【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成24年度、経済産業省、産業技術実用化開発事業(土壌汚染対策のための技術開発(原位置処理重金属等土壌汚染対策技術開発))、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【文献】
Sweileh, J.A. ,Determination of cyanide and thiocyanate by a spectrophotometric flow-injection method,Analytica Chimica Acta,Elsevier B.V.,1989年,Vol.220,pp.65-74
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
土壌にアルカリ溶液を加えた後、該土壌を粉砕し、粉砕された該土壌を前記アルカリ溶液中に均一に分散させることで、前記アルカリ溶液へ前記土壌に含まれるシアン化合物が抽出された土壌サンプル溶液を作成する工程と、
第1及び第2の分析装置にそれぞれ前記土壌サンプル溶液を供給し、前記第1の分析装置を用いた連続流れ分析法により、前記土壌に含まれる全シアン及びチオシアンよりなる総シアンを定量すると共に、前記第2の分析装置を用いた連続流れ分析法により、前記チオシアンを定量する工程と、
前記総シアン及び前記チオシアンの定量結果に基づき、前記土壌に含まれる前記全シアンの含有量を算出する工程と、
を有することを特徴とする土壌連続分析方法。
前記第2の流れ分析装置に供給された前記土壌サンプル溶液を、セロハン膜で構成された透析器を介して、前記チオシアンの濃度を測定する比色計に供給することを特徴とする請求項1乃至4のうち、いずれか1項記載の土壌連続分析方法。
前記土壌サンプル溶液を作成する工程では、粉砕された前記土壌の大きさが2mm以下にすることを特徴とする請求項1乃至5のうち、いずれか1項記載の土壌連続分析方法。
前記土壌サンプル溶液を作成する工程では、超音波ホモジナイザーを用いて、前記土壌を粉砕することを特徴とする請求項1乃至6のうち、いずれか1項記載の土壌連続分析方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、非特許文献1及び非特許文献2の方法では、1検体の分析に3時間程度要し、その間、分析測定を継続的に観察しなければならないため、分析工程が煩雑になってしまうという問題があった。
【0010】
そこで、本発明者らは、1時間に20〜30検体のサンプルを自動測定することが可能(言い換えれば、簡便に分析を行うことが可能)な連続流れ分析法を、土壌に含まれる全シアン量の分析に適用するという考えに至った。
【0011】
しかしながら、連続流れ分析法は、水質を対象に規定されており、土壌の分析については規定されていない。そこで、本願の事前検討として、実際に連続流れ分析法を用いて土壌に含まれる全シアン量(チオシアン量を除く)の分析実験を行うことで、連続流れ分析法を用いて土壌に含まれる全シアン量を分析する場合の問題を抽出した。
【0012】
この結果、連続流れ分析法を用いて土壌に含まれる全シアン量を測定しようとした場合、土壌から液体に抽出させたシアンの揮発を抑制する必要があるという知見と、測定した結果が全シアン量ではなく、チオシアン量と全シアン量とを含む総シアン量になるという知見を得た。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明によれば、土壌にアルカリ溶液を加えた後、該土壌を粉砕し、粉砕された該土壌を前記アルカリ溶液中に均一に分散させることで、前記アルカリ溶液へ前記土壌に含まれるシアン化合物が抽出された土壌サンプル溶液を作成する工程と、第1及び第2の分析装置にそれぞれ前記土壌サンプル溶液を供給し、前記第1の分析装置を用いた連続流れ分析法により、前記土壌に含まれる全シアン及びチオシアンよりなる総シアンを定量すると共に、前記第2の分析装置を用いた連続流れ分析法により、前記チオシアンを定量する工程と、前記総シアン及び前記チオシアンの定量結果に基づき、前記土壌に含まれる前記全シアンの含有量を算出する工程と、を有することを特徴とする土壌連続分析方法が提供される。
【0014】
このように、土壌にアルカリ溶液を加えた後、土壌を粉砕し、粉砕された土壌をアルカリ溶液中に均一に分散させることで、アルカリ溶液へ土壌に含まれるシアン化合物を抽出させることが可能となる。
これにより、土壌に含まれる総シアン及びチオシアンを正確に定量することが可能となるので、土壌に含まれる全シアン量を正確に算出することができる。
【0015】
また、請求項2に係る発明によれば、前記総シアンを定量する前に、前記第1の分析装置に供給された前記土壌サンプル溶液を蒸留する蒸留工程と、前記蒸留工程の前に、pHが1以下となるように、前記土壌サンプル溶液に酸及び蒸留試薬を添加する工程と、を有し、前記蒸留工程では、前記酸及び前記蒸留試薬が添加された前記土壌サンプル溶液を加熱することでシアンを気化させ、前記シアンを吸収液に回収することを特徴とする請求項1記載の土壌連続分析方法が提供される。
【0016】
このように、蒸留工程の前に、pHが1以下となるように、土壌サンプル溶液に酸及び蒸留試薬を添加することで、シアンが揮散しやすくなり、その蒸気は吸収液に効率良くシアンを回収できる。
【0017】
また、請求項3に係る発明によれば、前記アルカリ溶液として、水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムを用いることを特徴とする請求項1または2記載の土壌連続分析方法が提供される。
【0018】
このように、アルカリ溶液として、pHが12以上である水酸化カリウム及び水酸化ナトリウムを用いることで、土壌に含まれるシアン化合物をアルカリ溶液中に容易に抽出させることができる。
【0019】
また、請求項4に係る発明によれば、前記蒸留試薬として、塩化第二銅溶液及び塩化スズ溶液を用いることを特徴とする請求項2または3記載の土壌連続分析方法が提供される。
【0020】
このように、蒸留工程の前に、第1の分析装置に供給された土壌サンプル溶液に塩化第二銅溶液及び塩化スズ溶液を添加し、その後、蒸留工程で塩化第二銅溶液及び塩化スズ溶液を含む土壌サンプル溶液を蒸留させることで、土壌に含まれる全シアンの回収率を高めることが可能となる。
【0021】
また、請求項5に係る発明によれば、前記第2の流れ分析装置に供給された前記土壌サンプル溶液を、半透膜で構成された透析器を介して、前記チオシアンの濃度を測定する比色計に供給することを特徴とする請求項1乃至4のうち、いずれか1項記載の土壌連続分析方法が提供される。
【0022】
このように、第2の流れ分析装置に供給された土壌サンプル溶液を、半透膜で構成された透析器を介して、チオシアンの濃度を測定する比色計に供給することで、土壌サンプル溶液に含まれる土壌の微粒子を除去することが可能となる。
これにより、第2の分析装置を構成する比色計を用いて、精度良くチオシアンの濃度を測定することが可能となる。
【0023】
また、請求項6に係る発明によれば、前記土壌サンプル溶液を作成する工程では、粉砕された前記土壌の大きさが2mm以下にすることを特徴とする請求項1乃至5のうち、いずれか1項記載の土壌連続分析方法が提供される。
このように、土壌の大きさを2mm以下にすることで、土壌汚染対策法に準じた土壌分析を行うことが可能となる。
【0024】
また、請求項7に係る発明によれば、前記土壌サンプル溶液を作成する工程では、超音波ホモジナイザーを用いて、前記土壌を粉砕することを特徴とする請求項1乃至6のうち、いずれか1項記載の土壌連続分析方法が提供される。
これにより、容易に、土壌を2mm以下の大きさに均一に粉砕することが可能となる。
【発明の効果】
【0025】
請求項1に係る発明によれば、土壌にアルカリ溶液を加えた後、土壌を粉砕及び均一化することで、土壌中のシアン化合物をアルカリ溶液に効率良く抽出することが可能となる。
したがって、第1及び第2の分析装置にそれぞれ土壌サンプル溶液を供給し、次いで、第1の分析装置を用いた連続流れ分析法により、土壌に含まれる全シアン及びチオシアンよりなる総シアンを定量すると共に、第2の分析装置を用いた連続流れ分析法により、チオシアンを定量し、その後、総シアン及びチオシアンの定量結果に基づいて、土壌に含まれる全シアンの含有量を算出することで、土壌に含まれるチオシアンを除いた正確な全シアンの含有量を算出することができる。
【0026】
また、請求項2に係る発明によれば、蒸留工程の前に、pHが1以下となるように、土壌サンプル溶液に酸及び蒸留試薬を添加し、蒸留工程において、酸及び蒸留試薬が添加された土壌サンプル溶液を加熱してシアンを気化させて、該シアンを吸収液に回収することにより、効率良くシアンを吸収液に回収することができる。
【0027】
また、請求項3に係る発明によれば、蒸留工程の前に、pHが1以下となるように、土壌サンプル溶液に酸及び蒸留試薬を添加することで、シアンを揮散させやすくすることが可能となる。また、アルカリ溶液として、pHが12以上である水酸化カリウム及び水酸化ナトリウムを用いることで、土壌に含まれるシアン化合物をアルカリ溶液中に80%以上抽出させることができる。
【0028】
また、請求項4に係る発明によれば、蒸留工程の前に、第1の分析装置に供給された土壌サンプル溶液に塩化第二銅溶液及び塩化スズ溶液を添加し、その後、蒸留工程で塩化第二銅溶液及び塩化スズ溶液を含む土壌サンプル溶液を蒸留させることで、土壌に含まれる全シアンの回収率を高めることが可能となる。
【0029】
また、請求項5に係る発明によれば、第2の流れ分析装置に供給された土壌サンプル溶液を、半透膜で構成された透析器を介して、チオシアンの濃度を測定する比色計に供給することで、土壌サンプル溶液に含まれる土壌の微粒子を除去することが可能となる。
これにより、第2の分析装置を構成する比色計を用いて、精度良くチオシアンの濃度を測定できる。
【0030】
また、請求項6に係る発明によれば、粉砕された土壌の大きさを2mm以下にすることにより、土壌汚染対策法で規定されたサイズの土壌を分析することができる。
【0031】
また、請求項7に係る発明によれば、超音波ホモジナイザーを用いて、土壌を粉砕することで、容易に、2mm以下の大きさに土壌を均一に粉砕することができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照して本発明を適用した実施の形態について詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、本発明の実施形態の構成を説明するためのものであり、図示される各部の大きさや厚さや寸法等は、実際の分析ユニットの寸法関係とは異なる場合がある。
【0034】
(実施の形態)
図1は、本発明の実施の形態に係る土壌連続分析方法を行う際に使用する分析ユニットを示す概略構成図である。
本実施の形態の土壌連続分析方法を説明する前に、
図1を参照して、本実施の形態の土壌連続分析方法を行う際に使用する分析ユニット10について説明する。
【0035】
分析ユニット10は、土壌サンプル溶液作成部11と、土壌サンプル溶液供給ライン12と、サンプル供給用分岐ライン12−1と、総シアンを定量する第1の分析装置14と、チオシアンを定量する第2の分析装置15と、演算部16と、を有する。
なお、本実施の形態における「総シアン」とは、チオシアンを含まない全シアンと、チオシアンと、を含むシアンのことを言う。
【0036】
土壌サンプル溶液作成部11は、オ−トサンプラー21と、超音波ホモジナイザー22と、を有する。オ−トサンプラー21は、複数のサンプル容器23を支持可能な構成とされている。
【0037】
各サンプル容器23には、アルカリ溶液A、及び土壌B(土壌試料)が収容される。
ところで、シアンは、酸性の液体に触れると揮発性があり、アルカリ性の液体中では安定する性質がある。よって、土壌サンプル溶液Cを作成する際、アルカリ溶液Aを用いることで、土壌Bに含まれるシアンの揮発を抑制し、効率良く土壌Bに含まれるシアン化合物をアルカリ溶液Aに抽出することが可能となる。
したがって、アルカリ溶液A及び土壌Bよりなる土壌サンプル溶液Cを用いることで、総シアン及びチオシアンを正確に定量することが可能となる。
【0038】
また、アルカリ溶液Aとしては、pHが12以上の溶液を用いるとよい。これにより、土壌サンプル溶液Cを作成する際、土壌Bに含まれるシアンの揮発を抑制できる。
具体的には、pHが12以上のアルカリ溶液Aとしては、例えば、水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムを用いるとよい。
【0039】
このように、蒸留工程で土壌サンプル溶液Cに酸及び蒸留試薬を添加し、加熱することで、土壌Bに含まれる総シアンを精度良く定量することが可能となる。
【0040】
アルカリ溶液Aとして水酸化ナトリウムを用いる場合、例えば、土壌試料1検体(土壌B)に対して、例えば、0.05mol/Lの水酸化ナトリウムを添加することができる。
なお、アルカリ溶液Aと土壌Bとが混合された段階では、土壌Bには、2mm以上の大きさの粒が存在している。
【0041】
超音波ホモジナイザー22は、シアンを抽出可能な大きさに土壌Bを粉砕する。具体的には、超音波ホモジナイザー22は、アルカリ溶液Aと混合された土壌Bを2mm以下に粉砕すると共に、粉砕された土壌Bをアルカリ溶液A中に均一に分散させることで、2mm以下の大きさとされた土壌Bよりなる土壌サンプル溶液Cを作成する。
【0042】
このように、2mm以下の大きさに土壌Bを粉砕することで、土壌汚染対策法で規定されたサイズの土壌Bを分析することができる。
また、超音波ホモジナイザー22を用いて土壌Bを粉砕することにより、短時間で、容易に均一化され、かつ2mm以下の大きさに土壌Bを粉砕できる。
【0043】
土壌サンプル溶液供給ライン12は、分析対象とされた土壌サンプル溶液Cを第1の分析装置14(具体的には、後述する第1の分析用ライン26)に供給可能な状態で、第1の分析装置14と接続されている。
【0044】
サンプル供給用分岐ライン12−1は、土壌サンプル溶液作成部11と第1の分析装置14との間に位置する土壌サンプル溶液供給ライン12から分岐されている。
サンプル供給用分岐ライン12−1は、分析対象とされた土壌サンプル溶液C(第1の分析装置14に供給される土壌サンプル溶液Cと同じサンプル溶液)を第2の分析装置15(具体的には、後述する第2の分析用ライン46)に供給可能な状態で、第2の分析装置15と接続されている。
【0045】
つまり、分析対象とされた土壌サンプル溶液Cは、第1及び第2の分析装置14,15にそれぞれ供給される。これにより、平行して、土壌サンプル溶液Cに含まれる総シアン及びチオシアンを定量することが可能となるので、短時間で、総シアン量及びチオシアンを定量できる。
【0046】
第1の分析装置14は、連続流れ分析法により、土壌サンプル溶液Cに含まれる総シアンを定量するための装置であり、第1の分析ライン26と、秤量ポンプ28と、第1乃至第6の供給管31〜36と、蒸留器38と、冷却器39と、排出口41と、加熱槽42と、比色計43と、を有する。
【0047】
第1の分析ライン26は、一端26Aが土壌サンプル溶液供給ライン12と一体とされており、他端26Bが比色計43と接続されている。
第1の分析ライン26は、第1乃至第7の混合コイル部26−1,26−2,26−3,26−4,26−5,26−6,26−7を有する。第1乃至第7の混合コイル部26−1,26−2,26−3,26−4,26−5,26−6,26−7は、この順番で一端26Aから他端26Bに向かう方向に対して離間して配置されている。
【0048】
第1乃至第7の混合コイル部26−1,26−2,26−3,26−4,26−5,26−6,26−7は、第1の分析ライン26の一部をコイル状にすることで構成されている。第1乃至第7の混合コイル部26−1,26−2,26−3,26−4,26−5,26−6,26−7は、土壌サンプル溶液Cと試薬を混合させる機能を有する。
【0049】
秤量ポンプ28は、第1の分析ライン26のうち、一端26A側に位置する部分、冷却器39と第4の混合コイル部26−4との間に位置する第1の分析ライン26、及び第1乃至第6の供給管31〜36のうち、供給側に位置する部分を挟み込むように配置されている。
秤量ポンプ28は、第1の分析ライン26に土壌サンプル溶液Cを供給すると共に、第1乃至第6の供給管31〜36を介して、第1の分析ライン26に液体または空気を供給する。秤量ポンプ28としては、例えば、ペリスタルティックポンプを用いることができる。
【0050】
第1の供給管31は、秤量ポンプ28と第1の混合コイル部26−1との間に位置する第1の分析ライン26から分岐されている。第1の供給管31は、第1の分析ライン26に水を供給する供給管である。
第2の供給管32は、第1の供給管31の分岐位置と第1の混合コイル部26−1との間に位置する第1の分析ライン26から分岐しており、さらに秤量ポンプ28の手前において3つのライン32A,32B,32Cに分岐している。3つのライン32A,32B,32Cは、秤量ポンプ28に挟まれている。
【0051】
ライン32Aは、蒸留試薬を供給する管路であり、第1の分析ライン26内に位置する土壌サンプル溶液Cに蒸留試薬を供給する。
蒸留試薬としては、塩化第二銅を含む試薬を用いる。具体的には、該蒸留試薬としては、例えば、塩化第二銅二水和物、リン酸、グリセリン、及び水を混合させたものを用いることができる。
【0052】
ライン32Bには、空気を供給する管路であり、第1の分析ライン26内に空気を供給する。ライン32Cには、スズ溶液を輸送する供給管であり、第1の分析ライン26内に位置する土壌サンプル溶液Cにスズ溶液を供給する。
具体的には上記スズ溶液としては、例えば、塩化スズ(II)二水和物、塩酸、リン酸、及び水を混合させたものを用いることができる。
【0053】
第3の供給管33は、冷却器39と第3の混合コイル部26−3との間に位置する第1の分析ライン26から分岐している。
第3の供給管33には、吸収液を供給する管路であり、蒸留器38により得られるシアン蒸気を冷却器39で冷却し、吸収液で捕集する。吸収液としては、例えば、水酸化ナトリウムを用いることができる。
【0054】
第4の供給管34は、第4の混合コイル部26−4の直前に位置する(上流側に位置する)第1の分析ライン26から分岐しており、さらに秤量ポンプ28の手前において2つのライン34A,34Bに分岐している。2つのライン34A,34Bは、秤量ポンプ28に挟まれている。
ライン34Aは、緩衝液を供給する管路であり、第1の分析ライン26内に位置する土壌サンプル溶液Cに緩衝液を供給する。緩衝液としては、例えば、リン酸二水素カリウムやリン酸水素二ナトリウム等のリン酸塩緩衝液を用いることができる。また、ライン34Bは、第1の分析ライン26に空気を供給する。
【0055】
第5の供給管35は、第4の混合コイル部26−4と第5の混合コイル部26−5との間に位置する第1の分析ライン26から分岐している。第5の供給管35は、クロラミンT溶液を供給する管路であり、第1の分析ライン26内に位置するシアンを捕集した吸収液にクロラミンT溶液を供給する。
【0056】
第6の供給管36は、第5の混合コイル部26−5と第6の混合コイル部26−6との間に位置する第1の分析ライン26から分岐している。第6の供給管36は、4−ピリジンカルボン酸−ピラゾロン溶液を供給する管路であり、第1の分析ライン26内に位置するシアンを捕集した吸収液に4−ピリジンカルボン酸−ピラゾロン溶液を供給する。
【0057】
蒸留器38は、第2の混合コイル部26−2を収容している。蒸留器38は、第2の混合コイル部26−2を通過し、かつ蒸留試薬及びスズ溶液が添加された土壌サンプル溶液Cを加熱して蒸発させることで、目的の成分であるシアンを蒸気とともに蒸留する。
土壌サンプル溶液Cを加熱する温度としては、例えば、145℃を用いることができる。
【0058】
冷却器39は、蒸留器38と第3の供給管33の分岐位置との間に位置する第1の分析ライン26に設けられている。冷却器39は、蒸留器38により発生したシアンを含む蒸気を冷却することで回収する。また、冷却器39の下方より、蒸留残渣を排出させえる。ここでの蒸留残渣とは、145℃で気化しない蒸留試薬中の銅、スズ、グリセリン、リン酸、及び土壌サンプル液C中の土壌粒子等のことをいう。
排出口41は、第3の混合コイル部26−3の下流側に設けられている。排出口41は、蒸留操作により発生した不揃いな気泡を除去する。
【0059】
加熱槽42は、クロラミンT溶液及び4−ピリジンカルボン酸−ピラゾロン溶液が添加されたシアンを捕集した吸収液を混合させる第7の混合コイル部26−7を収容するように配置されている。
加熱槽42は、所定の温度(例えば、60℃)に加熱することで、クロラミンT溶液及び4−ピリジンカルボン酸−ピラゾロン溶液が添加されたシアンを捕集した吸収液の反応を促進させる。これにより、シアンを捕集した吸収液が総シアンの濃度に応じて着色される。
【0060】
比色計43は、加熱槽42の下流側に配置されており、第1の分析ライン26の他端26Bと接続されている。比色計43は、物質による光の吸収を利用することで、着色された吸収液中に溶解している総シアン(全シアン及びチオシアンを含むシアン)の濃度を測定する。その後、測定に使用された吸収液は、排出される。
また、比色計43は、演算部16と電気的に接続されており、測定した総シアンの濃度に関するデータを演算部16に送信する。
上記第1の分析装置14は、流れ分析通則JISK0126の4.2項連続流れ分析法に準じた装置である。
【0061】
第2の分析装置15は、連続流れ分析法により、土壌サンプル溶液Cに含まれるチオシアンの濃度を測定するための装置であり、第2の分析ライン46と、秤量ポンプ48、第1乃至第4の供給管51〜54と、透析器56と、排出ライン57と、比色計58と、を有する。
【0062】
第2の分析ライン46は、一端46Aがサンプル供給用分岐ライン12−1と一体とされており、他端46Bが比色計58と接続されている。
第2の分析ライン46は、第1及び第2の混合コイル部46−1,46−2を有する。第1及び第2の混合コイル部46−1,46−2は、この順番で一端46Aから他端46Bに向かう方向に対して設けられている。
【0063】
第1及び第2の混合コイル部46−1,46−2は、第2の分析ライン46の一部をコイル状にすることで構成されている。第1及び第2の混合コイル部46−1,46−2は、土壌サンプル溶液Cを混合させる機能を有する。
【0064】
秤量ポンプ48は、第2の分析ライン46のうち、一端46A側に位置する部分、及び第1乃至第4の供給管51〜54のうち、供給側に位置する部分を挟み込むように配置されている。秤量ポンプ48は、第2の分析ライン46に土壌サンプル溶液Cを供給すると共に、第1乃至第4の供給管51〜54を介して、第2の分析ライン46に液体または空気を供給する。
秤量ポンプ48としては、例えば、ペリスタルティックポンプを用いることができる。
【0065】
第1の供給管51は、秤量ポンプ48と第1の混合コイル部46−1との間に位置する第2の分析ライン46から分岐されている。第1の供給管51は、空気を供給する管路であり、第2の分析ライン46内に空気を供給する。
【0066】
第2の供給管52は、第1の供給管51の分岐位置と第1の混合コイル部46−1との間に位置する第2の分析ライン46から分岐している。
第2の供給管52は、第1の硝酸溶液を供給する管路であり、第2の分析ライン46内に位置する土壌サンプル溶液Cに第1の硝酸溶液を供給する。この場合、第1の硝酸溶液としては、例えば、硝酸、エタノール、及び水を含む硝酸溶液を用いることができる。
【0067】
第3の供給管53は、透析器56と接続されており、秤量ポンプ48の手前において2つのライン53A,53Bに分岐している。2つのライン53A,53Bは、秤量ポンプ48に挟まれている。
ライン53Aは、第2の硝酸溶液を輸送する供給管であり、第2の分析ライン46内に位置する土壌サンプル溶液Cに第2の硝酸溶液を供給する。この場合、第2の硝酸溶液としては、例えば、硝酸、エタノール、及び水を含む硝酸溶液を用いることができる。
ライン53Bは、空気を供給する管路であり、第2の分析ライン46内に空気を供給する。
【0068】
第4の供給管54は、透析器56と第2のコイル部46−2との間に位置する第2の分析ライン46から分岐している。第4の供給管54は、フェリシアン溶液を共有する管路であり、透析器56を通過し、かつ第2の分析ライン46内に位置する土壌サンプル溶液Cに硝酸第二鉄溶液を供給する。
【0069】
透析器56は、第1のコイル部46−1と第4の供給管54との間に位置する第2の分析ライン46に設けられている。透析器56は、第1のコイル部46−1を介して供給された土壌サンプル溶液Cに含まれる土壌Bの微粒子を除去する。
排出ライン57は、透析器56により通過しなかった土壌サンプル溶液C及び土壌Bの微粒子を排出する。
【0070】
透析器56としては、半透膜で構成された透析器を用いるとよい。該半透膜としては、例えば、セロハン等を用いることができる。
これにより、土壌サンプル溶液Cに含まれる土壌Bの微粒子を除去することが可能となるので、第2の分析装置15を構成する比色計58を用いて、精度良くチオシアンの濃度を測定することが可能となる。
【0071】
比色計58は、第2の分析ライン46の他端46Bと接続されている。比色計58には、透析器56を通過し、かつ硝酸第二鉄溶液が添加された土壌サンプル溶液Cが供給される。
比色計58は、着色された土壌サンプル溶液C中に溶解しているチオシアンの濃度を測定する。その後、測定に使用された土壌サンプル溶液Cは、排出される。
また、比色計58は、演算部16と電気的に接続されており、測定したチオシアンの濃度に関するデータを演算部16に送信する。
【0072】
演算部16は、第1の分析装置14を構成する比色計43、及び第2の分析装置15を構成する比色計58と電気的に接続されている。演算部16は、比色計43,58から送信された総シアン及びチオシアンの濃度に関するデータを受信し、総シアン及びチオシアンの濃度に基づいて、土壌Bに含まれる総シアンの含有量及びチオシアンの含有量を演算により求める。
次いで、演算部16は、総シアンの含有量からチオシアンの含有量を引き算することで、土壌Bに含まれる全シアンの含有量を算出する。演算部16としては、例えば、コンピュータを用いることができる。
【0073】
次に、
図1を参照して、
図1に示す分析ユニット10を用いた本実施の形態の土壌Bの連続流れ分析方法について説明する。
始めに、サンプル容器23内に、アルカリ溶液A及び土壌Bを混合し、次いで、超音波ホモジナイザー22を用いて、土壌Bを2mm以下に粉砕すると共に、粉砕された土壌Bをアルカリ溶液A中に均一に分散させることで土壌Bからアルカリ溶液Aにシアン化合物を抽出し、アルカリ溶液A及び粉砕された土壌Bよりなる土壌サンプル溶液Cを作成する。
【0074】
ところで、シアンは、酸性の液体に触れると揮発性があり、アルカリ性の液体中では安定する性質がある。よって、土壌サンプル溶液Cを作成する際、アルカリ溶液Aを用いることで、土壌Bに含まれるシアンの揮発を抑制した上で、効率良く土壌中のシアン化合物をアルカリ溶液Aに抽出することが可能となる。
よって、アルカリ溶液A及び粉砕された土壌Bよりなる土壌サンプル溶液Cを用いることで、総シアン及びチオシアンを正確に定量することが可能となる。
【0075】
また、土壌サンプル溶液Cを作成する際に使用するアルカリ溶液Aとしては、例えば、pHが12以上のアルカリ溶液Aを用いるとよい。このように、pHが12以上のアルカリ溶液Aを用いることで、土壌サンプル溶液Cを作成する際、土壌Bに含まれるシアンが揮発することを抑制できる。
【0076】
具体的には、pHが12以上のアルカリ溶液Aとしては、例えば、水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムを用いるとよい。
このように、アルカリ溶液Aとして、pHが12以上である水酸化カリウム及び水酸化ナトリウムを用いることで、土壌Bに含まれるシアン化合物をアルカリ溶液A中に80%以上抽出することが可能となる。
一方、pHが12未満の場合、シアン化合物がアルカリ溶液A中に80%未満しか抽出されない(後述する「実験例1」参照)。環境庁の要調査項目等調査マニュアルにおいて、回収試験の回収率は、80〜120%にするとの記載がある。よって、上記アルカリ溶液Aとして、pHが12以上のものを用いるとよい。
【0077】
アルカリ溶液Aとして水酸化ナトリウムを用いる場合、例えば、土壌試料1検体(土壌B)に対して、例えば、0.05mol/Lの水酸化ナトリウムを添加することができる。
【0078】
作成された土壌サンプル溶液Cは、土壌サンプル溶液供給ライン12を介して、第1の分析装置14の第1の分析ライン26に供給されると共に、サンプル供給用分岐ライン12−1を介して、第2の分析装置15の第2の分析ライン46に供給される。
【0079】
土壌サンプル溶液Cは、第1及び第2の分析装置14,15で同時に分析されるが、始めに、第1の分析装置14で行われる総シアンの分析方法(定量方法)について説明する。
始めに、第1の分析ライン26に供給された土壌サンプル溶液Cを秤量ポンプ28により空気で分節しながら、蒸留工程の前に、pHが1以下となるように、土壌サンプル溶液Cに蒸留試薬、酸を含むスズ溶液を添加して混合する。
【0080】
このように、蒸留工程の前に、pHが1以下となるように、土壌サンプル溶液Cに酸及び蒸留試薬を添加することで、シアンが揮散しやすくなるため、吸収液に効率良くシアンを回収できる。
なお、添加する酸としては、例えば、リン酸、硫酸等を用いることができる。
例えば、蒸留工程時の各試薬濃度は、リン酸1mol/L、塩化第二銅溶液0.02mol/L、グリセリン2.3mol/L、2.1mol/Lの塩酸で調整した塩化スズ溶液0.04mol/Lを用いるとよい。
【0081】
このとき、蒸留試薬としては、塩化第二銅を含む試薬を用いる。具体的には、該蒸留試薬としては、例えば、塩化第二銅二水和物、リン酸、グリセリン、及び水を混合させたものを用いることができる。
また、上記スズ溶液としては、例えば、塩化スズ(II)二水和物、塩酸、リン酸、及び水を混合させたものを用いることができる。
【0082】
次いで、蒸留器38により、蒸留試薬及びスズ溶液が添加された土壌サンプル溶液Cを所定の温度(例えば、145℃)で加熱することで蒸留処理を行う(蒸留工程)。蒸留処理で発生したシアンを含む蒸気は、冷却器39により冷却され、吸収液により回収される。
【0083】
次いで、緩衝液、クロラミンT溶液、及び4−ピリジンカルボン酸−ピラゾロン溶液が添加された吸収液は、加熱槽42で所定の温度(例えば、60℃)で加熱することで、クロラミンT溶液及び4−ピリジンカルボン酸−ピラゾロン溶液とシアンとの反応を促進させる。その後、吸収液は、比色計43に供給される。
【0084】
次いで、比色計43により、吸収液に含まれる総シアンの濃度が測定され、該総シアンの濃度に関するデータが演算部16に送信される。
上記第1の分析装置14を用いた総シアン量の分析の試験方法は、シアン化合物JISK170−9を参考としている。
【0085】
次に、第2の分析装置15を用いて行われるチオシアンの濃度の分析方法について説明する。
始めに、第2の分析ライン46に供給された土壌サンプル溶液Cを秤量ポンプ48により空気で分節しながら、土壌サンプル溶液Cに第1の硝酸溶液を添加して混合する。
第1の硝酸溶液としては、例えば、硝酸、エタノール、及び水を含む硝酸溶液を用いることができる。
【0086】
次いで、第1の硝酸溶液が添加された土壌サンプル溶液C、及び第2の硝酸溶液を透析器56に供給することで、透析器56により、土壌サンプル溶液Cに含まれる土壌Bの微粒子を除去する。第2の硝酸溶液としては、例えば、硝酸、エタノール、及び水を含む硝酸溶液を用いる。
このとき、半透膜で構成された透析器56を用いるとよい。これにより、土壌サンプル溶液Cに含まれる土壌Bの微粒子を除去し、チオシアンイオンと分離することが可能となるので、第2の分析装置15を構成する比色計58を用いて、精度良くチオシアンの濃度を測定することが可能となる。
【0087】
次いで、透析器56を通過した土壌サンプル溶液Cに硝酸第二鉄溶液を混合した後、比色計58に供給する。次いで、比色計58により、土壌サンプル溶液Cに含まれるチオシアンの濃度が測定され、チオシアンの濃度に関するデータが演算部16に送信される。
【0088】
このように、第1及び第2の分析装置14,15のそれぞれに土壌サンプル溶液Cを供給し、第1の分析装置14を用いて総シアンの濃度を測定すると共に、第2の分析装置15を用いてチオシアンの濃度を測定することで、自動で、かつ短時間で総シアン及びチオシアンの濃度を測定できる。
【0089】
その後、演算部16により、総シアンの含有量及びチオシアンの含有量を演算により求め、その後、総シアンの含有量からチオシアンの含有量を引き算することで、土壌Bに含まれる全シアン量(チオシアンを除く)を算出する。
【0090】
本実施の形態の土壌の連続流れ分析方法によれば、土壌Bにアルカリ溶液Aを加えた後、ホモジナイザーを用いて、土壌Bを粉砕及び均一化し、土壌Bよりアルカリ溶液Aにシアン化合物を抽出することで、土壌Bに含まれるシアンの揮発が抑制されるため、総シアン及びチオシアンの濃度を正確に測定することが可能となる。
【0091】
したがって、第1及び第2の分析装置14,15にそれぞれ土壌サンプル溶液Cを供給し、次いで、第1の分析装置15を用いた連続流れ分析法により、土壌Bに含まれる全シアン及びチオシアンよりなる総シアンの濃度を測定すると共に、第2の分析装置15を用いた連続流れ分析法により、チオシアンの濃度を測定し、その後、総シアン及びチオシアンの濃度に基づき、土壌Bに含まれる全シアンの含有量を算出することで、土壌Bに含まれるチオシアンを除いた正確な全シアンの含有量を得ることができる。
【0092】
また、第1及び第2の分析装置14,15にそれぞれ土壌サンプル溶液Cを供給し、第1の分析装置14を用いて連続流れ分析法により、土壌Bに含まれる総シアンの濃度を測定すると共に、第2の分析装置を用いた連続流れ分析法により、チオシアンの濃度を測定することで、総シアン及びチオシアンの濃度を平行して測定することが可能となる。
これにより、総シアン及びチオシアンの濃度の測定時間が短縮され、スループットを向上させることができる。
【0093】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明はかかる特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0094】
(実験例1)
実験例1では、
図1に示す土壌サンプル溶液作成部11を用いて、実汚染土D1を以下の方法で分析した。
始めに、サンプル容器23である12mLの蓋付き遠沈管5本に、それぞれ0.2gの実汚染土D1を精秤分取した。次いで、上記蓋付き遠沈管に、500mmol/L、50mmol/L、5mmol/L、0.5mmol/L、及び0.05mmol/Lの水酸化ナトリウム溶液を10mL(アルカリ溶液A)添加した。
【0095】
上記水酸化ナトリウム溶液の各濃度におけるpHを測定したところ、500mmol/LでpH13.8、50mmol/LでpH13.0、5mmol/LでpH12.0、0.5mmol/LでpH10.9、0.05mmol/LでpH9.6であった。
このとき、pH計としては、pH計HM−30P(東亜DKK社製)を用いた。
【0096】
次いで、超音波ホモジナイザー22により、2mm以下の大きさとなるように80秒間実汚染土D1を粉砕し、粉砕された実汚染土D1を上記水酸化ナトリウム溶液中に均一に分散させることで、シアン化合物を抽出し、土壌サンプル溶液Cを作成した。土壌サンプル溶液Cは、非特許文献2に開示されたNSOF法を用いて全シアン濃度を測定した。この結果を表1に示す。
なお、表1に示す全シアン回収率は、実汚染土D1の全シアン含有量から全シアンが100%抽出された際の土壌サンプル溶液Cの全シアン濃度と比較することで算出した。
【0097】
表1を参照するに、水酸化ナトリウムの濃度が0.05mmol/Lのときの全シアンの回収率は、77%であった。また、水酸化ナトリウムの濃度が0.5mmol/Lのときの全シアンの回収率は、78%であった。
また、水酸化ナトリウムの濃度が5mmol/L以上の場合において、土壌中に含まれる全シアンの80%以上を回収できることが確認できた。また、土壌サンプル溶液CのpHがpH12.0以上13.8以下において、全シアンを80%以上回収できることが確認できた。
【0099】
(実験例2)
実験例2では、アルカリ溶液Aとして50mmol/Lの水酸化ナトリウム(pH13)を用いて、酸であるリン酸と、グリセリン、塩化第二銅二水和物、塩化スズ(II)二水和物、塩酸及び水よりなる蒸留試薬を添加した後、実験例1で使用したPH計を用いてPHを測定した。その結果、蒸留前の段階における土壌サンプル溶液CのPHは、0.95であり1以下となっている。
【0100】
(実施例)
実施例では、実汚染土D1、実汚染土D2、実汚染土D3、模擬砂質土E1、模擬砂質土E2、模擬粘性土F1、模擬粘性土F2及び模擬粘性土F3を土壌Bとして用いた。
【0101】
また、
図1に示す第1の分析装置14及び第2の分析装置15を用いて、チオシアン標準液G1(チオシアンが45mg/kg含有)及びチオシアン標準液G2(チオシアンが220mg/kg含有)を分析することで、土壌サンプル溶液Cに含まれる総シアンの濃度及びチオシアンの濃度を測定し、
図3に示す結果から総シアン濃度とチオシアン濃度との関係式として、下記式(1),(2)を求めた。また、チオシアンが含まれていない全シアン濃度を求める式を下記式(3)に示す。
図3は、土壌サンプル溶液に含まれる総シアンの濃度及びチオシアンの濃度の関係を示す図である。
y=0.1515x+3.6561・・・(1)
R
2=1・・・(2)
C=z−y・・・(3)
【0102】
なお、上記式(1)において、xは測定により得られたチオシアン濃度を示しており、yはチオシアン濃度xが第1の分析装置14から得られる総シアン濃度に影響を与える総シアン濃度を示している。
また、上記式(2)は、上記式(1)の精度を示しており、Rは相関係数を示している。
また、上記式(3)において、Cはチオシアンが含まれていない全シアン濃度を示しており、zは第1の分析装置14により取得される総シアン濃度を示している。
つまり、全シアン濃度は、第1の分析装置14により求められる総シアン濃度から上記式(1)で求められるyを引くことで求められる。
【0103】
なお、上記関係式は、分析毎(具体的には、一度停止させた第1及び第2の分析装置14,15を再び起動させ分析を実施する度)に作成するものとする。
第1の分析装置14の状態により上記式(1),(2)が変わるため、分析毎に、上記式(1),(2)を作成し直すことで、分析毎の分析精度を保つことができる。
また、上記式(1)の関係が大幅にくずれる場合、第1の分析装置14に何か不具合がある可能性が考えられるため、この場合、第1の分析装置14のメンテナンスを行う。
【0104】
実施例では、
図1に示す分析ユニット10を用いて、上記土壌Bを以下の方法で分析した。
始めに、0.2gの土壌Bをサンプル容器23である12mLの蓋付き遠沈管に精秤分取し、蓋付き遠沈管に0.05mol/Lの水酸化ナトリウム溶液10mL(アルカリ溶液A)を添加した。
【0105】
次いで、超音波ホモジナイザー22により、2mm以下の大きさとなるように80秒間土壌Bを粉砕し、土壌Bを粉砕し、粉砕された土壌Bを水酸化ナトリウム溶液中に均一に分散させることで、シアン化合物を抽出し、土壌サンプル溶液Cを作成した。土壌サンプル溶液Cは、第1及び第2の分析装置14,15に供給した。
【0106】
次いで、第1の分析装置14を用いて、土壌サンプル溶液Cの連続蒸留処理を行った。該連続蒸留処理の条件としては、土壌サンプル溶液Cを0.5mL/検、純水を1.0mL/検、蒸留試薬(塩化銅(II)二水和物1.0g、リン酸70mL、グリセリン200mL、及び水で全量1000mLに調製)を1.5mL/検、スズ溶液(塩化スズ(II)二水和物4.2g、塩酸16mL、リン酸50mL、水で全量100mLに調製)を0.15mL/検、空気1.2mL、蒸留コイル容積7mL、蒸留温度145℃を用いた。
【0107】
次いで、冷却器6により、蒸留処理により発生したシアンを含む蒸気を冷却し、吸収液15(例えば、水酸化ナトリウム)を用いて回収した。その後、緩衝液(例えば、リン酸二水素カリウムとリン酸水素二ナトリウムのリン酸塩緩衝液)、クロラミンT溶液、及び4−ピリジンカルボン酸−ピラゾロン溶液を添加した。
次いで、加熱槽43で60℃の温度で、吸収液に含まれるシアンとクロラミンT溶液及び4−ピリジンカルボン酸−ピラゾロン溶液とを反応させ、その後、比色計43を用いて吸収液に含まれる総シアンの濃度を測定し、これに基づいて、総シアンの含有量を求めた。
【0108】
総シアンの含有量については、実汚染土D1、実汚染土D2、実汚染土D3、模擬砂質土E1、模擬砂質土E2、模擬粘性土F1、模擬粘性土F2、模擬粘性土F3、及び模擬粘性土F4について算出した。
【0109】
ここで、模擬砂質土E1,E2及び模擬粘性土F1,F2,F3の作成方法について説明する。
始めに、一定量(100g程度)の模擬砂質土または模擬粘性土に、シアン換算濃度として50mg/kgとなるようにフェロシアン溶液またはフェリシアン溶液を5mL程度添加して湿試料を作成し、該湿試料を十分に攪拌した。
次いで、数回攪拌させながら、該湿試料を40℃の温度で完全に乾燥させ、その後、再び混合を行うことで、模擬砂質土E1,E2及び模擬粘性土F1,F2を作成した。
【0110】
模擬粘性土F3,F4では、一定量(100g程度)の模擬粘性土にシアン換算濃度として10及び50mg/kgとなるようにフェロシアン溶液を5mL程度添加し、続けて、シアン換算濃度として100及び50mg/kgとなるようにチオシアン溶液を5mL程度添加して湿試料を作成した。
次いで、数回攪拌させながら、該湿試料を40℃の温度で完全に乾燥させ、その後、再び混合を行うことで、模擬粘性土F3,F4を作成した。
【0111】
第1の分析装置14の分析と平行して、第2の分析装置15を用いて、土壌サンプル溶液Cに含まれるチオシアンの濃度を測定した。チオシアンの濃度については、模擬粘性土F3及び模擬粘性土F4についてのみ測定した。
具体的には、以下の方法により、チオシアンの濃度を測定した。
始めに、土壌サンプル溶液Cに第1の硝酸溶液(硝酸5mL、エタノール6mL、水で全量100mL)を添加して透析器56に供給すると共に、第2の硝酸溶液(硝酸5mL、エタノール6mL、水で全量100mL)を透析器56に供給した。
【0112】
次いで、透析器56を通過した土壌サンプル溶液Cに硝酸第二鉄溶液を添加し、混合コイル46−2を用いて混合した後、比色計58を用いて土壌サンプル溶液Cに含まれるチオシアンの濃度を測定した。
チオシアンの濃度については、模擬粘性土F3,F4についてのみ測定した。
【0113】
上記実験により得られた総シアン含有量、全シアンの含有量、及びチオシアンの含有量を表1に示す。
【0115】
なお、表2に示す実施例のデータのうち、チオシアンの含有量の欄に記載された模擬粘性土F2の100、模擬粘性土F3の230、チオシアン標準液G1の100、及びチオシアン標準液G2の500は、チオシアンの含有量を示している。
また、表2において、模擬粘性土F2の括弧内の数値である45、模擬粘性土F3の括弧内の数値である100、チオシアン標準液G1の括弧内の数値である45、及びチオシアン標準液G2の括弧内の数値である220は、シアン換算したチオシアン含有量の数値を示している。
【0116】
(比較例)
図2は、非特許文献2に開示された蒸留装置の概略構成を示す図である。
比較例では、
図2に示す非特許文献2に開示された加熱蒸留装置100を用いて、土壌サンプル溶液を作成した。加熱蒸留装置100は、丸底フラスコ101と、丸底フラスコ101に液体を供給可能な状態で、丸底フラスコ101上に配置された試薬注入口102と、受け器103と、を有しており、JIS K0102に準拠している。
【0117】
比較例においても、実施例と同様に、実汚染土D1、実汚染土D2、実汚染土D3、模擬砂質土E1、模擬砂質土E2、模擬粘性土F1、模擬粘性土F2、模擬粘性土F3、及び模擬粘性土F4を土壌Bとして用いた。
【0118】
次に、
図2を参照して、土壌サンプル溶液の作成方法について説明する。
始めに、土壌Bを5〜10gを丸底フラスコ101に分取した後、丸底フラスコ101に純水250mLを添加して、フェノールフタレイン溶液でpHを確認(アルカリ性の場合、リン酸でpH7に調整)した。次いで、丸底フラスコ101に沸騰石を10ピース入れ、丸底フラスコ101を加熱した。
【0119】
次いで、試薬注入口102を介して、10mLのリン酸、10mLの塩化銅(II)二水和物(89g/L)、及び5mLの塩化スズ(II)二水和物(500g/L)を丸底フラスコ101に供給した。
また、受け器103には、水酸化ナトリウム溶液(20g/L)を20mL入れ、2〜3mL/minの蒸留速度で、150mLまで蒸留した。
次いで、純水を用いて250mLにメスアップすることで、土壌サンプル溶液を作成した。
【0120】
その後、全シアンの測定には、分光光度計U2910(日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて、土壌サンプル溶液に含まれる全シアン(この場合、チオシアンを含む)の濃度を測定した。この結果を表1に示す。
【0121】
(実施例及び比較例の測定結果について)
表1を参照するに、比較例及び実施例の実汚染土D1〜D3、及び比較例及び実施例の模擬粘性土F1,F2の全シアンの含有量の差は小さいことから、この2つの分析方法の相関がよいことが分かった。
また、全シアンの含有濃度が1000mg/kg以上の土壌B(実汚染土D2,D3)においても比較例及び実施例の分析方法の相関がよいことが分かった。
【0122】
模擬粘性土F2の測定結果から、実施例では、総シアンの含有量が68mg/kgであり、チオシアン濃度を補正することにより、全シアンの含有量は、49mg/kgとなった。このことから、実施例の分析方法では、チオシアンの影響を受けない全シアンの含有量を測定可能なことが確認できた。
また、模擬粘性土F2の測定結果から、実施例では、チオシアンを90%程度回収することが可能であり、精度の高い分析が可能なことが確認できた。模擬粘性土F2の調製チオシアン濃度のシアン換算濃度は50mg/kgである。よって、模擬粘性土F2におけるチオシアン濃度のシアン換算濃度で45mg/kgであるため、チオシアンを90%回収可能である。
【0123】
模擬粘性土F4の測定結果から、比較例及び実施例の分析方法では、精度の高い分析が行えることが確認できた。