるようにして、キャップ20が前方へ抜ける。
【0043】
また、軸筒10にキャップ20を嵌める際には、キャップ20の内キャップ21aと外キャップ21bの間に筆記部30が侵入してしまうのを、挿入阻止部22によって阻むことができる上、キャップ20内へ挿入される筆記部30を、挿入阻止部22のガイド部22bによって、内キャップ21a内へスムーズに導くことができる。
【0044】
よって、本実施の形態のキャップ付き筆記具1によれば、不使用時にキャップ20が外れてしまうのを防ぐことができる上、使用時には、比較的軽い摘み操作でキャップ20を外すことができ、キャップ20を装着する際も抵抗が少なく、着脱操作性が良好である。
【0045】
また、
図2(a)に示すように、弾性被覆部23を有する場合は、変形部21b1を押圧操作する指fが滑るのを防止したり、切欠部21b2から異物が侵入するのを防止したり等、更なる作用効果を奏する。
【0046】
なお、上記実施例によれば、変形部21b1を片持ち梁状に形成したが、この変形部は、外方からの押圧操作によりキャップ内側へ変形可能に構成されていればよく、他例としては、キャップ本体部21における外キャップ21bの一部又は全部を弾性を有する材料からなる変形部(図示せず)とし、この変形部がキャップ内側へ変形して軸筒10を押圧して外すようにすることも可能である。
【0047】
また、上記実施例によれば、変形部21b1を径方向に対向するように二つ設けたが、他例としては、変形部21b1を単数又は三以上設けることも可能である。
【0048】
また、上記実施例によれば、挿入阻止部22におけるガイド部22bの後端を、変形部21b1内面に対し、略接触に近い状態で近接させたが、他例としては、ガイド部22bの後端を変形部21b1内面に接触させた態様や、ガイド部22b後端と変形部21b1内面の間に筆記部30が挿入不能な程度の隙間を置くようにして、ガイド部22b後端を変形部21b1内面に近接させた態様等とすることも可能である。
【0049】
また、上記実施例によれば、挿入阻止部22におけるガイド部22bを弾性変形を良好にする態様として、周方向に略等間隔に複数のスリット22b1を設けたが、他例としては、単数のスリット22b1を設けた態様や、上記実施例からスリット22b1を省いた態様、キャップ本体部21における外キャップ21bの切欠部21b2に対応する位置のみにスリット22b1を設けた態様等とすることも可能である。
【0050】
また、上記実施例によれば、逃し凹部21b3を外キャップ21b周壁の外表面に配置したが、他例としては、変形部21b1の自由端部を外キャップ21b後側の開口端部に略一致させるとともに、この自由端部に対し、その後方側から隣接するようにして、軸筒10周壁の外表面に逃し凹部(図示せず)を設けるようにしてもよい。
【0051】
また、図示例では、所謂中綿式筆記具を構成したが、他例としては、インクタンク内のインクを前方へ導いて筆記部から吐出する直液式筆記具や、インク収容管内のインクをチップ先端から突出するようにしたボールペン、修正ペン等を構成することも可能である。
【0052】
また、図示例では、軸筒軸方向の一方側のみに筆記部30及びキャップ20を有する単頭式の筆記具1を構成したが、他例としては、軸筒軸方向の一方側に太書き用として上記筆記部30及びキャップ20を有するとともに、他方側に細書き用として同構造の筆記部及びキャップを有する両頭式の筆記具(図示せず)を構成するようにしてもよい。