(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上床版と下床版とこれらを連結する複数のウェブとで箱形断面を形成するようにして橋軸方向に延びる箱桁橋を、移動作業車を用いた張出し施工により所定長のブロック毎に架設する方法において、
下床版が未施工の先頭ブロックを構成する上床版に上記移動作業車を移動させた状態で、上記先頭ブロックの次に施工対象となる最先頭ブロックにおける各ウェブの施工を行った後、上記最先頭ブロックの上床版および上記先頭ブロックの下床版の施工を行うようにし、
その際、上記最先頭ブロックにおける上記各ウェブの施工を、該ウェブを構成すべき少なくとも1つのパネル部材と上記上床版の一部を構成すべき少なくとも1つの上部プレキャストリブとを上記移動作業車で吊り支持して橋軸方向に交互に配置して、上記各パネル部材と上記各上部プレキャストリブとを凹凸面で当接させた状態で、上記各パネル部材および上記各上部プレキャストリブの双方または上記各上部プレキャストリブのみに対してPC鋼材を橋軸方向に挿通させて緊張することにより行う、ことを特徴とする箱桁橋の架設方法。
上記PC鋼材を上記少なくとも1つのパネル部材の両側に2本配置して、これら各PC鋼材を上記少なくとも1つの上部プレキャストリブに対して挿通させるようにする、ことを特徴とする請求項1記載の箱桁橋の架設方法。
橋軸方向に隣接する上記各パネル部材同士が該パネル部材の下端部において互いに当接するように、上記各パネル部材の形状を設定しておく、ことを特徴とする請求項1または2記載の箱桁橋の架設方法。
上記最先頭ブロックにおける上記各ウェブの施工を行う際、該ウェブを構成すべき上記少なくとも1つのパネル部材と上記下床版の一部を構成すべき少なくとも1つの下部プレキャストリブとを橋軸方向に交互に配置した状態で、上記各パネル部材および上記各下部プレキャストリブの双方または上記各下部プレキャストリブのみに対してPC鋼材を橋軸方向に挿通させて緊張する、ことを特徴とする請求項1または2記載の箱桁橋の架設方法。
上記最先頭ブロックにおける上記上床版の施工を、橋軸方向に隣接する上記上部プレキャストリブ相互間にプレキャスト板を敷設した後、これら上部プレキャストリブおよびプレキャスト板を埋設型枠として上床版コンクリートを打設することにより行う、ことを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の箱桁橋の架設方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記「特許文献3」に記載されているような架設方法を採用することにより、急速施工を実現することが可能となり、これにより工期短縮を図ることが可能となる。
【0008】
しかしながら、箱桁の一部を構成するウェブの構造によっては、その強度上、先行施工したウェブに移動作業車を移動させることができず、このため急速施工を実現することができない、という問題がある。
【0009】
本願発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、箱桁橋を張出し施工により架設する方法において、箱桁の一部を構成する各ウェブの構造にかかわらず急速施工を実現することができる箱桁橋の架設方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明は、各ウェブの施工方法に工夫を施すことにより、上記目的達成を図るようにしたものである。
【0011】
すなわち、本願発明に係る箱桁橋の架設方法は、
上床版と下床版とこれらを連結する複数のウェブとで箱形断面を形成するようにして橋軸方向に延びる箱桁橋を、移動作業車を用いた張出し施工により所定長のブロック毎に架設する方法において、
下床版が未施工の先頭ブロックを構成する上床版に上記移動作業車を移動させた状態で、上記先頭ブロックの次
に施工対象となる最先頭ブロックにおける各ウェブの施工を行った後、上記最先頭ブロックの上床版および上記先頭ブロックの下床版の施工を行うようにし、
その際、上記最先頭ブロックにおける上記各ウェブの施工を、該ウェブを構成すべき少なくとも1つのパネル部材と上記上床版の一部を構成すべき少なくとも1つの上部プレキャストリブとを上記移動作業車で吊り支持して橋軸方向に交互に配置し
て、上記各パネル部材と上記各上部プレキャストリブとを凹凸面で当接させた状態で、
上記各パネル部材および上記各上部プレキャストリブの双方または上記各上部プレキャストリブのみに対してPC鋼材を橋軸方向に挿通させて緊張することにより行う、ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
上記構成に示すように、本願発明においては、下床版が未施工の先頭ブロックを構成する上床版に移動作業車を移動させた状態で、最先頭ブロックにおける各ウェブの施工を行った後、最先頭ブロックの上床版および先頭ブロックの下床版の施工を行うようになっているが、その際、最先頭ブロックにおける各ウェブの施工を、該ウェブを構成すべき少なくとも1つのパネル部材と上床版の一部を構成すべき少なくとも1つの上部プレキャストリブとを移動作業車で吊り支持して橋軸方向に交互に配置した状態で、これらに対してPC鋼材を橋軸方向に挿通させて緊張することにより行うようになっているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0014】
すなわち、少なくとも1つのパネル部材と少なくとも1つの上部プレキャストリブとを用いて、最先頭ブロックの各ウェブを先行施工しておくことにより、最先頭ブロックの上床版の施工を容易に行うことができる。また、先頭ブロックの下床版の施工についても、施工済みの各ウェブを利用して容易に行うことができる。このため、移動作業車を最先頭ブロックに移動させることなく、最先頭ブロックの上床版と先頭ブロックの下床版とを同時に施工することができる。
【0015】
したがって本願発明によれば、箱桁橋を張出し施工により架設する方法において、箱桁の一部を構成するウェブの構造にかかわらず急速施工を実現することができる。
【0016】
上記構成において、PC鋼材を少なくとも1つのパネル部材の両側に2本配置して、これら各PC鋼材を少なくとも1つの上部プレキャストリブに対して挿通させるようにすれば、各パネル部材にPC鋼材の挿通孔を形成する必要をなくすことができ、その構成を簡素化することができる。
【0017】
上記構成において、橋軸方向に隣接する各パネル部材同士が該パネル部材の下端部において互いに当接するように、各パネル部材の形状を設定しておくようにすれば、各パネル部材相互間における橋軸方向の圧縮力の伝達を効率良く行わせるようにすることができる。
【0018】
あるいは、上記構成において、最先頭ブロックにおける各ウェブの施工を行う際、該ウェブを構成すべき少なくとも1つのパネル部材と下床版の一部を構成すべき少なくとも1つの下部プレキャストリブとを橋軸方向に交互に配置した状態で、これらに対してPC鋼材を橋軸方向に挿通させて緊張するようにすれば、次のような作用効果を得ることができる。
【0019】
すなわち、各ウェブの上下両端部において、PC鋼材の緊張を行うことにより、最先頭ブロックでの各ウェブの施工時における各パネル部材の安定性を向上させることができ、その横倒れ等が発生しまうおそれを効果的に抑制することができる。
【0020】
また、最先頭ブロックでの各ウェブの施工後に、ターンバックル等を用いてパネル部材の向きを調整する作業を行うことが容易に可能となる。
【0021】
さらに、先頭ブロックにおける下床版の施工を、橋軸方向に隣接する下部プレキャストリブ相互間にプレキャスト板を敷設した後、これら下部プレキャストリブおよびプレキャスト板を埋設型枠として下床版コンクリートを打設することにより行うようにすることも可能となる。そして、このようにすることにより、型枠の組立て作業を大幅に簡素化することができ、これにより下床版の施工効率を高めることができる。
【0022】
上記構成において、各パネル部材と各上部プレキャストリブとを凹凸面で当接させるようにすれば、両者間の橋軸直交面内における位置決めを図るとともに剪断キーとしての機能を果たすようにすることができる。
【0023】
上記構成において、最先頭ブロックにおける上床版の施工を、橋軸方向に隣接する上部プレキャストリブ相互間にプレキャスト板を敷設した後、これら上部プレキャストリブおよびプレキャスト板を埋設型枠として上床版コンクリートを打設することにより行うようにすれば、その型枠の組立て作業を大幅に簡素化することができ、これにより上床版の施工効率を高めることができる。
【0024】
しかも、このようにすることにより、最先頭ブロックの上床版を施工する際、上床版コンクリートの荷重が移動作業車に作用しないようにすることができるので、移動作業車の構造を簡素化することができ、その重量軽減を図ることができる。
【0025】
その際、各上部プレキャストリブに、各プレキャスト板の橋軸方向端部を載置するための段差部を形成しておくようにすれば、プレキャスト板の敷設作業を効率良く行うことができ、これにより上床版の施工効率を一層高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を用いて、本願発明の実施の形態について説明する。
【0028】
図1は、本願発明の一実施形態に係る箱桁橋の架設方法を示す工程図である。また、
図2は、
図1(b)を取り出して詳細に示す図である。さらに、
図3は、
図2のIII 方向矢視図であり、
図4は、
図2のIV−IV線断面図である。
【0029】
これらの図に示すように、本実施形態に係る架設方法の適用対象となる箱桁橋10は、上床版12と下床版14とこれらを連結する左右1対のウェブ16とで箱形断面を形成するようにして橋軸方向に延びる主桁構造を有している。
【0030】
なお、
図1は、箱桁橋10を
図4におけるI−I線断面に沿って示しており、また、
図3は、箱桁橋10を
図4のIII−III線断面に沿って示している。
【0031】
この箱桁橋10の各ウェブ16は、複数のパネル部材22が橋軸方向に連結された構成となっている。その際、これら各パネル部材22は、上床版12の一部を構成する上部プレキャストリブ24を介して、その上端部において互いに連結されている。
【0032】
本実施形態においては、この箱桁橋10を、移動作業車100を用いた張出し施工により所定長(例えば6m程度の長さ)のブロック毎に架設するようになっている。
【0033】
すなわち、まず、
図1(a)に示すように、下床版14が未施工の先頭ブロックB(n)を構成する上床版12に、その後方側に隣接する施工済みの既設ブロックB(n−1)の上床版12から、移動作業車100を1ブロック分だけ移動させた状態で、この移動作業車100を用いて、先頭ブロックB(n)の次の(すなわち張出し施工に関して前方側に隣接する)最先頭ブロックB(n+1)における各ウェブ16の施工を行い、次に、
図1(b)に示すように、網線で示す施工領域Z1において上床版コンクリート12Cを打設することにより最先頭ブロックB(n+1)の上床版12の施工を行うとともに、網線で示す施工領域Z2において下床版コンクリート14Cを打設することにより先頭ブロックB(n)の下床版14の施工を行い、その後、
図1(c)に示すように、最先頭ブロックB(n+1)の上床版12に移動作業車100を移動させて、以上と同様の作業を行うようになっている。
【0034】
その際、
図1(a)に示すように、最先頭ブロックB(n+1)における各ウェブ16の施工は、該ウェブ16を構成すべき2つのパネル部材22と上床版12の一部を構成すべき2つの上部プレキャストリブ24とを移動作業車100で吊り支持して橋軸方向に交互に配置した状態で、これらに対してPC鋼材26を橋軸方向に挿通させて緊張することにより行うようになっている。
【0035】
これを容易に実現するため、先頭ブロックB(n)の各ウェブ16を構成する2つのパネル部材22のうち前方側に位置するパネル部材22は、その一部が先頭ブロックB(n)を構成する上床版12の前端面の位置よりも前方側に突出するように配置されている。
【0036】
移動作業車100は、各パネル部材22を前後1対の吊り材112で吊り支持するとともに、各上部プレキャストリブ24を左右1対の吊り材114で吊り支持するようになっている。また、この移動作業車100は、先頭ブロックB(n)を構成する上床版12に移動した状態において、この先頭ブロックB(n)の下床版14の施工を行うための型枠受け梁102が吊り支持されるとともに、その下方側に、既設ブロックB(n−1)から最先頭ブロックB(n+1)までの範囲にわたって延びる作業用足場104が吊り支持されるように構成されている。
【0037】
次に、本実施形態に係る架設方法の適用対象となる箱桁橋10の具体的な構成について説明する。
【0038】
図5(a)は、
図2のVa−Va線断面図であり、
図5(b)は、
図2のVb−Vb線断面図である。また、
図6は、
図1(a)の要部詳細図であり、
図7は、
図1(b)の要部詳細図である。
【0039】
これらの図にも示すように、各ウェブ16のPC鋼材26は、2つのパネル部材22の両側に2本配置されており、その各々が2つの上部プレキャストリブ24を橋軸方向に挿通するように配置されている。
【0040】
これら各PC鋼材26は、PC鋼棒で構成されており、その先端部において前方側の上部プレキャストリブ24に定着されている。そして、最先頭ブロックB(n+1)の各ウェブ16を施工する際には、施工済みの先頭ブロックB(n)を構成する各ウェブ16に配置された各PC鋼材26の先端部に、最先頭ブロックB(n+1)用の各PC鋼材26が、カプラ28を介して連結されるようになっている。なお、この連結に先立ち、施工済みの先頭ブロックB(n)に配置された各PC鋼材26においては、その定着が解除されるとともにその周囲の隙間にグラウトが注入されるようになっている。
【0041】
各パネル部材22は、橋軸方向を含む鉛直面に沿って延びるコンクリート製の板状部材であって、いずれも同一形状で形成されている。これら各パネル部材22は、その上下両端面は水平面で構成されているが、その前後両端面は側面視において上下方向の中央部分が括れた形状を有している。
【0042】
図8は、
図1(a)の工程の一部を説明するための要部詳細図である。
【0043】
同図にも示すように、各パネル部材22は、その上端部の後端面22bおよび前端面22aにおいて各上部プレキャストリブ24の前面24aおよび後面24bと当接するようになっており、その当接は凹凸面で行われるようになっている。
【0044】
具体的には、各パネル部材22の前端面22aおよび後端面22bには、それぞれ角錐台状の凸部22a1、22b1が形成されており、一方、各上部プレキャストリブ24の前面24aおよび後面24bには、それぞれ角錐台状の凹部24a1、24b1が形成されている。そして、各パネル部材22の後端面22bに形成された凸部22b1が各上部プレキャストリブ24の前面24aに形成された凹部24a1に嵌まり込むとともに、各パネル部材22の前端面22aに形成された凸部22a1に各上部プレキャストリブ24の後面24bに形成された凹部24b1が嵌まり込むようになっている。そしてこれにより、橋軸直交面内における両者間の位置決めを図るとともに剪断キーとしての機能を果たすようになっている。
【0045】
なお、これら各パネル部材22と各上部プレキャストリブ24との当接は、その当接面にアクリル樹脂系の接着剤等が塗布された状態で行われるようになっている。
【0046】
また、これら各パネル部材22と各上部プレキャストリブ24との当接が行われる際、橋軸方向に隣接する各パネル部材22同士は、その下端部の前端面22cおよび後端面22dにおいて互いに当接するようになっている。これら各パネル部材22同士の当接も凹凸面で行われるようになっている。
【0047】
具体的には、各パネル部材22の前端面22cには角錐台状の凹部22c1が形成されており、各パネル部材22の後端面22dには角錐台状の凸部22d1が形成されている。そして、各パネル部材22の前端面22cに形成された凹部22c1に対して、その前方側に隣接するパネル部材22の後端面22dに形成された凸部22d1が嵌まり込むようになっている。
【0048】
なお、これら各パネル部材22同士の当接に関しても、その当接面にアクリル樹脂系の接着剤等が塗布された状態で行われるようになっている。
【0049】
図7に示すように、最先頭ブロックB(n+1)における上床版12の施工は、橋軸方向に隣接する上部プレキャストリブ24相互間に複数のプレキャスト板32を敷設した後、これら上部プレキャストリブ24およびプレキャスト板32を埋設型枠として施工領域Z1に上床版コンクリート12Cを打設することにより行われるようになっている。
【0050】
これを容易に実現するため、
図8に示すように、各上部プレキャストリブ24の前面24aおよび後面24bには、各プレキャスト板32の橋軸方向端部を載置するための段差部24a2、24b2が形成されている。
【0051】
図4、5に示すように、上床版12は、左右1対のウェブ16の左右両側に張出し部を備えた構成となっている。この上床版12は、各ウェブ16の上端部の埋設部分が厚肉で形成されている。そして、各ウェブ16の両側において橋軸方向に延びる各PC鋼材42は、その埋設部分の下端部に配置されている。各上部プレキャストリブ24は、左右1対のウェブ16の間に位置する部分も厚肉で形成されている。
【0052】
一方、下床版14は、各ウェブ16の下端部の埋設部分が厚肉で形成されており、左右1対のウェブ16の間に位置する部分は薄肉で形成されている。
【0053】
上床版12における各上部プレキャストリブ24の部分には、橋軸直交方向に直線状に延びるPC鋼材42が配置されており、その上床版コンクリート12Cの部分には、橋軸直交方向にやや凹凸状に延びるPC鋼材44が配置されている。
【0054】
また、この上床版12には、各ブロック毎の張出し施工の際に上床版コンクリート12Cに橋軸方向のプレストレスを導入するための複数の張出鋼材34が、内ケーブルとして配置されている。これら複数の張出鋼材34は、左右1対のウェブ16の各々の左右両側に位置するようにして4箇所に配置されている。そして、これら複数の張出鋼材34は、最先頭ブロックB(n+1)の上床版12の施工が完了した後に、その前端面において2組ずつ緊張および定着が行われるようになっている。
【0055】
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0056】
本実施形態においては、下床版14が未施工の先頭ブロックB(n)を構成する上床版12に移動作業車100を移動させた状態で、最先頭ブロックB(n+1)における各ウェブ16の施工を行った後、最先頭ブロックB(n+1)の上床版12および先頭ブロックB(n)の下床版14の施工を行うようになっているが、その際、最先頭ブロックB(n+1)における各ウェブ16の施工を、該ウェブ16を構成すべき2つのパネル部材22と上床版12の一部を構成すべき2つの上部プレキャストリブ24とを移動作業車100で吊り支持して橋軸方向に交互に配置した状態で、これらに対してPC鋼材26を橋軸方向に挿通させて緊張することにより行うようになっているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0057】
すなわち、2つのパネル部材22と2つの上部プレキャストリブ24とを用いて、最先頭ブロックB(n+1)の各ウェブ16を先行施工しておくことにより、最先頭ブロックB(n+1)の上床版12の施工を容易に行うことができる。また、先頭ブロックB(n)の下床版14の施工についても、施工済みの各ウェブ16を利用して容易に行うことができる。このため、移動作業車100を最先頭ブロックB(n+1)に移動させることなく、最先頭ブロックB(n+1)の上床版12と先頭ブロックB(n)の下床版14とを同時に施工することができる。
【0058】
したがって本実施形態によれば、箱桁橋10を張出し施工により架設する方法において、箱桁の一部を構成する各ウェブ16の構造にかかわらず急速施工を実現することができる。
【0059】
しかも本実施形態においては、PC鋼材26を2つのパネル部材22の両側に2本配置して、これら各PC鋼材26を2つの上部プレキャストリブ24に対して挿通させるようになっているので、各パネル部材22にPC鋼材26の挿通孔を形成する必要をなくすことができ、その構成を簡素化することができる。
【0060】
また本実施形態においては、橋軸方向に隣接する各パネル部材22同士が該パネル部材22の下端部において互いに当接するように、各パネル部材22の形状が設定されているので、各パネル部材22相互間における橋軸方向の圧縮力の伝達を効率良く行わせるようにすることができる。
【0061】
さらに本実施形態においては、各パネル部材22と各上部プレキャストリブ24とが凹凸面で当接するようになっているので、両者間の橋軸直交面内における位置決めを図るとともに剪断キーとしての機能を果たすようにすることができる。
【0062】
また本実施形態においては、最先頭ブロックB(n+1)における上床版12の施工を、橋軸方向に隣接する上部プレキャストリブ24相互間にプレキャスト板32を敷設した後、これら上部プレキャストリブ24およびプレキャスト板32を埋設型枠として上床版コンクリート12Cを打設することにより行うようになっているので、その型枠の組立て作業を大幅に簡素化することができ、これにより上床版12の施工効率を高めることができる。
【0063】
しかも、このようにすることにより、最先頭ブロックB(n+1)の上床版12を施工する際、上床版コンクリート12Cの荷重が移動作業車100に作用しないようにすることができるので、移動作業車100の構造を簡素化することができ、その重量軽減を図ることができる。
【0064】
その際、各上部プレキャストリブ24には、各プレキャスト板32の橋軸方向端部を載置するための段差部24a2、24b2が形成されているので、プレキャスト板32の敷設作業を効率良く行うことができ、これにより上床版12の施工効率を一層高めることができる。
【0065】
上記実施形態においては、各ウェブ16の構成として、2つのパネル部材22と2つの上部プレキャストリブ24とが橋軸方向に交互に配置された構成となっているものとして説明したが、3つ以上のパネル部材22と3つ以上の上部プレキャストリブ24とが橋軸方向に交互に配置された構成、あるいは単一のパネル部材22と単一の上部プレキャストリブ24とが橋軸方向に交互に配置された構成とすることも可能である。このような構成とした場合においても上記実施形態の場合と同様の作用効果を得ることができる。
【0066】
上記実施形態においては、各ウェブ16を構成する各パネル部材22が、コンクリート製の板状部材で構成されているものとして説明したが、鋼製の板状部材や波形鋼板等で構成されている場合においても、上記実施形態の場合と同様の作用効果を得ることができる。
【0067】
上記実施形態においては、適用対象となる箱桁橋10が、左右1対のウェブ16を備えているものとして説明したが、橋軸直交方向の3箇所以上にウェブが配置された構成となっている場合においても、上記実施形態の場合と同様の作用効果を得ることができる。
【0068】
上記実施形態においては、下床版14が左右1対のウェブ16の間の全領域にわたって形成されているものとして説明したが、その一部領域が開口部として形成されているような場合においても、上記実施形態の場合と同様の作用効果を得ることができる。
【0069】
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0070】
図9および10は、本変形例に係る箱桁橋の架設方法を示す、
図3、6と同様の図である。
【0071】
これらの図に示すように、本変形例に係る架設方法の適用対象となる箱桁橋210は、上記実施形態の箱桁橋10と略同様の主桁構造を有しているが、その下床版214および各ウェブ216の構成が上記実施形態の場合と一部異なっている。
【0072】
すなわち、本変形例においては、最先頭ブロックB(n+1)における各ウェブ216の施工を行う際、該ウェブ216を構成すべき2つのパネル部材222と下床版214の一部を構成すべき2つの下部プレキャストリブ224とを橋軸方向に交互に配置した状態で、これらに対してPC鋼材226を橋軸方向に挿通させて緊張するようになっている。
【0073】
その際、各下部プレキャストリブ224は、左右1対の吊り材314で、その真上に位置する上部プレキャストリブ24に吊り支持されるようになっている。
【0074】
また、PC鋼材226は、各ウェブ216に対して橋軸直交方向の内側において2つの下部プレキャストリブ224を橋軸方向に挿通するように配置されている。その際、最先頭ブロックB(n+1)用のPC鋼材226は、施工済みの先頭ブロックB(n)用のPC鋼材226にカプラ228を介して連結されるようになっている。
【0075】
さらに、各下部プレキャストリブ224の前面および後面には、各プレキャスト板232の橋軸方向端部を載置するための段差部224a2、224b2が形成されている。そして、先頭ブロックB(n)における下床版214の施工は、橋軸方向に隣接する下部プレキャストリブ224相互間に複数のプレキャスト板232を敷設した後、これら下部プレキャストリブ224およびプレキャスト板232を埋設型枠として施工領域Z2に下床版コンクリート214Cを打設することにより行われるようになっている。
【0076】
また、最先頭ブロックB(n+1)においては、各PC鋼材226の緊張を行った後、橋軸方向に隣接する下部プレキャストリブ224相互間に1対のターンバックル240を対角方向に交差させて配置する作業が行われるようになっている。
【0077】
本変形例に係る架設方法を採用することにより次のような作用効果を得ることができる。
【0078】
すなわち、各ウェブ216の上下両端部において、PC鋼材26、226の緊張を行うことにより、最先頭ブロックB(n+1)での各ウェブ216の施工時における各パネル部材222の安定性を向上させることができ、その横倒れ等が発生しまうおそれを効果的に抑制することができる。
【0079】
また、最先頭ブロックB(n+1)での各ウェブ216の施工後に、本変形例のようにターンバックル240を用いて各パネル部材222の向きを調整する作業を行うことが容易に可能となる。そしてこれにより、箱桁橋210の橋軸が平面視においてカーブして延びるような場合においても各パネル部材222の向きを容易に調整することができる。
【0080】
さらに、先頭ブロックB(n)における下床版214の施工を、橋軸方向に隣接する下部プレキャストリブ224相互間にプレキャスト板232を敷設して、これらを埋設型枠として下床版コンクリート214を打設することができるので、型枠の組立て作業を大幅に簡素化することができ、これにより下床版214の施工効率を高めることができる。
【0081】
上記変形例においては、最先頭ブロックB(n+1)において、各ウェブ16を構成する各下部プレキャストリブ224が、その真上に位置する上部プレキャストリブ24に吊り支持されるものとものとして説明したが、このようにする代わりに、例えば、橋軸方向あるいは橋軸直交方向に延びる梁を移動作業車100で吊り支持した状態で上床版12と下床版214との間に配置し、この梁によって各下部プレキャストリブ224を吊り支持するようにすることも可能である。
【0082】
なお、上記実施形態および変形例において諸元として示した数値は一例にすぎず、これらを適宜異なる値に設定してもよいことはもちろんである。