特許第5941766号(P5941766)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5941766
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月29日
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
   B60Q 3/02 20060101AFI20160616BHJP
【FI】
   B60Q3/02 J
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-141946(P2012-141946)
(22)【出願日】2012年6月25日
(65)【公開番号】特開2014-4918(P2014-4918A)
(43)【公開日】2014年1月16日
【審査請求日】2014年12月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】504136889
【氏名又は名称】株式会社ファルテック
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100122312
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 正優
(72)【発明者】
【氏名】平山 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】金井 幸治
【審査官】 石田 佳久
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/035171(WO,A2)
【文献】 特開2008−195374(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源と、
前記熱源からの熱を伝える熱伝導部と、
前記熱伝導部より伝えられた温度によって変色する示温部材と、
前記示温部材上を覆うようにしてアウターケースに嵌合し、前記アウターケースとにより、前記熱源、前記熱伝導部および前記示温部材を挟み込む光透過性部材と、
を備え、
前記熱伝導部は、前記熱源から発生する熱によって加熱された空気を循環させる空間部を有し
前記空間部が、前記熱源に近い位置から前記熱源から遠ざかる方向へ延在している
ことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記空間部が、隣接部材との間に隙間を形成する凹状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記熱伝導部の幅が前記熱源から離れるにしたがって狭くなる形状とされていることを特徴とする請求項1または2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記熱伝導部の長手方向両側に前記熱源が対向配置されていることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項5】
前記熱源が、前記熱伝導部の前記空間部内に配置されていることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項6】
複数の前記空間部を有し、各空間部の少なくとも一部が互いに連通していることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項7】
前記熱源が光源であることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項8】
自動車のサイドステップ部に設置されるキッキングプレートに用いられることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用の表示装置として、夜間における車両室内外へのユーザの乗車や降車をスムーズにするために、ドアの開閉時に車内あるいは車外へとユーザを誘導するものが知られている。
【0003】
例えば、車体のサイドドアの開口縁部に設けたサイドシル上に保護部材として設けられるキッキングプレートに照明機能を付与し、ユーザに乗降位置を知らせることによって夜間や暗所な場所におけるユーザの移動を容易にすることができる。
特許文献1には、複数のLEDをこれらと電気的に接続された制御回路により、予め記憶された制御プログラムに基づいて、発光色が異なる発光状態をそれぞれ独立して変化可能にした構成が記載されている。
特許文献2には、車両内の床に設けられた案内表示部のLEDの輝度増減や発光色の変化など、表示状態の変化により乗降するユーザの移動方向を示唆し、ユーザが安全かつ円滑に乗降口に移動できるように案内することのできる構成が記載されている。
特許文献3には、ドアの開閉動作と光源の点灯および消灯を連動させ、ドアを開けることにより、光源が一定時間だけ点滅または色変化した後、通常の点灯状態に切り替わるようにした構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−116315号公報
【特許文献2】特開2011−093469号公報
【特許文献3】特開2005−238859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の構成では、多色表現のために色の異なるLEDを揃える必要がある。さらに、各LEDの発光色を制御する制御プログラムを作成し、制御回路を配置するスペースも確保しなければならない。この場合、制御プログラムにより決められたパターンでのみ発光色が変化することになるため、表現が単一的なものになってしまう。
【0006】
また、表現可能な色は光源の発光色に依存するため、多色を表現しようとすると光源の数を増やさなくてはならなくなり、またそのための増設スペースもさらに必要になる。このため、車両のサイドステップ部分に設置されるキッキングプレートにこのような多数の光源及び制御回路を組み込んだ場合、厚みが増して審美的外観に影響を及ぼすおそれがある。また、配置スペースの問題からキッキングプレートに組み込むことが困難になるという問題があった。
【0007】
本願発明はこのような従来の問題点を鑑みたものであり、低コストかつ省スペースで多色表現を可能にするとともに、より表示応答性に優れた表示装置を提供することを目的の一つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の表示装置は、熱源と、前記熱源からの熱を伝える熱伝導部と、前記熱伝導部より伝えられた温度によって変色する示温部材と、前記示温部材上を覆うようにしてアウターケースに嵌合し、前記アウターケースとにより、前記熱源、前記熱伝導部および前記示温部材を挟み込む光透過性部材と、を備え、前記熱伝導部は、前記熱源から発生する熱によって加熱された空気を循環させる空間部を有していることを特徴とする。
【0009】
これによれば、温度によって変色する示温部材を用いることによって、多色多様な表示を容易に実現することができる。また、従来のように多色表現のために発光色の異なる複数のLEDを用意する必要もない。また、これらを複雑に制御する必要もないため、従来よりも簡単な構成で多色な表現が可能になるとともにコストも削減できる。さらに、熱伝導部の空間部により、熱源から発生する熱(熱源によって加熱された空気)を循環させることで熱の伝導速度を加速させることができる。これにより、熱伝導部の領域によって温度上昇にムラが生じるのを抑えて、示温部材全体を素早く均一に加熱することが可能となる。その結果、表示応答性に優れた表示装置となる。
【0010】
また、前記空間部が、隣接部材との間に隙間を形成する凹状に形成されている構成としてもよい。
これによれば、空間部の形状を隣接部材との間に隙間を形成するべく凹状にすることで、アウターケースに構成部材を収容すれば熱伝導部と隣接部材との間に自ずと空間が形成されることになる。これにより、熱源によって加熱された空気が空間部内で流動して、熱伝導部全体の温度を均一に上昇させることができる。また、凹状の空間部は、加工が容易で短時間で製造できる。
【0011】
また、前記空間部が、前記熱源に近い位置から前記熱源から遠ざかる方向へ延在している構成としてもよい。
これによれば、熱源から遠い領域へ迅速かつ確実に熱が伝わって、示温部材全体の温度を均一に上昇させることができる。
【0012】
また、前記熱伝導部の幅が前記熱源から離れるにしたがって狭くなる形状とされている構成としてもよい。
これによれば、空気の流動速度は狭い空間に向かって速度が加速することから、幅の狭くなる方向へ熱伝導速度が加速されて熱伝導効率を向上させることができる。
【0013】
また、前記熱伝導部の長手方向両側に前記熱源が対向配置されている構成としてもよい。
これによれば、熱伝導部の長手方向両側から熱が加えられるため、片側のみに熱源を配置した場合よりも多くの熱量が熱伝導部を通じて示温部材へと供給される。また、熱伝導部の長手方向に延在する空間部の開口に熱源を対向配置することによって、熱源によって加熱された空気が空間部内を流動して熱伝導部の長手方向における温度ムラを解消することができる。
これにより、熱伝導部全体の温度を素早く均一に上昇させることができ、その結果、示温部材の温度上昇が促進されるので応答性の良い表示が行える。
【0014】
また、前記熱源が、前記熱伝導部の前記空間部内に配置されている構成としてもよい。
これによれば、空間部を通じて伝わる熱の伝達効率が向上し、より短時間で熱伝導部全体ひいては示温部材全体を加熱することができる。
【0015】
複数の前記空間部を有し、各空間部の少なくとも一部が互いに連通している構成としてもよい。
これによれば、各空間部を通じて伝わる熱(熱源によって加熱された空気)の循環効率が向上する。
【0016】
また、前記熱源が光源である構成としてもよい。
これによれば、従来の光源を利用して熱源を構成することができる。
【0017】
また、自動車のサイドステップ部に設置されるキッキングプレートに用いられる構成としてもよい。
これによれば、低コストかつ省スペースを実現できるため、車両に組み込んだ場合にも審美的外観を損なうことなく多色多様な表示が可能なものとなる。また、優れた表示応答性も兼ね備えることから、商品性をより一層向上したキッキングプレートを提供することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、低コストかつ省スペースで多色表現を可能にするとともに、より表示応答性に優れた表示装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】車両のドアが開いているときのキッキングプレートの位置を示す概略斜視図。
図2】第1実施形態における表示装置の概略構成を示す平面図。
図3図2のA−A線に沿う断面図。
図4】、図2のB−B線に沿う断面図。
図5】熱伝導部材の概略構成を示す図であって、(a)は平面図、(b)は断面図。
図6】(a),(b)は熱伝導部材における空間部の他の形状を示す断面図。
図7】第1実施形態の変形例を示す断面図。
図8】第2実施形態の表示装置の概略構成を示す断面図。
図9】第2実施形態における熱伝導部材の概略構成を示す図であって、(a)は平面図、(b)は断面図。
図10】第2実施形態における他の例を示す図。
図11】第2実施形態における他の例を示す図。
図12】第3実施形態の表示装置の概略構成を示す平面図。
図13】第3実施形態の熱伝導部材における熱の伝導状態を示す図。
図14】熱伝導部材の変形例を示す図であって、(a)は平面図、(b)は(a)の矢印D側から見た端面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0021】
(第1実施形態)
まず、本発明に係る表示装置の第1実施形態の構成について述べる。
図1は、車両のドアが開いているときのキッキングプレートの位置を示す概略斜視図である。
図1に示すように、車両2の両側面には、ユーザの乗降口となるドア開口部3aが設けられており、各ドア3によってそれぞれ開閉される。各ドア3に対応する車室内の床面7には、それぞれ座席6が配置されている。運転者の座席6の前方には、インストルメントパネル5が配置されている。運転者の座席6の前方の床面7であってインストルメントパネル5の下方には、ブレーキペダル8Aおよびアクセルペダル8Bが設けられている。
【0022】
ドア開口部3aの下縁部には、車両2の前後方向に沿って車両外側ボディーパネルとしてのサイドステップ部11が延設されている。このサイドステップ部11の上面11aには、車両前後方向に延びるキッキングプレート9が固定されている。キッキングプレート9のすぐ車室内側の位置には、キッキングプレート9に平行に配置されたインナーシルカバー4が固定されている。インナーシルカバー4は、キッキングプレート9より高い位置に設置されている。本実施形態のキッキングプレート9には、図2に示すような表示装置10が組み込まれている。
【0023】
図2は、本実施形態における表示装置の概略構成を示す平面図であり、図3は、図2のA−A線に沿う断面図、図4は、図2のB−B線に沿う断面図である。図5は、熱伝導部材の概略構成を示す図であって、(a)は平面図、(b)は断面図である。
【0024】
図2及び図3に示すように、表示装置10は、複数の光源12を有する熱源部(熱源)13と、熱源部13の近傍に配置された熱伝導部材(熱伝導部)14と、熱伝導部材14と隣り合うようにして配置された示温部材15と、示温部材15上に配置されたマスク部材16と、マスク部材16を覆うようにして設けられた光透過性部材17と、この光透過性部材17と嵌合するアウターケース18とを備えたユニット構造とされている。
【0025】
一対の熱源部13は、熱伝導部材14を挟み込むようにして長手方向両側に配置され、基板19とともにアウターケース18の収容凹部18A内にそれぞれ配置されている。熱伝導部材14を介して配向配置された熱源部13は、互いの光源12の光軸が幅方向(熱伝導部材14の短手方向)で一致するように配置されている。本実施形態では光源12として単色のLEDが用いられ、光源12に電力を供給する配線等が引き廻された基板19上に設けられている。熱源部13における発熱量は光源12の数等によって調整することができる。
【0026】
熱伝導部材14は、光源12から放熱された熱を示温部材15へと伝えるもので、銅や鉄などの金属をはじめとする熱伝導要素を有した物質からなる。金属の他、セラミックやカーボン等の炭素素材などを用いて構成してもよい。
【0027】
図4および図5(a),(b)に示すように、本実施形態における熱伝導部材14は、その一面側に厚さ方向に凹む空間部14Aを複数有している。空間部14Aの形状を凹状にすることで、アウターケース18に熱伝導部材14を収容すれば自ずと他の隣接部材との間に隙間ができて、空気が流動する空間が形成される。
【0028】
これら空間部14Aは、熱伝導部材14の長手方向に延在しているとともに短手方向に所定の間隔をおいて複数設けられている。つまり、各空間部14Aは、熱源部13に近い位置から遠ざかる方向へ延在するように形成されている。これによって、熱源部13によって加熱された熱源周辺の空気が各空間部14Aを通じて熱源部13から離れた領域まで効率よく導かれることになる。
【0029】
具体的に、空間部14Aは光源12に向かって開口した溝形状とされ、熱源部13に近い各空間部14Aの両端側がそれぞれ連通している。各空間部14Aあるいは少なくともこれらの連通部分14aに対向するように光源12を配置することによって、光源12によって加熱された空気をより多く空間部14A内に取り込むことができる。本実施形態において、空間部14Aは、光源12が発熱することにより温められた周囲の空気を熱伝導部材14の全域に亘って素早く均一に流動させるよう機能する。そのため、複数設けた空間部14Aの少なくとも一部を互いに連通させた構成としておくことで、空間部14A内を流動する空気の循環を促進させることができる。
【0030】
このように、光源12の発光に伴う発熱によって加熱された空気が空間部14A内を流動することで熱伝導部材14全体がムラ無く均一に温度上昇する。すなわち、熱伝導部材14に空間部14Aを設けることは示温部材15の温度上昇効率を高めるために大きく貢献する。なお、空間部14Aの構造は、暖気の流動が促進される形状であれば良い。また、凹状、溝形状とすることで加工も容易となり短時間で製造できる。
【0031】
また、先に述べたように、熱伝導部材14が熱伝導要素を有した材料から構成されているため、その一部を熱源部13と接触するように配置しておくことが好ましい。これにより、その接触部分から熱源部13の熱が熱伝導部材14へと直接伝達され、各光源12の発光に伴う発熱をより効果的に示温部材15へと熱放散させることが可能となる。
このような熱伝導部材14は、空間部14Aが形成された一面側をアウターケース18とは反対側に向けた状態で、アウターケース18の長手方向に延在する収容凹部18B内に配置される。
【0032】
図6(a),(b)は、熱伝導部材14における空間部14Aの他の形状を示す断面図である。
本実施形態では空間部14Aの断面が四角形状となっているが、例えば、図6(a),(b)に示すように半円形状や三角形状とされていてもよく、その断面形状は特に限定されない。
【0033】
示温部材15は、熱伝導部材14の空間部14Aが形成された表面に配置され、熱伝導部材14から伝わる温度によって変色する。示温部材15は、温度特性によって色が段階的に変化する温度検知素材からなっており、具体的には所定の示温温度に達すると変色し、その後、温度が下がると元の色に戻る可逆性タイプと、元の色に戻らない不可逆性タイプがある。本実施形態では、可逆性の素材のものを使用している。
【0034】
実用されている可逆性の示温インクの特徴としては、耐光性の金属錯塩系インク、変色精度のよい液晶インク、鮮やかな色彩、色数、変色温度選択性に優れた染料型インク等がある。その変色原理は、熱分解(例、金属塩)、結晶転移(例、金属錯塩)、分子配向性の変化(例、結晶)、異分子間の電子授受(例、ラクトン型、ラクタム型などの染料とフェノール化合物との電子授受)に関係する。
【0035】
本実施形態で用いられる示温インクとしては、温度変化にはっきりとかつ鋭敏に変色するインクを使用することが必要であり、予め、熱源部13における発熱量等も考慮しながら変色させるべき示温温度を決定し、その温度に適した示温材料を選択する。
【0036】
なお、示温部材15の大きさは図3に示したものに限らず、熱伝導部材14と略同形状の大きさに形成されていてもよい。
【0037】
マスク部材16は、色の透過特性の異なる領域を有しており、示温部材15の表面に配置されている。ここでは、示温部材15を部分的に露出させる開口16Aを複数有しており(図2)、各開口16Aの形状によってユーザに対して任意の表示内容を表現できる。開口16Aの形状は、文字を模ったものや模様など様々な形状に応用できる。このようなマスク部材16は、例えば黒色系のインク等を用いて、印刷、塗布、塗装等で形成することができる。
【0038】
また、本実施形態では、示温部材15に対する熱源として光源12を用いているため、図3に示すように熱源部13上までマスク部材16で覆う構成にすることで、各光源12から光透過性部材17を通して漏れる光を遮光することができる。ここで、光源本体部12Aまで覆う必要はなく、少なくとも発光部12B上が覆われていれば良い。
【0039】
光透過性部材17は、マスク部材16の表面に配置されてアウターケース18に嵌合している。アウターケース18に嵌合することで、熱源部13、熱伝導部材14、示温部材15、マスク部材16等をアウターケース18との間に挟み込むようにして保持する構造となっている。具体的に、光透過性部材17は、その周縁部に設けられた嵌合凸部117をアウターケース18側の嵌合凹部118に係合させた状態で取り付けられる。このため、開口16Aの形状が異なるマスク部材16を入れ替えることも可能となり、表示内容の異なる仕様にすることもできる。光透過性部材17は、アクリル板や透明なABS樹脂などから形成されている。
【0040】
アウターケース18は、ABS樹脂等の共重合合成樹脂やPP等の熱可塑性樹脂等により形成されている。
【0041】
このようにして構成される表示装置10では、各熱源部13に設けられた光源12を同時に点灯させると、これらの発光に伴う発熱によって熱伝導部材14が加熱される。熱源部13の熱が熱伝導部材14へと伝達された後、該熱伝導部材14を通じて熱が輸送され、示温部材15へと伝達される。示温部材15は、熱伝導部材14から伝達される温度に応じて変色する。示温部材15が変色することでマスク部材16を介して所定の文字あるいは模様が表示される。
【0042】
上述したように、本実施形態の熱伝導部材14には複数の空間部14Aが設けられている。熱源部13の発光に伴う発熱によってその周辺の空気の温度が上昇し、空間部14A内の空気との温度が生じる。この温度差によって空気の膨張及び対流による空気の流れが生じて空間部14A内の空気が暖気と入れ替わっていく。光源12が点灯している間、低温の空気が熱源部13で温められることで空気の循環が継続される。このようにして、熱源部13によって加熱された熱源部13周辺の空気がこれら空間部14A内を流動する。このような空間部14Aにより熱源部13から離れた領域にまで暖気を導くことで熱伝導部材14全体の温度が均一に上昇することになる。
【0043】
以上述べたように、本実施形態の表示装置10では温度によって色が変化する示温部材15を熱源部13から放出される熱を利用して色変化させることによって、マスク部材16の開口16Aを通じて外部から示温部材15の色を目視することができる構成となっている。熱源部13を用いて示温部材15を変色させることによって容易に多色を表現することが可能となった。
【0044】
本実施形態のように温度に応じて変色する示温部材15を使用することによって、表示色が光源12の発光色に依存せずに、従来のように多色対応のために数色のLEDを複数容易する必要がなくなる。これにより、光源12の数を増やすことなく単色のLEDで多色を表現することができるとともにコストも削減される。また、LEDの調光、調色、変化等を制御する複雑な制御回路も必要なくなり、回路構成も簡単になる。よって、熱源部13のONまたはOFFを制御するだけで温度に基づいて変色した示温部材15によってマスク部材16を介して所定の情報を報知することができる。
【0045】
さらに、基板19や光源12の配置スペースを従来よりも小さくすることができるので、装置全体の小型化、薄型化が図れ、キッキングプレートとして車体に組み込む場合にも容易に取り付けることができる。さらに、車両としても審美的外観を損なうことも無い。
【0046】
また、マスク部材16の開口16Aの形状を変えるだけで表示内容を自在に変更することができる。よって、複雑な模様や細かな模様も含めて多色多様な表示表現を実現でき、より多くのニーズに対応することができる。
【0047】
ところで、熱伝導部材14の長手方向両側に熱源部13を配置する構成の場合、熱源部13から近い領域と遠い領域とで温度差が生じ、その緩和にタイムラグが生じるおそれがある。熱伝導部材14内で温度差が生じた場合、示温部材15全体を変色させて表示を行おうとする際に、示温部材15全体が均一に色変化しないことが考えられる。
【0048】
そこで、本実施形態では、熱伝導部材14に空間部14Aを設けることで、熱源部13によって加熱された空気(暖気)の循環を図り、熱伝導部材14の温度上昇ひいては示温部材15の温度上昇を促進させている。上述したように、熱伝導部材14の長手方向両側に熱源部13を配置した場合、中央部分に熱が伝わるまで時間がかかる。そのため、熱伝導部材14の長手方向に延びる空間部14Aを形成することによって、熱源部13によって加熱された空気が空間部14A内を流動して熱伝導部材14全体にいきわたるようにした。高温となった空気が上昇し低温の空気が下降することで、空間部14A内に循環流が生じて対流熱伝達現象が起こり、熱伝導部材14における極端な温度差を解消して滑らかで均一な温度変化をもたらせることができる。これにより、熱伝導部材14内における温度差を緩和するために要するタイムラグをなくして温度ムラが生じるのを抑えることができ、熱伝導部材14全体の温度を短時間で均一に上昇させることが可能となる。
【0049】
本実施形態の構成によれば、熱伝導部材14自体の熱伝導特性と空間部14Aによる暖気の流動作用との相乗効果によって、示温部材15全体を短時間で均一に加熱して、全体を一様に変色させることができる。このように、熱源部13によって加熱される空気を有効的に活用することで熱伝導部材14における熱伝導効率が向上し、示温部材15の色変化の視認を速めることができる。その結果、応答性の良い表示を行うことができる。
【0050】
ここで、従来、温度上昇を促進させる構造として集熱機能や断熱機能を有する手段を設けて熱機能構造体を構築する技術が提案されている。しかしながら、この場合には熱機能構造体を構築するスペースを確保しなくてはならない。また、熱機能構造体そのものの構造が複雑であったり、熱機能構造体を設けることで厚みが増してしまうため車両のキッキングプレートに組み込む場合には、審美的外観に影響を及ぼすだけでなく設置自体も困難となってしまう可能性があった。
【0051】
これに対し、本実施形態の構成であれば熱機能構造体を構築する必要がないため、設計開発が容易で所定の機能を達成することができる。また、熱機能構造体を設置するスペースを確保する必要がないため、小型でキッキングプレートとしての審美的外観に影響を及ぼすことも無い。
このように、低コストかつ省スペースを実現し、多色多様な表示を実現できる表示装置10により、商品性をより一層向上したキッキングプレート9を提供することができる。
【0052】
また、本実施形態では、熱伝導部材14は空間部14Aが形成された一面側を示温部材15に向けた状態でアウターケース18内に収容されているが、例えば、図7に示すように、熱伝導部材14の向きを上下反転させて、空間部14Aが形成された一面側をアウターケース18(収容凹部18B)の底面18bに向けた状態で設けてもよい。
【0053】
なお、本実施形態では、熱伝導部材14の表面上に示温部材15が配置されており、具体的には空間部14A間に存在する凸部14Bの表面が示温部材15に接触した状態となっているが、例えば、凸部14Bの長手方向中央部分の表面の高さを一部低く形成し、凸部14Bを介して隣り合う空間部14A内の暖気が流動できるような構成にしても良い。
【0054】
また、本実施形態では熱源部13として光源12を用いたが、発熱するものであれば他のものを応用できる。例えば、ELやバルブ等の発光発熱するものを用いてもよい。
また、各熱源部13に設置する光源12には同色異色のLEDを自由に選択することができる。
また、熱伝導部材14を介して対向配置される熱源部13は、互いに向かい合う光源12の光軸を熱伝導部材14の幅方向に位置をずらして配置されていてもよい。
【0055】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態の表示装置の構成について述べる。
本実施形態の基本構成は先の第1実施形態の構成と同様であるが、空間部内に電子部品が備えられている点において異なる。よって、共通の部分について同様の符号を付して説明を省略し、相違点について詳しく説明する。
【0056】
図8は、第2実施形態の表示装置の概略構成を示す断面図である。図9は、第2実施形態における熱伝導部材の概略構成を示す図であり、(a)は平面図、(b)は断面図である。
図8に示すように、本実施形態の表示装置20は、熱伝導部材(熱伝導部)24の空間部24A内に電子部品(熱源)21を備えた構成となっている。図9(a),(b)に示すように、熱伝導部材24は、その幅方向両側の凸部24Bの内側に形成された1つの空間部24Aを有している。この空間部24Aは熱伝導部材24の長手方向両側に開口する溝形状とされ、一定の深さで形成されている。このような熱伝導部材24は、空間部24Aが形成された一面側を示温部材15とは反対側の下方に向けた状態でアウターケース18内に収容されている。これにより、アウターケース18に熱伝導部材14を収容すれば自ずとアウターケース18との間に隙間ができて、空気が流動する空間が形成される。
【0057】
空間部24A内には、抵抗やダイオードなどの発熱する電子部品21が配置されている。電子部品21の数や配置位置はその発熱量等によって適宜設定される。例えば、空間部24Aの長手方向両端に1つずつ配置してもいいし、これに加えて中央付近にも配置してもよい。電子部品21は、アウターケース18の底面18b上に実装され、熱伝導部材24がアウターケース18内に収容されることで空間部24A内に配置されるようになっている。あるいは、熱伝導部材24側に実装されていてもよい。
【0058】
本実施形態の構成によっても、電子部品21によって加熱された空気の流れを空間部24A内で積極的に循環させて熱伝導部材24の均一な温度上昇を促進させ、示温部材15を全体的に変色させることができる。
【0059】
また、熱源として電子部品21を用いることでコスト削減が図れる。さらに、LEDのように光漏れを心配する必要がなくなるため、マスク部材16の形状を小さくすることができる。
【0060】
図10及び図11は、第2実施形態における他の構成例を示す図である。
例えば、図10に示すように、熱伝導部材24の幅方向中央にも凸部24Bを設け、その両側に空間部24Aをそれぞれ形成するようにしてもよい。この場合、各空間部24A内の少なくとも長手方向両側に電子部品21をそれぞれ配置する。
【0061】
また、図11に示すように、熱伝導部材24を、一対の空間部24Aが形成された一面側を上方に向けた状態でアウターケース18内に収容しても良い。
図10及び図11に示すような構成では、電子部品21の数を増加させているため必然的に温度上昇が加速され、より短時間で示温部材15全体を変色させることが可能となる。
【0062】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態の表示装置の構成について述べる。
図12は、第3実施形態の表示装置の概略構成を示す平面図である。図13は、第3実施形態の熱伝導部材における熱の伝導状態(空気の流動状態)を示す図である。
図12に示すように、本実施形態の表示装置30は、一対の熱伝導部材(熱伝導部)34により構成される熱伝導ユニット340を備えている。各熱伝導部材34は、平面視において三角形状あるいは台形状を呈し、互いに平面上で組み合わされることで上記各実施形態と同様に全体的に長方形状とされている。このような熱伝導ユニット340の長手方向両端側に不図示の光源部が配置される。
【0063】
各熱伝導部材34は、その長手方向一端側よりも他端側のほうが狭い幅となるように形成されており、熱源部から離れるに従って漸次狭くなる(細くなる)形状となっている。
熱伝導部材34には、幅方向両側の側縁部34Cよりも内側に空間部34Aと複数の凸部34Bが形成されている。各熱伝導部材34は、幅広とされた端部34aが光源部に対向するように、空間部34Aが熱源部に近い位置から熱源部から遠ざかる方向へ延在する姿勢でそれぞれ配置される。
【0064】
また、各凸部34Bの先端側(端部34b側の端部)は細くなるよう形成されている。つまり、隣り合う凸部34B同士は互いに近接する部分においてその幅が狭く先細くなっており、これにより凸部34B間に形成される空間部34Aの幅を確保できる構成とされている。
【0065】
このような熱伝導ユニット340では、図13に示すように、その長手方向両側に配置された不図示の熱源部によって加熱された空気が、各熱伝導部材34の端部34a側から各々の空間部34A内へ流入して他方の端部34b側へ向けて流動していく。
【0066】
本実施形態では、各熱伝導部材34の形状を端部34a側の幅よりも端部34b側の幅の方が狭くなるように形成して、空気の流入側を広く、流出側を狭くしたことで、空間部34A内を通過する空気の流れが加速されて、より短時間で熱伝導部材14全体が均一に加熱される。これにより、熱伝導速度が加速されて、各熱伝導部材34の長手方向における温度ムラが素早く解消され、示温部材15に対する熱伝導効率をより一層向上させることが期待できる。
【0067】
なお、本実施形態においては、一対の熱伝導部材34を互いの傾斜面を対向させるように組み合わせて用いたが、表示するデザインによっては熱伝導部材34を1つだけ用いても構わないし、3つ以上組み合わせて用いても構わない。
【0068】
また、本実施形態では、熱伝導部材34に複数の凸部34Bを設けた構成としたが、凸部34Bを設けない構成であってもよい。単に、1つの空間部34Aを設けて、この空間部34A全体の幅が熱源部から離れるに従って狭くなる形状としてもよい。
【0069】
以上述べたように、局所的な狭い範囲で示温部材15を変色させたい場合には、その領域近くに熱源を配置することによって熱源近くの領域の温度を急激に上昇させることは可能であるが、示温部材15全体を変色させたい場合には、熱源から遠い領域の温度はなかなか上昇しない。このため、全体が示温温度に達して変色するまでに領域によってタイムラグが発生するため、これを解消する必要があった。上述した先の各実施形態の構成によれば、領域における温度上昇にタイムラグが生じるのをなくし、熱伝導部材14全体の温度を均一に上昇させることにより示温部材15を全体的に変色させることが可能となった。
【0070】
これにより、表示応答性に優れた表示装置10が得られ、商品性をより一層向上したキッキングプレート9を提供することができる。また、熱機能構造体を設ける必要もないことから、低コストかつ省スペースを実現し、キッキングプレート9へ組み込み易くなったとともに審美的外観を損なうことも無い。
【0071】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0072】
例えば、先の各実施形態では熱伝導部材14の一面側に開口するように空間部14Aを設けていたが、図14(a),(b)に示すように空間部14Aが熱伝導部材14の厚さ方向中央部分に位置するように形成されていてもよい。
また、熱伝導部材14の表面側だけに空間部14Aを設けるのではなく、表裏面それぞれに空間部14Aを形成してもよいし、熱伝導部材14の側面にも空間部14Aを形成しても良い。このような空間部14Aの断面形状や大きさ、位置などは適宜決定され、空間部14Aの数等も図示したものに限定されない。
【0073】
さらに、空間部14Aは熱伝導部材14の中央部分へ向かって延在するとともにその一部が光源12側に開口していればよく、他の部分が熱伝導部材14の側面に開口していてもよい。例えば、直線状に延在するものに限定されず、緩やかな曲線を描くような波状とされていてもいいし、他の蛇行形状とされていてもよい。
【0074】
また、熱伝導部材14が熱伝導要素を有した物質からなるものを用いたが、空気の流動を可能する空間部を形成することができれば、他の物質からなるものを熱伝導部として用いてもよい。例えば、拡散フィルムやアクリル板に凹状の空間部を形成した物を用いてもよい。
【0075】
また、熱伝導部材14の空間部14Aが形成されていない一面側に、示温材料、示温顔料等の温感変色物質を配合した示温インクを用いて、グラビア、スクリーン、フレキソおよびオフセットなどで印刷することで示温部材15を形成してもよい。このように、熱伝導部材14に示温部材15を直接形成することによって、予め示温部材15付きの熱伝導部材14を形成しておくことが可能となるため、製造工程の短縮化が図れる。
【0076】
さらに、示温部材15上に光透過性を有する熱伝導部材34を配置する構成としてもよい。この場合、電子部品21が配置されている領域上をマスク部材16で覆うことが好ましい。但し、電子部品21を熱伝導部材24の外側に配置する場合にはその必要はない。
【0077】
また、光透過性部材17の素材として、光透過性が異なる材料が混合する混合材を用いることもできる。また、状況によっては、光透過率を変えて設置することも可能である。
【0078】
なお、先の各実施形態では、自動車のサイドステップ部に設置されるキッキングプレートに用いられる表示装置の例について述べたが、これに限られるものではなく、他の箇所にも組み込むことが可能である。例えば、助手席側のグローブボックス、足元照明、ハンドル中央のエンブレム、車体外側のエンブレム、ナンバープレート等が挙げられる。
また、自動車以外にも応用できる。
【符号の説明】
【0079】
9…キッキングプレート、10,20,30…表示装置、11…サイドステップ部、12…光源、13…熱源部(熱源)、14,24,34…熱伝導部材(熱伝導部)、14A,24A,34A…空間部、15…示温部材、17…光透過性部材、18…アウターケース、21…電子部品(熱源)
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