【文献】
飯塚 新司,類似部品を用いたパラメータ推定と後継部品の追跡管理による実用的な保守部品の生涯需要予測システムの開発,第74回(平成24年)全国大会講演論文集(4) インタフェース コンピュータと人間社会,日本,一般社団法人 情報処理学会,2012年 3月 6日,p.4-391〜4-392
【文献】
宗形 聡,製品利用環境を考慮した部品寿命分布による保守部品の需要予測,FIT2010 第9回情報科学技術フォーラム 講演論文集 第1分冊 査読付き論文・一般論文 モデル・アルゴリズム・プログラミング ソフトウェア ハードウェア・アーキテクチャ,日本,社団法人 電子情報通信学会,2010年 8月20日,p.167-168
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、一般家庭において利用される機器の販売元は、顧客と長期保守契約を結ぶことが多い。従って、機器の販売元は、機器の製造・販売が終了した場合であっても、販売済の機器の修理に対応するために、修理に必要な部品を数年間保有しなければならないことがある。更に、機器の販売中であっても、お客様をなるべくお待たせしないという更なるCS(Customer Satisfaction)向上のためにも、長期の将来必要となる部品の情報を予めメーカに提供し、生産計画に反映することで、よりスムーズな部品物流体制の構築が可能になると考えられる。但し、過剰な量の部品発注は廃棄損に繋がる為、適正な部品数量の需要予測が求められる。すなわち、機器の販売元は、中長期(年単位)の需要予測を精度良く行う必要がある。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の部品需要予測方法では、将来を予測する仕組みがないため、短期(日単位又は月単位)の需要予測に留まり、中長期(年単位)の需要予測ができない。例えば、特許文献1に記載の部品需要予測方法では、設置から10年しか経過していない機器に対して、更に5年後(設置から15年後)に使用する部品の需要予測ができない。
【0007】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とすることは、中長期(年単位)の需要予測を精度良く行うことが可能な部品需要予測システム等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するための第1の発明は、コンピュータによって構成され、機器の修理に用いられる部品の需要を予測する部品需要予測システムであって、
部品確保期間の入力を受け付ける部品確保期間入力受付手段と、機種が似ている機器の実績機器残存率に基づいて、予測機器残存率を算出する予測機器残存率算出手段と、計算対象の機器の現存台数及び前記予測機器残存率に基づいて、予測設置台数を算出する予測設置台数算出手段と、部品毎又は機種毎に、予測部品交換率を算出する予測部品交換率算出手段と、前記部品確保期間、前記予測設置台数及び前記予測部品交換率の全てを用いて必要部品数量として算出する必要部品数量算出手段と、を具備
し、前記予測部品交換率算出手段は、計算対象の機器の部品交換率の実績値データが所定の年数以上存在するか否かを判定し、更に、前記実績値データが所定の年数以上存在する場合には、前記実績値データにピークがあるか否かを判定し、ピークありの中期予測、ピークなしの中期予測、及び長期予測の3つのパターンを自動判別し、パターンごとに異なる予測処理を行う
ことを特徴とする部品需要予測システムである。第1の発明によって、中長期(年単位)の需要予測を精度良く行うことが可能となる。
また、メンテナンス施策等の外部要因を考慮して、実績がない将来部分を精度良く予測することができる。
【0011】
また、第1の発明は、前記予測部品交換率又は前記必要部品数量の予測外れ度合を算出する予測度合算出手段、を更に具備するようにしても良い。これによって、需要の変動に対応した部品数量を、在庫として保持することができる。
【0012】
第2の発明は、コンピュータによって実行され、機器の修理に用いられる部品の需要を予測する部品需要予測方法であって、前記コンピュータの制御部が、部品確保期間の入力を受け付ける部品確保期間入力受付ステップと、機種が似ている機器の実績機器残存率に基づいて、予測機器残存率を算出する予測機器残存率算出ステップと、計算対象の機器の現存台数及び前記予測機器残存率に基づいて、予測設置台数を算出する予測設置台数算出ステップと、部品毎又は機種毎に、予測部品交換率を算出する予測部品交換率算出ステップと、前記部品確保期間、前記予測設置台数及び前記予測部品交換率の全てを用いて必要部品数量として算出する必要部品数量算出ステップと、を実行
し、前記予測部品交換率算出ステップは、計算対象の機器の部品交換率の実績値データが所定の年数以上存在するか否かを判定し、更に、前記実績値データが所定の年数以上存在する場合には、前記実績値データにピークがあるか否かを判定し、ピークありの中期予測、ピークなしの中期予測、及び長期予測の3つのパターンを自動判別し、パターンごとに異なる予測処理を行うことを特徴とする部品需要予測方法である。第2の発明によって、中長期(年単位)の需要予測を精度良く行うことが可能となる。
また、メンテナンス施策等の外部要因を考慮して、実績がない将来部分を精度良く予測することができる。
【0013】
第3の発明は、コンピュータに、機器の修理に用いられる部品の需要を予測する部品需要予測方法を実行させるためのプログラムであって、前記コンピュータの制御部に、部品確保期間の入力を受け付ける部品確保期間入力受付ステップと、
機種が似ている機器の実績機器残存率に基づいて、予測機器残存率を算出する予測機器残存率算出ステップと、計算対象の機器の現存台数及び前記予測機器残存率に基づいて、予測設置台数を算出する予測設置台数算出ステップと、部品毎又は機種毎に、予測部品交換率を算出する予測部品交換率算出ステップと、前記部品確保期間、前記予測設置台数及び前記予測部品交換率の全てを用いて必要部品数量として算出する必要部品数量算出ステップと、を実行させ
、前記予測部品交換率算出ステップは、計算対象の機器の部品交換率の実績値データが所定の年数以上存在するか否かを判定し、更に、前記実績値データが所定の年数以上存在する場合には、前記実績値データにピークがあるか否かを判定し、ピークありの中期予測、ピークなしの中期予測、及び長期予測の3つのパターンを自動判別し、パターンごとに異なる予測処理を行うためのプログラムである。第3の発明を汎用のコンピュータにインストールすることによって、第1の発明の部品需要予測システムを得ることができるとともに、第2の発明の部品需要予測方法を実行することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、中長期(年単位)の需要予測を精度良く行うことが可能な部品需要予測システム等を提供することができる。
また、メンテナンス施策等の外部要因を考慮して、実績がない将来部分を精度良く予測することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下図面に基づいて、本発明の実施形態を詳細に説明する。本発明は、前述した課題がある機器に対して適用すれば、同様の効果を奏する。
【0017】
図1は、部品需要予測システム1の概要を示す図である。
図1に示すように、部品需要予測システム1は、例えば、端末2とサーバ3がネットワーク6を介して接続されている。ネットワーク6は、例えば、インターネット又はLAN(Local Area Network)等である。端末2は、例えば、PC(Personal
Computer、以下「コンピュータ」)や携帯端末(携帯電話、スマートフォン、タブレット端末等)等、ネットワーク6に接続し、データ通信(HTTP通信、TCP/IP通信など)が可能であれば、どのような機器でも良い。サーバ3も、端末2と同様に、ネットワーク6に接続し、データ通信が可能であれば良いが、望ましくは高性能なサーバ用コンピュータが良い。
【0018】
端末2には、本発明の一形態である部品需要予測プログラム4がインストールされている。また、サーバ3には、本発明の実施形態において利用される各種のデータを記憶するデータベース(以下「DB」)5が構築されている。本発明の実施形態では、端末2が、部品需要予測プログラム4に従って各種の手段として機能し、必要部品数量をユーザに提示する。端末2は、必要に応じて、データの要求命令をサーバ3に送信する。サーバ3は、データの要求に対してDB5を検索し、要求されたデータを端末2に送信する。
【0019】
尚、部品需要予測システム1の構成は、
図1に示す例に限らない。例えば、部品需要予測システム1は、端末2のみで構成されても良い。つまり、端末2が、DB5を備えるようにしても良い。
【0020】
また、部品需要予測プログラム4は、サーバ3にインストールされていても良い。つまり、サーバ3が、部品需要予測プログラム4に従って各種の手段として機能し、必要部品数量をユーザに提示するようにしても良い。この場合、端末2は、ユーザとのインタフェースの役割を果たす。つまり、端末2は、ユーザから入力されるデータをサーバ3に送信し、サーバ3から受信するデータを出力(表示や印刷など)する。
【0021】
また、DB5に代えて、単なるファイルとしてデータを記憶しても良い。また、DB5に記憶されているデータは、外部のサーバから取得するようにしても良い。
【0022】
図2は、端末2(サーバ3)を実現するコンピュータのハードウエア構成図である。尚、
図2のハードウエア構成は一例であり、用途、目的に応じて様々な構成を採ることが可能である。
【0023】
端末2(サーバ3)を実現するコンピュータは、制御部11、記憶部12、メディア入出力部13、通信制御部14、入力部15、表示部16、周辺機器I/F部17等が、バス18を介して接続される。
【0024】
制御部11は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等で構成される。CPUは、記憶部12、ROM、記録媒体等に格納されるプログラムをRAM上のワークメモリ領域に呼び出して実行し、バス18を介して接続された各装置を駆動制御し、コンピュータが行う後述する処理を実現する。ROMは、不揮発性メモリであり、コンピュータのブートプログラムやBIOS等のプログラム、データ等を恒久的に保持している。RAMは、揮発性メモリであり、記憶部12、ROM、記録媒体等からロードしたプログラム、データ等を一時的に保持するとともに、制御部11が各種処理を行う為に使用するワークエリアを備える。
【0025】
記憶部12は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)であり、制御部11が実行するプログラム、プログラム実行に必要なデータ、OS(Operating System)等が格納される。プログラムに関しては、OSに相当する制御プログラムや、後述する処理をコンピュータに実行させるためのアプリケーションプログラムが格納されている。これらの各プログラムコードは、制御部11により必要に応じて読み出されてRAMに移され、CPUに読み出されて各種の手段として実行される。
【0026】
メディア入出力部13(ドライブ装置)は、データの入出力を行い、例えば、CDドライブ(−ROM、−R、−RW等)、DVDドライブ(−ROM、−R、−RW等)等のメディア入出力装置を有する。通信制御部14は、通信制御装置、通信ポート等を有し、コンピュータとネットワーク6間の通信を媒介する通信インタフェースであり、ネットワーク6を介して、他のコンピュータ間との通信制御を行う。ネットワーク6は、有線、無線を問わない。
【0027】
入力部15は、データの入力を行い、例えば、キーボード、マウス等のポインティングデバイス、テンキー等の入力装置を有する。入力部15を介して、コンピュータに対して、操作指示、動作指示、データ入力等を行うことができる。表示部16は、液晶パネル、有機EL等のディスプレイ装置、ディスプレイ装置と連携してコンピュータのビデオ機能を実現するための論理回路等(ビデオアダプタ等)を有する。尚、入力部15及び表示部16は、タッチパネルディスプレイのように、一体となっていても良い。
【0028】
周辺機器I/F(インタフェース)部17は、コンピュータに周辺機器を接続させるためのポートであり、周辺機器I/F部17を介してコンピュータは周辺機器とのデータの送受信を行う。周辺機器I/F部17は、USB等で構成されており、通常複数の周辺機器I/Fを有する。周辺機器との接続形態は有線、無線を問わない。バス18は、各装置間の制御信号、データ信号等の授受を媒介する経路である。
【0029】
図3は、機器設置情報20の一例を示す図である。機器設置情報20は、機器の設置状況を示す情報である。機器設置情報20は、お客さま番号21、機器コード22、メーカーコード23、機種コード24、取付年月日25、取外年月日26等のデータ項目を有する。機器設置情報20は、DB5に記憶されている。
【0030】
お客さま番号21は、機器の所有者であるお客さまを識別する番号である。機器コード22は、機器を識別する識別子である。メーカーコード23は、機器のメーカーを識別する識別子である。機種コード24は、機器の種類を識別する識別子である。
【0031】
取付年月日25は、機器が取り付けられた年月日である。取外年月日26は、機器が取り外された年月日である。取外しの理由は、機器の故障に限らず、機器の所有者の都合の場合もある。取外年月日26は、機器が取り外されるまでの間、NULL(値なし)である。
【0032】
図4は、修理部品情報30の一例を示す図である。修理部品情報30は、機器の修理に用いた交換部品を示す情報である。修理部品情報30は、作業件名31、お客さま番号32、交換部品コード33、作業完了年月日34、交換部品数35等のデータ項目を有する。修理部品情報30は、DB5に記憶されている。
【0033】
作業件名31は、修理作業の件名を識別する識別子である。お客さま番号32は、機器設置情報20のお客さま番号22と同様である。交換部品コード33は、機器の修理に用いた交換部品を識別するコードである。作業完了年月日34は、修理作業が完了した年月日である。交換部品数35は、機器の修理に用いた交換部品の数である。
【0034】
図5は、修理実績情報40の一例を示す図である。修理実績情報40は、修理作業の実績の詳細を示す情報である。修理実績情報40は、作業件名41、お客さま番号42、部品コード43、部品名44、機器コード45、メーカーコード46、部品価格47等のデータ項目を有する。修理実績情報40は、DB5に記憶されている。
【0035】
作業件名41は、修理部品情報30の作業件名31と同様である。お客さま番号42は、修理部品情報30のお客さま番号32と同様である。部品コード43は、機器の部品を識別する識別子であり、コード体系は修理部品情報30の交換部品コード33と同様である。部品名44は、部品コード43によって特定される部品の名称である。機器コード45は、機器設置情報20の機器コード22と同様である。メーカーコード46は、機器設置情報20のメーカーコード23と同様である。部品価格47は、部品コード43によって特定される部品の価格である。
【0036】
部品需要予測システム1の処理の説明に先立ち、部品需要予測の算出式の定式化について纏めて説明する。
【0037】
以下は、算出式に用いられる変数の定義である。
【数1】
【0038】
以下は、実績部品交換率の算出式である。実績部品交換率は、部品ごとに、部品使用対象機器の設置からの経過年毎の設置台数当たりの部品使用数の実績値である。
【数2】
【0039】
以下は、予測設置台数の算出式である。予測設置台数は、将来のある時点での機器の設置台数であり、予測値である。
【数3】
【0040】
以下は、予測部品交換率の算出式である。部品交換率は、将来のある時点での部品交換率であり、予測値である。
【数4】
【0041】
以下は、部品iのm年後までの必要部品数量の算出式である。必要部品数量は、所定の部品確保期間に対する必要部品数量であり、予測値である。
【数5】
【0042】
図6は、部品需要予測システム1の処理の流れを示すフローチャートである。以下では、
図6を中心に説明を行い、必要に応じて、
図7〜
図15を参照する。
【0043】
図6に示すように、端末2の制御部11は、部品確保期間の入力を受け付ける(S1)。部品確保期間は、顧客との保守契約などに合わせて、部品を確保しておく必要がある期間(年)である。部品確保期間は、ユーザが決定し、入力部15を介して、端末2に入力する。端末2の制御部11は、入力される部品確保期間をRAMや記憶部12に記憶する。
【0044】
次に、端末2の制御部11は、機器残存率の予測処理を行う(S2)。ここでは、「機種が似ている機器は、機器残存率が同一である。」という仮定を置く。「機種が似ている機器」は、例えば「機種コードが同一の機器」や「同じ種類の機器(例えば給湯器)でメーカーが同一」、「機器のシリーズが同一(例えば機器コードの一部が一致)」などが考えられるほか、後述の実績機器残存率が存在する範囲で最も近い機器を似ていると定義することも可能であり、これら例示に限られるものではない。DB5には、実績機器残存率(機器残存率の実績値)のデータが記憶されている。
【0045】
図7は、実績機器残存率のデータの一例を示す図である。
図7のグラフは、横軸が「機器設置からの経過年数」、縦軸が「機器残存率」である。
図7に示す例では、ある特定機器について、部品確保期間の機器残存率のデータが含まれている。
【0046】
実績機器残存率のデータがない機器が計算対象の場合、端末2の制御部11は、前述の仮定に従い、機種が似ている機器の実績機器残存率のデータを、計算対象の機器に当てはめて、後述する処理を実行する。例えば、端末2の制御部11は、機種コードを検索キーとして、サーバ3のDB5から、
図7に示すような実績機器残存率のデータを取得する。そして、端末2の制御部11は、取得されるデータを、計算対象の機器に関する予測機器残存率として、RAM又は記憶部12に記憶しておく。
【0047】
図6の説明に戻る。次に、端末2の制御部11は、予測設置台数を算出する(S3)。端末2の制御部11は、前述の式(2)の算出式に従って、予測設置台数を算出する。式(2)におけるE
i,s,tには、計算対象の機器の現存台数を代入する。式(2)におけるF(t)には、S2においてRAM又は記憶部12に記憶されている予測機器残存率を代入する。RAM又は記憶部12に記憶されている予測機器残存率は、例えば、機種コードが同一の機器に関する前経年比機器残存率(実績値)である。
【0048】
このように、計算対象の機器の現存台数に、機種コードが同一の機器に関する前経年比機器残存率(実績値)を乗じることによって、将来のある時点での計算対象の機器の設置台数を予測することができる。
【0049】
図6の説明に戻る。次に、端末2の制御部11は、部品交換率の予測処理を行う(S4)。端末2の制御部11は、前述の式(3)の算出式に従って、予測部品交換率(部品交換率の予測値)を算出する。
【0050】
部品交換率の予測処理は、以下の2通りがある。
・部品単位の部品交換率の予測処理
・機種単位の部品交換率の予測処理
【0051】
最初に、
図8〜
図11を参照しながら、部品単位の部品交換率の予測処理について説明する。部品単位の部品交換率の予測処理では、「部品毎に部品交換率が異なる。」という仮定を置く。
【0052】
図8は、特定機器の部品交換率のデータの一例を示す図である。
図8のグラフは、横軸が「機器設置からの経過年数」、縦軸が「部品交換率」である。
図8に示す例では、ある特定機器について、中盤までの部品交換率のデータが含まれている。終盤が、予測対象となる。
【0053】
部品交換率は、本来、経年に従い、右肩上がりに増加する。しかし、メンテナンス施策などの外部要因によっては、必ずしも右肩上がりにはならない場合もある。本発明の実施の形態では、このような特性を部品毎に個々に自動判別し、実績がない将来部分を精度良く予測する。
【0054】
まず、端末2の制御部11は、計算対象の機器の部品交換率の実績値のデータが所定の年数以上存在するか否かを判定する。所定の年数以上の場合には中期予測、所定の年数未満の場合には長期予測となる。
【0055】
次に、端末2の制御部11は、部品交換率の実績値が所定の年数以上の場合、実績値のグラフデータに「ピーク」があるか否かを判定する。「ピーク」の判定条件は、例えば、「極大値が1つ」、「極大値が複数であれば、1番大きい値と2番目に大きい値との差が所定値以上」などが挙げられる。例えば、故障前の新たな機器買い替え等による設置台数の減衰傾向や故障後も必ずしも修理をせずに新規購入をするというような場合は、本来右肩上がりに増加する部品交換率にピークが生じる。
【0056】
以上のように、端末2の制御部11は、以下の3つのパターンを自動判別し、それぞれのパターンに適した予測を行う。
(第1のパターン)中期予測、ピークあり
(第2のパターン)中期予測、ピークなし
(第2のパターン)長期予測
【0057】
図9は、第1のパターンに関する部品単位の部品交換率の予測処理を説明する図である。
図9に示す例では、実績値が実線、予測値が点線で図示されている。
図9に示す例では、実績値が所定年数以上存在するので、「中期予測」である。また、極大値が1つなので、「ピークあり」である。従って、
図9に示す例は、第1のパターンに属する。尚、
図9では、最終的に部品交換率が0%となる仮定を置いているが、これは、「機器の稼働年数を鑑みた場合に現実的には部品の使用はないと仮定して問題ない経年数」である。
図10及び
図11も同様である。
【0058】
第1のパターンの場合、ピーク以後、メンテナンス施策などの外部要因が発生したものと考えられるので、部品交換率が右肩下がりになる可能性が高い。そこで、
図9に示すように、端末2の制御部11は、中盤までの部品交換率を、「y=ax
b+c」(a<0、b>0、c>0)の累乗近似によって近似する。また、端末2の制御部11は、終盤の部品交換率を、「y=ax+b」(a<0、b>0)の線形近似によって近似する。
【0059】
図10は、第2のパターンに関する部品単位の部品交換率の予測処理を説明する図である。
図10に示す例では、実績値が実線、予測値が点線で図示されている。
図10に示す例では、実績値が所定年数以上存在するので、「中期予測」である。また、極大値が2つ存在し、両者の値に差異がないので、「ピークなし」である。従って、
図10に示す例は、第2のパターンに属する。
【0060】
第2のパターンの場合、メンテナンス施策などの外部要因が発生しなかったものと考えられるので、しばらく部品交換率が維持される可能性が高い。そこで、
図10に示すように、端末2の制御部11は、中盤までの部品交換率を、直近3カ年の加重平均を求めて、その値で一定とする。また、端末2の制御部11は、終盤の部品交換率を、「y=ax+b」(a<0、b>0)の線形近似によって近似する。
【0061】
図11は、第3のパターンに関する部品単位の部品交換率の予測処理を説明する図である。
図11に示す例では、実績値が実線、予測値が点線で図示されている。
図11に示す例では、実績値が所定年数存在しないので、「長期予測」である。従って、
図11に示す例は、第3のパターンに属する。
【0062】
第3のパターンの場合、しばらく部品交換率が右肩上がりになる可能性が高い。そこで、
図10に示すように、端末2の制御部11は、序盤までの部品交換率を、「y=ax」(a>0)の線形近似によって近似する。また、端末2の制御部11は、中盤の部品交換率を、直近3カ年の加重平均を求めて、その値で一定とする。また、端末2の制御部11は、終盤の部品交換率を、「y=ax+b」(a<0、b>0)の線形近似によって近似する。
【0063】
次に、
図12、
図13を参照しながら、機種単位の部品交換率の予測処理について説明する。機種単位の部品交換率の予測処理では、「機種毎に部品交換率を一定とする。」という仮定を置く。
【0064】
図12は、機種コード別標準部品交換率の一例を示す図である。
図12のグラフは、横軸が「機器設置からの経過年数」、縦軸が「部品交換率」である。
図12に示す例では、特定の機種コードの機器に関する実績部品交換率のデータの中から、中央値(メディアン)をプロットしたものである。但し、機種コード別標準部品交換率は、中央値(メディアン)に限らず、平均値や加重平均などでも良い。
【0065】
端末2の制御部11は、前述の仮定に従い、機種コードが同一の機種コード別標準部品交換率のデータを、計算対象の機器に当てはめて、後述する処理を実行する。例えば、端末2の制御部11は、機種コードを検索キーとして、サーバ3のDB5から、
図12に示すような機種コード別標準部品交換率のデータを取得する。そして、端末2の制御部11は、取得されるデータを、計算対象の機器に関する予測部品交換率として、RAM又は記憶部12に記憶しておく。
【0066】
図13は、機種単位の部品交換率の予測処理を説明する図である。
図13(a)に示すグラフでは、中盤までの実績値が図示されている。これに対して、端末2の制御部11は、機種単位の部品交換率の予測処理を行い、終盤の予測部品交換率を算出する。
図13(b)に示すグラフでは、中盤までの実績値と終盤の予測値が図示されている。
【0067】
次に、端末2の制御部11は、必要部品数量を算出する(S5)。端末2の制御部11は、S1において入力される部品確保期間、S3において算出される予測設置台数、及びS4において算出される予測部品交換率を式(4)の算出式に代入し、必要部品数量(予測値)を算出する。すなわち、端末2の制御部11は、部品確保期間(年)、予測設置台数(台)及び部品交換率(個/台・年)の3つを用いることによって、部品毎の必要部品数量(個)を算出する。
【0068】
図6の説明に戻る。次に、端末2の制御部11は、予測部品交換率や必要部品数量の予測外れ度合を算出する(S6)。
【0069】
図14は、部品交換率のみを評価対象とした予測外れ度合の算出処理を説明する図である。
図14に示すグラフは、横軸が「機器設置からの経過年数」、縦軸が「部品交換率」である。
図14に示す例では、経年tでの部品交換率の分布が正規分布に従うと仮定し、予測外れ度合を求めている。
【0070】
経年tでの部品交換率の分布が従う正規分布は、以下の通りである。
【数6】
【0071】
図15は、必要部品数量を評価対象とした予測外れ度合の算出処理を説明する図である。例えば、端末2の制御部11は、過去データの3カ年ずつを学習期間として年度毎の必要部品数量の期待値を算出し、実績値との予測誤差を算出する。
【0072】
端末2の制御部11は、算出結果に基づいて、正規分布の中心のずれを計算する。そして、端末2の制御部11は、正規分布の中心のずれを考慮し、必要部品数量分布を算出する。具体的には、端末2の制御部11は、平均部品数量(期待値)に正規分布の中心のずれ量を加えた値を平均とする正規分布を算出する。
図15には、正規分布の中心のずれを考慮した必要部品数量分布が図示されている。この例では、安全率α%の時の必要部品数量も図示されている。
【0073】
図6の説明に戻る。次に、端末2の制御部11は、予測結果を出力する(S7)。端末2の制御部11は、S4において算出される必要部品数量と、S6において算出される予測外れ度合を表示部16に表示する。
【0074】
以上、本発明の実施の形態における部品需要予測システム1によれば、中長期(年単位)の需要予測を精度良く行うことが可能となる。ひいては、機器の製造・販売が終了した場合であっても、販売済の機器の修理に対応するために必要な部品を適正な数量だけ保有することが可能となる。また、機器の販売中であっても、お客様をなるべくお待たせしないという更なるCS向上のためにも、長期の将来必要となる部品の情報を予めメーカに提供し、生産計画に反映することで、よりスムーズな部品物流体制の構築が可能になる。
【0075】
[本発明の実施の形態による効果]
部品需要予測システム1は、部品単位の部品交換率の予測処理において、計算対象の機器の部品交換率の実績値データが所定の年数以上存在するか否かを判定し、更に、実績値データが所定の年数以上存在する場合には、実績値データにピークがあるか否かを判定し、ピークありの中期予測、ピークなしの中期予測、及び長期予測の3つのパターンを自動判別し、パターンごとに異なる予測処理を行う。これによって、メンテナンス施策等の外部要因を考慮して、実績がない将来部分を精度良く予測することができる。
【0076】
部品需要予測システム1は、機種単位の部品交換率の予測処理において、機種別標準部品交換率を算出し、機種別標準部品交換率を用いて予測処理を行う。これによって、予測が大きく外れることを防ぐことができる。
【0077】
部品需要予測システム1は、予測部品交換率や必要部品数量の予測外れ度合を算出する。これによって、需要の変動に対応した部品数量を、在庫として保持することができる。
【0078】
以上、添付図面を参照しながら、本発明に係る部品需要予測システム等の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。