(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら上記の非特許文献1は、圧縮機の高圧軸の駆動力で発電する発電機と低圧軸の駆動力で発電する発電機とをそれぞれ設ける発電システムの概念が示されているに過ぎない。つまり上記の非特許文献1は、圧縮機の高圧軸と低圧軸の両方の駆動力で発電する構成によって、理論上、ジェットエンジンの性能と操作性、サージマージンを維持しつつ、より多くの電力が得られる可能性があることを示しているだけであり、それを実現する具体的な技術手段はほとんど開示されていない。
【0007】
このような状況に鑑み本発明はなされたものであり、その目的は、ジェットエンジンのサージマージンを一定以上確保しつつ、より多くの電力が得られる発電システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
<本発明の第1の態様>
本発明の第1の態様は、ジェットエンジンの圧縮機の高圧軸の回転で発電する第1発電機と、前記圧縮機の低圧軸の回転で発電する第2発電機と、前記第1発電機が発電する電力及び前記第2発電機が発電する電力を複数の負荷装置へ分配する電力分配器と、前記第1発電機の発電量を調整する第1電力調整装置と、前記第2発電機の発電量を調整する第2電力調整装置と、前記ジェットエンジンのサージマージンが一定以上確保されるように、前記第1電力調整装置及び前記第2電力調整装置を制御する電力制御装置と、を備える発電システムである。
【0009】
ジェットエンジンの圧縮機は、第1発電機の発電量が増加すると、第1発電機の発電トルクが増加するため、高圧軸の回転負荷が増加し、それによって高圧軸の回転数が低下する虞が生ずる。ここで発電トルクとは、発電機を駆動(回転)させるのに必要なトルクを意味し、以下、同様とする。そしてジェットエンジンは、圧縮機の高圧軸の回転数が低下するに従って、サージマージンが減少し、サージが発生する虞が高まることになる。つまりジェットエンジンは、第1発電機の発電量が増加するに従って、サージマージンが減少し、サージが発生する虞が高まることになる。他方、逆に第1発電機の発電量が減少すると、第1発電機の発電トルクが減少するため、高圧軸の回転負荷が減少し、それによって高圧軸の回転数が上昇する虞が生ずる。そしてジェットエンジンは、圧縮機の高圧軸の回転数が上昇するに従って、サージマージンが増加し、サージが発生する虞が低下していくことになる。
【0010】
またジェットエンジンの圧縮機は、第2発電機の発電量が増加すると、第2発電機の発電トルクが増加するため、低圧軸の回転負荷が増加する。しかし圧縮機における低圧軸の回転負荷の増加は、ジェットエンジンのサージマージンが増加する方向に作用する。つまりジェットエンジンは、第2発電機の発電量が増加するに従って、サージマージンが増加し、サージが発生する虞が低下していくことになる。他方、逆に第2発電機の発電量が減少すると、第2発電機の発電トルクが減少するため、低圧軸の回転負荷が減少し、それによって低圧軸の回転数が上昇する虞が生ずる。そしてジェットエンジンは、圧縮機の低圧軸の回転数が上昇するに従って、サージマージンが減少し、サージが発生する虞が高まることになる。
【0011】
したがって複数の負荷装置の総電力消費量に対して、第1発電機の発電量の配分と第2発電機の発電量の配分とを調整することによって、複数の負荷装置の電力需要を満たしつつ、一定以上のサージマージンを確保することができる。そして圧縮機の高圧軸の回転とともに低圧軸の回転も利用して発電するため、圧縮機の高圧軸の回転のみで発電する従来の発電システムよりも多くの電力を得ることができる。また圧縮機の低圧軸の回転のみで発電する従来の発電システムよりも多くの電力を得ることができる。
【0012】
これにより本発明の第1の態様によれば、ジェットエンジンのサージマージンを一定以上確保しつつ、より多くの電力が得られる発電システムを提供することができるという作用効果が得られる。
【0013】
<本発明の第2の態様>
本発明の第2の態様は、前述した本発明の第1の態様において、前記電力制御装置は、前記複数の負荷装置の総電力消費量の減少に応じて前記第1電力調整装置を制御する手段と、前記複数の負荷装置の総電力消費量の増加に応じて前記第2電力調整装置を制御する手段と、をさらに含む、ことを特徴とする発電システムである。
【0014】
例えば第1発電機の発電量が瞬間的に増加すると、第1発電機の発電トルクが急激に増加して高圧軸の回転負荷が増加することになる。そのため圧縮機の動作が不安定になり、それによってジェットエンジンの運転状態が不安定になる虞が生ずる。他方、例えば第2発電機の発電量が瞬間的に増加すると、第2発電機の発電トルクが増加して低圧軸の回転負荷が増加することになる。しかし低圧軸の回転負荷の増加は、ジェットエンジンの運転状態としては安全側に作用する。
【0015】
また例えば第2発電機の発電量が瞬間的に減少すると、第2発電機の発電トルクが急激に減少して低圧軸の回転負荷が減少することになる。そのため圧縮機の動作が不安定になり、それによってジェットエンジンの運転状態が不安定になる虞が生ずる。他方、例えば第1発電機の発電量が瞬間的に減少すると、第1発電機の発電トルクが減少して高圧軸の回転負荷が減少することになる。しかし高圧軸の回転負荷の減少は、ジェットエンジンの運転状態としては安全側に作用する。
【0016】
このようなことから本発明の第2の態様は、複数の負荷装置の総電力消費量の減少に応じて第1発電機の発電量を調整するとともに、複数の負荷装置の総電力消費量の増加に応じて第2発電機の発電量を調整する。つまり瞬間的に減少する電力需要に対しては、主に第1発電機から電力が供給され、瞬間的に増加する電力需要に対しては、主に第2発電機から電力が供給されることになる。それによって複数の負荷装置の総電力消費量が瞬間的に大きく変動しても、その電力需要の変動によってジェットエンジンの運転状態が不安定になる虞を低減することができる。したがって本発明の第2の態様によれば、安定したジェットエンジンの運転状態を維持しつつ、瞬間的な電力需要の変動にも対応することが可能になる。
【0017】
<本発明の第3の態様>
本発明の第3の態様は、前述した本発明の第1の態様又は第2の態様において、前記電力制御装置は、前記ジェットエンジンの運転状態又は前記ジェットエンジンを搭載した航空機の飛行条件に基づいて、前記第1電力調整装置を制御する手段をさらに含む、ことを特徴とする発電システムである。
【0018】
ジェットエンジンの運転状態や航空機の飛行条件等の変化に起因する電力消費量の変動は、定常的又は比較的周期が長い緩やかな変動である場合が多い。そのためジェットエンジンの運転状態や航空機の飛行条件等に基づいて第1発電機の発電量を調整しても、ジェットエンジンの運転状態が不安定になる虞はほとんどない。したがって本発明の第3の態様によれば、安定したジェットエンジンの運転状態を維持しつつ、ジェットエンジンの運転状態や航空機の飛行条件等の変化に起因する電力消費量の変動に対応することが可能になる。
【0019】
<本発明の第4の態様>
本発明の第4の態様は、前述した本発明の第1〜第3の態様のいずれかにおいて、前記電力制御装置は、前記ジェットエンジンの回転数を制御するエンジン制御装置へ前記複数の負荷装置の総電力消費量に関する情報を出力する手段をさらに含む、ことを特徴とする発電システムである。
【0020】
例えば複数の負荷装置の総電力消費量が増加すると、圧縮機の圧縮能力が低下することになるため、ジェットエンジンの回転数は低下することになる。この場合、例えばジェットエンジンへ供給する燃料の流量を増加すれば、ジェットエンジンの回転数を上昇させることができる。しかし一般的に燃料流量の増減調整に対するジェットエンジンの回転数の変化は、機械要素の慣性力等によって時間的な遅れが生ずる。したがってジェットエンジンの回転数の低下を検出してから燃料流量を増加したのでは、その時間的な遅れの分だけ、ジェットエンジンの回転数が低下した状態が継続してしまうことになる。また電力消費量が減少するときは、逆にジェットエンジンの回転数が増加した状態が継続してしまうことになる。
【0021】
このようなことから本発明の第4の態様は、ジェットエンジンの回転数を制御するエンジン制御装置へ複数の負荷装置の総電力消費量に関する情報を出力する。それによってエンジン制御装置は、例えば複数の負荷装置の総電力消費量が増加したときには、それに起因してジェットエンジンの回転数が低下する前に、その総電力消費量の情報に基づいて燃料流量の増加等の対応をすることができる。したがって本発明の第4の態様によれば、複数の負荷装置の総電力消費量の増減に起因してジェットエンジンの回転数が変動する虞を低減することができる。
【0022】
<本発明の第5の態様>
本発明の第5の態様は、前述した本発明の第1〜第4の態様のいずれかにおいて、前記複数の負荷装置は、前記ジェットエンジンの燃料ポンプ、油圧ポンプ、潤滑油ポンプを含む、ことを特徴とする発電システムである。
このような特徴によれば、ジェットエンジンの燃料ポンプ、油圧ポンプ、潤滑油ポンプの駆動負荷の変動に起因してサージマージンが減少する虞を低減することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ジェットエンジンのサージマージンを一定以上確保しつつ、より多くの電力が得られる発電システムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
<ジェットエンジンの概略構成>
ジェットエンジンの概略構成について、
図1を参照しながら説明する。
図1は、ジェットエンジン10の内部の概略構成を図示した正面図である。
【0026】
ジェットエンジン10は、ファン11、圧縮機12、燃焼室13、タービン14及び排気口15を備える。ファン11を通じて外部から流入した空気は、圧縮機12で圧縮される。圧縮機12で圧縮された空気は、燃焼室13で燃料が混合されて燃焼し、高圧の燃焼ガスとなる。その高圧の燃焼ガスは、タービン14を回転させながら排気口15を通じて外部へ排出され、ジェットエンジン10の推力となる。タービン14の回転は、圧縮機12へ伝達され、連続的に空気を吸入して圧縮する駆動力となる。
【0027】
圧縮機12は、低圧圧縮部12Aと高圧圧縮部12Bとで構成される。低圧圧縮部12Aは、低圧軸121、複数の動翼(ローターブレード:rotor blade、図示せず)、複数の静翼(ステーターベーン:stator vane、図示せず)を含む。低圧軸121は、タービン14の回転が伝達されて回転する。複数の動翼は、低圧軸121に設けられており、低圧軸121と一体に回転する。複数の静翼は、動翼の間に交互に配置され、ジェットエンジン10のエンジンケースに固定されている。高圧圧縮部12Bは、高圧軸122、複数の動翼、複数の静翼を含む。高圧軸122は、タービン14の回転が伝達されて回転する。複数の動翼は、高圧軸122に設けられており、高圧軸122と一体に回転する。複数の静翼は、動翼の間に交互に配置され、ジェットエンジン10のエンジンケースに固定されている。圧縮機12へ流入した空気は、低圧圧縮部12Aから高圧圧縮部12Bへ通過するに従って段階的に断熱圧縮されていく。
【0028】
<発電システムの構成>
本発明に係る発電システムの構成について、
図2を参照しながら説明する。
図2は、本発明に係る発電システムの構成を図示したブロック図である。
本発明に係る発電システムは、第1発電機21、第2発電機22、第1ギアボックス23、第2ギアボックス24、第1電力調整装置25、第2電力調整装置26、電力検出回路27、電力分配器28及び電力制御装置29を備える。
【0029】
第1発電機21及び第2発電機22は、交流発電機であり、例えば三相交流発電機である。第1発電機21は、第1ギアボックス23を介して圧縮機12の高圧軸122の回転が伝達され、その回転駆動力で発電タービンが回転して発電する。第1ギアボックス23は、一定のギア比で高圧軸122の回転を第1発電機21へ伝達する動力伝達機構である。第1ギアボックス23のギア比は、例えばジェットエンジン10の仕様、第1発電機21の仕様等に応じて設定されている。第2発電機22は、第2ギアボックス24を介して、圧縮機12の低圧軸121の回転が伝達され、その回転駆動力で発電タービンが回転して発電する。第2ギアボックス24は、一定のギア比で低圧軸121の回転を第2発電機22へ伝達する動力伝達機構である。第2ギアボックス24のギア比は、例えばジェットエンジン10の仕様、第2発電機22の仕様等に応じて設定されている。
【0030】
第1電力調整装置25は、第1発電機21の発電量を調整する装置であり、第1電力変換器251、第1電流検出回路252、第1電力調整部253を含む。
第1電力変換器251は、第1発電機21が発電する交流電力を直流電力に変換するコンバータ(図示せず)、及びそのコンバータが出力する直流電力を交流電力に変換するインバータ(図示せず)を含む。コンバータは、例えば整流回路、チョッパ回路、そのチョッパ回路のドライバ等で構成され、交流電力を所望の電圧の直流電力に変換する公知の電力変換回路である。インバータは、例えば半導体スイッチング素子、その半導体スイッチング素子の駆動回路等で構成され、直流電力を所望の電圧及び周波数の交流電力に変換する公知の電力変換回路である。第1電流検出回路252は、例えばカレントトランスやホール素子等を用いた公知の交流電流検出回路であり、第1電力変換器251が出力する交流電力の電流を検出する。第1電力調整部253は、公知のマイコン制御回路であり、第1電流検出回路252の検出電流に基づいて第1電力変換器251を制御し、それによって第1発電機21の発電量を調整する。
【0031】
第2電力調整装置26は、第2発電機22の発電量を調整する装置であり、第2電力変換器261、第2電流検出回路262、第2電力調整部263を含む。
第2電力変換器261は、第1電力変換器251と同様に、第2発電機22が発電する交流電力を直流電力に変換するコンバータ(図示せず)、及びそのコンバータが出力する直流電力を交流電力に変換するインバータ(図示せず)を含む。第2電流検出回路262は、第1電流検出回路252と同様に例えばカレントトランスやホール素子等を用いた公知の交流電流検出回路であり、第2電力変換器261が出力する交流電力の電流を検出する。第2電力調整部263は、第1電力調整部253と同様に公知のマイコン制御回路であり、第2電流検出回路262の検出電流に基づいて第2電力変換器261を制御し、それによって第2発電機22の発電量を調整する。
【0032】
電力検出回路27は、第1発電機21及び第2発電機22の発電量を検出し、その発電量の合算値を電力制御装置29へ出力する。電力分配器28は、第1発電機21及び第2発電機22が発電する電力を複数の負荷装置へ分配する。電力制御装置29は、公知のマイコン制御回路であり、第1電力調整装置25及び第2電力調整装置26を制御する。
【0033】
複数の負荷装置は、機体・エンジンの電源31、潤滑油ポンプモータ32、燃料ポンプモータ33、油圧ポンプモータ34である。機体・エンジンの電源31は、例えばジェットエンジン10を備える航空機の操縦室の電子機器、客室の空調設備、照明設備の電源、ジェットエンジン10の電源系統等である。潤滑油ポンプモータ32は、ジェットエンジン10の潤滑油ポンプを駆動する電動モータである。燃料ポンプモータ33は、ジェットエンジン10の燃料ポンプを駆動する電動モータである。油圧ポンプモータ34は、ジェットエンジン10の油圧ポンプを駆動する電動モータである。エンジン制御装置35は、ジェットエンジン10の回転数等を制御するとともに、電力制御装置29との間でデータの送受信を行う装置であり、例えば航空機用のエンジン制御装置として公知のFADEC(Full Authority Digital Electronics Control)である。
【0034】
<発電システムの電力制御>
以下、本発明に係る発電システムの電力制御について、
図3〜
図5を参照しながら説明する。
【0035】
ジェットエンジン10の圧縮機12は、第1発電機21の発電量が増加すると、第1発電機21の発電トルクが増加するため、高圧軸122の回転負荷が増加し、それによって高圧軸122の回転数が低下する虞が生ずる。そしてジェットエンジン10は、圧縮機12の高圧軸122の回転数が低下するに従って、サージマージンが減少し、サージが発生する虞が高まることになる。つまりジェットエンジン10は、第1発電機21の発電量が増加するに従って、サージマージンが減少し、サージが発生する虞が高まることになる。
【0036】
またジェットエンジン10の圧縮機12は、第2発電機22の発電量が増加すると、第2発電機22の発電トルクが増加するため、低圧軸121の回転負荷が増加する。しかし圧縮機12における低圧軸121の回転負荷の増加は、ジェットエンジン10のサージマージンが増加する方向に作用する。つまりジェットエンジン10は、第2発電機22の発電量が増加するに従って、サージマージンが増加し、サージが発生する虞が低下していくことになる。
【0037】
図3は、第1発電機21及び第2発電機22の発電量の調整手順を図示したフローチャートである。当該フローチャートに図示した手順は、電力制御装置29において定周期で繰り返し実行される手順である。
【0038】
電力制御装置29は、電力検出回路27が検出する複数の負荷装置の総電力消費量、電力系統損失、第1発電機21及び第2発電機22の電気的特性等から総発電トルクを演算する。ここで総発電トルクとは、総電力消費量に相当する電力を発電するのに必要な発電トルクを意味し、換言すれば、第1発電機21の発電トルクと第2発電機22の発電トルクの総和を意味する。さらに電力制御装置29は、その総発電トルク、エンジン制御装置35から取得するジェットエンジン10の運転状態や航空機の飛行条件等に基づいて、サージマージンを演算する。そして電力制御装置29は、ジェットエンジン10のサージマージンが一定以上確保されるように、第1電力調整装置25及び第2電力調整装置26を制御する。
【0039】
より具体的には電力制御装置29は、サージマージンの基準値及び下限値を予め設定した上で、まずサージマージンが下限値以下か否かを判定する(ステップS1)。サージマージンが下限値以下である場合には(ステップS1でYes)、第2発電機22の発電量を増加させ、その分だけ第1発電機21の発電量を減少させる(ステップS2)。それによってサージマージンが増加することになる。他方、サージマージンが下限値を超えている場合には(ステップS1でNo)、つづいてサージマージンが基準値を超えているか否かを判定する(ステップS3)。サージマージンが基準値を超えている場合には(ステップS3でYes)、第1発電機21の発電量を増加させ、その分だけ第2発電機22の発電量を減少させる(ステップS4)。それによってサージマージンが減少することになる。サージマージンが基準値以下である場合には(ステップS4でNo)、そのまま当該手順を終了する。
【0040】
このように第1発電機21の発電量の配分と第2発電機22の発電量の配分を調整することによって、複数の負荷装置の電力需要を満たしつつ、一定以上(下限値以上)のサージマージンを確保することができる。そして圧縮機12の高圧軸122の回転とともに低圧軸121の回転も利用して発電するため、圧縮機12の高圧軸122の回転のみで発電する従来の発電システムよりも多くの電力を得ることができる。
【0041】
また前述したように、ジェットエンジン10は、第1発電機21の発電量が増加するに従って、第1発電機21の発電トルクが増加し、それによってサージマージンが減少する。したがって例えば第1発電機21の発電トルクとサージマージンとの相関関係を予め特定し、第1発電機21の発電トルクが一定のトルク以下になるように、第1発電機21の発電量の配分と第2発電機22の発電量の配分を調整してもよい。
【0042】
このようにして本発明によれば、ジェットエンジン10のサージマージンを一定以上確保しつつ、より多くの電力が得られる発電システムを提供することができる。
【0043】
図4は、第1発電機21の発電量を調整する手順を図示したフローチャートである。
図5は、第1発電機21及び第2発電機22の発電量を調整する手順を図示したフローチャートである。
図4及び
図5に図示したフローチャートの手順は、電力制御装置29において定周期で繰り返し実行される手順である。
【0044】
ジェットエンジン10の運転状態や航空機の飛行条件等の変化に起因する電力消費量の変動は、定常的又は比較的周期が長い緩やかな変動である場合が多い。したがって本発明に係る発電システムにおいては、ジェットエンジン10の運転状態や航空機の飛行条件等に基づいて第1発電機21の発電量を調整するのが好ましい。これは本発明に必須の構成要件ではないが、このような発電量の調整を行うことによって、安定したジェットエンジン10の運転状態を維持しつつ、ジェットエンジン10の運転状態や航空機の飛行条件等の変化に起因する電力消費量の変動に対応することが可能になる。
【0045】
より具体的には電力制御装置29は、ジェットエンジン10の運転状態や航空機の飛行条件等の情報をエンジン制御装置35から取得し(
図4のステップS11)、その情報に基づいて第1電力調整装置25を制御することにより第1発電機21の発電量を調整する(
図4のステップS12)。それによって定常的又は比較的周期が長い緩やかな変動しか生じない電力需要に対しては、主に第1発電機21から電力が供給されることになる。
【0046】
他方、例えば航空機の客室内の空調設備等は、電力消費量が瞬間的に大きく変動することがある。そのため複数の負荷装置の総電力消費量は、瞬間的に大きく変動する可能性がある。そして例えば第1発電機21の発電量が瞬間的に増加すると、第1発電機21の発電トルクが急激に増加し、圧縮機12の高圧軸122の回転負荷が増加することになる。そのため圧縮機12の動作が不安定になり、それによってジェットエンジン10の運転状態が不安定になる虞が生ずる。他方、例えば第2発電機22の発電量が瞬間的に増加すると、第2発電機22の発電トルクが増加し、圧縮機12の低圧軸121の回転負荷が増加することになる。しかし圧縮機12の低圧軸121の回転負荷の増加は、ジェットエンジン10の運転状態としては安全側に作用する。
【0047】
また例えば第2発電機22の発電量が瞬間的に減少すると、第2発電機22の発電トルクが急激に減少し、圧縮機12の低圧軸121の回転負荷が減少することになる。そのため圧縮機12の動作が不安定になり、それによってジェットエンジン10の運転状態が不安定になる虞が生ずる。他方、例えば第1発電機21の発電量が瞬間的に減少すると、第1発電機21の発電トルクが減少し、圧縮機12の高圧軸122の回転負荷が減少することになる。しかし圧縮機12の高圧軸122の回転負荷の減少は、ジェットエンジン10の運転状態としては安全側に作用する。
【0048】
このようなことから本発明に係る発電システムにおいては、複数の負荷装置の総電力消費量の減少に応じて第1発電機21の発電量を調整するとともに、複数の負荷装置の総電力消費量の増加に応じて第2発電機22の発電量を調整するのが好ましい。これは本発明に必須の構成要件ではないが、このような発電量の調整を行うことによって、安定したジェットエンジン10の運転状態を維持しつつ、瞬間的な電力需要の変動に対応することが可能になる。
【0049】
より具体的には電力制御装置29は、複数の負荷装置の総電力消費量の変動を検出し(
図5のステップS21)、その検出した総電力消費量の変動が総電力消費量の減少か否かを判定する(
図5のステップS22)。そして総電力消費量の減少である場合には(
図5のステップS22でYes)、その総電力消費量の減少に応じて第1電力調整装置25を制御することにより第1発電機21の発電量を調整する(
図5のステップS23)。他方、総電力消費量の増加である場合には(
図5のステップS22でNo)、その総電力消費量の増加に応じて第2電力調整装置26を制御することにより第2発電機22の発電量を調整する(
図5のステップS24)。すなわち瞬間的に減少する電力需要に対しては、主に第1発電機21から電力が供給され、瞬間的に増加する電力需要に対しては、主に第2発電機22から電力が供給されることになる。それによって複数の負荷装置の総電力消費量が瞬間的に大きく変動しても、その電力需要の変動によってジェットエンジン10の運転状態が不安定になる虞を低減することができる。
【0050】
<他の実施例、変形例>
本発明は、上記説明した実施例に特に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変形が可能であることは言うまでもない。
【0051】
例えば複数の負荷装置の総電力消費量が増加すると、圧縮機12の圧縮能力が低下することになるため、ジェットエンジン10の回転数は低下することになる。この場合、例えばジェットエンジン10へ供給する燃料の流量を増加すれば、ジェットエンジン10の回転数を上昇させることができる。しかし一般的に燃料流量の増減調整に対するジェットエンジン10の回転数の変化は、機械要素の慣性力等によって時間的な遅れが生ずる。したがってジェットエンジン10の回転数の低下を検出してから燃料流量を増加したのでは、その時間的な遅れの分だけ、ジェットエンジン10の回転数が低下した状態が継続してしまうことになる。
【0052】
このようなことから本発明に係る発電システムは、複数の負荷装置の総電力消費量に関する情報を電力制御装置29からエンジン制御装置35へ出力するのが好ましい。エンジン制御装置35は、例えば複数の負荷装置の総電力消費量が増加したときには、それに起因してジェットエンジン10の回転数が低下する前に、その総電力消費量の情報に基づいて燃料流量の増加等の対応をすることができる。それによって複数の負荷装置の総電力消費量の増減に起因してジェットエンジン10の回転数が変動する虞を低減することができる。