(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第二バルブ手段が閉じているときは、上記孔を介して上記インクが第二バルブ手段を通過可能であり、第二バルブ手段が開いているときは、第二バルブ手段が閉じているときよりも多くの上記インクが第二バルブ手段を通過可能なようになっていることを特徴とする請求項3に記載のインクジェット記録装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、圧力室に供給される液体の流量は上記バルブの供給口の径によって規定され、この径は通常印刷時に必要な供給流量から決定されている。そのため、通常印刷時には問題は生じないが、ヘッドの吸引クリーニングを行う(すなわち、ヘッドをキャッピングして大きな負圧を与える)と、ヘッド内圧力が極端に低下し、ヘッド内の気泡が大きくなって気泡の排出が困難となる。そのため、ヘッドのクリーニング効果が低下するという問題が生じる。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、コンパクトな構成で、ヘッドのクリーニング効果が高いインクジェット記録装置、液体供給装置および記録ヘッドのクリーニング方法を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るインクジェット記録装置は、上記課題を解決するために、インクを記録媒体に吐出することで記録を行う記録ヘッドと、該記録ヘッドが吐出する該インクを貯留する圧力室と、該圧力室に該インクを供給するインク供給経路と、該インク供給経路に設けられ、該圧力室における負圧に応じて、該負圧が大きくなるほど開度が大きくなるように該開度を変更する第一バルブ手段と、該インク供給経路における第一バルブ手段の上流または下流に設けられ、少なくとも所定の流量の該インクが通過可能な流量調整手段と、を備えており、該流量調整手段は、第一バルブ手段の開度が所定の開度以上となったとき、当該流量調整手段を通過可能な該インクの流量を増大させるようになっていることを特徴としている。
【0007】
上記の構成によれば、記録ヘッドが通常の印刷を行う際、すなわち、記録ヘッドおよび圧力室の負圧が比較的小さいときには、圧力室に供給されるインクの流量は圧力室の負圧に応じて開度が変更される第一バルブ手段によって規定される。これに対し、記録ヘッドの吸引クリーニングを行う際、すなわち、記録ヘッドおよび圧力室の負圧が比較的大きくなり、第一バルブ手段の開度が所定の開度以上となるときには、流量調整手段により、圧力室に供給されるインクの流量が増大するため、クリーニング時に記録ヘッド内の気泡が大きくなることが抑制され、気泡が容易に排出されるため、クリーニング効果が向上する。以上のように、上記の構成によれば、圧力室に供給するインクの流量を、流量調整手段によって二段階に制御することができるため、コンパクトな構成で、ヘッドのクリーニング効果が高いインクジェット記録装置を提供することができる。
【0008】
上記インクジェット記録装置では、上記流量調整手段が、当該流量調整手段の上流と下流とを連通する孔を有する第一弁体を備えた第二バルブ手段からなることが好ましく、第二バルブ手段が閉じているときは、上記孔を介して上記インクが第二バルブ手段を通過可能であり、第二バルブ手段が開いているときは、第二バルブ手段が閉じているときよりも多くの上記インクが第二バルブ手段を通過可能なようになっていることが好ましい。
【0009】
上記の構成によれば、流量調整手段は、第二バルブ手段が閉じた状態では、第一弁体が有する孔を介して所定の流量のインクを通過させ、第二バルブ手段が開いた状態では、第二バルブ手段からより大量のインクを通過させることができる。これにより、簡易かつ低コストな構成で、二段階に流量を制御することができる流量調整手段を実現することができる。
【0010】
上記インクジェット記録装置において、第一バルブ手段は、第二弁体を備えており、第二弁体が所定の位置を超えて、第一バルブ手段を開く方向に変位したとき、第二弁体が第一弁体に当接して、第二バルブ手段を開けるようになっていることが好ましい。
【0011】
上記の構成によれば、第一バルブ手段が所定の開度以上となったとき、すなわち、第一バルブ手段が備える第二弁体が所定の位置を超えて、第一バルブ手段を開く方向に変位したとき、第二弁体が、第二バルブ手段が備える第一弁体に当接して、第一弁体を開く方向に変位させることにより、第二バルブ手段が開くようになっている。これにより、第一バルブ手段と流量調整手段とを一体的に構成することができ、簡易かつ低コストな構成で、第一バルブ手段が所定の開度以上となったとき流量を増大させることができる流量調整手段を実現することができる。
【0012】
上記インクジェット記録装置において、上記圧力室は、当該圧力室における負圧に応じて変位する変位部材を備えており、該変位部材が変位することによって第二弁体を変位させるようになっていることが好ましい。
【0013】
上記の構成によれば、圧力室における負圧に応じて変位部材が変位して第一バルブ手段が備える第二弁体を変位させることにより第一バルブ手段の開度を変更させることができる。これにより、簡易な構成で、圧力室における負圧に応じて開度を変更する第一バルブ手段を実現することができる。
【0014】
上記インクジェット記録装置では、第一弁体の上記孔の面積が、上記圧力室から上記記録ヘッドへ向かう上記インクの流路面積よりも狭いことが好ましい。
【0015】
上記の構成によれば、記録ヘッドが通常の印刷を行う際、すなわち、記録ヘッドおよび圧力室の負圧が比較的小さいときに圧力室に供給されるインクの流量は、圧力室から記録ヘッドへ供給し得る最大流量よりも絞られた状態となる。これにより、通常の印刷の際には、インク供給量を絞り、必要以上にインクを供給することを避けることができる。
【0016】
本発明に係る液体供給装置は、供給先に液体を供給する液体供給装置であって、該供給先に供給する該液体を貯留する圧力室と、該圧力室に該液体を供給する液体供給経路と、該液体供給経路に設けられ、該圧力室における負圧に応じて、該負圧が大きくなるほど開度が大きくなるように該開度を変更するバルブ手段と、該液体供給経路におけるバルブ手段の上流または下流に設けられ、少なくとも所定の流量の該液体が通過可能な流量調整手段と、を備えており、該流量調整手段は、バルブ手段の開度が所定の開度以上となったとき、当該流量調整手段を通過可能な該液体の流量を増大させるようになっていることを特徴としている。
【0017】
上記の構成によれば、例えば、インクジェット記録装置に組み込まれることによって、本発明に係るインクジェット記録装置と同等の効果を得ることができる。
【0018】
本発明に係る記録ヘッドのクリーニング方法は、記録ヘッドからインクを記録媒体に吐出することで記録を行うインクジェット記録装置における該記録ヘッドのクリーニング方法であって、該インクジェット記録装置は、該記録ヘッドと、該記録ヘッドが吐出する該インクを貯留する圧力室と、該圧力室にインクを供給するインク供給経路と、該インク供給経路に設けられ、該圧力室における負圧に応じて、該負圧が大きくなるほど開度が大きくなるように該開度を変更するバルブ手段と、該インク供給経路における該バルブ手段の上流または下流に設けられ、少なくとも所定の流量の該インクが通過可能な流量調整手段と、を備えており、該記録ヘッドから該インクを吸引する吸引工程と、該吸引工程において該記録ヘッドから該インクが吸引されることによって、該圧力室における負圧が増大する負圧増大工程と、該負圧増大工程において該圧力室における負圧が増大することにより、該バルブ手段の開度が大きくなる開工程と、該開工程において該バルブ手段の開度が所定の開度以上となったとき、該流量調整手段が、当該流量調整手段を通過可能な該インクの流量を増大させる流量増大工程と、を包含することを特徴としている。
【0019】
上記の方法によれば、本発明に係るインクジェット記録装置と同等の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、圧力室に供給するインクの流量を、流量調整手段によって二段階に制御することができるため、コンパクトな構成で、ヘッドのクリーニング効果が高いインクジェット記録装置、液体供給装置および記録ヘッドのクリーニング方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(インクジェット記録装置の概要)
図1は、本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置の概略構成を示すブロック図である。
【0023】
本実施形態に係るインクジェット記録装置100は、インクを記録媒体に吐出することで記録を行うインクジェット記録用の記録ヘッド12と、記録ヘッド12が吐出するインクを貯留する圧力室40と、圧力室40にインクを供給するインク供給経路(液体供給経路)50と、インク供給経路50に設けられ、圧力室40における負圧に応じて、当該負圧が大きくなるほど開度が大きくなるように開度を変更するメインポート(第一バルブ手段)30と、インク供給経路50におけるメインポート30の上流または下流に設けられ、少なくとも所定の流量のインクが通過可能なパイロットポート(流量調整手段、第二バルブ手段)20と、を備えており、パイロットポート20は、メインポート30の開度が所定の開度以上となったとき、パイロットポート20を通過可能なインクの流量を増大させるようになっている。インクジェット記録装置100は、また、インク供給経路50に供給するインクを貯めるインクタンク10、記録ヘッド12によって記録を行う記録媒体を搬送する記録媒体搬送部14、および記録ヘッド12を駆動する記録ヘッド駆動部13を備えている。このうち、パイロットポート20、メインポート30、圧力室40およびインク供給経路50を含んでなり、記録ヘッド(供給先)12にインク(液体)を供給する機構をレギュレータ(液体供給装置)11と称することもある。
【0024】
図2は、インクジェット記録装置の要部(レギュレータ11)構成の一例を示す断面図であり、(a)は、圧力室40の負圧が小さいとき、(b)は、圧力室40の負圧が中間であるとき、(c)は、圧力室40の負圧が大きいときを示す。
【0025】
インク導入口P1は、インクタンク10からの流路に接続しており、所定の圧力でインクが供給されている。インク導入口P1から供給されたインクは、パイロットポート20およびメインポート30を含むインク供給経路50を介して圧力室40に供給される。圧力室40には、記録ヘッド12への流路に接続する記録ヘッド側供給ポートP2が設けれており、記録ヘッド側供給ポートP2を介して記録ヘッド12にインクが供給される。
【0026】
(圧力室)
圧力室40は、圧力室40内外の圧力差に応じて変位するダンパ開放バルブ(変位部材)41を備えている。ダンパ開放バルブ41は、公知のダイアフラムとして構成することができる。例えば、本実施形態では、圧力室40における大気P0に面する側壁を可撓性を有するものとし、当該側壁にメインポート30と対向するようにダンパ開放バルブが設けられている。そして、ダンパ開放バルブ41は、ダンパ開放スプリング42によって、メインポート30とは反対側に付勢されている。そのため、
図2の(a)に示すように、圧力室40における負圧が小さい状態では、ダンパ開放バルブ41は、メインポート30とは反対側(図面左側)に位置しているが、
図2の(b)および(c)に示すように、圧力室40における負圧が大きくなると、大気P0圧に可撓性を有する側壁が押されて、ダンパ開放バルブ41がメインポート30側に変位するようになっている。
【0027】
(メインポート)
メインポート30は、ダンパ封止バルブ(第二弁体)31、ダンパ封止スプリング32およびダンパ封止ゴム33を備えている。ダンパ封止バルブ31は、一方がダンパ封止ゴム33および圧力室40に、他方がダンパ封止スプリング32およびパイロットポート20に対向するように設けられている。
図2の(a)に示すように、メインポート30が閉じた状態(全閉状態)では、ダンパ封止スプリング32によって、ダンパ封止バルブ31がダンパ封止ゴム33に押し付けられ、ダンパ封止バルブ31とダンパ封止ゴム33との間が密閉されて、メインポート30の上流(パイロットポート20)と下流(圧力室40)との間の流路を閉鎖する。
図2の(b)に示すように、メインポート30がやや開いた状態では、ダンパ封止バルブ31が圧力室40とは反対側(パイロットポート20側)に変位し、ダンパ封止バルブ31とダンパ封止ゴム33との間に、メインポート30の上流(パイロットポート20)と下流(圧力室40)とを連通する流路が形成される。
図2の(c)に示すように、メインポート30がさらに開いた状態(全開状態)では、ダンパ封止バルブ31が圧力室40とは反対側(パイロットポート20側)にさらに変位し、ダンパ封止バルブ31とダンパ封止ゴム33との間の流路径がさらに大きくなる。
【0028】
上述したように、圧力室40における負圧が大きくなると、大気P0圧に可撓性を有する側壁が押されて、ダンパ開放バルブ41がメインポート30側に変位するようになっている。そして、ダンパ開放バルブ41は、ダンパ封止バルブ31に、例えば当接するようになっており、ダンパ開放バルブ41がメインポート30側に変位したとき、ダンパ封止バルブ31を、メインポート30を開ける方向(圧力室40とは反対方向)に変位させるようになっている。すなわち、メインポート30は、圧力室40における負圧が大きくなるほどメインポート30の開度が大きくなるように構成されている。
【0029】
(パイロットポート)
パイロットポート20は、ダンパ封止バルブ(第一弁体)21、ダンパ封止スプリング22およびダンパ封止ゴム23を備えている。ダンパ封止バルブ21は、一方がダンパ封止ゴム23およびメインポート30に、他方がダンパ封止スプリング22に対向するように設けられている。
図2の(a)および(b)に示すように、パイロットポート20が閉じた状態では、ダンパ封止スプリング22によって、ダンパ封止バルブ21がダンパ封止ゴム23に押し付けられ、ダンパ封止バルブ21とダンパ封止ゴム23との間が密閉される。
図2の(c)に示すように、パイロットポート20が開いた状態では、ダンパ封止バルブ21がメインポート30とは反対側に変位し、ダンパ封止バルブ21とダンパ封止ゴム23との間に、パイロットポート20の上流(インク導入口P1)と下流(メインポート30)とを連通する流路が形成される。なお、ダンパ封止スプリング22は、ダンパエンド24に固定されている。
【0030】
ここで、ダンパ封止バルブ21には、オリフィス(孔)25が設けられている。そのため、パイロットポート20が閉じた状態であっても、オリフィス25を介してパイロットポート20の上流と下流とを連通し、所定の流量のインクがパイロットポート20を通過可能になっている。そして、パイロットポート20が開いているときは、ダンパ封止バルブ21とダンパ封止ゴム23との間の流路を介して、パイロットポート20が閉じているときよりも多くのインクがパイロットポート20を通過可能なようになっている。
【0031】
上述したように、ダンパ封止バルブ31は、圧力室40における負圧に応じてパイロットポート20側に変位するようになっている。そして、ダンパ封止バルブ31は、ダンパ封止バルブ21に、例えば当接するようになっており、ダンパ封止バルブ31が所定の位置を超えてパイロットポート20側に変位したとき、パイロットポート20が開く方向にダンパ封止バルブ21を変位させる(
図2の(c)の状態)。すなわち、パイロットポート20は、メインポート30の開度が所定の開度以上となったとき(ダンパ封止バルブ31が所定の位置を超えてパイロットポート20側に変位したとき)、パイロットポート20が開かれて、パイロットポート20を通過可能なインクの流量が増大するように構成されている。
【0032】
(インクジェット記録装置の動作)
以上のように、本実施形態に係るインクジェット記録装置100では、パイロットポート20が閉じている状態と、パイロットポート20が開いている状態との二段階に、インクの流量を制御することができる。そして、本実施形態では、通常の印刷時の圧力室40における負圧変化の範囲では、ダンパ封止バルブ31が上述した所定の位置を超えてパイロットポート20側に変位することがなく、パイロットポート20は閉じられた状態となるように構成される。そして、記録ヘッド12の吸引クリーニング時のように、圧力室40における負圧が極端に増大したときに、ダンパ封止バルブ31が上述した所定の位置を超えてパイロットポート20側に変位して、パイロットポート20が開くように構成される。これにより、以下のような効果が奏される。
【0033】
まず、通常の印刷時において、
図2の(a)の状態から、印刷時のインクの吐出によって、記録ヘッド12からインクが失われると、記録ヘッド12における負圧が増大し、記録ヘッド側供給ポートP2を介して記録ヘッド12に接続している圧力室40における負圧も増大する。そして、圧力室40における負圧が増大すると、ダンパ開放バルブ41が、ダンパ封止バルブ31を押し、メインポート30の開度が大きくなる。これにより、オリフィス25を介してインクが圧力室40に供給されるようになる(
図2の(b)の状態)。これにより、記録ヘッド12にインクが補充される。そして、インクが記録ヘッド12に十分に補充されれば、記録ヘッド12および圧力室40の負圧が低減し、最初の状態(
図2の(a)の状態)に戻る。以上の動作により、通常の印刷時において、記録ヘッド12へ必要なインクを首尾よく供給することができる。
【0034】
一方、記録ヘッド12の吸引クリーニング時では、記録ヘッド12からインクが吸引される(吸引工程)ことによって、記録ヘッド12の負圧が通常の印刷時よりも増大し(負圧増大工程)、メインポート30の開度が大きくなり(開工程)、メインポート30の開度が上述した所定の開度以上となったとき(ダンパ封止バルブ31が上述した所定の位置を超えてパイロットポート20側に変位したとき)、ダンパ封止バルブ31がダンパ封止バルブ21を押し、パイロットポート20が開いて、パイロットポート20を通過可能なインクの流量が増大する(流量増大工程)。これにより、大容量のインクを短時間で記録ヘッド12へ流すことができる(
図2の(c)の状態)。
【0035】
従来技術では、記録ヘッドの吸引クリーニング(ハードクリーニング)時には、記録ヘッドへのインク供給不足により、記録ヘッドにおける真空度が増し(絶対真空に近づき)、ノズル抜けの一要因である記録ヘッド内の気泡のサイズが大きくなって記録ヘッドから抜け難くなるという問題が生じる。
【0036】
一方、本実施形態に係るインクジェット記録装置100では、記録ヘッド12のクリーニング時に、大容量のインクを短時間で記録ヘッド12へ流すことができるため、記録ヘッド12内の真空度が過度に上昇することを避け、記録ヘッド内の気泡のサイズの増大を防ぐことができる。ゆえに、記録ヘッド内の気泡をノズルから首尾よく排出することができ、ノズルの復旧確率を向上させることができる。これにより、コンパクトな構成で、ヘッドのクリーニング効果が高いインクジェット記録装置、液体供給装置(機構)および記録ヘッドのクリーニング方法を提供することができる。
【0037】
(オリフィスの孔径)
なお、ダンパ封止バルブ21のオリフィス25の面積は、圧力室40から記録ヘッド12へ向かうインクの流路面積よりも狭いことが好ましい。これにより、記録ヘッド12が通常の印刷を行う際、すなわち、記録ヘッド12および圧力室40の負圧が比較的小さいときに圧力室40に供給されるインクの流量は、圧力室40から記録ヘッド12へ供給し得る最大流量よりも絞られた状態となる。これにより、通常の印刷の際には、インク供給量を絞り、必要以上にインクを供給することを避けることができる。
【0038】
ダンパ封止バルブ21のオリフィス25の面積は、また、印刷時において、最も多くインクを使用するときであっても、十分な流量のインクを供給し得るような面積であることが好ましい。すなわち、ダンパ封止バルブ21のオリフィス25の面積は、印刷時において必要となる最大のインク供給量を通過可能な面積とすることが好ましい。言い換えれば、最も多くインクを使用する状態で印刷を継続しても、パイロットポート20を開かせる程度まで圧力室40における負圧が増大しないように設定されることが好ましい。
【0039】
なお、本実施形態では、オリフィス25が、膨張しない密閉容器に組み込まれている。これにより、パイロットポート20が開く瞬間であっても、オリフィス25の周囲の容器が変形せず、インクの排出量が急激に増大することを好適に避けることができる。
【0040】
(変形例)
なお、本実施形態では、パイロットポート20は、メインポート30の上流に設けられているが、パイロットポート20を、メインポート30の下流に設けてもよい。これによっても、同等の効果を得ることができる。
【0041】
また、
図2に示した各部の形状はあくまでも模式的なものであり、同様の機能を奏するものであれば形状は特に限定されない。
【0042】
また、パイロットポート20は、オリフィス25を有するダンパ封止バルブ21を備える代わりに、
図3に示すようなバタフライ弁(弁体)21’を備える形態であってもよい。
【0043】
バタフライ弁21’を備えたパイロットポート20’では、通常印刷時、
図3(a)に示すように、バタフライ弁21’は、ヒンジ部26に仕組まれたバネによって付勢され、流路に対して垂直な状態に保持されており、バタフライ弁21’の脇(バタフライ弁21’と流路との隙間)から所定の流量のインクが流れるようになっている。一方、吸引クリーニング時には、
図3(b)に示すように、バタフライ弁21’が開き、パイロットポート20’を通過可能なインクの流量を増大させるようになっている。このような構成によっても、本発明の効果を得ることができる。
【0044】
なお、ヒンジ部26のバネは、通常印刷時の負圧ではバタフライ弁21’が動作せず、吸引クリーニング時の負圧でバタフライ弁21’が開くような力でバタフライ弁21’を付勢するように設定されている。すなわち、パイロットポート20’では、ヒンジ部26のバネによって、メインポート30の開度が所定の開度以上となるような負圧が圧力室40において生じたとき、バタフライ弁21’が開かれるようになっている。
【0045】
また、ヒンジ部26にロック機構を設け、通常印刷時には、当該ロック機構によってバタフライ弁21’が流路に対して垂直に固定されており、吸引クリーニング時には、当該ロック機構が解除され、バタフライ弁21’を可動とする構成であってもよい。このとき、上記ロック機構の解除は、メインポート30におけるダンパ封止バルブ31の変位によって行われるようになっていてもよい。すなわち、パイロットポート20’では、ダンパ封止バルブ31が所定の位置を超えてメインポート30を開く方向に変位したとき、ヒンジ部26のロック機構が解除され、バタフライ弁21’が開かれるようになっていてもよい。
【0046】
<付記事項>
以上のように、本実施形態に係るインクジェット記録装置100は、インクを記録媒体に吐出することで記録を行う記録ヘッド12と、記録ヘッド12が吐出するインクを貯留する圧力室40と、圧力室40にインクを供給するインク供給経路50と、インク供給経路50に設けられ、圧力室40における負圧に応じて、当該負圧が大きくなるほど開度が大きくなるように開度を変更するメインポート30と、インク供給経路50におけるメインポート30の上流または下流に設けられ、少なくとも所定の流量のインクが通過可能なパイロットポート20と、を備えており、パイロットポート20は、メインポート30の開度が所定の開度以上となったとき、パイロットポート20を通過可能なインクの流量を増大させるようになっている。
【0047】
上記の構成によれば、記録ヘッド12が通常の印刷を行う際、すなわち、記録ヘッド12および圧力室40の負圧が比較的小さいときには、圧力室40に供給されるインクの流量は圧力室40の負圧に応じて開度が変更されるメインポート30によって規定される。これに対し、記録ヘッド12の吸引クリーニングを行う際、すなわち、記録ヘッド12および圧力室40の負圧が比較的大きくなり、メインポート30の開度が所定の開度以上となるときには、パイロットポート20により、圧力室40に供給されるインクの流量が増大するため、クリーニング時に記録ヘッド12内の気泡が大きくなることが抑制され、気泡が容易に排出されるため、クリーニング効果が向上する。以上のように、上記の構成によれば、圧力室40に供給するインクの流量を、パイロットポート20によって二段階に制御することができるため、コンパクトな構成で、ヘッドのクリーニング効果が高いインクジェット記録装置100を提供することができる。
【0048】
インクジェット記録装置100では、パイロットポート20が、パイロットポート20の上流と下流とを連通するオリフィス25を有するダンパ封止バルブ21を備えた構成からなり、パイロットポート20が閉じているときは、オリフィス25を介してインクがパイロットポート20を通過可能であり、パイロットポート20が開いているときは、パイロットポート20が閉じているときよりも多くのインクがパイロットポート20を通過可能なようになっている。
【0049】
上記の構成によれば、パイロットポート20は、パイロットポート20が閉じた状態では、ダンパ封止バルブ21が有するオリフィス25を介して所定の流量のインクを通過させ、パイロットポート20が開いた状態では、パイロットポート20からより大量のインクを通過させることができる。これにより、簡易かつ低コストな構成で、二段階に流量を制御することができるパイロットポート20を実現することができる。
【0050】
インクジェット記録装置100において、メインポート30は、ダンパ封止バルブ31を備えており、ダンパ封止バルブ31が所定の位置を超えて、メインポート30を開く方向に変位したとき、ダンパ封止バルブ31がダンパ封止バルブ21に当接して、パイロットポート20を開けるようになっている。
【0051】
上記の構成によれば、メインポート30が所定の開度以上となったとき、すなわち、メインポート30が備えるダンパ封止バルブ31が所定の位置を超えて、メインポート30を開く方向に変位したとき、ダンパ封止バルブ31が、パイロットポート20が備えるダンパ封止バルブ21に当接して、ダンパ封止バルブ21を開く方向に変位させることにより、パイロットポート20が開くようになっている。これにより、メインポート30とパイロットポート20とを一体的に構成することができ、簡易かつ低コストな構成で、メインポート30が所定の開度以上となったとき流量を増大させることができるパイロットポート20を実現することができる。
【0052】
インクジェット記録装置100において、圧力室40は、圧力室40における負圧に応じて変位するダンパ開放バルブ41を備えており、ダンパ開放バルブ41が変位することによってダンパ封止バルブ31を変位させるようになっている。
【0053】
上記の構成によれば、圧力室40における負圧に応じてダンパ開放バルブ41が変位してメインポート30が備えるダンパ封止バルブ31を変位させることによりメインポート30の開度を変更させることができる。これにより、簡易な構成で、圧力室40における負圧に応じて開度を変更するメインポート30を実現することができる。
【0054】
インクジェット記録装置100では、ダンパ封止バルブ21のオリフィス25の面積が、圧力室40から記録ヘッド12へ向かうインクの流路面積よりも狭い。
【0055】
上記の構成によれば、記録ヘッド12が通常の印刷を行う際、すなわち、記録ヘッド12および圧力室40の負圧が比較的小さいときに圧力室40に供給されるインクの流量は、圧力室40から記録ヘッド12へ供給し得る最大流量よりも絞られた状態となる。これにより、通常の印刷の際には、インク供給量を絞り、必要以上にインクを供給することを避けることができる。
【0056】
本実施形態に係るレギュレータ11は、記録ヘッド12に液体を供給する液体供給装置であって、供給先に供給する液体を貯留する圧力室40と、圧力室40に液体を供給するインク供給経路50と、インク供給経路50に設けられ、圧力室40における負圧に応じて、負圧が大きくなるほど開度が大きくなるように開度を変更するメインポート30と、インク供給経路50におけるメインポート30の上流または下流に設けられ、少なくとも所定の流量の液体が通過可能なパイロットポート20と、を備えており、パイロットポート20は、メインポート30の開度が所定の開度以上となったとき、パイロットポート20を通過可能な液体の流量を増大させるようになっている。
【0057】
上記の構成によれば、例えば、インクジェット記録装置に組み込まれることによって、本実施形態に係るインクジェット記録装置100と同等の効果を得ることができる。
【0058】
本実施形態に係る記録ヘッド12のクリーニング方法は、記録ヘッド12からインクを記録媒体に吐出することで記録を行うインクジェット記録装置100における記録ヘッド12のクリーニング方法であって、インクジェット記録装置100は、記録ヘッド12と、記録ヘッド12が吐出するインクを貯留する圧力室40と、圧力室40にインクを供給するインク供給経路50と、インク供給経路50に設けられ、圧力室40における負圧に応じて、負圧が大きくなるほど開度が大きくなるように開度を変更するメインポート30と、インク供給経路50におけるメインポート30の上流または下流に設けられ、少なくとも所定の流量のインクが通過可能なパイロットポート20と、を備えており、記録ヘッド12からインクを吸引する吸引工程と、吸引工程において記録ヘッド12からインクが吸引されることによって、圧力室40における負圧が増大する負圧増大工程と、負圧増大工程において圧力室40における負圧が増大することにより、メインポート30の開度が大きくなる開工程と、開工程においてメインポート30の開度が所定の開度以上となったとき、パイロットポート20が、パイロットポート20を通過可能なインクの流量を増大させる流量増大工程と、を包含することを特徴としている。
【0059】
上記の方法によれば、本実施形態に係るインクジェット記録装置100と同等の効果を得ることができる。