特許第5941742号(P5941742)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5941742
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月29日
(54)【発明の名称】固体酸化物形燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20160616BHJP
   H01M 8/12 20160101ALI20160616BHJP
   H01M 8/0612 20160101ALI20160616BHJP
   H01M 8/04228 20160101ALI20160616BHJP
   H01M 8/04303 20160101ALI20160616BHJP
【FI】
   H01M8/04 Z
   H01M8/12
   H01M8/06 G
   H01M8/04 Y
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-101038(P2012-101038)
(22)【出願日】2012年4月26日
(65)【公開番号】特開2013-229209(P2013-229209A)
(43)【公開日】2013年11月7日
【審査請求日】2014年12月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093056
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100142930
【弁理士】
【氏名又は名称】戸高 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】岩田 伸
(72)【発明者】
【氏名】安原 健一郎
【審査官】 相羽 昌孝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−028165(JP,A)
【文献】 特開2010−272328(JP,A)
【文献】 特開2010−153064(JP,A)
【文献】 特開2010−080278(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00− 8/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスを水蒸気改質して水素と一酸化炭素とを含む改質ガスに変化させる改質器と、前記改質器からの改質ガスと空気とを反応させて発電するセルスタックと、前記セルスタックから排出されるオフガスを燃焼するオフガス燃焼部と、前記オフガス燃焼部で燃焼しなかった残留物を含有する処理ガスを燃焼処理する燃焼触媒部と、前記改質器と前記セルスタックとを内包するモジュールの温度を制御上の代表温度として計測するモジュール温度センサと、を備えた固体酸化物形燃料電池システムであって、
前記燃焼触媒部の触媒の温度を計測する1個の触媒温度センサと、
前記改質器への燃料ガス供給量が減少したことに基づいて前記燃焼触媒部の触媒の劣化を判定するタイミングであると判断する触媒劣化判定タイミング判断手段と、
前記触媒劣化判定タイミング判断手段で劣化判定タイミングであると判断したときに、その前後における前記触媒温度センサで計測された触媒温度の上昇幅を求める温度変化幅算出手段と、
前記温度変化幅算出手段で求めた上昇幅が設定値以下のときに触媒が劣化したと判定する触媒劣化判定手段と、
を備えたことを特徴とする固体酸化物形燃料電池システム。
【請求項2】
前記触媒劣化判定タイミング判断手段が、
システムの運転開始時でかつ前記モジュール温度センサで計測されたモジュール温度が設定温度を超えたことに基づいて劣化判定タイミングであることを判断するモジュール温度判断手段である請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池システム。
【請求項3】
前記セルスタックに要求される発電電力負荷を計測する負荷計測手段を備え、
前記触媒劣化判定タイミング判断手段が、
前記負荷計測手段で計測される発電電力負荷の減少に基づいて劣化判定タイミングであることを判断する負荷減少判断手段である請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池システム。
【請求項4】
前記改質器への燃料ガス供給量を計測するガス供給量センサを備え、
前記触媒劣化判定タイミング判断手段が、
前記ガス供給量センサで計測される燃料ガス供給量の設定時間における減少量が設定量以上のときに劣化判定タイミングであることを判断するガス量減少判断手段である請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池システム。
【請求項5】
前記触媒劣化判定手段で触媒が劣化したとの判定に基づいて触媒劣化を報知する触媒劣化報知手段を備えている請求項1〜4のいずれかに記載の固体酸化物形燃料電池システム。
【請求項6】
前記触媒劣化判定手段で触媒が劣化したとの判定に基づいて前記セルスタックによる発電を停止する発電停止手段を備えている請求項1〜5のいずれかに記載の固体酸化物形燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料ガスを水蒸気改質して水素と一酸化炭素とを含む改質ガスに変化させる改質器と、その改質器からの改質ガスと空気とを反応させて発電するセルスタックと、セルスタックから排出されるオフガスを燃焼するオフガス燃焼部と、そのオフガス燃焼部で燃焼しなかった残留物を含有する処理ガスを燃焼処理する燃焼触媒部とを備えた固体酸化物形燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の固体酸化物形燃料電池システムでは、セルスタックから排出されるオフガスをオフガス燃焼部で燃焼させ、その燃焼に伴って発生する排熱を改質器での改質に利用するようにしている。
また、オフガス燃焼部から排出される処理ガス中には、微量の一酸化炭素や炭化水素などの燃焼しなかった残留物が含有され、それらの残留物を含有する処理ガスを燃焼触媒部で燃焼処理するようにしている。
【0003】
従来、燃料電池からのオフガスを燃焼器に供給し、その燃焼器から排出される燃焼排ガスの経路に、一酸化炭素濃度も検知可能な接触燃焼式の可燃ガスセンサなどの可燃ガス検知器を設け、原料ガスの組成の相違によって発熱量が異なって燃焼排ガスの温度が相違することに着目して原料ガスの組成を判定できるようにしたものがあった。
また、判定した原料ガスの組成に基づき、最適なS/C値(原料ガス中に含まれる炭素原子数と水蒸気中の水分子との比)と、燃焼器に供給される可燃ガス量に対する燃焼空気量の比率を設定し、原料ガス供給器、水供給器、燃焼空気供給器の操作量を制御するようにしている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−212040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述燃焼触媒部において、異常高温が生じた場合とか、改質器からセルスタックに多量の水素や一酸化炭素が供給されて残留物中の可燃物量が多くなって高温燃焼する場合などに起因して触媒が熱劣化することがあった。また、燃焼空気中に混じった硫黄や珪素などの不純物が触媒の表面に付着して早期に活性が低下することがあった。燃焼触媒部で触媒が劣化すると、有害ガスが大気中に放出されてしまう不都合があった。
【0006】
特許文献1のものでは、燃料電池から排出されるオフガスを燃焼器で燃焼処理すること、その燃焼器から排出される燃焼排ガスの経路に可燃ガス検知器を設けて原料ガスの組成を判定することが開示されているが、触媒の劣化を検知するものでは無い。
従来、燃焼触媒部に供給されるオフガスに含有される水素や一酸化炭素の量が微量のため、燃焼触媒部での触媒の早期劣化については何ら考慮されていなかったのが実情であった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、改質器への燃料ガスの供給量の減少に基づいて燃焼触媒部での触媒の劣化を安価に検知できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、上述のような目的を達成するために、
燃料ガスを水蒸気改質して水素と一酸化炭素とを含む改質ガスに変化させる改質器と、前記改質器からの改質ガスと空気とを反応させて発電するセルスタックと、前記セルスタックから排出されるオフガスを燃焼するオフガス燃焼部と、前記オフガス燃焼部で燃焼しなかった残留物を含有する処理ガスを燃焼処理する燃焼触媒部と、前記改質器と前記セルスタックとを内包するモジュールの温度を制御上の代表温度として計測するモジュール温度センサと、を備えた固体酸化物形燃料電池システムであって、
前記燃焼触媒部の触媒の温度を計測する1個の触媒温度センサと、
前記改質器への燃料ガス供給量が減少したことに基づいて前記燃焼触媒部の触媒の劣化を判定するタイミングであると判断する触媒劣化判定タイミング判断手段と、
前記触媒劣化判定タイミング判断手段で劣化判定タイミングであると判断したときに、その前後における前記触媒温度センサで計測された触媒温度の上昇幅を求める温度変化幅算出手段と、
前記温度変化幅算出手段で求めた上昇幅が設定値以下のときに触媒が劣化したと判定する触媒劣化判定手段と、
を備えたことを特徴としている。
【0009】
(作用・効果)
改質器への燃料ガスの供給量が減少すると、セルスタックでの燃焼温度が低下してオフガス燃焼部に供給されるオフガスの量が増加し、それに伴って燃焼触媒部に供給される処理ガス中に含有される残留物の量も多くなって燃焼触媒部での触媒の温度が高くなる。これに対して、燃焼触媒部で触媒が劣化しているときには、燃焼触媒部での燃焼が不充分になって触媒の温度が高くならず、触媒の温度の上昇度合いが少なくなることを見出した。
請求項1に係る発明の固体酸化物形燃料電池システムの構成によれば、上記知見に着目し、改質器への燃料ガスの供給量が減少したことに基づいて燃焼触媒部の触媒の劣化を判定するタイミングであることを判断し、そのときの前後における触媒温度上昇幅が設定値よりも少ないときに触媒が劣化したと判断する。
したがって、改質器への燃料ガスの供給量の減少に基づき、1個の温度センサによって触媒の温度を計測することにより触媒の劣化を判断することができ、例えば、燃焼触媒部から排出される排ガス中の一酸化炭素の濃度を測定して触媒が劣化していることを判定しようとする場合に比べ、極めて安価な温度センサを1個用いるだけで触媒の劣化を判定でき、燃焼触媒部での触媒の劣化を安価に検知できる。
また、一酸化炭素の濃度を測定するセンサの場合、そのセンサ自体が燃焼触媒部での高温により熱劣化していても一酸化炭素の濃度が測定されないことで正常であると誤判断し、燃焼触媒部の触媒が劣化したままの状態が不測に継続する虞があるが、温度センサであれば、温度が計測されなければセンサの異常であると即座にわかり、燃焼触媒部の触媒が劣化したままの状態が不測に継続することを回避でき、極めて有用である。
【0010】
請求項2に係る発明の固体酸化物形燃料電池システムは、
前記触媒劣化判定タイミング判断手段が、
システムの運転開始時でかつ前記モジュール温度センサで計測されたモジュール温度が設定温度を超えたことに基づいて劣化判定タイミングであることを判断するモジュール温度判断手段であることを特徴としている。
【0011】
(作用・効果)
請求項2に係る発明の固体酸化物形燃料電池システムの構成によれば、システムの運転開始時には、モジュール温度が設定温度を超えるに伴い、改質器への燃料ガスの供給量を絞り、燃料ガスの供給量が減少することに着目し、改質器への燃料ガスの供給量の減少を、システムの運転開始時でかつモジュール温度が設定温度を超えることによって判断し、これに基づいて劣化判定タイミングであることを判断する。
したがって、システムを制御するために備えられているモジュール温度センサを利用して劣化判定タイミングを判断することができ、1個の温度センサによって触媒の温度を計測することと相俟って、燃焼触媒部での触媒の劣化を安価に検知できる。
【0012】
請求項3に係る発明の固体酸化物形燃料電池システムは、
前記セルスタックに要求される発電電力負荷を計測する負荷計測手段を備え、
前記触媒劣化判定タイミング判断手段が、
前記負荷計測手段で計測される発電電力負荷の減少に基づいて劣化判定タイミングであることを判断する負荷減少判断手段であることを特徴としている。
【0013】
(作用・効果)
請求項3に係る発明の固体酸化物形燃料電池システムの構成によれば、セルスタックに要求される発電電力負荷が減少するに伴い、改質器への燃料ガスの供給量を絞り、燃料ガスの供給量が減少することに着目し、改質器への燃料ガスの供給量の減少を、セルスタックに要求される発電電力負荷の減少によって判断し、これに基づいて劣化判定タイミングであることを判断する。
したがって、セルスタックに要求される発電電力負荷の変動を計測するために備えられている負荷計測手段を利用して劣化判定タイミングを判断することができ、1個の温度センサによって触媒の温度を計測することと相俟って、燃焼触媒部での触媒の劣化を安価に検知できる。
しかも、システムの運転状態において、セルスタックに要求される発電電力負荷が減少するたびに触媒の劣化を判断でき、触媒の劣化を早期に検知できる。
【0014】
請求項4に係る発明の固体酸化物形燃料電池システムは、
前記改質器への燃料ガス供給量を計測するガス供給量センサを備え、
前記触媒劣化判定タイミング判断手段が、
前記ガス供給量センサで計測される燃料ガス供給量の設定時間における減少量が設定量以上のときに劣化判定タイミングであることを判断するガス量減少判断手段であることを特徴としている。
【0015】
(作用・効果)
請求項4に係る発明の固体酸化物形燃料電池システムの構成によれば、改質器への燃料ガスの供給量をガス供給量センサによって直接計測し、改質器への燃料ガス供給量の設定時間における減少量が設定量以上になったことに基づいて劣化判定タイミングであることを判断する。
したがって、1個の温度センサによって触媒の温度を計測することができ、燃焼触媒部での触媒の劣化を安価に検知できる。
しかも、システムの運転状態において、改質器への燃料ガス供給量の設定時間における減少量が設定量以上になるたびに触媒の劣化を判断でき、不測に多量の不純物が混入して触媒が急激に劣化したような場合でも早期に劣化を検知でき、有用である。
【0016】
請求項5に係る発明の固体酸化物形燃料電池システムは、
前記触媒劣化判定手段で触媒が劣化したとの判定に基づいて触媒劣化を報知する触媒劣化報知手段を備えていることを特徴としている。
【0017】
(作用・効果)
請求項5に係る発明の固体酸化物形燃料電池システムの構成によれば、触媒が劣化したことを知ることができ、それに基づいてシステムの運転停止や発電の停止などを促し、更には、触媒の交換を促すなど適切に対処して、燃焼触媒部の触媒が劣化したままの状態が不測に継続することを迅速に回避することができる。
【0018】
請求項6に係る発明の固体酸化物形燃料電池システムは、
前記触媒劣化判定手段で触媒が劣化したとの判定に基づいて前記セルスタックによる発電を停止する発電停止手段を備えていることを特徴としている。
ここでの発電停止手段は、触媒が劣化したとの判定に基づいてセルスタックによる発電を即座に停止する場合に限らず、触媒が劣化したとの判定後、セルスタックやモジュールの温度が所定温度以下になってからセルスタックによる発電を停止するように構成する場合も含む。
【0019】
(作用・効果)
請求項6に係る発明の固体酸化物形燃料電池システムの構成によれば、触媒が劣化したときに発電を自動的に停止し、燃焼触媒部の触媒が劣化したままの状態が不測に継続することを確実に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係る固体酸化物形燃料電池システムの実施例1の燃料電池の概略構成を示す全体構成図である。
図2】実施例1のシステム構成を示すブロック図である。
図3】実施例1の制御構成を示すブロック図である。
図4】実施例1のシステムの運転開始時における各種の挙動の説明に供するグラフである。
図5】本発明に係る固体酸化物形燃料電池システムの実施例2の要部の構成を示すブロック図である。
図6】実施例2の制御構成を示すブロック図である。
図7】本発明に係る固体酸化物形燃料電池システムの実施例3の要部の構成を示すブロック図である。
図8】実施例3の制御構成を示すブロック図である
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0022】
図1は、本発明に係る固体酸化物形燃料電池システムの実施例1の燃料電池の概略構成を示す全体構成図であり、改質器1とセルスタック2とを内包するモジュール3に、燃焼触媒部4と熱交換器5が付設され、固体酸化物形燃料電池が構成されている。
燃焼触媒部4は、ハニカムやボールなどにプラチナなどの触媒を担持させて構成されている。
【0023】
改質器1には、図2の固体酸化物形燃料電池システムのシステム構成のブロック図に示すように、脱硫器6が接続され、その脱硫器6に、開閉弁7および流量可変型の燃料ポンプ8を介して燃料ガスが供給されるように構成され、セルスタック2にはインバータなどのパワーコンディショナー9が接続されている。
これにより、燃料ガス中の付臭成分である硫黄分を除去した後に改質器1に供給し、燃料ガスを水蒸気改質して水素と一酸化炭素とを含む改質ガスに変化させ、セルスタック2において改質ガスと空気とを反応させて発電し、発電電力をパワーコンディショナー9で安定した交流電流にして出力するようになっている。
【0024】
セルスタック2と燃焼触媒部5との間にオフガス燃焼部10が介装され、セルスタック2から排出されるオフガスを燃焼し、更に、オフガス燃焼部10で燃焼しなかった微量の一酸化炭素や未燃の炭化水素といった残留物を含有する処理ガスを燃焼触媒部4で燃焼処理し、一酸化炭素や未燃の炭化水素などの有害成分を除去するようになっている。
熱交換器5では、オフガス燃焼部10から燃焼触媒部4を通じて排出される高温排気ガスの熱を回収し、その回収排熱を改質器1などに供給するようになっている。
【0025】
セルスタック2に、モジュール3の温度を制御上の代表温度として計測するモジュール温度センサ11が付設され、燃焼触媒部4にその触媒の温度を計測する1個の触媒温度センサ12が付設され、モジュール温度センサ11と触媒温度センサ12がコントローラ13に接続されている。
【0026】
コントローラ13には、図3の実施例1の制御構成を示すブロック図に示すように、触媒劣化判定タイミング判断手段としてのモジュール温度判断手段14とタイマ15と温度変化幅算出手段16と触媒劣化判定手段17とが備えられ、コントローラ13に、モジュール温度センサ11と、触媒温度センサ12と、運転スイッチ18と、開閉弁7と、空気の供給および停止を行う流量調整可能な給気弁19と、改質器1への改質水の供給および停止を行う流量調整可能な給水弁20と、触媒劣化を報知する触媒劣化報知手段としてのブザー21が接続されている。
【0027】
モジュール温度判断手段14では、モジュール温度センサ11で計測されたモジュール温度が設定温度を超えたことに基づいて劣化判定タイミングであることを判断するようになっている。運転スイッチ18によってシステムの運転が開始されたとき、すなわち、システムの運転開始時でかつモジュール温度判断手段14が劣化判定タイミングであることを判断したときに、触媒温度センサ12で計測された触媒温度を温度変化幅算出手段16に入力させるようになっている。また、タイマ15を経て、例えば、10分や15分など設定時間経過後に触媒温度センサ12で計測された触媒温度を温度変化幅算出手段16に入力させるようになっている。
【0028】
温度変化幅算出手段16では、入力された運転開始時でかつ劣化判定タイミングであると判断したときの触媒温度とその設定時間経過後の触媒温度との差、すなわち、システムの運転開始時でかつ劣化判定タイミングであると判断したときの前後における触媒温度の上昇幅を求めるようになっている。
【0029】
触媒劣化判定手段17では、温度変化幅算出手段16で求めた上昇幅と設定値とを比較して、上昇幅が設定値以下のときに触媒が劣化したと判断し、この判定に基づいて開閉弁7、給気弁19および給水弁20を閉じ、発電を停止するようになっている。
また、触媒劣化判定手段17で触媒が劣化したとの判定に基づいてブザー21を起動し、触媒劣化を報知するようになっている。
【0030】
上記触媒劣化判定手段17で触媒が劣化したと判断し、発電を停止する場合、即時に発電を停止させても良いが、セルスタック2の温度が高いままで冷却が停止してしまうとその支持体が損傷する虞があり、それを回避するために、触媒が劣化したと判断した後、セルスタック2の温度が所定温度まで低下するであろう所定時間経過後に発電を停止するように構成しても良く、このような構成、ならびに、前述の触媒が劣化したとの判定に基づいて開閉弁7、給気弁19および給水弁20を閉じ、発電を停止する構成をして発電停止手段と称する。これらの構成は、後述する実施例2および実施例3でも同様である。
【0031】
上記実施例1では、システムの運転開始時でかつ劣化判定タイミングであると判断したときの前後における触媒温度の上昇幅を求めるために、システムの運転開始時でかつ劣化判定タイミングであると判断したときの触媒温度と、そこから設定時間経過後の触媒温度とを得るようにしているが、例えば、5分ごとなどに触媒温度センサ12で計測された触媒温度を得て最新の温度を記憶させておき、システムの運転開始時でかつ劣化判定タイミングであると判断したときに、その時点で記憶されている触媒温度、すなわち、システムの運転開始時でかつ劣化判定タイミングであると判断したときの直前の触媒温度と、システムの運転開始時でかつ劣化判定タイミングであると判断したときから設定時間経過後の触媒温度とによってシステムの運転開始時でかつ劣化判定タイミングであると判断したときの前後における触媒温度の上昇幅を求めるようにするものでも良い。
また、上昇幅と比較する設定値としては、特定の温度幅でも良いが、例えば、システムの運転開始時でかつ劣化判定タイミングであると判断したときに温度変化幅算出手段16に入力される触媒温度の5%や10%などの値を用いるようにしても良い。これらの構成は、後述する実施例2および実施例3でも同様である。
【0032】
図4は、本発明に係る固体酸化物形燃料電池システムの実施例1のシステムの運転開始時における、モジュール温度(Aで示す)、セルスタック2内での改質ガスの燃焼温度(Bで示す)、触媒温度(Cで示す)、燃料ガス流量(Dで示す)および空気流量(Eで示す)の経時的変化を示すグラフである。
通常、システムの運転を開始してモジュール温度が設定温度T1やT2に到達した場合、安定運転に移行するために、燃料ガス流量(D)および空気流量(E)を絞るために、燃焼温度(B)が一時的に低下するが、セルスタック2からのオフガス量が多くなり、それに伴いオフガス燃焼部10から燃焼触媒部4に供給される残留物の量も多くなって触媒温度(C)が上昇する(Z1やZ2)。
このとき、燃焼触媒部4の触媒が劣化していると、その触媒温度(C)の上昇幅が減少することになる。このことに着目し、システムの運転開始時でかつ劣化判定タイミングであると判断したとき(設定温度がT1やT2に到達したとき)の前後における触媒温度の上昇幅に基づいて、上昇幅が設定値より小さいときに触媒が劣化したと判断するように構成している。
【実施例2】
【0033】
図5は、本発明に係る固体酸化物形燃料電池システムの実施例2の要部の構成を示すブロック図、図6は実施例2の制御構成を示すブロック図であり、実施例1と異なるところは、次の通りである。
すなわち、パワーコンディショナー9と、それに接続される負荷31との間に、セルスタック2に要求される発電電力負荷を計測する負荷計測手段としての電流計32が付設され、その電流計32にコントローラ33が接続されている。
【0034】
コントローラ33には、触媒劣化判定タイミング判断手段としての負荷減少判断手段34とタイマ35と温度変化幅算出手段36と触媒劣化判定手段37とが備えられ、コントローラ33に、開閉弁7と、触媒温度センサ12と、空気の供給および停止を行う流量調整可能な給気弁19と、改質器1への改質水の供給および停止を行う流量調整可能な給水弁20と、触媒劣化を報知する触媒劣化報知手段としてのブザー21が接続されている。
【0035】
負荷減少判断手段34では、電流計32で計測された電流が設定値より減少したこと、すなわち、セルスタック2に要求される発電電力負荷が設定値より減少したことに基づいて劣化判定タイミングであることを判断し、その劣化判定タイミングであることを判断したときに、触媒温度センサ12で計測された触媒温度を温度変化幅算出手段36に入力させるようになっている。また、タイマ35を経て、例えば、10分や15分など設定時間経過後に触媒温度センサ12で計測された触媒温度を温度変化幅算出手段36に入力させるようになっている。
【0036】
温度変化幅算出手段36では、入力された劣化判定タイミングであると判断したときの触媒温度とその設定時間経過後の触媒温度との差、すなわち、セルスタック2に要求される発電電力負荷が設定値より減少したことに基づいて劣化判定タイミングであると判断したときの前後における触媒温度の上昇幅を求めるようになっている。
【0037】
触媒劣化判定手段37では、温度変化幅算出手段36で求めた上昇幅と設定値とを比較して、上昇幅が設定値以下のときに触媒が劣化したと判断し、この判定に基づいて開閉弁7、給気弁19および給水弁20を閉じ、発電を停止するようになっている。
また、触媒劣化判定手段37で触媒が劣化したとの判定に基づいてブザー21を起動し、触媒劣化を報知するようになっている。他の構成は実施例1と同じであり、同一図番を付してその説明は省略する。
【0038】
実施例2において、負荷計測手段としては、電流計32に限らず、例えば、各負荷31に駆動負荷を計測する負荷センサを付設し、それらの負荷センサで計測した負荷を合計してセルスタック2に要求される発電電力負荷を計測するように構成しても良く、各種の構成が適用できる。
【0039】
この実施例2の構成によれば、セルスタック2に要求される発電電力負荷が減少するに伴い、改質器1への燃料ガスの供給量を絞るために燃料ガスの供給量が減少することを利用して劣化判定タイミングであることを判断する。このため、システムの運転状態において、セルスタック2に要求される発電電力負荷が減少するたびに触媒の劣化を判断でき、触媒の劣化を早期に検知できる。
【実施例3】
【0040】
図7は、本発明に係る固体酸化物形燃料電池システムの実施例3の要部の構成を示すブロック図、図8は実施例3の制御構成を示すブロック図であり、実施例1と異なるところは、次の通りである。
すなわち、燃料ポンプ8に、回転数によって改質器1への燃料ガス供給量を計測するガス供給量センサ41が付設され、そのガス供給量センサ41にコントローラ42が接続されている。ガス供給量センサ41としては、燃料ポンプ8と改質器1とを接続する配管を流れる燃料ガスの流量を計測するものでも良い。
【0041】
コントローラ42には、触媒劣化判定タイミング判断手段としてのガス量減少判断手段43とタイマ44と温度変化幅算出手段45と触媒劣化判定手段46とが備えられ、コントローラ42に、触媒温度センサ12と、開閉弁7と、空気の供給および停止を行う流量調整可能な給気弁19と、改質器1への改質水の供給および停止を行う流量調整可能な給水弁20と、触媒劣化を報知する触媒劣化報知手段としてのブザー21が接続されている。
【0042】
ガス量減少判断手段43では、ガス供給量センサ41で計測されたガス供給量を、例えば、1分間などの設定時間ごとに入力し、先に入力されたガス供給量と新たに入力されたガス供給量との差を演算して減少したかどうかを判断するとともに、その設定時間における減少量が設定量を超えているとき、すなわち、燃料ガス供給量の設定時間における減少量が設定量以上のときに、そのことに基づいて劣化判定タイミングであることを判断し、その劣化判定タイミングであることを判断したときに、触媒温度センサ12で計測された触媒温度を温度変化幅算出手段45に入力させるようになっている。また、タイマ44を経て、例えば、10分や15分など設定時間経過後に触媒温度センサ12で計測された触媒温度を温度変化幅算出手段45に入力させるようになっている。
【0043】
温度変化幅算出手段45では、入力された劣化判定タイミングであると判断したときの触媒温度とその設定時間経過後の触媒温度との差、すなわち、燃料ガス供給量の設定時間における減少量が設定量以上になったことに基づいて劣化判定タイミングであると判断したときの前後における触媒温度の上昇幅を求めるようになっている。
【0044】
触媒劣化判定手段46では、温度変化幅算出手段45で求めた上昇幅と設定値とを比較して、上昇幅が設定値以下のときに触媒が劣化したと判断し、この判定に基づいて開閉弁7、給気弁19および給水弁20を閉じ、発電を停止するようになっている。
また、触媒劣化判定手段46で触媒が劣化したとの判定に基づいてブザー21を起動し、触媒劣化を報知するようになっている。他の構成は実施例1と同じであり、同一図番を付してその説明は省略する。
【0045】
この実施例3の構成によれば、システムの運転状態において、改質器1への燃料ガス供給量の設定時間における減少量が設定量以上になるたびに触媒の劣化を判断でき、不測に多量の不純物が混入して触媒が急激に劣化したような場合でも早期に劣化を検知できる。
【0055】
上記実施例では、発電停止手段と触媒劣化報知手段の両方を設けるようにしているが、いずれか一方だけを設けるものでも良い。
【符号の説明】
【0056】
1…改質器
2…セルスタック
3…モジュール
4…燃焼触媒部
10…オフガス燃焼部
11…モジュール温度センサ
12…触媒温度センサ
14…モジュール温度判断手段(触媒劣化判定タイミング判断手段)
16…温度変化幅算出手段
17…触媒劣化判定手段
21…ブザー(触媒劣化報知手段)
32…電流計(負荷計測手段)
34…負荷減少判断手段(触媒劣化判定タイミング判断手段)
36…温度変化幅算出手段
37…触媒劣化判定手段
41…ガス供給量センサ
43…ガス量減少判断手段(触媒劣化判定タイミング判断手段)
45…温度変化幅算出手段
46…触媒劣化判定手段
図1
図2
図3
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図5
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図8