【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、上述のような目的を達成するために、
燃料ガスを水蒸気改質して水素と一酸化炭素とを含む改質ガスに変化させる改質器と、前記改質器からの改質ガスと空気とを反応させて発電するセルスタックと、前記セルスタックから排出されるオフガスを燃焼するオフガス燃焼部と、前記オフガス燃焼部で燃焼しなかった残留物を含有する処理ガスを燃焼処理する燃焼触媒部と、前記改質器と前記セルスタックとを内包するモジュールの温度を制御上の代表温度として計測するモジュール温度センサと、を備えた固体酸化物形燃料電池システムであって、
前記燃焼触媒部の触媒の温度を計測する1個の触媒温度センサと、
前記改質器への燃料ガス供給量が減少したことに基づいて前記燃焼触媒部の触媒の劣化を判定するタイミングであると判断する触媒劣化判定タイミング判断手段と、
前記触媒劣化判定タイミング判断手段で劣化判定タイミングであると判断したときに、その前後における前記触媒温度センサで計測された触媒温度の
上昇幅を求める温度変化幅算出手段と、
前記温度変化幅算出手段で求めた
上昇幅が設定値以下のときに触媒が劣化したと判定する触媒劣化判定手段と、
を備えたことを特徴としている。
【0009】
(作用・効果)
改質器への燃料ガスの供給量が減少すると、セルスタックでの燃焼温度が低下してオフガス燃焼部に供給されるオフガスの量が増加し、それに伴って燃焼触媒部に供給される処理ガス中に含有される残留物の量も多くなって燃焼触媒部での触媒の温度が高くなる。これに対して、燃焼触媒部で触媒が劣化しているときには、燃焼触媒部での燃焼が不充分になって触媒の温度が高くならず、触媒の温度の上昇度合いが少なくなることを見出した。
請求項1に係る発明の固体酸化物形燃料電池システムの構成によれば、上記知見に着目し、改質器への燃料ガスの供給量が減少したことに基づいて燃焼触媒部の触媒の劣化を判定するタイミングであることを判断し、そのときの前後における
触媒温度の
上昇幅が設定値よりも少ないときに触媒が劣化したと判断する。
したがって、改質器への燃料ガスの供給量の減少に基づき、1個の温度センサによって触媒の温度を計測することにより触媒の劣化を判断することができ、例えば、燃焼触媒部から排出される排ガス中の一酸化炭素の濃度を測定して触媒が劣化していることを判定しようとする場合に比べ、極めて安価な温度センサを1個用いるだけで触媒の劣化を判定でき、燃焼触媒部での触媒の劣化を安価に検知できる。
また、一酸化炭素の濃度を測定するセンサの場合、そのセンサ自体が燃焼触媒部での高温により熱劣化していても一酸化炭素の濃度が測定されないことで正常であると誤判断し、燃焼触媒部の触媒が劣化したままの状態が不測に継続する虞があるが、温度センサであれば、温度が計測されなければセンサの異常であると即座にわかり、燃焼触媒部の触媒が劣化したままの状態が不測に継続することを回避でき、極めて有用である。
【0010】
請求項2に係る発明の固体酸化物形燃料電池システムは、
前記触媒劣化判定タイミング判断手段が、
システムの運転開始時でかつ前記モジュール温度センサで計測されたモジュール温度が設定温度を超えたことに基づいて劣化判定タイミングであることを判断するモジュール温度判断手段であることを特徴としている。
【0011】
(作用・効果)
請求項2に係る発明の固体酸化物形燃料電池システムの構成によれば、システムの運転開始時には、モジュール温度が設定温度を超えるに伴い、改質器への燃料ガスの供給量を絞り、燃料ガスの供給量が減少することに着目し、改質器への燃料ガスの供給量の減少を、システムの運転開始時でかつモジュール温度が設定温度を超えることによって判断し、これに基づいて劣化判定タイミングであることを判断する。
したがって、システムを制御するために備えられているモジュール温度センサを利用して劣化判定タイミングを判断することができ、1個の温度センサによって触媒の温度を計測することと相俟って、燃焼触媒部での触媒の劣化を安価に検知できる。
【0012】
請求項3に係る発明の固体酸化物形燃料電池システムは、
前記セルスタックに要求される発電電力負荷を計測する負荷計測手段を備え、
前記触媒劣化判定タイミング判断手段が、
前記負荷計測手段で計測される発電電力負荷の減少に基づいて劣化判定タイミングであることを判断する負荷減少判断手段であることを特徴としている。
【0013】
(作用・効果)
請求項3に係る発明の固体酸化物形燃料電池システムの構成によれば、セルスタックに要求される発電電力負荷が減少するに伴い、改質器への燃料ガスの供給量を絞り、燃料ガスの供給量が減少することに着目し、改質器への燃料ガスの供給量の減少を、セルスタックに要求される発電電力負荷の減少によって判断し、これに基づいて劣化判定タイミングであることを判断する。
したがって、セルスタックに要求される発電電力負荷の変動を計測するために備えられている負荷計測手段を利用して劣化判定タイミングを判断することができ、1個の温度センサによって触媒の温度を計測することと相俟って、燃焼触媒部での触媒の劣化を安価に検知できる。
しかも、システムの運転状態において、セルスタックに要求される発電電力負荷が減少するたびに触媒の劣化を判断でき、触媒の劣化を早期に検知できる。
【0014】
請求項4に係る発明の固体酸化物形燃料電池システムは、
前記改質器への燃料ガス供給量を計測するガス供給量センサを備え、
前記触媒劣化判定タイミング判断手段が、
前記ガス供給量センサで計測される燃料ガス供給量の設定時間における減少量が設定量以上のときに劣化判定タイミングであることを判断するガス量減少判断手段であることを特徴としている。
【0015】
(作用・効果)
請求項4に係る発明の固体酸化物形燃料電池システムの構成によれば、改質器への燃料ガスの供給量をガス供給量センサによって直接計測し、改質器への燃料ガス供給量の設定時間における減少量が設定量以上になったことに基づいて劣化判定タイミングであることを判断する。
したがって、1個の温度センサによって触媒の温度を計測することができ、燃焼触媒部での触媒の劣化を安価に検知できる。
しかも、システムの運転状態において、改質器への燃料ガス供給量の設定時間における減少量が設定量以上になるたびに触媒の劣化を判断でき、不測に多量の不純物が混入して触媒が急激に劣化したような場合でも早期に劣化を検知でき、有用である。
【0016】
請求項5に係る発明の固体酸化物形燃料電池システムは、
前記触媒劣化判定手段で触媒が劣化したとの判定に基づいて触媒劣化を報知する触媒劣化報知手段を備えていることを特徴としている。
【0017】
(作用・効果)
請求項5に係る発明の固体酸化物形燃料電池システムの構成によれば、触媒が劣化したことを知ることができ、それに基づいてシステムの運転停止や発電の停止などを促し、更には、触媒の交換を促すなど適切に対処して、燃焼触媒部の触媒が劣化したままの状態が不測に継続することを迅速に回避することができる。
【0018】
請求項6に係る発明の固体酸化物形燃料電池システムは、
前記触媒劣化判定手段で触媒が劣化したとの判定に基づいて前記セルスタックによる発電を停止する発電停止手段を備えていることを特徴としている。
ここでの発電停止手段は、触媒が劣化したとの判定に基づいてセルスタックによる発電を即座に停止する場合に限らず、触媒が劣化したとの判定後、セルスタックやモジュールの温度が所定温度以下になってからセルスタックによる発電を停止するように構成する場合も含む。
【0019】
(作用・効果)
請求項6に係る発明の固体酸化物形燃料電池システムの構成によれば、触媒が劣化したときに発電を自動的に停止し、燃焼触媒部の触媒が劣化したままの状態が不測に継続することを確実に回避することができる。