(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5941803
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月29日
(54)【発明の名称】エアバッグ及びエアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
B60R 21/239 20060101AFI20160616BHJP
B60R 21/203 20060101ALI20160616BHJP
【FI】
B60R21/239
B60R21/203
【請求項の数】12
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-208902(P2012-208902)
(22)【出願日】2012年9月21日
(65)【公開番号】特開2014-61824(P2014-61824A)
(43)【公開日】2014年4月10日
【審査請求日】2015年5月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】306009581
【氏名又は名称】タカタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104503
【弁理士】
【氏名又は名称】益田 博文
(72)【発明者】
【氏名】晝田 輝彦
(72)【発明者】
【氏名】越川 公裕
【審査官】
粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−070016(JP,A)
【文献】
特開2008−179337(JP,A)
【文献】
特開2001−277991(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16−33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
膨張展開状態において少なくとも乗員対向側の第1パネルと非乗員対向側の第2パネルとを有するように袋体に形成されたエアバッグ本体と、
前記第2パネルに形成されたベントホールと、
前記第2パネルの外面に取り付けられて前記ベントホールを開閉するベントカバーと、
前記第2パネルの前記ベントホールの近傍に形成された第1スリットと、
一方側が前記ベントカバーに接続されるとともに、他方側が前記第1スリットを介し前記エアバッグ本体の外部から内部へと引き入れられるように配置されるテザーと、
前記第2パネルの内面側に取り付けられたテザーカバーと、
前記第2パネルと前記テザーカバーとの間で前記第2パネルの内面に取り付けられた第3パネルと、
を備え、
前記テザーは、前記内部へと引き入れられた前記他方側の少なくとも一部が前記第2パネルと前記テザーカバーとの間に引き通され、
前記第3パネルの端部付近に前記第1スリットと一致して前記テザーの前記他方側を前記エアバッグ本体の外部から内部へと引き入れるための第2スリットが形成され、
前記テザーは、前記内部へと引き入れられた前記他方側の少なくとも一部が前記第3パネルと前記テザーカバーとの間に引き通されている、
ことを特徴とするエアバッグ。
【請求項2】
膨張展開状態において少なくとも乗員対向側の第1パネルと非乗員対向側の第2パネルとを有するように袋体に形成されたエアバッグ本体と、
前記第2パネルに形成されたベントホールと、
前記第2パネルの外面に取り付けられて前記ベントホールを開閉するベントカバーと、
前記第2パネルの前記ベントホールの近傍に形成された第1スリットと、
一方側が前記ベントカバーに接続されるとともに、他方側が前記第1スリットを介し前記エアバッグ本体の外部から内部へと引き入れられるように配置されるテザーと、
前記第2パネルの内面側に取り付けられたテザーカバーと、
前記テザーカバーの中央に形成された第3スリットと、
を備え、
前記テザーは、
前記内部へと引き入れられた前記他方側の少なくとも一部が前記第2パネルと前記テザーカバーとの間に引き通されるとともに、
前記第1スリットを貫通したうえで、前記第2パネルと前記テザーカバーとの間を経由した後に、前記第3スリットから前記エアバック本体内へと引き出されている、
ことを特徴とするエアバッグ。
【請求項3】
膨張展開状態において少なくとも乗員対向側の第1パネルと非乗員対向側の第2パネルとを有するように袋体に形成されたエアバッグ本体と、
前記第2パネルに形成されたベントホールと、
前記第2パネルの外面に取り付けられて前記ベントホールを開閉するベントカバーと、
前記第2パネルの前記ベントホールの近傍に形成された第1スリットと、
一方側が前記ベントカバーに接続されるとともに、他方側が前記第1スリットを介し前記エアバッグ本体の外部から内部へと引き入れられるように配置されるテザーと、
前記第2パネルの内面側に取り付けられたテザーカバーと、
前記第2パネルと前記テザーカバーとの間で前記第2パネルの内面に取り付けられた第3パネルと、
前記テザーカバーの中央に形成された第3スリットと、
を備え、
前記テザーは、
前記内部へと引き入れられた前記他方側の少なくとも一部が前記第2パネルと前記テザーカバーとの間に引き通されるとともに、
前記第1スリットを貫通したうえで、前記第2パネルと前記テザーカバーとの間を経由した後に、前記第3スリットから前記エアバック本体内へと引き出され、
前記第3パネルの端部付近に前記第1スリットと一致して前記テザーの前記他方側を前記エアバッグ本体の外部から内部へと引き入れるための第2スリットが形成され、
前記テザーは、前記内部へと引き入れられた前記他方側の少なくとも一部が前記第3パネルと前記テザーカバーとの間に引き通されている、
ことを特徴とするエアバッグ。
【請求項4】
請求項1に記載のエアバッグにおいて、
前記テザーは、
前記第1スリットと前記第2スリットとを貫通したうえで、前記第3パネルと前記テザーカバーとの間を経由した後に、前記第3スリットから前記エアバック本体内へと引き出されている
ことを特徴とするエアバッグ。
【請求項5】
請求項2乃至請求項4に記載のエアバッグにおいて、
前記第1スリット又は前記第2スリットを前記テザーカバーで覆った
ことを特徴とするエアバッグ。
【請求項6】
請求項2乃至請求項5の何れかに記載のエアバッグにおいて、
前記ベントホールは、
前記第2パネルの中央に形成したインフレータ取付部を挟み、かつ、前記エアバッグ本体を膨張展開した際にステアリングホイールリムの内側となる中心寄りに一対形成され、
前記ベントカバーと前記テザーとは、
前記一対のベントホールに対して対称となるように一対設けられている
ことを特徴とするエアバッグ。
【請求項7】
請求項6に記載のエアバッグにおいて、
前記一対のベントホールは、前記インフレータ取付部を中心として放射方向対称位置に形成されている
ことを特徴とするエアバッグ。
【請求項8】
請求項7に記載のエアバッグにおいて、
前記一対のベントホールは、
前記ステアリングホイールリムよりも内側の空間部分で、かつ前記ステアリングホイールの中心付近から前記ステアリングホイールリムに向って放射状に延びるステアリングスポークを避けた位置で、かつ、前記エアバッグ本体を膨張展開するために前記ステアリングホイールに形成された開放後のエアバッグリッドと前記ベントホールとの干渉を避ける位置に配置されている
ことを特徴とするエアバッグ。
【請求項9】
請求項6乃至請求項8の何れかに記載のエアバッグにおいて、
前記テザーの両端を互いに接合した
ことを特徴とするエアバッグ。
【請求項10】
請求項9に記載のエアバッグにおいて、
前記第1パネルの内面に帯状の膨張制御部材の一端を接合し、
前記テザーの両端を前記膨張制御部材の他端と接合した
ことを特徴とするエアバッグ。
【請求項11】
請求項10に記載のエアバッグにおいて、
前記膨張制御部材の前記一端を前記第1パネルの中心で接合した
ことを特徴とするエアバッグ。
【請求項12】
請求項1乃至請求項3の何れかに記載のエアバッグと、
前記エアバッグに圧力ガスを供給するインフレータと、
を備えている
ことを特徴とするエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の衝突時に乗員を拘束するためのエアバッグ及びそれを利用したエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の衝突、横転などの緊急時にインフレータが作動し、このインフレータから噴出された圧力ガスによって袋体に形成されたエアバッグが折り畳まれた状態から膨張展開し、乗員を拘束するエアバッグ装置が知られている。
【0003】
エアバッグ装置に用いられるエアバッグには、膨張展開状態において少なくとも第1パネルと第2パネルとを有するように袋体に形成されたエアバッグ本体と、第2パネルに形成されたベントホールと、を備えている。このベントホールは、膨張展開したエアバッグ本体に乗員が接触したときに、ベントホールを介してエアバッグ本体の内部から圧力ガスを流出させる。これにより、乗員をエアバッグ本体によって円滑に受け止めることができる。
【0004】
近年では、エアバッグ本体の内圧が所定以上となるまではベントホールが閉又は小開度となり、エアバッグの内圧が所定以上となるとともにエアバッグに乗員が接触したときにベントホールが開又は大開度となるように構成された、エアバッグが提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開WO2008/136336号公報
【特許文献2】特開2008−308139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示の技術は、エアバッグの膨張展開時に、ベントホールの外側に設けた開閉部材を、エアバッグ内部を通したテザーによって開閉する。したがって、ベントホールを開閉する際にテザーの動作挙動が圧力ガスの影響を受けやすく、ベントホールの閉度を円滑かつ高精度に制御することが容易ではない。この結果、エアバッグ本体の内圧を高精度に確保するために、エアバッグ本体の容積を小さくしたり、インフレータから噴出される圧力ガスの噴出能力を高くするなどの複雑な設定が必要となっていた。
【0007】
特許文献2に開示の技術は、ベントホールの開度を調整するための専用の開閉装置を必要とする。この結果、上記開閉装置を設置するためのスペース確保のためにエアバッグ装置の大型化、さらにはエアバッグ装置の高コスト化を招く。
【0008】
本発明の目的は、複雑な設定を行うことなく、比較的簡素かつ低コストな構造で、ベントホールの閉度を円滑かつ高精度に制御できるエアバッグ及びエアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本願第1発明のエアバッグは、膨張展開状態において少なくとも乗員対向側の第1パネルと非乗員対向側の第2パネルとを有するように袋体に形成されたエアバッグ本体と、前記第2パネルに形成されたベントホールと、前記第2パネルの外面に取り付けられて前記ベントホールを開閉するベントカバーと、前記第2パネルの前記ベントホールの近傍に形成された第1スリットと、一方側が前記ベントカバーに接続されるとともに、他方側が前記第1スリットを介し前記エアバッグ本体の外部から内部へと引き入れられるように配置されるテザーと、前記第2パネルの内面側に取り付けられたテザーカバーと、を備え、前記テザーは、前記内部へと引き入れられた前記他方側の少なくとも一部が前記第2パネルと前記テザーカバーとの間に引き通されていることを特徴とする。
【0010】
第1発明のエアバッグは、エアバッグ本体が膨張展開状態において少なくとも第1パネルと第2パネルとを有するように袋体に形成され、ベントホールが第2パネルに形成され、ベントホールを開閉するベントカバーが第2パネルの外面に取り付けられている。
【0011】
ここで、エアバッグ本体は、自動車の衝突、横転などの緊急時にインフレータが作動し、このインフレータから噴出される圧力ガスによって袋体に形成されたエアバッグが折り畳まれた状態から袋状に膨張展開し、膨張展開したエアバッグ本体に乗員が接触したときに、乗員を受け止める(拘束する)ことができる。
【0012】
また、第1発明のエアバッグでは、エアバッグ本体の膨張展開初期から膨張展開完了までの間は、ベントカバーによってベントホールの開度を開状態から閉状態まで調整することができる。そして、エアバッグ本体が膨張展開完了した状態では、ベントカバーによってベントホールを閉状態とすることができ、エアバッグ本体の内圧を維持することができる。この際、ベントカバーのテザーはエアバッグ本体の内部へと引き入れられた後に、そのうち少なくとも一部が第2パネルとテザーカバーとの間に引き通される。このようにテザーの他方側の少なくとも一部がエアバッグ本体の内部においてテザーカバーによって覆われる結果、エアバッグ本体が膨張展開してベントカバーのテザーが引き出される際に、圧力ガスの影響や他の構成部品との干渉を受け難くすることができる。この結果、ベントカバーは、テザーによる引き出し調整のみの複雑な設定を行うことなく、比較的簡素かつ低コストな構造で、ベントホールの閉度を円滑かつ高精度に制御することができる。
【0013】
また、第
1発明のエアバッグは
、前記第2パネルと前記テザーカバーとの間で前記第2パネルの内面に取り付けられた第3パネルを備え、前記第3パネルの端部付近に前記第1スリットと一致して前記テザーの前記他方側を前記エアバッグ本体の外部から内部へと引き入れるための第2スリットが形成され、前記テザーは、前記内部へと引き入れられた前記他方側の少なくとも一部が前記第3パネルと前記テザーカバーとの間に引き通されていることを特徴とする。
【0014】
第
1発明のエアバッグは、第3パネルが第2パネルとテザーカバーとの間に位置して第2パネルの内面に取り付けられている。第3パネルには、第2パネルの第1スリットと一致する位置に第2スリットが形成されている。したがって、テザーの他方側は、第1スリットと第2スリットとを貫通した状態で、少なくともその一部を第3パネルとテザーカバーとの間に引き通すことができる。
【0015】
このように、第
1発明のエアバッグによれば、テザーの他方側の少なくとも一部がエアバッグ本体の内部においてテザーカバーによって覆われる結果、エアバッグ本体が膨張展開してベントカバーのテザーが引き出される際に、圧力ガスの影響や他の構成部品との干渉を受け難くすることができる。この結果、複雑な設定を行うことなく、比較的簡素かつ低コストな構造で、ベントホールの閉度を円滑かつ高精度に制御することができる。
【0016】
第
2発明のエアバッグは
、前記テザーカバーの中央に第3スリットが形成され、前記テザーは、前記第1スリットを貫通したうえで、前記第2パネルと前記テザーカバーとの間を経由した後に、前記第3スリットから前記エアバック本体内へと引き出されていることを特徴とする。
また、第4発明のエアバッグは、第
1発明に記載のエアバッグにおいて、前記テザー
は、前記第1スリットと前記第2スリットとを貫通したうえで、前記第3パネルと前記テザーカバーとの間を経由した後に、前記第3スリットから前記エアバック本体内へと引き出されていることを特徴とする。
【0017】
第
2発明及び第4発明のエアバッグによれば、テザーの他方側のうち、例えば、インフレータの近傍で圧力ガスの噴出方向と交差する方向に延在する部位があった場合、その部位をエアバッグ本体の内部においてテザーカバーによって覆うことにより、エアバッグ本体が膨張展開してベントカバーのテザーが引き出される際に、圧力ガスの影響や他の構成部品との干渉を受け難くすることができる。この結果、複雑な設定を行うことなく、比較的簡素かつ低コストな構造で、ベントホールの閉度を円滑かつ高精度に制御することができる。
【0018】
第5発明のエアバッグは、第
2発明
乃至第4発明に記載のエアバッグにおいて、前記第1スリット又は前記第2スリットを前記テザーカバーで覆ったことを特徴とする。これにより、第1スリット又は第2スリットを内側から塞ぐことができるうえ、第1スリット又は第2スリットの近傍の布体の引っ張りを抑制することができる。
【0019】
第6発明のエアバッグは、第
2発明乃至第5発明の何れかに記載のエアバッグにおいて、前記ベントホールは、前記第2パネルの中央に形成したインフレータ取付部を挟み、かつ、前記エアバッグ本体を膨張展開した際にステアリングホイールリムの内側となる中心寄りに一対形成され、前記ベントカバーと前記テザーとは、前記一対のベントホールに対して対称となるように一対設けられていることを特徴とする。これにより、例えば乗員(運転手)が接近している姿勢のときにエアバッグ本体が膨張展開を開始しても、折り畳まれた状態からベントホールを早期に露出させることができ、その初期から容易に排気を行うことが可能となる。
【0020】
第7発明のエアバッグは、第6発明に記載のエアバッグにおいて、前記一対のベントホールは、前記インフレータ取付部を中心として放射方向対称位置に形成されていることを特徴とする。また、第8発明のエアバッグは、第7発明に記載のエアバッグにおいて、前記ステアリングホイールリムよりも内側の空間部分で、かつ前記ステアリングホイールの中心付近から前記ステアリングホイールリムに向って放射状に延びるステアリングスポークを避けた位置で、かつ、前記エアバッグ本体を膨張展開するために前記ステアリングホイールに形成された開放後のエアバッグリッドと前記ベントホールとの干渉(重なり)を避ける位置に配置されていることを特徴とする。
【0021】
第9発明のエアバッグは、第6発明乃至第8発明の何れかに記載のエアバッグにおいて、前記テザーの両端を互いに接合したことを特徴とする。これにより、一対のベントカバーの開閉を容易に同期させることができ、その開度(密閉度)を均一化することができる。
【0022】
第10発明のエアバッグは、第9発明に記載のエアバッグにおいて、前記第1パネルの内面に帯状の膨張制御部材の一端を接合し、前記テザーの両端を前記膨張制御部材の他端と接合したことを特徴とする。これにより、エアバッグ本体の膨張展開時にテザーに引っ張り作用が発生し、ベントカバーをベントホールの閉じ方向に押さえ付けることができる。
【0023】
第11発明のエアバッグは、第10発明に記載のエアバッグにおいて、前記膨張制御部材の前記一端を前記第1パネルの中心で接合したことを特徴とする。これにより、膨張制御部材とテザーカバーのスリットとが中心(0時方向)に位置し、一対のベントホールの開度をより一層容易に均一化することができる。
【0024】
第12発明のエアバッグ装置は、第1発明
乃至第3発明の何れかに記載のエアバッグと、前記エアバッグに圧力ガスを供給するインフレータと、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明のエアバッグ及びエアバッグ装置は、安価でしかも簡素な構成であっても、エアバッグ本体が膨張展開してベントカバーのテザーが引き出される際に圧力ガスの影響や他の構成部品との干渉を受け難くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の一実施形態に係るエアバッグの分解斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るエアバッグを示し、要部の組み付け状態の正面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るエアバッグを示し、ステアリングホイールとベントホールとの相対位置関係の説明図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るエアバッグを示し、ベントパッチ(第3パネル)の正面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るエアバッグを示し、テザーカバーの正面図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係るエアバッグを示し、(A)はベントカバーの正面図、(B)はパッチ部材の正面図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係るエアバッグを示し、パッチ部材を取り付けた状態のベントカバーの正面図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る変形例のエアバッグを示し、(A)はベントカバーの正面図、(B)はパッチ部材の正面図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係るエアバッグを示し、(A)はエアバッグ本体が膨張展開する前の状態の要部の断面図、(B)はエアバッグ本体が膨張展開する前の状態の要部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、本発明の一実施形態に係るエアバッグ及びエアバッグ装置について、図面を参照して説明する。
【0028】
図1は本発明の一実施形態に係るエアバッグの分解斜視図、
図2は本発明の一実施形態に係るエアバッグを示し、要部の組み付け状態の正面図、
図3は本発明の一実施形態に係るエアバッグを示し、ステアリングホイールとベントホールとの相対位置関係の説明図、
図4は本発明の一実施形態に係るエアバッグを示し、ベントパッチ(第3パネル)の正面図、
図5は本発明の一実施形態に係るエアバッグを示し、テザーカバーの正面図、
図6は本発明の一実施形態に係るエアバッグを示し、
図6(A)はベントカバーの正面図、
図6(B)はパッチ部材の正面図、
図7は本発明の一実施形態に係るエアバッグを示し、パッチ部材を取り付けた状態のベントカバーの正面図、
図8は本発明の一実施形態に係る変形例のエアバッグを示し、
図8(A)はベントカバーの正面図、
図8(B)はパッチ部材の正面図、
図9は本発明の一実施形態に係るエアバッグを示し、
図9(A)はエアバッグ本体が膨張展開する前の状態の要部の断面図、
図9(B)はエアバッグ本体が膨張展開する前の状態の要部の断面図である。
【0029】
図1及び
図2において、エアバッグ10は、乗員対向側に位置する第1パネルとしての略真円形状のフロントパネル12と、フロントパネル12と略同一径とされて非乗員対向側に位置する第2パネルとしてのリヤパネル14と、を備え、その周縁部を縫製等によって接合することで袋状のエアバッグ本体16を構成している。なお、第1パネルとしてのフロントパネル12は、エアバッグ本体16が膨張展開した状態において乗員と対向(対峙)する面、すなわち、乗員が実際に接触する正面(乗員基準)を構成する。また、リヤパネル14は、袋状に膨張展開した際のエアバッグ本体16の立体形状におけるフロントパネル12を除く面を構成し、その立体形状によっては、側面(サイドパネル等)等の側面を含むものとする。
【0030】
フロントパネル12には、中央付近に膨張制御部材18が設けられている。この膨張制御部材18は、フロントパネル12の中央に縫製H1(
図1にのみ二点鎖線で図示)により接合される接合部18aと、接合部18aから延びる帯状の規制部18bと、を一体に備えている。
【0031】
リヤパネル14の内面には、略三角形状の第3パネルとしてのベントパッチ20と、テザーカバー22と、が設けられている。また、リヤパネル14の外側には、ベントカバー24と、パッチ部材26と、が設けられている。
【0032】
リヤパネル14の中心付近にはインフレータ挿入穴14aが形成されている。リヤパネル14には、その中心から車体設置状態(ステアリングホイール設置状態)において車体上方(前方)側に一対のベントホール14bが形成されている。ベントホール14bは、リヤパネル14の中心から放射方向に開口中心を有するように形成されており、例えば、
図3に示すように、ステアリングホイールSの車体前後方向に延びる中心線(0時方向)に対して時計短針基準で2時と10時の方向に対称となるように形成されている。なお、ベントホール14bは、リヤパネル14の中心、すなわち、インフレータ装置のインフレータ30に対して近接した位置に形成されており、展開初期から排気が可能となるように設定されている。この際、一対のベントホール14bは、ステアリングホイールSのホイールリムRよりも内側で、ステアリングホイールSの中心付近からホイールリムRに向かって伸びるスポークPを避けた空間部分に配置される。さらに、ベントホール14bは、ステアリングホイールSに形成された開放後のエアバッグリッド(図示せず)とベントホール14bとの干渉(重なり)を避けることができる位置に配置されている。リヤパネル14には、各ベントホール14bに近接した位置に一対のスリット14cが形成されている。
【0033】
ベントパッチ20は、フロントパネル12及びリヤパネル14と同じ材質の布体から形成されており、
図4に示すように、各角部を円弧状とした略三角形状に形成されている。ベントパッチ20は、上述したインフレータ挿入穴14aと一致する第2インフレータ挿入穴20aと、ベントホール14bと一致する一対のベントホール20bと、各スリット14cに一致する一対のスリット20cと、が形成されている。ベントパッチ20は、例えば、第2インフレータ挿入穴20aを取り巻くように環状(真円)にリヤパネル14に縫製H2,H3,H4により接合されている。また、ベントパッチ20は、ベントホール20bを取り巻くように環状(真円)にリヤパネル14に縫製H5により接合されている。さらに、ベントパッチ20は、一対のスリット20cに跨るように延在されるとともに、スリット20cを挟むように並行な縫製H6,H7によって接合されている。
【0034】
テザーカバー22は、フロントパネル12及びリヤパネル14と同じ材質の布体から形成されており、
図5に示すように、インフレータ挿入穴14aと一致する第3インフレータ挿入穴22aと、車体前後方向に延びる中心線(0時方向)上に位置するスリット22bと、が形成されている。なお、テザーカバー22は、ベントホール20bを避けるように異型に形成されており、スリット22bは一対のスリット20cの間に位置するように形成されている。テザーカバー22は、ベントパッチ20と一体にリヤパネル14に接合(縫製H2,H3,H6,H7)されている。テザーカバー22は、その両端部でベントパッチ20のスリット20cを覆っており、リヤパネル14のスリット14cを介して外部との連通状態を塞ぐことで密閉性を向上している。
【0035】
ベントカバー24は、
図6(A)に示すように、扇状のカバー24aと、カバー24aから延びる帯状のテザー24bと、テザー24bの先端に位置してテザー24bよりも幅広の接合片24cと、を備えている。なお、ベントカバー24は、各ベントホール14bに対応して個々に設けられている。この際、ベントカバー24は、その形状や大きさ等を同一(見掛け上の取り付け状態で表裏反転)にしたものを用いることにより、
図1に示すように、互いに対称に設けられる。本実施の形態では、一対のベントホール14bを、中心線(0時方向)に対して対称に設けている。したがって、一対のベントカバー24は、リヤパネル14(エアバッグ本体16)の中心線に対しても対称に配置されている。ベントカバー24は、カバー24aの円弧状周縁部が縫製H8によってリヤパネル14に接合されており、その縫製H8によってヒンジ部28を構成している。ここで、ヒンジ部28は、リヤパネル14の中心に配置されるインフレータ30から噴射される圧力ガスの導入方向(噴射方向)下流側、すなわち、リヤパネル14の外周側に形成されている。したがって、ヒンジ部28の円弧中心は、リヤパネル14の中心とベントホール14bの中心とを結ぶ線の延長線上に位置するのが好ましい。テザー24bは、スリット14c及びスリット20cに挿入された後、ベントパッチ20とテザーカバー22との間(縫製H6と縫製H7との間)を経由してスリット22bから引き出された後、各両端の接合片24cが縫製H9によって接合されている。テザー24bの長さは、その接合片24cを接合したときのスリット22bを基準としてカバー24aの開度を規定するように設定されている。また、一対のテザー24bは、膨張制御部材18の規制部18bの先端と縫製H9によって接合することによって、その両者の長さに応じてエアバッグ本体16が膨張展開したときのエアバッグ本体16の厚さが規定される。また、ベントカバー24の一端であるテザー24bは、スリット20c及びスリット22bを通すことで、インフレータ30から噴出された圧力ガスによってスリット20cの布体が伸び難く、ガス漏れを軽減している。
【0036】
パッチ部材26は、
図6(B)に示すように、扇状に形成されており、その中心にはベントホール14bの開口径よりも小径な開口26aが形成されている。本実施の形態では、
図7に示すように、パッチ部材26は開口26aを取り巻くように縫製H5によってカバー24aに接合されている。
【0037】
図8(A),(B)に示すように、パッチ部材36をカバー24aよりも小さい扇状に形成し、カバー24aの円弧部分のみリヤパネル14に接合し、パッチ部材36の円弧部分とカバー24aとは接合せず、直線状の2辺をカバー24aと縫製H10によって接合し、接合しなかった円弧部分(非接合部)を開口26aに変わる開口としても良い。なお、ベントカバー24は、カバー24aの縫製部分(接合部分)が異なるのみで、形状や大きさ等は、
図6(A)に示したものと同一である。
【0038】
上記の構成において、
図9(A)に示すように、インフレータ30が作動していない収納状態では、カバー24aとパッチ部材26とはリヤパネル14に沿うように位置している。
【0039】
インフレータ30が作動して、その圧力ガスがエアバッグ本体16の内部に供給されると、その一部がベントホール14bから外部に放出されようとする。ここで、エアバッグ本体16が膨張するにつれて規制部18bとテザー24bとが緊張して引っ張り力が発生し、カバー24aの開度が規制される。また、圧力ガスの一部は、開口26aからカバー24aとパッチ部材26との間に供給され、
図9(B)に示すように、カバー24aとパッチ部材26とが協働して膨張し、カバー24aとパッチ部材26との間に圧力ガス貯留用の空間Kを形成しつつ、ベントホール14bを押さえ込む。したがって、上述したテザー24bの引っ張り力によるカバー24aの開度規制に加えて、カバー24aとパッチ部材26とが膨張することにより、ベントホール14bの密閉度を高く維持することができる。
【0040】
また、エアバッグ本体16の膨張展開時の厚さを規定する膨張制御部材18の他端(規制部18b)とテザー24bの両端(係合片24c)とを接合したことにより、これら規制部18bとテザー24bとの全体の長さでエアバッグ本体16の膨張時の厚さを規定することができると共に、エアバッグ本体16の膨張展開によってテザー24bに引っ張り作用が発生し、ベントカバー24をベントホール14bの閉じ方向に押さえ付けることができる。
【0041】
ここで、テザー24bは、膨張制御部材18の他端(規制部18b)と接合したことにより、エアバッグ本体16の膨張展開と共に引っ張り方向の荷重を受ける。
【0042】
しかしながら、本実施の形態においては、テザー24bの他端側は、スリット20cからエアバッグ本体16の内部においてそのままベントパッチ20とテザーカバー22との間に導入されているため、スリット20c及びスリット14cを強制的に広げることなく引っ張り荷重(方向)を布体の面方向に沿うように制御することができる。これにより圧力ガスの保持に万全を期すことができる。
【0043】
しかも、スリット20cとスリット14cとは、テザーカバー22の一部によって覆われている。したがって、圧力ガスの圧力荷重やエアバッグ本体16の膨張展開による布体の引っ張り荷重によってスリット20cとスリット14cとが強制的に押し広げられても、エアバッグ本体16の内側からスリット20cとスリット14cとを塞ぐことが可能となる。これにより圧力ガスの保持にさらに万全を期すことができる。但し、スリット20cとスリット14cとは、テザーカバー22の一部によって覆われていなくても、上記したテザー24bの他端側がベントパッチ20とテザーカバー22との間に導入される構成によって圧力ガスの保持に万全を期すことができる。さらに、インフレータ30から噴射される圧力ガスの噴射方向に対してテザーカバー22の端部とベントパッチ20との間がカウンタ方向に開口(縫製していない部分)していないことから、圧力ガスがそのままテザーカバー22とベントパッチ20との間入り込んでしまうこともない。
【0044】
以上説明したように、本実施形態のエアバッグ10を備えたエアバッグ装置では、テザー24bが、リヤパネル14のベントホール14bの近傍に形成したスリット14cからエアバッグ本体16の内部へと引き入れられた後、ベントパッチ20とテザーカバー22との間に引き通されている。このようにテザー24bがエアバッグ本体の内部においてテザーカバー22によって覆われる結果、エアバッグ本体16が膨張展開してベントカバー24のテザー24bが引き出される際に、圧力ガスの影響や他の構成部品との干渉を受け難くすることができる。この結果、複雑な設定を行うことなく、比較的簡素かつ低コストな構造で、ベントホール14bの閉度を円滑かつ高精度に制御することができる。
【0045】
また、本実施形態では特に、ベントパッチ20の端部付近に、リヤパネル14に形成したスリット14c(第1スリット)と一致するスリット20c(第2スリット)を形成し、テザーカバー22の中央にスリット22b(第3スリット)を形成している。そして、テザー24bは、リヤパネル14のスリット14cとベントパッチ20のスリット20cとを貫通したうえで、ベントパッチ20とテザーカバー22との間を経由した後に、テザーカバー22のスリット22bからエアバッグ本体16の内部へと引き出されている。これにより、圧力ガスの圧力が高い近傍であっても、その圧力によってテザー24bの途中部分が流されて端部側が引っ張られる(引き込まれる)といった悪影響を抑制することができる。
【0046】
また、本実施形態では特に、ベントパッチ20のスリット20cをテザーカバー22で覆ったことにより、スリット20c及びスリット14cを内側から塞ぐことができるうえ、ベントパッチ20のスリット20cの近傍の布体の引っ張りを抑制することができる。
【0047】
また、本実施形態では特に、ベントホール14bを、リヤパネル14の中央に形成したインフレータ取付部(各インフレータ挿入穴14a,20a,22a)を挟むとともに、エアバッグ本体16を膨張展開した際にステアリングホイールリムRの内側となる中心寄りに一対形成し、ベントカバー24とテザー24bとを一対のベントホール14bに対して対称に設けている。これにより、例えば乗員(運転手)が接近している姿勢のときにエアバッグ本体16が膨張展開を開始しても、折り畳まれた状態からベントホール14bを早期に露出させることができ、その初期から容易に排気を行うことが可能となる。
【0048】
また、本実施形態では特に、ベントホール14bは、インフレータ取付部を中心として放射方向対称位置に形成されている。特に、この例ではステアリングホイールSのホイールリムRよりも内側で、ステアリングホイールSの中心付近からホイールリムRに向かって伸びるスポークPを避けた空間部分に配置される。さらに、ベントホール14bは、ステアリングホイールSに形成された開放後のエアバッグリッド(図示せず)とベントホール14bとの干渉(重なり)を避けることができる位置に配置されている。
【0049】
また、本実施形態では特に、テザー24bの両端を互いに接合したことにより、一対のベントカバー24の開閉を容易に同期させることができ、その開度(密閉度)を均一化することができる。
【0050】
また、本実施形態では特に、フロントパネル12の内面に帯状の膨張制御部材18の一端(接合部18a)を接合し、テザー24bの両端を膨張制御部材18の他端(規制部18b)と接合している。これにより、エアバッグ本体16の膨張展開時にテザー24bに引っ張り作用が発生し、ベントカバー24をベントホール14bの閉じ方向に押さえ付けることができる。
【0051】
また、本実施形態では特に、膨張制御部材18の一端をフロントパネル12の中心で接合したことにより、膨張制御部材18とテザーカバー22のスリット22bとが中心(0時方向)に位置し、一対のベントホール14bの開度をより一層容易に均一化することができる。
【符号の説明】
【0052】
10 エアバッグ
12 フロントパネル(第1パネル)
14 リヤパネル(第2パネル)
14a インフレータ挿入穴(インフレータ取付部)
14b ベントホール
14c スリット(第1スリット)
16 エアバッグ本体
18 膨張制御部材
18a 接合部
18b 規制部
20 ベントパッチ(第3パネル)
20a 第2インフレータ挿入穴
20b ベントホール
20c スリット(第2スリット)
22 テザーカバー
22a 第3インフレータ挿入穴
22b スリット(第3スリット)
24 ベントカバー
24a カバー
24b テザー
24c 接合片
26 パッチ部材
26a 開口
28 ヒンジ部
30 インフレータ
H1〜H10 縫製