特許第5941759号(P5941759)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5941759
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月29日
(54)【発明の名称】ブーム散布装置
(51)【国際特許分類】
   A01M 7/00 20060101AFI20160616BHJP
   A01C 15/00 20060101ALI20160616BHJP
【FI】
   A01M7/00 J
   A01C15/00 F
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-130291(P2012-130291)
(22)【出願日】2012年6月7日
(65)【公開番号】特開2013-252105(P2013-252105A)
(43)【公開日】2013年12月19日
【審査請求日】2015年6月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】509264132
【氏名又は名称】株式会社やまびこ
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人 英知国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100118898
【弁理士】
【氏名又は名称】小橋 立昌
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 秀光
【審査官】 竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭55−035901(JP,U)
【文献】 実開平02−125776(JP,U)
【文献】 特開昭58−024376(JP,A)
【文献】 実開昭60−053368(JP,U)
【文献】 米国特許第4044952(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 7/00
A01C 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体(T)の後方に配備される機体(10)と、
前記機体(10)に枢支され、前記走行機体(T)の進行方向に交差する側方の展開位置と前記走行機体(T)の進行方向に沿った先端側が斜め上方に向く折りたたみ位置との間で開閉するブーム開閉部材(11)と、
前記ブーム開閉部材(11)に着脱自在に連結され、長手方向に沿って複数の散布孔(13)を備えたブーム(12)とを備え、
前記ブーム開閉部材(11)は前記ブーム(12)の被連結部(12A)を連結する連結部(11A)を備え、
前記ブーム(12)の被連結部(12A)は、前記折りたたみ位置にある前記ブーム開閉部材(11)に対して前記ブーム(12)を上下に揺動する枢支軸(15)を備え、前記ブーム開閉部材(11)の展開位置では、前記ブームを前記枢支軸(15)周りに後方斜め上方に揺動自在にしたことを特徴とするブーム散布装置(1)。
【請求項2】
前記被連結部(12A)は、前記ブーム(12)に沿って延設される棒状部(12A1)であり、
前記連結部(11A)は、前記棒状部(12A1)が挿入される鞘状部(11A1)であることを特徴とする請求項1記載のブーム散布装置(1)。
【請求項3】
前記ブーム開閉部材(11)は前記機体(10)に対して前記展開位置と前記折りたたみ位置でそれぞれ弾性的に固定されており、
前記ブーム(12)は前記ブーム開閉部材(11)の長手方向に沿った連結状態で当該ブーム開閉部材(11)に弾性的に固定されていることを特徴とする請求項1又は2記載のブーム散布装置(1)。
【請求項4】
前記ブーム開閉部材(11)が前記機体(10)に弾性的に固定される弾性力を前記ブーム(12)が前記ブーム開閉部材(11)に弾性的に固定される弾性力より大きくしたことを特徴とする請求項3記載のブーム散布装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブーム散布装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ブームスプレーヤなどのブーム散布装置は、トラクタ直装式では走行機体(トラクタ)の後方に配備され、自走式では走行機体の前方又は後方に配備される。このブーム散布装置は、走行機体の進行方向に交差する側方に向けて延設されるブームを備え、圃場内の走行工程でブーム長さに対応した広面積の散布作業を行うことができる。
【0003】
ブーム散布装置は、一般に、非作業時にブームを所定の格納位置に折りたたむ機構を備えている。この折りたたみ機構としては、各種の形態が知られているが、比較的簡略な機構として走行機体の進行方向に交差する側方に向けて延設されるブームを走行機体の進行方向に沿った方向に向けるように略90°折りたたむものが知られている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−191729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
走行機体の後方に配備されるブーム散布装置では、ブームを走行機体の進行方向に沿った方向に折りたたむ場合に、走行機体との干渉や走行機体への乗降性を考慮すると、前方斜め上方に向けてブームを折りたたむことが求められる。このためには、ブーム折りたたみ用のヒンジ軸を垂直からやや後方に倒れるように傾斜させることが必要になる。しかしながら、このようにヒンジ軸を傾斜させると、このヒンジ軸の周りにブームを回動させるリリース機構を設けた場合に、ブームが障害物に接触してリリース機構が働くとブームの先端側が圃場面に近づき、作物を傷付けたりブーム自体が圃場面に接触して損傷したりする不具合が生じる。これを避けるために、リリース機構として折りたたみとは別にヒンジ軸を設けることが行われており、構造が複雑になる問題があった。
【0006】
一方、ブームを折りたたんだ状態であっても、ブームの長さはブーム散布装置の本体に対してかなり長いのが現状であり、ブーム散布装置を倉庫などに収納する場合にブームの突出分を納めるための大きな収納スペースが必要になる。これに対しては、ブームをブーム散布装置の本体から取り外して収納することも考えられるが、ブームを取り外すための工具が必要になり、煩雑な取り外し作業に多大な労力を要する問題があった。
【0007】
本発明は、このような問題に対処することを課題の一例とするものである。すなわち、走行機体の後方に配備されるブーム散布装置において、比較的簡単な構造で、走行機体の前方斜め上方に向けてブームを折りたたみ、且つ障害物に対するリリース時にもブームの先端が圃場面に近づくのを回避することができること、工具を用いることなく、簡単な作業でブームを取り外すことができ、ブームを取り外すことでブーム散布装置の収納スペースを削減することができること、等が本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するために、本発明によるブーム散布装置は、以下の構成を少なくとも具備するものである。
【0009】
走行機体の後方に配備される機体と、前記機体に枢支され、前記走行機体の進行方向に交差する側方の展開位置と前記走行機体の進行方向に沿った先端側が斜め上方に向く折りたたみ位置との間で開閉するブーム開閉部材と、前記ブーム開閉部材に着脱自在に連結され、長手方向に沿って複数の散布孔を備えたブームとを備え、前記ブーム開閉部材は前記ブームの被連結部を連結する連結部を備え、前記ブームの被連結部は、前記折りたたみ位置にある前記ブーム開閉部材に対して前記ブームを上下に揺動する枢支軸を備え、前記ブーム開閉部材の展開位置では、前記ブームを前記枢支軸周りに後方斜め上方に揺動自在にしたことを特徴とするブーム散布装置。
【発明の効果】
【0010】
このような特徴を有するブーム散布装置は、ブーム開閉部材に連結されたブームを走行機体の前方斜め上方に向けて折りたたむことができ、また、ブームの展開位置での障害物に対するリリース時には、ブームの被連結部のブームに対する枢支によってブームの先端を斜め上方に向けて逃がすことができる。これによって、リリース時にブームの先端が圃場面に近づくのを回避することができる。また、ブームはブーム開閉部材に対して着脱自在に連結されているので、非使用時にはブーム開閉部材から長尺なブームを取り外して、大きなスペースを要することなくブーム散布装置を収納することができる。
【0011】
この際、ブームに枢支される被連結部がブームの着脱構造とブームのリリース構造を兼用することになるので、比較的簡単な構造で、ブームの着脱とブームの良好なリリース機能を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係るブーム散布装置の全体構造を示した説明図である。
図2】本発明の実施形態に係るブーム散布装置の具体的な形態例を示した説明図である。
図3】本発明の実施形態に係るブーム散布装置の具体的な形態例を示した説明図である。
図4】本発明の実施形態に係るブーム散布装置の機能を示した説明図である。
図5】本発明の実施形態に係るブーム散布装置の機能を示した説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。図1は、本発明の実施形態に係るブーム散布装置の全体構造を示した説明図である。図示においては走行機体(例えば、トラクタ)Tに直装された状態のブーム散布装置1を示している。ブーム散布装置1は、走行機体Tの後方に配備される機体10と、機体10に枢支されるブーム開閉部材11と、ブーム開閉部材11に着脱自在に連結されるブーム12とを備えている。
【0014】
ブーム散布装置1の機体10には、基本構成として、薬液などを貯留するタンク20と、タンク20内の薬液などを図示省略した散布ホースに圧送するポンプ21が搭載されている。ブーム12には、散布ホースを介して圧送される薬液等を散布する散布孔(散布ノズル)13が設けられている。散布孔13は、ブーム12の長手方向に沿って複数配備されている。図示の例では、機体10にはトラクタTの3点リンクに連結するためのヒッチ機構22が装備されている。図示のブーム散布装置1は、トラクタ直装式の例を示しているが、これに限らず、本発明の実施形態に係るブーム散布装置1は自走式などであってもよい。また、図示の例では機体10にキャスター23が装備されている。
【0015】
ブーム開閉部材11は、走行機体Tの進行方向に交差する側方の展開位置と走行機体Tの進行方向に沿った先端側が斜め上方に向く折りたたみ位置との間で開閉する。図1に示した状態は、折りたたみ位置に固定された非作業状態を示している。ブーム開閉部材11は、機体10に対して走行機体Tの進行方向後方に倒れるように傾斜した第1枢支軸14を備えている。また、ブーム開閉部材11に着脱自在に連結されるブーム12は、第2枢支軸15によって、図1に示した折りたたみ位置にあるブーム開閉部材11に対して上下に揺動自在に枢支されている。
【0016】
図2及び図3は、本発明の実施形態に係るブーム散布装置の具体的な形態例を示した説明図である。図2は、ブーム開閉部材11に対してブーム12を取り外した状態を示しており、図3は、ブーム開閉部材11に対してブーム12を装着した状態を示している。機体10に対して第1枢支軸14によって開閉自在に枢支されたブーム開閉部材11は、ブーム12の被連結部12Aを連結する連結部11Aを備えている。図示の例では、被連結部12Aは、ブーム12に沿って延設される棒状部12A1であり、連結部11Aは、棒状部12A1が挿入される鞘状部11A1である。ここで、図示の例では、ブーム12は、ブーム本体12Bとブーム保持体12Cを備えており、前述した被連結部12A(棒状部12A1)は、その基端がブーム保持体12Cに第2枢支軸15を介して枢支されている。このように、被連結部12A(棒状部12A1)は、折りたたみ位置にあるブーム開閉部材11に対してブーム12を上下に揺動する第2枢支軸15を備えている。
【0017】
ブーム開閉部材11は、機体10に対して展開位置と折りたたみ位置でそれぞれ弾性的に固定されている。具体的には、ブーム開閉部材11と機体10とは第1引張バネ17で互いに連結されており、第1引張バネ17の引っ張りに抗してブーム開閉部材11を展開させて、ある程度展開させると第1引張ばね17の引張力がブーム開閉部材11の展開位置に向けて作用する。
【0018】
一方、ブーム12はブーム開閉部材11の長手方向に沿った連結状態でブーム開閉部材11に弾性的に固定されている。具体的には、ブーム12(或いはブーム保持体12C)の基端側とブーム開閉部材11の基端側が第2引張ばね18で互いに連結されており、ブーム12はブーム開閉部材11の長手方向に沿って保持されている。図示の例では、第2引張ばね18は一端がブーム保持体12Cの基端に取り付けられ、他端が取り付け治具18Aを介してブーム開閉部材11に取り付けられている。
【0019】
ここで、ブーム開閉部材11が機体10に弾性的に固定される弾性力を、ブーム12がブーム開閉部材11に弾性的に固定される弾性力より大きくしている。すなわち、第1引張ばね17の弾性力(弾性定数)を第2引張ばね18の弾性力(弾性定数)よりも大きくしている。これによって、ブーム12の第2枢支軸15周りの回動(上下動)は比較的小さい力で行うことができ、ブーム開閉部材11を介したブーム12の展開動作は比較的大きな力を要するようにしている。ブーム12の展開動作は手動で行うもの、油圧や電動アクチュエータを介して行うものの何れであってもよい。
【0020】
図4及び図5は、本発明の実施形態に係るブーム散布装置の機能を示した説明図である。図4に示すように、ブーム開閉部材11の折りたたみ位置では、第2枢支軸15は略水平状態になっている。これによって、ブーム12(ブーム保持体12C)を第2枢支軸15周りに揺動させて、長いブーム12の先端側を上下に揺動させることができる。このようなブーム12の揺動機構を設けることで、走行機体Tの乗車位置に長いブーム12の先端側が干渉する場合であっても、ブーム12を簡易に交わして走行機体Tに対しての乗降を行うことができる。この際のブーム12の揺動動作は第2引張ばね18に抗して行われることになるが、第2引張ばね18の弾性力を比較的小さくすることで、簡易にブーム12を交わすことができる。
【0021】
図5は、本発明の実施系に係るブーム散布装置のリリース機能を示した説明図である。ブーム12(ブーム開閉部材11)の展開位置では、第1枢支軸14は、垂直に対して走行機体Tの進行方向後方に倒れており、第2枢支軸15は、垂直に対して走行機体Tの進行方向前方に倒れている。これによって、ブーム開閉部材11の展開位置では、ブーム12は第2枢支軸15の周りに後方斜め上方に揺動自在になっている。
【0022】
これにより、ブーム開閉部材11の展開位置で行われる作業中にブーム12に障害物が当たった場合、ブーム開閉部材11の先端はやや下がるようにリリースするが、ブーム開閉部材11に枢支されたブーム12の先端はやや上がるようにリリースする。これによって、ブーム12の先端を上方に向ける折りたたみ状態を得ることができると共に、ブーム12の展開状態においては、障害物に当たった時のリリース時にブーム12の先端が圃場に近づくのを回避することができる。
【0023】
このような機能を備えた本発明の実施形態に係るブーム散布装置1は、先ず、ブーム12をブーム開閉部材11に対して着脱自在に連結しているので、ブーム散布装置1の収納時には、ブーム12を取り外すことで大きなスペースを要することなくブーム散布装置1を収納することが可能になる。この際、ブーム12側の被連結部12Aを棒状部12A1とし、ブーム開閉部材11側の連結部11Aを鞘状部11A1にすることで、棒状部12A1を鞘状部11A1に対して抜き差しするという簡単な操作で、ブーム12の着脱を行うことができる。これによって特に工具を用いることなく、簡易に着脱作業を行うことができる。
【0024】
そして、前述したブーム12の着脱機構の一部を担う被連結部12A(棒状部12A1)に第2枢支軸15を設けることで、ブーム12の展開時におけるリリース機構の一部を構成しているので、簡単な構成でリリース機構における第2枢支軸15を設けることができる。また、第2枢支軸15の角度は、ブーム開閉部材11の折りたたみ位置では略水平状態となり、ブーム開閉部材11の展開位置では垂直に対して前方に倒れた状態になるので、ブーム12の折りたたみ状態では、長いブーム12を上下に交わす機能が得られ、ブーム12の展開時にはリリース時のブーム12の方向を上方に規制する機能が得られる。このように、一つの第2枢支軸15がブーム12の状態に応じて異なる機能を発揮するので、簡単な構造で効果的な機能を得ることができる。
【0025】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。上述の各図で示した実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの記載内容を組み合わせることが可能である。また、各図の記載内容はそれぞれ独立した実施形態になり得るものであり、本発明の実施形態は各図を組み合わせた一つの実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0026】
1:ブーム散布装置,10:機体,11:ブーム開閉部材,11A:連結部,
11A1:鞘状部,12:ブーム,12A:被連結部,12A1:棒状部,
12B:ブーム本体,12C:ブーム保持体,13:散布孔,
14:第1枢支軸,15:第2枢支軸,
17:第1引張ばね,18:第2引張ばね,
20:タンク,21:ポンプ,22:ヒッチ機構,23:キャスター
図1
図2
図3
図4
図5